Lemma数学ロードマップ

05 複素関数論 · 第 6 章

等角写像とリーマンの写像定理

目安 8〜11 時間定理など 11演習 8 問

この章の目標

  • 正則写像の等角性を理解し、メビウス変換の円円対応と複比の性質を証明できる
  • 単位円板と上半平面の自己同型群を決定し、初等関数を組み合わせて等角写像を作れる
  • モンテルの定理とリーマンの写像定理を証明できる
  • カラテオドリの定理とシュワルツ–クリストッフェルの公式の内容を説明できる

前提:第3章(シュワルツの補題、ワイエルシュトラスの定理)、第5章(開写像定理、フルヴィッツの定理)

6.1 等角性と正則性

正則関数は f′(a)≠0f'(a) \neq 0 となる点の近くで、無限小的には f′(a)f'(a) 倍(回転と拡大)として働くので、曲線のなす角を保つ。

定義 6.1(等角, conformal)ff を開集合 U⊂C=R2U \subset \mathbb{C} = \mathbb{R}^2 上の C1C^1 級写像、a∈Ua \in U とする。aa を通る任意の 2 つの C1C^1 曲線 γ1,γ2\gamma_1, \gamma_2(γj(0)=a\gamma_j(0) = a, γj′(0)≠0\gamma_j'(0) \neq 0)について、(f∘γj)′(0)≠0(f \circ \gamma_j)'(0) \neq 0 であり、(f∘γ1)′(0)(f \circ \gamma_1)'(0) から (f∘γ2)′(0)(f \circ \gamma_2)'(0) への角 arg⁡((f∘γ2)′(0)/(f∘γ1)′(0))\arg\bigl((f \circ \gamma_2)'(0)/(f \circ \gamma_1)'(0)\bigr) が γ1′(0)\gamma_1'(0) から γ2′(0)\gamma_2'(0) への角に(2π2\pi の整数倍を除いて)等しいとき、ff は aa で等角であるという。

定理 6.2 (1) ff が aa で正則かつ f′(a)≠0f'(a) \neq 0 ならば、ff は aa で等角である。(2) 逆に、C1C^1 写像 ff の aa での微分 Df(a)Df(a) が可逆で、ff が aa で等角ならば、ff は aa で複素微分可能である。

証明. (1) 命題 1.20 より (f∘γj)′(0)=f′(a)γj′(0)(f \circ \gamma_j)'(0) = f'(a)\gamma_j'(0) だから、2 つの比は γ2′(0)/γ1′(0)\gamma_2'(0)/\gamma_1'(0) に等しい。

(2) L=Df(a)L = Df(a) を C\mathbb{C} 上の実線形写像とみる。直線 γ(t)=a+tv\gamma(t) = a + tv について (f∘γ)′(0)=L(v)(f \circ \gamma)'(0) = L(v) だから、LL は 0 でないベクトルの間の角を保つ。α=L(1)\alpha = L(1) とすると、11 から eiθe^{i\theta} への角は θ\theta なので L(eiθ)=ρ(θ)αeiθL(e^{i\theta}) = \rho(\theta)\alpha e^{i\theta}(ρ(θ)>0\rho(\theta) > 0)と書ける。線形性より L(eiπ/4)=12(L(1)+L(i))=α2(1+iρ(π/2))L(e^{i\pi/4}) = \frac{1}{\sqrt{2}}(L(1) + L(i)) = \frac{\alpha}{\sqrt{2}}\bigl(1 + i\rho(\pi/2)\bigr) であり、この偏角が arg⁡α+π/4\arg\alpha + \pi/4 に等しいことから ρ(π/2)=1\rho(\pi/2) = 1、すなわち L(i)=iαL(i) = i\alpha。よって L(x+iy)=α(x+iy)L(x + iy) = \alpha(x + iy) は複素線形で、定理 1.15 より ff は aa で複素微分可能である。□\square

f′(a)=0f'(a) = 0 の点では等角性は崩れる。f−f(a)f - f(a) が aa に位数 mm の零点をもてば、f(z)−f(a)≈c(z−a)mf(z) - f(a) \approx c(z - a)^m より角は mm 倍される(z2z^2 は 00 で直角を平角にする)。zˉ\bar{z} は角の向きを逆にする。

定義 6.3(等角写像)領域 DD から D′D' への正則な全単射を双正則写像 (biholomorphic map) または等角写像 (conformal map) という。逆写像も正則である(系 5.22)。このような写像があるとき DD と D′D' は等角同値であるという。DD から DD 自身への双正則写像全体は合成について群をなし、自己同型群 Aut⁡(D)\operatorname{Aut}(D) という。

6.2 メビウス変換

一次分数変換(メビウス変換)T(z)=az+bcz+dT(z) = \frac{az + b}{cz + d}(ad−bc≠0ad - bc \neq 0)は C^\hat{\mathbb{C}} の全単射で、平行移動・回転と拡大・反転 1/z1/z の合成である(定義 1.38、命題 1.39)。以下、C^\hat{\mathbb{C}} の円とは、C\mathbb{C} の円、または直線に ∞\infty を加えたものをいう。

定理 6.4(円円対応)メビウス変換は C^\hat{\mathbb{C}} の円を円に写す。

証明. 円と直線は、A,C∈RA, C \in \mathbb{R}, B∈CB \in \mathbb{C}, ∣B∣2>AC\lvert B \rvert^2 > AC として

A∣z∣2+Bˉz+Bzˉ+C=0A\lvert z \rvert^2 + \bar{B}z + B\bar{z} + C = 0

の解集合としてちょうど表される。実際 A≠0A \neq 0 ならこれは ∣z+B/A∣2=(∣B∣2−AC)/A2\lvert z + B/A \rvert^2 = (\lvert B \rvert^2 - AC)/A^2 という円であり、A=0A = 0 なら直線である。逆に円 ∣z−c∣=r\lvert z - c \rvert = r は (A,B,C)=(1,−c,∣c∣2−r2)(A, B, C) = (1, -c, \lvert c \rvert^2 - r^2)、直線 Re⁡(βˉz)=t\operatorname{Re}(\bar{\beta}z) = t は (0,β/2,−t)(0, \beta/2, -t) で表される。命題 1.39 より、平行移動・回転と拡大(明らかに円を円に写す)と w=1/zw = 1/z について示せばよい。z=1/wz = 1/w を代入して ∣w∣2\lvert w \rvert^2 を掛けると C∣w∣2+Bw+Bˉwˉ+A=0C\lvert w \rvert^2 + Bw + \bar{B}\bar{w} + A = 0 となり、係数 (C,Bˉ,A)(C, \bar{B}, A) も同じ条件を満たすので円または直線である。∞\infty と 00 の対応(元の円が 00 を通る ⇔\Leftrightarrow C=0C = 0 ⇔\Leftrightarrow 像が直線)も整合している。□\square

