この章の目標
- 非特異射影曲線と関数体の対応を理解し、曲線からの有理写像が射に延びることを証明できる
- 因子の次数・ℓ(D)・種数を定義し、リーマン–ロッホの定理をセール双対性から証明できる
- 種数 0 の曲線が P1 であることを証明し、楕円曲線の群構造の構成を説明できる
- フルヴィッツの公式で超楕円曲線や平面曲線の種数を計算できる
前提:第6章、第7章、13-commutative-algebra 第7章(離散付値環)。19-riemann-surfaces 第5章 と比較しながら読むとよい。
この章では k は代数閉体とし、曲線とは k 上有限型・分離的な 1 次元の整スキームをいう。点といえば閉点を指す。
8.1 動機:曲線の分類と有理関数
k=C のとき、非特異射影曲線はコンパクトリーマン面であり、位相的には g 個の穴をもつ曲面である。この g(種数)が曲線の最も基本的な不変量である。「指定した点で指定した位数以下の極をもつ有理関数はどれだけあるか」という問いに答えるのがリーマン–ロッホの定理で、それを使うと種数 0 の曲線は P1 に限ること、種数 1 の曲線は平面 3 次曲線で群構造をもつこと、などの分類が得られる。本章では第7章のコホモロジーとセール双対性を使って、これらを代数的に証明する。
8.2 非特異射影曲線と関数体
曲線 X の関数体 K(X) は k 上超越次数 1 の有限生成拡大体である。非特異な曲線の点 P での局所環 OX,P は 1 次元の正則局所環、すなわち離散付値環であり、付値 vP:K(X)×→Z(P での零点・極の位数)を定める。vP(t)=1 となる t を P での局所パラメータ(素元)という。
命題 8.1(射の延長)X を非特異な曲線、P∈X、Y⊂PN を射影多様体とする。射 φ:X∖{P}→Y は X 上の射にただ一通りに延びる。
証明. 一意性は Y が分離的であること(二つの延長が一致する点の集合は閉で稠密)による。存在:φ はある開集合上で [f0:⋯:fN](fi∈K(X)、すべては 0 でない)と書ける。m=minivP(fi) とし t を P での局所パラメータとすると、gi=t−mfi∈OX,P で、ある gj は単元である。P の近傍で gj は 0 にならず、gi/gj は正則関数なので、[g0:⋯:gN] は P の近傍で射を定め、φ と共通部分上で一致する。像は稠密な部分で閉集合 Y に入るので Y に入る。貼り合わせて延長を得る。□
定理 8.2(主張)次の 3 つの圏は同値である:(i) 非特異射影曲線と支配的な射、(ii) 準射影的な曲線と支配的な有理写像、(iii) k 上超越次数 1 の有限生成拡大体と k 準同型(反変)。
証明は Hartshorne 第 I 章系 6.12 を参照。命題 8.1 がその鍵である。特に、双有理同値な非特異射影曲線は同型であり、任意の曲線は(関数体を通じて)ただ一つの非特異射影モデルをもつ。また射影曲線の間の射は、定数写像か全射(像は既約閉集合)であり、後者は有限射である。
例 8.3 (1) K=k(t) には P1 が対応する。(2) 尖点曲線 y2=x3 の関数体は t=y/x により k(t) で、非特異モデルは P1(t↦(t2,t3))。結節点曲線も同様に k(t) をもつ(問題 1.4)。(3) 標数 =2 で E:y2=x3−x の射影閉包は非特異(問題 1.3)で、関数体は k(x) の 2 次拡大 k(x)[y]/(y2−x3+x) である。
8.3 因子の次数
非特異射影曲線 X の素因子は点であり、因子は D=∑nPP(有限和)である。degD=∑nP を次数という。局所環は離散付値環(特に一意分解整域)なので、定理 6.17 より Cl(X)=Pic(X) である。
