この章の目標
- 双対鎖複体としてコホモロジー群を定義し、その基本性質(公理的性質)を理解する
- Ext と Tor を用いた普遍係数定理で、ホモロジーからコホモロジーを計算できる
- カップ積を定義し、次数付き可換な環 H∗(X;R) を得る
- トーラス・射影空間・曲面のコホモロジー環を知り、ホモロジーでは区別できない空間を区別できる
- キュネットの公式の主張を理解し、ボルスク–ウラムの定理を証明できる
前提:第4章、第5章、02-linear-algebra 第9章(テンソル積)
6.1 動機
ホモロジー群は強力だが、S2∨S1∨S1 とトーラス T2 のように、ホモロジー群がすべて同型なのにホモトピー同値でない空間を区別できない(問題 5.1)。本章では、鎖複体の双対をとったコホモロジーを考える。群としてはホモロジーからほぼ決まってしまうが、コホモロジーにはカップ積という積が入り、次数付き環になる。この環構造が新しい情報を運ぶ。
微分形式を知っている読者には、ド・ラーム・コホモロジー HdR∗(M) と外積 ∧(07-manifolds 第7章)を思い浮かべるとよい。特異コホモロジーとカップ積はそれを任意の空間と任意の係数に拡張したものであり、両者は実係数で一致する(第7章のド・ラームの定理)。
6.2 コホモロジー群
定義 6.1(コホモロジー, cohomology)G をアーベル群とする。Cn(X;G)=Hom(Cn(X),G) の元を n 余鎖といい、余境界作用素 δ:Cn(X;G)→Cn+1(X;G) を δφ=φ∘∂ で定める。δδ=0 であり、Hn(X;G)=kerδ/imδ を係数 G の特異コホモロジー群という。kerδ の元を余輪体、imδ の元を余境界という。相対版 Hn(X,A;G) は Cn(X,A;G)=Hom(Cn(X,A),G)(A 上で 0 になる余鎖)から同様に定める。
写像 f:X→Y は f♯φ=φ∘f♯ により f∗:Hn(Y;G)→Hn(X;G) を誘導し、(gf)∗=f∗g∗ となる(向きが逆になる:反変関手)。
例 6.2 0 余鎖は点全体の上の G 値関数であり、(δφ)(σ)=φ(σ(e1))−φ(σ(e0)) なので、余輪体は道で結ばれる点で同じ値をとる関数である。よって H0(X;G) は弧状連結成分全体から G への写像全体 ∏αG である。一点のコホモロジーは H0=G、n>0 で 0 である(例 4.12 の鎖複体の双対を計算する)。
同様に、係数 G のホモロジー Hn(X;G) を鎖複体 Cn(X)⊗G のホモロジーとして定める。G=Z/2 の場合は、単体の向き(符号)を気にしなくてよいので計算が簡単になる。
6.3 普遍係数定理
コホモロジー群がホモロジー群からどう決まるかを述べるには、二つの関手 Ext と Tor が必要である。ここでは有限生成アーベル群について最小限を述べる(一般論は 12-category-homological-algebra 第5章)。
定義 6.3(Ext と Tor)アーベル群 H の自由分解 0→F1ϕF0→H→0(F0,F1 は自由アーベル群、行は完全)をとり、
Ext(H,G)=coker(ϕ∗:Hom(F0,G)→Hom(F1,G)),Tor(H,G)=ker(ϕ⊗1:F1⊗G→F0⊗G)
とおく。これらは自由分解の取り方によらない。
自由分解は、H の生成元上の自由アーベル群 F0 と、その核 F1(自由アーベル群の部分群は自由)でとれる。次の性質から有限生成アーベル群の Ext, Tor はすべて計算できる。
例 6.4
- H が自由なら 0→0→H→H→0 が自由分解なので、Ext(H,G)=0、Tor(H,G)=0。
