この章のねらい
- 修士修了レベル(口頭試問・qualifying exam 相当)の計算を、自力で最後まで実行できるようにする
前提:可換環論、圏論とホモロジー代数、代数幾何学、代数的整数論、リー群と表現論
目安:★ は 25 分、★★ は 40 分、★★★ は 60 分。k は特に断らなければ代数閉体とする。
問題 1 ★★(局所化)
R=k[x,y]/(xy) とする(座標軸の和集合の座標環)。
(1) R の極小素イデアルを求め、R は被約だが整域でないことを示せ。
(2) p=(x) に対し Rp≅k(y)(体)を示せ。また m=(x,y) に対し Rm は整域でないことを示せ。
使う知識:可換環論 第2章(局所化と素イデアル)、可換環論 第5章
解答
R は k 上 1, xi (i≥1), yj (j≥1) を基底にもつ。
(1) R/(x)≅k[y], R/(y)≅k[x] は整域なので (x),(y) は素イデアル。任意の素イデアルは xy=0 を含むので x か y を含み、(x) か (y) を含む。(x)⊂(y) かつ (y)⊂(x) なので、極小素イデアルは (x),(y)。(x)=span{xi}, (y)=span{yj} の共通部分は 0 なので冪零根基 =(x)∩(y)=0、R は被約。xy=0, x,y=0 なので整域でない。
(2) y∈/(x) なので y は Rp で可逆で、x=xy⋅y−1=0。よって Rp≅(R/(x))(0)=k[y](0)=k(y)。一方、x の零化イデアルは基底表示から Ann(x)=(y)⊂m なので、sx=0 となる s∈/m はなく x/1=0。同様に y/1=0 だが (x/1)(y/1)=0 なので、Rm は整域でない。
解説・発展
- 局所化 Rp は「p に対応する既約成分の生成点の近く」を見ること。(x) で局所化すると交点の情報は消え、原点での局所環は 2 本の枝をもち整域でない。
問題 2 ★★(整拡大と次元)
A=k[t2,t3]⊂k[t] とする。
(1) A≅k[x,y]/(y2−x3) を示せ。
(2) A の商体における整閉包は k[t] であり、A は整閉でないことを示せ。
(3) dimA=1 であり、m=(t2,t3) での局所環 Am は正則局所環でない(離散付値環でない)ことを示せ。
使う知識:可換環論 第4章(整拡大・整閉包)、可換環論 第5章(正則局所環)
解答
(1) φ:k[x,y]→A, x↦t2, y↦t3 は全射で y2−x3∈kerφ。任意の g は y についてモニックな y2−x3 で割って g≡a(x)+b(x)y と書ける。φ(a+by)=a(t2)+b(t2)t3 の第 1 項は偶数次、第 2 項は奇数次の項のみなので、これが 0 なら a=b=0。よって kerφ=(y2−x3)。
(2) t=t3/t2 より A の商体は k(t)。t は X2−t2∈A[X] の根なので A 上整で、k[t]=A[t] は A 上整。k[t] は UFD なので整閉。よって A の k(t) における整閉包は k[t]。t∈/A(A は 1 次の単項式を含まない)なので A は整閉でない。
(3) k[t] は A 上整なので dimA=dimk[t]=1(上昇定理と比較不能性)。m は tn (n≥2) で張られ、m2 は tn (n≥4) で張られるので、m/m2 は t2,t3 の類を基底とする 2 次元空間。m は極大なので mAm/m2Am≅m/m2 で、埋め込み次元 2>1=dimAm。よって正則でなく、DVR でもない。
解説・発展
- A はカスプ y2=x3 の座標環で、k[t]→A はその正規化である。1 次元ネーター局所整域では「正則 ⇔ 整閉 ⇔ DVR」。
問題 3 ★★(離散付値環)
(1) R をネーター局所整域とし、極大イデアル m が 0 でない単項イデアル (π) であるとする。R の 0 でない元はすべて uπn(u∈R×, n≥0)と一意に書け、R は離散付値環であることを示せ。
(2) R=Z[−3], p=(2,1+−3) とする。p は極大イデアルで、Rp は離散付値環でないことを示せ。また 2∈/q となる 0 でない素イデアル q では Rq は離散付値環であることを示せ。
