Lemma数学ロードマップ

05 複素関数論 · 第 4 章

ローラン展開と孤立特異点

目安 8〜11 時間定理など 11演習 8 問

この章の目標

  • 円環領域で正則な関数が、負のべきを含むローラン級数にただ一通りに展開できることを証明する
  • 孤立特異点を除去可能特異点・極・真性特異点に分類し、関数の振る舞いで特徴づける(リーマンの定理、カゾラティ–ワイエルシュトラスの定理)
  • 無限遠点での振る舞いを調べ、リーマン球面上の有理型関数は有理関数に限ることを証明する

前提:第2章(回転数、ホモトピー形のコーシーの定理)、第3章

4.1 ローラン展開

正則関数は各点の近傍でテイラー展開できた(定理 3.7)が、1/z1/z や e1/ze^{1/z} のように 1 点 aa を除いた近傍でだけ正則な関数は、aa を中心にテイラー展開できない。そこで負のべき (z−a)−n(z - a)^{-n} も許す。たとえば 0<∣z∣<10 < \lvert z \rvert < 1 では

1z(1−z)=1z+1+z+z2+⋯\frac{1}{z(1 - z)} = \frac{1}{z} + 1 + z + z^2 + \cdots

であり、00 での「特異さ」は 1/z1/z の項に集約されている。以下、0≤r<R≤∞0 \leq r < R \leq \infty に対し円環 (annulus) を A(a;r,R)={z∣r<∣z−a∣<R}A(a; r, R) = \lbrace z \mid r < \lvert z - a \rvert < R \rbrace と書き、D∗(a,R)=A(a;0,R)D^{\ast}(a, R) = A(a; 0, R) を穴あき円板 (punctured disk) という。円 C(a,ρ)C(a, \rho) は反時計回りに 1 周する。

補題 4.1(円環におけるコーシーの積分公式)ff を円環 A=A(a;r,R)A = A(a; r, R) で正則とし、r<ρ1<ρ2<Rr < \rho_1 < \rho_2 < R とする。ρ1<∣z−a∣<ρ2\rho_1 < \lvert z - a \rvert < \rho_2 ならば

f(z)=12πi∫C(a,ρ2)f(ζ)ζ−z dζ−12πi∫C(a,ρ1)f(ζ)ζ−z dζf(z) = \frac{1}{2\pi i} \int_{C(a, \rho_2)} \frac{f(\zeta)}{\zeta - z}\,d\zeta - \frac{1}{2\pi i} \int_{C(a, \rho_1)} \frac{f(\zeta)}{\zeta - z}\,d\zeta

が成り立つ。

証明. zz を固定し、g(ζ)=(f(ζ)−f(z))/(ζ−z)g(\zeta) = \bigl(f(\zeta) - f(z)\bigr)/(\zeta - z)(ζ≠z\zeta \neq z)、g(z)=f′(z)g(z) = f'(z) とおく。gg は AA で連続、A∖{z}A \setminus \lbrace z \rbrace で正則だから、系 3.23 により AA で正則である。2 つの円 C(a,ρ1)C(a, \rho_1), C(a,ρ2)C(a, \rho_2) は AA においてホモトープなので(例 2.30)、∫C(a,ρ1)g dζ=∫C(a,ρ2)g dζ\int_{C(a, \rho_1)} g\ d\zeta = \int_{C(a, \rho_2)} g\ d\zeta である。一方、例 2.21 より n(C(a,ρ2),z)=1n(C(a, \rho_2), z) = 1, n(C(a,ρ1),z)=0n(C(a, \rho_1), z) = 0 だから

∫C(a,ρj)g(ζ) dζ=∫C(a,ρj)f(ζ)ζ−z dζ−2πi n(C(a,ρj),z)f(z)(j=1,2)\int_{C(a, \rho_j)} g(\zeta)\,d\zeta = \int_{C(a, \rho_j)} \frac{f(\zeta)}{\zeta - z}\,d\zeta - 2\pi i\,n(C(a, \rho_j), z) f(z) \qquad (j = 1, 2)

の j=1,2j = 1, 2 の値が等しいことを書き直せば主張を得る。□\square

定理 4.2(ローラン展開, Laurent expansion)ff を円環 A=A(a;r,R)A = A(a; r, R) で正則とする。n∈Zn \in \mathbb{Z} に対し

cn=12πi∫C(a,ρ)f(ζ)(ζ−a)n+1 dζ(r<ρ<R)c_n = \frac{1}{2\pi i} \int_{C(a, \rho)} \frac{f(\zeta)}{(\zeta - a)^{n+1}}\,d\zeta \qquad (r < \rho < R)

とおくと、cnc_n は ρ\rho によらず、AA の各点で

f(z)=∑n=−∞∞cn(z−a)n:=∑n=0∞cn(z−a)n+∑n=1∞c−n(z−a)−nf(z) = \sum_{n=-\infty}^{\infty} c_n (z - a)^n := \sum_{n=0}^{\infty} c_n (z - a)^n + \sum_{n=1}^{\infty} c_{-n} (z - a)^{-n}

が成り立つ。右辺の第 1 の級数は D(a,R)D(a, R) で、第 2 の級数は ∣z−a∣>r\lvert z - a \rvert > r で、それぞれ絶対収束かつ広義一様収束する。さらに展開は一意的である。すなわち AA の各点で f(z)=∑n∈Zbn(z−a)nf(z) = \sum_{n \in \mathbb{Z}} b_n (z - a)^n(正のべきの部分と負のべきの部分がそれぞれ収束する)ならば、すべての nn について bn=cnb_n = c_n である。

証明. 係数が ρ\rho によらないこと. ζ↦f(ζ)(ζ−a)−n−1\zeta \mapsto f(\zeta)(\zeta - a)^{-n-1} は AA で正則だから、例 2.30 による。

展開. z∈Az \in A を固定し、r<ρ1<∣z−a∣<ρ2<Rr < \rho_1 < \lvert z - a \rvert < \rho_2 < R となる ρ1,ρ2\rho_1, \rho_2 をとる。ζ∈C(a,ρ2)\zeta \in C(a, \rho_2) のとき q2=∣z−a∣/ρ2<1q_2 = \lvert z - a \rvert / \rho_2 < 1 で