定義 8.4 非特異射影曲線の間の有限射 f:X→Y に対し、degf=[K(X):K(Y)] を次数という。Q∈Y の局所パラメータ tQ について、eP=vP(f∗tQ)(f(P)=Q)を P での分岐指数 (ramification index) とし、f∗Q=∑f(P)=QePP とおく。eP≥2 のとき f は P で分岐するという。
定理 8.5(主張)有限射 f:X→Y について、すべての Q∈Y で degf∗Q=degf。したがって g∈K(X)× について degdiv(g)=0 であり、deg:Pic(X)→Z が定まる。その核を Pic0(X) と書く。
証明は Hartshorne 第 II 章命題 6.9 を参照。後半:定数でない g は有限射 g:X→P1 を定め、div(g)=g∗(0)−g∗(∞) なので次数は degg−degg=0。k=C では、これは偏角の原理(2πi1∮g′/g の和が 0:05-complex-analysis 第5章)の代数版である。
例 8.6 (1) P1 上で g=∏i(t−ai)ni なら div(g)=∑ni[ai]−(∑ni)∞ で次数 0。[a]−[b]=div(t−bt−a) なので P1 の任意の 2 点は線形同値で、Pic(P1)≅Z(定理 6.14)。(2) 例 8.3(3) の E で、O=[0:1:0], P0=(0,0), P±1=(±1,0) とすると div(x)=2P0−2O, div(y)=P0+P1+P−1−3O(問題 8.2)。
8.4 ℓ(D) と種数
定義 8.7 因子 D に対し L(D)={f∈K(X)×∣div(f)+D≥0}∪{0}=Γ(X,O(D)) とおき、ℓ(D)=dimkL(D) とする(定理 7.16 より有限)。
D=nP なら、L(D) は「P で高々 n 位の極をもち、他では正則な関数」の空間である。
命題 8.8 (1) ℓ(0)=1。(2) degD<0 なら ℓ(D)=0。(3) 点 P について ℓ(D−P)≤ℓ(D)≤ℓ(D−P)+1。特に degD≥0 なら ℓ(D)≤degD+1。(4) D∼D′ なら ℓ(D)=ℓ(D′)。
証明. (1) div(f)≥0 なら f は射影曲線上の正則関数で、系 2.19 より定数。(2) 0=f∈L(D) なら有効因子 div(f)+D の次数 degD は負になりえない。(3) n を D の P での係数、t を局所パラメータとすると、f↦(tnf)(P) は線形写像 L(D)→k で、核は vP(f)≥−n+1 となる f の全体 L(D−P) である。後半は (2) と、D から点を degD+1 回引くことによる。(4) D′=D−div(h) なら f↦fh が同型 L(D)→L(D′) を与える。□
定義 8.9(種数, genus)g=dimkH1(X,OX) を X の種数という。ωX≅O(K) となる因子 K を標準因子とすると、セール双対性(定理 7.20)より g=h0(ωX)=ℓ(K) である。
P1 は g=0, K=−2∞(命題 6.25)、d 次の非特異平面曲線は g=2(d−1)(d−2)(例 7.18)、非特異平面 3 次曲線は g=1, K=0(問題 6.5)である。
8.5 リーマン–ロッホの定理
定理 8.10(リーマン–ロッホの定理, Riemann–Roch theorem)X を種数 g の非特異射影曲線、K を標準因子とする。任意の因子 D について
ℓ(D)−ℓ(K−D)=degD+1−g
証明. 第 1 段:χ(O(D))=degD+1−g を示す。D=0 では χ(O)=h0(O)−h1(O)=1−g(命題 8.8(1))。点 P と因子 D について、完全列
0→O(D−P)→O(D)→k(P)→0