使う知識:可換環論 第7章(離散付値環・デデキント環)、可換環論 第3章(クルルの交叉定理)
解答
(1) クルルの交叉定理より ⋂nmn=0。a=0 に対し a∈mn=(πn) となる最大の n をとり a=uπn と書くと、u∈m なら a∈mn+1 となるので u∈/m、すなわち u は単元。uπn=u′πn′(n≤n′)なら整域なので u=u′πn′−n で、u が単元だから n=n′。v(a)=n は v(ab)=v(a)+v(b), v(a+b)≥min(v(a),v(b)) を満たし、商体に延長して離散付値を与え、R はその付値環である。
(2) R≅Z[x]/(x2+3) より R/p≅F2[x]/(x+1,x2+1)=F2 で極大。加法群として p=2Z⊕(1+−3)Z(2−3=2(1+−3)−2 などによる)。(1+−3)2=−2+2−3 より p2=(4,2+2−3,−2+2−3)=(4,2+2−3)=2p。したがって p/p2=p/2p≅(Z/2)2 で、dimF2pRp/p2Rp=2。Rp の極大イデアルは単項でなく、DVR でない。一方 2∈/q なら 2 は Rq で可逆なので ω=2−1+−3∈Rq となり、Rq はデデキント環 Z[ω] の 0 でない素イデアルでの局所化に一致する。よって DVR。
解説・発展
- Z[−3] は整数環 Z[ω] の指数 2 の部分環(整環)で、導手は 2Z[ω]=p。整閉でない現象は導手を含む素イデアルでだけ起こる。
問題 4 ★★(Tor と Ext の計算)
(1) 正の整数 m,n と d=gcd(m,n) について、ToriZ(Z/m,Z/n) と ExtZi(Z/m,Z/n) を求めよ。
(2) R=k[x,y], k=R/(x,y) とする(k は任意の体)。ToriR(k,k) を求めよ。
(3) R=k[x]/(x2) とする。ToriR(k,k) と ExtRi(k,R) を求め、k は有限の長さの射影分解をもたないことを示せ。
使う知識:圏論とホモロジー代数 第5章(導来関手・射影分解・コシュル複体)
解答
(1) 射影分解 0→ZmZ→Z/m→0 に −⊗Z/n と Hom(−,Z/n) を施すと、いずれも Z/nmZ/n という複体になる。その核は dnZ/nZ≅Z/d、余核は Z/(m,n)=Z/d。よって Tor0=Tor1=Ext0=Ext1=Z/d、i≥2 ではすべて 0。
(2) コシュル複体 0→R(−y, x)R2(x y)R→k→0 は(x,y が正則列なので)完全で、k の自由分解である。⊗Rk をとると、写像の成分はすべて (x,y) に属するので 0 になる。よって Tor0=k, Tor1=k2, Tor2=k, i≥3 で 0。
(3) x 倍写像の核と像はどちらも (x) なので、⋯→RxRxR→k→0 は自由分解。⊗k で写像はすべて 0 になり、ToriR(k,k)=k(すべての i≥0)。HomR(−,R) をとると RxRx⋯ で、Ext0=kerx=(x)≅k、i≥1 で Exti=(x)/(x)=0。長さ n の射影分解があれば Torn+1(k,k)=0 となるはずで矛盾。
解説・発展
- (2) と (3) の対比は、セールの定理「ネーター局所環が正則 ⇔ 大域次元が有限」の具体例である。
問題 5 ★★(射影多様体:ねじれ 3 次曲線)
ν:P1→P3, [s:t]↦[s3:s2t:st2:t3] の像を C とし、P3 の座標を [x:y:z:w]、q0=xz−y2, q1=yw−z2, q2=xw−yz とする。
(1) C=V(q0,q1,q2) を示せ。
(2) V(q0,q1)=C∪L(L={y=z=0} は直線)を示せ。
(3) C の斉次座標環のヒルベルト関数は h(m)=3m+1 であることを示し、C の次数と算術種数を求めよ。
使う知識:代数幾何学 第2章(射影多様体・ヒルベルト多項式)
解答
