この章の目標
- 留数を計算でき、留数定理を証明できる
- 実積分と級数の和を、積分路の取り方と評価を含めて留数で計算できる
- 偏角の原理とルーシェの定理を証明し、零点の個数を数えられる
- 開写像定理、逆関数の正則性、フルヴィッツの定理を証明できる
前提:第2章、第4章
5.1 留数
ローラン展開 ∑cn(z−a)n を円に沿って積分すると、例 2.3 により c−1(z−a)−1 の項だけが残る。
定義 5.1(留数, residue)a を f の孤立特異点とし、D∗(a,r) でのローラン展開を f(z)=∑n∈Zcn(z−a)n とする。c−1 を f の a における留数といい、Res(f,a) と書く。定理 4.2 より Res(f,a)=2πi1∫C(a,ρ)f(z) dz(0<ρ<r)である。
命題 5.2(留数の計算法)
- a が高々位数 m の極ならば Res(f,a)=(m−1)!1z→alimdzm−1dm−1[(z−a)mf(z)]。特に m=1 なら Res(f,a)=limz→a(z−a)f(z)。
- g,h が a の近くで正則で h(a)=0, h′(a)=0 ならば Res(g/h,a)=g(a)/h′(a)。
証明. 1. (z−a)mf(z)=∑k≥0ck−m(z−a)k は a の近くで正則で、c−1 はその (z−a)m−1 の係数である(系 1.24)。2. h=(z−a)h1、h1(a)=h′(a)=0 と書けるので、a は高々単純極で (z−a)g/h=g/h1→g(a)/h′(a)。□
例 5.3
- Res(ez/z3,0)=1/2(ez の z2 の係数)。
- a4=−1 なら Res(1/(z4+1),a)=4a31=4a4a=−4a。
- Res(πcotπz,n)=πcosπnπcosπn=1(n∈Z)。
- 真性特異点では展開から読みとる。Res(e1/z,0)=1。
5.2 留数定理
定理 5.4(留数定理, residue theorem)U を開集合、a1,…,am∈U を相異なる点とし、f は U∖{a1,…,am} で正則とする。γ が U∖{a1,…,am} 内の閉曲線で、U において 0 にホモトープならば
∫γf(z)dz=2πij=1∑mn(γ,aj)Res(f,aj)
が成り立つ。
証明. Sj(z)=∑n≥1c−n(j)(z−aj)−n を aj における主要部とする。定義 4.3 の後で注意したとおり、Sj は C∖{aj} で広義一様収束し、そこで正則である。g=f−∑jSj の各 ak は除去可能特異点である(f−Sk は正則部分に等しく、Sj(j=k)は ak で正則)。よって g は U で正則に拡張され、系 2.25 より ∫γg dz=0。一方 Sj は γ∗ 上で一様収束するので項別積分でき(命題 2.6)、n≥2 なら (z−aj)−n は C∖{aj} で原始関数をもつから積分は 0(定理 2.8)、n=1 の項の積分は 2πi n(γ,aj)c−1(j) である。したがって ∫γf=∑j∫γSj=2πi∑jn(γ,aj)Res(f,aj)。□
5.3 実積分と級数への応用
余分な積分路上の積分の評価を省くと誤った値が出うるので、必ず評価する。以下 CR+ は上半円 Reit(0≤t≤π)を表す。
有理関数
命題 5.6 多項式 P,Q が degQ≥degP+2 を満たし、Q が実根をもたなければ
∫−∞∞Q(x)P(x)dx=2πiIma>0∑Res(QP,a)
である(和は上半平面にある Q の根についてとる)。
証明. 次数の条件から、∣z∣≥R0 で ∣P(z)/Q(z)∣≤C/∣z∣2 となる定数 C,R0 がある。よって左辺は絶対収束し、limR→∞∫−RR に等しい。R≥R0 を Q の根の絶対値より大きくとり、上半円板の周 γR=[−R,R]+CR+ に留数定理(U=C)を適用すると、∫−RRP/Q dx+∫CR+P/Q dz は右辺に等しい。ML 不等式より ∫CR+P/Q dz≤πR⋅C/R2→0。□
