この章の目標
- オイラー積を証明し、ゼータ関数が素数の情報をもつことを理解する
- ゼータ関数の Res>0 への解析接続と s=1 の極、関数等式(概略)と自明な零点を理解する
- Res=1 上でゼータ関数が零点をもたないことを証明する
- ニューマンの方法で素数定理 π(x)∼x/logx を証明する
- リーマン予想の主張と、それが素数の分布について意味することを説明できる
前提:第5章、第7章(無限積、ガンマ関数)、代数学 第1章(素因数分解の一意性)
本章では複素変数を s=σ+it(σ,t∈R)と書き、p は常に素数を表す。∑p, ∏p は素数全体にわたる和・積である。
8.1 リーマンゼータ関数とオイラー積
ζ(s)=∑n=1∞n−s は Res>1 で広義一様収束し、正則である(例 3.27)。この関数と素数を結びつけるのが次の定理である。
定理 8.1(オイラー積, Euler product)Res>1 で
ζ(s)=p∏1−p−s1
が成り立ち、積は広義一様収束する。特に Res>1 で ζ(s)=0 である。
証明. x≥2 とする。有限個の絶対収束級数 1−p−s1=∑k≥0p−ks の積を展開すると、素因数分解の一意性により
p≤x∏1−p−s1=n∈N(x)∑n−s,N(x)={n∈N∣n の素因数はすべて x 以下}
である。x 以下の自然数はすべて N(x) に属するから、ζ(s)−∏p≤x(1−p−s)−1≤∑n>xn−σ→0。一方 σ≥1+δ で ∑p∣p−s∣≤∑nn−1−δ<∞ だから、定理 7.3 より ∏p(1−p−s) は広義一様収束し、因子は 0 にならないので値も 0 でない。これは 1/ζ(s) に等しい。□
系 8.2(オイラー)∑p1/p=∞。特に素数は無限個ある。
証明. 実数 s>1 について、定理 8.1 から logζ(s)=∑p∑k≥1kp−ks≤∑pp1+∑p∑k≥2p−k≤∑pp1+∑n≥2n(n−1)1 であり、最後の和は 1 である。s→1+0 のとき ζ(s)≥∑n≤Nn−s→∑n≤N1/n はいくらでも大きくなるので、∑p1/p=∞。□
命題 8.3 Res>1 で次が成り立つ。
- log∣ζ(s)∣=p∑k≥1∑kRe(p−ks)(二重級数は絶対収束)。
- −ζ(s)ζ′(s)=p∑ps−1logp。
証明. 1. ∣p−s∣<1 より ∣1−p−s∣−1=expRe(−Log(1−p−s))=expRe∑kp−ks/k。部分積の絶対値の対数をとり、ζ(s)=0 と log∣⋅∣ の連続性から極限に移る。絶対収束は ∑p,kp−kσ/k≤2∑pp−σ による。2. 1/ζ=∏p(1−p−s) に定理 7.3 の対数微分を使うと −ζζ′=∑p1−p−sp−slogp。□
8.2 解析接続と s=1 の極
定理 8.4 ζ(s)−s−11 は Res>0 で正則な関数に拡張される。したがって ζ は Res>0 上の有理型関数に拡張され、極は s=1 だけで、単純極で留数は 1 である。
証明. Res>1 では ∫1∞x−s dx=s−11 だから
ζ(s)−s−11=n=1∑∞ϕn(s),ϕn(s)=∫nn+1(n−s−x−s)dx
である。各 ϕn は(命題 7.15 と同様に)整関数である。n−s−x−s=∫nxsu−s−1 du より、σ>0 で ∣ϕn(s)∣≤maxn≤u≤n+1∣su−s−1∣=∣s∣n−σ−1 である。σ≥δ>0, ∣s∣≤C では ∑nCn−1−δ<∞ だから、∑ϕn は Res>0 で広義一様収束し、定理 3.25 より正則である。□
8.3 関数等式(概略)と自明な零点
ゼータ関数は実は C 全体の有理型関数に延長され、s↔1−s の対称性をもつ。ここでは証明の概略を述べる。鍵になるのは、テータ関数 θ(t)=∑n∈Ze−πn2t(t>0)の変換公式
θ(1/t)=tθ(t)(1)