定理 6.5(3 点の決定)C^\hat{\mathbb{C}} の相異なる 3 点 z2,z3,z4z_2, z_3, z_4 と相異なる 3 点 w2,w3,w4w_2, w_3, w_4 に対し、T(zj)=wjT(z_j) = w_j(j=2,3,4j = 2, 3, 4)となるメビウス変換 TT がただ 1 つ存在する。

証明. 存在:zjz_j がすべて有限なら

S(z)=(z−z3)(z2−z4)(z−z4)(z2−z3)S(z) = \frac{(z - z_3)(z_2 - z_4)}{(z - z_4)(z_2 - z_3)}

は z2,z3,z4z_2, z_3, z_4 を 1,0,∞1, 0, \infty に写すメビウス変換である(S(z)=kz−z3z−z4S(z) = k\frac{z - z_3}{z - z_4}、k≠0k \neq 0 で、行列式 k(z3−z4)≠0k(z_3 - z_4) \neq 0)。zjz_j の 1 つが ∞\infty なら、それを含む因子を除いた式を使う。同様の S′S' を wjw_j について作れば、T=S′−1∘ST = S'^{-1} \circ S が求めるものである。一意性:0,1,∞0, 1, \infty を固定するメビウス変換は、T(∞)=∞T(\infty) = \infty より c=0c = 0、T(0)=0T(0) = 0 より b=0b = 0、T(1)=1T(1) = 1 より a=da = d となり恒等写像である。T,T′T, T' がともに条件を満たせば、S∘T′−1∘T∘S−1S \circ T'^{-1} \circ T \circ S^{-1} は 1,0,∞1, 0, \infty を固定するので恒等写像で、T=T′T = T'。□\square

定義 6.6(複比, cross-ratio)相異なる z2,z3,z4∈C^z_2, z_3, z_4 \in \hat{\mathbb{C}} と z1∈C^z_1 \in \hat{\mathbb{C}} に対し、z2,z3,z4z_2, z_3, z_4 を 1,0,∞1, 0, \infty に写すメビウス変換 SS による z1z_1 の像を複比 (z1,z2,z3,z4)(z_1, z_2, z_3, z_4) という。有限の点については (z1,z2,z3,z4)=(z1−z3)(z2−z4)(z1−z4)(z2−z3)(z_1, z_2, z_3, z_4) = \frac{(z_1 - z_3)(z_2 - z_4)}{(z_1 - z_4)(z_2 - z_3)} である。

系 6.7 (1) 任意のメビウス変換 TT について (Tz1,Tz2,Tz3,Tz4)=(z1,z2,z3,z4)(Tz_1, Tz_2, Tz_3, Tz_4) = (z_1, z_2, z_3, z_4)。(2) 相異なる 4 点が同一の円の上にあるための必要十分条件は、複比が実数(または ∞\infty)であることである。

証明. (1) S∘T−1S \circ T^{-1} は Tz2,Tz3,Tz4Tz_2, Tz_3, Tz_4 を 1,0,∞1, 0, \infty に写すから、これらの点に対する複比の写像であり、Tz1Tz_1 での値は S(z1)S(z_1) である。(2) S−1(R^)S^{-1}(\hat{\mathbb{R}}) は z2,z3,z4z_2, z_3, z_4 を通る円であり(定理 6.4)、3 点を通る円はただ 1 つだから、z1z_1 がその上にあることは S(z1)∈R^S(z_1) \in \hat{\mathbb{R}} と同値である。□\square

メビウス変換 TT が円 Γ\Gamma を円 Γ′\Gamma' に写すとき、TT は C^\hat{\mathbb{C}} の同相写像なので、C^∖Γ\hat{\mathbb{C}} \setminus \Gamma の 2 つの連結成分を C^∖Γ′\hat{\mathbb{C}} \setminus \Gamma' の連結成分に写す。どちらに写るかは 1 点の行き先を見ればわかる。

例 6.8 ケーリー変換 C(z)=z−iz+iC(z) = \frac{z - i}{z + i} は、実数 xx について ∣x−i∣=∣x+i∣\lvert x - i \rvert = \lvert x + i \rvert だから R^\hat{\mathbb{R}} を単位円周に写し、C(i)=0C(i) = 0 だから上半平面 H\mathbb{H} を単位円板 D\mathbb{D} の上に全単射に写す(例 1.40)。逆写像は w(z+i)=z−iw(z + i) = z - i を解いて C−1(w)=i1+w1−wC^{-1}(w) = i\frac{1 + w}{1 - w} である。

6.3 単位円板と上半平面の自己同型群

補題 6.9 a∈Da \in \mathbb{D} に対し φa(z)=z−a1−aˉz\varphi_a(z) = \dfrac{z - a}{1 - \bar{a}z} は Aut⁡(D)\operatorname{Aut}(\mathbb{D}) の元で、φa(a)=0\varphi_a(a) = 0、φa−1=φ−a\varphi_a^{-1} = \varphi_{-a}、φa′(0)=1−∣a∣2\varphi_a'(0) = 1 - \lvert a \rvert^2、φa′(a)=11−∣a∣2\varphi_a'(a) = \dfrac{1}{1 - \lvert a \rvert^2} である。