例 5.7 ∫−∞∞x4+1dx=2π。上半平面の根は eiπ/4,e3iπ/4 で、例 5.3 より留数の和は −41(eiπ/4+e3iπ/4)=−4i2、2πi 倍して π/2。検算:問題 5.3(n=4)の値の 2 倍と一致する。
三角関数の有理式
R(x,y) を有理関数とする。z=eiθ とおけば、線積分の定義より(単位円周上に分母の零点がなければ)
∫02πR(cosθ,sinθ)dθ=∫C(0,1)R(2z+z−1,2iz−z−1)izdz
であり、右辺は単位円板内の留数で計算できる(dθ=dz/(iz))。
例 5.8 a>1 のとき ∫02πa+cosθdθ=a2−12π。積分は ∫C(0,1)i(z2+2az+1)2 dz になる。根 α=−a+a2−1, β=−a−a2−1 は αβ=1, ∣β∣>1 より ∣α∣<1。Resz=α=i(α−β)2=ia2−11 を 2πi 倍すればよい。検算:a→∞ で値 ≈2π/a となり合う。
フーリエ型積分とジョルダンの補題
∫g(x)eiλx dx で g が 1/x 程度にしか減衰しないとき、上半円上の積分は ML 不等式では評価できない。
補題 5.9(ジョルダンの補題, Jordan's lemma)R>0 について ∫0πe−Rsint dt<π/R である。したがって、g が {Imz≥0,∣z∣≥R0} で連続で M(R)=max0≤t≤π∣g(Reit)∣→0 ならば、λ>0 について limR→∞∫CR+g(z)eiλz dz=0 である。
証明. sin は [0,π/2] で上に凸なので sint≥2t/π であり、t↦π−t の対称性から
∫0πe−Rsintdt=2∫0π/2e−Rsintdt≤2∫0π/2e−2Rt/πdt=Rπ(1−e−R)<Rπ
である。z=Reit で ∣eiλz∣=e−λRsint だから、積分の絶対値は ∫0πM(R)e−λRsintR dt<πM(R)/λ→0。□
例 5.10 a>0 のとき ∫0∞x2+a2xsinx dx=2πe−a。f(z)=z2+a2zeiz を γR=[−R,R]+CR+(R>a)上で積分する。内部の極は ia だけで Res(f,ia)=2iaiae−a=2e−a だから
∫−RRx2+a2xeixdx+∫CR+f(z)dz=πie−a
である。M(R)≤R/(R2−a2)→0 だから、第 2 項はジョルダンの補題により 0 に収束する(ML 不等式では πR2/(R2−a2)→π としか評価できない)。虚部をとり、偶関数であることを使うと limR→∞2∫0Rx2+a2xsinxdx=πe−a で、これは(絶対収束しない)広義積分の定義そのものである。検算:実部は奇関数の積分で 0 となり合う。
実軸上の単純極は小さな半円で避ける。
補題 5.11 a を f の単純極、Cε(t)=a+εeit(θ1≤t≤θ2)とすると、limε→+0∫Cεf dz=i(θ2−θ1)Res(f,a) である。
証明. f=z−ac+h(c=Res(f,a)、h は正則で ∣h∣≤K)と書くと、∫Cεz−ac dz=∫θ1θ2ic dt=ic(θ2−θ1)、∫Cεh dz≤Kε(θ2−θ1)→0。□
例 5.12(ディリクレ積分)∫0∞xsinx dx=2π。f(z)=eiz/z と閉曲線 γ=[−R,−ε]+σε+[ε,R]+CR+ をとる。σε は −ε から ε へ上半平面を通る半径 ε の半円(時計回り)である。γ は f が正則な領域 U=C∖{iy∣y≤0}(i に関して星型)に含まれるので ∫γf=0(定理 2.16)。実軸上の積分の和は ∫εRxeix−e−ixdx=2i∫εRxsinxdx である。補題 5.11 より(時計回りなので符号が変わり)∫σεf→−iπ、ジョルダンの補題(g=1/z)より ∫CR+f→0。よって 2i∫εRxsinxdx→iπ である。
分岐をもつ関数
例 5.13 0<a<1 のとき ∫0∞1+xxa−1 dx=sinπaπ。
