この章の目標
- 多様体の局所ホモロジーを用いて向き付けを定義し、向き付け二重被覆との関係を理解する
- 閉多様体の基本類の存在(主張)とキャップ積を理解する
- ポアンカレ双対定理を正確に述べ、オイラー標数・交叉形式・射影空間のコホモロジー環に応用できる
- レフシェッツ双対・アレクサンダー双対・ド・ラームの定理の主張を知る
前提:第3章、第5章、第6章。07-manifolds 第6章(向き付け)、第7章があれば理解が深まる。
7.1 動機
これまでに計算した閉曲面や射影空間のベッチ数(ホモロジーの階数)を並べてみる。
| 空間 |
次元 n |
b0,b1,…,bn |
| Mg |
2 |
1,2g,1 |
| T3 |
3 |
1,3,3,1 |
| CPn |
2n |
1,0,1,0,…,0,1 |
| RP3 |
3 |
1,0,0,1 |
いずれも bk=bn−k という対称性をもつ。これは偶然ではない。閉多様体を三角形分割し、各 k 単体に、それと「直交する」(n−k) 次元の双対胞体を対応させると、多様体の別の胞体分割が得られる。k 胞体と (n−k) 胞体が入れ替わるので、一方の胞体鎖複体は他方の双対鎖複体になり、Hk≅Hn−k が期待される。ポアンカレはこのように考えた。本章ではこのポアンカレ双対性を、向き付けの概念とともに正確に定式化する。
7.2 局所ホモロジーと向き付け
本章で n 次元多様体とは、各点が Rn と同相な開近傍をもつハウスドルフかつ第二可算な空間とし、コンパクトなものを閉多様体という(境界は考えない)。以下、閉多様体のホモロジーは有限生成であることを用いる(コンパクト多様体は有限 CW 複体とホモトピー同値であることが知られており、滑らかな閉多様体は三角形分割をもつ)。
x∈M のまわりの座標近傍 U≅Rn をとると、切除定理と定理 5.5 の証明から
Hk(M,M∖{x})≅Hk(Rn,Rn∖{0})≅{Z0(k=n)(k=n)
である。Rn の向き(右手系か左手系か)は、線形同型の行列式の符号で区別された。位相多様体では微分が使えないので、この生成元の選択を向きとみなす。
定義 7.1(向き付け, orientation)Hn(M,M∖{x})≅Z の生成元 μx を x における局所向きという。各点に局所向きを対応させる関数 x↦μx が次を満たすとき向き付けという:各点 x に対し、x を含む座標近傍 U≅Rn の中の有界な開球 B∋x と、元 μB∈Hn(M,M∖B)≅Z で、μB の像がすべての y∈B について μy になる(像は自然な写像 Hn(M,M∖B)→Hn(M,M∖{y}) によるもので、これは同型である)ものが存在する。向き付けが存在する多様体を向き付け可能という。
可換環 R について、Hn(M,M∖{x};R)≅R の生成元(R の単元に対応)を用いれば R 向き付けが同様に定義される。Z/2 の単元は 1 だけなので、すべての多様体は Z/2 向き付け可能である。
局所向きの全体 M~={μx∣x∈M,μx は x における局所向き} に、U(μB)={μy∣y∈B,μy は μB の像} を開基とする位相を入れると、p(μx)=x は 2 葉の被覆写像になる(各 B は U(μB)⊔U(−μB) で均一に被覆される)。これを向き付け二重被覆という。向き付けとは連続な切断 M→M~ のことなので、次がわかる。
命題 7.2 M を連結な多様体とする。M が向き付け可能であることと、M~ が二つの連結成分をもつことは同値である。特に π1(M) が指数 2 の部分群をもたなければ(たとえば M が単連結なら)、M は向き付け可能である。