(1) ν の像で qi=0 は直接確かめられる。逆に P∈V(q0,q1,q2) とする。x=0 なら x=1 として z=y2, w=yz=y3 で P=ν([1:y])。x=0 なら q0 から y=0、q1 から z=0 で P=[0:0:0:1]=ν([0:1])。
(2) P∈V(q0,q1) とする。y=0 なら xz=y2=0 より x=0 で、x=1 として z=y2, w=z2/y=y3、P∈C。y=0 なら q1 から z=0 で P∈L。逆に L⊂V(q0,q1) は明らか。なお [1:0:0:1]∈L は q2=1 で C に属さない。
(3) 斉次イデアル I(C) は準同型 k[x,y,z,w]→k[s,t](x↦s3,…,w↦t3)の核である(C 上で消えることと、合成した s,t の多項式が 0 であることは同値)。その像は ⨁mk[s,t]3m:実際、次数 3m の単項式 satb は b=b1+⋯+bm(0≤bi≤3)と分けて、s3−bitbi の積として表せる。よって斉次座標環の次数 m 部分は dimkk[s,t]3m=3m+1。ヒルベルト多項式 3m+1 から、次数は 3、算術種数は 1−1=0。
解説・発展
- C は 3 つの 2 次式で定義され、2 つでは足りない((2))。集合としては q0 と xw2−2yzw+z3 で定義できるが(x=1 で後者は (w−y3)2)、イデアルとしては完全交叉でない最も簡単な例である。
問題 6 ★★(層と指数完全系列)
X を C の開集合、O を正則関数の層、O× を零点のない正則関数の(乗法群の)層とする。
(1) U↦{U→Z の定数関数 } は前層だが層でないことを示し、その層化を述べよ。
(2) 層の列 0→Z→O exp(2πi ⋅) O×→0 は完全であることを示せ。
(3) X=C∖{0} では大域切断の写像 O(X)→O×(X) は全射でないことを示せ。X が単連結なら全射であることを示せ。
使う知識:代数幾何学 第3章(層・茎・層化・完全性)
解答
(1) 交わらない空でない開集合 U1,U2 上の定数関数 0 と 1 は、共通部分(空集合)上で一致するが、U1∪U2 上の定数関数に貼り合わない。よって層でない。層化は局所定数関数の層 Z である。
(2) 層の列の完全性は茎で確かめればよい。p∈X での茎で、e2πif=1 となる芽 f は整数値の連続関数、すなわち局所定数の芽で、Zp の像に一致する。全射性:g∈Op× は p を中心とする小円板で零点をもたず、円板は単連結なので正則な対数 logg がとれ、f=2πi1logg とすれば e2πif=g。
(3) g(z)=z が e2πif(f∈O(X))と書けたとすると gg′=2πif′ で、∮∣z∣=1zdz=2πi∮f′ dz=0 となるが、左辺は 2πi。X が単連結なら、g′/g は原始関数 h をもち、(ge−h)′=0 より g=ceh、c=ec′ として g=eh+c′。
解説・発展
- 「層の射が全射」は茎ごとの全射で、大域切断の全射を意味しない。その障害が層コホモロジーで、X=C× では H1(X,O)=0 より O×(X)/exp≅H1(X,Z)≅Z(回転数)となる。
問題 7 ★★★(リーマン–ロッホの定理の応用)
曲線は C 上の非特異射影曲線(コンパクトリーマン面)とし、ℓ(D)=dimL(D) とする。
(1) E を種数 1 の曲線、O∈E とする。n≥1 で ℓ(nO)=n を示せ。さらに、O にそれぞれちょうど 2 位・3 位の極をもち他で正則な関数 x,y が存在し、1,x,y,x2,xy,x3,y2 の間の 1 次関係式において x3 と y2 の係数はともに 0 でないことを示せ。
(2) C を種数 2 の曲線とする。標準線形系 ∣K∣ は基点をもたず、次数 2 の射 C→P1 を定めることを示せ。この射の分岐点の個数を求めよ。
使う知識:代数幾何学 第8章(リーマン–ロッホの定理・リーマン–フルヴィッツの公式)、リーマン面 第5章
解答
リーマン–ロッホの定理:ℓ(D)−ℓ(K−D)=degD−g+1、degK=2g−2、ℓ(K)=g。