である。これはポアソンの和公式 ∑nf(n)=∑nf^(n)(f^(ξ)=∫Rf(x)e−2πixξdx)を f(x)=e−πtx2 に適用して得られる。f^(ξ)=t−1/2e−πξ2/t は問題 8.5 のガウス積分の計算に帰着する。ポアソンの和公式は、周期 1 の関数 F(x)=∑n∈Zf(x+n) をフーリエ級数に展開して x=0 とおいたものである。実際、F のフーリエ係数は ∫01F(x)e−2πikxdx=∫Rf(x)e−2πikxdx=f^(k) であり、f(x)=e−πtx2 では F は C1 級なので、そのフーリエ級数は F に一様収束する(微分方程式 第6章 の定理 6.18 を周期 1 に直して使う)。
定理 8.5(関数等式, functional equation)ξ(s)=π−s/2Γ(s/2)ζ(s) は C 上の有理型関数に拡張され、極は s=0,1(ともに単純)だけで、ξ(s)=ξ(1−s) を満たす。したがって ζ は C 上の有理型関数に拡張され、極は s=1 だけである。
証明の概略. Res>1 とする。Γ(s/2) の積分で u=πn2t と置換すると π−s/2Γ(s/2)n−s=∫0∞e−πn2tts/2−1 dt で、n について和をとる(絶対収束するので交換できる)と、ψ(t)=∑n≥1e−πn2t=2θ(t)−1 として ξ(s)=∫0∞ψ(t)ts/2−1 dt となる。(1) は ψ(1/t)=tψ(t)+2t−1 と同値である。∫01 の部分で t↦1/t と置換してこれを使い、21∫1∞(t−s/2−1/2−t−s/2−1) dt=s−11−s1 を計算すると
ξ(s)=s−11−s1+∫1∞ψ(t)(ts/2+t(1−s)/2)tdt
を得る。t≥1 で ψ(t)≤Ce−πt だから、右辺の積分はすべての s で収束して整関数を表し、右辺全体は s↔1−s で不変である。最後に ζ(s)=πs/2ξ(s)/Γ(s/2) で、1/Γ は整関数(系 7.18)であり、ξ の s=0 での極は 1/Γ(s/2) の零点で打ち消される。□
系 8.6(自明な零点)ζ(−2n)=0(n∈N)で、これらは単純零点であり、Res<0 にある ζ の零点はこれらだけである。また ζ(0)=−21 である。
証明. σ<0 なら Re(1−s)>1 だから ξ(s)=ξ(1−s)=π−(1−s)/2Γ(21−s)ζ(1−s) は有限で 0 でない(系 7.18、定理 8.1)。よって ζ(s)=πs/2ξ(s)/Γ(s/2) が 0 になるのは 1/Γ(s/2)=0、すなわち s=−2,−4,… のときに限り、零点は単純である。s=0 の近くでは ξ(s)=−s1+O(1)、Γ(s/2)1=2s+O(s2)(Γ の 0 での留数は 1)だから、ζ(0)=−21。□
ζ のそれ以外の零点を非自明な零点という。それらは 0≤Res≤1(臨界帯)にあり、ζ(s)=ζ(sˉ)(実軸上で成り立つので一致の定理による)と関数等式から、実軸と直線 Res=21 に関して対称に分布する。
8.4 Res=1 上での非零性
定理 8.7 実数 t=0 について ζ(1+it)=0 である。
証明. 3+4cosθ+cos2θ=2(1+cosθ)2≥0 である。σ>1 とすると、Re(p−k(σ+it))=p−kσcos(ktlogp) と命題 8.3 の 1 から
3log∣ζ(σ)∣+4log∣ζ(σ+it)∣+log∣ζ(σ+2it)∣=p∑k≥1∑kpkσ3+4cosθp,k+cos2θp,k≥0
(θp,k=ktlogp)、すなわち ∣ζ(σ)∣3∣ζ(σ+it)∣4∣ζ(σ+2it)∣≥1 である。ζ(1+it)=0 と仮定すると、σ→1+0 のとき、s=1 は単純極なので ∣ζ(σ)∣≤C1/(σ−1)、1+it は零点なので ∣ζ(σ+it)∣≤C2(σ−1)、1+2it では正則(2t=0)なので ∣ζ(σ+2it)∣≤C3 である。左辺は C13C24C3(σ−1)→0 となり矛盾する。□
