この章の目標
- 高次ホモトピー群 πn を定義し、n≥2 で可換であることを証明する
- 相対ホモトピー群・ファイブレーションのホモトピー長完全列を使って計算できる
- ホップファイブレーション S3→S2 から π3(S2)≅Z を導ける
- フレヴィッツの定理・ホワイトヘッドの定理の主張と、アイレンベルグ–マクレーン空間を理解する
- 球面のホモトピー群がきわめて複雑であることを知る
前提:第1章、第3章、第4章〜第6章
基本群はループ、すなわち S1 から空間への写像のホモトピー類であった。S1 を Sn に替えれば、n 次元の「穴」を捉える不変量 πn(X) が得られる。定義はホモロジーよりずっと素朴で、ホモロジーより精密な情報をもつが、その代わり計算は格段に難しい。本章ではその基本的な性質と計算法を学ぶ。
8.1 定義と可換性
In=[0,1]n とし、その境界を ∂In と書く。
定義 8.1(ホモトピー群, homotopy group)n≥1 について、写像 f:(In,∂In)→(X,x0)(∂In を x0 に写す写像)の、∂In を x0 に写したままのホモトピーによる類の全体を πn(X,x0) と書く。和を
(f+g)(s1,…,sn)={f(2s1,s2,…,sn)g(2s1−1,s2,…,sn)(s1≤1/2)(s1≥1/2)
で定める。π0(X,x0) は弧状連結成分の集合(x0 の成分を基点とする基点付き集合)とする。
In/∂In≅Sn なので、πn(X,x0) は基点付き写像 (Sn,s0)→(X,x0) の基点付きホモトピー類の集合と同じである。n=1 なら基本群にほかならない。
第1章と同じ証明(第 1 座標についての再パラメータ付け)で、πn(X,x0) は [cx0] を単位元、[f(1−s1,s2,…,sn)] を [f] の逆元とする群になる。基点付き写像は準同型 f∗ を誘導し(関手性)、ホモトピー同値写像は同型を誘導する。x0 から x1 への道 γ は、「f を小さな同心の立方体に縮め、周りの殻を γ で放射状に埋める」ことで同型 πn(X,x1)≅πn(X,x0) を与える。特に π1(X,x0) は πn(X,x0) に作用する。
定理 8.2 n≥2 ならば πn(X,x0) はアーベル群である。
証明. 第 1 座標で連結する上の和を +1、第 2 座標 s2 で同様に連結する和を +2 とする。どちらも πn(X,x0) 上の演算として well-defined で、定値写像の類 0 を単位元とする(第1章と同じ理由)。In を s1,s2 について四つの小立方体に分けて考えると、写像として
(a+1b)+2(c+1d)=(a+2c)+1(b+2d)
が成り立つ(両辺とも、s1≤1/2,s2≤1/2 の部分で a、s1≥1/2,s2≤1/2 で b、s1≤1/2,s2≥1/2 で c、残りで d を縮小してたどる写像である)。これと単位元の性質を使うと
a+1ba+1b=(a+20)+1(0+2b)=(a+10)+2(0+1b)=a+2b,=(0+2a)+1(b+20)=(0+1b)+2(a+10)=b+2a=b+1a
を得る(最後の等号は 1 行目を b,a に適用した)。□
この論法(エックマン–ヒルトンの論法)は、n=1 では第 2 座標がないので使えない。幾何的には、n≥2 なら二つの小立方体を、空いた方向を使って互いにすり抜けさせて入れ替えられるのである。
積空間については πn(X×Y)≅πn(X)×πn(Y)(問題 8.1)で、可縮な空間のホモトピー群はすべて自明である。また、胞体近似定理(CW 複体の間の写像は、各 k で Xk を Yk に写す写像にホモトピックである。Hatcher, 定理 4.8)から、i<n なら πi(Sn)=0 である(Sn=e0∪en の i 切片は一点)。定理 1.31 はこの i=1 の場合である。空間 X が弧状連結で i≤n について πi(X)=0 のとき、X は n 連結であるという。Sn は (n−1) 連結である。