証明. 向き付け s:M→M~ があれば、s(M) と −s(M) は M~ を二つの開集合に分ける。逆に M~ が連結でなければ、各成分は 1 葉の被覆、すなわち p で M と同相に写り、その逆写像が向き付けを与える。後半:M~ が連結なら連結な 2 葉被覆なので、定理 3.16 より π1(M) は指数 2 の部分群をもつ(多様体は局所弧状連結・半局所単連結)。□
7.3 基本類
定理 7.3(基本類の存在)M を連結な閉 n 次元多様体とする。
- M が R 向き付け可能なら、すべての x について Hn(M;R)→Hn(M,M∖{x};R)≅R は同型である。
- M が向き付け不可能なら Hn(M;Z)=0 である。
- k>n なら Hk(M;R)=0 である。
証明の概略. コンパクト集合 K⊂M について、「R 向き付け x↦μx が与えられれば、すべての x∈K で μx に写る μK∈Hn(M,M∖K;R) がただ一つ存在し、k>n なら Hk(M,M∖K;R)=0」を示す。座標近傍内の凸なコンパクト集合では直接の計算、その有限和ではマイヤー–ヴィートリス完全列による帰納法、一般のコンパクト集合では極限をとる議論で示される。K=M とすれば (1), (3) を得る。(2) も同様の議論による。詳細は Hatcher, 補題 3.27 と定理 3.26。□
定義 7.4(基本類, fundamental class)R 向き付けされた連結閉多様体 M について、すべての x で局所向き μx に写る Hn(M;R) の元を基本類といい [M] と書く。
例 7.5
- 定理 7.3 より、連結閉多様体 M が向き付け可能であることと Hn(M;Z)≅Z であることは同値である。H2(Mg)≅Z、H2(Nh)=0 より、Mg は向き付け可能で Nh(射影平面・クラインの壺など)は向き付け不可能である。[Mg] は 2 胞体(例 4.5 のトーラスでは基本輪体 U−L)で代表される。
- 例 5.16 より、RPn が向き付け可能であるのは n が奇数のときに限る。Z/2 係数ではつねに [RPn]∈Hn(RPn;Z/2)≅Z/2 がある。
- Sn(n≥2)と CPn は単連結なので向き付け可能である(CPn の単連結性は、胞体が偶数次元にしかないことと命題 2.15 からわかる)。Tn も Hn(Tn)≅Z(キュネットの公式)より向き付け可能である。
向き付けられた連結閉 n 次元多様体の間の写像 f:M→N について、f∗[M]=d [N] となる整数 d を f の写像度という。M=N=Sn なら 5.4 節の写像度と一致する。
7.4 キャップ積
定義 7.6(キャップ積, cap product)σ:Δk→X と φ∈Cl(X;R)(l≤k)に対し
σ⌢φ=φ(σ∣[e0,…,el])σ∣[el,…,ek]∈Ck−l(X;R)
と定め、Ck(X;R) 上に線形に拡張する。
直接の計算で ∂(σ⌢φ)=(−1)l(∂σ⌢φ−σ⌢δφ) が確かめられる。よって輪体と余輪体のキャップ積は輪体であり、キャップ積は Hk(X;R)×Hl(X;R)→Hk−l(X;R) を誘導する。定義からすぐに次がわかる。
命題 7.7 (1) ψ∈Ck−l(X;R) について ψ(σ⌢φ)=(φ⌣ψ)(σ)。したがってコホモロジーで ⟨β,a⌢α⟩=⟨α⌣β,a⟩(⟨γ,a⟩ は余輪体を輪体で評価する対)。(2) 写像 f:X→Y について f∗(a)⌢α=f∗(a⌢f∗α)。
7.5 ポアンカレ双対定理
定理 7.8(ポアンカレ双対定理, Poincaré duality)M を R 向き付けされた閉 n 次元多様体、[M] を基本類とする(非連結なら各成分の基本類の和)。このとき
D:Hk(M;R)→Hn−k(M;R),D(α)=[M]⌢α
はすべての k について同型である。
