Lemma数学ロードマップ

09 位相幾何学 · 第 3 章

被覆空間

目安 12〜16 時間定理など 12演習 7 問

この章の目標

  • 被覆写像の定義と基本例を理解し、道とホモトピーの持ち上げ定理を証明できる
  • 持ち上げの判定条件を証明し、写像の持ち上げの存在を基本群で判定できる
  • 被覆変換群を計算し、正規被覆と正規部分群の対応を説明できる
  • 普遍被覆の構成と、被覆空間と基本群の部分群の間のガロア対応を理解する
  • 群作用による商と被覆、自由群の部分群への応用(ニールセン–シュライアーの定理)を説明できる

前提:第1章、第2章、04-algebra 第3章(群作用)

第1章では、らせん R→S1\mathbb{R} \to S^1 への持ち上げによって π1(S1)≅Z\pi_1(S^1) \cong \mathbb{Z} を計算した。この方法を一般化したのが被覆空間の理論である。被覆空間は基本群と驚くほど正確に対応しており、その対応はガロア理論における中間体と部分群の対応(04-algebra 第9章)とそっくりの形をしている。

本章では、空間が局所弧状連結(各点の任意の近傍が弧状連結な開近傍を含む)であるという仮定がしばしば現れる。多様体や CW 複体はこの性質をもつ。

3.1 被覆写像

定義 3.1(被覆, covering)連続な全射 p ⁣:X~→Xp\colon \tilde{X} \to X が次を満たすとき被覆写像といい、X~\tilde{X} を XX の被覆空間という:各点 x∈Xx \in X は開近傍 UU で、p−1(U)p^{-1}(U) が互いに素な開集合 U~λ\tilde{U}_\lambda の和であり、各 p∣U~λ ⁣:U~λ→Up\vert_{\tilde{U}_\lambda}\colon \tilde{U}_\lambda \to U が同相写像となるものをもつ。このような UU を均一に被覆される開集合、U~λ\tilde{U}_\lambda を UU 上のシートという。p−1(x)p^{-1}(x) を xx 上のファイバーという。

ファイバーは離散集合で、その濃度は xx について局所定数なので、XX が連結なら一定である。これを被覆の葉数という。

例 3.2

  1. p ⁣:R→S1p\colon \mathbb{R} \to S^1, p(s)=(cos⁡2πs,sin⁡2πs)p(s) = (\cos 2\pi s, \sin 2\pi s) は被覆写像である(補題 1.22)。
  2. n≥1n \geq 1 について pn ⁣:S1→S1p_n\colon S^1 \to S^1, z↦znz \mapsto z^n は nn 葉の被覆写像である(問題 3.1)。
  3. 商写像 q ⁣:Sn→RPnq\colon S^n \to \mathbb{R}P^n は 2 葉の被覆写像である。x∈Snx \in S^n について、開半球面 W={y∣⟨y,x⟩>0}W = \lbrace y \mid \langle y, x \rangle > 0 \rbrace の像を UU とすると、q−1(U)=W⊔(−W)q^{-1}(U) = W \sqcup (-W) であり、qq は開写像(q−1(q(O))=O∪(−O)q^{-1}(q(O)) = O \cup (-O))なので WW, −W-W を UU へ同相に写す。
  4. 有限個の被覆写像の積は被覆写像である(無限個の積では一般に成り立たない)。特に R2→T2=S1×S1\mathbb{R}^2 \to T^2 = S^1 \times S^1, (s,t)↦(p(s),p(t))(s, t) \mapsto (p(s), p(t)) は被覆写像である。
  5. 離散空間 DD について射影 X×D→XX \times D \to X は被覆写像である(自明な被覆)。

一方、pp を開区間 (0,3/2)(0, 3/2) に制限した写像は全射な局所同相写像だが、被覆写像ではない。実際 u∈(0,1/2)u \in (0, 1/2) なら p(u)p(u) 上のファイバーは {u,u+1}\lbrace u, u + 1 \rbrace の 2 点、u∈[1/2,1)u \in [1/2, 1) なら {u}\lbrace u \rbrace の 1 点で、p(1/2)=(−1,0)p(1/2) = (-1, 0) の近くでファイバーの個数が一定でない。

3.2 道とホモトピーの持ち上げ

写像 f ⁣:Y→Xf\colon Y \to X に対し、p∘f~=fp \circ \tilde{f} = f となる f~ ⁣:Y→X~\tilde{f}\colon Y \to \tilde{X} を ff の持ち上げという。

補題 3.3(持ち上げの一意性)p ⁣:X~→Xp\colon \tilde{X} \to X を被覆写像、YY を連結とする。f~1,f~2 ⁣:Y→X~\tilde{f}_1, \tilde{f}_2\colon Y \to \tilde{X} が同じ写像 ff の持ち上げで、ある一点で一致するならば f~1=f~2\tilde{f}_1 = \tilde{f}_2 である。

証明. A={y∣f~1(y)=f~2(y)}A = \lbrace y \mid \tilde{f}_1(y) = \tilde{f}_2(y) \rbrace が開かつ閉であることを示せばよい。y∈Yy \in Y に対し、f(y)f(y) の均一に被覆される開近傍 UU と、f~1(y)\tilde{f}_1(y), f~2(y)\tilde{f}_2(y) を含むシート U~1,U~2\tilde{U}_1, \tilde{U}_2 をとり、N=f~1−1(U~1)∩f~2−1(U~2)N = \tilde{f}_1^{-1}(\tilde{U}_1) \cap \tilde{f}_2^{-1}(\tilde{U}_2) とおく。y∈Ay \in A なら U~1=U~2\tilde{U}_1 = \tilde{U}_2 で、pp はその上で単射だから pf~1=pf~2p \tilde{f}_1 = p \tilde{f}_2 より N⊂AN \subset A。y∉Ay \notin A なら、pf~1(y)=pf~2(y)p \tilde{f}_1(y) = p \tilde{f}_2(y) と単射性から U~1≠U~2\tilde{U}_1 \neq \tilde{U}_2、よって両者は交わらず N∩A=∅N \cap A = \emptyset。□\square