積分は収束する(0 の近くで xa−1、∞ の近くで xa−2 程度)。−1 に関して星型な Ω=C∖[0,∞) 上で logz=log∣z∣+iargz(0<argz<2π)と定めると、これは Log(−z)+iπ に等しく正則である。f(z)=za−1/(1+z)(za−1=e(a−1)logz)は Ω∖{−1} で正則で Res(f,−1)=e(a−1)iπ=−eiπa である。
0<ε<1<R と小さな δ>0 に対し、鍵穴型の積分路 Γδ⊂Ω を次の 4 つをつないで作る:線分 L1:εeiδ→Reiδ、半径 R の円の偏角 δ から 2π−δ までの弧、線分 L2:Re−iδ→εe−iδ、半径 ε の円を偏角 2π−δ から δ まで逆にたどる弧。δ→0 のとき n(Γδ,−1)=2πi1∫Γδz+1dz は、線分の寄与が打ち消し合って n(C(0,R),−1)−n(C(0,ε),−1)=1 に収束し、整数値なので小さな δ では 1 である。留数定理(U=Ω)より ∫Γδf=−2πieiπa。
L1 上では z=teiδ, za−1=ta−1ei(a−1)δ、L2 上では z=tei(2π−δ), za−1=ta−1ei(a−1)(2π−δ) である。δ→0 で被積分関数は [ε,R] 上一様収束するので、Iε,R=∫εR1+tta−1dt として
∫L1f→Iε,R,∫L2f→−e2πi(a−1)Iε,R=−e2πiaIε,R
である。弧の上では ∣f∣≤Ra−1/(R−1) および ∣f∣≤εa−1/(1−ε) だから、2 つの弧の積分の和の絶対値は δ によらず B=R−12πRa+1−ε2πεa 以下である。δ→0 として (1−e2πia)Iε,R+2πieiπa≤B を得る。0<a<1 より ε→0, R→∞ で B→0 だから
∫0∞1+xxa−1dx=1−e2πia−2πieiπa=eiπa−e−iπa2πi=sinπaπ
である。検算:a=1/2 なら x=u2 として ∫0∞1+u22 du=π で一致する。この積分は第7章でガンマ関数の相補公式と結びつく。
例 5.14 ∫0∞(1+x2)2logx dx=−4π。
U=C∖{iy∣y≤0} 上で logz=log∣z∣+iargz(−π/2<argz<3π/2)と定める(=Log(−iz)+iπ/2 で正則)。f(z)=logz/(1+z2)2 を、例 5.12 と同じ閉曲線 γ=[ε,R]+CR++[−R,−ε]+σε(0<ε<1<R)上で積分する。γ 上の積分は、半径 R の上半円板の周上の積分から半径 ε の上半円板の周上の積分を引いたものに等しい([−ε,ε] の寄与が消える)ので、n(γ,i)=1−0=1 である。命題 5.2(m=2)と logi=iπ/2 より
Res(f,i)=[z(z+i)21−(z+i)32logz]z=i=−4i1−−8iiπ=4i+8π
である。負の実軸上では x=−t として logx=logt+iπ だから、実軸上の 2 つの積分の和は 2∫εR(1+t2)2logtdt+iπ∫εR(1+t2)2dt である。弧の上では偏角が [0,π] にあるので
∫CR+f≤πR(R2−1)2logR+π→0,∫σεf≤πε(1−ε2)2∣logε∣+π→0
である。極限をとると
2∫0∞(1+t2)2logtdt+iπ∫0∞(1+t2)2dt=2πi(4i+8π)=−2π+4π2i
で、実部から結論を得る。検算:虚部から ∫0∞(1+t2)2dt=4π が出るが、これは t=tanθ による ∫0π/2cos2θ dθ=4π と一致する。
級数の和
πcotπz は各整数で留数 1 の単純極をもつので、これを掛けて積分すると整数点での値の和が現れる。
補題 5.15 頂点 ±(N+21)±(N+21)i(N∈N)の正方形の周を ∂QN(反時計回り)とすると、∂QN 上で ∣cotπz∣≤coth(π/2) である。
証明. z=x+iy とすると cotπz=ie2πiz−1e2πiz+1、∣e2πiz∣=e−2πy である。横の辺(∣y∣=N+21)では、y>0 なら ∣cotπz∣≤1−e−2πy1+e−2πy=cothπy≤coth2π(y<0 も同様)。縦の辺では e2πix=−1 より ∣cotπz∣=1+e−2πy∣1−e−2πy∣<1。□