証明の概略. 非コンパクトな多様体も含めて、コンパクト台コホモロジー Hck(M;R)(コンパクト集合 K についての Hk(M,M∖K;R) の帰納極限)から Hn−k(M;R) への双対写像 DM(μK⌢ で定める)が同型であることを示す。閉多様体では Hck=Hk である。(i) M=Rn では直接計算できる。(ii) 開集合 U,V と U∩V で成り立てば U∪V でも成り立つ(Hc と H のマイヤー–ヴィートリス完全列を D が符号を除いて可換に結ぶので、補題 4.20 を使う)。(iii) 開集合の増大列の和でも成り立つ(帰納極限をとる)。(i)–(iii) を組み合わせて、Rn の開集合、さらに一般の多様体へと広げる。詳細は Hatcher, 定理 3.35。□
系 7.9 M を連結な閉 n 次元多様体、F を体とし、M は F 向き付け可能とする(F=Z/2 ならつねに成り立つ)。
- dimFHk(M;F)=dimFHn−k(M;F)。
- カップ積による対 Hk(M;F)×Hn−k(M;F)→F, (α,β)↦⟨α⌣β,[M]⟩ は非退化である。すなわち α=0 なら ⟨α⌣β,[M]⟩=0 となる β がある。
- M が向き付け可能なら、整数係数でも、ねじれ部分群で割った Hk(M;Z)/tors×Hn−k(M;Z)/tors→Z はユニモジュラー(一方の基底に対する行列が Z 上可逆)である。
証明. (1) 系 6.6 (2) より Hk(M;F)≅HomF(Hk(M;F),F) で、有限次元なので次元は等しい。これと定理 7.8 による。(2) 命題 7.7 (1) より ⟨α⌣β,[M]⟩=⟨β,D(α)⟩。α↦⟨α⌣−,[M]⟩ は、同型 D:Hk→Hn−k と、Hn−k から HomF(Hn−k,F) への同型(普遍係数定理による Hn−k≅HomF(Hn−k,F) の双対)の合成なので同型である。(3) 同様に、Hn−k/tors≅Hom(Hn−k,Z) と定理 7.8 から従う。□
整数係数では、普遍係数定理と合わせると、閉向き付け可能多様体の Hk と Hn−k の自由部分の階数が等しく、Hk のねじれ部分群と Hn−k−1 のねじれ部分群が同型であることもわかる。
注意
向き付け可能性の仮定は外せない。RP2 では H0(RP2;Z)≅Z だが H2(RP2;Z)=0 であり、整数係数の双対は成り立たない。Z/2 係数なら Hk(RP2;Z/2)≅H2−k(RP2;Z/2)≅Z/2 と成り立つ。また、コンパクトでない多様体では Hk を Hck に替えなければならない(Rn では H0≅Z だが Hn=0)。
たとえば例 6.16 の Mg の基底 α1,β1,…,αg,βg について、αi と対をなして非零になるのは βi だけであり、カップ積の対 H1×H1→Z の行列は
(0−110)
を g 個対角に並べたもの(行列式 1)である。これは系 7.9 (3) のユニモジュラー性の具体例である。
7.6 応用
定理 7.10 奇数次元の閉多様体 M のオイラー標数は 0 である。
証明. 定理 5.19 の証明は、胞体鎖複体に Z/2 をテンソルした鎖複体(Z/2 上の有限次元ベクトル空間の鎖複体)にもそのまま使え、χ(M)=∑k(−1)kdimHk(M;Z/2) を得る。系 7.9 (1)(F=Z/2)より dimHk=dimHn−k で、n が奇数なら k と n−k の偶奇が異なるので、交代和の項は対ごとに打ち消し合う。□
偶数次元では χ(S2k)=2、χ(Mg)=2−2g のように 0 とは限らない。
次に第6章の定理 6.15 を証明する。
定理 7.11 (1) H∗(CPn;Z)≅Z[α]/(αn+1)(α は次数 2)。(2) H∗(RPn;Z/2)≅Z/2[α]/(αn+1)(α は次数 1)。