(1) g=1 では degK=0, ℓ(K)=1 より K∼0。degD≥1 なら ℓ(K−D)=ℓ(−D)=0(負次数の因子には 0 でない切断がない)なので ℓ(D)=degD。よって ℓ(nO)=n。ℓ(O)=1(定数のみ)<ℓ(2O)=2<ℓ(3O)=3 から、L(2O)∖L(O) の元 x(極の位数がちょうど 2)と L(3O)∖L(2O) の元 y(ちょうど 3)がとれる。7 個の関数 1,x,y,x2,xy,x3,y2 は 6 次元の L(6O) に属するので 1 次従属。極の位数はそれぞれ 0,2,3,4,5,6,6。関係式で x3,y2 の係数がともに 0 なら、残りは極の位数が相異なり 1 次独立なので、関係式は自明になる。一方だけが 0 なら、他方が位数 6 の極を唯一もち、その係数も 0 でなければならない。よって両方とも 0 でない。
(2) g=2 で degK=2, ℓ(K)=2。P が基点なら ℓ(K−P)=2。リーマン–ロッホを D=P に適用すると ℓ(P)−ℓ(K−P)=1−2+1=0。ℓ(P)=2 なら P だけに 1 位の極をもつ関数が C≅P1 を与え g=2 に反するので ℓ(P)=1、よって ℓ(K−P)=1=2。基点はなく、∣K∣ は次数 degK=2 の射 φ:C→P1 を定める。リーマン–フルヴィッツの公式 2g−2=2(2⋅0−2)+∑P(eP−1) より ∑(eP−1)=6、次数 2 なので eP∈{1,2} で、分岐点は 6 個。
解説・発展
- (1) の関係式を整理すると、ワイエルシュトラス標準形 y2=4x3−g2x−g3 が得られる。複素解析的には x=℘(z), y=℘′(z) である(リーマン面 第2章)。
問題 8 ★★(素イデアル分解:純 3 次体)
K=Q(α), α=32 とし、OK=Z[α], dK=−108 は既知としてよい。
(1) 2,3,5,7,31 の OK における素イデアル分解を求めよ。
(2) (3)=(α+1)3 を示せ。
(3) ミンコフスキーの評価を用いて、K の類数は 1 であることを示せ。
使う知識:代数的整数論 第2章(デデキント–クンマーの定理)、代数的整数論 第3章(ミンコフスキーの定理)
解答
(1) OK=Z[α] なので、デデキント–クンマーの定理により x3−2 の Fp 上の分解が (p) の分解を与える。
- p=2:x3。(2)=(2,α)3=(α)3(完全分岐)。
- p=3:x3−2≡x3+1=(x+1)3。(3)=p33, p3=(3,α+1)(完全分岐)。
- p=5:33=27≡2 より x3−2≡(x−3)(x2+3x+4)。2 次式の判別式 9−16≡3 は平方剰余でない(平方は 0,1,4)ので既約。(5)=pp′(剰余次数 1 と 2)。
- p=7:F7 の立方数は 0,±1 なので 2 は立方数でなく、x3−2 は既約。(7) は惰性。
- p=31:43=64, 73=343, 203=8000 はすべて 31 を法として 2 に合同。3 つの相異なる根をもち、(31)=p1p2p3(完全分解)。
(2) α+1 の最小多項式は (x−1)3−2=x3−3x2+3x−3 なので N(α+1)=3。(α+1)3=α3+3α2+3α+1=3(1+α+α2) で、1+α+α2=α−1α3−1=α−11 は単元(α−1 の最小多項式 x3+3x2+3x−1 より N(α−1)=1)。よって (α+1)3=(3)。
(3) K は実埋め込み 1 個、複素埋め込みの対 1 個をもつ(r1=r2=1)。ミンコフスキーの評価は
MK=333!(π4)r2∣dK∣=276⋅π4⋅108≈2.94
各イデアル類はノルム 2 以下の整イデアルを含む。ノルム 2 の整イデアルは (2) の約数でノルム 2 のもの、すなわち (α) のみで、単項。よって類数は 1。
解説・発展
- OK=Z[α] の確認:判別式 −108=−2233 より指数の素因数は 2,3 に限られ、x3−2 は 2 で、(x−1)3−2 は 3 でアイゼンシュタインなので、どちらも指数を割らない。
- K/Q はガロア拡大でないので、(5) のように剰余次数の異なる素イデアルに分解しうる。
問題 9 ★★★(類数の計算:Q(−23))