- 0→ZnZ→Z/n→0 より、Ext(Z/n,G)≅G/nG、Tor(Z/n,G)≅{g∈G∣ng=0}。
- Ext, Tor は有限直和と可換である。特に有限生成アーベル群 H について Ext(H,Z) は H のねじれ部分群と同型である。
定理 6.5(コホモロジーの普遍係数定理, universal coefficient theorem)C∙ を自由アーベル群の鎖複体(たとえば C∙(X))とする。各 n について分裂する完全列
0→Ext(Hn−1(C),G)→Hn(Hom(C∙,G))hHom(Hn(C),G)→0
が存在する。ここで h([φ])([z])=φ(z) である(分裂は自然でない)。
証明の概略. h は well-defined である(余輪体は境界上で 0、余境界は輪体上で 0)。Bn−1⊂Cn−1 は自由アーベル群の部分群なので自由であり、0→Zn→Cn∂Bn−1→0 は分裂する。したがって Bn 上で 0 になる準同型 Zn→G は Cn 上に拡張でき、それは余輪体なので h は全射である。核を求めるには、鎖複体の短完全列 0→Z∙→C∙→B∙−1→0(Z,B の境界は 0)が各次数で分裂するので Hom(−,G) をとっても完全であることを使い、コホモロジーの長完全列を書く。その連結準同型は包含 Bn→Zn の双対になり、自由分解 0→Bn−1→Zn−1→Hn−1→0 から、核がちょうど Ext(Hn−1,G) となる。詳細は Hatcher, 定理 3.2。□
同様に、ホモロジーについても分裂する完全列 0→Hn(X)⊗G→Hn(X;G)→Tor(Hn−1(X),G)→0 が成り立つ(ホモロジーの普遍係数定理)。
系 6.6
- Hn(X),Hn−1(X) が有限生成で、ねじれ部分群を Tn,Tn−1 とすると Hn(X;Z)≅(Hn(X)/Tn)⊕Tn−1。
- F が体なら Hn(X;F)≅HomF(Hn(X;F),F)(F 上のベクトル空間として)。
- X が弧状連結なら H1(X;G)≅Hom(H1(X),G)≅Hom(π1(X),G) で、この同型は自然である。
証明. (1) 定理 6.5 と例 6.4 (3) による。(2) 定理 6.5 の証明は体上の鎖複体でもそのまま通用し、体上の加群はすべて自由なので Ext の項が消える。(3) H0(X) は自由なので Ext(H0,G)=0。アーベル群 G への準同型は交換子群を経由するので、定理 4.25 より後半が従う。□
例 6.7(RPn のコホモロジー)例 5.16 と系 6.6 (1) より、Hk(RPn;Z) は k=0 で Z、0<k≤n で k が偶数なら Z/2、k=n が奇数なら Z、それ以外で 0 である。ねじれがホモロジーより一つ上の次数に現れることに注意する。Z/2 係数では、定理 6.5 と例 6.4 (2) から 0≤k≤n のすべてで Hk(RPn;Z/2)≅Z/2 となる。
6.4 コホモロジーの公理的性質
ホモロジーについて第4・5章で示した性質は、双対をとることでコホモロジーについても成り立つ。
定理 6.8 特異コホモロジーは次の性質をもつ(係数 G は省略する)。
- (関手性とホモトピー不変性)f≃g なら f∗=g∗。
- (長完全列)⋯→Hn(X,A)→Hn(X)→Hn(A)δHn+1(X,A)→⋯ は完全である。
- (切除)定理 4.21 と同じ仮定のもとで Hn(X,A)≅Hn(X∖Z,A∖Z)。
- (加法性)Hn(⨆αXα)≅∏αHn(Xα)。
- (次元)H0(pt)=G、n=0 で Hn(pt)=0。
さらに、良い対について Hn(X,A)≅H~n(X/A)、マイヤー–ヴィートリス完全列、CW 複体の胞体コホモロジー(Hom(C∙CW(X),G) のコホモロジー)が成り立つ。
