Lemma数学ロードマップ

19 リーマン面と保型形式 · 第 5 章

リーマン–ロッホの定理

目安 11〜14 時間定理など 22演習 7 問

この章の目標

  • 因子・主因子・線形同値・標準因子を扱い、ℓ(D)=dim⁡L(D)\ell(D) = \dim L(D) の基本性質を証明できる
  • ミッタク–レフラー問題の障害 H1(D)H^1(D) を使って、有限性とセール双対性を認めた上でリーマン–ロッホの定理を証明できる
  • 種数 0 のリーマン面が P1\mathbb{P}^1 であること、種数 2 のリーマン面が超楕円的であることを証明し、種数 1 の場合の概略を説明できる
  • 標準写像とワイエルシュトラス点を計算し、アーベル–ヤコビの定理と射影代数曲線としての実現の意味を説明できる

前提:第1章、第4章。代数的な類似は 14-algebraic-geometry 第8章 と比較するとよい。

5.1 動機

コンパクトなリーマン面上で、「指定された点に指定された位数以下の極をもつ有理型関数」はどれだけあるか。C^\hat{\mathbb{C}} で ∞\infty に高々 nn 位の極をもつ関数は nn 次以下の多項式で、n+1n + 1 次元ある。複素トーラスで 00 に高々 nn 位の極をもつ関数は、1,℘,℘′,℘2,℘℘′,…1, \wp, \wp', \wp^2, \wp\wp', \dots から極の位数が nn 以下のものをとって nn 次元ある(n≥1n \geq 1。位数 1 の極だけをもつ関数はない)。この差「+1+1」と「+0+0」を説明するのが種数であり、一般の公式がリーマン–ロッホの定理である。この章を通じて XX はコンパクトなリーマン面とする。

5.2 因子と線形同値

定義 5.1(因子, divisor)XX の点を基底とする自由アーベル群の元 D=∑pnppD = \sum_p n_pp(有限個を除いて np=0n_p = 0)を因子といい、その全体を Div⁡(X)\operatorname{Div}(X) と書く。deg⁡D=∑pnp\deg D = \sum_p n_p を次数という。すべての np≥0n_p \geq 0 のとき D≥0D \geq 0(有効因子)と書き、D−D′≥0D - D' \geq 0 のとき D≥D′D \geq D' と書く。

有理型関数 f≠0f \neq 0 の因子 div⁡(f)=∑p(ord⁡pf)p\operatorname{div}(f) = \sum_p(\operatorname{ord}_pf)p を主因子、有理型 1 形式 ω≠0\omega \neq 0 の因子 div⁡(ω)\operatorname{div}(\omega)(定義 4.3)を標準因子という。

命題 5.2 (1) div⁡(fg)=div⁡(f)+div⁡(g)\operatorname{div}(fg) = \operatorname{div}(f) + \operatorname{div}(g)、div⁡(fω)=div⁡(f)+div⁡(ω)\operatorname{div}(f\omega) = \operatorname{div}(f) + \operatorname{div}(\omega)。 (2) deg⁡div⁡(f)=0\deg\operatorname{div}(f) = 0。 (3) 2 つの標準因子の差は主因子である。

証明. (1) 局所的な位数の加法性。(2) 系 1.24(または系 4.11)。(3) 有理型 1 形式 ω,ω′≠0\omega, \omega' \neq 0 について、局所的に ω=h dz\omega = h\ dz, ω′=h′dz\omega' = h'dz と書くと h′/hh'/h は座標変換で不変だから、XX 上の有理型関数 f=ω′/ωf = \omega'/\omega が定まり、div⁡(ω′)=div⁡(f)+div⁡(ω)\operatorname{div}(\omega') = \operatorname{div}(f) + \operatorname{div}(\omega) である。□\square

定義 5.3(線形同値)D−D′D - D' が主因子のとき DD と D′D' は線形同値であるといい、D∼D′D \sim D' と書く。Cl⁡(X)=Div⁡(X)/{主因子}\operatorname{Cl}(X) = \operatorname{Div}(X)/\lbrace \text{主因子} \rbrace を因子類群という。命題 5.2 より次数は準同型 deg⁡ ⁣:Cl⁡(X)→Z\deg\colon \operatorname{Cl}(X) \to \mathbb{Z} を誘導し、標準因子の類 KK は一意に定まる。

命題 5.4 定数でない有理型関数 ff が存在すれば、deg⁡div⁡(df)=2g−2\deg\operatorname{div}(df) = 2g - 2 である(gg は XX の種数)。

証明. f ⁣:X→C^f\colon X \to \hat{\mathbb{C}} を次数 nn の正則写像とみる。f(p)=c≠∞f(p) = c \neq \infty なら局所標準形 f=c+zef = c + z^e(e=ep(f)e = e_p(f))より df=eze−1dzdf = ez^{e-1}dz で ord⁡pdf=e−1\operatorname{ord}_p df = e - 1。f(p)=∞f(p) = \infty なら f=z−ef = z^{-e} より df=−ez−e−1dzdf = -ez^{-e-1}dz で ord⁡pdf=(e−1)−2e\operatorname{ord}_pdf = (e - 1) - 2e。よって deg⁡div⁡(df)=∑p(ep−1)−2∑p∈f−1(∞)ep=∑p(ep−1)−2n\deg\operatorname{div}(df) = \sum_p(e_p - 1) - 2\sum_{p \in f^{-1}(\infty)}e_p = \sum_p(e_p - 1) - 2n であり、リーマン–フルヴィッツの公式(定理 1.26)より 2g−22g - 2 に等しい。□\square

例 5.5 (1) C^\hat{\mathbb{C}}:K=div⁡(dz)=−2∞K = \operatorname{div}(dz) = -2\infty。(2) C/Λ\mathbb{C}/\Lambda:K=div⁡(dz)=0K = \operatorname{div}(dz) = 0。(3) 超楕円曲線 y2=f(x)y^2 = f(x):例 4.7 より、deg⁡f=2g+2\deg f = 2g + 2 なら K=div⁡(dx/y)=(g−1)(∞++∞−)K = \operatorname{div}(dx/y) = (g - 1)(\infty_+ + \infty_-)、deg⁡f=2g+1\deg f = 2g + 1 なら K=(2g−2)∞K = (2g - 2)\infty。いずれも次数 2g−22g - 2 である。

