この章のねらい
- 留数定理による実積分の計算を、積分路の選択から誤差項の評価まで書き切れるようにする
- ルーシェの定理・最大値原理・シュワルツの補題・リウヴィルの定理を使って、零点の個数や関数そのものを決定する
前提:複素関数論
目安:★ は 20 分、★★ は 30〜40 分、★★★ は 50 分。
問題 1 ★(留数による積分計算)
(1) ∫−∞∞(x2+1)2(x2+4)x2 dx を求めよ。
(2) ∫02π(2+cosθ)2dθ を求めよ。
使う知識:複素関数論 第5章(留数定理・高位の極の留数)
解答
(1) F(z)=(z2+1)2(z2+4)z2 とし、[−R,R] と上半円 CR からなる閉路(R>2)で積分する。上半平面の極は i(2 位)と 2i(1 位)。
Resz=2iF=((2i)2+1)2⋅4i(2i)2=36i−4=9i
z=i では g(z)=(z+i)2(z2+4)z2 として留数は g′(i)。対数微分 gg′=z2−z+i2−z2+42z に z=i を代入すると −2i+i−32i=−35i、g(i)=(2i)2⋅3−1=121 なので g′(i)=−365i。CR 上では ∣F∣≤(R2−1)2(R2−4)R2 で、∣∫CRF∣≤πR⋅(R2−1)2(R2−4)R2→0。よって
∫−∞∞F(x)dx=2πi(9i−365i)=2πi⋅(−36i)=18π
(2) z=eiθ とおくと cosθ=2zz2+1, dθ=izdz で、2+cosθ=2zz2+4z+1。よって積分は ∮∣z∣=1i(z2+4z+1)24z dz。z2+4z+1=(z−α)(z−β), α=−2+3(単位円内), β=−2−3(外)。α は 2 位の極で、h(z)=i(z−β)24z とすると留数は
h′(α)=i4⋅(α−β)3−(α+β)=i4⋅(23)34=33i2
したがって積分 =2πi⋅33 i2=334π。
解説・発展
- 2 位の極の留数は dzd[(z−a)2F(z)]z=a。対数微分を使うと計算量が減る。(1) は部分分数分解 (t+1)2(t+4)t=t+14/9−(t+1)21/3−t+44/9(t=x2)で検算できる。
問題 2 ★★(ジョルダンの補題とフーリエ型積分)
(1) R>0 に対し ∫0πe−Rsinθ dθ<Rπ を示せ。
(2) a,b>0 に対し ∫0∞x2+b2xsinax dx=2πe−ab を示せ。
(3) ∫0∞xsinx dx=2π を示せ。
使う知識:複素関数論 第5章(ジョルダンの補題・極を避ける積分路)
解答
(1) [0,2π] で sinθ≥π2θ(凹性)より ∫0π/2e−Rsinθdθ≤∫0π/2e−2Rθ/πdθ=2Rπ(1−e−R)<2Rπ。θ↦π−θ の対称性から全体は Rπ 未満。
(2) F(z)=z2+b2zeiaz を [−R,R] と上半円 CR(R>b)で積分する。上半平面の極は ib のみで、ResibF=2ibib e−ab=2e−ab。CR 上 ∣eiaz∣=e−aRsinθ なので、(1)(R を aR として)より
∫CRFdz≤R2−b2R∫0πe−aRsinθRdθ<R2−b2R2⋅aRπ⟶0
実軸上では x2+b2xcosax が奇関数なので ∫−RRF=2i∫0Rx2+b2xsinaxdx。留数定理から 2i∫0R⋯+∫CRF=πie−ab、R→∞ として結論を得る。
(3) G(z)=eiz/z を、[−R,−ε]、原点を上から避ける半円 Γε(時計回り)、[ε,R]、上半円 CR からなる閉路で積分すると、内部に極がないので 0。実軸部分は ∫εRxeix−e−ixdx=2i∫εRxsinxdx。G(z)=z1+ϕ(z)(ϕ は原点の近くで有界)より ∫ΓεG=−πi+O(ε)。また (1) より ∣∫CRG∣≤∫0πe−Rsinθdθ<Rπ。ε→0, R→∞ として 2i∫0∞xsinxdx−πi=0。
解説・発展