証明. ∣z∣=1\lvert z \rvert = 1 なら ∣1−aˉz∣=∣zˉ∣∣1−aˉz∣=∣zˉ−aˉ∣=∣z−a∣\lvert 1 - \bar{a}z \rvert = \lvert \bar{z} \rvert \lvert 1 - \bar{a}z \rvert = \lvert \bar{z} - \bar{a} \rvert = \lvert z - a \rvert だから ∣φa(z)∣=1\lvert \varphi_a(z) \rvert = 1 である。φa\varphi_a は D‾\overline{\mathbb{D}} を含む円板 ∣z∣<1/∣a∣\lvert z \rvert < 1/\lvert a \rvert で正則だから、最大値の原理より D\mathbb{D} 上で ∣φa∣<1\lvert \varphi_a \rvert < 1(定数でない)。w=φa(z)w = \varphi_a(z) を zz について解くと z=w+a1+aˉw=φ−a(w)z = \frac{w + a}{1 + \bar{a}w} = \varphi_{-a}(w) で、φ−a\varphi_{-a} も D\mathbb{D} を D\mathbb{D} に写すから、φa\varphi_a は D\mathbb{D} の全単射である。最後に φa′(z)=1−∣a∣2(1−aˉz)2\varphi_a'(z) = \frac{1 - \lvert a \rvert^2}{(1 - \bar{a}z)^2}。□\square

定理 6.10(単位円板の自己同型群)Aut⁡(D)={eiθφa∣θ∈R,a∈D}\operatorname{Aut}(\mathbb{D}) = \lbrace e^{i\theta}\varphi_a \mid \theta \in \mathbb{R}, a \in \mathbb{D} \rbrace である。特に 00 を固定する自己同型は回転 z↦eiθzz \mapsto e^{i\theta}z に限る。

証明. 右辺の元が自己同型であることは補題 6.9 による。f∈Aut⁡(D)f \in \operatorname{Aut}(\mathbb{D}) とし a=f−1(0)a = f^{-1}(0)、g=f∘φa−1g = f \circ \varphi_a^{-1} とおくと、g∈Aut⁡(D)g \in \operatorname{Aut}(\mathbb{D})、g(0)=0g(0) = 0 である。シュワルツの補題(定理 3.28)を gg と g−1g^{-1} に適用すると ∣g(z)∣≤∣z∣\lvert g(z) \rvert \leq \lvert z \rvert かつ ∣z∣=∣g−1(g(z))∣≤∣g(z)∣\lvert z \rvert = \lvert g^{-1}(g(z)) \rvert \leq \lvert g(z) \rvert、よって ∣g(z)∣=∣z∣\lvert g(z) \rvert = \lvert z \rvert で、g(z)=eiθzg(z) = e^{i\theta}z である。したがって f=g∘φa=eiθφaf = g \circ \varphi_a = e^{i\theta}\varphi_a。□\square

Aut⁡(D)\operatorname{Aut}(\mathbb{D}) は D\mathbb{D} に推移的に作用し、00 の固定部分群は回転群である。これは双曲幾何の合同変換群である(リーマン面と保型形式 第6章)。

定理 6.11(上半平面の自己同型群)

Aut⁡(H)={z↦az+bcz+d | a,b,c,d∈R, ad−bc=1}\operatorname{Aut}(\mathbb{H}) = \left\lbrace z \mapsto \frac{az + b}{cz + d} \ \middle|\ a, b, c, d \in \mathbb{R}, \ ad - bc = 1 \right\rbrace

であり、Aut⁡(H)≅PSL⁡2(R)=SL⁡2(R)/{±I}\operatorname{Aut}(\mathbb{H}) \cong \operatorname{PSL}_2(\mathbb{R}) = \operatorname{SL}_2(\mathbb{R})/\lbrace \pm I \rbrace である。

証明. a,b,c,da, b, c, d が実数なら

Im⁡az+bcz+d=Im⁡((az+b)(czˉ+d))∣cz+d∣2=(ad−bc)Im⁡z∣cz+d∣2\operatorname{Im}\frac{az + b}{cz + d} = \frac{\operatorname{Im}\bigl((az + b)(c\bar{z} + d)\bigr)}{\lvert cz + d \rvert^2} = \frac{(ad - bc)\operatorname{Im} z}{\lvert cz + d \rvert^2}

だから、ad−bc=1ad - bc = 1 の変換は H\mathbb{H} を H\mathbb{H} に写す(z∈Hz \in \mathbb{H} なら cz+d≠0cz + d \neq 0)。逆変換(逆行列)も同じ形なので自己同型である。

逆に f∈Aut⁡(H)f \in \operatorname{Aut}(\mathbb{H}) とすると、C∘f∘C−1∈Aut⁡(D)C \circ f \circ C^{-1} \in \operatorname{Aut}(\mathbb{D}) は定理 6.10 よりメビウス変換だから、ff もメビウス変換である。ff は C^\hat{\mathbb{C}} の同相写像で H\mathbb{H} を H\mathbb{H} に写すから、その境界 R^\hat{\mathbb{R}} を R^\hat{\mathbb{R}} に写す。よって f(0),f(1),f(∞)f(0), f(1), f(\infty) は R^\hat{\mathbb{R}} の相異なる 3 点である。定理 6.5 の構成で実の点だけを使えば、0,1,∞0, 1, \infty をこれらに写す実係数のメビウス変換が得られ、一意性からそれは ff に等しい。Im⁡f(i)=(ad−bc)/(c2+d2)>0\operatorname{Im} f(i) = (ad - bc)/(c^2 + d^2) > 0 より ad−bc>0ad - bc > 0 で、各係数を ad−bc\sqrt{ad - bc} で割れば ad−bc=1ad - bc = 1 にできる。最後に、A,B∈SL⁡2(R)A, B \in \operatorname{SL}_2(\mathbb{R}) について TA=TBT_A = T_B なら TA−1BT_{A^{-1}B} は 0,1,∞0, 1, \infty を固定するので A−1BA^{-1}B はスカラー行列 λI\lambda I、λ2=1\lambda^2 = 1 である。□\square

SL⁡2(Z)\operatorname{SL}_2(\mathbb{Z}) の H\mathbb{H} への作用はモジュラー形式の理論の出発点である(リーマン面と保型形式 第3章)。