8.2 相対ホモトピー群と長完全列
In−1={sn=0} を In の底面とし、Jn−1 を ∂In から底面の内部を除いた閉集合(側面と上面)とする。
定義 8.3(相対ホモトピー群)A⊂X, x0∈A、n≥1 とする。写像 f:(In,∂In,Jn−1)→(X,A,x0) のこれらの条件を保つホモトピー類の集合を πn(X,A,x0) と書く。n≥2 なら(第 1 座標での和により)群、n≥3 ならアーベル群である。
f は「底面が A に、残りの境界が x0 に写る n 次元の円板」である。境界 ∂f=f∣In−1 は πn−1(A,x0) の元を定める。
定理 8.4(対のホモトピー長完全列)次の列は完全である(最後の部分は基点付き集合として)。
⋯→πn(A,x0)→πn(X,x0)→πn(X,A,x0)∂πn−1(A,x0)→⋯→π0(X,x0)
証明は各点での完全性を、ホモトピーを直接作って確かめるもので、ホモロジーの場合と違って鎖の代数を使わない(Hatcher, 4.1 節)。ホモロジーの長完全列との大きな違いは、ホモトピー群には切除定理が成り立たないことである。これが計算を難しくしている。
8.3 ファイブレーション
被覆写像ではホモトピーが持ち上がった(定理 3.4)。この性質だけを取り出す。
定義 8.5(ファイブレーション, fibration)写像 p:E→B が空間 Y に関してホモトピー持ち上げ性質をもつとは、任意のホモトピー gt:Y→B と g0 の持ち上げ g~0:Y→E に対し、gt の持ち上げ g~t で t=0 で g~0 となるものが存在することをいう。すべての空間に関してこの性質をもつ p をファイブレーション(フレヴィッツ・ファイブレーション)、すべての円板 Dk に関してもつ p をセール・ファイブレーションという。b0∈B について F=p−1(b0) をファイバーという。
各点 b∈B が開近傍 U で、p と両立する同相 p−1(U)≅U×F をもつものを、ファイバー F のファイバー束 (fiber bundle) という。
例 8.6
- 被覆写像は、離散的なファイバーをもつファイブレーションである(定理 3.4)。
- 射影 B×F→B はファイブレーションである。
- ファイバー束はセール・ファイブレーションである(Hatcher, 命題 4.48。主張のみ)。たとえばメビウスの帯から中心の円周への射影は、ファイバー [−1,1] のファイバー束である。
定理 8.7(ファイブレーションのホモトピー長完全列)p:E→B をセール・ファイブレーション、x0∈F=p−1(b0) とし、B は弧状連結とする。p∗:πn(E,F,x0)→πn(B,b0) は n≥1 で同型であり、したがって次の完全列が存在する。
⋯→πn(F,x0)→πn(E,x0)p∗πn(B,b0)∂πn−1(F,x0)→⋯→π0(E,x0)→0
証明の概略. 全射性:g:(In,∂In)→(B,b0) を、最後の座標を時間とする In−1 のホモトピーとみる。Jn−1 上では g は b0 に値をとるので、そこでは定値 x0 を持ち上げとし、ホモトピー持ち上げ性質((In−1,∂In−1) に関する相対版で、Dn−1 に関する性質から従う)で g~:In→E を作る。g(∂In)=b0 なので g~(∂In)⊂F で、g~ は πn(E,F,x0) の元であり p∗[g~]=[g]。単射性も、ホモトピーを持ち上げて同様に示される。これを対 (E,F) の長完全列(定理 8.4)に代入すればよい。∂[g] は持ち上げ g~ の底面への制限の類である。詳細は Hatcher, 定理 4.41。□
8.4 被覆空間の高次ホモトピー群
命題 8.8 被覆写像 p:(X~,x~0)→(X,x0) は、n≥2 で同型 p∗:πn(X~,x~0)≅πn(X,x0) を誘導する。