定理 3.4(ホモトピー持ち上げ性質, homotopy lifting property)p ⁣:X~→Xp\colon \tilde{X} \to X を被覆写像とする。任意の空間 YY、ホモトピー F ⁣:Y×I→XF\colon Y \times I \to X、F0F_0 の持ち上げ f~0 ⁣:Y→X~\tilde{f}_0\colon Y \to \tilde{X} に対し、FF の持ち上げ F~ ⁣:Y×I→X~\tilde{F}\colon Y \times I \to \tilde{X} で F~(⋅,0)=f~0\tilde{F}(\cdot, 0) = \tilde{f}_0 となるものがただ一つ存在する。

証明. y0∈Yy_0 \in Y を固定する。各 t∈It \in I について、(y0,t)(y_0, t) の近傍 Nt×(t−εt,t+εt)N_t \times (t - \varepsilon_t, t + \varepsilon_t) で FF による像が均一に被覆される開集合に入るものをとる。{y0}×I\lbrace y_0 \rbrace \times I はコンパクトなので有限個で覆われ、その NtN_t たちの共通部分を NN とすれば、y0y_0 の開近傍 NN と分割 0=t0<t1<⋯<tm=10 = t_0 < t_1 < \cdots < t_m = 1 で、各 F(N×[ti−1,ti])F(N \times [t_{i-1}, t_i]) が均一に被覆される開集合 UiU_i に入るものが得られる。

N×[0,ti−1]N \times [0, t_{i-1}] 上で持ち上げ F~\tilde{F} が定まっているとする。F~(y0,ti−1)\tilde{F}(y_0, t_{i-1}) を含む UiU_i 上のシートを U~i\tilde{U}_i とし、NN を N∩(F~∣N×{ti−1})−1(U~i)N \cap (\tilde{F}\vert_{N \times \lbrace t_{i-1} \rbrace})^{-1}(\tilde{U}_i) に取り替えて F~(N×{ti−1})⊂U~i\tilde{F}(N \times \lbrace t_{i-1} \rbrace) \subset \tilde{U}_i としてよい(すでに定めた部分は制限する)。N×[ti−1,ti]N \times [t_{i-1}, t_i] 上で F~=(p∣U~i)−1∘F\tilde{F} = (p\vert_{\tilde{U}_i})^{-1} \circ F と定めれば、t=ti−1t = t_{i-1} で以前の定義と一致し、貼り合わせの補題により連続である。mm 段で N×IN \times I 上の持ち上げが得られる。

各 yy について {y}×I\lbrace y \rbrace \times I は連結なので、補題 3.3 より F~∣{y}×I\tilde{F}\vert_{\lbrace y \rbrace \times I} は f~0(y)\tilde{f}_0(y) から始まる唯一の持ち上げである。したがって異なる y0y_0 について作った持ち上げは共通部分で一致し、貼り合わせて Y×IY \times I 上の連続な持ち上げが得られ(連続性は局所的な性質)、一意性も同じ理由で成り立つ。□\square

系 3.5 p ⁣:X~→Xp\colon \tilde{X} \to X を被覆写像とする。

  1. (道の持ち上げ)任意の道 γ\gamma と x~∈p−1(γ(0))\tilde{x} \in p^{-1}(\gamma(0)) に対し、x~\tilde{x} から始まる持ち上げ γ~\tilde{\gamma} がただ一つ存在する。
  2. 道ホモトピーの持ち上げは道ホモトピーである。特に、道ホモトピックな二つの道を同じ点から持ち上げると、終点が一致する。

証明. (1) は YY を一点とした定理 3.4。(2) 道ホモトピー FF の持ち上げ F~\tilde{F} について、t↦F~(0,t)t \mapsto \tilde{F}(0, t), t↦F~(1,t)t \mapsto \tilde{F}(1, t) は定値の道の持ち上げなので、補題 3.3 より定値である。□\square

命題 3.6 p ⁣:(X~,x~0)→(X,x0)p\colon (\tilde{X}, \tilde{x}_0) \to (X, x_0) を被覆写像とし、H=p∗π1(X~,x~0)H = p_{\ast} \pi_1(\tilde{X}, \tilde{x}_0) とおく。

  1. p∗ ⁣:π1(X~,x~0)→π1(X,x0)p_{\ast}\colon \pi_1(\tilde{X}, \tilde{x}_0) \to \pi_1(X, x_0) は単射である。
  2. HH は、x~0\tilde{x}_0 から始まる持ち上げがループになるような x0x_0 でのループの類全体である。
  3. X~\tilde{X} が弧状連結なら、pp の葉数は指数 [π1(X,x0):H][\pi_1(X, x_0) : H] に等しい。