がある。ここで k(P) は P に茎 k をもつ摩天楼層である。実際、O(D)P=t−nOP(n は D の P での係数)で、O(D−P)P=t−n+1OP=mP⋅t−nOP だから商は OP/mP=k であり、他の点では包含は同型である。摩天楼層は脆弱なので χ(k(P))=1(命題 7.6)、加法性から χ(O(D))=χ(O(D−P))+1。degD=deg(D−P)+1 なので、式は D と D−P で同値である。任意の D は 0 から点を足し引きして得られるので、すべての D で成り立つ。
第 2 段:セール双対性(定理 7.20、n=1, E=O(D))より
h1(O(D))=h0(O(D)∨⊗ωX)=h0(O(K−D))=ℓ(K−D)
なので、χ(O(D))=ℓ(D)−ℓ(K−D)。□
系 8.11 (1) ℓ(K)=g, degK=2g−2。
(2) degD>2g−2 なら ℓ(D)=degD+1−g。
(3) degD≥2g なら O(D) は大域切断で生成される(すべての点 P で ℓ(D−P)=ℓ(D)−1)。
証明. (1) D=0 で 1−ℓ(K)=1−g、D=K で g−1=degK+1−g。(2) deg(K−D)<0 なので ℓ(K−D)=0。(3) D と D−P はともに次数が 2g−2 より大きいので (2) から ℓ(D−P)=ℓ(D)−1、すなわち P で 0 にならない切断がある。□
P1 で D=n∞(n≥0)とすると、L(D) は n 次以下の多項式の空間で ℓ(D)=n+1=degD+1−0 と一致する。k=C では degK=2g−2 は位相的なオイラー標数 2−2g の符号を変えたものである。
8.6 応用:種数 0 の曲線
定理 8.12 種数 0 の非特異射影曲線 X は P1 に同型である。
証明. 点 P をとる。degP=1>2g−2=−2 なので系 8.11(2) より ℓ(P)=2 であり、定数でない f∈L(P) がある。f は P にだけ 1 位の極をもつので、f:X→P1 について f∗(∞)=P、定理 8.5 より degf=1、すなわち K(X)=k(f)。定理 8.2 より X≅P1。□
同じ議論から、相異なる 2 点が線形同値な非特異射影曲線は P1 に同型である(P−Q=div(f) なら degf=1)。非特異な円錐曲線は例 7.18 より種数 0 なので P1 に同型であり、例 2.7 と一致する。
8.7 応用:種数 1 と楕円曲線の群構造(概略)
定理 8.13 X を種数 1 の非特異射影曲線、O∈X とする。
(1) P↦[P−O] は全単射 X→Pic0(X) である。これにより X はアーベル群の構造をもち、P+Q=R⇔P+Q∼R+O。
(2)(概略)完備線形系 ∣3O∣ は X を平面 3 次曲線 y2+a1xy+a3y=x3+a2x2+a4x+a6(ワイエルシュトラス標準形)として埋め込み、O は [0:1:0] に写る。このとき P+Q+R=0⇔P,Q,R は(重複度込みで)同一直線上にある。
証明. (1) 次数 1 の因子 D について、系 8.11(2)(2g−2=0<1)より ℓ(D)=1 なので、D に線形同値な有効因子がただ一つあり、それは 1 点である。全射:次数 0 の D について D+O∼P となる点 P があり、D∼P−O。単射:P−O∼Q−O, P=Q なら P∼Q となり、定理 8.12 の後の注意から X≅P1、g=0 に反する。
(2) 系 8.11(2) より n≥1 で ℓ(nO)=n。ℓ(O)=1 なので、L(2O) は O でちょうど 2 位の極をもつ x を含み、L(3O) は 3 位の極をもつ y を含む。L(6O) は 6 次元だが 7 つの関数 1,x,y,x2,xy,x3,y2 を含むので線形関係があり、6 位の極をもつのは x3 と y2 だけだから両者の係数は 0 でない。適当に定数倍して標準形を得る。deg3O=3=2g+1 なので、定理 8.14 より [X:Y:Z]=[x:y:1] は埋め込みであり、x,y の O での極の位数が 2, 3 であることから O は [0:1:0] に写る。直線 ℓ=aX+bY+cZ について、ℓ/Z=ax+by+c は L(3O) の元で div(ℓ/Z)=P+Q+R−3O(P,Q,R は直線との交点)なので、P+Q+R∼3O、すなわち群として P+Q+R=0。□