証明の方針. 鎖ホモトピーは双対をとっても鎖ホモトピーなので (1) が従う。Cn(X,A) は自由なので 0→Cn(A)→Cn(X)→Cn(X,A)→0 は分裂し、Hom(−,G) をとっても完全であり、(2) が従う。ホモロジーの同型を誘導する自由鎖複体の間の鎖写像は、普遍係数定理と 5 項補題によりコホモロジーの同型も誘導するので、(3) や胞体コホモロジーが従う。□
6.5 カップ積
以下 R は単位元をもつ可換環(Z, Z/2, Q など)とする。
定義 6.9(カップ積, cup product)φ∈Ck(X;R), ψ∈Cl(X;R) に対し、φ⌣ψ∈Ck+l(X;R) を
(φ⌣ψ)(σ)=φ(σ∣[e0,…,ek])ψ(σ∣[ek,…,ek+l])
で定める。単体の「前の k 次元の面」で φ を、「後ろの l 次元の面」で ψ を評価して掛けるのである。
補題 6.10(ライプニッツ則)δ(φ⌣ψ)=δφ⌣ψ+(−1)kφ⌣δψ。
証明. (k+l+1) 単体 σ について
(δφ⌣ψ)(σ)(−1)k(φ⌣δψ)(σ)=i=0∑k+1(−1)iφ(σ∣[e0,…,e^i,…,ek+1])ψ(σ∣[ek+1,…,ek+l+1]),=i=k∑k+l+1(−1)iφ(σ∣[e0,…,ek])ψ(σ∣[ek,…,e^i,…,ek+l+1])
である。第 1 式の i=k+1 の項と第 2 式の i=k の項は打ち消し合い、残りの項の和はちょうど (φ⌣ψ)(∂σ)=δ(φ⌣ψ)(σ) である。□
したがって余輪体どうしのカップ積は余輪体で、余輪体と余境界のカップ積は余境界(φ⌣δψ=(−1)kδ(φ⌣ψ) など)なので、カップ積はコホモロジー上の積 Hk(X;R)×Hl(X;R)→Hk+l(X;R) を誘導する。
命題 6.11 カップ積は結合的で、各 0 単体に 1 を対応させる余輪体の類 1∈H0(X;R) を単位元とする。写像 f:X→Y について f∗(α⌣β)=f∗α⌣f∗β。よって H∗(X;R)=⨁nHn(X;R) は次数付き環(コホモロジー環)で、f∗ は環準同型である。
証明. 結合律と単位元は余鎖の段階で定義から明らか。f♯(φ⌣ψ)(σ)=(φ⌣ψ)(fσ) で、fσ の面は σ の面を f で写したものだから、余鎖の段階で自然性が成り立つ。□
特に、ホモトピー同値な空間のコホモロジー環は環として同型である。
定理 6.12(次数付き可換性)α∈Hk(X;R), β∈Hl(X;R) について α⌣β=(−1)klβ⌣α である。
証明の方針. 余鎖の段階では成り立たない。単体の頂点の順序を逆にした σˉ(t0,…,tn)=σ(tn,…,t0) を用いて ρ(σ)=(−1)n(n+1)/2σˉ とおくと、ρ は恒等写像に鎖ホモトピックな鎖写像であり、余鎖の段階で ρ♯(φ⌣ψ)=(−1)klρ♯ψ⌣ρ♯φ が成り立つ(符号は 2(k+l)(k+l+1)=2k(k+1)+2l(l+1)+kl から来る)。詳細は Hatcher, 定理 3.11。□
特に奇数次の類 α について 2α2=0 であり、Z/2 係数では符号を気にしなくてよい。
6.6 コホモロジー環の計算例
Δ複体では、単体コホモロジー(単体の上の余鎖)と定義 6.9 の式でカップ積が計算でき、特異コホモロジー環と一致する。
例 6.13(トーラス)例 4.5 の Δ複体(辺 a,b,c、∂L=∂U=a+b−c)を使う。0 余鎖の余境界は 0 で、1 余鎖 φ が余輪体であるのは φ(c)=φ(a)+φ(b) のときである。よって H1(T2)≅Z2 で、基底として
α(a)=1, α(b)=0, α(c)=1,β(a)=0, β(b)=1, β(c)=1