K=Q(−23), θ=21+−23 とする。OK=Z[θ], θ2−θ+6=0, N(a+bθ)=a2+ab+6b2 は用いてよい。
(1) (2)=pp′(p=(2,θ), p′=(2,θ−1))、(3)=qq′(q=(3,θ), q′=(3,θ−1))と分解することを示せ。
(2) p, p2 は単項でなく、p′3=(θ+1) であることを示せ。
(3) 類数は 3 であることを示せ。
使う知識:代数的整数論 第2章、代数的整数論 第3章(ミンコフスキーの評価・イデアル類群)
解答
(1) x2−x+6 は F2 で x(x−1)、F3 で x(x−1) と相異なる 1 次式に分解するので、デデキント–クンマーの定理より主張の分解を得る(各素イデアルのノルムは 2 または 3)。
(2) 4N(a+bθ)=(2a+b)2+23b2 なので、b=0 ならノルムは 423 以上、すなわち 6 以上。よってノルム 2,3,4 の元は b=0 で、ノルム 4 の ±2 だけである。とくに p(ノルム 2)は単項でない。p2 が単項なら (±2)=(2)=pp′ となり、素イデアル分解の一意性から p=p′ で矛盾。次に N(θ+1)=1+1+6=8。θ+1=(θ−1)+2∈p′、一方 θ∈p より θ+1≡1(modp) で θ+1∈/p。ノルム 8 なので (θ+1) は p,p′ の積で指数の和が 3、p を含まないので (θ+1)=p′3。
(3) ミンコフスキーの評価は MK=222!⋅π423=π223≈3.05 なので、類群はノルム 3 以下の素イデアル p,p′,q,q′ の類で生成される。(2) と同様に p′, p′2 も単項でないので [p′] の位数は 3 で、[p]=[p′]−1。N(θ)=6, θ∈p∩q より (θ)=pq、よって [q]=[p]−1=[p′]、[q′]=[q]−1=[p]。類群は [p′] で生成される位数 3 の巡回群で、類数は 3。
解説・発展
- 虚二次体の類数計算の定型:ミンコフスキーの評価 → 評価以下の素数の分解 → ノルム方程式で単項性を判定 → 単項イデアルの分解から関係式。
- h(−23)=3 は、判別式 −23 の 3 次式 x3−x−1 の最小分解体が K のヒルベルト類体になることと対応する(代数的整数論 第7章)。
問題 10 ★(p 進数)
(1) 7 は Z3 で平方数であることを示し、x2≡7(mod27), x≡1(mod3) を満たす整数 x を求めよ。
(2) 2 は Q7, Q5, Q2 のそれぞれで平方数か。
(3) p が奇素数のとき、Qp×/(Qp×)2 の位数は 4 であることを示し、代表元を挙げよ。
使う知識:代数的整数論 第5章(ヘンゼルの補題・Qp× の構造)
解答
(1) f(x)=x2−7 は f(1)=−6≡0(mod3), f′(1)=2≡0(mod3) なので、ヘンゼルの補題により x≡1(mod3) となる根が Z3 にただ一つある。持ち上げ:x=1+3t で 1+6t≡7(mod9) より t≡1(mod3)、x≡4(mod9)。x=4+9s で 16+72s≡7(mod27)、72≡18 より 18s≡18(mod27)、s≡1(mod3)。よって x≡13(mod27)(132=169=6⋅27+7)。
(2) Q7:32=9≡2(mod7) で f′(3)=6≡0 なので、ヘンゼルの補題より平方数。Q5:x2=2 なら v5(x)=0 で x∈Z5×、x2≡2(mod5) となるが、F5 の平方は 0,1,4 なので平方数でない。Q2:v2(x2)=2v2(x) は偶数だが v2(2)=1 なので平方数でない。
(3) Qp×=pZ×Zp×。u∈Zp× が平方数 ⇔ umodp が Fp× で平方数(⇒ は明らか、⇐ は p 奇素数でのヘンゼルの補題)。よって Zp×/(Zp×)2≅Fp×/(Fp×)2≅Z/2、pZ/p2Z≅Z/2 で、Qp×/(Qp×)2≅(Z/2)2。代表元は 1,u,p,up(u は p を法とする平方非剰余)。
解説・発展
- p=2 では u∈Z2× が平方数 ⇔ u≡1(mod8) で、Q2×/(Q2×)2 の位数は 8。この群は Qp の二次拡大を分類する。