k=C では X≅C/Λ(格子による商)であり、この群構造は C の加法から来るものと一致する(19-riemann-surfaces 第2章)。
8.8 非常に豊富な因子
定理 8.14(主張)種数 g の非特異射影曲線上の因子 D について、degD≥2g+1 なら O(D) は非常に豊富であり、X は PN(N=ℓ(D)−1=degD−g)に次数 degD の曲線として埋め込まれる。また O(D) が豊富 ⇔ degD>0。
証明は Hartshorne 第 IV 章系 3.2, 3.3 を参照。例:g=0 では次数 d の因子で Pd の有理正規曲線(d=3 ならねじれ 3 次曲線)。g=1 では次数 3 で平面 3 次曲線、次数 4 で P3 の 4 次曲線(2 つの二次曲面の交わり:問題 7.4)。一方 g=1 で O(O) は豊富だが ℓ(O)=1 なので非常に豊富でなく、O(2O) も ℓ=2 で次数 2 の射 X→P1 しか与えない。
8.9 フルヴィッツの公式
定理 8.15(フルヴィッツの公式, Hurwitz formula、主張)f:X→Y を非特異射影曲線の間の次数 n の有限分離射とし、すべての分岐指数 eP が k の標数で割れない(順分岐)とする。このとき
2gX−2=n(2gY−2)+P∈X∑(eP−1)
証明の方針. Y 上の有理的な 1 形式 ω を引き戻す。P で f∗tQ=ute(u は単元)なら d(ute)=(eute−1+teu′) dt は e≡0 のとき位数 e−1 をもつので、div(f∗ω)=f∗div(ω)+∑P(eP−1)P。次数をとり、定理 8.5 と系 8.11(1) を使う(Hartshorne 第 IV 章系 2.4)。□
例 8.16(応用)(1) 定数でない分離射 f:X→Y があれば gX≥gY(gY≥1 なら 2gX−2≥n(2gY−2)≥2gY−2。野生分岐がある場合も、一般形のフルヴィッツの公式では分岐の寄与が ∑(eP−1) 以上になるだけなので、同じ不等式が成り立つ)。特に P1 から楕円曲線への定数でない射はない。
(2)(超楕円曲線)標数 =2 とし、h(x) を重根をもたない 2g+1 次または 2g+2 次の多項式とする。y2=h(x) の非特異射影モデル X と、次数 2 の射 x:X→P1 を考える。分岐するのは h の根の上(e=2)と、degh が奇数のとき ∞ の上である。実際 u=1/x とおくと y2=u−deghh~(u)(h~(0)=0)で、degh が偶数なら (udegh/2y)2=h~(u) は u=0 で 2 つの解をもつ。いずれの場合も分岐点は 2g+2 個で、2gX−2=2⋅(−2)+(2g+2) より gX=g。
(3)(平面曲線の種数、第 3 の証明)標数 0 とする(正標数では、たとえば標数 2 の円錐曲線の接線はすべて 1 点を通るので、以下の主張は成り立たないことがある)。d 次の非特異平面曲線 C を、C 上にない一般の点から射影すると次数 d の射 C→P1 を得る。分岐点はその点から引いた接線の接点で、一般の点からは d(d−1) 本の接線が引け、すべて単純(e=2)である(主張)。2g−2=d⋅(−2)+d(d−1) より g=2(d−1)(d−2)。
8.10 超楕円曲線と標準曲線
定義 8.17(超楕円曲線, hyperelliptic curve)種数 g≥2 の曲線 X で、次数 2 の有限射 X→P1 をもつものを超楕円曲線という。
例 8.16(2) の曲線は超楕円曲線であり、正則 1 形式の空間は xi dx/y(0≤i≤g−1)を基底にもつ(主張)。
命題 8.18 種数 2 の曲線は超楕円曲線である。