例 5.16 n=1∑∞n21=6π2。f(z)=πcotπz/z2 の留数は、n=0 では 1/n2 である。0 では、問題 4.3 の sinw1=w1+6w+⋯ より cotw=(1−2w2+⋯)(w1+6w+⋯)=w1−3w+⋯ なので、πcotπz=z1−3π2z+⋯ で留数は −π2/3 である。∂QN は凸集合の境界で内部の極は ∣n∣≤N の整数だから(U=D(0,2N+2))
2πi1∫∂QNfdz=−3π2+2n=1∑Nn21
である。∂QN 上で ∣z∣≥N+21 と補題 5.15 より、左辺の絶対値は 2π1⋅8(N+21)⋅(N+1/2)2πcoth(π/2)→0。よって ∑1/n2=π2/6 である。同じ方法を問題 5.5 や第7章の πcotπz の部分分数展開でも使う。
5.4 偏角の原理とルーシェの定理
定理 5.17(偏角の原理, argument principle)f を開集合 U 上の有理型関数とし、U 内の零点と極は有限個で、重複度を込めて零点を a1,…,ak、極を b1,…,bl とする。γ がこれらを通らない U 内の閉曲線で、U において 0 にホモトープならば
2πi1∫γf(z)f′(z)dz=j=1∑kn(γ,aj)−j=1∑ln(γ,bj)
である。
証明. 零点または極 c で m=ordcf とすると f=(z−c)mg(g(c)=0)で ff′=z−cm+gg′、g′/g は c の近くで正則である。よって Res(f′/f,c)=m で、他の点では f′/f は正則だから、留数定理から結論を得る。□
特に f が D(a,r) を含む開集合で正則で C(a,r) 上に零点をもたなければ、D(a,r) 内の零点の個数は 2πi1∫C(a,r)ff′ dz である(少し大きな円板で定理を使う)。左辺は 2πi1∫f∘γwdw=n(f∘γ,0)、すなわち γ に沿った argf の増加量の 1/2π 倍に等しい(命題 2.20)。これが名前の由来である。
定理 5.18(ルーシェの定理, Rouché's theorem)f,g を D(a,r) を含む開集合で正則とし、C(a,r) 上で ∣g(z)∣<∣f(z)∣ とする。このとき f と f+g は D(a,r) 内に重複度込みで同じ個数の零点をもつ。
証明. 0≤t≤1 について ht=f+tg は C(a,r) 上で ∣ht∣≥∣f∣−∣g∣>0 を満たす。その零点の個数 N(t)=2πi1∫C(a,r)f+tgf′+tg′ dz は整数値で、被積分関数はコンパクト集合 [0,1]×C(a,r) 上で連続(したがって一様連続)だから、N(t) は t について連続である。よって N は定数で、N(0)=N(1)。□
例 5.19 p(z)=z7−5z3+1 を考える。∣z∣=1 で ∣z7+1∣≤2<5=∣−5z3∣ だから、D 内の零点は 3 個。∣z∣=2 で ∣−5z3+1∣≤41<128=∣z7∣ だから D(0,2) 内に 7 個。∣z∣=1 上では ∣p∣≥5−2>0 なので、円環 1<∣z∣<2 に 4 個ある。
5.5 開写像定理と逆関数
定理 5.20(局所写像定理)f は a の近くで正則かつ定数でないとし、w0=f(a)、f−w0 の a での零点の位数を m とする。このとき ε,δ>0 があって、任意の w∈D∗(w0,δ) について f(z)=w は D(a,ε) 内にちょうど m 個の相異なる(単純な)解をもつ。
証明. f−w0 と f′ の零点は孤立するから、D(a,ε) が定義域に含まれ、0<∣z−a∣≤ε で f(z)=w0, f′(z)=0 となる ε がある。δ=min∣z−a∣=ε∣f(z)−w0∣>0 とする。∣w−w0∣<δ なら C(a,ε) 上で ∣w0−w∣<∣f−w0∣ だから、ルーシェの定理より f−w=(f−w0)+(w0−w) は D(a,ε) に m 個の零点をもつ。w=w0 ならそれらは a と異なり f′=0 だから単純で、相異なる。□