5.3 直線束と因子

因子は正則直線束と同じ情報をもつ。開被覆 {Uα}\lbrace U_\alpha \rbrace と、Uα∩UβU_\alpha \cap U_\beta 上の零点をもたない正則関数 gαβg_{\alpha\beta} で gαβgβγ=gαγg_{\alpha\beta}g_{\beta\gamma} = g_{\alpha\gamma} を満たすもの(変換関数)を与えると、Uα×CU_\alpha \times \mathbb{C} を (x,v)∼(x,gαβ(x)v)(x, v) \sim (x, g_{\alpha\beta}(x)v) で貼り合わせて正則直線束 L→XL \to X が得られる。その正則切断は、sα=gαβsβs_\alpha = g_{\alpha\beta}s_\beta を満たす正則関数の族 (sα)(s_\alpha) である。同型類のなす群を Pic⁡(X)\operatorname{Pic}(X) と書く(テンソル積が演算)。

例 5.6 (1) 因子 DD に対し、各 UαU_\alpha 上で div⁡(hα)=D∣Uα\operatorname{div}(h_\alpha) = D\vert_{U_\alpha} となる有理型関数 hαh_\alpha をとり(pp の近くで znpz^{n_p})、gαβ=hα/hβg_{\alpha\beta} = h_\alpha/h_\beta とおくと直線束 O(D)\mathcal{O}(D) を得る。div⁡(f)+D≥0\operatorname{div}(f) + D \geq 0 となる有理型関数 ff に対し sα=fhαs_\alpha = fh_\alpha は正則で sα=gαβsβs_\alpha = g_{\alpha\beta}s_\beta を満たすから、O(D)\mathcal{O}(D) の正則切断は次節の L(D)L(D) の元と一対一に対応する。(2) 正則余接束 KXK_X(変換関数は dzβ/dzαdz_\beta/dz_\alpha)の正則切断は正則 1 形式であり、KX≅O(K)K_X \cong \mathcal{O}(K) である。

D∼D′D \sim D' なら O(D)≅O(D′)\mathcal{O}(D) \cong \mathcal{O}(D') であり、D↦O(D)D \mapsto \mathcal{O}(D) は同型 Cl⁡(X)≅Pic⁡(X)\operatorname{Cl}(X) \cong \operatorname{Pic}(X) を誘導する(主張。全射性は任意の直線束が恒等的に 00 でない有理型切断をもつことによる)。以下では因子の言葉で話を進める。

5.4 L(D)L(D) と ℓ(D)\ell(D)

定義 5.7 因子 DD に対し

L(D)={f∈M(X)∣f=0 または div⁡(f)+D≥0},ℓ(D)=dim⁡CL(D)L(D) = \lbrace f \in \mathcal{M}(X) \mid f = 0 \ \text{または}\ \operatorname{div}(f) + D \geq 0 \rbrace, \qquad \ell(D) = \dim_{\mathbb{C}}L(D)

とおく。D=∑nppD = \sum n_pp なら、f∈L(D)f \in L(D) は「np>0n_p > 0 の点で高々 npn_p 位の極を許し、np<0n_p < 0 の点で少なくとも −np-n_p 位の零点をもつ」関数である。同様に Ω(D)={ω∣ω=0 または div⁡(ω)+D≥0}\Omega(D) = \lbrace \omega \mid \omega = 0 \ \text{または}\ \operatorname{div}(\omega) + D \geq 0 \rbrace とおく。Ω(0)=Ω(X)\Omega(0) = \Omega(X) である。

命題 5.8 (1) L(0)=CL(0) = \mathbb{C}。(2) deg⁡D<0\deg D < 0 なら L(D)=0L(D) = 0。(3) D∼D′D \sim D' なら L(D)≅L(D′)L(D) \cong L(D')。(4) 点 pp について ℓ(D)≤ℓ(D+p)≤ℓ(D)+1\ell(D) \leq \ell(D + p) \leq \ell(D) + 1。(5) deg⁡D≥0\deg D \geq 0 なら ℓ(D)≤deg⁡D+1\ell(D) \leq \deg D + 1。

証明. (1) 極のない有理型関数は定数(命題 1.16)。(2) f∈L(D)f \in L(D), f≠0f \neq 0 なら div⁡(f)+D≥0\operatorname{div}(f) + D \geq 0 の次数をとって deg⁡D≥0\deg D \geq 0。(3) D′=D+div⁡(h)D' = D + \operatorname{div}(h) なら f↦f/hf \mapsto f/h が同型を与える。(4) pp のまわりの局所座標 zz をとり、DD の pp での係数を nn とする。f∈L(D+p)f \in L(D + p) に ff のローラン展開の z−n−1z^{-n-1} の係数を対応させる線形写像 L(D+p)→CL(D + p) \to \mathbb{C} の核は L(D)L(D) である。(5) ℓ(D)=0\ell(D) = 0 なら明らか。そうでなければ 0≠f∈L(D)0 \neq f \in L(D) をとり D′=D+div⁡(f)≥0D' = D + \operatorname{div}(f) \geq 0 とすると、(3) より ℓ(D)=ℓ(D′)\ell(D) = \ell(D') で、D′=p1+⋯+pdD' = p_1 + \cdots + p_d(d=deg⁡Dd = \deg D)について (1), (4) から ℓ(D′)≤d+1\ell(D') \leq d + 1。□\square

補題 5.9 K=div⁡(ω0)K = \operatorname{div}(\omega_0) とすると、f↦fω0f \mapsto f\omega_0 は同型 L(K+D)≅Ω(D)L(K + D) \cong \Omega(D) を与える。特に dim⁡Ω(−D)=ℓ(K−D)\dim\Omega(-D) = \ell(K - D)、dim⁡Ω(X)=ℓ(K)\dim\Omega(X) = \ell(K) である。

