この章の目標
- 零点を指定した整関数(ワイエルシュトラス)と極を指定した有理型関数(ミッタク–レフラー)を構成できる
- sinπz の無限積表示と πcotπz の部分分数展開を証明できる
- ガンマ関数の積表示・解析接続・相補公式・重複公式とベータ関数との関係を導ける
- 解析接続の一意性とモノドロミー定理の意味を説明できる
前提:第3章(ワイエルシュトラスの定理)、第4章、第5章(補題 5.15)
7.1 無限積
多項式は根を与えれば c∏(z−ak) と書ける。無限個の零点をもつ整関数も積で表すため、無限積の収束を定義する。
定義 7.1(無限積の収束)複素数列 (an) について、1+an=0 となる n が有限個で、それらを除いた部分積が 0 でない極限をもつとき、無限積 ∏n=1∞(1+an) は収束するという。値は全因子の積(0 の因子があれば 0)とする。
例 7.2 ∏n=2N(1−n21)=∏n=2Nn2(n−1)(n+1)=2NN+1→21 なので収束する。∏n=1N(1+n1)=N+1→∞ は発散する。∏n=2N(1−n1)=N1→0 も、極限が 0 なので定義により発散である。0 への発散を除くのは「積が 0 ⇔ ある因子が 0」を保つためである。
∣a∣≤1/2 なら ∣Log(1+a)∣=∣∑k≥1(−1)k−1ak/k∣≤∣a∣∑k≥02−k=2∣a∣ である。
定理 7.3 U を開集合、fn を U 上の正則関数とし、任意のコンパクト集合 K⊂U について ∑nsupK∣fn∣<∞ とする。このとき F=∏n=1∞(1+fn) は U 上で広義一様収束し、F は正則である。F の零点は因子の零点全体であり、各点での零点の位数は因子の零点の位数の和である。さらに F の零点以外で FF′=n=1∑∞1+fnfn′(広義一様収束)が成り立つ。
証明. K=D(c,r)⊂U とし、n≥N で supK∣fn∣≤1/2 となる N をとる。∣Log(1+fn)∣≤2supK∣fn∣ だから、M 判定法により SN=∑n≥NLog(1+fn) は K 上で一様収束し、定理 3.25 より D(c,r) で正則、SN′=∑n≥Nfn′/(1+fn) である。部分和は K 上で有界で、exp は有界集合上で一様連続だから、∏n=NM(1+fn)=exp∑n=NMLog(1+fn) は eSN に一様収束する。よって K 上で F=∏n<N(1+fn)⋅eSN であり、eSN=0 だから零点についての主張と対数微分の公式が従う。コンパクト集合はこのような円板の有限個で覆える。□
7.2 sinπz の無限積表示と πcotπz の部分分数展開
定理 7.4(πcotπz の部分分数展開)z∈C∖Z について
πcotπz=z1+n=1∑∞z2−n22z=N→∞limn=−N∑Nz−n1
であり、級数は C∖Z 上で広義一様収束する。
証明. ∣z∣≤R、n≥2R なら ∣z2−n22z∣≤n2−R22R≤3n28R だから、級数は広義一様収束する。z2−n22z=z−n1+z+n1 から第 2 の等号も従う。
w∈/Z を固定し、N>∣w∣ として g(z)=z(z−w)wπcotπz を補題 5.15 の正方形の周 ∂QN 上で積分する。z=w での留数は πcotπw、z=n=0 では n(n−w)w である。0 の近くでは πcotπz=z1+h(z)(h は正則で h(0)=0)だから、z(z−w)wh(z) は 0 で正則であり、z2(z−w)w の留数は dzdz−wwz=0=−w1 である。∂QN 上で ∣cotπz∣≤coth(π/2)、∣z∣≥N+21 だから
∫∂QNgdz≤8(N+21)⋅(N+21)(N+21−∣w∣)∣w∣πcoth(π/2)→0
である。留数定理より πcotπw−w1+∑0<∣n∣≤Nn(n−w)w→0 で、±n の項をまとめると n(n−w)w+n(n+w)w=n2−w22w だから結論を得る。□
定理 7.5(sinπz の無限積表示)すべての z∈C について
sinπz=πzn=1∏∞(1−n2z2)
であり、積は C 上で広義一様収束する。