関数等式より Res=0 上にも零点はなく、非自明な零点は 0<Res<1 にある。
8.5 素数定理とチェビシェフ関数
x>0 に対し、x 以下の素数の個数を π(x) とし、チェビシェフ関数を
ϑ(x)=p≤x∑logp,ψ(x)=pk≤x∑logp
と定める(ψ は素数べき pk≤x すべてにわたる和)。
定理 8.8(素数定理, prime number theorem)π(x)∼logxx(x→∞)、すなわち π(x)logx/x→1 である。
1896 年にアダマールとド・ラ・ヴァレ・プサンが独立に証明した。本章ではニューマン(1980)の方法による証明を、ザギエの解説に沿って述べる。まず問題を ϑ に移す。
命題 8.9 π(x)∼x/logx と ϑ(x)∼x は同値である。
証明. ϑ(x)≤π(x)logx である。0<ε<1 とすると、x1−ε<p≤x の素数は π(x)−x1−ε 個以上あるので ϑ(x)≥(1−ε)logx(π(x)−x1−ε) である。よって
xϑ(x)≤xπ(x)logx≤1−ε1xϑ(x)+xεlogx
で、logx/xε→0 と ε の任意性から、2 つの比の上極限・下極限は一致する。□
ψ(x)−ϑ(x)=∑k≥2ϑ(x1/k) で、和は x1/k≥2 となる高々 log2x 個の k にわたり各項は ϑ(x) 以下だから、次の命題とあわせて ψ(x)−ϑ(x)=O(xlogx) であり、ψ(x)∼x も同値である。
命題 8.10(チェビシェフ)x≥1 について ϑ(x)≤(2log2)x である。
証明. 整数 n について ϑ(n)≤nlog4 を n に関する帰納法で示せばよい(ϑ(x)=ϑ(⌊x⌋))。n=1,2 では明らか。n≥4 が偶数なら n は素数でなく ϑ(n)=ϑ(n−1)。n=2m+1(m≥1)なら、m+1<p≤2m+1 の素数は (2m+1)! を割り m!(m+1)! を割らないので (m2m+1) を割り、(m2m+1)=(m+12m+1) でこの 2 つの和は 22m+1 以下だから (m2m+1)≤4m である。よって ϑ(2m+1)−ϑ(m+1)≤mlog4 で、帰納法の仮定 ϑ(m+1)≤(m+1)log4 から ϑ(2m+1)≤(2m+1)log4。□
8.6 ニューマンの方法による素数定理の証明
証明の中心は次の「解析的定理」である。ラプラス変換が虚軸まで正則に延びれば、積分 ∫0∞f 自体が収束する、という主張である。
定理 8.11(ニューマンの解析的定理)f:[0,∞)→C を有界かつ区分的に連続とし、Rez>0 で g(z)=∫0∞f(t)e−zt dt とおく。g が {Rez≥0} を含む開集合上の正則関数に拡張されるならば、∫0∞f(t) dt=limT→∞∫0Tf(t) dt は存在して g(0) に等しい。
証明. M=sup∣f∣ とし、gT(z)=∫0Tf(t)e−zt dt とおく(命題 7.15 と同様に整関数)。gT(0)→g(0) を示せばよい。R>0 を固定し、δ>0 を小さくとって、g が C={∣z∣≤R,Rez≥−δ} を含む凸開集合上で正則であるようにする({∣z∣≤R,Rez≥0} はコンパクトなので可能)。C は凸で 0 を内部に含むから、コーシーの積分公式(定理 2.16 を (h(z)−h(0))/z に適用し、n(∂C,0)=1 を使う)より
g(0)−gT(0)=2πi1∫∂C(g(z)−gT(z))ezT(1+R2z2)zdz(2)
である(h(z)=(g−gT)ezT(1+z2/R2) は h(0)=g(0)−gT(0) を満たす)。∣z∣=R なら (1+R2z2)z1=R3∣zzˉ+z2∣=R22∣Rez∣ であることに注意する。