6.4 初等関数による等角写像

具体的な等角写像は、メビウス変換・べき関数・指数関数などを組み合わせて作る。

例 6.12(べき関数)0<θ0≤2π0 < \theta_0 \leq 2\pi、α>0\alpha > 0、αθ0≤2π\alpha\theta_0 \leq 2\pi とする。角領域 {0<arg⁡z<θ0}\lbrace 0 < \arg z < \theta_0 \rbrace 上で zα=∣z∣αeiαarg⁡zz^\alpha = \lvert z \rvert^\alpha e^{i\alpha\arg z} と定めると(対数の分枝による eαlog⁡ze^{\alpha\log z} で正則)、これは角領域 {0<arg⁡w<αθ0}\lbrace 0 < \arg w < \alpha\theta_0 \rbrace への双正則写像である。極座標で (r,θ)↦(rα,αθ)(r, \theta) \mapsto (r^\alpha, \alpha\theta) という全単射だからである。たとえば z2z^2 は第 1 象限を H\mathbb{H} に、z\sqrt{z}(0<arg⁡z<2π0 < \arg z < 2\pi の分枝)は C∖[0,∞)\mathbb{C} \setminus [0, \infty) を H\mathbb{H} に写す。

例 6.13(指数関数)ex+iy=exeiye^{x + iy} = e^x e^{iy} だから、eze^z は帯領域 {0<Im⁡z<π}\lbrace 0 < \operatorname{Im} z < \pi \rbrace を H\mathbb{H} に、半帯領域 {Re⁡z<0,0<Im⁡z<π}\lbrace \operatorname{Re} z < 0, 0 < \operatorname{Im} z < \pi \rbrace を上半円板 D∩H\mathbb{D} \cap \mathbb{H} に双正則に写す。逆写像は対数の分枝である。

例 6.14(上半円板から単位円板へ)D∩H\mathbb{D} \cap \mathbb{H} を D\mathbb{D} に写す。w=1+z1−zw = \frac{1 + z}{1 - z} は

Re⁡1+z1−z=1−∣z∣2∣1−z∣2,Im⁡1+z1−z=2Im⁡z∣1−z∣2\operatorname{Re}\frac{1 + z}{1 - z} = \frac{1 - \lvert z \rvert^2}{\lvert 1 - z \rvert^2}, \qquad \operatorname{Im}\frac{1 + z}{1 - z} = \frac{2\operatorname{Im} z}{\lvert 1 - z \rvert^2}

を満たすメビウス変換なので、D\mathbb{D} を右半平面に、D∩H\mathbb{D} \cap \mathbb{H} を第 1 象限に写す。続いて w2w^2 で H\mathbb{H} に、ケーリー変換で D\mathbb{D} に写せば、f(z)=C(((1+z)/(1−z))2)f(z) = C\bigl(((1 + z)/(1 - z))^2\bigr) が求める写像である。メビウス変換だけでは不可能である。メビウス変換は角を保つので、境界の ±1\pm 1 での直角を円周の滑らかな点に写せない。

例 6.15(ジューコフスキー変換)J(z)=12(z+1z)J(z) = \frac{1}{2}\left(z + \frac{1}{z}\right) は {∣z∣>1}\lbrace \lvert z \rvert > 1 \rbrace を C∖[−1,1]\mathbb{C} \setminus [-1, 1] に双正則に写す。実際 J(z)=wJ(z) = w は z2−2wz+1=0z^2 - 2wz + 1 = 0 と同値で、2 根の積は 1 である。∣z∣=1\lvert z \rvert = 1 なら J(z)=Re⁡z∈[−1,1]J(z) = \operatorname{Re} z \in [-1, 1] であり、逆に w∈[−1,1]w \in [-1, 1] なら 2 根 w±i1−w2w \pm i\sqrt{1 - w^2} は単位円周上にある。よって w∉[−1,1]w \notin [-1, 1] のとき 2 根はどちらも単位円周上になく、積が 1 なのでちょうど一方が ∣z∣>1\lvert z \rvert > 1 にある。円 ∣z∣=r>1\lvert z \rvert = r > 1 は、焦点 ±1\pm 1 の楕円に写る(問題 6.7)。

6.5 正規族とモンテルの定理

リーマンの写像定理では写像を極値問題の解として求めるので、正則関数族のコンパクト性が必要になる。

定義 6.16(正規族, normal family)開集合 UU 上の正則関数の族 F\mathcal{F} が正規族であるとは、F\mathcal{F} の任意の関数列が、UU 上で広義一様収束する部分列をもつことをいう(極限は F\mathcal{F} に属さなくてよい)。F\mathcal{F} が局所有界であるとは、任意のコンパクト集合 K⊂UK \subset U について sup⁡f∈Fsup⁡K∣f∣<∞\sup_{f \in \mathcal{F}} \sup_K \lvert f \rvert < \infty となることをいう。

定理 6.17(モンテルの定理, Montel's theorem)局所有界な正則関数の族は正規族である。

証明. (a) 同程度連続性. コンパクト集合 K⊂UK \subset U に対し、Kδ={z∣dist⁡(z,K)≤2δ}K_\delta = \lbrace z \mid \operatorname{dist}(z, K) \leq 2\delta \rbrace が UU に含まれるように δ>0\delta > 0 をとる(KK と C∖U\mathbb{C} \setminus U の距離は正)。KδK_\delta はコンパクトなので、F\mathcal{F} の関数は KδK_\delta 上で共通の MM で抑えられる。z∈Kz \in K, ∣w−z∣<δ\lvert w - z \rvert < \delta なら、コーシーの積分公式(D(z,2δ)‾⊂Kδ\overline{D(z, 2\delta)} \subset K_\delta)より

f(w)−f(z)=w−z2πi∫C(z,2δ)f(ζ)(ζ−w)(ζ−z) dζ,∣f(w)−f(z)∣≤∣w−z∣2π⋅4πδ⋅Mδ⋅2δ=Mδ∣w−z∣f(w) - f(z) = \frac{w - z}{2\pi i} \int_{C(z, 2\delta)} \frac{f(\zeta)}{(\zeta - w)(\zeta - z)}\,d\zeta, \qquad \lvert f(w) - f(z) \rvert \leq \frac{\lvert w - z \rvert}{2\pi} \cdot 4\pi\delta \cdot \frac{M}{\delta \cdot 2\delta} = \frac{M}{\delta}\lvert w - z \rvert