証明. ℓ(K)=2, degK=2。点 P で K のすべての切断が 0 になる(基点)とすると ℓ(K−P)=ℓ(K)=2 で、リーマン–ロッホの定理を D=P に適用すると ℓ(P)=ℓ(K−P)+1+1−2=2。定理 8.12 の証明より X≅P1 となり矛盾。よって O(K) は大域切断で生成され、定理 6.18 より射 φK:X→P1 を定め、その次数は degK=2 である。□
定理 8.19(主張)g≥2 なら O(K) は大域切断で生成され、標準射 φK:X→Pg−1 が定まる。φK が閉埋め込みであることと X が超楕円的でないことは同値である。超楕円的なら φK は有理正規曲線への 2 対 1 の射である。
証明は Hartshorne 第 IV 章命題 5.2 を参照。超楕円的でない曲線の像 φK(X)⊂Pg−1 を標準曲線といい、次数は 2g−2 である。g=3 では標準曲線は平面 4 次曲線である。逆に非特異な平面 4 次曲線 C では随伴公式より ωC≅OC(1) なので、標準射は包含写像そのものであり、C は超楕円的でない。したがって種数 3 の曲線は超楕円曲線か平面 4 次曲線である。g=4 の標準曲線は P3 の二次曲面と三次曲面の完全交叉である(主張)。
8.11 平面曲線の種数公式
定理 8.20(平面曲線の種数公式)d 次の非特異平面曲線の種数は g=2(d−1)(d−2) である。
これは例 7.18 で h1(OC) として証明した。随伴公式 ωC≅OC(d−3) からも、OC(1) の次数が d(直線と d 点で交わる:ベズーの定理)であることを使って 2g−2=degK=d(d−3) として得られ、例 8.16(3) のフルヴィッツの公式からも得られる。三通りの証明が一致することは、理論の整合性の良い確認である。
帰結として、非特異平面曲線の種数は 0,0,1,3,6,10,… に限られ、種数 2 の曲線は非特異な平面曲線として実現できない。特異点をもつ平面曲線では、通常の結節点・尖点の個数を δ とすると、正規化(非特異モデル)の種数は 2(d−1)(d−2)−δ である(主張)。結節点をもつ 3 次曲線は 1−1=0 で、P1 でパラメータ付けられる(問題 1.4)。
まとめ
- 非特異射影曲線は関数体と一対一に対応し、双有理同値なら同型。曲線から射影多様体への有理写像は射に延びる。
- 主因子の次数は 0 で、次数は Pic(X)→Z を定める。有限射では degf∗Q=degf。
- 種数 g=h1(O)=h0(ω)。リーマン–ロッホ:ℓ(D)−ℓ(K−D)=degD+1−g。degK=2g−2。
- g=0 なら P1。g=1 なら X≅Pic0(X) で群構造をもち、平面 3 次曲線として「3 点が同一直線上 ⇔ 和が 0」。
- degD≥2g+1 なら非常に豊富。g≥2 で超楕円的でなければ標準射が埋め込み。
- フルヴィッツの公式 2gX−2=n(2gY−2)+∑(eP−1) で超楕円曲線や平面曲線の種数が計算できる。
- 平面曲線の種数 (d−1)(d−2)/2 はコホモロジー・随伴公式・フルヴィッツの公式の三通りで得られる。
演習問題
問題 8.1 ★ P1 上で D=n∞(n∈Z)についてリーマン–ロッホの定理を直接確かめよ。
解答
g=0, K=−2∞。n≥0 なら L(n∞) は n 次以下の多項式で ℓ(D)=n+1、ℓ(K−D)=ℓ(−(n+2)∞)=0 なので、左辺 =n+1=degD+1−g。n=−1 なら両辺とも 0。n≤−2 なら ℓ(D)=0、ℓ(K−D)=ℓ((−n−2)∞)=−n−1 なので、左辺 =n+1 でやはり一致する。
問題 8.2 ★★ 標数 =2 の E:y2=x3−x について、div(x)=2P0−2O, div(y)=P0+P1+P−1−3O を示せ。これから群 E で P0,P1,P−1 が位数 2 の元であり、P0+P1=P−1 となることを導け。
解答