- 被積分関数が 1/∣z∣ 程度にしか減衰しないとき、長さ πR を掛ける粗い評価では足りず、ジョルダンの補題で eiaz の減衰を使う。sinaz は上半平面で増大するので、必ず eiaz で考える。
- (3) の −πi は「1 位の極を半周すると留数の πi 倍」という一般則による。(2) と同様の方法で ∫0∞x2+b2cosaxdx=2bπe−ab も得られる。
問題 3 ★★(分岐をもつ関数の積分)
(1) 0<α<1 に対し ∫0∞1+xxα−1 dx=sinπαπ を示せ。
(2) 整数 n≥2 に対し ∫0∞1+xndx を求めよ。
(3) ∫0∞1+x2(logx)2 dx=8π3 を示せ。
使う知識:複素関数論 第5章(多価関数の分枝・鍵穴型積分路)
解答
(1) C∖[0,∞) で 0<argz<2π となる分枝をとり F(z)=1+zzα−1 とする。半径 R の大円、半径 ε の小円、正の実軸の上岸と下岸からなる鍵穴型の閉路で積分する。内部の極は z=−1=eiπ のみで留数は eiπ(α−1)=−eiπα。上岸では argz=0、下岸(逆向き)では argz=2π なので、I を求める積分として実軸部分の寄与は (1−e2πiα)I に収束する。円周上の寄与は
∫∣z∣=R≤R−12πR⋅Rα−1→0,∫∣z∣=ε≤1−ε2πε⋅εα−1→0
(0<α<1 を使った)。よって (1−e2πiα)I=−2πieiπα、両辺を −eiπα で割って (eiπα−e−iπα)I=2πi、I=sinπαπ。
(2) x=t1/n と置換すると ∫0∞1+xndx=n1∫0∞1+tt1/n−1dt=sin(π/n)π/n((1) で α=1/n)。
(3) x=t1/2 の置換と (1) から、0<α<2 で
J(α):=∫0∞1+x2xα−1dx=21∫0∞1+ttα/2−1dt=2sin(πα/2)π
∂α2∂2xα−1=(logx)2xα−1 で、α∈[21,23] では (logx)2xα−1≤(logx)2(x−1/2+x1/2) であり、これを 1+x2 で割ったものは (0,∞) で可積分。1 階導関数 (logx)xα−1 も同様に ∣logx∣(x−1/2+x1/2) で抑えられる。よって優収束定理により微分と積分を 2 回交換でき、J′′(1)=∫0∞1+x2(logx)2dx。右辺を 2 回微分すると 2π⋅4π2(cscucot2u+csc3u)(u=πα/2)で、α=1(u=π/2)では 8π3。
解説・発展
- 鍵穴型積分路では、(i) 分枝の定め方、(ii) 上岸と下岸での arg の値、(iii) 大円・小円の評価に使う α の範囲、を答案に明記する。留数を (−1)α−1 と書いて分枝を曖昧にするのは典型的な失点である。
- (1) は相補公式 Γ(α)Γ(1−α)=sinπαπ と同値である(複素関数論 第7章)。
問題 4 ★★(ルーシェの定理)
(1) p(z)=z7−4z3+z−1 の零点のうち、∣z∣<1 にあるものと 1<∣z∣<2 にあるものの個数を(重複度込みで)求めよ。
(2) 方程式 ez=5z3 は ∣z∣<1 にちょうど 3 個の解をもち、それらはすべて単解で、そのうち実数解はちょうど 1 個であることを示せ。
使う知識:複素関数論 第5章(偏角の原理・ルーシェの定理)
解答
ルーシェの定理(円周上 ∣g∣<∣f∣ なら f と f+g の円板内の零点の個数は等しい)を使う。
(1) ∣z∣=1 上で ∣z7+z−1∣≤3<4=∣−4z3∣ なので、p は ∣z∣<1 に −4z3 と同じ 3 個の零点をもつ。また ∣z∣=1 上で ∣p∣≥4−3>0 なので円周上に零点はない。∣z∣=2 上で ∣−4z3+z−1∣≤32+2+1=35<128=∣z7∣ なので、∣z∣<2 には 7 個。よって ∣z∣<1 に 3 個、1<∣z∣<2 に 4 個。
