Lemma数学ロードマップ

09 位相幾何学 · 第 1 章

ホモトピーと基本群

目安 13〜17 時間定理など 21演習 6 問

この章の目標

  • ホモトピー・ホモトピー同値・変位レトラクトを理解し、身近な空間のホモトピー型を判定できる
  • 道のホモトピー類が積について群をなすことを証明し、基本群の関手性とホモトピー不変性を使える
  • 被覆 R→S1\mathbb{R} \to S^1 による持ち上げを用いて π1(S1)≅Z\pi_1(S^1) \cong \mathbb{Z} を証明し、ブラウアーの不動点定理(2 次元)と代数学の基本定理に応用できる
  • 積空間の基本群と π1(Sn)=1\pi_1(S^n) = 1(n≥2n \geq 2)を証明できる

前提:03-topology 第3章(積位相・商位相)、第5章(コンパクト性・ルベーグ数の補題)、第6章(連結性・弧状連結性)、04-algebra 第2章(群と準同型)

本科目では、特に断らない限り写像は連続写像を意味し、I=[0,1]I = [0, 1] と書く。

1.1 ホモトピーとホモトピー同値

円周 S1S^1 と閉円板 D2D^2 はどちらもコンパクトで弧状連結だが、S1S^1 には「穴」があるように見える。この直観を数学にするために、「連続的に変形する」ことを表す言葉としてホモトピーを導入する。以後の不変量はすべてホモトピーで変わらない。

定義 1.1(ホモトピー, homotopy)写像 f,g ⁣:X→Yf, g\colon X \to Y に対し、写像 F ⁣:X×I→YF\colon X \times I \to Y で F(x,0)=f(x)F(x, 0) = f(x), F(x,1)=g(x)F(x, 1) = g(x)(x∈Xx \in X)を満たすものを ff から gg へのホモトピーという。これが存在するとき ff と gg はホモトピック (homotopic) であるといい、f≃gf \simeq g と書く。Ft=F(⋅,t)F_t = F(\cdot, t) と書く。部分集合 A⊂XA \subset X 上で Ft∣AF_t\vert_A が tt によらないとき、FF を AA を固定するホモトピー(rel AA)という。定値写像とホモトピックな写像を零ホモトピック (null-homotopic) という。

例 1.2(直線ホモトピー)C⊂RnC \subset \mathbb{R}^n を凸集合とすると、任意の空間 XX からの任意の写像 f,g ⁣:X→Cf, g\colon X \to C は F(x,t)=(1−t)f(x)+tg(x)F(x, t) = (1 - t) f(x) + t g(x) によってホモトピックである。ff と gg が A⊂XA \subset X 上で一致していれば、このホモトピーは AA を固定する。

命題 1.3 A⊂XA \subset X を固定するホモトピックという関係は、写像 X→YX \to Y 全体の上の同値関係である。また f0≃f1 ⁣:X→Yf_0 \simeq f_1\colon X \to Y かつ g0≃g1 ⁣:Y→Zg_0 \simeq g_1\colon Y \to Z ならば g0∘f0≃g1∘f1g_0 \circ f_0 \simeq g_1 \circ f_1 である。

証明. 反射律・対称律は F(x,t)=f(x)F(x, t) = f(x), F(x,1−t)F(x, 1 - t) で示される。推移律:FF が ff から gg へ、GG が gg から hh へのホモトピーなら、t≤1/2t \leq 1/2 で F(x,2t)F(x, 2t)、t≥1/2t \geq 1/2 で G(x,2t−1)G(x, 2t - 1) とおけば、t=1/2t = 1/2 で両者は g(x)g(x) に一致するので貼り合わせの補題により連続である。後半は H(x,t)=G(F(x,t),t)H(x, t) = G(F(x, t), t) とおけばよい。□\square

定義 1.4(ホモトピー同値, homotopy equivalence)写像 f ⁣:X→Yf\colon X \to Y に対し、写像 g ⁣:Y→Xg\colon Y \to X で g∘f≃idXg \circ f \simeq \mathrm{id}_X かつ f∘g≃idYf \circ g \simeq \mathrm{id}_Y となるものが存在するとき、ff をホモトピー同値写像、gg をそのホモトピー逆写像という。このとき XX と YY はホモトピー同値である(同じホモトピー型をもつ)といい、X≃YX \simeq Y と書く。一点とホモトピー同値な空間を可縮 (contractible) であるという。

命題 1.3 より (gg′)(f′f)=g(g′f′)f≃gf≃id(g g')(f' f) = g (g' f') f \simeq g f \simeq \mathrm{id} などが成り立つので、≃\simeq は空間の間の同値関係である。

命題 1.5 XX が可縮であることと、ある x0∈Xx_0 \in X への定値写像 cx0c_{x_0} について idX≃cx0\mathrm{id}_X \simeq c_{x_0} となることは同値である。

証明. f ⁣:X→{p}f\colon X \to \lbrace p \rbrace, g ⁣:{p}→Xg\colon \lbrace p \rbrace \to X, g(p)=x0g(p) = x_0 について、f∘g=idf \circ g = \mathrm{id} はつねに成り立ち、g∘f=cx0g \circ f = c_{x_0} である。□\square

凸集合(特に Rn\mathbb{R}^n や DnD^n)は例 1.2 により可縮である。

定義 1.6(レトラクト, retract)A⊂XA \subset X とし、i ⁣:A→Xi\colon A \to X を包含写像とする。写像 r ⁣:X→Ar\colon X \to A で r∘i=idAr \circ i = \mathrm{id}_A となるものをレトラクションといい、それが存在するとき AA を XX のレトラクトという。さらにホモトピー F ⁣:X×I→XF\colon X \times I \to X で

F0=idX,F1(X)⊂A,Ft∣A=idA (t∈I)F_0 = \mathrm{id}_X, \quad F_1(X) \subset A, \quad F_t\vert_A = \mathrm{id}_A \ (t \in I)

を満たすものが存在するとき、AA を XX の変位レトラクト (deformation retract) といい、FF を変位レトラクションという。

AA が変位レトラクトなら、r=F1 ⁣:X→Ar = F_1\colon X \to A について r∘i=idAr \circ i = \mathrm{id}_A、i∘r=F1≃F0=idXi \circ r = F_1 \simeq F_0 = \mathrm{id}_X だから、ii はホモトピー同値写像であり A≃XA \simeq X である。