証明. (1) p∘f~≃cx0p \circ \tilde{f} \simeq c_{x_0} なら、その道ホモトピーを持ち上げると、f~\tilde{f} から定値の道の持ち上げ(定値の道)への道ホモトピーが得られる。(2) 持ち上げ f~\tilde{f} がループなら [f]=p∗[f~][f] = p_{\ast}[\tilde{f}]。逆に [f]=p∗[g~][f] = p_{\ast}[\tilde{g}] なら f≃pg~f \simeq p \tilde{g} なので、系 3.5 (2) より ff の持ち上げの終点は g~(1)=x~0\tilde{g}(1) = \tilde{x}_0。(3) 右剰余類 H[g]H[g] に、gg の x~0\tilde{x}_0 からの持ち上げの終点 g~(1)∈p−1(x0)\tilde{g}(1) \in p^{-1}(x_0) を対応させる。[h]∈H[h] \in H なら h⋅gh \cdot g の持ち上げはループ h~\tilde{h} に続いて g~\tilde{g} をたどるので終点は変わらず、写像は well-defined である。X~\tilde{X} が弧状連結なので全射であり、g~(1)=g~′(1)\tilde{g}(1) = \tilde{g}'(1) なら g~⋅g~′‾\tilde{g} \cdot \overline{\tilde{g}'} は g⋅gˉ′g \cdot \bar{g}' の持ち上げのループなので [g][g′]−1∈H[g][g']^{-1} \in H、すなわち H[g]=H[g′]H[g] = H[g'] となり単射である。□\square

3.3 持ち上げの判定条件

定理 3.7(持ち上げの判定条件, lifting criterion)p ⁣:(X~,x~0)→(X,x0)p\colon (\tilde{X}, \tilde{x}_0) \to (X, x_0) を被覆写像、YY を弧状連結かつ局所弧状連結な空間とする。写像 f ⁣:(Y,y0)→(X,x0)f\colon (Y, y_0) \to (X, x_0) が f~(y0)=x~0\tilde{f}(y_0) = \tilde{x}_0 となる持ち上げ f~\tilde{f} をもつための必要十分条件は

f∗π1(Y,y0)⊂p∗π1(X~,x~0)f_{\ast} \pi_1(Y, y_0) \subset p_{\ast} \pi_1(\tilde{X}, \tilde{x}_0)

である。このとき持ち上げは一意である。

証明. 必要性は f∗=p∗f~∗f_{\ast} = p_{\ast} \tilde{f}_{\ast} から、一意性は補題 3.3 から従う。十分性を示す。y∈Yy \in Y に対し、y0y_0 から yy への道 γ\gamma をとり、f∘γf \circ \gamma の x~0\tilde{x}_0 からの持ち上げの終点を f~(y)\tilde{f}(y) と定める。

well-defined. 別の道 γ′\gamma' をとると、h=(f∘γ′)⋅(f∘γ)‾h = (f \circ \gamma') \cdot \overline{(f \circ \gamma)} は x0x_0 でのループで [h]∈f∗π1(Y,y0)⊂H[h] \in f_{\ast} \pi_1(Y, y_0) \subset H。命題 3.6 (2) より hh の x~0\tilde{x}_0 からの持ち上げはループである。この持ち上げは f∘γ′f \circ \gamma' の持ち上げに続いて f∘γ‾\overline{f \circ \gamma} の持ち上げをたどるものなので、後者を逆にたどれば、f∘γf \circ \gamma の x~0\tilde{x}_0 からの持ち上げの終点は f∘γ′f \circ \gamma' の持ち上げの終点に一致する。

連続性. y∈Yy \in Y と、f(y)f(y) の均一に被覆される開近傍 UU、f~(y)\tilde{f}(y) を含むシート U~\tilde{U} をとる。局所弧状連結性から、yy の弧状連結な開近傍 VV で f(V)⊂Uf(V) \subset U となるものがある。y′∈Vy' \in V に対し VV 内の yy から y′y' への道 η\eta を用いて道 γ⋅η\gamma \cdot \eta をとれば、f∘ηf \circ \eta の f~(y)\tilde{f}(y) からの持ち上げは (p∣U~)−1∘f∘η(p\vert_{\tilde{U}})^{-1} \circ f \circ \eta である。よって VV 上で f~=(p∣U~)−1∘f\tilde{f} = (p\vert_{\tilde{U}})^{-1} \circ f となり連続である。□\square

特に YY が単連結かつ局所弧状連結なら、任意の写像 Y→XY \to X は持ち上がる。局所弧状連結性の仮定は外せない:S1S^1 の円弧を「振動する曲線」で閉じた「ワルシャワの円」は単連結だが、S1S^1 への自然な写像は R\mathbb{R} へ持ち上がらない(証明は省略)。

3.4 被覆の同型と被覆変換群

二つの被覆 pk ⁣:X~k→Xp_k\colon \tilde{X}_k \to X の同型とは、同相写像 f ⁣:X~1→X~2f\colon \tilde{X}_1 \to \tilde{X}_2 で p2∘f=p1p_2 \circ f = p_1 となるものである。

命題 3.8 XX を弧状連結かつ局所弧状連結とし、pk ⁣:(X~k,x~k)→(X,x0)p_k\colon (\tilde{X}_k, \tilde{x}_k) \to (X, x_0)(k=1,2k = 1, 2)を弧状連結な被覆とする。x~1\tilde{x}_1 を x~2\tilde{x}_2 に写す同型が存在するための必要十分条件は p1∗π1(X~1,x~1)=p2∗π1(X~2,x~2)p_{1\ast} \pi_1(\tilde{X}_1, \tilde{x}_1) = p_{2\ast} \pi_1(\tilde{X}_2, \tilde{x}_2) である。

証明. 必要性は明らか。十分性:X~k\tilde{X}_k は XX と局所同相なので局所弧状連結である。定理 3.7 より、p1p_1 の p2p_2 に関する持ち上げ p~1 ⁣:(X~1,x~1)→(X~2,x~2)\tilde{p}_1\colon (\tilde{X}_1, \tilde{x}_1) \to (\tilde{X}_2, \tilde{x}_2) と、逆向きの p~2\tilde{p}_2 が存在する。p~2p~1\tilde{p}_2 \tilde{p}_1 は p1p_1 の p1p_1 に関する持ち上げで x~1\tilde{x}_1 を固定するので、補題 3.3 より恒等写像である。p~1p~2\tilde{p}_1 \tilde{p}_2 も同様。□\square