証明. (1) n についての帰納法。n=1 では CP1=S2 で明らか。CPn=CPn−1∪e2n で Hk(CPn,CPn−1)≅H~k(S2n)=0(k<2n)なので、長完全列より包含写像は k≤2n−2 で同型 Hk(CPn)≅Hk(CPn−1) を誘導する。これは環準同型なので、帰納法の仮定から、H2(CPn) の生成元 α について αk は k≤n−1 で H2k(CPn)≅Z を生成する。CPn は向き付け可能でねじれがないので、系 7.9 (3) より H2×H2n−2→Z はユニモジュラーであり、生成元どうしの値 ⟨α⌣αn−1,[CPn]⟩ は ±1 である。よって αn は H2n(CPn)≅Z を生成する。H∗ は α0,…,αn を基底とする自由加群で、αn+1=0 である。(2) Z/2 係数で同じ議論を行う(Hk(RPn;Z/2)≅Z/2、0≤k≤n、例 6.7。n=1 では RP1=S1 で明らか)。ただし RPn=RPn−1∪en なので、長完全列から包含写像が誘導する Hk(RPn;Z/2)→Hk(RPn−1;Z/2) は k≤n−2 で同型、k=n−1 では(Hn−1(RPn,RPn−1;Z/2)≅H~n−1(Sn;Z/2)=0 より)単射であり、両辺とも Z/2 なのでやはり同型である。よって帰納法の仮定から αk(k≤n−1)が Hk(RPn;Z/2) を生成する。系 7.9 (2) を F=Z/2 で使うと、H1×Hn−1→Z/2 は非退化なので ⟨α⌣αn−1,[RPn]⟩=0、すなわち αn=0 が Hn(RPn;Z/2) を生成する。□
n→∞ として、H∗(CP∞;Z)≅Z[α]、H∗(RP∞;Z/2)≅Z/2[α] も得られる。
定義 7.12(交叉形式と符号数)M を向き付けられた閉 4k 次元多様体とする。QM(α,β)=⟨α⌣β,[M]⟩ は H2k(M;Z)/tors 上の対称な(次数 2k が偶数なので定理 6.12 より αβ=βα)ユニモジュラーな双線形形式であり、交叉形式 (intersection form) という。実係数に拡張した対称形式の符号 b+−b−(正の固有値の個数と負の固有値の個数の差)を M の符号数 (signature) σ(M) という。
「交叉」の名前は、滑らかな場合に α,β のポアンカレ双対である 2k 次元部分多様体どうしの交点を符号付きで数えたものが QM(α,β) になることに由来する。
例 7.13
- CP2 では H2=Zα、⟨α2,[CP2]⟩=±1 で、向きを選べば Q=(1)、σ=1。
- S2×S2 では、キュネットの公式より H2 の基底 a=x×1, b=1×y について a2=b2=0、ab は H4 の生成元なので、交叉形式の行列は
Q=(0110)
で σ=0。
3. 向きを逆にすると [M] が −[M] になり、Q は −Q、σ は −σ になる。したがって σ(M)=0 なら、M には向きを逆にする(f∗[M]=−[M] となる)自己同相写像は存在しない。たとえば CP2 がそうである。
7.7 レフシェッツ双対とアレクサンダー双対
境界をもつ多様体や、球面の部分集合についても双対定理がある(証明は Hatcher, 定理 3.43 と定理 3.44 を参照)。
定理 7.14(レフシェッツ双対定理)M を R 向き付けされた境界付きコンパクト n 次元多様体とすると、基本類 [M]∈Hn(M,∂M;R) とのキャップ積により、Hk(M;R)≅Hn−k(M,∂M;R) および Hk(M,∂M;R)≅Hn−k(M;R) が成り立つ。