例 1.7

  1. Rn∖{0}\mathbb{R}^n \setminus \lbrace 0 \rbrace は F(x,t)=(1−t)x+tx/∥x∥F(x, t) = (1 - t) x + t x / \lVert x \rVert(xx の正の定数倍)により Sn−1S^{n-1} に変位レトラクトする。よって Rn∖{0}≃Sn−1\mathbb{R}^n \setminus \lbrace 0 \rbrace \simeq S^{n-1}。
  2. 円柱 S1×IS^1 \times I は S1×{0}S^1 \times \lbrace 0 \rbrace に F((z,s),t)=(z,(1−t)s)F((z, s), t) = (z, (1 - t) s) で変位レトラクトする。
  3. メビウスの帯 (Möbius band) MM を、長方形 I×[−1,1]I \times [-1, 1] の左辺と右辺を上下反転して (0,y)∼(1,−y)(0, y) \sim (1, -y) と貼り合わせた商空間とし、中心線 y=0y = 0 の像(円周)を CC とする。F([x,y],t)=[x,(1−t)y]F([x, y], t) = [x, (1 - t) y] は貼り合わせと両立し((0,(1−t)y)(0, (1-t)y) と (1,−(1−t)y)(1, -(1-t)y) は再び同一視される)、MM を CC に変位レトラクトする(II は局所コンパクトなので商写像と idI\mathrm{id}_I の積は商写像で、FF は連続)。よって M≃S1M \simeq S^1。

1.2 道のホモトピーと道の積

空間の「穴」を見るには、ループが空間の中で一点に縮められるかを調べればよい。D2D^2 の中のループは中心に縮むが、S1S^1 を一周するループは縮まないはずである。

定義 1.8(道, path)写像 f ⁣:I→Xf\colon I \to X を道といい、f(0)f(0) を始点、f(1)f(1) を終点という。始点と終点が一致する道を f(0)f(0) を基点とするループ (loop) という。始点と終点が同じ二つの道 f,gf, g について、端点 {0,1}\lbrace 0, 1 \rbrace を固定するホモトピーを道ホモトピーという。以下、道についての f≃gf \simeq g はつねに道ホモトピックであることを意味し、その同値類を [f][f] と書く。

f(1)=g(0)f(1) = g(0) のとき、道の積 f⋅gf \cdot g と逆の道 fˉ\bar{f} を次で定める:

(f⋅g)(s)={f(2s)(0≤s≤1/2)g(2s−1)(1/2≤s≤1),fˉ(s)=f(1−s)(f \cdot g)(s) = \begin{cases} f(2s) & (0 \leq s \leq 1/2) \\ g(2s - 1) & (1/2 \leq s \leq 1) \end{cases}, \qquad \bar{f}(s) = f(1 - s)

点 xx にとどまる定値の道を cxc_x と書く。

f⋅gf \cdot g は「ff を 2 倍の速さでたどり、続けて gg を 2 倍の速さでたどる」道である。

補題 1.9 f0≃f1f_0 \simeq f_1, g0≃g1g_0 \simeq g_1 で f0(1)=g0(0)f_0(1) = g_0(0) ならば f0⋅g0≃f1⋅g1f_0 \cdot g_0 \simeq f_1 \cdot g_1 である。

証明. 道ホモトピー FF, GG をとり、Ht=Ft⋅GtH_t = F_t \cdot G_t とおく。Ft(1)=f0(1)=g0(0)=Gt(0)F_t(1) = f_0(1) = g_0(0) = G_t(0) なので積は定義でき、HH は s=1/2s = 1/2 で貼り合った連続写像で端点を固定する。□\square

補題 1.10(再パラメータ付け)φ ⁣:I→I\varphi\colon I \to I が φ(0)=0\varphi(0) = 0, φ(1)=1\varphi(1) = 1 を満たすなら、任意の道 ff について f∘φ≃ff \circ \varphi \simeq f である。

証明. Ft=f∘((1−t)φ+t idI)F_t = f \circ ((1 - t) \varphi + t\ \mathrm{id}_I) とおく。(1−t)φ(s)+ts∈I(1-t)\varphi(s) + ts \in I であり、s=0,1s = 0, 1 でそれぞれ 0,10, 1 をとるので端点は固定される。□\square

定理 1.11 端点が適切につながる道 f,g,hf, g, h について次が成り立つ。

  1. (結合律)(f⋅g)⋅h≃f⋅(g⋅h)(f \cdot g) \cdot h \simeq f \cdot (g \cdot h)
  2. (単位元)cf(0)⋅f≃f≃f⋅cf(1)c_{f(0)} \cdot f \simeq f \simeq f \cdot c_{f(1)}
  3. (逆元)f⋅fˉ≃cf(0)f \cdot \bar{f} \simeq c_{f(0)}, fˉ⋅f≃cf(1)\bar{f} \cdot f \simeq c_{f(1)}

証明. (1) (f⋅g)⋅h(f \cdot g) \cdot h は f,g,hf, g, h をそれぞれ区間 [0,1/4][0, 1/4], [1/4,1/2][1/4, 1/2], [1/2,1][1/2, 1] で、f⋅(g⋅h)f \cdot (g \cdot h) は [0,1/2][0, 1/2], [1/2,3/4][1/2, 3/4], [3/4,1][3/4, 1] でたどる。φ\varphi を [0,1/4][0, 1/4] 上 2s2s、[1/4,1/2][1/4, 1/2] 上 s+1/4s + 1/4、[1/2,1][1/2, 1] 上 (s+1)/2(s + 1)/2 とする折れ線とすると (f⋅g)⋅h=(f⋅(g⋅h))∘φ(f \cdot g) \cdot h = (f \cdot (g \cdot h)) \circ \varphi(たとえば s∈[1/4,1/2]s \in [1/4, 1/2] では両辺とも g(4s−1)g(4s - 1))なので、補題 1.10 による。

(2) φ(s)=max⁡(0,2s−1)\varphi(s) = \max(0, 2s - 1) とすると cf(0)⋅f=f∘φc_{f(0)} \cdot f = f \circ \varphi、ψ(s)=min⁡(2s,1)\psi(s) = \min(2s, 1) とすると f⋅cf(1)=f∘ψf \cdot c_{f(1)} = f \circ \psi。補題 1.10 を使う。