(2) ∣z∣=1 上で ∣ez∣=eRez≤e<5=∣5z3∣ なので、5z3−ez は ∣z∣<1 に 5z3 と同じ 3 個の零点をもつ。重解なら ez=5z3 かつ ez=15z2 で、5z3=15z2 より z=0 または 3 だが、z=0 は解でなく z=3 は円板外。よってすべて単解。実数解について:(−1,0] では ex>0≥5x3 で解がない。x∈(0,1) では方程式は u(x):=3x−logx=3log5 と同値で、u′(x)=31−x1<0 より解は高々 1 個。h(x)=ex−5x3 は h(0)=1>0, h(1)=e−5<0 なので解はちょうど 1 個。残りの 2 個は虚数解(実係数なので互いに共役)である。
解説・発展
- ルーシェの定理の適用では、比較する関数(支配項)の選び方がすべてである。円周上で最大の項を f に選び、残りの和を三角不等式で評価する。境界上に零点がないことも確認しておく。
- 実数解の個数は、虚数解が共役対で現れることから偶奇を確定させると効率的である。
問題 5 ★★(シュワルツの補題)
D={∣z∣<1} とする。
(1)(シュワルツの補題)f:D→D が正則で f(0)=0 ならば、∣f(z)∣≤∣z∣, ∣f′(0)∣≤1 であることを示せ。
(2) 正則関数 f:D→D が f(0)=21 を満たすとき、∣f′(0)∣ の最大値と、それを実現する f をすべて求めよ。
(3) 正則関数 f:D→D が f(0)=f(21)=0 を満たすとき、∣f(−21)∣ の最大値を求めよ。
使う知識:複素関数論 第3章(最大値原理)、複素関数論 第6章(単位円板の自己同型)
解答
(1) g(z)=f(z)/z(g(0)=f′(0))は D で正則。0<r<1 のとき ∣z∣=r 上 ∣g∣≤1/r なので、最大値原理により ∣z∣≤r で ∣g∣≤1/r。r→1 として ∣g∣≤1、すなわち ∣f(z)∣≤∣z∣, ∣f′(0)∣≤1。(さらに D 内の 1 点で等号なら g は定数で、f(z)=eiθz。)
(2) ∣a∣<1 に対し φa(w)=1−aww−a は D の自己同型で、逆写像は φ−a、φa′(a)=1−∣a∣21。g=φ1/2∘f は g(0)=0 を満たすので (1) より ∣g′(0)∣≤1。g′(0)=φ1/2′(21)f′(0)=34f′(0) だから ∣f′(0)∣≤43。等号は g(z)=eiθz、すなわち
f(z)=φ−1/2(eiθz)=1+21eiθzeiθz+21(θ∈R)
のときで、これらは確かに条件を満たす。最大値は 43。
(3) B(z)=z φ1/2(z)=z⋅1−z/2z−1/2 とおく。h=f/B は 0, 21 が除去可能特異点なので D で正則。∣z∣=r 上 ∣h∣≤1/min∣w∣=r∣B(w)∣ で、r→1 のとき右辺は 1 に収束する(∣B∣ は ∣z∣→1 で一様に 1 に近づく)。最大値原理より ∣h∣≤1、よって ∣f(z)∣≤∣B(z)∣。∣B(−21)∣=21⋅5/41=52 で、f=B で等号が成り立つので、最大値は 52。
解説・発展
- 「f(0)=0 なら自己同型 φa で 0 に移してからシュワルツの補題」が定石。一般形はシュワルツ–ピックの補題 ∣f′(z)∣≤1−∣z∣21−∣f(z)∣2 である。
問題 6 ★★(等角写像とディリクレ問題)
(1) 帯領域 S={0<Imz<π} を単位円板 D に写す等角写像を一つ求めよ。
(2) 上半円板 D+={∣z∣<1, Imz>0} を上半平面 H に写す等角写像を一つ求めよ。
(3) D+ 上の調和関数 u で、±1 を除く境界で連続に延長され、線分 (−1,1) 上で 0、上半円周上で 1 となるものを一つ求めよ。さらに {u=21} はどのような曲線か。
使う知識:複素関数論 第6章(一次分数変換・指数関数・べき関数による等角写像)
解答
(1) ζ=ez は S を H に全単射に写し(argζ=Imz∈(0,π))、ケーリー変換 w=ζ+iζ−i は H を D に写す。よって w=ez+iez−i。