たとえば M=Dn では H0(Dn)≅Hn(Dn,Sn−1)≅Z である。応用として、閉多様体 N がコンパクト多様体の境界ならば χ(N) は偶数であることが示される。よって RP2k, CP2k はどんなコンパクト多様体の境界にもならない。
定理 7.15(アレクサンダー双対定理, Alexander duality)K⊂Sn を空でない真部分集合で、コンパクトかつ局所可縮(たとえば有限 CW 複体と同相)とする。このとき H~i(Sn∖K;Z)≅H~n−i−1(K;Z) である。
K≅Sn−1 なら H~0(Sn∖K)≅H~n−1(Sn−1)≅Z なので補集合はちょうど二つの弧状連結成分をもち、ジョルダン–ブラウアーの分離定理(定理 5.23)が再び得られる。K が S3 内の結び目(K≅S1)なら、H1(S3∖K)≅H1(S1)≅Z、H2(S3∖K)≅H~0(S1)=0 であり、補空間のホモロジーは結び目の結ばれ方によらない(問題 4.7)。補空間の位相は K だけでなく埋め込み方に依存するが、そのホモロジーは K のコホモロジーだけで決まるのである。
7.8 ド・ラームの定理
滑らかな多様体 M では、k 次微分形式 ω を滑らかな特異 k 単体 σ 上で積分する写像 σ↦∫σω が k 余鎖を与える。ストークスの定理 ∫σdω=∫∂σω は、これが微分 d と余境界 δ を結ぶ鎖写像であることを意味する。
定理 7.16(ド・ラームの定理, de Rham theorem)滑らかな多様体 M について、積分は同型 HdRk(M)≅Hk(M;R) を与え、外積 ∧ をカップ積 ⌣ に写す。
証明は Bott–Tu の本などを参照(主張のみ)。07-manifolds 第7章で計算したド・ラーム・コホモロジーは、この定理により実係数の特異コホモロジーと一致する。閉じた向き付けられた多様体では、系 7.9 (2) は「(α,β)↦∫Mα∧β が HdRk(M)×HdRn−k(M) 上の非退化な対である」という形になる。これはリーマン計量を用いたホッジ理論(17-riemannian-geometry 第7章)によって解析的にも証明される。
まとめ
- 多様体の局所ホモロジーは Hn(M,M∖{x})≅Z で、その生成元の連続な選び方が向き付けである。向き付け二重被覆が連結でないことが向き付け可能性と同値で、単連結な多様体は向き付け可能、すべての多様体は Z/2 向き付け可能である。
- 連結閉多様体は向き付け可能なら Hn(M)≅Z(基本類 [M])、不可能なら Hn(M)=0。RPn は n が奇数のときだけ向き付け可能。
- キャップ積 Hk×Hl→Hk−l は ⟨β,a⌢α⟩=⟨α⌣β,a⟩ でカップ積と結びつく。
- ポアンカレ双対定理:[M]⌢:Hk(M;R)≅Hn−k(M;R)。体係数でベッチ数が対称になり、カップ積の対 Hk×Hn−k→F は非退化(整数係数ではねじれを除いてユニモジュラー)。
- 応用:奇数次元閉多様体の χ=0、H∗(CPn)=Z[α]/(αn+1)、H∗(RPn;Z/2)=Z/2[α]/(αn+1)、4k 次元多様体の交叉形式と符号数。
- レフシェッツ双対(境界付き多様体)、アレクサンダー双対(H~i(Sn∖K)≅H~n−i−1(K))、ド・ラームの定理(HdR∗(M)≅H∗(M;R))。
演習問題
問題 7.1 ★ M を連結な閉向き付け可能 3 次元多様体で H1(M)≅Z/5 とする。H∗(M) と H∗(M) を求めよ。
解答
H0≅H3≅Z(連結・向き付け可能)、k>3 で Hk=0。ポアンカレ双対と普遍係数定理より H2≅H1≅Hom(H1,Z)⊕Ext(H0,Z)=0。コホモロジーは H0≅Z、H1=0、H2≅H1≅Z/5、H3≅H0≅Z。たとえばレンズ空間 L(5,1) がこの例である。