(3) 「ff を途中まで進んで引き返す道」を、引き返す地点を始点に近づけながら変形する。式では

H(s,t)={f(2s(1−t))(0≤s≤1/2)f((2−2s)(1−t))(1/2≤s≤1)H(s, t) = \begin{cases} f(2s(1 - t)) & (0 \leq s \leq 1/2) \\ f((2 - 2s)(1 - t)) & (1/2 \leq s \leq 1) \end{cases}

とおく。s=1/2s = 1/2 で両者は f(1−t)f(1 - t) に一致し、H0=f⋅fˉH_0 = f \cdot \bar{f}(fˉ(2s−1)=f(2−2s)\bar{f}(2s - 1) = f(2 - 2s) に注意)、H1=cf(0)H_1 = c_{f(0)}、H(0,t)=H(1,t)=f(0)H(0, t) = H(1, t) = f(0) である。後半は fˉ\bar{f} に適用すればよい(fˉˉ=f\bar{\bar{f}} = f)。□\square

1.3 基本群

定義 1.12(基本群, fundamental group)点 x0∈Xx_0 \in X を基点とするループの道ホモトピー類全体を π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) と書き、積を [f][g]=[f⋅g][f][g] = [f \cdot g] で定める。

定理 1.13 π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) は単位元 [cx0][c_{x_0}]、[f][f] の逆元 [fˉ][\bar{f}] の群である。

証明. 積が well-defined であることは補題 1.9、結合律・単位元・逆元は定理 1.11 による。□\square

例 1.14 凸集合 C⊂RnC \subset \mathbb{R}^n では、任意のループ ff は直線ホモトピー (1−t)f(s)+tx0(1 - t) f(s) + t x_0(端点は x0x_0 に固定)で cx0c_{x_0} にホモトピックだから、π1(C,x0)=1\pi_1(C, x_0) = 1 である。

基点を変えると基本群はどう変わるか。

命題 1.15(基点の取り替え)hh を x0x_0 から x1x_1 への道とする。βh ⁣:π1(X,x1)→π1(X,x0)\beta_h\colon \pi_1(X, x_1) \to \pi_1(X, x_0), βh[f]=[h⋅f⋅hˉ]\beta_h[f] = [h \cdot f \cdot \bar{h}] は群の同型である。

証明. 補題 1.9 により well-defined である(定理 1.11 (1) により括弧の付け方は問題にならない)。hˉ⋅h≃cx1\bar{h} \cdot h \simeq c_{x_1} より βh[f⋅g]=[hfhˉhghˉ]=βh[f]βh[g]\beta_h[f \cdot g] = [h f \bar{h} h g \bar{h}] = \beta_h[f] \beta_h[g] で準同型。同様に βhˉβh[f]=[hˉhfhˉh]=[f]\beta_{\bar{h}} \beta_h[f] = [\bar{h} h f \bar{h} h] = [f]、βhβhˉ=id\beta_h \beta_{\bar{h}} = \mathrm{id} なので βhˉ\beta_{\bar{h}} が逆写像である。□\square

したがって XX が弧状連結なら、π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) の同型類は基点によらず、π1(X)\pi_1(X) と略記することがある。ただし同型 βh\beta_h は一般に道 hh の取り方に依存する(問題 1.1)。

定義 1.16(単連結, simply connected)弧状連結で、ある(したがって任意の)点 x0x_0 について π1(X,x0)=1\pi_1(X, x_0) = 1 となる空間を単連結という。

注意 1.17 XX が単連結なら、始点と終点が同じ任意の二つの道 f,gf, g は道ホモトピックである。実際 f⋅gˉf \cdot \bar{g} はループなので f≃f⋅gˉ⋅g≃gf \simeq f \cdot \bar{g} \cdot g \simeq g。

1.4 誘導準同型と関手性

写像は群の準同型を誘導し、その対応は合成と両立する。

命題 1.18(関手性)写像 φ ⁣:X→Y\varphi\colon X \to Y が φ(x0)=y0\varphi(x_0) = y_0 を満たすとする(基点付き写像といい φ ⁣:(X,x0)→(Y,y0)\varphi\colon (X, x_0) \to (Y, y_0) と書く)。φ∗[f]=[φ∘f]\varphi_{\ast}[f] = [\varphi \circ f] は準同型 φ∗ ⁣:π1(X,x0)→π1(Y,y0)\varphi_{\ast}\colon \pi_1(X, x_0) \to \pi_1(Y, y_0) を定め、次が成り立つ。

  1. (ψ∘φ)∗=ψ∗∘φ∗(\psi \circ \varphi)_{\ast} = \psi_{\ast} \circ \varphi_{\ast}、(idX)∗=id(\mathrm{id}_X)_{\ast} = \mathrm{id}
  2. ホモトピー φt ⁣:X→Y\varphi_t\colon X \to Y がすべての tt で φt(x0)=y0\varphi_t(x_0) = y_0 を満たすなら、(φ0)∗=(φ1)∗(\varphi_0)_{\ast} = (\varphi_1)_{\ast}

証明. FF が道ホモトピーなら φ∘F\varphi \circ F も道ホモトピーなので well-defined。φ∘(f⋅g)=(φ∘f)⋅(φ∘g)\varphi \circ (f \cdot g) = (\varphi \circ f) \cdot (\varphi \circ g) より準同型。(1) は定義から明らか。(2) φt∘f\varphi_t \circ f は φ0∘f\varphi_0 \circ f から φ1∘f\varphi_1 \circ f への道ホモトピーである。□\square

圏論の言葉では、π1\pi_1 は基点付き空間の圏から群の圏への関手 (functor) である(12-category-homological-algebra 第1章)。

補題 1.19 φt ⁣:X→Y\varphi_t\colon X \to Y をホモトピーとし、h(t)=φt(x0)h(t) = \varphi_t(x_0) とおく(hh は φ0(x0)\varphi_0(x_0) から φ1(x0)\varphi_1(x_0) への道)。このとき (φ0)∗=βh∘(φ1)∗(\varphi_0)_{\ast} = \beta_h \circ (\varphi_1)_{\ast} である。

証明. ht(u)=h(tu)h_t(u) = h(tu) を「hh の [0,t][0, t] の部分」とする。x0x_0 でのループ ff に対し、Gt=ht⋅(φt∘f)⋅hˉtG_t = h_t \cdot (\varphi_t \circ f) \cdot \bar{h}_t(括弧は左から)とおく。具体的には