がとれる。L の辺は前から順に [v0,v1]=a, [v1,v2]=b、U の辺は [w0,w1]=b, [w1,w2]=a なので
(α⌣β)(L)=α(a)β(b)=1,(α⌣β)(U)=α(b)β(a)=0
である。H2(T2)≅Hom(H2(T2),Z)≅Z は基本輪体 U−L での値で決まり、(α⌣β)(U−L)=−1 なので α⌣β は H2 の生成元である。同様に α⌣α と β⌣β は L,U の両方で 0 となる。したがって H∗(T2;Z) は α2=β2=0, αβ=−βα を満たす α,β で生成される外積代数 ΛZ[α,β] である。
例 6.14(ブーケとの比較)良い対の基点をもつ空間のブーケについて、包含写像 ik:Xk→⋁αXα たちは環同型 H~∗(⋁αXα)≅∏αH~∗(Xα) を与える(群の同型は系 4.24 の双対、環準同型であることは命題 6.11)。X=S2∨S1∨S1 で α,β∈H1(X) をとると、α⌣β の各成分は H2(S1)=0 に属し、S2 成分は H1(S2)=0 から 0 である。よって H1(X)×H1(X)→H2(X) は 0 だが、トーラスでは 0 でない。S2∨S1∨S1 と T2 はホモロジー群が同型だがホモトピー同値でない。
射影空間のコホモロジー環は次のとおりである。証明にはポアンカレ双対性を用いるので第7章(7.6 節)で与える。
定理 6.15 (1) H∗(RPn;Z/2)≅Z/2[α]/(αn+1)(α は次数 1)。(2) H∗(CPn;Z)≅Z[α]/(αn+1)(α は次数 2)。すなわち各 Hk の生成元は生成元 α のべきで与えられる。
例 6.16(閉曲面)Mg の H1(Mg;Z)≅Z2g には、ai,bi に双対な基底 αi,βi があり、H2≅Z の生成元 ω について
αi⌣βj=δijω,βj⌣αi=−δijω,αi⌣αj=βi⌣βj=0
が成り立つ。これは、Mg の把手と把手の間の円周をつぶす写像 Mg→⋁i=1gT2 が H1 と H2 に誘導する写像を調べ、例 6.13, 6.14 に帰着して示される(Hatcher, 例 3.7)。同様に Nh では H1(Nh;Z/2)≅(Z/2)h の基底 αi について αi⌣αj=δijω である(RP2 のブーケに帰着し、定理 6.15 (1) を使う)。どちらの場合も、カップ積による対 H1×H1→H2 は非退化である。これはポアンカレ双対性の現れである。
6.7 キュネットの公式
p1,p2 を X×Y から各成分への射影とし、クロス積 a×b=p1∗a⌣p2∗b を定める。
定理 6.17(キュネットの公式, Künneth formula)X,Y を CW 複体とし、各 Hk(Y;R) が有限生成自由 R 加群であるとする(たとえば R が体で Y が有限 CW 複体)。このとき a⊗b↦a×b は環同型
H∗(X;R)⊗RH∗(Y;R)≅H∗(X×Y;R)
を与える。ただし左辺の積は (a⊗b)(c⊗d)=(−1)∣b∣∣c∣ac⊗bd とする。
証明は Hatcher, 定理 3.15 を参照。ホモロジーについては Hn(X×Y)≅⨁i+j=nHi(X)⊗Hj(Y)⊕⨁i+j=n−1Tor(Hi(X),Hj(Y)) が成り立つ(主張のみ)。
例 6.18 (1) H∗(S1)=ΛZ[α] から、帰納的に H∗(Tn;Z)≅ΛZ[α1,…,αn](次数 1 の生成元の外積代数)。例 6.13 はその n=2 の場合である。(2) S2×S4 と CP3 のコホモロジー群はどちらも次数 0,2,4,6 で Z だが、S2×S4 では次数 2 の生成元 x について x2=0(x2∈H4(S2)⊗H0(S4) の成分が 0)、CP3 では α2 が H4 を生成する。よって両者はホモトピー同値でない。