証明. 任意の有理型 1 形式は fω0f\omega_0 と一意に書け、div⁡(fω0)+D=div⁡(f)+K+D\operatorname{div}(f\omega_0) + D = \operatorname{div}(f) + K + D だから。□\square

5.5 リーマン–ロッホの定理

ℓ(D)\ell(D) を求めるには、「与えられた主要部をもつ有理型関数が存在するか」というミッタク–レフラー問題の解ける度合いを測ればよい。

定義 5.10(主要部の空間と H1(D)H^1(D))点 pp での有理型関数の芽全体を Mp\mathcal{M}_p、そのうち ord⁡p≥−np\operatorname{ord}_p \geq -n_p となるものを Op(D)\mathcal{O}_p(D) とし、Tp(D)=Mp/Op(D)T_p(D) = \mathcal{M}_p/\mathcal{O}_p(D)(DD に関する pp での主要部の空間)、T(D)=⨁p∈XTp(D)T(D) = \bigoplus_{p \in X}T_p(D) とおく。f∈M(X)f \in \mathcal{M}(X) の各点での芽の類を並べる写像

αD ⁣:M(X)→T(D)\alpha_D\colon \mathcal{M}(X) \to T(D)

(ff の極は有限個で、有限個を除く pp で np=0n_p = 0 だから直和に入る)の核は L(D)L(D) である。余核を H1(D)=T(D)/αD(M(X))H^1(D) = T(D)/\alpha_D(\mathcal{M}(X)) とおき、h1(D)=dim⁡H1(D)h^1(D) = \dim H^1(D) とする。

H1(D)=0H^1(D) = 0 は「DD を法として任意に指定した主要部をもつ大域的な有理型関数が必ず存在する」ことを意味する。H1(D)H^1(D) は層のコホモロジー H1(X,O(D))H^1(X, \mathcal{O}(D))(チェック・コホモロジーまたはドルボー・コホモロジー)と自然に同型であることが知られている(主張)。

定理 5.11(有限性。主張)h1(0)=dim⁡H1(0)<∞h^1(0) = \dim H^1(0) < \infty である。

これはドルボーの補題と L2L^2 評価(またはワイルの補題、4.9 節)を用いて証明される解析的な定理である(Forster 第 2 章)。ga=h1(0)g_a = h^1(0) とおく。

補題 5.12 因子 DD と点 pp について、次の完全系列がある:

0→L(D)→L(D+p)→C→ δ H1(D)→H1(D+p)→00 \to L(D) \to L(D + p) \to \mathbb{C} \xrightarrow{\ \delta\ } H^1(D) \to H^1(D + p) \to 0

証明. pp のまわりの局所座標を zz、DD の pp での係数を nn とする。L(D+p)→CL(D + p) \to \mathbb{C} は命題 5.8 (4) の写像(z−n−1z^{-n-1} の係数)、δ(c)\delta(c) は「pp で cz−n−1cz^{-n-1}、他で 00」という主要部の類、H1(D)→H1(D+p)H^1(D) \to H^1(D + p) は自然な全射 π ⁣:T(D)→T(D+p)\pi\colon T(D) \to T(D + p) から誘導される写像とする。π\pi の核は pp 成分の Cz−n−1\mathbb{C}z^{-n-1} である。

C\mathbb{C} での完全性:cc が f∈L(D+p)f \in L(D + p) の係数なら、αD(f)\alpha_D(f) は「pp で cz−n−1cz^{-n-1}」に等しいから δ(c)=0\delta(c) = 0。逆に δ(c)=0\delta(c) = 0 なら、αD(f)\alpha_D(f) が「pp で cz−n−1cz^{-n-1}、他で 00」の元に等しくなる ff があり、f∈L(D+p)f \in L(D + p) でその係数は cc である。H1(D)H^1(D) での完全性:π∘δ=0\pi \circ \delta = 0 は明らか。[t]∈H1(D)[t] \in H^1(D) の像が 00 なら π(t)=αD+p(f)\pi(t) = \alpha_{D+p}(f) となる ff があり、t−αD(f)∈ker⁡π=Cz−n−1t - \alpha_D(f) \in \ker\pi = \mathbb{C}z^{-n-1} だから [t]∈im⁡δ[t] \in \operatorname{im}\delta。H1(D+p)H^1(D + p) への全射性は π\pi の全射性から従う。残りは命題 5.8 (4) である。□\square

定理 5.13(リーマン–ロッホの定理:第 1 形)すべての因子 DD について H1(D)H^1(D) は有限次元で

ℓ(D)−h1(D)=deg⁡D+1−ga\ell(D) - h^1(D) = \deg D + 1 - g_a

証明. 補題 5.12 より h1(D+p)≤h1(D)≤h1(D+p)+1h^1(D + p) \leq h^1(D) \leq h^1(D + p) + 1 だから、定理 5.11 から出発して点を 1 つずつ加えたり除いたりすれば、すべての DD で h1(D)<∞h^1(D) < \infty である。χ(D)=ℓ(D)−h1(D)\chi(D) = \ell(D) - h^1(D) とおくと、完全系列の次元の交代和は 00 だから χ(D+p)=χ(D)+1\chi(D + p) = \chi(D) + 1 である。χ(0)=1−ga\chi(0) = 1 - g_a で、任意の DD は 00 から点の加減で得られるから χ(D)=deg⁡D+1−ga\chi(D) = \deg D + 1 - g_a である。□\square

H1(D)H^1(D) を具体的に表すのが双対定理である。t=(tp)∈T(D)t = (t_p) \in T(D) と ω∈Ω(−D)\omega \in \Omega(-D) に対し

⟨t,ω⟩=∑p∈XRes⁡p(tpω)\langle t, \omega \rangle = \sum_{p \in X}\operatorname{Res}_p(t_p\omega)

とおく(tpt_p は代表元の芽)。

定理 5.14(セール双対性, Serre duality)(1) ⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangle は双線形写像 H1(D)×Ω(−D)→CH^1(D) \times \Omega(-D) \to \mathbb{C} を well-defined に定め、誘導される Ω(−D)→H1(D)∗\Omega(-D) \to H^1(D)^{\ast} は単射である。(2)(主張)これは同型である。したがって h1(D)=dim⁡Ω(−D)=ℓ(K−D)h^1(D) = \dim\Omega(-D) = \ell(K - D)。