証明. 定理 8.7 でファイバーが離散的(πk(F)=0, k≥1)であることからも従うが、直接示す。全射性:n≥2 なら Sn は単連結かつ局所弧状連結なので、基点付き写像 f:Sn→X は定理 3.7 により f~(s0)=x~0 となる持ち上げをもち、[f]=p∗[f~]。単射性:p∘f~ が基点付きホモトピー F で定値写像にホモトピックなら、F を f~ から持ち上げる(定理 3.4)。基点の軌跡は定値の道の持ち上げなので x~0 にとどまり、終わりの写像は定値写像の持ち上げなので定値(補題 3.3)。よって f~ は零ホモトピックである。□
例 8.9
- R は可縮なので n≥2 で πn(S1)=0。同様に πn(Tk)=0(n≥2)。
- n≥2 で πn(RPm)≅πn(Sm)。特に π2(RP2)≅π2(S2) で、これは次節で Z とわかる。
- g≥1 の閉曲面 Mg の普遍被覆は R2 と同相なので(例 3.14)、n≥2 で πn(Mg)=0。円周のブーケの普遍被覆は木(可縮なグラフ)なので、その高次ホモトピー群も 0 である。
8.5 ホップファイブレーションと π3(S2)
例 8.10(ホップファイブレーション, Hopf fibration)S3={(z0,z1)∈C2∣∣z0∣2+∣z1∣2=1} とし、p(z0,z1)=[z0:z1]∈CP1≅S2 とおく。ファイバーは p−1([z0:z1])={(λz0,λz1)∣∣λ∣=1}≅S1 である。U0={[z0:z1]∣z0=0} 上では
p−1(U0)→U0×S1,(z0,z1)↦([z0:z1],∣z0∣z0)
が同相写像で(逆写像は ([1:w],λ)↦λ(1,w)/1+∣w∣2)、U1={z1=0} 上でも同様なので、p はファイバー S1 のファイバー束である。S3 は互いに交わらない大円(ファイバー)で埋め尽くされ、どの二つのファイバーも一回ずつ絡み合っている。
定理 8.11 (1) π2(S2)≅Z。(2) n≥3 で πn(S2)≅πn(S3)。特に π3(S2)≅π3(S3)≅Z であり、ホップ写像 p の類が生成元である。
証明. 定理 8.7 をホップファイブレーションに適用する。例 8.9 より n≥2 で πn(S1)=0、8.1 節より π1(S3)=π2(S3)=0。(1) 完全列 0=π2(S3)→π2(S2)∂π1(S1)→π1(S3)=0 より π2(S2)≅π1(S1)≅Z。(2) n≥3 なら 0=πn(S1)→πn(S3)p∗πn(S2)→πn−1(S1)=0。π3(S3)≅Z は [id] で生成され(系 8.14)、p∗[id]=[p]。□
H3(S2)=0 なのに π3(S2)=0 である。ホモロジー群は空間の次元を超えると消えるが、ホモトピー群は消えない。ホップ写像はホモロジーでは見えない(すべての被約ホモロジー群に零写像を誘導する)が、零ホモトピックではない(問題 8.4)。写像 f:S3→S2 に対し、二点の逆像(一般には二つの閉曲線)の絡み数をホップ不変量といい、π3(S2)≅Z の同型を与える(主張のみ)。四元数・八元数を用いた同様のファイバー束 S3→S7→S4, S7→S15→S8 もあり、ホップ不変量 1 の写像はこれらの次元にしか存在しない(アダムスの定理、主張のみ)。
8.6 フレヴィッツの定理とホワイトヘッドの定理
Hn(Sn)≅Z の生成元 ιn を固定する。
定義 8.12(フレヴィッツ準同型)h:πn(X,x0)→Hn(X) を h([f])=f∗(ιn)(f:Sn→X)で定める。これは準同型である(f+g は Sn を赤道でつぶした Sn∨Sn を経由する写像であることからわかる)。
n=1 ではこれは定理 4.25 の写像で、全射であり核は交換子群であった。高次元では次が成り立つ。