(2) T(z)=1−z1+z は D を右半平面に全単射に写す(w=T(z) のとき ∣z∣<1⇔∣w−1∣<∣w+1∣⇔Rew>0)。ImT(z)=∣1−z∣22Imz なので D+ は第 1 象限に写る。さらに w↦w2 は第 1 象限を H に全単射に写す。よって z↦(1−z1+z)2。
(3) u(z)=π2arg1−z1+z(arg は (0,2π) に値をとる)とおく。argw=ImLogw は右半平面で調和で、正則関数との合成なので u は調和。線分 (−1,1) 上では T(z)>0 で u=0。z=eiθ (0<θ<π) では
T(eiθ)=e−iθ/2−eiθ/2e−iθ/2+eiθ/2=icot2θ
は正の虚軸上にあり u=1。u=21 は argT(z)=4π、すなわち T(z) が半直線 {reiπ/4∣r>0} 上にあることと同値。T−1(w)=w+1w−1 は一次分数変換なので、この半直線の像は T−1(0)=−1, T−1(∞)=1, T−1(eiπ/4)=itan8π=i(2−1) を通る円弧である。中心を (0,c) とすると 1+c2=(2−1−c)2 より c=−1。よって {u=21} は円 ∣z+i∣=2 の D+ 内の部分である。
解説・発展
- 等角写像は、一次分数変換(円弧を直線に)・べき関数(角を開く)・指数関数(帯を角領域に)の組合せで作る。境界の各部分の行き先を図で確かめること。
- 有界な調和関数に限れば (3) の解は一意である(境界の 2 点での不連続を許すので、有界性の仮定が必要。証明には最大値原理の拡張を使う)。
問題 7 ★★(整関数の決定)
(1) 整関数 f がすべての z で ∣f(z)∣≤1+∣z∣3/2 を満たすならば、f(z)=az+b の形であることを示せ。
(2) 整関数 f の値域が円板 {∣w−1∣<1} と交わらないならば、f は定数であることを示せ。
(3) 単射な整関数は f(z)=az+b(a=0)の形に限ることを示せ。
使う知識:複素関数論 第3章(コーシーの評価式・リウヴィルの定理)、複素関数論 第4章(カゾラティ–ワイエルシュトラスの定理)
解答
(1) コーシーの評価式より、任意の R>0 で ∣f(n)(0)∣≤Rnn!max∣z∣=R∣f∣≤Rnn!(1+R3/2)。n≥2 なら R→∞ で右辺 →0 なので f(n)(0)=0。テイラー展開より f(z)=f(0)+f′(0)z。
(2) g=f−11 は整関数で(f=1)、仮定 ∣f−1∣≥1 より ∣g∣≤1。リウヴィルの定理より g は定数、よって f も定数。
(3) f が多項式でなければ、f(1/z) は z=0 に真性特異点をもつ。カゾラティ–ワイエルシュトラスの定理より f({∣z∣>1}) は C で稠密。一方、開写像定理より f({∣z∣<1}) は空でない開集合なので、両者は交わり、単射性に反する。よって f は多項式。単射な正則関数は導関数が零点をもたない(f′(z0)=0 なら f−f(z0) は z0 に 2 位以上の零点をもち、z0 の近くで f は 2 対 1 以上になる)。f′ は零点のない多項式なので定数で、f(z)=az+b、単射より a=0。
解説・発展
- (1) の一般形:∣f(z)∣≤C(1+∣z∣s) なら f は ⌊s⌋ 次以下の多項式。(2) はピカールの小定理(値を 2 つ以上除外する整関数は定数)の特別な場合である。
問題 8 ★★(一致の定理と有理型関数)
(1) D 上の正則関数 f で、すべての n≥2 について f(n1)=2n+11 を満たすものをすべて求めよ。
(2) D 上の正則関数 f で、すべての n≥2 について f(n1)=n(−1)n を満たすものは存在しないことを示せ。
(3) リーマン球面 C^=C∪{∞} 上の有理型関数は有理関数であることを示せ。
使う知識:複素関数論 第3章(一致の定理)、複素関数論 第4章(ローラン展開・主要部)