定義 3.9(被覆変換, deck transformation)被覆 p ⁣:X~→Xp\colon \tilde{X} \to X の自己同型、すなわち p∘τ=pp \circ \tau = p となる同相写像 τ ⁣:X~→X~\tau\colon \tilde{X} \to \tilde{X} を被覆変換といい、その全体のなす群を G(X~)G(\tilde{X}) と書く。各 x∈Xx \in X と x~,x~′∈p−1(x)\tilde{x}, \tilde{x}' \in p^{-1}(x) に対し τ(x~)=x~′\tau(\tilde{x}) = \tilde{x}' となる被覆変換が存在するとき、pp を正規被覆(正則被覆, normal covering)という。

X~\tilde{X} が連結なら、恒等写像でない被覆変換は不動点をもたない(τ\tau と id\mathrm{id} はともに pp の持ち上げなので、補題 3.3 による)。

定理 3.10 XX を弧状連結かつ局所弧状連結、p ⁣:(X~,x~0)→(X,x0)p\colon (\tilde{X}, \tilde{x}_0) \to (X, x_0) を弧状連結な被覆、H=p∗π1(X~,x~0)H = p_{\ast} \pi_1(\tilde{X}, \tilde{x}_0)、N(H)N(H) を HH の正規化群とする。

  1. pp が正規被覆であるための必要十分条件は、HH が π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) の正規部分群であることである。
  2. G(X~)≅N(H)/HG(\tilde{X}) \cong N(H)/H。特に正規被覆なら G(X~)≅π1(X,x0)/HG(\tilde{X}) \cong \pi_1(X, x_0)/H、X~\tilde{X} が単連結なら G(X~)≅π1(X,x0)G(\tilde{X}) \cong \pi_1(X, x_0)。

証明. x~1∈p−1(x0)\tilde{x}_1 \in p^{-1}(x_0) と x~0\tilde{x}_0 から x~1\tilde{x}_1 への道 γ~\tilde{\gamma} をとり、γ=p∘γ~\gamma = p \circ \tilde{\gamma}、H1=p∗π1(X~,x~1)H_1 = p_{\ast} \pi_1(\tilde{X}, \tilde{x}_1) とおく。x~1\tilde{x}_1 でのループ h~\tilde{h} に対し γ~⋅h~⋅γ~‾\tilde{\gamma} \cdot \tilde{h} \cdot \overline{\tilde{\gamma}} は x~0\tilde{x}_0 でのループなので [γ]H1[γ]−1⊂H[\gamma] H_1 [\gamma]^{-1} \subset H、対称性から H1=[γ]−1H[γ]H_1 = [\gamma]^{-1} H [\gamma]。x~1\tilde{x}_1 がファイバーを動くとき、[γ][\gamma] は π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) 全体を動く(任意のループの持ち上げはファイバーの点で終わる)。命題 3.8 より x~0↦x~1\tilde{x}_0 \mapsto \tilde{x}_1 となる被覆変換が存在するのは H=H1H = H_1、すなわち [γ]∈N(H)[\gamma] \in N(H) のときに限る。

(1) x0x_0 上のファイバーで被覆変換が推移的に働くことは、すべての [γ][\gamma] について [γ]∈N(H)[\gamma] \in N(H)、すなわち HH が正規であることと同値である。このとき他の点 xx 上のファイバーでも推移的である。実際 x~,x~′∈p−1(x)\tilde{x}, \tilde{x}' \in p^{-1}(x) に対し、xx から x0x_0 への道 η\eta の x~,x~′\tilde{x}, \tilde{x}' からの持ち上げの終点を y~,y~′\tilde{y}, \tilde{y}' とし、τ(y~)=y~′\tau(\tilde{y}) = \tilde{y}' となる τ\tau をとれば、τ\tau は y~\tilde{y} から始まる ηˉ\bar{\eta} の持ち上げを y~′\tilde{y}' から始まるものに写すので τ(x~)=x~′\tau(\tilde{x}) = \tilde{x}'。

(2) [γ]∈N(H)[\gamma] \in N(H) に、τγ(x~0)=γ~(1)\tau_\gamma(\tilde{x}_0) = \tilde{\gamma}(1) となる唯一の被覆変換 τγ\tau_\gamma を対応させる(持ち上げの終点は [γ][\gamma] のみによる)。γ⋅δ\gamma \cdot \delta の持ち上げは γ~\tilde{\gamma} に続いて τγ∘δ~\tau_\gamma \circ \tilde{\delta}(τγ(x~0)\tau_\gamma(\tilde{x}_0) から始まる δ\delta の持ち上げ)をたどるので、終点は τγ(δ~(1))=τγτδ(x~0)\tau_\gamma(\tilde{\delta}(1)) = \tau_\gamma \tau_\delta(\tilde{x}_0) であり、τγδ=τγτδ\tau_{\gamma\delta} = \tau_\gamma \tau_\delta。任意の被覆変換 τ\tau は、x~0\tilde{x}_0 から τ(x~0)\tau(\tilde{x}_0) への道をとれば τγ\tau_\gamma の形をしているので全射。τγ=id\tau_\gamma = \mathrm{id} は γ~\tilde{\gamma} がループであること、すなわち [γ]∈H[\gamma] \in H と同値なので、核は HH。□\square