1ζ−z=1(ζ−a)−(z−a)=∑n=0∞(z−a)n(ζ−a)n+1\frac{1}{\zeta - z} = \frac{1}{(\zeta - a) - (z - a)} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(z - a)^n}{(\zeta - a)^{n+1}}

であり、第 nn 項の絶対値は q2n/ρ2q_2^n/\rho_2 以下だから、この級数は ζ∈C(a,ρ2)\zeta \in C(a, \rho_2) について一様収束する。有界な f(ζ)f(\zeta) を掛けて項別積分すれば(命題 2.6)、補題 4.1 の第 1 項は ∑n≥0cn(z−a)n\sum_{n \geq 0} c_n (z - a)^n に等しい。同様に ζ∈C(a,ρ1)\zeta \in C(a, \rho_1) のとき q1=ρ1/∣z−a∣<1q_1 = \rho_1/\lvert z - a \rvert < 1 で

−1ζ−z=1(z−a)−(ζ−a)=∑m=0∞(ζ−a)m(z−a)m+1-\frac{1}{\zeta - z} = \frac{1}{(z - a) - (\zeta - a)} = \sum_{m=0}^{\infty} \frac{(\zeta - a)^m}{(z - a)^{m+1}}

が ζ\zeta について一様収束するから、補題 4.1 の第 2 項は

∑m=0∞(z−a)−m−1⋅12πi∫C(a,ρ1)f(ζ)(ζ−a)m dζ=∑n=1∞c−n(z−a)−n\sum_{m=0}^{\infty} (z - a)^{-m-1} \cdot \frac{1}{2\pi i} \int_{C(a, \rho_1)} f(\zeta) (\zeta - a)^{m}\,d\zeta = \sum_{n=1}^{\infty} c_{-n} (z - a)^{-n}

に等しい(n=m+1n = m + 1 とおいた)。補題 4.1 より展開式が成り立つ。

収束. べき級数 ∑n≥0cnwn\sum_{n \geq 0} c_n w^n は w=z−aw = z - a(z∈Az \in A)で収束するから、定理 1.22 より収束半径は sup⁡z∈A∣z−a∣=R\sup_{z \in A} \lvert z - a \rvert = R 以上である。同様に ∑n≥1c−nwn\sum_{n \geq 1} c_{-n} w^n は w=1/(z−a)w = 1/(z - a) で収束するから、収束半径は 1/r1/r 以上である(r=0r = 0 なら ∞\infty)。よって第 1 の級数は ∣z−a∣≤ρ<R\lvert z - a \rvert \leq \rho < R で、第 2 の級数は ∣z−a∣≥ρ>r\lvert z - a \rvert \geq \rho > r で絶対かつ一様に収束し、AA のコンパクト集合はこのような閉円環に含まれる。

一意性. f(z)=∑bn(z−a)nf(z) = \sum b_n (z - a)^n とすると、上と同じ理由で両方の部分は C(a,ρ)C(a, \rho) 上で一様収束する。k∈Zk \in \mathbb{Z} として (ζ−a)−k−1(\zeta - a)^{-k-1} を掛けて項別積分すると、例 2.3 より n=kn = k の項だけが残り

12πi∫C(a,ρ)f(ζ)(ζ−a)k+1 dζ=∑n∈Zbn⋅12πi∫C(a,ρ)(ζ−a)n−k−1 dζ=bk\frac{1}{2\pi i} \int_{C(a, \rho)} \frac{f(\zeta)}{(\zeta - a)^{k+1}}\,d\zeta = \sum_{n \in \mathbb{Z}} b_n \cdot \frac{1}{2\pi i} \int_{C(a, \rho)} (\zeta - a)^{n-k-1}\,d\zeta = b_k

となる。左辺は ckc_k である。□\square

定義 4.3(主要部)定理 4.2 の展開を ff の aa を中心とするローラン展開(ローラン級数)という。負のべきの部分 ∑n≥1c−n(z−a)−n\sum_{n \geq 1} c_{-n} (z - a)^{-n} を主要部 (principal part)、∑n≥0cn(z−a)n\sum_{n \geq 0} c_n (z - a)^n を正則部分という。

主要部は ∣z−a∣>r\lvert z - a \rvert > r で、正則部分は D(a,R)D(a, R) で正則な関数を表す。特に D∗(a,R)D^{\ast}(a, R) で正則な ff の主要部は、C∖{a}\mathbb{C} \setminus \lbrace a \rbrace 全体で広義一様収束する(第5章の留数定理の証明で使う)。実際の計算では一意性を使う。どんな方法でも、円環全体で収束する (z−a)(z - a) の整数べきの級数が得られれば、それがローラン展開である。

例 4.4(展開は円環による)f(z)=1z(z−1)=1z−1−1zf(z) = \dfrac{1}{z(z - 1)} = \dfrac{1}{z - 1} - \dfrac{1}{z} は 00 と 11 を除いて正則である。

  1. 0<∣z∣<10 < \lvert z \rvert < 1 では 1z−1=−∑n≥0zn\frac{1}{z - 1} = -\sum_{n \geq 0} z^n より f(z)=−1z−1−z−z2−⋯f(z) = -\frac{1}{z} - 1 - z - z^2 - \cdots。
  2. ∣z∣>1\lvert z \rvert > 1 では 1z−1=1z⋅11−1/z=∑n≥1z−n\frac{1}{z - 1} = \frac{1}{z} \cdot \frac{1}{1 - 1/z} = \sum_{n \geq 1} z^{-n} より f(z)=∑n≥2z−n=1z2+1z3+⋯f(z) = \sum_{n \geq 2} z^{-n} = \frac{1}{z^2} + \frac{1}{z^3} + \cdots。
  3. 11 を中心とする 0<∣z−1∣<10 < \lvert z - 1 \rvert < 1 では、w=z−1w = z - 1 として −1z=−11+w=−∑n≥0(−w)n-\frac{1}{z} = -\frac{1}{1 + w} = -\sum_{n \geq 0} (-w)^n より f(z)=1z−1−1+(z−1)−(z−1)2+⋯f(z) = \frac{1}{z - 1} - 1 + (z - 1) - (z - 1)^2 + \cdots。