(i) C+=∂C∩{Rez>0}(右半円)上では、x=Rez>0 として ∣g(z)−gT(z)∣=∫T∞f(t)e−zt dt≤xMe−xT、∣ezT∣=exT だから、(2) の被積分関数は 2M/R2 以下で、C+ 上の寄与は 2π1⋅πR⋅R22M=RM 以下である。
(ii) C−=∂C∩{Rez<0} 上では g と gT を分ける。gT の項は C∖{0} で正則なので、C− を同じ端点 ±iR をもつ左半円 C−′={∣z∣=R,Rez<0} に取り替えてよい(2 つの差の閉曲線は星型領域 C∖[0,∞) に含まれる)。C−′ 上では x=Rez<0 で ∣gT(z)∣≤M∫−∞Te−xt dt=∣x∣Me−xT だから、(i) と同様に寄与は M/R 以下である。
(iii) 残りは IT=2πi1∫C−g(z)ezT(1+z2/R2)zdz である。K=maxC−∣g(z)(1+z2/R2)/z∣ とし、0<η<δ とする。C− のうち Rez≥−η の部分は ±iR の近くの 2 つの弧で、長さの和 ℓ(η) は η→0 で 0 に収束する。残りの部分では ∣ezT∣≤e−ηT だから、C− の長さを L として ∣IT∣≤2πK(ℓ(η)+Le−ηT)。T→∞ のあと η→0 として IT→0。
以上より limsupT→∞∣g(0)−gT(0)∣≤2M/R で、R は任意だから gT(0)→g(0)。□
係数 1+z2/R2 は、円周上で ∣Rez∣ に比例する小さな因子を作り、1/∣Rez∣ という悪い評価を打ち消すための工夫である。
次に Φ(s)=∑ppslogp(Res>1)を考える。
補題 8.12 Φ(s)−s−11 は {Res≥1} を含む開集合上の正則関数に拡張される。
証明. 命題 8.3 の 2 より、Res>1 で
−ζ(s)ζ′(s)=p∑ps−1logp=Φ(s)+p∑ps(ps−1)logp
である。σ≥21+ε では ∣ps−1∣≥pσ(1−2−1/2) より最後の和の項は Clogp/p1+2ε 以下なので、和は Res>21 で正則である。ζ は Res>0 で有理型で、Res≥1 に零点をもたず(定理 8.1, 8.7)、s=1 に単純極をもつから、−ζ′/ζ−s−11 は ζ の零点を除いた開集合 {Res>0}∖{ζ=0}(Res≥1 を含む)で正則である(単純極での −ζ′/ζ の留数は 1)。□
補題 8.13 広義積分 ∫1∞x2ϑ(x)−x dx は収束する。
証明. Res>1 とする。ϑ は [n,n+1) で定数だから、部分和分により
p≤N∑pslogp=n≤N∑nsϑ(n)−ϑ(n−1)=Nsϑ(N)+n=1∑N−1ϑ(n)∫nn+1xs+1sdx=Nsϑ(N)+s∫1Nxs+1ϑ(x)dx
で、命題 8.10 より ϑ(N)/Ns→0 だから Φ(s)=s∫1∞ϑ(x)x−s−1 dx=s∫0∞ϑ(et)e−st dt(x=et)。f(t)=ϑ(et)e−t−1 は命題 8.10 より有界で、Rez>0 で
g(z)=∫0∞f(t)e−ztdt=z+1Φ(z+1)−z1=z+11(Φ(z+1)−z1)−z+11
である。補題 8.12 より右辺は {Rez≥0} を含む開集合で正則だから、定理 8.11 より ∫0∞f(t) dt は収束する。x=et と置換すれば、これは与えられた積分である。□
定理 8.8 の証明. 命題 8.9 より ϑ(x)∼x を示せばよい。ある λ>1 について ϑ(x)≥λx となる x がいくらでも大きくとれるとする。ϑ は単調増加だから、そのような x について
∫xλxt2ϑ(t)−tdt≥∫xλxt2λx−tdt=∫1λu2λ−udu>0
である(t=xu)。右辺は x によらない正の定数なので、補題 8.13 の積分のコーシーの収束条件に反する。同様に、ある λ<1 について ϑ(x)≤λx となる x がいくらでも大きくとれるなら ∫λxxt2ϑ(t)−tdt≤∫λ1u2λ−udu<0 となり矛盾する。よって ϑ(x)/x→1 である。□