例 3.11

  1. R→S1\mathbb{R} \to S^1 の被覆変換群は整数による平行移動の群 Z\mathbb{Z} であり、R\mathbb{R} が単連結なので定理 3.10 から再び π1(S1)≅Z\pi_1(S^1) \cong \mathbb{Z} を得る。
  2. Sn→RPnS^n \to \mathbb{R}P^n(n≥2n \geq 2)の被覆変換群は {±id}\lbrace \pm \mathrm{id} \rbrace で、SnS^n は単連結なので π1(RPn)≅Z/2\pi_1(\mathbb{R}P^n) \cong \mathbb{Z}/2(例 2.16 の別証明)。
  3. 正規でない被覆:8 の字 X=Sa1∨Sb1X = S^1_a \vee S^1_b に対し、頂点 v1,v2,v3v_1, v_2, v_3 と、ラベル aa の有向辺 v1→v1v_1 \to v_1, v2→v3v_2 \to v_3, v3→v2v_3 \to v_2、ラベル bb の有向辺 v1→v2v_1 \to v_2, v2→v1v_2 \to v_1, v3→v3v_3 \to v_3 からなるグラフ X~\tilde{X} を考える。頂点を x0x_0 に、ラベル aa(bb)の辺を向きを保って Sa1S^1_a(Sb1S^1_b)に写す写像は、各頂点にどのラベルの辺もちょうど 1 本入り 1 本出ているので 3 葉の被覆である。aa の持ち上げは v1v_1 からはループだが v3v_3 からはループでないので、a∈Hv1a \in H_{v_1}, a∉Hv3a \notin H_{v_3}。両者は共役なので Hv1H_{v_1} は正規でない。実際、被覆変換は aa のループをもつ唯一の頂点 v1v_1 を固定するので恒等写像に限る。

3.5 群作用による商と被覆

定義 3.12(被覆空間作用)群 GG が空間 YY に同相写像として作用し、各 y∈Yy \in Y が開近傍 UU で「g≠eg \neq e なら gU∩U=∅gU \cap U = \emptyset」を満たすものをもつとき、この作用を被覆空間作用という(真性不連続な作用ということも多い)。

有限群がハウスドルフ空間に自由に(単位元以外は不動点なしに)作用すれば被覆空間作用である(gygy たちの互いに素な近傍 WgW_g をとり U=⋂gg−1WgU = \bigcap_g g^{-1} W_g とおけばよい)。

命題 3.13 群 GG が YY に被覆空間作用で作用するとし、p ⁣:Y→Y/Gp\colon Y \to Y/G を商写像とする。

  1. pp は正規被覆で、YY が弧状連結なら被覆変換群は GG である。
  2. YY が弧状連結かつ局所弧状連結なら π1(Y/G)/p∗π1(Y)≅G\pi_1(Y/G)/p_{\ast} \pi_1(Y) \cong G。特に YY が単連結なら π1(Y/G)≅G\pi_1(Y/G) \cong G。
  3. 部分群 K≤GK \leq G について、自然な写像 Y/K→Y/GY/K \to Y/G は被覆写像である。

証明. (1) p−1(p(O))=⋃ggOp^{-1}(p(O)) = \bigcup_g gO より pp は開写像である。定義 3.12 の UU について p−1(p(U))=⨆g∈GgUp^{-1}(p(U)) = \bigsqcup_{g \in G} gU(g≠hg \neq h なら gU∩hU=h(h−1gU∩U)=∅gU \cap hU = h(h^{-1}gU \cap U) = \emptyset)で、p∣gUp\vert_{gU} は連続な開全単射だから同相である。gg は被覆変換で、同じファイバーの点は GG の作用で移り合う。被覆変換 τ\tau が τ(y)=gy\tau(y) = gy を満たせば、補題 3.3 より τ=g\tau = g。(2) (1) と定理 3.10 による。(3) 同じ UU について、p(U)p(U) の Y/KY/K における逆像は、剰余類 KgKg ごとの開集合 (KgU)/K(KgU)/K の非交和で、各々は p(U)p(U) と同相である。□\square

例 3.14

  1. Zn\mathbb{Z}^n の Rn\mathbb{R}^n への平行移動による作用は被覆空間作用で、Rn/Zn=Tn\mathbb{R}^n/\mathbb{Z}^n = T^n、π1(Tn)≅Zn\pi_1(T^n) \cong \mathbb{Z}^n。
  2. {±1}\lbrace \pm 1 \rbrace の SnS^n への作用で Sn/{±1}=RPnS^n/\lbrace \pm 1 \rbrace = \mathbb{R}P^n。
  3. m≥2m \geq 2 と mm と互いに素な qq について、ζ=e2πi/m\zeta = e^{2\pi i/m} として Z/m\mathbb{Z}/m を S3⊂C2S^3 \subset \mathbb{C}^2 に (z,w)↦(ζz,ζqw)(z, w) \mapsto (\zeta z, \zeta^q w) で作用させた商をレンズ空間 L(m,q)L(m, q) という。π1(L(m,q))≅Z/m\pi_1(L(m, q)) \cong \mathbb{Z}/m(問題 3.6)。
  4. g≥2g \geq 2 の閉曲面 MgM_g は、π1(Mg)\pi_1(M_g) の双曲平面への被覆空間作用による商として得られ、普遍被覆は R2\mathbb{R}^2 と同相である(19-riemann-surfaces 第6章)。

3.6 普遍被覆

単連結な被覆空間を普遍被覆 (universal covering) という。定理 3.7 より、普遍被覆は任意の弧状連結な被覆を経由する(普遍性)。

普遍被覆が存在するための必要条件を調べる。p ⁣:X~→Xp\colon \tilde{X} \to X を普遍被覆とし、xx の均一に被覆される近傍 UU をとる。UU 内のループはシートの中のループに持ち上がり、X~\tilde{X} の中で零ホモトピックなので、それを pp で写せば XX の中で零ホモトピックである。そこで、各点 xx が開近傍 UU で「π1(U,x)→π1(X,x)\pi_1(U, x) \to \pi_1(X, x) が自明」となるものをもつ空間を半局所単連結 (semilocally simply connected) という。CW 複体や多様体は半局所単連結である。一方、半径 1/n1/n の円周たちを原点で接するように並べた「ハワイの耳飾り」は、原点のどの近傍にも縮まない小さなループがあるので半局所単連結でなく、普遍被覆をもたない。