証明. ∣z∣≤R で ∑n∣z2/n2∣≤R2∑1/n2<∞ だから、定理 7.3 より右辺 P(z) は整関数で、零点は整数全体(すべて単純)である。C∖Z 上では、定理 7.3 と定理 7.4 より
P(z)P′(z)=z1+n=1∑∞1−z2/n2−2z/n2=z1+n=1∑∞z2−n22z=πcotπz=sinπz(sinπz)′
である。よって (sinπzP)′=sinπzP(PP′−sinπz(sinπz)′)=0 が連結開集合 C∖Z 上で成り立ち、P=csinπz。z→0 で P(z)/(πz)→1、sinπz/(πz)→1 より c=1。□
例 7.6
- z=1/2 とすると 1=2π∏n≥1(1−4n21)、すなわちウォリスの公式 2π=∏n=1∞(2n−1)(2n+1)(2n)(2n) を得る。
- ∣z∣<1 で z2−n22z=−n22z∑k≥0n2kz2k で、二重級数は絶対収束するから並べ替えて πcotπz=z1−2∑k≥1ζ(2k)z2k−1(ζ(s)=∑n≥1n−s)。一方、問題 4.3 の展開と cosw の積から cotw=w1−3w−45w3−⋯ なので、係数を比べて ζ(2)=6π2、ζ(4)=90π4 を得る(オイラー。例 5.16 と一致)。
7.3 ワイエルシュトラスの因数分解定理
∑1/∣an∣=∞ なら ∏(1−z/an) は収束しないので、収束を助ける指数因子を掛ける。
定義 7.7(基本因子)E0(z)=1−z、p≥1 について Ep(z)=(1−z)exp(z+2z2+⋯+pzp) とおく。
補題 7.8 ∣z∣≤1 ならば ∣1−Ep(z)∣≤∣z∣p+1 である。
証明. q(z)=∑k=1pzk/k とすると Ep′(z)=eq(−1+(1−z)(1+z+⋯+zp−1))=−zpeq(z) である。eq のテイラー係数はすべて 0 以上だから、1−Ep(z)=∫0zζpeq(ζ) dζ=∑k≥p+1bkzk(bk≥0)と書ける。∣z∣≤1 なら ∣1−Ep(z)∣≤∣z∣p+1∑kbk=∣z∣p+1(1−Ep(1))=∣z∣p+1。□
定理 7.9(ワイエルシュトラスの定理)(an) を ∣an∣→∞ となる 0 でない複素数の列(重複を許す)、m∈Z≥0 とする。このとき
P(z)=zmn=1∏∞En−1(anz)
は C 上で広義一様収束する整関数で、零点は 0(位数 m)と an(位数は列に現れる回数)だけである。
証明. ∣z∣≤R とし、∣an∣≥2R となる n について補題 7.8 より ∣1−En−1(z/an)∣≤2−n である。定理 7.3 を適用すればよい(En−1(z/an) の零点は an だけで単純)。□
系 7.10(因数分解定理)恒等的に 0 でない整関数 f の零点を、0 の位数 m と、それ以外の零点 an(重複度込み)とすると、ある整関数 g について f(z)=zmeg(z)∏nEn−1(z/an) と書ける。
証明. 零点は集積点をもたないので ∣an∣→∞(または有限個)である。f/P は除去可能特異点を除けば零点のない整関数であり、C は単連結だから eg と書ける(系 3.10)。□
系 7.11 C 上の有理型関数は、2 つの整関数の商である。
証明. 有理型関数 h の極を重複度込みで零点にもつ整関数 g を定理 7.9 で作ると、hg は除去可能特異点を除いて整関数で、h=(hg)/g。□
∑∣an∣−(p+1)<∞ なら ∏Ep(z/an) が収束する(補題 7.8)。たとえば an=±n なら p=1 でよく、±n の因子 (1∓z/n)e±z/n をまとめると定理 7.5 の 1−z2/n2 になる。
7.4 ミッタク–レフラーの定理
定理 7.12(ミッタク–レフラーの定理, Mittag-Leffler's theorem)(bn) を ∣bn∣→∞ となる相異なる点列、Pn を定数項のない多項式とする。このとき C 上の有理型関数 f で、極がちょうど bn 全体で、bn での主要部が Pn(1/(z−bn)) であるものが存在する。