G(s,t)={h(4ts)(0≤s≤1/4)φt(f(4s−1))(1/4≤s≤1/2)h(t(2−2s))(1/2≤s≤1)G(s, t) = \begin{cases} h(4ts) & (0 \leq s \leq 1/4) \\ \varphi_t(f(4s - 1)) & (1/4 \leq s \leq 1/2) \\ h(t(2 - 2s)) & (1/2 \leq s \leq 1) \end{cases}

であり、s=1/4,1/2s = 1/4, 1/2 で値が h(t)h(t) に一致するので連続である。G(0,t)=G(1,t)=h(0)G(0, t) = G(1, t) = h(0) だから GG は c⋅(φ0∘f)⋅cc \cdot (\varphi_0 \circ f) \cdot c から h⋅(φ1∘f)⋅hˉh \cdot (\varphi_1 \circ f) \cdot \bar{h} への道ホモトピーである。よって [φ0∘f]=βh[φ1∘f][\varphi_0 \circ f] = \beta_h[\varphi_1 \circ f]。□\square

図で言えば、正方形 I×II \times I の底辺に φ0∘f\varphi_0 \circ f、上辺に φ1∘f\varphi_1 \circ f、左右の辺にともに hh が現れ、正方形全体を GG が埋めている、という状況である。

定理 1.20(ホモトピー不変性)φ ⁣:X→Y\varphi\colon X \to Y がホモトピー同値写像ならば、任意の x0∈Xx_0 \in X について φ∗ ⁣:π1(X,x0)→π1(Y,φ(x0))\varphi_{\ast}\colon \pi_1(X, x_0) \to \pi_1(Y, \varphi(x_0)) は同型である。

証明. ψ\psi をホモトピー逆写像とする。ψφ≃idX\psi \varphi \simeq \mathrm{id}_X と補題 1.19 より (ψφ)∗=ψ∗φ∗ ⁣:π1(X,x0)→π1(X,ψφ(x0))(\psi \varphi)_{\ast} = \psi_{\ast} \varphi_{\ast}\colon \pi_1(X, x_0) \to \pi_1(X, \psi\varphi(x_0)) は同型 βh\beta_h に等しい。よって ψ∗ ⁣:π1(Y,φ(x0))→π1(X,ψφ(x0))\psi_{\ast}\colon \pi_1(Y, \varphi(x_0)) \to \pi_1(X, \psi\varphi(x_0)) は全射である。同様に φψ≃idY\varphi \psi \simeq \mathrm{id}_Y から、φ∗ψ∗ ⁣:π1(Y,φ(x0))→π1(Y,φψφ(x0))\varphi_{\ast} \psi_{\ast}\colon \pi_1(Y, \varphi(x_0)) \to \pi_1(Y, \varphi\psi\varphi(x_0)) が同型なので、同じ ψ∗\psi_{\ast} は単射である。したがって ψ∗\psi_{\ast} は同型で、φ∗=ψ∗−1∘(ψ∗φ∗)\varphi_{\ast} = \psi_{\ast}^{-1} \circ (\psi_{\ast} \varphi_{\ast}) も同型である。□\square

系 1.21

  1. 可縮な空間は単連結である。
  2. AA が XX のレトラクトなら、包含写像は単射 i∗ ⁣:π1(A,a)→π1(X,a)i_{\ast}\colon \pi_1(A, a) \to \pi_1(X, a) を誘導する。
  3. AA が XX の変位レトラクトなら、i∗i_{\ast} は同型である。

証明. (1) 定理 1.20 より基本群は自明。idX≃cx0\mathrm{id}_X \simeq c_{x_0} のホモトピー FF について t↦F(x,t)t \mapsto F(x, t) が xx と x0x_0 を結ぶので弧状連結。(2) r∗i∗=(ri)∗=idr_{\ast} i_{\ast} = (r i)_{\ast} = \mathrm{id} による。(3) 定理 1.20 による。□\square

例 1.7 より π1(R2∖{0})\pi_1(\mathbb{R}^2 \setminus \lbrace 0 \rbrace) やメビウスの帯の基本群は π1(S1)\pi_1(S^1) と同型である。

1.5 円周の基本群

S1={(x,y)∈R2∣x2+y2=1}S^1 = \lbrace (x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2 + y^2 = 1 \rbrace とし、基点を x0=(1,0)x_0 = (1, 0) とする。鍵になるのは写像

p ⁣:R→S1,p(s)=(cos⁡2πs,sin⁡2πs)p\colon \mathbb{R} \to S^1, \qquad p(s) = (\cos 2\pi s, \sin 2\pi s)

である(らせん s↦(cos⁡2πs,sin⁡2πs,s)s \mapsto (\cos 2\pi s, \sin 2\pi s, s) の真下への射影と思うとよい)。

補題 1.22 U1=S1∖{(1,0)}U_1 = S^1 \setminus \lbrace (1, 0) \rbrace, U2=S1∖{(−1,0)}U_2 = S^1 \setminus \lbrace (-1, 0) \rbrace とおくと

p−1(U1)=⨆n∈Z(n,n+1),p−1(U2)=⨆n∈Z(n−1/2,n+1/2)p^{-1}(U_1) = \bigsqcup_{n \in \mathbb{Z}} (n, n + 1), \qquad p^{-1}(U_2) = \bigsqcup_{n \in \mathbb{Z}} (n - 1/2, n + 1/2)

であり、pp は右辺の各開区間を U1U_1 または U2U_2 の上へ同相に写す。

証明. 集合の等式は p(s)=(1,0)⇔s∈Zp(s) = (1, 0) \Leftrightarrow s \in \mathbb{Z}、p(s)=(−1,0)⇔s∈1/2+Zp(s) = (-1, 0) \Leftrightarrow s \in 1/2 + \mathbb{Z} から従う。pp は各区間上で全単射で、逆写像は偏角の連続な分枝(たとえば (x,y)↦n+1πarctan⁡y1+x(x, y) \mapsto n + \frac{1}{\pi} \arctan \frac{y}{1 + x})である。□\square

写像 F ⁣:Y→S1F\colon Y \to S^1 に対し、p∘F~=Fp \circ \tilde{F} = F となる写像 F~ ⁣:Y→R\tilde{F}\colon Y \to \mathbb{R} を FF の持ち上げ (lift) という。

補題 1.23(持ち上げの一意性)YY が連結で、F~1,F~2 ⁣:Y→R\tilde{F}_1, \tilde{F}_2\colon Y \to \mathbb{R} が同じ写像の持ち上げであり、ある一点で一致するならば、F~1=F~2\tilde{F}_1 = \tilde{F}_2 である。