系 5.21(開写像定理, open mapping theorem)領域上の定数でない正則関数は開写像である。
証明. 一致の定理より f はどの点の近くでも定数でない。開集合 V と a∈V に対し、定理 5.20 の ε を D(a,ε)⊂V となるようにとれば D(f(a),δ)⊂f(V)。□
系 5.22(逆関数の正則性)f が開集合 U で正則かつ単射ならば、U 上で f′=0、V=f(U) は開集合で、f−1:V→U は正則、(f−1)′(w)=1/f′(f−1(w)) である。
証明. f′(a)=0 なら f−f(a) の零点の位数は 2 以上で、定理 5.20 より f は a の近くで単射でない。系 5.21 より V は開集合で、f が開写像なので f−1 は連続である。w→w1 のとき z=f−1(w)→z1=f−1(w1) だから、w−w1f−1(w)−f−1(w1)=f(z)−f(z1)z−z1→f′(z1)1。□
注意
実関数 x3 は単射だが x=0 で導関数が 0 になる。正則関数ではこれは起こらない。
5.6 フルヴィッツの定理
定理 5.23(フルヴィッツの定理, Hurwitz's theorem)領域 D 上の正則関数列 fn が f≡0 に広義一様収束するとする。D(a,r)⊂D で f が C(a,r) 上に零点をもたなければ、十分大きな n について fn と f は D(a,r) 内に重複度込みで同じ個数の零点をもつ。
証明. f は正則である(定理 3.25)。δ=minC(a,r)∣f∣>0 とすると、大きな n で C(a,r) 上 ∣fn−f∣<δ≤∣f∣ だから、ルーシェの定理を f と fn−f に適用すればよい。□
系 5.24 領域 D 上の正則関数列 fn が f に広義一様収束するとする。
- 各 fn が零点をもたなければ、f は零点をもたないか恒等的に 0 である。
- 各 fn が単射ならば、f は単射であるか定数である。
証明. 1. f≡0, f(a)=0 なら、C(a,r) 上に零点のない D(a,r)⊂D がとれ、定理 5.23 より大きな n で fn は零点をもつ。
- f が定数でなく、z1=z2 で f(z1)=f(z2)=w とする。f−w の零点は孤立するので、互いに交わらない閉円板 D(zk,r)⊂D(k=1,2)で周上に f−w の零点がないものがとれる。fn−w→f−w に定理 5.23 を適用すると、大きな n で fn−w は両方の円板に零点をもち、単射性に反する。□
この系は第6章のリーマンの写像定理で使う。
まとめ
- 留数(ローラン展開の (z−a)−1 の係数)は、極では微分や g(a)/h′(a) で計算できる。
- 留数定理 ∫γf dz=2πi∑n(γ,aj)Res(f,aj) は、主要部を引けば正則になることから従う。
- 実積分では、閉曲線の選択(半円・単位円・扇形・鍵穴・くぼみのある半円・正方形)と余分な部分の評価(ML 不等式、ジョルダンの補題、小半円の補題)が本質的である。分岐をもつ関数は切れ目を入れた星型領域で分枝を定めて扱う。
- 偏角の原理:2πi1∫γf′/f dz は(零点の個数)−(極の個数)。ルーシェの定理:円周上で ∣g∣<∣f∣ なら f と f+g の零点の個数は等しい。
- 開写像定理。単射な正則関数は f′=0 を満たし、逆関数も正則。
- フルヴィッツの定理:零点をもたない(単射な)正則関数の広義一様極限は、零点をもたない(単射)か定数である。
演習問題
問題 5.1 ★ 次の留数を求めよ。(1) Res((z−1)3z2,1) (2) Res(z2sinz1,0) (3) Res(z2e1/z,0) (4) Res(z2+π2ez,iπ)
解答
(1) z2=(z−1)2+2(z−1)+1 より (z−1)3z2=z−11+(z−1)22+(z−1)31 で、留数は 1。(2) 問題 4.3 より z2sinz1=z31+6z1+⋯ で、1/6。(3) z2e1/z=∑n≥0z2−n/n! の n=3 の項で、1/6。(4) 命題 5.2 より 2iπeiπ=2πi。