6.8 ボルスク–ウラムの定理
定理 6.19(ボルスク–ウラムの定理, Borsuk–Ulam theorem)任意の写像 f:Sn→Rn について、f(x)=f(−x) となる x∈Sn が存在する。
証明. まず「g(−x)=−g(x) を満たす写像(奇写像)g:Sn→Sn−1 は存在しない(n≥1)」ことを示す。n=1 なら、S1 は連結なので g は定値だが、g(−x)=−g(x)=g(x) に反する。n≥2 とする。g は写像 gˉ:RPn→RPn−1 を誘導する。m≥1 について、RPm のループの類に、その Sm への持ち上げが閉じていなければ 1、閉じていれば 0 を対応させる写像を θm:π1(RPm)→Z/2 とする。これは被覆変換群 Z/2 への準同型(定理 3.10)で 0 でないので、系 6.6 (3) により θm∈H1(RPm;Z/2) とみなせ、m=n では θn が生成元 α である。Sn 内の x から −x への道 ℓ~ の像をループ ℓ とすると、[ℓ] は π1(RPn)≅Z/2 の生成元で θn(ℓ)=1。gˉ∘ℓ は g(x) から g(−x)=−g(x) への道 g∘ℓ~ に持ち上がるので θn−1(gˉ∘ℓ)=1。よって gˉ∗θn−1=θn−1∘gˉ∗=α であり、
αn=gˉ∗(θn−1n)=0(θn−1n∈Hn(RPn−1;Z/2)=0)
となるが、定理 6.15 (1) より αn=0 で矛盾する。
さて f(x)=f(−x) がすべての x で成り立つなら、g(x)=(f(x)−f(−x))/∥f(x)−f(−x)∥ は奇写像 Sn→Sn−1 となり、上に反する。□
系 6.20 (1) Sn は Rn のどの部分集合とも同相でない。(2) 地球上には、気温と気圧がともに等しい対蹠点の組が存在する(n=2、気温と気圧が連続と仮定する)。
証明. (1) 単射連続写像 Sn→Rn は定理 6.19 に反する。(2) は定理 6.19 そのものである。□
同じ定理から、Rn 内の n 個の有界な可測集合は一枚の超平面で同時に体積を二等分できる(ハムサンドイッチの定理、証明は省略)。
まとめ
- コホモロジーは Cn(X;G)=Hom(Cn(X),G) の双対鎖複体のコホモロジーで、写像に対して反変的である。ホモロジーと同様の公理的性質(ホモトピー不変性・長完全列・切除・マイヤー–ヴィートリス・胞体コホモロジー)をもつ。
- 普遍係数定理:0→Ext(Hn−1,G)→Hn(X;G)→Hom(Hn,G)→0(分裂)。整数係数ではホモロジーのねじれが一つ上の次数に移る。H1(X;G)≅Hom(π1(X),G)。
- カップ積はライプニッツ則によりコホモロジーに降り、H∗(X;R) は結合的・次数付き可換な環になり、写像は環準同型を誘導する。
- H∗(Tn)=ΛZ[α1,…,αn]、H∗(CPn)=Z[α]/(αn+1)、H∗(RPn;Z/2)=Z/2[α]/(αn+1)。曲面の H1×H1→H2 は非退化。
- 環構造により、ホモロジーが同じ S2∨S1∨S1 と T2、S2×S4 と CP3 が区別される。キュネットの公式で積空間の環が求まる。
- ボルスク–ウラムの定理:Sn→Rn は必ず対蹠点を同じ点に写す。
演習問題
問題 6.1 ★ 普遍係数定理を用いて H∗(Mg;Z)、H∗(Nh;Z)、H∗(Nh;Z/2) を求めよ。
解答
H∗(Mg)=Z,Z2g,Z はねじれがないので H∗(Mg;Z)=Z,Z2g,Z。H∗(Nh)=Z,Zh−1⊕Z/2,0 より、系 6.6 (1) から H∗(Nh;Z)=Z,Zh−1,Z/2。Z/2 係数では H0=Z/2、H1=Hom(Zh−1⊕Z/2,Z/2)=(Z/2)h、H2=Ext(Zh−1⊕Z/2,Z/2)=Z/2。