証明. p(a)=p(b)⇔a−b∈Zp(a) = p(b) \Leftrightarrow a - b \in \mathbb{Z} なので、F~1−F~2\tilde{F}_1 - \tilde{F}_2 は整数値の連続関数である。YY は連結だから定数であり、一点で 0 なので恒等的に 0 である。□\square

補題 1.24(ホモトピーの持ち上げ)写像 F ⁣:I×I→S1F\colon I \times I \to S^1 と p(x~)=F(0,0)p(\tilde{x}) = F(0, 0) を満たす x~∈R\tilde{x} \in \mathbb{R} に対し、FF の持ち上げ F~ ⁣:I×I→R\tilde{F}\colon I \times I \to \mathbb{R} で F~(0,0)=x~\tilde{F}(0, 0) = \tilde{x} となるものがただ一つ存在する。特に(F(s,t)=f(s)F(s, t) = f(s) に適用して t=0t = 0 に制限すれば)任意の道 f ⁣:I→S1f\colon I \to S^1 は、始点の持ち上げを指定するとただ一通りに持ち上がる。

証明. 一意性は補題 1.23 による。存在を示す。I×II \times I はコンパクト距離空間なので、開被覆 {F−1(U1),F−1(U2)}\lbrace F^{-1}(U_1), F^{-1}(U_2) \rbrace のルベーグ数を考えれば、NN を十分大きくとって、小正方形

Rij=[i−1N,iN]×[j−1N,jN](1≤i,j≤N)R_{ij} = \left[ \frac{i - 1}{N}, \frac{i}{N} \right] \times \left[ \frac{j - 1}{N}, \frac{j}{N} \right] \quad (1 \leq i, j \leq N)

の各々が FF で U1U_1 または U2U_2 に写るようにできる。正方形を下の行から順に、各行では左から右へ R11,R21,…,RN1,R12,…,RNNR_{11}, R_{21}, \dots, R_{N1}, R_{12}, \dots, R_{NN} と並べ、この順に F~\tilde{F} を定義していく。

すでに処理した正方形の和集合を KK、次の正方形を R=RijR = R_{ij}、F(R)⊂UF(R) \subset U(U=U1U = U_1 または U2U_2)とする。R∩KR \cap K は RR の下辺(j>1j > 1 のとき)と左辺(i>1i > 1 のとき)の和であり(右下の正方形 Ri+1,j−1R_{i+1, j-1} とは下辺上の一点で交わるだけ)、連結である。F~(R∩K)\tilde{F}(R \cap K) は p−1(U)p^{-1}(U) の連結部分集合なので、補題 1.22 の互いに素な開区間のうちの一つ JJ に含まれる。そこで RR 上で F~=(p∣J)−1∘F\tilde{F} = (p\vert_J)^{-1} \circ F と定める。R∩KR \cap K 上では、以前の F~\tilde{F} も JJ に値をとり pp で FF に写るので、p∣Jp\vert_J の単射性から新しい定義と一致する。貼り合わせの補題により F~\tilde{F} は K∪RK \cup R 上で連続である。最初の正方形 R11R_{11} では x~\tilde{x} を含む区間を JJ とする。N2N^2 回の操作で I×II \times I 全体で F~\tilde{F} が定まる。□\square

定理 1.25 π1(S1,x0)≅Z\pi_1(S^1, x_0) \cong \mathbb{Z} である。ωn(s)=(cos⁡2πns,sin⁡2πns)\omega_n(s) = (\cos 2\pi n s, \sin 2\pi n s) とおくと、同型は [ωn]↔n[\omega_n] \leftrightarrow n で与えられ、[ω1][\omega_1] が生成元である。

証明. x0x_0 でのループ ff に対し、f~(0)=0\tilde{f}(0) = 0 となる持ち上げ f~\tilde{f} をとる(補題 1.24)。p(f~(1))=x0p(\tilde{f}(1)) = x_0 より f~(1)∈Z\tilde{f}(1) \in \mathbb{Z} である。deg⁡f=f~(1)\deg f = \tilde{f}(1) とおき、これを ff の写像度(回転数)という。

道ホモトピー不変性. FF を ff から gg への道ホモトピーとし、F~(0,0)=0\tilde{F}(0, 0) = 0 となる持ち上げ F~\tilde{F} をとる。t↦F~(0,t)t \mapsto \tilde{F}(0, t), t↦F~(1,t)t \mapsto \tilde{F}(1, t) は定値の道の持ち上げなので定数(補題 1.23)。よって s↦F~(s,0)s \mapsto \tilde{F}(s, 0), s↦F~(s,1)s \mapsto \tilde{F}(s, 1) はそれぞれ 00 から始まる ff, gg の持ち上げ f~\tilde{f}, g~\tilde{g} であり、f~(1)=F~(1,0)=F~(1,1)=g~(1)\tilde{f}(1) = \tilde{F}(1, 0) = \tilde{F}(1, 1) = \tilde{g}(1)。したがって deg⁡ ⁣:π1(S1,x0)→Z\deg\colon \pi_1(S^1, x_0) \to \mathbb{Z} が定まる。

準同型. m=deg⁡fm = \deg f とする。p(m+s)=p(s)p(m + s) = p(s) なので m+g~m + \tilde{g} は mm から始まる gg の持ち上げであり、道 f~⋅(m+g~)\tilde{f} \cdot (m + \tilde{g}) は 00 から始まる f⋅gf \cdot g の持ち上げで、終点は m+deg⁡gm + \deg g。よって deg⁡(f⋅g)=deg⁡f+deg⁡g\deg(f \cdot g) = \deg f + \deg g。

全射. ω~n(s)=ns\tilde{\omega}_n(s) = ns は ωn\omega_n の持ち上げなので deg⁡ωn=n\deg \omega_n = n。

単射. deg⁡f=0\deg f = 0 なら f~\tilde{f} は R\mathbb{R} 内の 00 でのループであり、F~(s,t)=(1−t)f~(s)\tilde{F}(s, t) = (1 - t) \tilde{f}(s) は f~\tilde{f} から c0c_0 への道ホモトピーである。p∘F~p \circ \tilde{F} は ff から cx0c_{x_0} への道ホモトピーなので [f]=1[f] = 1。

以上より deg⁡\deg は同型で、deg⁡ωn=n\deg \omega_n = n から主張の対応を得る。□\square

複素関数論の回転数 12πi∮γdzz\frac{1}{2\pi i} \oint_\gamma \frac{dz}{z}(05-complex-analysis 第2章)は γ/∣γ∣\gamma / \lvert \gamma \rvert の写像度に一致する。