証明. hn(z)=Pn(1/(z−bn)) とおく。bn=0 となる n は高々 1 つで、それを n=1 とし T1=0 とおく。bn=0 なら hn は D(0,∣bn∣) で正則だから、そのテイラー級数は ∣z∣≤∣bn∣/2 で一様収束する。そこでテイラー多項式 Tn を ∣z∣≤∣bn∣/2 で ∣hn−Tn∣<2−n となるようにとる。f=∑n(hn−Tn) とおく。R>0 を固定し、∣bn∣>2R となる n≥N について和は D(0,R) 上で一様収束するので、定理 3.25 より正則関数を表す。残りの有限和は D(0,R) 内の bn に指定された主要部をもつ有理関数である。R は任意なので f が求めるものである。□
例 7.13 定理 7.4 を項別微分して(定理 3.25)
sin2πzπ2=n=−∞∑∞(z−n)21
を得る。∑1/n2<∞ なので補正項は不要である。一方 ∑1/(z−n) は発散し、πcotπz=z1+∑n=0(z−n1+n1) のように補正項 Tn=−1/n が要る。
7.5 ガンマ関数
定義 7.14(ガンマ関数, gamma function)Rez>0 に対し Γ(z)=∫0∞tz−1e−t dt と定める(tz−1=e(z−1)logt)。
命題 7.15 Γ は Rez>0 で正則で、Γ(z+1)=zΓ(z)、Γ(1)=1、Γ(n+1)=n! を満たす。
証明. 0<a≤Rez≤b では ∣tz−1e−t∣≤ta−1(t≤1)、≤tb−1e−t(t≥1)だから、Fn(z)=∫1/nntz−1e−t dt は Γ に一様収束する。Fn は連続で、任意の三角形 T について(連続関数の積分順序の交換により)∫∂TFn dz=∫1/nne−t∫∂Ttz−1 dz dt=0 だから、モレラの定理より整関数である。定理 3.25 より Γ は正則である。部分積分 ∫εRtze−t dt=[−tze−t]εR+z∫εRtz−1e−t dt で ε→0, R→∞ とすれば関数等式を得る。□
定理 7.16(解析接続)Γ は C 上の有理型関数に拡張され、極は 0,−1,−2,… ですべて単純、Res(Γ,−n)=n!(−1)n である。関数等式は C 全体で成り立つ。
証明. n≥0 について Γn(z)=z(z+1)⋯(z+n)Γ(z+n+1) は Rez>−n−1 で有理型で、関数等式より Rez>0 では Γ に等しい。一致の定理より Γn たちは共通部分で一致し、全体で 1 つの有理型関数を定める。−n での留数は (−n)(−n+1)⋯(−1)Γ(1)=n!(−1)n。□
定理 7.17(ガウスの積表示)z∈/{0,−1,−2,…} ならば
Γ(z)=n→∞limz(z+1)⋯(z+n)n!nz
である。
証明. 右辺の分数を Gn(z) とする。Rez=x>0 とすると、t=ns と置換して n 回部分積分すれば
∫0ntz−1(1−nt)ndt=nz∫01sz−1(1−s)nds=nz⋅z(z+1)⋯(z+n)n!=Gn(z)
である。0≤t≤n では et≥(1+t/n)n とベルヌーイの不等式から et(1−t/n)n≥(1−t2/n2)n≥1−t2/n なので、0≤e−t−(1−t/n)n≤nt2e−t である。よって
∣Γ(z)−Gn(z)∣≤∫n∞tx−1e−tdt+n1∫0∞tx+1e−tdt→0
である。一般の z については Gn(z)=nzz+n+1Gn(z+1) を使う。Gn(z+1)→Γ(z+1) なら Gn(z)→Γ(z+1)/z=Γ(z) であり、Rez についての帰納法でよい。□
系 7.18(ワイエルシュトラスの積表示)γ=limn→∞(1+21+⋯+n1−logn)(オイラーの定数)とすると
Γ(z)1=zeγzn=1∏∞(1+nz)e−z/n
である。特に 1/Γ は 0,−1,−2,… に単純零点をもつ整関数で、Γ は零点をもたない。
証明. Hn=∑k≤n1/k とする。Hn−logn は減少し(n+11<lognn+1)正(Hn>∫1n+1dt/t)だから γ は存在する。n!z(z+1)⋯(z+n)=z∏k=1n(1+z/k) より
Gn(z)1=ze−zlognk=1∏n(1+kz)=zez(Hn−logn)k=1∏n(1+kz)e−z/k