定理 8.13(フレヴィッツの定理, Hurewicz theorem)n≥2 とし、X が (n−1) 連結ならば、0<i<n で H~i(X)=0 であり、h:πn(X)→Hn(X) は同型である。
証明は Hatcher, 定理 4.32 を参照(主張のみ)。「最初に消えないホモトピー群と最初に消えないホモロジー群は、同じ次数に現れて一致する」と覚えればよい。
系 8.14 n≥1 について πn(Sn)≅Z であり、同型は写像度 [f]↦degf で与えられる。特に、二つの写像 Sn→Sn がホモトピックであるための必要十分条件は、写像度が等しいことである(ホップの定理)。
証明. n=1 は定理 1.25。n≥2 なら Sn は (n−1) 連結なので定理 8.13 より h:πn(Sn)≅Hn(Sn)≅Z で、h([f])=f∗(ιn)=(degf) ιn。後半:写像度は自由ホモトピーで不変である(命題 5.6)。逆に、任意の写像 f は回転の族 Rt(R0=id、R1 は f(s0) を s0 に写す回転。SO(n+1) は弧状連結)との合成 Rt∘f により基点付き写像にホモトピックで、写像度は変わらないので、基点付きの場合の前半に帰着する。□
同様に、n≥2 なら ⋁kSn は (n−1) 連結で(胞体近似定理)、πn(⋁kSn)≅Hn(⋁kSn)≅Zk である。
定理 8.15(ホワイトヘッドの定理, Whitehead theorem)連結な CW 複体の間の写像 f:X→Y がすべての n で同型 f∗:πn(X)→πn(Y) を誘導するならば、f はホモトピー同値写像である。さらに X,Y が単連結なら、すべての n で f∗:Hn(X)→Hn(Y) が同型であれば十分である。
証明は Hatcher, 定理 4.5 と系 4.33 を参照(主張のみ)。
注意
ホワイトヘッドの定理は、同型を誘導する写像の存在を仮定している。ホモトピー群がすべて抽象的に同型であっても、ホモトピー同値とは限らない(問題 8.5、8.7)。
8.7 アイレンベルグ–マクレーン空間
定義 8.16 ただ一つの次数 n でだけ πn(X)≅G で、それ以外のホモトピー群が自明な連結 CW 複体を アイレンベルグ–マクレーン空間 (Eilenberg–MacLane space) K(G,n) という(n≥2 なら G はアーベル群)。
定理 8.17 任意の群 G(n≥2 ではアーベル群)について K(G,n) が存在し、ホモトピー同値を除いて一意である。
証明の概略. 存在:G の生成元ごとに Sn をとったブーケに、関係式ごとに (n+1) 胞体を貼り付けると、n=1 ならファン・カンペンの定理(定理 2.18)、n≥2 ならフレヴィッツの定理と胞体ホモロジーにより πn≅G となる。さらに (n+2) 次元以上の胞体を貼り付けて、πn+1,πn+2,… を順に殺していく(k 胞体の貼り付けは πi(i<k−1)を変えない)。一意性はホワイトヘッドの定理による。詳細は Hatcher, 1B 節と 4.2 節。□
例 8.18
- K(Z,1)=S1、K(Zn,1)=Tn、K(Fn,1)=⋁nS1、g≥1 で K(π1(Mg),1)=Mg(例 8.9)。一般に、普遍被覆が可縮な空間は K(π,1) である。
- 無限次元球面 S∞=⋃nSn は可縮であり(主張のみ)、Z/2 が自由に作用するので RP∞=S∞/{±1} は K(Z/2,1) である。
- ファイバー束 S1→S∞→CP∞ の長完全列から CP∞ は K(Z,2) である。
アイレンベルグ–マクレーン空間はコホモロジーを「表現」する:CW 複体 X について、写像 X→K(G,n) のホモトピー類全体 [X,K(G,n)] は Hn(X;G) と自然に一対一に対応する(Hatcher, 定理 4.57。主張のみ)。また K(G,1) のコホモロジーは群 G のコホモロジー(12-category-homological-algebra 第5章)と一致し、代数と位相を結ぶ橋になっている。たとえば定理 7.11 より Hk(RP∞;Z/2)=0 がすべての k で成り立つので、K(Z/2,1) は有限次元の CW 複体にはとれない。