1.6 応用:不動点定理と代数学の基本定理

定理 1.26 S1S^1 は D2D^2 のレトラクトでない。すなわち、S1S^1 上で恒等写像となる写像 r ⁣:D2→S1r\colon D^2 \to S^1 は存在しない。

証明. そのような rr があれば、包含写像 i ⁣:S1→D2i\colon S^1 \to D^2 について r∘i=idS1r \circ i = \mathrm{id}_{S^1} だから、r∗∘i∗=idr_{\ast} \circ i_{\ast} = \mathrm{id} が π1(S1,x0)≅Z\pi_1(S^1, x_0) \cong \mathbb{Z} 上で成り立つ。ところが i∗i_{\ast} は π1(D2,x0)=1\pi_1(D^2, x_0) = 1(例 1.14)を経由するので r∗∘i∗r_{\ast} \circ i_{\ast} は自明な準同型であり、矛盾する。□\square

定理 1.27(ブラウアーの不動点定理, 2 次元)任意の写像 h ⁣:D2→D2h\colon D^2 \to D^2 は不動点をもつ。

証明. すべての xx で h(x)≠xh(x) \neq x と仮定し、u(x)=x−h(x)≠0u(x) = x - h(x) \neq 0 とおく。h(x)h(x) から xx へ向かう半直線が S1S^1 と交わる点を r(x)r(x) とする。式で書けば、r(x)=x+λ(x)u(x)r(x) = x + \lambda(x) u(x) であり、λ(x)≥0\lambda(x) \geq 0 は ∥x+λu∥2=1\lVert x + \lambda u \rVert^2 = 1、すなわち ∥u∥2λ2+2⟨x,u⟩λ+∥x∥2−1=0\lVert u \rVert^2 \lambda^2 + 2 \langle x, u \rangle \lambda + \lVert x \rVert^2 - 1 = 0 の根

λ(x)=−⟨x,u⟩+⟨x,u⟩2+∥u∥2(1−∥x∥2)∥u∥2\lambda(x) = \frac{-\langle x, u \rangle + \sqrt{\langle x, u \rangle^2 + \lVert u \rVert^2 (1 - \lVert x \rVert^2)}}{\lVert u \rVert^2}

である(∥x∥≤1\lVert x \rVert \leq 1 より根号の中は ⟨x,u⟩2\langle x, u \rangle^2 以上なので λ(x)≥0\lambda(x) \geq 0)。λ\lambda は連続なので r ⁣:D2→S1r\colon D^2 \to S^1 は連続である。x∈S1x \in S^1 なら、コーシー–シュワルツの不等式より ⟨x,u⟩=1−⟨x,h(x)⟩≥0\langle x, u \rangle = 1 - \langle x, h(x) \rangle \geq 0、また 1−∥x∥2=01 - \lVert x \rVert^2 = 0 なので λ(x)=0\lambda(x) = 0、すなわち r(x)=xr(x) = x。これは定理 1.26 に矛盾する。□\square

定理 1.28(代数学の基本定理)次数 n≥1n \geq 1 の複素係数多項式は C\mathbb{C} に根をもつ。

証明. R2=C\mathbb{R}^2 = \mathbb{C} と同一視し、S1={z∈C∣∣z∣=1}S^1 = \lbrace z \in \mathbb{C} \mid \lvert z \rvert = 1 \rbrace、基点を 11 とする。このとき ωn(s)=e2πins\omega_n(s) = e^{2\pi i n s} である。最高次の係数で割って p(z)=zn+an−1zn−1+⋯+a0p(z) = z^n + a_{n-1} z^{n-1} + \cdots + a_0 としてよい。pp が根をもたないと仮定する。r≥0r \geq 0 に対し

fr(s)=p(re2πis)/p(r)∣p(re2πis)/p(r)∣(s∈I)f_r(s) = \frac{p(r e^{2\pi i s}) / p(r)}{\lvert p(r e^{2\pi i s}) / p(r) \rvert} \quad (s \in I)

とおくと、frf_r は 11 でのループで (s,r)↦fr(s)(s, r) \mapsto f_r(s) は連続だから、frf_r は定値ループ f0f_0 に道ホモトピックで [fr]=1[f_r] = 1 である。

次に r>max⁡{1,∣an−1∣+⋯+∣a0∣}r > \max \lbrace 1, \lvert a_{n-1} \rvert + \cdots + \lvert a_0 \rvert \rbrace を固定する。∣z∣=r\lvert z \rvert = r なら

∣an−1zn−1+⋯+a0∣≤(∣an−1∣+⋯+∣a0∣)rn−1<rn=∣zn∣\lvert a_{n-1} z^{n-1} + \cdots + a_0 \rvert \leq (\lvert a_{n-1} \rvert + \cdots + \lvert a_0 \rvert) r^{n-1} < r^n = \lvert z^n \rvert

なので、t∈It \in I について pt(z)=zn+t(an−1zn−1+⋯+a0)p_t(z) = z^n + t(a_{n-1} z^{n-1} + \cdots + a_0) は円 ∣z∣=r\lvert z \rvert = r 上に根をもたない。frf_r の式の pp を ptp_t に置き換えたものは、t=1t = 1 で frf_r、t=0t = 0 で (rne2πins/rn)/1=ωn(s)(r^n e^{2\pi i n s} / r^n) / 1 = \omega_n(s) となる道ホモトピーである。よって [ωn]=[fr]=1[\omega_n] = [f_r] = 1 となり、定理 1.25 より n=0n = 0。これは n≥1n \geq 1 に反する。□\square

1.7 積空間の基本群

命題 1.29 π1(X×Y,(x0,y0))≅π1(X,x0)×π1(Y,y0)\pi_1(X \times Y, (x_0, y_0)) \cong \pi_1(X, x_0) \times \pi_1(Y, y_0) である。同型は射影 pX,pYp_X, p_Y の誘導準同型の組 [f]↦([pX∘f],[pY∘f])[f] \mapsto ([p_X \circ f], [p_Y \circ f]) で与えられる。

証明. 写像 g ⁣:Z→X×Yg\colon Z \to X \times Y の連続性は pX∘gp_X \circ g, pY∘gp_Y \circ g の連続性と同値なので、X×YX \times Y のループは XX のループと YY のループの組と一対一に対応し、道ホモトピーも道ホモトピーの組と一対一に対応する。これより与えられた写像(準同型の組なので準同型)は全単射である。□\square