解答
(1) f0(z)=2+zz は D で正則で、f0(n1)=2+1/n1/n=2n+11。条件を満たす f は f−f0 が {n1} 上で 0 で、この集合は D 内の点 0 に集積するので、一致の定理より f=f0。答えは f(z)=2+zz のみ。
(2) そのような f があれば、偶数 n について f(n1)=n1 で {2k1} は 0 に集積するので、一致の定理より f(z)=z。同様に奇数 n から f(z)=−z。矛盾。
(3) f を C^ 上の有理型関数とする(f≡∞ は除く)。極は孤立しているので、コンパクトな C^ に有限個しかない。C 内の極 a1,…,ak における主要部を Pj(z)=∑m=1mjcj,m(z−aj)−m、∞ における主要部(f(1/w) の w=0 での主要部を z=1/w で書き直した多項式)を Q(z) とする。g=f−∑jPj−Q は C^ 全体で正則(特異点はすべて除去可能)なので、有界な整関数としてリウヴィルの定理により定数。よって f は有理関数である。
解説・発展
- (1) のような問題では、まず候補を見つけ(2n+11=2+1/n1/n と書き直す)、一致の定理で一意性を言う。集積点が定義域の内部にあることの確認を忘れないこと(集積点が境界上なら一致の定理は使えない)。
問題 9 ★★(留数による級数の和)
(1) πcotπz は各整数 n で 1 位の極をもち留数は 1 であることを示せ。また、N∈N に対し (N+21)(±1±i) を頂点とする正方形の周 CN 上で ∣cotπz∣≤coth2π を示せ。
(2) a>0 に対し n=1∑∞n2+a21=2a2πacothπa−1 を示せ。
(3) (2) で a→+0 として n=1∑∞n21=6π2 を導け。
使う知識:複素関数論 第5章(留数定理)、複素関数論 第7章
解答
(1) sinπz は整数 n で 1 位の零点をもち、(sinπz)′∣z=n=πcosπn=0。よって Resz=nπcotπz=πcosπnπcosπn=1。CN の縦の辺 x=±(N+21) 上では cot(π(N+21)+iπy)=−tan(iπy)=−itanhπy で絶対値 ≤1。横の辺 ∣y∣=N+21 上では
∣cotπz∣=eiπz−e−iπzeiπz+e−iπz≤eπ∣y∣−e−π∣y∣eπ∣y∣+e−π∣y∣=cothπ∣y∣≤coth2π
coth2π≥1 なので、CN 全体で ∣cotπz∣≤coth2π。
(2) F(z)=z2+a2πcotπz の極は整数 n(留数 n2+a21)と ±ia。cot(±iπa)=∓icothπa より Res±iaF=±2iaπ(∓icothπa)=−2aπcothπa。N>a のとき留数定理より
2πi1∮CNFdz=∣n∣≤N∑n2+a21−aπcothπa
CN 上 ∣z∣≥N+21 なので ∣F∣≤(N+21)2−a2πcoth(π/2)、周の長さは 8(N+21) で、左辺 →0。よって ∑n∈Zn2+a21=aπcothπa で、n=0 の項 a21 を除いて 2 で割れば結論を得る。
(3) 左辺は 0<a≤1 で n21 を優級数とする一様収束級数なので、a→0 で ∑n21 に収束する。右辺は xcothx=1+3x2+O(x4) より 2a2(πa)2/3+O(a4)→6π2。
解説・発展
- πcotπz は「整数点に留数 1 の極をもつ」関数で、∑f(n) を f の極での留数に変換する。交代級数 ∑(−1)nf(n) には sinπzπ(留数 (−1)n)を使う。同様にして ∑n≥1n2+a2(−1)n=2a2πa/sinhπa−1。 評価には、CN が整数点から一様に離れていることが効いている。
問題 10 ★★★(整関数の関数方程式)
(1) 整関数 f,g が f2+g2=1 を満たすならば、ある整関数 h で f=cosh, g=sinh と書けることを示せ。