証明((1) の部分). tp∈Op(D)t_p \in \mathcal{O}_p(D) なら ord⁡p(tpω)≥−np+np=0\operatorname{ord}_p(t_p\omega) \geq -n_p + n_p = 0 で留数は 00 だから、代表元のとり方によらない。t=αD(f)t = \alpha_D(f) なら ⟨t,ω⟩=∑pRes⁡p(fω)=0\langle t, \omega \rangle = \sum_p\operatorname{Res}_p(f\omega) = 0(留数定理、定理 4.10)だから H1(D)H^1(D) 上で定まる。単射性:ω≠0\omega \neq 0 とし、点 pp で m=ord⁡pωm = \operatorname{ord}_p\omega、ω=(czm+⋯ )dz\omega = (cz^m + \cdots)dz(c≠0c \neq 0)とする。tt を「pp で z−m−1z^{-m-1}、他で 00」とすると ⟨t,ω⟩=c≠0\langle t, \omega \rangle = c \neq 0 である。□\square

(2) の証明は Forster 第 2 章(§17)を参照。代数的な証明は 14-algebraic-geometry 第7章 のセール双対性による。

定理 5.15(リーマン–ロッホの定理, Riemann–Roch theorem)g=dim⁡Ω(X)g = \dim\Omega(X) とすると、任意の因子 DD について

ℓ(D)−ℓ(K−D)=deg⁡D+1−g\ell(D) - \ell(K - D) = \deg D + 1 - g

証明. 定理 5.14 より h1(D)=ℓ(K−D)h^1(D) = \ell(K - D) であり、特に ga=h1(0)=dim⁡Ω(0)=gg_a = h^1(0) = \dim\Omega(0) = g である。定理 5.13 に代入すればよい。ただし KK を定義するには 0 でない有理型 1 形式が必要である:定理 5.13 で D=(ga+1)pD = (g_a + 1)p とすると ℓ(D)≥2\ell(D) \geq 2 だから定数でない ff があり、df≠0df \neq 0 がとれる。□\square

系 5.16 (1) 任意の点 pp に対し、pp にだけ高々 g+1g + 1 位の極をもつ定数でない有理型関数が存在する。 (2) ℓ(K)=g\ell(K) = g, deg⁡K=2g−2\deg K = 2g - 2。 (3) g=dim⁡Ω(X)g = \dim\Omega(X) は XX の位相的な種数に等しい。特に定理 4.17 が成り立つ。 (4) deg⁡D>2g−2\deg D > 2g - 2 なら ℓ(D)=deg⁡D+1−g\ell(D) = \deg D + 1 - g。

証明. (1) D=(g+1)pD = (g + 1)p で ℓ(D)≥deg⁡D+1−g=2\ell(D) \geq \deg D + 1 - g = 2。(2) 補題 5.9 より ℓ(K)=dim⁡Ω(X)=g\ell(K) = \dim\Omega(X) = g。定理 5.15 で D=KD = K とすると g−1=deg⁡K+1−gg - 1 = \deg K + 1 - g。(3) (1) の ff について div⁡(df)\operatorname{div}(df) は標準因子で、命題 5.4 より次数は 2gtop−22g_{\mathrm{top}} - 2、(2) より 2g−22g - 2。(4) deg⁡(K−D)<0\deg(K - D) < 0 なので ℓ(K−D)=0\ell(K - D) = 0。□\square

例 5.17 (1) C^\hat{\mathbb{C}}(g=0g = 0, K=−2∞K = -2\infty):ℓ(n∞)−ℓ(−(n+2)∞)=n+1\ell(n\infty) - \ell(-(n + 2)\infty) = n + 1 で、ℓ(n∞)=n+1\ell(n\infty) = n + 1(n≥0n \geq 0)。(2) C/Λ\mathbb{C}/\Lambda(g=1g = 1, K=0K = 0):n≥1n \geq 1 で ℓ(n[0])−ℓ(−n[0])=n\ell(n[0]) - \ell(-n[0]) = n、すなわち ℓ(n[0])=n\ell(n[0]) = n。5.1 節の観察と一致する。

5.6 応用

定理 5.18 種数 0 のコンパクトなリーマン面は C^\hat{\mathbb{C}} と同型である。

証明. 点 pp について、系 5.16 (4)(deg⁡p=1>−2\deg p = 1 > -2)より ℓ(p)=2\ell(p) = 2 である。L(p)L(p) の定数でない元 ff は pp にだけ 1 位の極をもつから次数 1 であり、系 1.24 より f ⁣:X→C^f\colon X \to \hat{\mathbb{C}} は同型である。□\square

定理 5.19 種数 1 のコンパクトなリーマン面は複素トーラス C/Λ\mathbb{C}/\Lambda と同型である。

証明の概略. Ω(X)=Cω\Omega(X) = \mathbb{C}\omega で、div⁡(ω)≥0\operatorname{div}(\omega) \geq 0 かつ次数 00 だから ω\omega は零点をもたない。標準的ホモロジー基底 a,ba, b について A=∫aωA = \int_a\omega, B=∫bωB = \int_b\omega とすると、定理 4.21 より Im⁡(AˉB)>0\operatorname{Im}(\bar{A}B) > 0 だから A,BA, B は R\mathbb{R} 上一次独立で、Λ=ZA+ZB\Lambda = \mathbb{Z}A + \mathbb{Z}B は格子であり、閉曲線上の ω\omega の積分全体に等しい。u(p)=∫p0pω mod Λu(p) = \int_{p_0}^p\omega \bmod \Lambda で u ⁣:X→C/Λu\colon X \to \mathbb{C}/\Lambda を定めると、du=ωdu = \omega は零点をもたないから uu は局所双正則であり、XX がコンパクトなので uu は全射な有限被覆写像である(分岐のない正則写像なので定理 1.22 の証明から従う)。被覆 uu が基本群に誘導する写像 π1(X)→π1(C/Λ)≅Λ\pi_1(X) \to \pi_1(\mathbb{C}/\Lambda) \cong \Lambda は閉曲線 cc を ∫cω\int_c\omega に写すので全射であり、被覆の次数(=部分群の指数)は 1 である。よって uu は同型である。□\square