定理 3.15(普遍被覆の存在)XX が弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結ならば、XX は普遍被覆をもつ。

証明の概略. x0x_0 を固定し、X~\tilde{X} を x0x_0 から始まる道の道ホモトピー類全体、p([γ])=γ(1)p([\gamma]) = \gamma(1) とする。U\mathcal{U} を「弧状連結で π1(U)→π1(X)\pi_1(U) \to \pi_1(X) が自明な開集合 UU」全体とすると、仮定から U\mathcal{U} は XX の開基である。U∈UU \in \mathcal{U} と γ(1)∈U\gamma(1) \in U に対し

U[γ]={[γ⋅η]∣η は γ(1) から始まる U 内の道}U_{[\gamma]} = \lbrace [\gamma \cdot \eta] \mid \eta \text{ は } \gamma(1) \text{ から始まる } U \text{ 内の道} \rbrace

とおく。p ⁣:U[γ]→Up\colon U_{[\gamma]} \to U は全単射である(全射は UU の弧状連結性から、単射は η⋅ηˉ′\eta \cdot \bar{\eta}' が UU 内のループで XX で零ホモトピックなことから)。また [γ′]∈U[γ][\gamma'] \in U_{[\gamma]} なら U[γ′]=U[γ]U_{[\gamma']} = U_{[\gamma]} であり、これから U[γ]U_{[\gamma]} たちが X~\tilde{X} の位相の開基をなすこと、p−1(U)p^{-1}(U) が互いに素な U[γ]U_{[\gamma]} の和であり pp が各 U[γ]U_{[\gamma]} を UU に同相に写すことがわかる。よって pp は被覆写像である。γ\gamma に対し γt(s)=γ(ts)\gamma_t(s) = \gamma(ts) とおくと、t↦[γt]t \mapsto [\gamma_t] は [cx0][c_{x_0}] から始まる γ\gamma の持ち上げであり、[γ][\gamma] で終わる。よって X~\tilde{X} は弧状連結で、この持ち上げがループになるのは [γ]=[cx0][\gamma] = [c_{x_0}] のときに限るから、命題 3.6 より p∗π1(X~)=1p_{\ast} \pi_1(\tilde{X}) = 1、したがって π1(X~)=1\pi_1(\tilde{X}) = 1。位相に関する細部の確認は Hatcher, 1.3 節を参照。□\square

3.7 被覆空間の分類定理

定理 3.16(被覆空間のガロア対応)XX を弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結とする。

  1. 弧状連結な基点付き被覆 p ⁣:(X~,x~0)→(X,x0)p\colon (\tilde{X}, \tilde{x}_0) \to (X, x_0) の(基点を保つ)同型類全体と、π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) の部分群全体とは、p↦p∗π1(X~,x~0)p \mapsto p_{\ast} \pi_1(\tilde{X}, \tilde{x}_0) によって一対一に対応する。
  2. 基点を忘れると、被覆の同型類は部分群の共役類と一対一に対応する。
  3. 正規被覆は正規部分群に対応し、葉数は部分群の指数に等しい。

証明. (1) 単射性は命題 3.8 である。全射性:定理 3.15 の普遍被覆 X~→X\tilde{X} \to X をとる。定理 3.10 より被覆変換群 GG は π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) と同型で([γ]↦τγ[\gamma] \mapsto \tau_\gamma)、GG の作用は被覆空間作用である。実際、弧状連結な均一に被覆される開集合 UU 上のシート U~\tilde{U} は p−1(U)p^{-1}(U) の弧状連結成分なので、被覆変換はシートをシートに写し、gU~=U~g\tilde{U} = \tilde{U} なら gg は U~\tilde{U} 上で恒等写像(p∣U~p\vert_{\tilde{U}} の単射性)となり g=eg = e。よって g≠eg \neq e なら gU~∩U~=∅g\tilde{U} \cap \tilde{U} = \emptyset。部分群 HH に対応する K={τγ∣[γ]∈H}K = \lbrace \tau_\gamma \mid [\gamma] \in H \rbrace をとると、命題 3.13 (3) より X~/K→X~/G=X\tilde{X}/K \to \tilde{X}/G = X は被覆である。ループ γ\gamma が X~/K\tilde{X}/K の基点 [x~0][\tilde{x}_0] からループに持ち上がるのは、X~\tilde{X} での持ち上げの終点 τγ(x~0)\tau_\gamma(\tilde{x}_0) が Kx~0K\tilde{x}_0 に入るとき、すなわち [γ]∈H[\gamma] \in H のときなので、命題 3.6 (2) よりこの被覆の像は HH である。(2) 定理 3.10 の証明で見たとおり、基点をファイバー内で動かすと部分群は共役で移り、すべての共役が現れる。(3) 定理 3.10 と命題 3.6 (3) による。□\square

例 3.17

  1. π1(S1)=Z\pi_1(S^1) = \mathbb{Z} の部分群 nZn\mathbb{Z}(n≥1n \geq 1)は pn ⁣:S1→S1p_n\colon S^1 \to S^1 に、{0}\lbrace 0 \rbrace は R→S1\mathbb{R} \to S^1 に対応する。S1S^1 の連結な被覆はこれで尽きる。
  2. RPn\mathbb{R}P^n(n≥2n \geq 2)の連結な被覆は、自分自身と SnS^n のみである。
  3. π1(T2)=Z2\pi_1(T^2) = \mathbb{Z}^2 の部分群は階数 0,1,20, 1, 2 の自由アーベル群で、対応する被覆は R2\mathbb{R}^2、S1×RS^1 \times \mathbb{R}、T2T^2 のいずれかと同相である。