である。(1+u)e−u=E1(−u) だから、補題 7.8 と定理 7.3 より右辺の積は広義一様収束し、極限は 0,−1,−2,… に単純零点をもつ整関数である。定理 7.17 と比べればよい。□
定理 7.19(相補公式, reflection formula)Γ(z)Γ(1−z)=sinπzπ。特に Γ(1/2)=π。
証明. 系 7.18 より Γ(z)Γ(−z)1=−z2∏n(1−n2z2)=−πzsinπz(定理 7.5)。Γ(1−z)=−zΓ(−z) を使えばよい。Γ(1/2)>0(被積分関数が正)と Γ(1/2)2=π から後半を得る。□
定理 7.20(ルジャンドルの重複公式, duplication formula)Γ(z)Γ(z+21)=21−2zπ Γ(2z)。
証明. 2z∈/{0,−1,−2,…} とする。定理 7.17 を Γ(z), Γ(z+21) には n で、Γ(2z) には 2n+1 で使う。∏k=0n(z+k)(z+k+21)=2−2n−2∏j=02n+1(2z+j) と (2n+1)2zn2z=2−2z(2n+12n)2z から
Γ(2z)Γ(z)Γ(z+21)=n→∞lim(2n+1)!(2n+1)2z(n!)222n+2n2z+1/2=2−2zn→∞lim(2n+1)!(n!)222n+2n
である(左辺の極限が存在するので右辺の極限 c も存在する)。z=1/2 とすると Γ(21)=c/2、c=2π。一致の定理により等式は全体で成り立つ。□
定理 7.21(ボーア–モレルップの定理, Bohr–Mollerup theorem)f:(0,∞)→(0,∞) が f(1)=1、f(x+1)=xf(x) を満たし、logf が凸ならば、f=Γ である。
本書では主張のみとする(logΓ の凸性は問題 7.6)。関数等式だけでは階乗の補間は決まらず、対数凸性で Γ が特徴づけられる。
7.6 ベータ関数
定理 7.22(ベータ関数)Rep,Req>0 に対し B(p,q)=∫01tp−1(1−t)q−1 dt とおくと
B(p,q)=Γ(p+q)Γ(p)Γ(q)
である。
証明. まず p,q>0 を実数とする。非負関数の重積分なので順序交換と変数変換ができ(測度と積分 第5章)、s=uv, t=u(1−v)(u>0, 0<v<1、ヤコビアンの絶対値 u)と置換すると
Γ(p)Γ(q)=∫0∞∫0∞sp−1tq−1e−s−tdsdt=∫0∞up+q−1e−udu∫01vp−1(1−v)q−1dv=Γ(p+q)B(p,q)
である。B(p,q) は命題 7.15 と同様に各変数について正則なので、一致の定理により複素数の p,q に拡張される。□
例 7.23
- B(21,21)=∫01t(1−t)dt=π は Γ(21)2/Γ(1)=π と一致する。∫−∞∞e−x2dx=∫0∞s−1/2e−sds=Γ(21)=π(x2=s)である。
- 0<a<1 で t=1+xx と置換すると B(a,1−a)=∫0∞1+xxa−1dx である。例 5.13 より値は sinπaπ で、定理 7.19 の Γ(a)Γ(1−a) と一致する(相補公式の別証明になる)。
- t=sin2θ と置換すると ∫0π/2sin2p−1θcos2q−1θ dθ=21B(p,q) である。
7.7 解析接続
Γ や第8章のゼータ関数の延長の一意性を確かめる。
定義 7.24(解析接続, analytic continuation)領域 D と D 上の正則関数 f の組 (f,D) を関数要素という。D∩E が空でない連結集合で、D∩E 上で f=g となるとき、(g,E) を (f,D) の直接解析接続という。
一致の定理により、E を決めれば直接解析接続 g は(存在すれば)ただ 1 つである。∑zn(D 上)の C∖{1} への解析接続は 1/(1−z) である。一方、f(z)=∑n≥0z2n は単位円周を越えて接続できない。ζ2m=1 なら f(rζ)=∑n<m(rζ)2n+∑n≥mr2n→∞(r→1−0)であり、このような ζ は単位円周上で稠密だから、円周のどの点の近傍にも正則に延長できない(延長できればそこで有界になる)。このとき単位円周を自然境界という。