問題 5.2 ★ ∫02π5−4cosθcos2θ dθ=6π を示せ。
解答
J=∫02π5−4cosθe2iθdθ の虚部は θ↦2π−θ で符号を変えるので 0 であり、J が求める積分である。z=eiθ とすると 5−4cosθ=−(2z−1)(z−2)/z だから J=∫C(0,1)(2z−1)(z−2)iz2dz。内部の極 1/2 での留数は 2(1/2−2)i/4=−12i で、J=2πi⋅(−12i)=6π。検算:ポアソン核の展開 5−4cosθ1=31(1+2∑n≥12−ncosnθ) からも 61⋅π を得る。
問題 5.3 ★★ 整数 n≥2 について ∫0∞1+xndx=sin(π/n)π/n を示せ。
解答
ω=eiπ/n とし、中心角 2π/n の扇形の周 [0,R]、弧 Reit(0≤t≤2π/n)、線分 [Rω2,0] (凸集合の境界)で積分する(R>1)。内部にある 1+zn の零点は ω だけで、Res=nωn−11=−nω。弧上の積分は n(Rn−1)2πR→0。線分上は z=tω2、zn=tn で、積分は −ω2∫0R1+tndt。よって (1−ω2)I=−n2πiω、I=n(ω−ω−1)2πi=sin(π/n)π/n。検算:n=2 で π/2。t=xn と置換すれば例 5.13(a=1/n)の 1/n 倍に一致する。
問題 5.4 ★★ ∫0∞1+x2(logx)2 dx=8π3 を示せ。
解答
例 5.14 と同じ分枝・積分路で f=(logz)2/(1+z2) を積分する。Res(f,i)=2i(iπ/2)2=8iπ2 で、2πi 倍は −4π3。負の実軸上では (logt+iπ)2=(logt)2+2πilogt−π2。弧上の積分は πRR2−1(logR+π)2→0、πε1−ε2(∣logε∣+π)2→0 で抑えられる。極限をとると 2J+2πi∫0∞1+t2logtdt−π2⋅2π=−4π3 で、実部から J=8π3。検算:虚部から出る ∫0∞1+t2logtdt=0 は、t↦1/t で積分が符号を変えることと合う。
問題 5.5 ★★ a>0 について n=−∞∑∞n2+a21=aπcothπa を示し、a→+0 として ∑n≥11/n2=π2/6 を再び導け。
解答
f=z2+a2πcotπz を ∂QN(N>a)上で積分すると、補題 5.15 と ∣z2+a2∣≥(N+21)2−a2 より積分は 0 に収束する。整数 n での留数は n2+a21。cot(ix)=−icothx より、±ia での留数はともに ±2iaπcot(±iπa)=−2aπcothπa。よって等式を得る。次に 2∑n≥1n2+a21=aπcothπa−a21 で、cothx=x1+3x+O(x3) より右辺は 3π2 に、左辺は M 判定法により 2∑1/n2 に収束する。
問題 5.6 ★★ f は D を含む開集合で正則で、∣z∣=1 上で ∣f(z)∣<1 とする。f は D 内にちょうど 1 つの不動点をもつことを示せ。
解答
∣z∣=1 上で ∣f(z)∣<1=∣−z∣ だから、ルーシェの定理より −z+f(z) は D 内に −z と同じく 1 個の零点をもつ。
問題 5.7 ★★★ f は D(a,r) を含む開集合で正則で、D(a,r) 上で単射とする。w∈f(D(a,r)) に対し f−1(w)=2πi1∫C(a,r)f(ζ)−wζf′(ζ) dζ を示し、f−1 の正則性を導け。
解答
w=f(z0)、z0∈D(a,r) とする。D(a,r) 内の f−w の零点は z0 だけで、f′(z0)=0 より単純である。少し大きな円板で留数定理を使うと、右辺は Res(f−wζf′,z0)=z0 に等しい。右辺 Φ(w) は、補題 3.5 と同様に(f(ζ)−w1 を w1 のまわりで等比級数に展開して)開集合 C∖f(C(a,r)) 上で正則であり、f(D(a,r)) 上で f−1=Φ である。