例 1.30 π1(Tn)≅Zn\pi_1(T^n) \cong \mathbb{Z}^n(Tn=(S1)nT^n = (S^1)^n)。π1(T2)\pi_1(T^2) の生成元は「経線」と「緯線」である。ソリッドトーラス S1×D2S^1 \times D^2 の基本群は Z\mathbb{Z}。

1.8 高次元の球面は単連結である

定理 1.31 n≥2n \geq 2 ならば SnS^n は単連結である。

証明. 素朴に「ループが通らない点から立体射影する」ことはできない(全射なループがある)ので、まずループを修正する。SnS^n は弧状連結である。基点を x0x_0、ff を x0x_0 でのループとし、q=−x0q = -x_0 とおく。

B‾={x∈Sn∣⟨x,q⟩≥1/2},B={x∈Sn∣⟨x,q⟩>1/2},∂B=B‾∖B\overline{B} = \lbrace x \in S^n \mid \langle x, q \rangle \geq 1/2 \rbrace, \quad B = \lbrace x \in S^n \mid \langle x, q \rangle > 1/2 \rbrace, \quad \partial B = \overline{B} \setminus B

とおく(qq を中心とする球帽)。ϕ(x)=x−⟨x,q⟩q\phi(x) = x - \langle x, q \rangle q は B‾\overline{B} から q⊥≅Rnq^{\perp} \cong \mathbb{R}^n 内の閉球 E={y∈q⊥∣∥y∥≤3/2}E = \lbrace y \in q^{\perp} \mid \lVert y \rVert \leq \sqrt{3}/2 \rbrace への同相写像(逆写像は y↦y+1−∥y∥2 qy \mapsto y + \sqrt{1 - \lVert y \rVert^2}\ q)で、qq を中心 00 に、∂B\partial B を球面 ∥y∥=3/2\lVert y \rVert = \sqrt{3}/2 に写す。特に ∂B\partial B は Sn−1S^{n-1} と同相で、n≥2n \geq 2 より弧状連結である。

f(0)=f(1)=x0∉B‾f(0) = f(1) = x_0 \notin \overline{B} なので、f−1(B)f^{-1}(B) は開区間 (0,1)(0, 1) の開集合であり、互いに素な開区間 (ak,bk)(a_k, b_k) の可算個の和になる。各 kk について ak,bk∉f−1(B)a_k, b_k \notin f^{-1}(B) で f([ak,bk])⊂B‾f([a_k, b_k]) \subset \overline{B} だから、f(ak),f(bk)∈∂Bf(a_k), f(b_k) \in \partial B である。コンパクト集合 f−1(q)f^{-1}(q) はこれらの開区間で覆われるので、有限個 (a1,b1),…,(am,bm)(a_1, b_1), \dots, (a_m, b_m) で覆われる。

各 k≤mk \leq m について ∂B\partial B 内の f(ak)f(a_k) から f(bk)f(b_k) への道 gkg_k をとる。f∣[ak,bk]f\vert_{[a_k, b_k]} と gkg_k は B‾\overline{B} 内の端点が一致する道なので、凸集合 EE での直線ホモトピーを ϕ−1\phi^{-1} で戻したものにより道ホモトピックである。ff の [ak,bk][a_k, b_k] の部分を gkg_k に取り替えたループを f′f' とすると、これらのホモトピーと残りの部分での定値のホモトピーが有限個の閉集合上で貼り合って f≃f′f \simeq f' を与える。

f′f' は qq を通らない。実際、[ak,bk][a_k, b_k] 上では値が ∂B\partial B にあり、それ以外では f′=ff' = f であって、f−1(q)⊂⋃k≤m(ak,bk)f^{-1}(q) \subset \bigcup_{k \leq m} (a_k, b_k) だからである。Sn∖{q}S^n \setminus \lbrace q \rbrace は立体射影により Rn\mathbb{R}^n と同相で可縮なので、f′f' はその中で、したがって SnS^n の中で定値ループに道ホモトピックである。□\square

系 1.32

  1. n≠2n \neq 2 ならば R2\mathbb{R}^2 と Rn\mathbb{R}^n は同相でない。
  2. S2S^2 と T2T^2 はホモトピー同値でない(特に同相でない)。

証明. (1) 同相 h ⁣:R2→Rnh\colon \mathbb{R}^2 \to \mathbb{R}^n があれば R2∖{0}≅Rn∖{h(0)}\mathbb{R}^2 \setminus \lbrace 0 \rbrace \cong \mathbb{R}^n \setminus \lbrace h(0) \rbrace。n=1n = 1 なら右辺は弧状連結でない。n≥3n \geq 3 なら右辺は Sn−1S^{n-1} とホモトピー同値で単連結、左辺の基本群は Z\mathbb{Z}。(2) 定理 1.20 による。□\square

Rm≇Rn\mathbb{R}^m \not\cong \mathbb{R}^n(m≠nm \neq n)の一般の場合には基本群では足りず、ホモロジー群が必要になる(第5章)。

まとめ

  • ホモトピー同値・変位レトラクト(Rn∖{0}≃Sn−1\mathbb{R}^n \setminus \lbrace 0 \rbrace \simeq S^{n-1}、メビウスの帯 ≃S1\simeq S^1)。
  • ループの類は道の積で群 π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) をなし、弧状連結なら基点によらない。
  • π1\pi_1 は関手で、ホモトピー同値写像は同型を誘導する。
  • 持ち上げと写像度により π1(S1)≅Z\pi_1(S^1) \cong \mathbb{Z}。
  • 応用:S1S^1 は D2D^2 のレトラクトでない、2 次元ブラウアーの不動点定理、代数学の基本定理。
  • π1(X×Y)≅π1(X)×π1(Y)\pi_1(X \times Y) \cong \pi_1(X) \times \pi_1(Y)、n≥2n \geq 2 で π1(Sn)=1\pi_1(S^n) = 1。これから R2≇Rn\mathbb{R}^2 \not\cong \mathbb{R}^n(n≠2n \neq 2)、S2≄T2S^2 \not\simeq T^2。

演習問題

問題 1.1 ★ π1(X,x0)\pi_1(X, x_0) がアーベル群ならば、x0x_0 から x1x_1 への道 hh による同型 βh\beta_h は hh の取り方によらないことを示せ。