同じ中心でも円環が違えば展開は異なる。一意性は「円環を決めれば」の意味である。

例 4.5

  1. e1/z=∑n=0∞1n!z−ne^{1/z} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{1}{n!} z^{-n}(0<∣z∣0 < \lvert z \rvert)。主要部は無限個の項をもつ。
  2. sin⁡zz3=∑k=0∞(−1)kz2k−2(2k+1)!=1z2−16+z2120−⋯\dfrac{\sin z}{z^3} = \sum_{k=0}^{\infty} \dfrac{(-1)^k z^{2k-2}}{(2k+1)!} = \dfrac{1}{z^2} - \dfrac{1}{6} + \dfrac{z^2}{120} - \cdots(0<∣z∣0 < \lvert z \rvert)。主要部は 1/z21/z^2 である。

注意 4.6(フーリエ級数との関係)ff が単位円周を含む円環で正則なら、f(eiθ)=∑ncneinθf(e^{i\theta}) = \sum_{n} c_n e^{in\theta}、cn=12π∫02πf(eiθ)e−inθ dθc_n = \frac{1}{2\pi} \int_0^{2\pi} f(e^{i\theta}) e^{-in\theta}\ d\theta であり、ローラン展開はフーリエ展開(微分方程式 第6章)の正則関数版である。係数が両方向に指数的に減衰することが、解析性を反映している。

4.2 孤立特異点の分類

定義 4.7(孤立特異点, isolated singularity)ff がある穴あき円板 D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) で正則なとき、aa を ff の孤立特異点という(ff は aa で定義されていなくても、定義されていてもよい)。D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) でのローラン展開を f(z)=∑n∈Zcn(z−a)nf(z) = \sum_{n \in \mathbb{Z}} c_n (z - a)^n とする。

  1. すべての n<0n < 0 について cn=0c_n = 0 のとき、aa を除去可能特異点 (removable singularity) という。
  2. ある m∈Nm \in \mathbb{N} について c−m≠0c_{-m} \neq 0 かつ n<−mn < -m なら cn=0c_n = 0 のとき、aa を位数 mm の極 (pole of order mm) という。位数 1 の極を単純極 (simple pole) という。
  3. cn≠0c_n \neq 0 となる n<0n < 0 が無限個あるとき、aa を真性特異点 (essential singularity) という。

係数は rr のとり方によらない(一意性)ので、分類は well-defined である。除去可能特異点では、f(a):=c0f(a) := c_0 と定めれば ff は D(a,r)D(a, r) 上のべき級数になり正則になる(定理 1.23)。逆に ff が D(a,r)D(a, r) で正則な関数に拡張できるなら、テイラー展開がローラン展開になるので、aa は除去可能である。

例 4.8

  1. sin⁡zz=1−z26+⋯\dfrac{\sin z}{z} = 1 - \dfrac{z^2}{6} + \cdots の 00 は除去可能特異点である。
  2. 1z2\dfrac{1}{z^2} と sin⁡zz3\dfrac{\sin z}{z^3}(例 4.5)の 00 は位数 2 の極、1z(z−1)\dfrac{1}{z(z - 1)} の 00 と 11 は単純極である(例 4.4)。
  3. e1/ze^{1/z} の 00 は真性特異点である(例 4.5)。

注意 4.9(孤立していない特異点)1/sin⁡(1/z)1/\sin(1/z) の極 1/(kπ)1/(k\pi) は 00 に集積するので、00 は孤立特異点ではない。Log⁡z\operatorname{Log} z や z\sqrt{z} の 00 も孤立特異点ではない(命題 1.33 により、D∗(0,r)D^{\ast}(0, r) 全体で正則な対数の分枝はない)。このような点は分岐点 (branch point) とよばれ、第7章の解析接続で再び現れる。

4.3 リーマンの除去可能特異点定理

実関数 sin⁡(1/x)\sin(1/x) は x≠0x \neq 0 で有界かつ滑らかだが、00 で連続にすら拡張できない。正則関数ではこうしたことは起こらない。

定理 4.10(リーマンの除去可能特異点定理, Riemann's removable singularity theorem)ff を D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) で正則とする。次は同値である。

  1. aa は ff の除去可能特異点である。
  2. ある 0<δ≤r0 < \delta \leq r について、ff は D∗(a,δ)D^{\ast}(a, \delta) で有界である。
  3. lim⁡z→a(z−a)f(z)=0\lim_{z \to a} (z - a) f(z) = 0。

証明. 1 ⇒ 2:拡張した ff は aa で連続なので、aa の近くで有界である。2 ⇒ 3:∣(z−a)f(z)∣≤M∣z−a∣→0\lvert (z - a) f(z) \rvert \leq M \lvert z - a \rvert \to 0。

3 ⇒ 1:n≥1n \geq 1 と 0<ρ<min⁡(r,1)0 < \rho < \min(r, 1) について、ML 不等式より

∣c−n∣=∣12πi∫C(a,ρ)f(ζ)(ζ−a)n−1 dζ∣≤2πρ2πmax⁡∣ζ−a∣=ρ∣f(ζ)∣ρn−1=ρn−1max⁡∣ζ−a∣=ρ∣(ζ−a)f(ζ)∣\lvert c_{-n} \rvert = \left\lvert \frac{1}{2\pi i} \int_{C(a, \rho)} f(\zeta) (\zeta - a)^{n-1}\,d\zeta \right\rvert \leq \frac{2\pi\rho}{2\pi} \max_{\lvert \zeta - a \rvert = \rho} \lvert f(\zeta) \rvert \rho^{n-1} = \rho^{n-1} \max_{\lvert \zeta - a \rvert = \rho} \lvert (\zeta - a) f(\zeta) \rvert

である。ρn−1≤1\rho^{n-1} \leq 1 であり、仮定 3 より右辺の最大値は ρ→0\rho \to 0 で 0 に収束する。よって c−n=0c_{-n} = 0 である。□\square