x は E→P1 として次数 [K(E):k(x)]=2、y は次数 3(y2=x3−x から [K(E):k(y)]=3)である。アフィン部分で x=0⇒y=0 なので x の零点は P0 だけ。P0 で ∂f/∂x=−3x2+1=0 なので y が局所パラメータで、x=y2/(x2−1) と x2−1 が単元であることから vP0(x)=2。x の極は O だけなので、次数 2 より div(x)=2P0−2O。y の零点は x∈{0,±1} の 3 点で、各点で ∂f/∂x=0(x3−x は重根をもたない)なので y は局所パラメータ、各零点は 1 位。極は O だけで次数 3 より div(y)=P0+P1+P−1−3O。
div(x) より 2(P0−O)∼0、div(x∓1)=2P±1−2O(同様)より P±1 も位数 2(定理 8.13(1) より P=O は群の単位元でない)。div(y) より P0+P1+P−1=0 で、P−1=−P−1 だから P0+P1=P−1。これは 3 点が直線 y=0 上にあることの表れである。
問題 8.3 ★★ (1) 標数が n を割らないとき、フェルマー曲線 xn+yn=zn の種数を求めよ。(2) 標数 =2 で y2=x5−x の非特異射影モデルの種数を求めよ。
解答
(1) F=xn+yn−zn の偏微分 nxn−1,nyn−1,−nzn−1 は同時に 0 にならない(x=y=z=0 となってしまう)ので非特異で、定理 8.20 より g=2(n−1)(n−2)。n=3 なら 1、n=4 なら 3。
(2) x5−x=x(x4−1) は重根をもたない 5 次式(標数 =2 では x4−1 の微分 4x3 と共通根をもたない)なので、例 8.16(2) で 2g+1=5、g=2。分岐点は 0,±1,±i,∞ の 6 点である。
問題 8.4 ★★ 種数 g≥1 の曲線上の任意の点 P で ℓ(P)=1 を示せ。また g=1 なら n≥1 で ℓ(nO)=n を示せ。
解答
ℓ(P)≥2 なら定数でない f∈L(P) があり、定理 8.12 の証明と同じく degf=1 で X≅P1、g=0 に反する。ℓ(P)≥ℓ(0)=1 なので ℓ(P)=1。g=1 なら 2g−2=0 なので、n≥1 で系 8.11(2) より ℓ(nO)=n+1−1=n。
問題 8.5 ★★ 種数 3 の超楕円的でない曲線(平面 4 次曲線)C について、標準因子の次数と ℓ(K) を確認し、C 上の任意の直線切断 H が標準因子であることを示せ。
解答
d=4 なので g=3, degK=4=2g−2, ℓ(K)=3。随伴公式 ωC≅OC(4−3)=OC(1) より、OC(1) の切断(直線の方程式)の零点である直線切断 H(重複度込みで 4 点:ベズーの定理)は ωC の切断の因子、すなわち標準因子である。ℓ(K)=h0(OC(1))=3 は、問題 7.6 の計算(d=4 で h0(OC(1))=(23)=3)とも一致する。
問題 8.6 ★★★ 定理 8.13(2) の構成を完成させよ。すなわち、標数 =2,3 のとき、種数 1 の曲線は y2=x3+ax+b(4a3+27b2=0)の射影閉包に同型であることを示せ。
解答
ヒント. 証明の (2) で得た関係式を αy2+(低い極の項)=βx3+⋯(αβ=0)と書き、x,y を定数倍して y2+a1xy+a3y=x3+a2x2+a4x+a6 の形にする。標数 =2 なら y↦y−(a1x+a3)/2 で平方完成して y2=(x の 3 次式)、標数 =3 なら x↦x−c で x2 の項を消して y2=x3+ax+b を得る。[x:y:1] は埋め込み(定理 8.14)なので X はこの 3 次曲線の射影閉包に同型で、それは非特異だから問題 1.3 より 4a3+27b2=0。逆にこの条件の下で射影閉包は非特異な平面 3 次曲線で、種数は 2(3−1)(3−2)=1 である。