がすべての f∈Ff \in \mathcal{F} について成り立つ(∣ζ−w∣≥δ\lvert \zeta - w \rvert \geq \delta)。

(b) 対角線論法. 実部・虚部が有理数である UU の点を e1,e2,…e_1, e_2, \dots と並べる(UU で稠密)。fn∈Ff_n \in \mathcal{F} とする。(fn(e1))(f_n(e_1)) は有界なので収束部分列をもち、その中から e2e_2 で収束する部分列をとり、……と続けて対角線をとると、すべての eje_j で収束する部分列 (gk)(g_k) が得られる。

(c) 一様コーシー性. KK, δ\delta, MM を (a) のとおりとし、ε>0\varepsilon > 0 に対し η=min⁡(δ,εδ/(3M))\eta = \min(\delta, \varepsilon\delta/(3M)) とおく。円板 D(ej,η)D(e_j, \eta) の全体は KK を覆う(eje_j の稠密性)ので、有限個 D(ej1,η),…,D(ejp,η)D(e_{j_1}, \eta), \dots, D(e_{j_p}, \eta) で覆える。k,l≥Nk, l \geq N で ∣gk(ejs)−gl(ejs)∣<ε/3\lvert g_k(e_{j_s}) - g_l(e_{j_s}) \rvert < \varepsilon/3(s=1,…,ps = 1, \dots, p)となる NN をとる。z∈Kz \in K に対し ∣z−ejs∣<η\lvert z - e_{j_s} \rvert < \eta となる ss をとると、(a) より

∣gk(z)−gl(z)∣≤∣gk(z)−gk(ejs)∣+∣gk(ejs)−gl(ejs)∣+∣gl(ejs)−gl(z)∣<Mηδ+ε3+Mηδ≤ε\lvert g_k(z) - g_l(z) \rvert \leq \lvert g_k(z) - g_k(e_{j_s}) \rvert + \lvert g_k(e_{j_s}) - g_l(e_{j_s}) \rvert + \lvert g_l(e_{j_s}) - g_l(z) \rvert < \frac{M\eta}{\delta} + \frac{\varepsilon}{3} + \frac{M\eta}{\delta} \leq \varepsilon

である。よって (gk)(g_k) は各コンパクト集合上で一様コーシー列であり、広義一様収束する。□\square

これはアスコリ–アルツェラの定理(集合と位相 第5章)の正則関数版で、同程度連続性がコーシーの積分公式から自動的に従うことが要点である。極限は正則である(定理 3.25)。

例 6.18 D\mathbb{D} から D\mathbb{D} への正則関数全体は正規族である。{zn}\lbrace z^n \rbrace は D\mathbb{D} 上で 00 に広義一様収束する。{nz}\lbrace nz \rbrace は正規族でない(どの部分列も z=1/2z = 1/2 で発散する)。

6.6 リーマンの写像定理

定理 6.19(リーマンの写像定理, Riemann mapping theorem)D⊊CD \subsetneq \mathbb{C} を単連結な領域、z0∈Dz_0 \in D とする。このとき双正則写像 f ⁣:D→Df\colon D \to \mathbb{D} で f(z0)=0f(z_0) = 0, f′(z0)>0f'(z_0) > 0 となるものがただ 1 つ存在する。

証明. 一意性. f1,f2f_1, f_2 がともに条件を満たせば、g=f2∘f1−1∈Aut⁡(D)g = f_2 \circ f_1^{-1} \in \operatorname{Aut}(\mathbb{D})、g(0)=0g(0) = 0 だから定理 6.10 より g(z)=eiθzg(z) = e^{i\theta}z で、g′(0)=f2′(z0)/f1′(z0)>0g'(0) = f_2'(z_0)/f_1'(z_0) > 0 より g=idg = \mathrm{id}。

存在. F\mathcal{F} を、正則かつ単射な f ⁣:D→Df\colon D \to \mathbb{D} で f(z0)=0f(z_0) = 0 となるもの全体とする。

(a) F≠∅\mathcal{F} \neq \emptyset:b∉Db \notin D をとる。z−bz - b は単連結な DD で零点をもたないので、h2=z−bh^2 = z - b となる正則関数 hh がある(系 3.10)。hh は単射で、さらに h(z1)=−h(z2)h(z_1) = -h(z_2) となることもない(2 乗して z1=z2z_1 = z_2、すると h(z1)=0h(z_1) = 0 となり h2≠0h^2 \neq 0 に反する)。h(D)h(D) は開集合(系 5.21)なので円板 D(h(z0),ρ)D(h(z_0), \rho)(0<ρ<∣h(z0)∣0 < \rho < \lvert h(z_0) \rvert)を含む。もし h(z)∈D(−h(z0),ρ)h(z) \in D(-h(z_0), \rho) なら −h(z)∈D(h(z0),ρ)⊂h(D)-h(z) \in D(h(z_0), \rho) \subset h(D) となって上に反するから、DD 上で ∣h(z)+h(z0)∣≥ρ\lvert h(z) + h(z_0) \rvert \geq \rho である。f1=ρ2(h+h(z0))f_1 = \frac{\rho}{2(h + h(z_0))} は単射で ∣f1∣≤1/2\lvert f_1 \rvert \leq 1/2 であり、φf1(z0)∘f1∈F\varphi_{f_1(z_0)} \circ f_1 \in \mathcal{F} である。

(b) 極値関数:A=sup⁡f∈F∣f′(z0)∣A = \sup_{f \in \mathcal{F}} \lvert f'(z_0) \rvert とおく。D(z0,r)‾⊂D\overline{D(z_0, r)} \subset D とするとコーシーの評価式より ∣f′(z0)∣≤1/r\lvert f'(z_0) \rvert \leq 1/r だから A<∞A < \infty、単射なら f′≠0f' \neq 0(系 5.22)だから A>0A > 0 である。∣fn′(z0)∣→A\lvert f_n'(z_0) \rvert \to A となる fn∈Ff_n \in \mathcal{F} をとる。F\mathcal{F} は有界なので、モンテルの定理により部分列が ff に広義一様収束し、f′(z0)=lim⁡fn′(z0)f'(z_0) = \lim f_n'(z_0)(定理 3.25)より ∣f′(z0)∣=A>0\lvert f'(z_0) \rvert = A > 0 である。ff は定数でないので系 5.24 より単射であり、∣f∣≤1\lvert f \rvert \leq 1 と開写像定理から f(D)⊂Df(D) \subset \mathbb{D} である。よって f∈Ff \in \mathcal{F} で、∣f′(z0)∣=A\lvert f'(z_0) \rvert = A。