3.8 応用:自由群の部分群

グラフ(1 次元 CW 複体)について次の事実を使う。(a) グラフの被覆空間はグラフである(頂点の逆像を頂点とし、各辺の持ち上げを辺とする)。(b) 連結グラフ Γ\Gamma は極大木(すべての頂点を含む部分木)TT をもち、TT は可縮で Γ→Γ/T\Gamma \to \Gamma/T はホモトピー同値である(Hatcher, 命題 0.17 と 1A 節)。Γ/T\Gamma/T は TT に含まれない辺の数だけの円周のブーケなので、π1(Γ)\pi_1(\Gamma) は自由群であり、TT に含まれない各辺 ee(vv から ww へ)に対するループ「基点から TT 内で vv へ行き、ee を通り、TT 内で基点に戻る」が基底をなす。

定理 3.18(ニールセン–シュライアーの定理, Nielsen–Schreier theorem)自由群の部分群は自由群である。

証明の概略. F=F(S)=π1(⋁SS1)F = F(S) = \pi_1(\bigvee_S S^1) とし、部分群 HH に対応する被覆 X~H\tilde{X}_H をとる(定理 3.16、ブーケは定理の仮定を満たす)。(a) より X~H\tilde{X}_H は連結グラフで、(b) より H≅π1(X~H)H \cong \pi_1(\tilde{X}_H) は自由群である。□\square

定理 3.19(シュライアーの指数公式)FnF_n の指数 kk の部分群 HH は、階数 k(n−1)+1k(n - 1) + 1 の自由群である。

証明. 対応する被覆 X~H\tilde{X}_H は kk 葉なので、頂点 kk 個・辺 knkn 本の有限連結グラフである。頂点 VV 個の木は辺を V−1V - 1 本もつ(葉を一つずつ取り除く帰納法)ので、極大木に含まれない辺は kn−(k−1)kn - (k - 1) 本であり、これが HH の階数である。□\square

例 3.20 F2=⟨a,b⟩F_2 = \langle a, b \rangle から Z/2\mathbb{Z}/2 への準同型 a↦1a \mapsto 1, b↦0b \mapsto 0 の核 HH は指数 2 で、対応する被覆は頂点 v0,v1v_0, v_1、ラベル aa の辺 v0→v1v_0 \to v_1, v1→v0v_1 \to v_0、各頂点での bb のループからなる。極大木として aa の辺 v0→v1v_0 \to v_1 をとると、残りの辺から a2a^2, bb, aba−1aba^{-1} が得られ、HH はこれらを基底とする階数 3=2(2−1)+13 = 2(2 - 1) + 1 の自由群である。自由群の部分群の階数は元の群の階数より大きくなりうるのである。

まとめ

  • 被覆写像では道とホモトピーが一意に持ち上がり(ホモトピー持ち上げ性質)、p∗p_{\ast} は単射、葉数は [π1(X):p∗π1(X~)][\pi_1(X) : p_{\ast}\pi_1(\tilde{X})] に等しい。
  • 持ち上げの判定条件:局所弧状連結な YY からの写像 ff が持ち上がる ⇔\Leftrightarrow f∗π1(Y)⊂p∗π1(X~)f_{\ast}\pi_1(Y) \subset p_{\ast}\pi_1(\tilde{X})。
  • 被覆変換群は N(H)/HN(H)/H と同型で、正規被覆は正規部分群に対応する。普遍被覆の被覆変換群は π1(X)\pi_1(X) である。
  • 被覆空間作用による商 Y→Y/GY \to Y/G は正規被覆で、YY が単連結なら π1(Y/G)≅G\pi_1(Y/G) \cong G(トーラス、射影空間、レンズ空間)。
  • 弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結な空間は普遍被覆をもち、連結な被覆は基本群の部分群(の共役類)と一対一に対応する。
  • 応用:自由群の部分群は自由群であり、FnF_n の指数 kk の部分群の階数は k(n−1)+1k(n - 1) + 1。

演習問題

問題 3.1 ★ n≥1n \geq 1 について pn ⁣:S1→S1p_n\colon S^1 \to S^1, z↦znz \mapsto z^n が nn 葉の正規被覆であることを示し、被覆変換群と pn∗π1(S1)p_{n\ast}\pi_1(S^1) を求めよ。

解答

w∈S1w \in S^1 について U=S1∖{w}U = S^1 \setminus \lbrace w \rbrace とおくと、pn−1(U)p_n^{-1}(U) は S1S^1 から ww の nn 乗根 nn 個を除いた nn 本の開弧で、各開弧(中心角 2π/n2\pi/n)は eiθ↦einθe^{i\theta} \mapsto e^{in\theta} により UU へ同相に写る。ζ=e2πi/n\zeta = e^{2\pi i/n} として回転 z↦ζkzz \mapsto \zeta^k z は被覆変換で、各ファイバーに推移的に作用する。被覆変換は一点の像で決まるので、被覆変換群はこれら nn 個の回転からなる Z/n\mathbb{Z}/n である。問題 1.2 より pn∗π1(S1)=nZp_{n\ast}\pi_1(S^1) = n\mathbb{Z} で、定理 3.10 と整合する。

問題 3.2 ★ XX が単連結かつ局所弧状連結ならば、弧状連結な被覆 p ⁣:X~→Xp\colon \tilde{X} \to X はすべて同相写像であることを示せ。

解答

命題 3.6 (3) より葉数は [π1(X):p∗π1(X~)]=1[\pi_1(X) : p_{\ast}\pi_1(\tilde{X})] = 1 なので pp は全単射である。被覆写像は開写像(局所同相)なので、pp は同相写像である。