例 4.11 sin⁡(1/z)\sin(1/z) は実軸上では有界だが、y>0y > 0 について sin⁡(1/(iy))=−isinh⁡(1/y)\sin\bigl(1/(iy)\bigr) = -i\sinh(1/y) は y→+0y \to +0 で発散するので、00 の近くで有界でない。実際 sin⁡(1/z)=∑k≥0(−1)k(2k+1)!z−2k−1\sin(1/z) = \sum_{k \geq 0} \frac{(-1)^k}{(2k+1)!} z^{-2k-1} で、00 は真性特異点である。

4.4 極と位数

命題 4.12(極の特徴づけ)ff を D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) で正則とし、m∈Nm \in \mathbb{N} とする。次は同値である。

  1. aa は ff の位数 mm の極である。
  2. D(a,r)D(a, r) で正則な関数 gg で g(a)≠0g(a) \neq 0 かつ D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) 上で f(z)=(z−a)−mg(z)f(z) = (z - a)^{-m} g(z) となるものが存在する。
  3. ある δ>0\delta > 0 について D∗(a,δ)D^{\ast}(a, \delta) 上で f≠0f \neq 0 であり、1/f1/f の aa は除去可能特異点で、拡張した関数は aa に位数 mm の零点をもつ。

証明. 1 ⇒ 2:g(z):=(z−a)mf(z)=∑k≥0ck−m(z−a)kg(z) := (z - a)^m f(z) = \sum_{k \geq 0} c_{k-m} (z - a)^k は D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) で収束するべき級数なので D(a,r)D(a, r) で正則に拡張され、g(a)=c−m≠0g(a) = c_{-m} \neq 0。2 ⇒ 1:gg のテイラー展開を (z−a)m(z - a)^m で割ったものが ff のローラン展開であり(一意性)、最低次の係数は g(a)≠0g(a) \neq 0 である。2 ⇒ 3:D(a,δ)D(a, \delta) で g≠0g \neq 0 となる δ\delta をとれば 1/f=(z−a)m/g1/f = (z - a)^m/g。3 ⇒ 2:拡張した 1/f1/f は定理 3.15 より (z−a)mk(z)(z - a)^m k(z)、k(a)≠0k(a) \neq 0 と書け、kk は D(a,δ)D(a, \delta) で零点をもたない。g=(z−a)mfg = (z - a)^m f は D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) で正則で、D∗(a,δ)D^{\ast}(a, \delta) では 1/k1/k に等しいから、g(a)=1/k(a)≠0g(a) = 1/k(a) \neq 0 と定めれば D(a,r)D(a, r) で正則である。□\square

定理 4.13 aa を ff の孤立特異点とする。aa が ff の極であるための必要十分条件は lim⁡z→a∣f(z)∣=∞\lim_{z \to a} \lvert f(z) \rvert = \infty である。

証明. 極なら命題 4.12 の 2 より ∣f(z)∣=∣g(z)∣∣z−a∣−m→∞\lvert f(z) \rvert = \lvert g(z) \rvert \lvert z - a \rvert^{-m} \to \infty。逆に ∣f(z)∣→∞\lvert f(z) \rvert \to \infty なら、ある D∗(a,δ)D^{\ast}(a, \delta) で ∣f∣>1\lvert f \rvert > 1 で、h=1/fh = 1/f はそこで正則かつ ∣h∣<1\lvert h \rvert < 1 だから、定理 4.10 より除去可能で h(a)=0h(a) = 0 である。hh は D∗(a,δ)D^{\ast}(a, \delta) で 0 にならないので、定理 3.15 により aa は有限の位数 mm の零点であり、命題 4.12 の 3 より aa は位数 mm の極である。□\square

定理 4.10 と定理 4.13 から、孤立特異点の種類は z→az \to a での ∣f∣\lvert f \rvert の振る舞いで判定できる。

種類 z→az \to a での振る舞い
除去可能特異点 ff は aa の近くで有界
極 ∣f(z)∣→∞\lvert f(z) \rvert \to \infty
真性特異点 有界でも ∣f(z)∣→∞\lvert f(z) \rvert \to \infty でもない

定義 4.14(位数)aa が ff の除去可能特異点または極で、ff が aa のどんな穴あき近傍でも恒等的に 0 ではないとき、ff の aa での位数 ord⁡af\operatorname{ord}_a f を、除去した後の ff が aa に位数 m≥0m \geq 0 の零点をもつなら mm(f(a)≠0f(a) \neq 0 なら 00)、位数 mm の極なら −m-m と定める。

定理 3.15 と命題 4.12 より、k=ord⁡afk = \operatorname{ord}_a f とすると、aa の近くで f(z)=(z−a)kg(z)f(z) = (z - a)^k g(z)、gg は aa で正則かつ g(a)≠0g(a) \neq 0 と書ける。この表示から直ちに

ord⁡a(fg)=ord⁡af+ord⁡ag,ord⁡a(1/f)=−ord⁡af\operatorname{ord}_a (fg) = \operatorname{ord}_a f + \operatorname{ord}_a g, \qquad \operatorname{ord}_a (1/f) = -\operatorname{ord}_a f

がわかる。特に、gg が aa に位数 mm の零点をもてば、1/g1/g は aa に位数 mm の極をもつ。

例 4.15

  1. sin⁡z\sin z の零点は kπk\pi だけで(命題 1.28)、cos⁡kπ≠0\cos k\pi \neq 0 だから単純零点である。よって 1/sin⁡z1/\sin z は各 kπk\pi に単純極をもつ。
  2. 1−cos⁡z=z22−⋯1 - \cos z = \frac{z^2}{2} - \cdots だから、11−cos⁡z\dfrac{1}{1 - \cos z} の 00 は位数 2 の極である。
  3. zez−1\dfrac{z}{e^z - 1} の 00 は除去可能特異点で(ez−1=z(1+z/2+⋯ )e^z - 1 = z(1 + z/2 + \cdots))、除去した値は 1 である。2πik2\pi i k(k≠0k \neq 0)では分母が単純零点なので単純極である。
  4. ez−1z3\dfrac{e^z - 1}{z^3} の 00 では位数が 1−3=−21 - 3 = -2、すなわち位数 2 の極である。