(c) ff は全射:w0∈D∖f(D)w_0 \in \mathbb{D} \setminus f(D) があるとする。φw0∘f\varphi_{w_0} \circ f は単連結な DD で零点をもたないから、g2=φw0∘fg^2 = \varphi_{w_0} \circ f となる正則関数 gg がある。gg は単射で ∣g∣<1\lvert g \rvert < 1 である。β=g(z0)\beta = g(z_0)、F=φβ∘gF = \varphi_\beta \circ g とおくと F∈FF \in \mathcal{F} である。s(w)=w2s(w) = w^2 とすると

f=φ−w0∘s∘g=Ψ∘F,Ψ=φ−w0∘s∘φ−βf = \varphi_{-w_0} \circ s \circ g = \Psi \circ F, \qquad \Psi = \varphi_{-w_0} \circ s \circ \varphi_{-\beta}

と書ける。Ψ\Psi は D\mathbb{D} から D\mathbb{D} への正則関数で、Ψ(0)=Ψ(F(z0))=f(z0)=0\Psi(0) = \Psi(F(z_0)) = f(z_0) = 0 であり、ss が単射でないので単射でない。よって Ψ\Psi は回転でなく、シュワルツの補題より ∣Ψ′(0)∣<1\lvert \Psi'(0) \rvert < 1 である。すると ∣f′(z0)∣=∣Ψ′(0)∣∣F′(z0)∣<∣F′(z0)∣\lvert f'(z_0) \rvert = \lvert \Psi'(0) \rvert \lvert F'(z_0) \rvert < \lvert F'(z_0) \rvert となり、AA の最大性に反する。

(d) ff に e−iarg⁡f′(z0)e^{-i\arg f'(z_0)} を掛ければ f′(z0)>0f'(z_0) > 0 となる。□\square

注意 6.20

  1. D=CD = \mathbb{C} は除かれる(双正則写像 C→D\mathbb{C} \to \mathbb{D} は有界な整関数で、リウヴィルの定理により定数)。単連結性も必要である(D\mathbb{D} と同相な領域は単連結)。
  2. 証明で単連結性を使ったのは「零点のない正則関数は正則な平方根をもつ」(系 3.10)という点だけである。したがって領域については、この性質と単連結性は同値である。
  3. 単連結な真部分領域はすべて互いに等角同値で、D\mathbb{D} と C\mathbb{C} は同相だから、単連結な領域はすべて D\mathbb{D} と同相である(位相的な結論が正則関数論から出た)。リーマン面への一般化は一意化定理である(リーマン面と保型形式 第6章)。

6.7 境界対応とシュワルツ–クリストッフェルの公式

リーマンの写像定理は境界での振る舞いについて何も述べない。次の定理は主張のみとし、証明は省略する。

定理 6.21(カラテオドリの定理, Carathéodory's theorem)DD を有界な単連結領域とし、その境界 ∂D\partial D はジョルダン曲線(円周と同相な集合)であるとする。このとき任意の双正則写像 f ⁣:D→Df\colon D \to \mathbb{D} は、同相写像 D‾→D‾\overline{D} \to \overline{\mathbb{D}} に拡張される。

Aut⁡(D)\operatorname{Aut}(\mathbb{D}) と合わせると、∂D\partial D 上の 3 点の行き先を(向きを保って)指定した写像がただ 1 つ存在する。

多角形の場合には写像を具体的に書ける。次の定理も主張のみとする(証明は参考文献の Stein–Shakarchi を参照)。

定理 6.22(シュワルツ–クリストッフェルの公式, Schwarz–Christoffel formula)PP を頂点 w1,…,wnw_1, \dots, w_n(反時計回り)、内角 α1π,…,αnπ\alpha_1\pi, \dots, \alpha_n\pi(0<αk<20 < \alpha_k < 2, ∑k(1−αk)=2\sum_k (1 - \alpha_k) = 2)の多角形とする。H\mathbb{H} から PP の内部への双正則写像は

F(z)=A∫0z∏k=1n(ζ−xk)αk−1 dζ+BF(z) = A \int_0^z \prod_{k=1}^{n} (\zeta - x_k)^{\alpha_k - 1}\,d\zeta + B

の形をもつ。ここで x1<⋯<xnx_1 < \cdots < x_n は実数(F(xk)=wkF(x_k) = w_k)、A≠0A \neq 0 と BB は定数、各べきは H\mathbb{H} 上の分枝である。頂点の 1 つを F(∞)F(\infty) にとることもでき、そのときは対応する因子を除く。

意味は次のとおりである。隣り合う xkx_k の間の実軸上では arg⁡F′(x)=arg⁡A+∑k(αk−1)arg⁡(x−xk)\arg F'(x) = \arg A + \sum_k (\alpha_k - 1)\arg(x - x_k) が一定なので、各区間は線分に写る。xx が xkx_k を左から右へ通過すると arg⁡(x−xk)\arg(x - x_k) は π\pi から 00 に変わるので、進行方向は (1−αk)π(1 - \alpha_k)\pi、すなわち wkw_k での外角だけ回転する。