定義 7.25(曲線に沿った解析接続)γ:[0,1]→C を曲線とする。γ(t) を中心とする開円板 Dt と Dt 上の正則関数 ft の族 (ft,Dt)t∈[0,1] が、各 t についてある δ>0 があって「∣s−t∣<δ なら γ(s)∈Dt かつ Ds∩Dt 上で fs=ft」を満たすとき、これを (f0,D0) の γ に沿った解析接続という。
定理 7.26(一意性)(ft,Dt), (gt,Et) が同じ曲線 γ に沿った解析接続で、γ(0) の近くで f0=g0 ならば、γ(1) の近くで f1=g1 である。
証明. T={t∈[0,1]∣Dt∩Et 上で ft=gt} とおく。Dt∩Et は γ(t) を中心とする円板(連結)だから、一致の定理により「γ(t) の近くで ft=gt」と同値である。0∈T である。t∈T とし、δ を両方の族について定義 7.25 の条件を満たすようにとる。∣s−t∣<δ なら、γ(s) の近くで fs=ft=gt=gs だから s∈T。よって T は開集合である。tk∈T, tk→t なら、大きな k について γ(tk) の近くで ft=ftk=gtk=gt となり、一致の定理より t∈T。よって T は閉集合で、[0,1] の連結性より T=[0,1]。□
例 7.27 Dt=D(e2πit,1) 上で Lt(z)=Log(ze−2πit)+2πit とおくと、Lt は Dt 上の対数の分枝で、(Lt,Dt) は単位円周に沿った Log の解析接続である(s が t に近ければ Ls,Lt はともに e2πis で値 2πis をとる分枝なので、Ds∩Dt で一致する)。L1=Log+2πi だから、1 周すると対数は 2πi だけ増え、z=eL/2 は −z に変わる。
定理 7.28(モノドロミー定理, monodromy theorem)D を領域、(f,D0) を z0∈D での関数要素とし、z0 から出る D 内の任意の曲線に沿って解析接続できるとする。z0 から z1 への 2 曲線が D 内で端点を固定してホモトープならば、それらに沿った接続は z1 の近くで一致する。特に D が単連結なら、f は D 全体の正則関数に延長される。
本書では主張のみとする。例 7.27 の Log は C∖{0} 内のどの曲線に沿っても接続できるが、単連結でないので 1 価にならない。多価性は、関数要素全体をリーマン面として扱うことで解消される(リーマン面と保型形式 第1章、位相幾何学 第3章 の被覆空間)。
まとめ
- 無限積 ∏(1+fn) は ∑supK∣fn∣<∞ なら広義一様収束して正則関数を与え、零点は因子の零点で、対数微分は項別に計算できる。
- πcotπz=z1+∑z2−n22z と sinπz=πz∏(1−z2/n2) から、ウォリスの公式と ζ(2),ζ(4) が出る。
- ワイエルシュトラス:基本因子 Ep を用いて、零点を指定した整関数が作れる。整関数は zmeg∏En−1(z/an) と分解され、有理型関数は整関数の商である。
- ミッタク–レフラー:テイラー多項式による補正で、極と主要部を指定した有理型関数が作れる。
- Γ(z)=∫0∞tz−1e−tdt は C 上の有理型関数に延長され(極は 0,−1,…)、ガウスの積表示・ワイエルシュトラスの積表示・相補公式 Γ(z)Γ(1−z)=π/sinπz・重複公式を満たす。1/Γ は整関数。
- B(p,q)=Γ(p)Γ(q)/Γ(p+q)。
- 解析接続は一意的で、単連結領域では曲線によらない(モノドロミー定理)。
演習問題
問題 7.1 ★ n=2∏∞n3+1n3−1=32 を示せ。
解答
n3+1n3−1=n+1n−1⋅n2−n+1n2+n+1 で、g(m)=m2−m+1 とおくと n2+n+1=g(n+1) である。n=2,…,N の積は N(N+1)1⋅2⋅g(2)g(N+1)=3N(N+1)2(N2+N+1)→32。
問題 7.2 ★ Γ(n+21)=4nn!(2n)!π(n∈Z≥0)と Γ(−21)=−2π を示せ。