問題 7.2 ★ 連結な閉向き付け可能 n 次元多様体 M について、Hn−1(M;Z) はねじれ元をもたないことを示せ。
解答
ポアンカレ双対より Hn−1(M)≅H1(M) であり、問題 6.3 より H1(M;Z) はねじれ元をもたない。
問題 7.3 ★ RP2k(k≥1)の向き付け二重被覆は S2k であることを示せ。
解答
例 7.5 (2) より RP2k は向き付け不可能なので、命題 7.2 より向き付け二重被覆は連結な 2 葉被覆である。定理 3.16 より、これは π1(RP2k)≅Z/2 の指数 2 の部分群、すなわち自明群に対応する被覆で、普遍被覆 S2k と同型である。
問題 7.4 ★★ 任意の写像 f:CP2k→CP2k は不動点をもつことを示せ。
解答
f∗α=dα(d∈Z)とおくと、定理 7.11 より f∗(αj)=djαj。普遍係数定理より H2j=Hom(H2j,Z) で f∗ は f∗ の転置なので、f∗ も H2j 上で dj 倍である。よって L(f)=1+d+d2+⋯+d2k。d=1 なら 2k+1=0。d=1 なら L(f)=(d2k+1−1)/(d−1) で、d2k+1=1 となる整数は d=1 だけなので L(f)=0。定理 5.21 より不動点をもつ。
問題 7.5 ★★ (1) 任意のホモトピー同値写像 f:CP2→CP2 は f∗[CP2]=[CP2] を満たすことを示せ。(2) 任意の写像 g:CP2→S2 は H2 上に零写像を誘導することを示せ。
解答
(1) f∗ は H2=Zα の自己同型なので f∗α=±α、よって f∗(α2)=α2 で、f∗ は H4 上で恒等写像である。H4=Hom(H4,Z) で f∗ は f∗ の転置なので f∗ も恒等写像。(2) s を H2(S2) の生成元とし g∗s=mα とおくと、m2α2=g∗(s2)=0(H4(S2)=0)より m=0。
問題 7.6 ★★ 閉向き付け可能 (4m+2) 次元多様体の (2m+1) 次のベッチ数は偶数であることを示せ。
解答
Q 係数で H2m+1(M;Q) 上の対 (α,β)↦⟨α⌣β,[M]⟩ は系 7.9 (2) より非退化で、次数が奇数なので定理 6.12 より交代的(α⌣β=−β⌣α)である。その行列 A は AT=−A かつ detA=0 を満たし、detA=detAT=(−1)bdetA(b は次元)から b は偶数。Mg の b1=2g はその例である。
問題 7.7 ★★ S3 内の互いに交わらない二つの円周の和 L(絡み目)について、H∗(S3∖L) を求めよ。
解答
定理 7.15 より H~i(S3∖L)≅H~2−i(L)。L は二つの円周の非交和なので H~0(L)≅Z、H1(L)≅Z2、H2(L)=0。よって S3∖L は弧状連結で、H1≅Z2、H2≅Z、それ以外(i≥3)は 0。二つの円周がどう絡んでいても変わらない。
問題 7.8 ★★ M を連結な閉向き付け可能 3 次元多様体とし、π1(M) が有限群であるとする。H∗(M;Q)≅H∗(S3;Q) を示せ。
解答
H1(M)≅π1(M)ab は有限なので b1=0。系 7.9 (1)(F=Q)より b2=b1=0、b3=b0=1。
問題 7.9 ★★★ M を連結な閉向き付けられた 4 次元多様体とする。χ(M)=2−2b1+b2 であり、χ(M)≡σ(M)(mod2) であることを示せ。
解答
系 7.9 (1) より b4=b0=1、b3=b1 なので χ=1−b1+b2−b1+1。交叉形式は H2(M;R) 上で非退化なので固有値に 0 はなく、b2=b++b−、σ=b+−b−。よって σ≡b2≡χ(mod2)。たとえば CP2 では χ=3, σ=1、S2×S2 では χ=4, σ=0。