問題 3.3 ★★ n≥2n \geq 2 について、任意の写像 Sn→S1S^n \to S^1 と任意の写像 RPn→S1\mathbb{R}P^n \to S^1 は零ホモトピックであることを示せ。

解答

X=SnX = S^n または RPn\mathbb{R}P^n は弧状連結・局所弧状連結で、π1(X)\pi_1(X) は 11 または Z/2\mathbb{Z}/2 である。Z\mathbb{Z} には位数 2 の元がないので、写像 f ⁣:X→S1f\colon X \to S^1 について f∗=0f_{\ast} = 0 となり、定理 3.7 より ff は R\mathbb{R} へ持ち上がる。f~≃c0\tilde{f} \simeq c_0(直線ホモトピー (1−t)f~(1-t)\tilde{f})なので f=pf~f = p\tilde{f} は零ホモトピックである。

問題 3.4 ★★ R2\mathbb{R}^2 の同相写像 α(x,y)=(x+1,−y)\alpha(x, y) = (x + 1, -y), β(x,y)=(x,y+1)\beta(x, y) = (x, y + 1) が生成する群 GG の作用は被覆空間作用であり、R2/G\mathbb{R}^2/G はクラインの壺であることを示せ。また π1\pi_1 を求め、トーラスがクラインの壺を 2 葉被覆することを示せ。

解答

αmβn(x,y)=(x+m,(−1)m(y+n))\alpha^m \beta^n(x, y) = (x + m, (-1)^m (y + n)) であり、GG の元は (x,y)↦(x+m,(−1)my+n′)(x, y) \mapsto (x + m, (-1)^m y + n')(m,n′∈Zm, n' \in \mathbb{Z})の形をしている。単位元以外は xx または yy を 1 以上ずらすので、半径 1/21/2 の開円板は自分と交わらない位置に写る。正方形 [0,1]2[0, 1]^2 で考えると、β\beta は下辺と上辺を同じ向きに、βα\beta\alpha に相当する同一視 (0,y)∼(1,1−y)(0, y) \sim (1, 1 - y) は左辺と右辺を逆向きに貼り合わせるので、商はクラインの壺である。R2\mathbb{R}^2 は単連結なので π1≅G\pi_1 \cong G で、αβα−1=β−1\alpha\beta\alpha^{-1} = \beta^{-1} が成り立つ(問題 2.2 の表示と一致)。指数 2 の部分群 K=⟨α2,β⟩≅Z2K = \langle \alpha^2, \beta \rangle \cong \mathbb{Z}^2 は平行移動からなり、R2/K\mathbb{R}^2/K はトーラスで、命題 3.13 (3) より R2/K→R2/G\mathbb{R}^2/K \to \mathbb{R}^2/G は 2 葉被覆である。

問題 3.5 ★★ 8 の字 S1∨S1S^1 \vee S^1 の連結な 2 葉被覆を同型を除いてすべて求めよ。

解答

定理 3.16 より、指数 2 の部分群 H≤F2=⟨a,b⟩H \leq F_2 = \langle a, b \rangle の共役類と対応する。指数 2 の部分群は正規で、全射 F2→Z/2F_2 \to \mathbb{Z}/2 の核であり、全射は (a,b)(a, b) の像 (1,0),(0,1),(1,1)(1, 0), (0, 1), (1, 1) で決まる。よって 3 個ある。いずれも頂点 2 個のグラフで、像が 1 のラベルの辺は二つの頂点を入れ替えるように、像が 0 のラベルの辺は各頂点でのループとして張られる。

問題 3.6 ★★ 例 3.14 (3) の作用が自由であることを示し、π1(L(m,q))≅Z/m\pi_1(L(m, q)) \cong \mathbb{Z}/m を示せ。

解答

k∈Z/mk \in \mathbb{Z}/m が (z,w)∈S3(z, w) \in S^3 を固定するとする。z≠0z \neq 0 なら ζk=1\zeta^k = 1 より k=0k = 0。w≠0w \neq 0 なら ζqk=1\zeta^{qk} = 1 より m∣qkm \mid qk で、gcd⁡(q,m)=1\gcd(q, m) = 1 から m∣km \mid k。よって作用は自由で、有限群の自由な作用なので被覆空間作用である。S3S^3 は単連結(定理 1.31)なので、命題 3.13 (2) より π1(L(m,q))≅Z/m\pi_1(L(m, q)) \cong \mathbb{Z}/m。

問題 3.7 ★★★ F2=⟨a,b⟩F_2 = \langle a, b \rangle から Z/3\mathbb{Z}/3 への準同型 a↦1a \mapsto 1, b↦0b \mapsto 0 の核の基底を求めよ。また F2F_2 は任意の n≥1n \geq 1 について FnF_n と同型な部分群をもつことを示せ。

解答

対応する 3 葉被覆は、頂点 v0,v1,v2v_0, v_1, v_2、ラベル aa の辺 vi→vi+1v_i \to v_{i+1}(添字は 3 を法として)、各頂点での bb のループからなる。極大木として aa の辺 v0→v1→v2v_0 \to v_1 \to v_2 をとると、残りの辺から a3a^3, bb, aba−1aba^{-1}, a2ba−2a^2 b a^{-2} が得られ、これが核の基底である(階数 4=3⋅1+14 = 3 \cdot 1 + 1)。一般に a↦1a \mapsto 1, b↦0b \mapsto 0 による F2→Z/kF_2 \to \mathbb{Z}/k の核は指数 kk で、定理 3.19 より階数 k+1k + 1 の自由群である。n≥2n \geq 2 なら k=n−1k = n - 1 とすればよく、n=1n = 1 なら ⟨a⟩≅F1\langle a \rangle \cong F_1。

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