8.8 球面のホモトピー群
ホモロジー群では H~i(Sn) は i=n でだけ Z だった。ホモトピー群 πi(Sn) はまったく様子が異なる。次の表は πn+k(Sn) の値である(計算は戸田宏らによる)。
|
k=0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
| S1 |
Z |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
| S2 |
Z |
Z |
Z/2 |
Z/2 |
Z/12 |
Z/2 |
Z/2 |
| S3 |
Z |
Z/2 |
Z/2 |
Z/12 |
Z/2 |
Z/2 |
Z/3 |
| S4 |
Z |
Z/2 |
Z/2 |
Z⊕Z/12 |
(Z/2)2 |
(Z/2)2 |
Z/24⊕Z/3 |
| S5 |
Z |
Z/2 |
Z/2 |
Z/24 |
Z/2 |
Z/2 |
Z/2 |
| S6 |
Z |
Z/2 |
Z/2 |
Z/24 |
0 |
Z |
Z/2 |
| S7 |
Z |
Z/2 |
Z/2 |
Z/24 |
0 |
0 |
Z/2 |
| S8 |
Z |
Z/2 |
Z/2 |
Z/24 |
0 |
0 |
Z/2 |
いくつかの規則性が知られている(いずれも主張のみ)。
- S2 の行は k≥1 で S3 の行を一つずらしたものである(定理 8.11)。
- フロイデンタールの懸垂定理:k<n−1 なら πn+k(Sn)≅πn+k+1(Sn+1)。したがって各列は n≥k+2 で一定になる(安定ホモトピー群 πks:Z,Z/2,Z/2,Z/24,0,0,Z/2,Z/240,…)。
- セールの定理:πi(Sn) は、i=n の場合と、n が偶数で i=2n−1 の場合を除いて有限群である。後者では Z と有限群の直和になる(表の π7(S4), π11(S6))。
πi(Sn) をすべての i,n について求める一般的な公式は知られておらず、その計算は現代のホモトピー論の中心問題の一つであり続けている(スペクトル系列による計算法は 12-category-homological-algebra 第6章を参照)。
まとめ
- πn(X,x0) は基点付き写像 Sn→X のホモトピー類の群で、n≥2 ではアーベル群(エックマン–ヒルトンの論法)。π1 は πn に作用する。i<n で πi(Sn)=0。
- 対 (X,A) とセール・ファイブレーション F→E→B にはホモトピー長完全列がある。ファイバー束はセール・ファイブレーションである。
- 被覆写像は n≥2 で πn の同型を誘導する(πn(S1)=0、πn(RPm)≅πn(Sm))。
- ホップファイブレーション S1→S3→S2 から π2(S2)≅Z、π3(S2)≅Z(ホップ写像が生成元)。ホモトピー群は空間の次元を超えても消えない。
- フレヴィッツの定理:(n−1) 連結なら πn≅Hn。特に πn(Sn)≅Z(写像度)。ホワイトヘッドの定理:ホモトピー群の同型を誘導する CW 複体の間の写像はホモトピー同値。
- アイレンベルグ–マクレーン空間 K(G,n) は存在して一意で、[X,K(G,n)]≅Hn(X;G)。例:S1, Tn, RP∞, CP∞。
- 球面のホモトピー群は複雑で、一般的な公式は知られていない。安定域ではフロイデンタールの懸垂定理が成り立つ。
演習問題
問題 8.1 ★ πn(X×Y,(x0,y0))≅πn(X,x0)×πn(Y,y0) を示せ。
解答
積位相の性質から、写像 (In,∂In)→(X×Y,(x0,y0)) とそのホモトピーは、成分ごとの写像とホモトピーの組と一対一に対応する。和は成分ごとに計算されるので、[f]↦([pXf],[pYf]) は同型である(命題 1.29 と同じ)。