問題 11 ★★(有限群の指標表:A4)
(1) 交代群 A4 の共役類と指標表を求めよ。
(2) A4 の C4 への置換表現を既約分解せよ。
(3) (1) の 3 次元既約表現を V とするとき、V⊗V を既約分解せよ。
使う知識:リー群と表現論 第1章(指標の直交関係・既約分解)
解答
(1) 共役類は {e}(1 個)、(12)(34) 型(3 個)、(123) の類(4 個)、(132) の類(4 個)の 4 つ。V4={e,(12)(34),(13)(24),(14)(23)} は正規部分群で A4/V4≅Z/3 なので、1 次元指標が 3 つある(ω=e2πi/3、(123)↦ω)。既約表現の次元の 2 乗和が 12 なので残りは 3 次元 1 つ。その値は列の直交関係(または (2))から決まる。
|
e |
(12)(34) |
(123) |
(132) |
| χ1 |
1 |
1 |
1 |
1 |
| χ2 |
1 |
1 |
ω |
ω2 |
| χ3 |
1 |
1 |
ω2 |
ω |
| χ4 |
3 |
−1 |
0 |
0 |
(2) 置換指標は固定点の個数 π=(4,0,1,1)。⟨π,χ1⟩=124+0+4+4=1 で、π−χ1=(3,−1,0,0)=χ4。よって C4≅χ1⊕χ4。
(3) χ42=(9,1,0,0)。⟨χ42,χ1⟩=129+3=1、χ2,χ3 とも同様に 1、⟨χ42,χ4⟩=1227−3=2。よって V⊗V≅χ1⊕χ2⊕χ3⊕2χ4(次元 1+1+1+6=9 で整合)。
解説・発展
- 指標表は、行の直交関係と列の直交関係(列ベクトルのノルムの 2 乗 = 中心化群の位数)で検算する。
問題 12 ★★(sl2(C) の有限次元表現)
sl2(C) の基底 e,f,h は [h,e]=2e, [h,f]=−2f, [e,f]=h を満たす。
(1) 有限次元表現 V の元 v=0 が hv=λv, ev=0 を満たすとし、vk=fkv とおく。hvk=(λ−2k)vk, evk=k(λ−k+1)vk−1 を示し、λ は非負整数 n で、V が既約なら dimV=n+1 であることを示せ。
(2) カシミール元 C=ef+fe+21h2 は n+1 次元既約表現 Vn にスカラー 2n(n+2) で作用することを示せ。
(3) V1⊗V2 と Sym2V2 を既約分解せよ。
使う知識:リー群と表現論 第3章、リー群と表現論 第5章(最高ウェイト理論)
解答
(1) h(fw)=f(hw)+[h,f]w より f はウェイトを 2 下げるので hvk=(λ−2k)vk。evk は帰納法で、evk=efvk−1=(fe+h)vk−1=(k−1)(λ−k+2)vk−1+(λ−2k+2)vk−1=k(λ−k+1)vk−1。0 でない vk は相異なる固有値の固有ベクトルなので 1 次独立で、有限次元性から v0,…,vn=0, vn+1=0 となる n がある。0=evn+1=(n+1)(λ−n)vn より λ=n。span{v0,…,vn} は e,f,h で保たれる部分表現なので、V が既約ならこれに等しく dimV=n+1。
(2) C は e,f,h と可換である(直接計算で確かめられる)。シューアの補題より既約な Vn にスカラーで作用し、最高ウェイトベクトル v0 で計算すると efv0=(fe+h)v0=nv0, fev0=0, 21h2v0=2n2v0。和は 2n(n+2)。
(3) 有限次元表現は完全可約で、ウェイト(h の固有値)の重複度込みの集合で同型類が決まる。V1 のウェイトは {1,−1}、V2 は {2,0,−2}。V1⊗V2 のウェイトは和をとって {3,1,1,−1,−1,−3}={3,1,−1,−3}∪{1,−1} なので V1⊗V2≅V3⊕V1。Sym2V2 のウェイトは重複組合せの和 {4,2,0,0,−2,−4} なので Sym2V2≅V4⊕V0。
解説・発展
- 一般にクレブシュ–ゴルダン分解 Vm⊗Vn≅⨁k=0min(m,n)Vm+n−2k が成り立つ。sl2≅so(3)C を通じて、これは量子力学の角運動量の合成則である。