これと第2章・第3章を合わせると、「種数 1 のコンパクトなリーマン面」「複素トーラス」「非特異平面 3 次曲線」はすべて同じものであり、同型類は j∈Cj \in \mathbb{C} で分類される。

定義 5.20(超楕円的)種数 g≥2g \geq 2 のコンパクトなリーマン面が次数 2 の有理型関数をもつとき、超楕円的 (hyperelliptic) であるという。

リーマン–フルヴィッツの公式より、次数 2 の写像 X→C^X \to \hat{\mathbb{C}} はちょうど 2g+22g + 2 個の分岐点をもつ。このとき XX は例 1.10 の y2=f(x)y^2 = f(x) と同型であることが示せる(主張)。

定理 5.21 種数 2 のコンパクトなリーマン面は超楕円的である。

証明. ω1,ω2\omega_1, \omega_2 を Ω(X)\Omega(X) の基底とし、f=ω2/ω1f = \omega_2/\omega_1 とおく。ff は定数でなく、div⁡(f)+div⁡(ω1)=div⁡(ω2)≥0\operatorname{div}(f) + \operatorname{div}(\omega_1) = \operatorname{div}(\omega_2) \geq 0 だから f∈L(div⁡(ω1))f \in L(\operatorname{div}(\omega_1)) で、ff の極は(重複度込みで)有効因子 div⁡(ω1)\operatorname{div}(\omega_1)(次数 2g−2=22g - 2 = 2)に含まれる。よって deg⁡f≤2\deg f \leq 2 である。deg⁡f=1\deg f = 1 なら X≅C^X \cong \hat{\mathbb{C}} となり g=2g = 2 に反するから、deg⁡f=2\deg f = 2 である。□\square

標準写像. g≥2g \geq 2 とし、ω1,…,ωg\omega_1, \dots, \omega_g を Ω(X)\Omega(X) の基底とする。局所座標で ωj=fjdz\omega_j = f_jdz と書き

φK ⁣:X→Pg−1,φK(p)=[f1(p):⋯:fg(p)]\varphi_K\colon X \to \mathbb{P}^{g-1}, \qquad \varphi_K(p) = [f_1(p) : \cdots : f_g(p)]

とおく(座標を替えると全成分が同じ数倍されるので well-defined)。これが至るところ定義されるには、すべての ωj\omega_j が同時に 00 になる点がないことが必要である。

命題 5.22 g≥1g \geq 1 なら、すべての点 pp で ℓ(K−p)=g−1\ell(K - p) = g - 1 である。すなわち、pp で 00 にならない正則 1 形式が存在し、φK\varphi_K は正則写像として定まる。

証明. 定理 5.15 で D=pD = p とすると ℓ(p)−ℓ(K−p)=2−g\ell(p) - \ell(K - p) = 2 - g。ℓ(p)=2\ell(p) = 2 なら次数 1 の関数があって g=0g = 0 となるから、ℓ(p)=1\ell(p) = 1 で ℓ(K−p)=g−1\ell(K - p) = g - 1。□\square

補題 5.23(埋め込みの判定)因子 DD がすべての pp で ℓ(D−p)=ℓ(D)−1\ell(D - p) = \ell(D) - 1 を満たすとし、L(D)L(D) の基底で写像 φD ⁣:X→Pℓ(D)−1\varphi_D\colon X \to \mathbb{P}^{\ell(D) - 1} を φK\varphi_K と同様に定める。φD\varphi_D が p≠qp \neq q を分離するための必要十分条件は ℓ(D−p−q)=ℓ(D)−2\ell(D - p - q) = \ell(D) - 2、pp ではめ込みであるための必要十分条件は ℓ(D−2p)=ℓ(D)−2\ell(D - 2p) = \ell(D) - 2 である。

証明の概略. 超平面 ∑cjXj=0\sum c_jX_j = 0 の引き戻しは div⁡(∑cjfj)+D\operatorname{div}(\sum c_jf_j) + D である。φD(p)=φD(q)\varphi_D(p) = \varphi_D(q) は「pp を通る超平面がすべて qq を通る」こと、すなわち L(D−p)⊂L(D−q)L(D - p) \subset L(D - q)、したがって L(D−p)=L(D−p−q)L(D - p) = L(D - p - q) と同値である。はめ込みについては q→pq \to p の極限として、pp で 00 になる元がすべて 2 位以上で 00 になるかどうか、すなわち L(D−p)=L(D−2p)L(D - p) = L(D - 2p) かどうかを見ればよい。□\square

定理 5.24 g≥2g \geq 2 とする。φK\varphi_K が埋め込みであるための必要十分条件は、XX が超楕円的でないことである。

証明. 補題 5.23 と定理 5.15 より、p,qp, q(p=qp = q も許す)について ℓ(K−p−q)=ℓ(p+q)−3+g\ell(K - p - q) = \ell(p + q) - 3 + g だから、条件 ℓ(K−p−q)=g−2\ell(K - p - q) = g - 2 は ℓ(p+q)=1\ell(p + q) = 1 と同値である。XX が超楕円的なら次数 2 の関数 ff の極の因子 p+qp + q で ℓ(p+q)=2\ell(p + q) = 2。逆に ℓ(p+q)≥2\ell(p + q) \geq 2 なら L(p+q)L(p + q) の定数でない元は次数 2 以下で、g≥1g \geq 1 より次数 1 ではないから XX は超楕円的である。□\square

例 5.25 (1) 問題 1.4 の y3=x4+1y^3 = x^4 + 1(g=3g = 3)では、注意 4.8 の基底 dx/y2,x dx/y2,y dx/y2dx/y^2, x\ dx/y^2, y\ dx/y^2 による標準写像は [1:x:y][1 : x : y]、すなわちもとの平面 4 次曲線への埋め込みそのものである。よってこの曲線は超楕円的でない。一般に超楕円的でない種数 3 の曲線は、標準写像で平面 4 次曲線(次数 2g−2=42g - 2 = 4)として実現される。(2) 超楕円曲線では ωj=xj−1dx/y\omega_j = x^{j-1}dx/y により φK=[1:x:⋯:xg−1]\varphi_K = [1 : x : \cdots : x^{g-1}] で、φK\varphi_K は xx を経由する 2 対 1 の写像である。