問題 8.2 ★ m≥2 について πn(RPm) を n≤m の範囲で求めよ。また RPm(2≤m<∞)は K(Z/2,1) でないことを示せ。
解答
π1(RPm)≅Z/2。n≥2 では命題 8.8 より πn(RPm)≅πn(Sm) なので、2≤n<m で 0、n=m で Z(系 8.14)。πm(RPm)=0 なので K(Z/2,1) ではない。
問題 8.3 ★★ p:S2n+1→CPn, p(z0,…,zn)=[z0:⋯:zn] はファイバー S1 のファイバー束であることを示し、π1(CPn)=0、π2(CPn)≅Z、k≥3 で πk(CPn)≅πk(S2n+1) を示せ。
解答
Ui={zi=0} 上で z↦([z],zi/∣zi∣) が p−1(Ui)≅Ui×S1 を与える(例 8.10 と同様)。定理 8.7 の完全列で、k≤2n なら πk(S2n+1)=0、k≥2 なら πk(S1)=0 である。π1(S2n+1)=0→π1(CPn)→π0(S1)=0 より π1=0。0=π2(S2n+1)→π2(CPn)→π1(S1)→π1(S2n+1)=0 より π2≅Z。k≥3 では πk(S1)=πk−1(S1)=0 から同型を得る。特に 3≤k≤2n で πk(CPn)=0 であり、n→∞ の極限 CP∞ が K(Z,2) となる理由がわかる。
問題 8.4 ★★ ホップ写像 p:S3→S2 は、すべての被約ホモロジー群に零写像を誘導するが、零ホモトピックでないことを示せ。
解答
H~i(S3) は i=3 でだけ、H~i(S2) は i=2 でだけ 0 でないので、p∗ はすべての次数で零写像である。一方、定理 8.11 の証明より p∗:π3(S3)→π3(S2) は同型で、π3(S3)≅Z の生成元 [id] を [p] に写すので [p]=0 である。
問題 8.5 ★★ S2 と S3×CP∞ は同型なホモトピー群をもつが、ホモトピー同値でないことを示せ。
解答
問題 8.1 と例 8.18 より、πn(S3×CP∞) は n=1 で 0、n=2 で π2(S3)×Z≅Z、n≥3 で πn(S3)。定理 8.11 より πn(S2) も同じである。一方 S3 は S3×CP∞ のレトラクト(包含 s↦(s,∗) と射影)なので、問題 4.2 より H3(S3)≅Z は H3(S3×CP∞) に単射に入り、H3(S2)=0 と異なる。
問題 8.6 ★★ π2(S1∨S2) は可算無限個の Z の直和と同型であることを示せ(有限 CW 複体のホモトピー群は有限生成とは限らない)。
解答
R の各整数点 k に 2 次元球面 Sk2 を一点で付けた空間 X~ は、R→S1 を延長し各 Sk2 を S2 に同相に写す写像により S1∨S2 の被覆空間になる。X~ は可縮な部分複体 R をつぶすと ⋁k∈ZS2 にホモトピー同値で(Hatcher, 命題 0.17)、ファン・カンペンの定理より単連結である。フレヴィッツの定理(n=2)と系 4.24 より π2(X~)≅H2(X~)≅⨁k∈ZZ。命題 8.8 より π2(S1∨S2) もこれと同型である。
問題 8.7 ★★★ RP2×S3 と S2×RP3 は同型なホモトピー群をもつが、ホモトピー同値でないことを示せ。
解答
どちらも基本群は Z/2 で、普遍被覆はともに S2×S3(被覆の積)なので、命題 8.8 より n≥2 のホモトピー群は πn(S2×S3) と同型である。ホモロジーのキュネットの公式(6.7 節)で H5 を比べると、S3, S2 のホモロジーは自由なので Tor の項は消え、H5(RP2×S3)≅H2(RP2)⊗H3(S3)=0、H5(S2×RP3)≅H2(S2)⊗H3(RP3)≅Z。よってホモトピー同値でない(前者は向き付け不可能、後者は向き付け可能な閉 5 次元多様体である)。