補足
証明の核心は、ζ が Res=1 上に零点をもたないこと(定理 8.7)であった。これが Φ(s)−1/(s−1) の Res≥1 での正則性を与え、ニューマンの定理(一種のタウバー型定理)によって ϑ(x)∼x に翻訳された。
8.7 リーマン予想
予想(リーマン予想, Riemann hypothesis)ζ の非自明な零点はすべて直線 Res=21 の上にある。
素数定理の証明では「Res=1 上に零点がない」ことが本質的だった。零点が Res=1 から離れているほど、素数の分布の誤差は小さくなる。このことは次の明示公式(リーマン–フォン・マンゴルト)に端的に表れている。本書では主張のみを述べる:x>1 が素数べきでなければ
ψ(x)=x−ρ∑ρxρ−log2π−21log(1−x−2)
が成り立つ。ここで ρ は非自明な零点全体を動き、和は ∣Imρ∣≤T の部分和の T→∞ での極限とする。∣xρ∣=xReρ だから、誤差 ψ(x)−x の大きさは supReρ で支配される。実際、次のことが知られている(いずれも証明は省略する)。
- リーマン予想は π(x)=Li(x)+O(xlogx) と同値である(フォン・コッホ)。ここで Li(x)=∫2xlogtdt で、Li(x)∼x/logx だが、x/logx よりはるかによい近似である。
- 零点をもたない領域 σ>1−c/log∣t∣(∣t∣≥2)から、π(x)=Li(x)+O(xe−c′logx) が得られる(ド・ラ・ヴァレ・プサン)。
- 臨界線 Res=21 上に無限個の零点がある(ハーディ)。虚部が正で最小の零点は 21+14.1347…i で、膨大な数の零点が臨界線上にあることが数値的に確かめられている。
リーマン予想はクレイ数学研究所のミレニアム懸賞問題の 1 つであり、未解決である。ゼータ関数の類似物(デデキントゼータ関数、ディリクレの L 関数など)とその解析接続・関数等式は、代数的整数論 第6章 で扱う。
まとめ
- オイラー積 ζ(s)=∏p(1−p−s)−1(Res>1)は素因数分解の一意性の解析的表現であり、∑1/p=∞ を導く。
- ζ(s)−s−11 は Res>0 に正則に延び、ζ は s=1 に留数 1 の単純極をもつ。
- テータ関数の変換公式から ξ(s)=π−s/2Γ(s/2)ζ(s)=ξ(1−s) が従い(概略)、ζ は C に延長され、−2,−4,… に自明な零点をもつ。
- 3+4cosθ+cos2θ≥0 から ζ(1+it)=0 が従う。
- 素数定理 π(x)∼x/logx は ϑ(x)∼x と同値である。チェビシェフの評価 ϑ(x)=O(x)、補題 8.12、ニューマンの解析的定理から ∫1∞(ϑ(x)−x)x−2dx が収束し、素数定理が従う。
- リーマン予想(非自明な零点は Res=1/2 上)は、素数定理の誤差項が O(xlogx) であることと同値である。
演習問題
問題 8.1 ★ Res>1 で (1−21−s)ζ(s)=n=1∑∞ns(−1)n−1 を示せ。
解答
21−sζ(s)=2∑n(2n)−s だから、ζ(s)−21−sζ(s)=∑nn−s−2∑n 偶数n−s=∑n 奇数n−s−∑n 偶数n−s(絶対収束なので並べ替えてよい)。
問題 8.2 ★ Res>1 で ζ(s)1=n=1∑∞nsμ(n) および ζ(s)2=n=1∑∞nsd(n) を示せ。ここで μ はメビウス関数(n が相異なる k 個の素数の積なら (−1)k、平方因子をもてば 0)、d(n) は n の正の約数の個数である。
解答
∏p≤x(1−p−s) を展開すると、素因数がすべて x 以下の平方因子のない n にわたる ∑μ(n)n−s になる。定理 8.1 の証明と同様に、x→∞ で差は ∑n>xn−σ 以下で 0 に収束し、左辺は 1/ζ(s) に収束する。また ζ(s)2=∑m,k(mk)−s は絶対収束する二重級数なので、mk=n となる組ごとにまとめて ∑nd(n)n−s を得る。