ワイエルシュトラス点. 点 pp と n≥1n \geq 1 について、ℓ(np)=ℓ((n−1)p)\ell(np) = \ell((n - 1)p) のとき nn を pp での空隙 (gap) という。nn が空隙でないことは、pp にだけちょうど nn 位の極をもつ有理型関数が存在することと同値である。

命題 5.26(ワイエルシュトラスの空隙定理)g≥1g \geq 1 なら、各点 pp での空隙はちょうど gg 個あり、すべて {1,2,…,2g−1}\lbrace 1, 2, \dots, 2g - 1 \rbrace に含まれる。

証明. ℓ(np)−ℓ((n−1)p)∈{0,1}\ell(np) - \ell((n - 1)p) \in \lbrace 0, 1 \rbrace である。n≥2g−1n \geq 2g - 1 では系 5.16 (4) より ℓ(np)=n+1−g\ell(np) = n + 1 - g だから、n≥2gn \geq 2g は空隙でない。ℓ(0)=1\ell(0) = 1 から ℓ((2g−1)p)=g\ell((2g - 1)p) = g まで、2g−12g - 1 段階で g−1g - 1 だけ増えるから、{1,…,2g−1}\lbrace 1, \dots, 2g - 1 \rbrace の空隙は (2g−1)−(g−1)=g(2g - 1) - (g - 1) = g 個である。□\square

定義 5.27(ワイエルシュトラス点)空隙を n1<⋯<ngn_1 < \cdots < n_g とするとき、w(p)=∑i=1g(ni−i)w(p) = \sum_{i=1}^g(n_i - i) を pp の重みといい、w(p)>0w(p) > 0(空隙が {1,…,g}\lbrace 1, \dots, g \rbrace でない)となる点をワイエルシュトラス点という。定理 5.15 より ℓ(gp)−ℓ(K−gp)=1\ell(gp) - \ell(K - gp) = 1 だから、これは ℓ(gp)≥2\ell(gp) \geq 2、すなわち pp で gg 位以上の零点をもつ正則 1 形式 ≠0\neq 0 が存在することと同値である。

定理 5.28(主張)g≥1g \geq 1 なら ∑p∈Xw(p)=g3−g\sum_{p \in X}w(p) = g^3 - g。特に g≥2g \geq 2 ならワイエルシュトラス点は存在し、有限個である。

例 5.29 超楕円曲線 y2=f(x)y^2 = f(x)(g≥2g \geq 2)の xx の分岐点 pp を考える。p=(a,0)p = (a, 0) なら 1/(x−a)1/(x - a) は pp にだけ 2 位の極をもつから(d=2g+1d = 2g + 1 の無限遠点なら xx 自身)、2,4,…,2g−22, 4, \dots, 2g - 2 は空隙でなく、空隙は {1,3,…,2g−1}\lbrace 1, 3, \dots, 2g - 1 \rbrace である。重みは ∑i=1g(2i−1−i)=g(g−1)/2\sum_{i=1}^g(2i - 1 - i) = g(g - 1)/2 で、2g+22g + 2 個の分岐点の重みの和は (2g+2)⋅g(g−1)/2=g3−g(2g + 2) \cdot g(g - 1)/2 = g^3 - g となり、定理 5.28 の総和を使い切る。よって超楕円曲線のワイエルシュトラス点はちょうど 2g+22g + 2 個の分岐点である。これは直接も確かめられる:分岐点でない点 (b,c)(b, c)(c≠0c \neq 0)では x−bx - b が局所座標で、正則 1 形式 h(x)dx/yh(x)dx/y(deg⁡h≤g−1\deg h \leq g - 1)の零点の位数は hh の bb での位数 ≤g−1\leq g - 1 である(d=2g+2d = 2g + 2 の 2 つの無限遠点でも、例 4.7 より位数は g−j≤g−1g - j \leq g - 1)。

例 5.30 種数 1 では空隙は常に {1}\lbrace 1 \rbrace でワイエルシュトラス点はない。これはトーラスが平行移動で等質であることと整合する。

5.7 アーベル–ヤコビの定理

第4章のアーベル–ヤコビ写像 uu を因子に加法的に延ばす:u(∑nipi)=∑niu(pi)u(\sum n_ip_i) = \sum n_iu(p_i)。次数 00 の因子については基点 p0p_0 のとり方によらない。

定理 5.31(アーベルの定理, Abel's theorem。主張)次数 00 の因子 DD が主因子であるための必要十分条件は、u(D)=0u(D) = 0(Jac⁡(X)\operatorname{Jac}(X) において)である。

定理 5.32(ヤコビの逆問題, Jacobi inversion。主張)写像 Xg→Jac⁡(X)X^g \to \operatorname{Jac}(X), (p1,…,pg)↦∑iu(pi)(p_1, \dots, p_g) \mapsto \sum_iu(p_i) は全射である。

2 つを合わせると、次数 00 の因子類群 Cl⁡0(X)\operatorname{Cl}^0(X) は Jac⁡(X)\operatorname{Jac}(X) と同型であり、Jac⁡(X)\operatorname{Jac}(X) は XX の因子類の「連続的なパラメータ空間」である。g=1g = 1 では u ⁣:X→Jac⁡(X)=C/Λu\colon X \to \operatorname{Jac}(X) = \mathbb{C}/\Lambda は同型(定理 5.19)で、アーベルの定理は第2章の定理 2.3 の 4 とその逆(問題 2.7)にほかならない。楕円曲線 EE では P↦[P−O]P \mapsto [P - O] が E≅Cl⁡0(E)E \cong \operatorname{Cl}^0(E) を与え、EE の群法則は因子類の加法と一致する。