4.5 真性特異点とカゾラティ–ワイエルシュトラスの定理

定理 4.16(カゾラティ–ワイエルシュトラスの定理, Casorati–Weierstrass theorem)aa を ff の真性特異点とし、ff は D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) で正則とする。このとき任意の 0<δ≤r0 < \delta \leq r について、像 f(D∗(a,δ))f\bigl(D^{\ast}(a, \delta)\bigr) は C\mathbb{C} で稠密である。

証明. 稠密でないとすると、w0∈Cw_0 \in \mathbb{C} と ε>0\varepsilon > 0 で、D∗(a,δ)D^{\ast}(a, \delta) 上 ∣f(z)−w0∣≥ε\lvert f(z) - w_0 \rvert \geq \varepsilon となるものがある。g=1/(f−w0)g = 1/(f - w_0) は D∗(a,δ)D^{\ast}(a, \delta) で正則かつ ∣g∣≤1/ε\lvert g \rvert \leq 1/\varepsilon だから、定理 4.10 より除去可能であり、0 にならないので恒等的に 0 ではない。

g(a)≠0g(a) \neq 0 なら f=w0+1/gf = w_0 + 1/g は aa で正則に拡張され、g(a)=0g(a) = 0 なら aa は gg の有限位数の零点だから f−w0=1/gf - w_0 = 1/g は aa に極をもつ。いずれも aa が真性特異点であることに矛盾する。□\square

例 4.17 w≠0w \neq 0 とする。Log⁡w\operatorname{Log} w の虚部は (−π,π](-\pi, \pi] にあるので、整数 k≠0k \neq 0 について Log⁡w+2πik≠0\operatorname{Log} w + 2\pi i k \neq 0 であり、zk=1/(Log⁡w+2πik)z_k = 1/(\operatorname{Log} w + 2\pi i k) は e1/zk=we^{1/z_k} = w、zk→0z_k \to 0 を満たす。よって e1/ze^{1/z} は 00 のどんな穴あき近傍でも 00 以外のすべての値を無限回とる(00 はとらない)。一般に次のことが知られている。

定理 4.18(ピカールの大定理, Picard's great theorem)aa を ff の真性特異点とする。このとき aa の任意の穴あき近傍において、ff は高々 1 つの例外を除くすべての複素数の値を無限回とる。

本書ではこの定理の証明を省略する(主張のみ)。証明には楕円モジュラー関数や、第6章の正規族の理論の精密化が必要である。例 4.17 のように、例外値は実際に現れうる。

注意 4.19(ピカールの小定理)定数でない整関数は、高々 1 つの値を除くすべての複素数を値にとる。多項式でない整関数 ff では f(1/z)f(1/z) の 00 が真性特異点なので(次節の命題 4.25)定理 4.18 が使え、多項式なら代数学の基本定理による。

4.6 有理型関数と無限遠点

定義 4.20(有理型関数, meromorphic function)開集合 UU 上の関数 ff が有理型であるとは、UU の中に集積点をもたない部分集合 P⊂UP \subset U があって、ff は U∖PU \setminus P で正則であり、PP の各点は ff の極であることをいう。

有理関数、tan⁡z\tan z、第7章のガンマ関数、第8章のゼータ関数は C\mathbb{C} 上の有理型関数である。e1/ze^{1/z} は C\mathbb{C} 上の有理型関数ではない。

命題 4.21 領域 DD 上の有理型関数の全体 M(D)\mathcal{M}(D) は、各点での和と積(除去可能特異点は除去する)について体をなす。

証明. f,gf, g の極の集合の和集合も DD の中に集積点をもたない。その点 aa の近くでは f=(z−a)−kuf = (z - a)^{-k} u, g=(z−a)−lvg = (z - a)^{-l} v(k,l≥0k, l \geq 0、u,vu, v は aa で正則)と書けるので、f±gf \pm g, fgfg は (z−a)−(k+l)×(z - a)^{-(k+l)} \times(aa で正則な関数)の形で、aa は除去可能特異点か極である。

f≢0f \not\equiv 0 とする。EE を、ff がその点のある穴あき近傍で恒等的に 0 となる点全体とすると、EE は開集合である。a∉Ea \notin E ならローラン展開に 0 でない係数があるので f=(z−a)kuf = (z - a)^k u(u(a)≠0u(a) \neq 0)と書け、aa のある穴あき近傍で f≠0f \neq 0 となるから、D∖ED \setminus E も開集合である。DD は連結で E≠DE \neq D だから E=∅E = \emptyset。よって各点で f=(z−a)kuf = (z - a)^k u(u(a)≠0u(a) \neq 0)と書け、1/f=(z−a)−k/u1/f = (z - a)^{-k}/u は各点で正則か極をもち、零点(1/f1/f の極)は集積しない。□\square

注意 4.22(リーマン球面への写像)有理型関数の極 aa で f(a)=∞f(a) = \infty と定めると、定理 4.13 より ff は UU から C^\hat{\mathbb{C}} への連続写像になる。有理型関数は「値 ∞\infty も許した正則関数」であり、この見方はリーマン面の理論で正確に定式化される(リーマン面と保型形式 第1章)。

次に、z=1/wz = 1/w という座標変換で無限遠点を 00 に移して調べる。

定義 4.23(無限遠点での振る舞い)ff がある R≥0R \geq 0 について ∣z∣>R\lvert z \rvert > R で正則なとき、∞\infty を ff の孤立特異点という。g(w)=f(1/w)g(w) = f(1/w) は D∗(0,1/R)D^{\ast}(0, 1/R) で正則であり(R=0R = 0 なら 1/R=∞1/R = \infty)、00 が gg の除去可能特異点・位数 mm の極・真性特異点であるとき、∞\infty はそれぞれ ff の除去可能特異点・位数 mm の極・真性特異点であるという。C\mathbb{C} 上の有理型関数 ff が、ある ∣z∣>R\lvert z \rvert > R で正則で、∞\infty が除去可能特異点または極であるとき、ff は C^\hat{\mathbb{C}} 上の有理型関数であるという。