例 6.23

  1. F(z)=∫0zdζ1−ζ2=arcsin⁡zF(z) = \int_0^z \frac{d\zeta}{\sqrt{1 - \zeta^2}} = \arcsin z(α=1/2\alpha = 1/2 の頂点 ±1\pm 1 と、∞\infty)は H\mathbb{H} を半帯領域 {∣Re⁡w∣<π/2,Im⁡w>0}\lbrace \lvert \operatorname{Re} w \rvert < \pi/2, \operatorname{Im} w > 0 \rbrace に写す。逆写像は sin⁡w\sin w である。
  2. 0<α,β0 < \alpha, \beta, α+β<1\alpha + \beta < 1 のとき、F(z)=∫0zζα−1(1−ζ)β−1 dζF(z) = \int_0^z \zeta^{\alpha - 1}(1 - \zeta)^{\beta - 1}\ d\zeta は H\mathbb{H} を、頂点 F(0)=0F(0) = 0, F(1)F(1), F(∞)F(\infty) での内角が απ,βπ,(1−α−β)π\alpha\pi, \beta\pi, (1 - \alpha - \beta)\pi の三角形に写す。辺の長さ F(1)=∫01tα−1(1−t)β−1dtF(1) = \int_0^1 t^{\alpha-1}(1 - t)^{\beta-1} dt は第7章のベータ関数 B(α,β)B(\alpha, \beta) である。
  3. 0<k<10 < k < 1 のとき F(z)=∫0zdζ(1−ζ2)(1−k2ζ2)F(z) = \int_0^z \frac{d\zeta}{\sqrt{(1 - \zeta^2)(1 - k^2\zeta^2)}} は H\mathbb{H} を長方形に写す。これは楕円積分であり、逆関数は楕円関数になる(リーマン面と保型形式 第2章)。

まとめ

  • f′(a)≠0f'(a) \neq 0 の正則関数は aa で等角(向きと角を保つ)であり、逆に等角な C1C^1 写像は複素微分可能である。
  • メビウス変換は円を円に写し、3 点の行き先で一意に決まる。複比はメビウス変換で不変で、4 点が同一円上にあることは複比が実数であることと同値である。
  • Aut⁡(D)={eiθ(z−a)/(1−aˉz)}\operatorname{Aut}(\mathbb{D}) = \lbrace e^{i\theta}(z - a)/(1 - \bar{a}z) \rbrace はシュワルツの補題から決まり、ケーリー変換を通じて Aut⁡(H)≅PSL⁡2(R)\operatorname{Aut}(\mathbb{H}) \cong \operatorname{PSL}_2(\mathbb{R}) となる。
  • べき関数・指数関数・ジューコフスキー変換・メビウス変換を組み合わせて、具体的な等角写像が作れる。
  • モンテルの定理:局所有界な正則関数族は正規族である(コーシーの積分公式による同程度連続性と対角線論法)。
  • リーマンの写像定理:C\mathbb{C} でない単連結領域は D\mathbb{D} と等角同値である。証明は ∣f′(z0)∣\lvert f'(z_0) \rvert を最大化する極値問題と、平方根による改良の議論による。
  • ジョルダン領域では写像は境界まで同相に延び(カラテオドリ)、多角形への写像はシュワルツ–クリストッフェル積分で与えられる。

演習問題

問題 6.1 ★ T(1)=0T(1) = 0, T(i)=1T(i) = 1, T(−1)=∞T(-1) = \infty となるメビウス変換 TT を求め、T(D)=HT(\mathbb{D}) = \mathbb{H} であることを示せ。

解答

定理 6.5 の式で z2=iz_2 = i, z3=1z_3 = 1, z4=−1z_4 = -1 とすると T(z)=(z−1)(i+1)(z+1)(i−1)=−iz−1z+1T(z) = \frac{(z - 1)(i + 1)}{(z + 1)(i - 1)} = -i\frac{z - 1}{z + 1}(1+i−1+i=−i\frac{1 + i}{-1 + i} = -i)。検算:T(i)=−i⋅i−1i+1=−i⋅i=1T(i) = -i \cdot \frac{i - 1}{i + 1} = -i \cdot i = 1。TT は単位円周上の 3 点を R^\hat{\mathbb{R}} に写すので、単位円周を R^\hat{\mathbb{R}} に写す(定理 6.4 と 3 点を通る円の一意性)。T(0)=i∈HT(0) = i \in \mathbb{H} だから T(D)=HT(\mathbb{D}) = \mathbb{H}。

問題 6.2 ★ C∖(−∞,0]\mathbb{C} \setminus (-\infty, 0] から D\mathbb{D} への双正則写像を 1 つ求めよ。

解答

主枝の平方根 z=eLog⁡z/2\sqrt{z} = e^{\operatorname{Log} z/2} は、例 6.12 と同様に C∖(−∞,0]\mathbb{C} \setminus (-\infty, 0](−π<Arg⁡z<π-\pi < \operatorname{Arg} z < \pi)を右半平面 {Re⁡w>0}\lbrace \operatorname{Re} w > 0 \rbrace に双正則に写す。w↦w−1w+1w \mapsto \frac{w - 1}{w + 1} は右半平面を D\mathbb{D} に写す(∣w−1∣<∣w+1∣⇔Re⁡w>0\lvert w - 1 \rvert < \lvert w + 1 \rvert \Leftrightarrow \operatorname{Re} w > 0、逆写像 1+u1−u\frac{1 + u}{1 - u})。よって f(z)=z−1z+1f(z) = \frac{\sqrt{z} - 1}{\sqrt{z} + 1}。

問題 6.3 ★ f∈Aut⁡(D)f \in \operatorname{Aut}(\mathbb{D}) で f(1/2)=0f(1/2) = 0, f′(1/2)>0f'(1/2) > 0 となるものを求め、f(0)f(0) を計算せよ。

解答

定理 6.10 より f=eiθφ1/2f = e^{i\theta}\varphi_{1/2} で、補題 6.9 より φ1/2′(1/2)=11−1/4=43>0\varphi_{1/2}'(1/2) = \frac{1}{1 - 1/4} = \frac{4}{3} > 0 だから eiθ=1e^{i\theta} = 1。f(z)=z−1/21−z/2=2z−12−zf(z) = \frac{z - 1/2}{1 - z/2} = \frac{2z - 1}{2 - z}、f(0)=−12f(0) = -\frac{1}{2}。

問題 6.4 ★★(シュワルツ–ピックの補題)f ⁣:D→Df\colon \mathbb{D} \to \mathbb{D} を正則とする。任意の z,w∈Dz, w \in \mathbb{D} について