5.8 コンパクトリーマン面は射影代数曲線である

定理 5.33 deg⁡D≥2g+1\deg D \geq 2g + 1 なら φD ⁣:X→PN\varphi_D\colon X \to \mathbb{P}^{N}(N=deg⁡D−gN = \deg D - g)は埋め込みである。

証明. 任意の p,qp, q について deg⁡(D−p−q)≥2g−1>2g−2\deg(D - p - q) \geq 2g - 1 > 2g - 2 だから、系 5.16 (4) より ℓ(D)=deg⁡D+1−g\ell(D) = \deg D + 1 - g, ℓ(D−p)=ℓ(D)−1\ell(D - p) = \ell(D) - 1, ℓ(D−p−q)=ℓ(D)−2\ell(D - p - q) = \ell(D) - 2。補題 5.23 より埋め込みである。□\square

像 φD(X)\varphi_D(X) は PN\mathbb{P}^N の閉じた複素部分多様体であり、周の定理(Chow's theorem)により代数的集合、すなわち非特異射影代数曲線である。こうして次を得る。

定理 5.34(主張)コンパクトなリーマン面は非特異射影代数曲線と同型である。M(X)\mathcal{M}(X) は C\mathbb{C} 上超越次数 1 の有限生成体であり、X↦M(X)X \mapsto \mathcal{M}(X) は、コンパクトなリーマン面と定数でない正則写像の圏から、C\mathbb{C} 上超越次数 1 の有限生成体の圏への反変な圏同値を与える。

代数幾何学では、リーマン–ロッホの定理は任意の代数閉体上の非特異射影曲線について成り立つ(14-algebraic-geometry 第8章)。本章の「主要部の空間」は、そこでのアデール的な証明(ヴェイユ、セール)と同じ考え方である。

まとめ

  • 因子は点の整数係数の形式和で、主因子の次数は 00、標準因子の次数は 2g−22g - 2(リーマン–フルヴィッツ)。因子類群は直線束の同型類の群と同じである。
  • L(D)L(D) は DD で許された極をもつ関数の空間で、ℓ(D)≤ℓ(D−p)+1\ell(D) \leq \ell(D - p) + 1、ℓ(D)≤deg⁡D+1\ell(D) \leq \deg D + 1。
  • 主要部の空間 T(D)T(D) への写像の余核 H1(D)H^1(D)(ミッタク–レフラー問題の障害)を使うと、ℓ(D)−h1(D)=deg⁡D+1−ga\ell(D) - h^1(D) = \deg D + 1 - g_a が完全系列から従う(有限性を認める)。
  • セール双対性 H1(D)∗≅Ω(−D)H^1(D)^{\ast} \cong \Omega(-D)(留数による対)を認めると、リーマン–ロッホの定理 ℓ(D)−ℓ(K−D)=deg⁡D+1−g\ell(D) - \ell(K - D) = \deg D + 1 - g を得る。dim⁡Ω(X)\dim\Omega(X) は位相的な種数に等しい。
  • 種数 0 は C^\hat{\mathbb{C}}、種数 1 は複素トーラス、種数 2 は超楕円的。g≥2g \geq 2 の非超楕円曲線は標準写像で Pg−1\mathbb{P}^{g-1} に埋め込まれる。
  • 空隙はちょうど gg 個で、ワイエルシュトラス点の重みの総和は g3−gg^3 - g。超楕円曲線では 2g+22g + 2 個の分岐点がワイエルシュトラス点である。
  • アーベル–ヤコビの定理により Cl⁡0(X)≅Jac⁡(X)\operatorname{Cl}^0(X) \cong \operatorname{Jac}(X)。deg⁡D≥2g+1\deg D \geq 2g + 1 の φD\varphi_D による埋め込みから、コンパクトなリーマン面は射影代数曲線である。

演習問題

問題 5.1 ★ X=C/ΛX = \mathbb{C}/\Lambda について、1≤n≤61 \leq n \leq 6 で L(n[0])L(n[0]) の基底を ℘,℘′\wp, \wp' で書き、ℓ(n[0])=n\ell(n[0]) = n を確かめよ。L(6[0])L(6[0]) で ℘′2\wp'^2 はどう表されるか。

解答

極の位数は ℘\wp が 2、℘′\wp' が 3 だから、℘a℘′b\wp^a\wp'^b の極の位数は 2a+3b2a + 3b。n=1n = 1:11。n=2n = 2:1,℘1, \wp。n=3n = 3:+℘′+\wp'。n=4n = 4:+℘2+\wp^2。n=5n = 5:+℘℘′+\wp\wp'。n=6n = 6:+℘3+\wp^3。極の位数が相異なるので一次独立で、個数は nn。℘′2\wp'^2 も極の位数 6 で、定理 2.9 より ℘′2=4℘3−g2℘−g3\wp'^2 = 4\wp^3 - g_2\wp - g_3 と表される。

問題 5.2 ★ deg⁡D≥1\deg D \geq 1 で ℓ(D)=deg⁡D+1\ell(D) = \deg D + 1 となる因子 DD があれば X≅C^X \cong \hat{\mathbb{C}} であることを示せ。

解答

命題 5.8 (3) の議論で DD を線形同値な有効因子 p1+⋯+pdp_1 + \cdots + p_d に取り替える(ℓ(D)≥2>0\ell(D) \geq 2 > 0 なので可能)。命題 5.8 (4) より 1 点除くごとに ℓ\ell は高々 1 減るから、ℓ(p1)≥ℓ(D)−(d−1)=2\ell(p_1) \geq \ell(D) - (d - 1) = 2。よって次数 1 の関数があり、系 1.24 より X≅C^X \cong \hat{\mathbb{C}}。

問題 5.3 ★★ 種数 2 の曲線 X ⁣:y2=x5−xX\colon y^2 = x^5 - x について、P0=(0,0)P_0 = (0, 0) での空隙が {1,3}\lbrace 1, 3 \rbrace であること、分岐点でない点 pp での空隙が {1,2}\lbrace 1, 2 \rbrace であることを示せ。