問題 8.3 ★★ Res>1 で −ζ(s)ζ′(s)=n=1∑∞nsΛ(n) を示せ。ここで Λ(n) は、n=pk(k≥1)なら logp、それ以外なら 0 とする(フォン・マンゴルト関数)。ψ(x)=∑n≤xΛ(n) であることにも注意せよ。
解答
命題 8.3 の 2 より −ζζ′=∑pps−1logp=∑plogp∑k≥1p−ks。二重級数は ∑n(logn)n−σ<∞ で抑えられて絶対収束するので、n=pk ごとに並べ直せば ∑nΛ(n)n−s である。
問題 8.4 ★ 関数等式と ζ(2)=π2/6 を用いて ζ(−1)=−121 を示せ。
解答
ξ(2)=π−1Γ(1)ζ(2)=6π。問題 7.2 より Γ(−21)=−2π だから ξ(−1)=π1/2Γ(−21)ζ(−1)=−2πζ(−1)。ξ(−1)=ξ(2) より ζ(−1)=−2π1⋅6π=−121。
問題 8.5 ★★ 実数 ξ について ∫−∞∞e−πx2e−2πixξ dx=e−πξ2 を、長方形の周に沿った e−πz2 の積分を用いて示せ。(∫Re−πx2dx=1 は例 7.23 から従う。)
解答
e−π(x+iξ)2=e−πx2e−2πixξeπξ2 だから、∫Re−π(x+iξ)2dx=1 を示せばよい。頂点 ±R, ±R+iξ の長方形の周で整関数 e−πz2 を積分すると 0 である(定理 2.16)。縦の辺 z=±R+iy(y は 0 と ξ の間)では ∣e−πz2∣=e−π(R2−y2)≤e−π(R2−ξ2) で、長さ ∣ξ∣ の辺上の積分は R→∞ で 0 に収束する。よって ∫Re−π(x+iξ)2dx=∫Re−πx2dx=1。
問題 8.6 ★★ η(s)=∑m=1∞((2m−1)−s−(2m)−s) が Res>0 で正則であることを示し、0<σ<1 で ζ(σ)<0 を導け。特に ζ は区間 (0,1) に零点をもたない。
解答
∣(2m−1)−s−(2m)−s∣=∫2m−12msu−s−1du≤∣s∣(2m−1)−σ−1 だから、定理 8.4 の証明と同様に η は Res>0 で正則である。問題 8.1 より Res>1 で η(s)=(1−21−s)ζ(s) であり、一致の定理によりこれは Res>0(s=1)で成り立つ。0<σ<1 なら各項 (2m−1)−σ−(2m)−σ>0 より η(σ)>0、また 1−21−σ<0 だから ζ(σ)<0。
問題 8.7 ★★ n 番目の素数を pn とする。素数定理から pn∼nlogn を導け。
解答
π(pn)=n だから素数定理より nlogpn/pn→1。対数をとると logn+loglogpn−logpn→0 で、loglogpn/logpn→0 より logn/logpn→1。よって pn∼nlogpn∼nlogn。
問題 8.8 ★★★ {x}=x−⌊x⌋ とする。Res>1 で ζ(s)=s−1s−s∫1∞xs+1{x} dx を示し、これが Res>0 への解析接続を与えることと、s→1lim(ζ(s)−s−11)=γ(オイラーの定数)を示せ。
解答
補題 8.13 と同じ部分和分で ∑n≤Nn−s=N1−s+s∫1N⌊x⌋x−s−1dx、N→∞ として ζ(s)=s∫1∞⌊x⌋x−s−1dx=s−1s−s∫1∞{x}x−s−1dx。0≤{x}<1 より最後の積分は Res>0 で広義一様に絶対収束し正則だから、右辺は Res>0 への接続を与える(一致の定理により定理 8.4 と同じもの)。s−1s−s−11=1 より s→1 の極限は 1−∫1∞{x}x−2dx である。∫nn+1x2x−ndx=lognn+1−n+11 を n=1,…,N−1 で加えると logN−HN+1 だから、1−∫1N{x}x−2dx=HN−logN→γ。