解答

h,h′h, h' を x0x_0 から x1x_1 への道とする。hˉ′⋅h′≃cx1\bar{h}' \cdot h' \simeq c_{x_1} を挿入すると

βh[f]=[h⋅hˉ′⋅h′⋅f⋅hˉ′⋅h′⋅hˉ]=[h⋅hˉ′] βh′[f] [h⋅hˉ′]−1\beta_h[f] = [h \cdot \bar{h}' \cdot h' \cdot f \cdot \bar{h}' \cdot h' \cdot \bar{h}] = [h \cdot \bar{h}']\ \beta_{h'}[f]\ [h \cdot \bar{h}']^{-1}

で、[h⋅hˉ′]∈π1(X,x0)[h \cdot \bar{h}'] \in \pi_1(X, x_0) である。アーベル群なので右辺は βh′[f]\beta_{h'}[f] に等しい。

問題 1.2 ★ S1⊂CS^1 \subset \mathbb{C} の自己写像 φn(z)=zn\varphi_n(z) = z^n(n∈Zn \in \mathbb{Z})の誘導する φn∗ ⁣:π1(S1,1)→π1(S1,1)\varphi_{n\ast}\colon \pi_1(S^1, 1) \to \pi_1(S^1, 1) は nn 倍写像であることを示せ。また n≠1n \neq 1 なら φn\varphi_n は idS1\mathrm{id}_{S^1} とホモトピックでないことを示せ。

解答

φn∘ωm(s)=(e2πims)n=ωnm(s)\varphi_n \circ \omega_m(s) = (e^{2\pi i m s})^n = \omega_{nm}(s) なので、定理 1.25 の同一視で m↦nmm \mapsto nm である。φn≃id\varphi_n \simeq \mathrm{id} なら補題 1.19 より φn∗=βh\varphi_{n\ast} = \beta_h(hh は 11 でのループ)で、π1(S1)\pi_1(S^1) はアーベル群なので βh=id\beta_h = \mathrm{id}。よって n=1n = 1。

問題 1.3 ★★ メビウスの帯 MM(例 1.7)の境界 ∂M\partial M(I×{±1}I \times \lbrace \pm 1 \rbrace の像)は円周だが、MM のレトラクトでないことを示せ。

解答

γ(s)=[2s,1]\gamma(s) = [2s, 1](s≤1/2s \leq 1/2)、[2s−1,−1][2s - 1, -1](s≥1/2s \geq 1/2)は([1,1]=[0,−1][1, 1] = [0, -1] より)∂M\partial M を一周するループで、[γ][\gamma] は π1(∂M)≅Z\pi_1(\partial M) \cong \mathbb{Z} の生成元である。CC を [x,0]↦(cos⁡2πx,sin⁡2πx)[x, 0] \mapsto (\cos 2\pi x, \sin 2\pi x) で S1S^1 と同一視すると、変位レトラクション r ⁣:M→Cr\colon M \to C との合成 r∘γr \circ \gamma は ω2\omega_2 になる。r∗r_{\ast} は同型なので、包含 i ⁣:∂M→Mi\colon \partial M \to M の i∗ ⁣:Z→Zi_{\ast}\colon \mathbb{Z} \to \mathbb{Z} は ±2\pm 2 倍写像である。レトラクション ρ\rho があれば ρ∗i∗=id\rho_{\ast} i_{\ast} = \mathrm{id} だが、ρ∗(i∗(1))=±2ρ∗(1)\rho_{\ast}(i_{\ast}(1)) = \pm 2 \rho_{\ast}(1) は 11 になりえない。

問題 1.4 ★★ 成分がすべて正の 33 次正方行列 AA は、正の固有値に属し成分がすべて正の固有ベクトルをもつことを示せ。

解答

三角形 T={x∈R3∣xi≥0,∑ixi=1}T = \lbrace x \in \mathbb{R}^3 \mid x_i \geq 0, \sum_i x_i = 1 \rbrace は(重心からの放射状の拡大縮小で)D2D^2 と同相である。x∈Tx \in T なら AxAx の成分はすべて正なので σ(x)=∑i(Ax)i>0\sigma(x) = \sum_i (Ax)_i > 0 で、g(x)=Ax/σ(x)g(x) = Ax / \sigma(x) は TT の自己写像である。定理 1.27 より不動点 xx があり、Ax=σ(x)xAx = \sigma(x) x、しかも x=Ax/σ(x)x = Ax / \sigma(x) の成分は正である。

問題 1.5 ★★ R3\mathbb{R}^3 から zz 軸を除いた空間 XX は円周に変位レトラクトすることを示し、XX と R3∖{0}\mathbb{R}^3 \setminus \lbrace 0 \rbrace はホモトピー同値でないことを示せ。

解答

v=(x,y)≠0v = (x, y) \neq 0 として F((v,z),t)=((1−t)v+tv/∥v∥,(1−t)z)F((v, z), t) = ((1 - t) v + t v / \lVert v \rVert, (1 - t) z) とおく。第 1 成分は vv の正の定数倍なので XX にとどまり、F1F_1 の像は円周 S1×{0}S^1 \times \lbrace 0 \rbrace、その上の点は動かない。よって π1(X)≅Z\pi_1(X) \cong \mathbb{Z}。一方 R3∖{0}≃S2\mathbb{R}^3 \setminus \lbrace 0 \rbrace \simeq S^2 は単連結(定理 1.31)なので、定理 1.20 より両者はホモトピー同値でない。

問題 1.6 ★★★ GG を位相群、ee を単位元とする。π1(G,e)\pi_1(G, e) はアーベル群であることを示せ。

解答

各点ごとの積 (fg)(s)=f(s)g(s)(fg)(s) = f(s) g(s) について、f⋅g=(f⋅ce)(ce⋅g)f \cdot g = (f \cdot c_e)(c_e \cdot g)、g⋅f=(ce⋅f)(g⋅ce)g \cdot f = (c_e \cdot f)(g \cdot c_e) が成り立つ。道ホモトピー F ⁣:f⋅ce≃fF\colon f \cdot c_e \simeq f、H ⁣:ce⋅g≃gH\colon c_e \cdot g \simeq g の各点ごとの積 F(s,t)H(s,t)F(s, t) H(s, t) は f⋅gf \cdot g から fgfg への道ホモトピーである。同様に g⋅f≃fgg \cdot f \simeq fg なので [f][g]=[g][f][f][g] = [g][f]。

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