解答

問題 4.3 より div⁡(x)=2P0−2∞\operatorname{div}(x) = 2P_0 - 2\infty だから、1/x1/x は P0P_0 にだけ 2 位の極をもち、2 は空隙でない。空隙は {1,2,3}\lbrace 1, 2, 3 \rbrace の中に 2 個あり、1 は常に空隙(g≥1g \geq 1)なので、空隙は {1,3}\lbrace 1, 3 \rbrace。分岐点でない pp では例 5.29 より pp で 2 位以上の零点をもつ正則 1 形式は 00 だけだから ℓ(K−2p)=0\ell(K - 2p) = 0、定理 5.15 より ℓ(2p)=2+1−2+0=1\ell(2p) = 2 + 1 - 2 + 0 = 1。よって 2 は空隙で、空隙は {1,2}\lbrace 1, 2 \rbrace。

問題 5.4 ★★ 次数 2g−22g - 2 の因子 DD について、ℓ(D)=g\ell(D) = g なら D∼KD \sim K、そうでなければ ℓ(D)=g−1\ell(D) = g - 1 であることを示せ。

解答

定理 5.15 より ℓ(D)−ℓ(K−D)=g−1\ell(D) - \ell(K - D) = g - 1。K−DK - D は次数 00 だから、ℓ(K−D)≥1\ell(K - D) \geq 1 なら K−D∼E≥0K - D \sim E \geq 0, deg⁡E=0\deg E = 0 より E=0E = 0、すなわち D∼KD \sim K で ℓ(K−D)=1\ell(K - D) = 1。ℓ(K−D)=0\ell(K - D) = 0 なら ℓ(D)=g−1\ell(D) = g - 1。前者のとき ℓ(D)=g\ell(D) = g。

問題 5.5 ★★ 種数 1 の XX と点 pp について、ℓ(np)=n\ell(np) = n(n≥1n \geq 1)を使って、L(2p)=⟨1,x⟩L(2p) = \langle 1, x \rangle, L(3p)=⟨1,x,y⟩L(3p) = \langle 1, x, y \rangle となる x,yx, y をとり、XX が 3 次曲線 y2+a1xy+a3y=x3+a2x2+a4x+a6y^2 + a_1xy + a_3y = x^3 + a_2x^2 + a_4x + a_6 に写ることを示せ。

解答

ℓ(2p)=2\ell(2p) = 2 より pp にちょうど 2 位の極をもつ xx、ℓ(3p)=3\ell(3p) = 3 よりちょうど 3 位の極をもつ yy がある。L(6p)L(6p)(6 次元)に 1,x,y,x2,xy,x3,y21, x, y, x^2, xy, x^3, y^2 の 7 個が入るから一次関係がある。x3x^3 と y2y^2 だけが 6 位の極をもち、他は 5 位以下なので、関係式で x3x^3 と y2y^2 の係数はともに 00 でない(一方だけなら極の位数が合わない)。x,yx, y を定数倍して係数を調整すると上の形になる。写像 p′↦[x:y:1]p' \mapsto [x : y : 1](p↦[0:1:0]p \mapsto [0 : 1 : 0])の像がこの曲線であり、xx は次数 2、yy は次数 3 だから、写像の次数を比べて像への同型であることもわかる(詳しくは補題 5.23 を D=3pD = 3p に適用する:deg⁡3p=3=2g+1\deg 3p = 3 = 2g + 1 なので定理 5.33 より埋め込み)。

問題 5.6 ★★ 種数 3 の超楕円曲線 y2=f(x)y^2 = f(x)(deg⁡f=8\deg f = 8)の標準写像の像は、P2\mathbb{P}^2 の非特異 2 次曲線 X0X2=X12X_0X_2 = X_1^2 であることを示せ。これと例 5.25 (1) を比べて、非特異平面 4 次曲線が超楕円的でない理由を説明せよ。

解答

例 5.25 (2) より φK=[1:x:x2]\varphi_K = [1 : x : x^2] で、像は X0X2=X12X_0X_2 = X_1^2 上にあり、x ⁣:X→C^x\colon X \to \hat{\mathbb{C}} の全射性から像は 2 次曲線全体である。φK\varphi_K は 2 対 1 で埋め込みでない。一方、非特異平面 4 次曲線 CC では注意 4.8 の基底による標準写像が C⊂P2C \subset \mathbb{P}^2 の包含写像そのもの(埋め込み)だから、定理 5.24 より超楕円的でない。

問題 5.7 ★★★(クリフォードの定理)ℓ(D)≥1\ell(D) \geq 1 かつ ℓ(K−D)≥1\ell(K - D) \geq 1 なら 2(ℓ(D)−1)≤deg⁡D2(\ell(D) - 1) \leq \deg D であることを示せ。

ヒント

まず次を示す:M(X)\mathcal{M}(X) の有限次元部分空間 V1,V2≠0V_1, V_2 \neq 0 について、積の張る空間 V1V2V_1V_2 は dim⁡V1V2≥dim⁡V1+dim⁡V2−1\dim V_1V_2 \geq \dim V_1 + \dim V_2 - 1 を満たす。実際、すべての元が正則な点 pp を固定すると、ViV_i の 00 でない元の pp での零点の位数の集合 SiS_i はちょうど dim⁡Vi\dim V_i 個の元をもち(ガウスの消去法)、V1V2V_1V_2 の位数の集合は和集合 S1+S2S_1 + S_2 を含み、∣S1+S2∣≥∣S1∣+∣S2∣−1\lvert S_1 + S_2 \rvert \geq \lvert S_1 \rvert + \lvert S_2 \rvert - 1 である。これを V1=L(D)V_1 = L(D), V2=L(K−D)V_2 = L(K - D)(V1V2⊂L(K)V_1V_2 \subset L(K))に適用すると ℓ(D)+ℓ(K−D)−1≤g\ell(D) + \ell(K - D) - 1 \leq g。定理 5.15 の ℓ(D)−ℓ(K−D)=deg⁡D+1−g\ell(D) - \ell(K - D) = \deg D + 1 - g と足し合わせると 2ℓ(D)−1≤deg⁡D+12\ell(D) - 1 \leq \deg D + 1 となる。

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