問題 6.2 ★ d=gcd(m,n) とするとき、Ext(Z/m,Z/n)≅Tor(Z/m,Z/n)≅Z/d を示せ。
解答
例 6.4 (2) より Ext≅(Z/n)/m(Z/n)。m(Z/n) は d で生成される指数 d の部分群なので、商は Z/d。Tor≅{x∈Z/n∣mx=0} は n/d の倍数全体で、位数 d の巡回群である。
問題 6.3 ★ 任意の空間 X について H1(X;Z) はねじれ元をもたないことを示せ。
解答
H0(X) は自由なので Ext(H0(X),Z)=0 であり、定理 6.5 より H1(X;Z)≅Hom(H1(X),Z)。φ=0 なら φ(x)=0 となる x があり、kφ(x)=0(k=0)なので、Z への準同型の群はねじれ元をもたない。
問題 6.4 ★★ CP2 と S2∨S4 はホモロジー群が同型だがホモトピー同値でないことを示せ。
解答
どちらも H∗=Z,0,Z,0,Z。CP2 では生成元 α∈H2 について α2 が H4 を生成する(定理 6.15)。S2∨S4 では例 6.14 より x∈H2 は S2 成分だけをもち、x2 の成分は H4(S2)=0 と H4(S4) の 0 なので x2=0。環が同型でないのでホモトピー同値でない。
問題 6.5 ★★ 任意の写像 f:S2∨S1∨S1→T2 は H2 上に零写像を誘導することを示せ。
解答
H2(T2) は α⌣β で生成される(例 6.13)。f∗(α⌣β)=f∗α⌣f∗β は H1(S2∨S1∨S1) の二元のカップ積なので、例 6.14 より 0 である。
問題 6.6 ★★ m,n≥1 について、Sm×Sn と Sm∨Sn∨Sm+n はホモロジー群が同型だがホモトピー同値でないことを示せ。
解答
キュネットの公式より H∗(Sm×Sn) は 1,a×1,1×b,a×b(a,b は Sm,Sn の生成元)を基底とし、群としてはブーケ(例 6.14 と定理 5.2)と同型である。ホモロジーも普遍係数定理(ねじれがない)から同型。Sm×Sn では (a×1)⌣(1×b)=a×b=0。ブーケでは正の次数の二つの類の積は、各成分が球面の正の次数の類の積(次数が球面の次元を超えるか、異なる成分どうしの積)なので 0。よって環が異なる。
問題 6.7 ★★ Sn が n+1 個の閉集合 A1,…,An+1 で覆われているなら、ある Ai は対蹠点の組 x,−x を含むことを示せ(リュステルニク–シュニレルマンの定理)。
解答
f(x)=(d(x,A1),…,d(x,An))∈Rn は連続なので、定理 6.19 より f(x)=f(−x) となる x がある。ある i≤n で d(x,Ai)=0 なら、Ai は閉なので x∈Ai で、d(−x,Ai)=0 より −x∈Ai。そうでなければ x,−x はどの A1,…,An にも属さないので、ともに An+1 に属する。
問題 6.8 ★★★ RP3 と RP2∨S3 は、基本群もホモロジー群も同型だがホモトピー同値でないことを示せ。
解答
基本群はともに Z/2(ファン・カンペンの定理より π1(RP2∨S3)≅Z/2∗1)。ホモロジーはともに Z,Z/2,0,Z(例 5.16 と系 4.24)。Z/2 係数のコホモロジー環を比べる。RP3 では生成元 α∈H1 について α3=0(定理 6.15)。RP2∨S3 では例 6.14 より H1 の元は RP2 成分 x1 だけをもち、その 3 乗は H3(RP2;Z/2)=0 に属するので 0。よって環が同型でない。