∣f(z)−f(w)1−f(w)‾f(z)∣≤∣z−w1−wˉz∣,∣f′(w)∣≤1−∣f(w)∣21−∣w∣2\left\lvert \frac{f(z) - f(w)}{1 - \overline{f(w)}f(z)} \right\rvert \leq \left\lvert \frac{z - w}{1 - \bar{w}z} \right\rvert, \qquad \lvert f'(w) \rvert \leq \frac{1 - \lvert f(w) \rvert^2}{1 - \lvert w \rvert^2}

を示せ。

解答

g=φf(w)∘f∘φ−wg = \varphi_{f(w)} \circ f \circ \varphi_{-w} は D\mathbb{D} から D\mathbb{D} への正則関数で g(0)=φf(w)(f(w))=0g(0) = \varphi_{f(w)}(f(w)) = 0。シュワルツの補題より ∣g(ζ)∣≤∣ζ∣\lvert g(\zeta) \rvert \leq \lvert \zeta \rvert で、ζ=φw(z)\zeta = \varphi_w(z) とおけば第 1 式を得る。また ∣g′(0)∣≤1\lvert g'(0) \rvert \leq 1 で、補題 6.9 より g′(0)=φf(w)′(f(w))f′(w)φ−w′(0)=f′(w)(1−∣w∣2)1−∣f(w)∣2g'(0) = \varphi_{f(w)}'(f(w)) f'(w) \varphi_{-w}'(0) = \frac{f'(w)(1 - \lvert w \rvert^2)}{1 - \lvert f(w) \rvert^2} だから第 2 式を得る。

問題 6.5 ★★ Aut⁡(C)={z↦az+b∣a≠0}\operatorname{Aut}(\mathbb{C}) = \lbrace z \mapsto az + b \mid a \neq 0 \rbrace を示せ。

解答

ff を単射な整関数とする。∞\infty が真性特異点なら、カゾラティ–ワイエルシュトラスの定理より f({∣z∣>1})f(\lbrace \lvert z \rvert > 1 \rbrace) は稠密で、開集合 f(D)f(\mathbb{D})(開写像定理)と交わるが、これは単射性に反する。∞\infty が除去可能なら ff は定数(命題 4.25)で単射でない。よって ∞\infty は極で、ff は多項式である。次数 n≥2n \geq 2 なら f′f' は零点 z0z_0 をもち、系 5.22 に反する。よって n=1n = 1。

問題 6.6 ★★ F={f∣f は D で正則,Re⁡f>0,f(0)=1}\mathcal{F} = \lbrace f \mid f \text{ は } \mathbb{D} \text{ で正則}, \operatorname{Re} f > 0, f(0) = 1 \rbrace は正規族であることを示せ。

解答

g=f−1f+1g = \frac{f - 1}{f + 1} とおくと、Re⁡f>0\operatorname{Re} f > 0 より ∣f−1∣<∣f+1∣\lvert f - 1 \rvert < \lvert f + 1 \rvert なので g ⁣:D→Dg\colon \mathbb{D} \to \mathbb{D}、g(0)=0g(0) = 0 である。シュワルツの補題より ∣g(z)∣≤∣z∣\lvert g(z) \rvert \leq \lvert z \rvert で、f=1+g1−gf = \frac{1 + g}{1 - g} から ∣f(z)∣≤1+∣z∣1−∣z∣\lvert f(z) \rvert \leq \frac{1 + \lvert z \rvert}{1 - \lvert z \rvert}。これは ∣z∣≤r<1\lvert z \rvert \leq r < 1 で一様に有界だから F\mathcal{F} は局所有界であり、モンテルの定理より正規族である。

問題 6.7 ★ r>1r > 1 のとき、ジューコフスキー変換 JJ は円 ∣z∣=r\lvert z \rvert = r を楕円 u2a2+v2b2=1\frac{u^2}{a^2} + \frac{v^2}{b^2} = 1(a=12(r+r−1)a = \frac{1}{2}(r + r^{-1}), b=12(r−r−1)b = \frac{1}{2}(r - r^{-1}))に写し、その焦点は ±1\pm 1 であることを示せ。

解答

J(reiθ)=12(reiθ+r−1e−iθ)=acos⁡θ+ibsin⁡θJ(re^{i\theta}) = \frac{1}{2}(re^{i\theta} + r^{-1}e^{-i\theta}) = a\cos\theta + ib\sin\theta だから、像は与えられた楕円である。a2−b2=14((r+r−1)2−(r−r−1)2)=1a^2 - b^2 = \frac{1}{4}\bigl((r + r^{-1})^2 - (r - r^{-1})^2\bigr) = 1 より焦点は ±1\pm 1。

問題 6.8 ★★★ 穴あき円板 D∗(0,1)D^{\ast}(0, 1) と円環 {1<∣z∣<2}\lbrace 1 < \lvert z \rvert < 2 \rbrace は、ともに単連結でない(同相な)領域だが、等角同値でないことを示せ。

解答

双正則写像 f ⁣:D∗(0,1)→A={1<∣z∣<2}f\colon D^{\ast}(0, 1) \to A = \lbrace 1 < \lvert z \rvert < 2 \rbrace があるとする。ff は有界なので 00 は除去可能特異点で(定理 4.10)、拡張 FF は D\mathbb{D} で正則、F(D)⊂A‾F(\mathbb{D}) \subset \overline{A} である。FF は定数でないので開写像で、F(0)F(0) は A‾\overline{A} の内点、すなわち F(0)∈AF(0) \in A であり、F(0)=f(z1)F(0) = f(z_1) となる z1≠0z_1 \neq 0 がある。00 と z1z_1 の交わらない近傍 V0,V1V_0, V_1 をとると、F(V0)∩f(V1∖{0})F(V_0) \cap f(V_1 \setminus \lbrace 0 \rbrace) は F(0)F(0) を含む開集合なので、F(0)F(0) 以外の点 ww を含む。w=F(z)=f(z′)w = F(z) = f(z')(z∈V0∖{0}z \in V_0 \setminus \lbrace 0 \rbrace, z′∈V1z' \in V_1)で z≠z′z \neq z' となり、ff の単射性に反する。単連結でない領域にはリーマンの写像定理の類似がない。

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