解答
関数等式より Γ(n+21)=(n−21)(n−23)⋯21Γ(21)=2n(2n−1)(2n−3)⋯1π で、(2n−1)(2n−3)⋯1=2nn!(2n)!。また Γ(−21)=Γ(21)/(−21)=−2π。検算:n=1 で両辺とも 21π。
問題 7.3 ★★ sinw1=cot2w−cotw を用いて sinπzπ=z1+n=1∑∞(−1)nz2−n22z を示し、n=1∑∞n2(−1)n+1=12π2 を導け。
解答
sinw=2sin2wcos2w より cot2w−cotw=sinw2cos2(w/2)−cosw=sinw1。定理 7.4 を z/2 に使うと πcot2πz=z2+∑nz2−4n24z=2(z1+∑m 偶数z2−m22z)。これから πcotπz を引くと、偶数 m の項は +1 倍、奇数 m の項は −1 倍で残り、与式を得る(絶対収束なので並べ替えてよい)。z→0 で左辺から z1 を引いたものは 6π2z+O(z3)(問題 4.3)、右辺の和は −2z∑(−1)n/n2+O(z3) だから、z の係数を比べて ∑n2(−1)n+1=12π2。検算:∑n21−2∑(2n)21=6π2⋅21 と一致する。
問題 7.4 ★★ 実数 y=0 について ∣Γ(iy)∣2=ysinhπyπ を示せ。
解答
ガウスの積表示で nz=nzˉ だから Γ(z)=Γ(zˉ)。よって ∣Γ(iy)∣2=Γ(iy)Γ(−iy)。Γ(−iy)=Γ(1−iy)/(−iy) と相補公式より、これは −iysin(πiy)π=−iy⋅isinhπyπ=ysinhπyπ。検算:y→0 で両辺とも ≈1/y2(Γ の 0 での留数は 1)。
問題 7.5 ★★ n(n∈N)を単純零点とし、それ以外に零点をもたない整関数を構成せよ。∏E1(z/n) では収束しないことも示せ。
解答
∣z∣≤R、n≥4R2 なら ∣z/n∣≤1/2 で、補題 7.8 より ∣1−E2(z/n)∣≤R3n−3/2 は総和可能である。定理 7.3 より ∏n≥1(1−nz)exp(nz+2nz2) が求める関数である。一方 logE1(u)=log(1−u)+u=−2u2+O(u3) だから、実数 z=0 について ∑nlogE1(z/n)=−2z2∑n1+(収束)=−∞ となり、部分積は 0 に発散する。
問題 7.6 ★★ Γ(z)Γ′(z)=−γ−z1+n=1∑∞(n1−z+n1) を示し、logΓ が (0,∞) 上で凸であることを導け。
解答
系 7.18 の積に定理 7.3 の対数微分を適用すると −ΓΓ′=z1+γ+∑n(1+z/n1/n−n1)=z1+γ+∑n(z+n1−n1)。項別微分(定理 3.25)すると (ΓΓ′)′=∑n=0∞(z+n)21 で、x>0 では正だから (logΓ)′′>0。
問題 7.7 ★★ ∫0π/2tanθ dθ=2π を示せ。
解答
例 7.23 の 3 で 2p−1=21, 2q−1=−21、すなわち p=43, q=41 とすると、積分は 21B(43,41)=21Γ(43)Γ(41)=21⋅sin(π/4)π=2π。検算:u=tanθ と置換すると ∫0∞1+u2udu となり、u2=x としてさらに置換すれば 21∫0∞1+xx−1/4dx=21⋅sin(3π/4)π=2π(例 5.13, a=3/4)。
問題 7.8 ★★★ Γ(z)Γ(z+31)Γ(z+32)=2π⋅321−3z Γ(3z) を示せ。
解答
定理 7.20 の証明をまねる。3 つの Γ にはガウスの公式を n で、Γ(3z) には 3n+2 で使う。∏k=02∏j=0n(z+j+3k)=3−3n−3∏i=03n+2(3z+i) と n3z+1/(3n+2)3z=3−3z(3n+23n)3zn より、左辺 /Γ(3z) は 3−3zc(c=lim(3n+2)!(n!)333n+3n、z によらない)に等しい。z=31 とすると左辺は Γ(31)Γ(32)Γ(1)=sin(π/3)π=32π、右辺は 3cΓ(1) だから c=23π。よって 3−3z⋅23π=2π⋅321−3z。一般形はガウスの乗法公式とよばれる。