∣z∣>R\lvert z \rvert > R でのローラン展開 f(z)=∑ncnznf(z) = \sum_{n} c_n z^n に対し g(w)=∑ncnw−ng(w) = \sum_n c_n w^{-n} だから、∞\infty が除去可能 ⇔\Leftrightarrow n>0n > 0 で cn=0c_n = 0、位数 mm の極 ⇔\Leftrightarrow cm≠0c_m \neq 0 かつ n>mn > m で cn=0c_n = 0、真性特異点 ⇔\Leftrightarrow cn≠0c_n \neq 0 となる n>0n > 0 が無限個、である。無限遠点では正のべきが主要部の役割を果たす。

例 4.24

  1. mm 次の多項式は ∞\infty に位数 mm の極をもつ。z2+1z−1=z+1+2z−1\dfrac{z^2 + 1}{z - 1} = z + 1 + \dfrac{2}{z - 1} は ∞\infty に単純極をもつ。
  2. 1/z1/z の ∞\infty は除去可能で、値は 00 である。eze^z、sin⁡z\sin z、cos⁡z\cos z は ∞\infty に真性特異点をもつ。

命題 4.25 ff を整関数とする。

  1. ∞\infty が ff の除去可能特異点であることと、ff が定数であることは同値である。
  2. ∞\infty が ff の位数 mm の極であることと、ff が mm 次の多項式であることは同値である。
  3. ff が多項式でなければ、∞\infty は ff の真性特異点である。

証明. 原点でのテイラー級数 ∑n≥0anzn\sum_{n \geq 0} a_n z^n は C\mathbb{C} 全体で収束するから(定理 3.7)、A(0;R,∞)A(0; R, \infty) でのローラン展開でもある。上の判定法から 1〜3 が従う。□\square

特に、多項式でない整関数 ff では、どんな R>0R > 0 についても f({∣z∣>R})f\bigl(\lbrace \lvert z \rvert > R \rbrace\bigr) は稠密である(定理 4.16)。また ∣f(z)∣→∞\lvert f(z) \rvert \to \infty(z→∞z \to \infty)となる整関数は、定理 4.13 より ∞\infty が極なので多項式である。

定理 4.26 C^\hat{\mathbb{C}} 上の有理型関数は有理関数である。

証明. ff は ∣z∣>R\lvert z \rvert > R で正則とする。C\mathbb{C} 内の極はコンパクト集合 D(0,R)‾\overline{D(0, R)} に含まれ、集積点をもたないから有限個である。それらを a1,…,aka_1, \dots, a_k とし、aja_j での主要部を

Pj(z)=∑l=1mjc−l(j)(z−aj)lP_j(z) = \sum_{l=1}^{m_j} \frac{c^{(j)}_{-l}}{(z - a_j)^l}

とする(極なので有限和)。また ∣z∣>R\lvert z \rvert > R でのローラン展開 f(z)=∑ncnznf(z) = \sum_n c_n z^n の正のべきの部分を P∞(z)=∑n=1mcnznP_\infty(z) = \sum_{n=1}^{m} c_n z^n とする(∞\infty が除去可能なら P∞=0P_\infty = 0)。

g=f−P∞−∑jPjg = f - P_\infty - \sum_{j} P_j とおく。aja_j の近くでは f−Pjf - P_j のローラン展開に負のべきはなく、他の項は aja_j で正則だから、gg は整関数に拡張される。∣z∣≥R+1\lvert z \rvert \geq R + 1 では ∣f−P∞∣=∣∑n≤0cnzn∣≤∑l≥0∣c−l∣(R+1)−l<∞\lvert f - P_\infty \rvert = \lvert \sum_{n \leq 0} c_n z^n \rvert \leq \sum_{l \geq 0} \lvert c_{-l} \rvert (R + 1)^{-l} < \infty(定理 4.2 の絶対収束)で、各 PjP_j も z→∞z \to \infty で 0 に収束するから、gg は有界である。リウヴィルの定理より gg は定数 cc であり

f(z)=c+P∞(z)+∑j=1kPj(z)f(z) = c + P_\infty(z) + \sum_{j=1}^{k} P_j(z)

は有理関数である。□\square

系 4.27(部分分数分解)有理関数 f=P/Qf = P/Q は、多項式と、QQ の各根 aja_j についての ∑lcjl(z−aj)−l\sum_{l} c_{jl}(z - a_j)^{-l} の形の和として、ただ一通りに表される。

証明. 存在は定理 4.26 の証明の式そのものである(有理関数は明らかに C^\hat{\mathbb{C}} 上の有理型関数)。一意性は、そのような表示の (z−aj)−l(z - a_j)^{-l} の部分が ff の aja_j での主要部に、多項式部分の非定数項が ∞\infty での主要部に一致しなければならないこと(ローラン展開の一意性)による。□\square

有理関数の積分で使った部分分数分解(微分積分学 第5章)は、こうして複素関数論から自然に導かれる。「コンパクトな C^\hat{\mathbb{C}} 上の有理型関数は有限個のデータ(極と主要部)で決まる」という定理 4.26 の現象は、コンパクトなリーマン面上のリーマン–ロッホの定理(リーマン面と保型形式 第5章)へとつながる。

まとめ

  • 円環 r<∣z−a∣<Rr < \lvert z - a \rvert < R で正則な関数は、ローラン級数 ∑n∈Zcn(z−a)n\sum_{n \in \mathbb{Z}} c_n (z - a)^n、cn=12πi∫C(a,ρ)f(ζ)(ζ−a)−n−1dζc_n = \frac{1}{2\pi i}\int_{C(a,\rho)} f(\zeta)(\zeta - a)^{-n-1} d\zeta に一意的に展開される。計算は一意性に基づいて既知の級数から行う。
  • 孤立特異点は、ローラン展開の負のべきが「ない・有限個・無限個」に応じて、除去可能特異点・極・真性特異点に分類される。
  • リーマンの定理:孤立特異点の近くで有界(あるいは (z−a)f(z)→0(z - a) f(z) \to 0)なら除去可能。
  • 位数 mm の極 ⇔\Leftrightarrow f=(z−a)−mgf = (z - a)^{-m} g(g(a)≠0g(a) \neq 0)⇔\Leftrightarrow 1/f1/f が位数 mm の零点をもつ。極であることは ∣f(z)∣→∞\lvert f(z) \rvert \to \infty と同値。
  • カゾラティ–ワイエルシュトラス:真性特異点の任意の穴あき近傍の像は稠密。ピカールの大定理(主張のみ):高々 1 つの例外値を除き、すべての値を無限回とる。
  • 有理型関数は極以外で正則な関数で、リーマン球面への連続写像とみなせる。
  • 無限遠点の特異点は w=1/zw = 1/z で調べる。整関数は、∞\infty が極なら多項式、そうでなければ(定数を除き)∞\infty は真性特異点。
  • リーマン球面上の有理型関数は有理関数であり、部分分数分解はこの定理から導かれる。