(2) f(z)2=1+z2 を満たす整関数 f は存在しないことを示せ。
(3) 整関数 f が f(z+1)=f(z) と ∣f(z)∣≤Ce2π∣Imz∣(C は定数)を満たすならば、定数 a,b,c で f(z)=a+be2πiz+ce−2πiz と書けることを示せ。
使う知識:複素関数論 第2章(単連結領域での対数の存在)、複素関数論 第4章(ローラン展開)
解答
(1) (f+ig)(f−ig)=f2+g2=1 より f+ig は零点をもたない整関数。C は単連結なので、整関数 k で f+ig=ek となるものがある(k′=(f+ig)′/(f+ig) の原始関数をとり定数を調整)。h=−ik とおくと f+ig=eih, f−ig=e−ih。よって f=2eih+e−ih=cosh, g=2ieih−e−ih=sinh。
(2) 1+z2 は z=i に 1 位の零点をもつが、f(i)=0 なら f2 の i での零点の位数は偶数である。矛盾。
(3) w=e2πiz は C→C× の全射で、e2πiz=e2πiz′⇔z−z′∈Z。f の周期性から F(e2πiz)=f(z) で F:C×→C が定まり、局所的に z=2πi1logw と正則に書けるので F は正則。ローラン展開 F(w)=∑n∈Zcnwn の係数は ∣cn∣≤r−nmax∣w∣=r∣F∣ を満たす。∣w∣=e−2πImz だから仮定は ∣F(w)∣≤Cmax{r,r−1}(∣w∣=r)を意味する。n≥2 なら r→∞ で ∣cn∣≤Cr1−n→0、n≤−2 なら r→0 で ∣cn∣≤Cr−n−1→0。よって F(w)=c0+c1w+c−1w−1。
解説・発展
- (1) の鍵は「零点のない関数は単連結領域で e(⋅) の形」という事実。C∖{0} のような単連結でない領域では成り立たない(z 自身に対数がない)。
- (3) は「周期関数はフーリエ級数に展開でき、増大度が係数の範囲を決める」という原理の例である。
問題 11 ★★★(有限ブラシュケ積)
f は D で正則、D で連続で、∣z∣=1 上で ∣f(z)∣=1 を満たすとする。
(1) f が D に零点をもたなければ、f は絶対値 1 の定数であることを示せ。
(2) f の D 内の零点は有限個であり、それらを重複度込みで a1,…,an とすると、ある θ∈R で次が成り立つことを示せ。
f(z)=eiθk=1∏n1−akzz−ak
(3) さらに f が D 上で単射ならば、f は D の自己同型であることを示せ。
使う知識:複素関数論 第3章(最大値原理・一致の定理)、複素関数論 第6章
解答
(1) 最大値原理より D 上 ∣f∣≤1。f は境界にも零点をもたないので 1/f も D で正則、D で連続で、境界で絶対値 1。再び最大値原理より ∣1/f∣≤1。よって ∣f∣≡1 で、開写像定理(または最大値原理)により f は定数である。
(2) f≡0 なので零点は D 内に集積しない。また ∣f∣ は D で一様連続で境界で 1 なので、ある r<1 に対し r<∣z∣<1 で ∣f∣>21。零点はコンパクト集合 {∣z∣≤r} に含まれ、有限個である。B(z)=∏k1−akzz−ak は D の近傍で正則で、各因子は ∣z∣=1 上で絶対値 1(∣z−a∣=∣z∣∣z−a∣=∣1−az∣)。f/B は零点が相殺されて D で正則かつ零点をもたず、D で連続、境界で絶対値 1。(1) より f/B=eiθ。
(3) (1) より f が定数なら単射でないので、f は零点をもつ。単射なら零点はただ一つで単純(2 位以上の零点の近くでは 2 対 1 以上)なので、n=1 で f(z)=eiθ1−azz−a。これは D の自己同型である。
解説・発展
- この条件は f が D から D への固有写像であることを意味し、そのような正則写像はちょうど有限ブラシュケ積(n 対 1 の分岐被覆)である。