演習問題

問題 4.1 ★ f(z)=1(z−1)(z−2)f(z) = \dfrac{1}{(z - 1)(z - 2)} の、原点を中心とするローラン展開を、次の各領域で求めよ。(1) ∣z∣<1\lvert z \rvert < 1 (2) 1<∣z∣<21 < \lvert z \rvert < 2 (3) ∣z∣>2\lvert z \rvert > 2

解答

f(z)=1z−2−1z−1f(z) = \frac{1}{z - 2} - \frac{1}{z - 1} と分解する。∣z∣<2\lvert z \rvert < 2 では 1z−2=−12⋅11−z/2=−∑n≥0zn2n+1\frac{1}{z - 2} = -\frac{1}{2} \cdot \frac{1}{1 - z/2} = -\sum_{n \geq 0} \frac{z^n}{2^{n+1}}、∣z∣>2\lvert z \rvert > 2 では 1z−2=1z⋅11−2/z=∑n≥12n−1z−n\frac{1}{z - 2} = \frac{1}{z} \cdot \frac{1}{1 - 2/z} = \sum_{n \geq 1} 2^{n-1} z^{-n}。また ∣z∣<1\lvert z \rvert < 1 では −1z−1=∑n≥0zn-\frac{1}{z - 1} = \sum_{n \geq 0} z^n、∣z∣>1\lvert z \rvert > 1 では −1z−1=−∑n≥1z−n-\frac{1}{z - 1} = -\sum_{n \geq 1} z^{-n}。したがって

(1) f(z)=∑n≥0(1−2−n−1)znf(z) = \sum_{n \geq 0} \left(1 - 2^{-n-1}\right) z^n。

(2) f(z)=−∑n≥1z−n−∑n≥02−n−1znf(z) = -\sum_{n \geq 1} z^{-n} - \sum_{n \geq 0} 2^{-n-1} z^n。

(3) f(z)=∑n≥1(2n−1−1)z−n=1z2+3z3+7z4+⋯f(z) = \sum_{n \geq 1} (2^{n-1} - 1) z^{-n} = \frac{1}{z^2} + \frac{3}{z^3} + \frac{7}{z^4} + \cdots。

検算:(1) の定数項 1/21/2 は f(0)f(0) に等しく、(3) の初項 1/z21/z^2 は z→∞z \to \infty での f(z)≈1/z2f(z) \approx 1/z^2 と合う。

問題 4.2 ★ 次の関数の指定された点の特異点を分類し、極ならその位数を求めよ。(1) 1z2sin⁡z\dfrac{1}{z^2 \sin z}、z=0z = 0 (2) ez−1−zz2\dfrac{e^z - 1 - z}{z^2}、z=0z = 0 (3) cos⁡(1/z)\cos(1/z)、z=0z = 0 (4) 1(ez−1)2\dfrac{1}{(e^z - 1)^2}、z=2πikz = 2\pi i k(k∈Zk \in \mathbb{Z})

解答

(1) z2sin⁡z=z3(1−z2/6+⋯ )z^2 \sin z = z^3(1 - z^2/6 + \cdots) は 00 に位数 3 の零点をもつので、位数 3 の極。

(2) ez−1−z=z2/2+z3/6+⋯e^z - 1 - z = z^2/2 + z^3/6 + \cdots より ez−1−zz2=12+z6+⋯\frac{e^z - 1 - z}{z^2} = \frac{1}{2} + \frac{z}{6} + \cdots。除去可能特異点で、除去した値は 1/21/2。

(3) cos⁡(1/z)=∑k≥0(−1)k(2k)!z−2k\cos(1/z) = \sum_{k \geq 0} \frac{(-1)^k}{(2k)!} z^{-2k} は負のべきを無限個含むので、真性特異点。

(4) ez−1e^z - 1 は 2πik2\pi i k で 0 になり、導関数 e2πik=1≠0e^{2\pi i k} = 1 \neq 0 だから単純零点である。(ez−1)2(e^z - 1)^2 は位数 2 の零点をもち、1(ez−1)2\frac{1}{(e^z - 1)^2} は位数 2 の極をもつ。

問題 4.3 ★ 1sin⁡z\dfrac{1}{\sin z} の 00 を中心とするローラン展開を z3z^3 の項まで求めよ。また、その展開が成り立つ最大の穴あき円板を答えよ。

解答

sin⁡z=z(1−u)\sin z = z(1 - u)、u=z26−z4120+⋯u = \frac{z^2}{6} - \frac{z^4}{120} + \cdots と書くと

11−u=1+u+u2+⋯=1+z26+(136−1120)z4+⋯=1+z26+7z4360+⋯\frac{1}{1 - u} = 1 + u + u^2 + \cdots = 1 + \frac{z^2}{6} + \left(\frac{1}{36} - \frac{1}{120}\right) z^4 + \cdots = 1 + \frac{z^2}{6} + \frac{7 z^4}{360} + \cdots

だから 1sin⁡z=1z+z6+7z3360+⋯\frac{1}{\sin z} = \frac{1}{z} + \frac{z}{6} + \frac{7 z^3}{360} + \cdots。1/sin⁡z1/\sin z は 0<∣z∣<π0 < \lvert z \rvert < \pi で正則で ±π\pm\pi に極をもつから、展開が成り立つ最大の穴あき円板は D∗(0,π)D^{\ast}(0, \pi) である(定理 4.2)。

問題 4.4 ★★ ff を D∗(a,r)D^{\ast}(a, r) で正則とし、定数 C>0C > 0, α>0\alpha > 0 について ∣f(z)∣≤C∣z−a∣−α\lvert f(z) \rvert \leq C \lvert z - a \rvert^{-\alpha} が成り立つとする。aa は除去可能特異点か、位数 ⌊α⌋\lfloor \alpha \rfloor 以下の極であることを示せ。

解答

定理 4.10 の証明と同様に、0<ρ<r0 < \rho < r で ∣c−n∣≤ρnmax⁡∣ζ−a∣=ρ∣f(ζ)∣≤Cρn−α\lvert c_{-n} \rvert \leq \rho^{n} \max_{\lvert \zeta - a \rvert = \rho} \lvert f(\zeta) \rvert \leq C \rho^{n - \alpha} である。n>αn > \alpha なら ρ→0\rho \to 0 として c−n=0c_{-n} = 0。よって負のべきは n≤⌊α⌋n \leq \lfloor \alpha \rfloor に限られ、aa は除去可能特異点か位数 ⌊α⌋\lfloor \alpha \rfloor 以下の極である。

問題 4.5 ★★ aa を ff の孤立特異点とし、aa のある穴あき近傍で Re⁡f(z)≤M\operatorname{Re} f(z) \leq M が成り立つとする。aa は除去可能特異点であることを示せ。

解答

真性特異点なら、カゾラティ–ワイエルシュトラスの定理により像は稠密で、実部が MM より大きい値をとるから矛盾する。位数 mm の極とすると、命題 4.12 より f(z)=(z−a)−mg(z)f(z) = (z - a)^{-m} g(z)、g(a)=c≠0g(a) = c \neq 0 である。e−imθc=∣c∣e^{-im\theta} c = \lvert c \rvert となる θ\theta をとり z=a+teiθz = a + t e^{i\theta}(t>0t > 0)とすると、f(z)=t−me−imθg(a+teiθ)f(z) = t^{-m} e^{-im\theta} g(a + te^{i\theta}) で、t→+0t \to +0 のとき e−imθg(a+teiθ)→∣c∣>0e^{-im\theta} g(a + te^{i\theta}) \to \lvert c \rvert > 0 だから Re⁡f(z)→+∞\operatorname{Re} f(z) \to +\infty となり、やはり矛盾する。よって aa は除去可能特異点である。

問題 4.6 ★★ aa が ff の極ならば、aa は efe^{f} の真性特異点であることを示せ。

解答

問題 4.5 の解答と同様に、aa に近づく方向を選べば Re⁡f→+∞\operatorname{Re} f \to +\infty とも、(θ\theta を π/m\pi/m ずらして)Re⁡f→−∞\operatorname{Re} f \to -\infty ともできる。よって ∣ef∣=eRe⁡f\lvert e^{f} \rvert = e^{\operatorname{Re} f} は aa の近くで有界でなく、∞\infty にも収束しない。定理 4.10 と定理 4.13 により、aa は efe^f の真性特異点である。

問題 4.7 ★★ P,QP, Q を互いに素な多項式、p=deg⁡Pp = \deg P, q=deg⁡Qq = \deg Q とし、f=P/Qf = P/Q とする。C^\hat{\mathbb{C}} 上で重複度を込めて数えると、ff の零点の個数と極の個数はともに max⁡(p,q)\max(p, q) であることを示せ。

解答

P,QP, Q は共通の根をもたないので、C\mathbb{C} 内の零点は重複度込みで pp 個、極は qq 個である。∞\infty では f(z)=abzp−q(1+O(1/z))f(z) = \frac{a}{b} z^{p - q}(1 + O(1/z))(a,ba, b は最高次係数)だから、p>qp > q なら位数 p−qp - q の極、p<qp < q なら位数 q−pq - p の零点、p=qp = q なら零点でも極でもない。合計すると、零点は p+max⁡(q−p,0)=max⁡(p,q)p + \max(q - p, 0) = \max(p, q) 個、極は q+max⁡(p−q,0)=max⁡(p,q)q + \max(p - q, 0) = \max(p, q) 個である。この共通の値を有理関数の次数という。

問題 4.8 ★★★ ff を D∗(0,r)D^{\ast}(0, r) で正則とし、∬D∗(0,r)∣f(x+iy)∣2 dx dy<∞\iint_{D^{\ast}(0, r)} \lvert f(x + iy) \rvert^2\ dx\ dy < \infty とする。00 は除去可能特異点であることを示せ。(ヒント:円周上でパーセヴァルの等式を示す。)

解答

ローラン展開 f(z)=∑ncnznf(z) = \sum_n c_n z^n は円周 ∣z∣=ρ\lvert z \rvert = \rho(0<ρ<r0 < \rho < r)上で絶対かつ一様に収束する。∣f∣2=ffˉ=∑n,mcncˉmρn+mei(n−m)θ\lvert f \rvert^2 = f \bar{f} = \sum_{n, m} c_n \bar{c}_m \rho^{n+m} e^{i(n - m)\theta} も一様収束する二重級数なので項別積分でき、∫02πei(n−m)θdθ=2πδnm\int_0^{2\pi} e^{i(n-m)\theta} d\theta = 2\pi \delta_{nm} から

∫02π∣f(ρeiθ)∣2 dθ=2π∑n∈Z∣cn∣2ρ2n\int_0^{2\pi} \lvert f(\rho e^{i\theta}) \rvert^2\,d\theta = 2\pi \sum_{n \in \mathbb{Z}} \lvert c_n \rvert^2 \rho^{2n}

を得る。極座標で積分すると(非負項の級数なので和と積分は交換できる)

∬D∗(0,r)∣f∣2 dx dy=∫0r(2π∑n∣cn∣2ρ2n)ρ dρ=2π∑n∣cn∣2∫0rρ2n+1 dρ\iint_{D^{\ast}(0, r)} \lvert f \rvert^2\,dx\,dy = \int_0^r \left( 2\pi \sum_{n} \lvert c_n \rvert^2 \rho^{2n} \right) \rho\,d\rho = 2\pi \sum_{n} \lvert c_n \rvert^2 \int_0^r \rho^{2n+1}\,d\rho

である。n≤−1n \leq -1 なら ∫0rρ2n+1dρ=∞\int_0^r \rho^{2n+1} d\rho = \infty だから、左辺が有限なら n≤−1n \leq -1 で cn=0c_n = 0 であり、00 は除去可能特異点である。

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