この章の目標
- 被約・整・ネーターなどスキームの性質と、開・閉部分スキーム、被約化を例で扱える
- ファイバー積とファイバーを計算できる(SpecZ[i]→SpecZ、曲線の族の退化)
- 有限型・有限・分離的・固有な射を定義し、原点が 2 つある直線や A1 が反例になる理由を説明できる
- 平坦性とファイバーの次元の関係を例で説明できる
前提:第4章、13-commutative-algebra 第1章(テンソル積・平坦性)、第4章(整拡大)、第5章(次元)
5.1 動機:相対的な視点
グロタンディークの基本的な発想は、スキーム X そのものより射 f:X→S を調べることである。f は S の点 s でパラメータ付けられたスキームの族 Xs(ファイバー)と考えられる。
- xy=t を t 軸 A1 上の族とみると、t=0 では双曲線、t=0 では 2 直線 xy=0 に退化する。
- x2=t では、t=0 の 2 点が t=0 で合流して二重点 k[x]/(x2) になる。
- SpecZ[i]→SpecZ は、素数 p ごとに有限個の点を並べた族である。
射の性質(有限・固有・分離的・平坦)は、ファイバーが「有限集合である」「コンパクトである」「ハウスドルフである」「連続的に変化する」ことの代数的な表現である。
5.2 スキームの性質
定義 5.1 スキーム X が
- 被約 (reduced) とは、すべての開集合 U で OX(U) が冪零元 =0 をもたないこと(すべての茎が被約であることと同値)。
- 整 (integral) とは、空でないすべての開集合 U で OX(U) が整域であること。
- 局所ネーター (locally noetherian) とは、ネーター環 Ai の SpecAi で覆われること。さらに準コンパクト(任意の開被覆が有限部分被覆をもつ。局所ネーターなスキームでは、有限個のそのような SpecAi で覆えることと同値)ならネーターという。
命題 5.2 スキーム X が整であるための必要十分条件は、被約かつ既約であることである。
証明. (⇒) 被約は明らか。X=Z1∪Z2(Zi⊊X は閉)なら Ui=X∖Zi は空でなく交わらないので、OX(U1⊔U2)=OX(U1)×OX(U2) は整域でない。(⇐) 空でない開集合 U と f,g∈OX(U) で fg=0 とする。Zf={x∈U∣fx∈mx} は閉集合である(補集合は f が単元となる点で、単元であることは近傍に広がる)。fxgx=0∈mx より U=Zf∪Zg で、U は既約なので例えば U=Zf。U に含まれるアフィン開集合 SpecA 上では、f はすべての素イデアルに属するので冪零、被約性から 0 である。層の性質より f=0。□
整スキームは生成点 η をもち、K(X)=OX,η を関数体という。
例 5.3 (1) Speck[x]/(x2) は被約でない。(2) Speck[x,y]/(xy) は被約だが既約でない。(3) Pkn, SpecZ, AZn は整でネーター。(4) A=k[x1,x2,…]/(x1,x2,…)2 の Spec は 1 点(位相空間としてはネーター)だが、A はネーター環でないのでネータースキームではない(SpecA が局所ネーター ⇔ A がネーター:Hartshorne 第 II 章命題 3.2)。
5.3 開部分スキームと閉部分スキーム
定義 5.4(閉埋め込み, closed immersion)スキームの射 f:Z→X が閉埋め込みであるとは、f が Z から X の閉集合への同相写像で、f♯:OX→f∗OZ が(層の射として)全射であることをいう。閉埋め込みの同型類を閉部分スキームという。開集合 U と OX∣U の組は開部分スキーム、それへの同型は開埋め込みである。
例 5.5 イデアル I⊂A について SpecA/I→SpecA は閉埋め込みである(像は V(I) で、茎の写像 Ap→(A/I)p は全射)。同じ閉集合に異なる閉部分スキームの構造が入りうる。A2=Speck[x,y] の中で
- V(x):直線、
- V(x2):直線を「2 重にした」もの(y 軸が、それと直交する x 軸方向に無限小の厚みをもつ)、
- V(x2,xy):直線の原点だけに「埋め込まれた点」がついたもの(問題 5.3)
は、いずれも集合としては y 軸である。
命題 5.6(主張)アフィンスキーム SpecA の閉部分スキームは、イデアル I による SpecA/I に限る。一般のスキーム X の閉部分スキームは、準連接なイデアル層 I⊂OX(第6章)と一対一に対応する。
証明は Hartshorne 第 II 章命題 5.9, 系 5.10 を参照。
被約化 (reduction):OX の冪零元のなすイデアル層 N で定まる閉部分スキーム Xred は、X と同じ位相空間をもつ被約スキームで、アフィンなら SpecA/nil(A) である。被約スキームから X への射は Xred を一意に経由する(主張)。閉集合 Z に対しても、Z 上で 0 になる関数全体のイデアル層で被約な誘導構造が定まる。
5.4 ファイバー積
定理 5.7(ファイバー積の存在)スキームの射 f:X→S, g:Y→S に対し、スキーム X×SY と射 p1,p2 で次の図式を可換にし、同じ性質をもつ任意の (T,q1,q2) がただ一つの射 T→X×SY を経由するものが存在する。
X×SYp1↓X p2 f Y↓gS
アフィンの場合は SpecA×SpecRSpecB=Spec(A⊗RB) である。
証明の方針. アフィンの場合:任意のスキーム T について、定理 4.7 とテンソル積の普遍性(R 代数の圏での余積)から
Hom(T,Spec(A⊗RB))=HomR(A⊗RB,Γ(T))=Hom(T,SpecA)×Hom(T,SpecR)Hom(T,SpecB)
が自然に成り立ち、これが普遍性そのものである。一般の場合は S,X,Y をアフィン開集合で覆い、アフィンの場合のファイバー積を普遍性による一意性を使って貼り合わせる(Hartshorne 第 II 章定理 3.3)。□
注意
X×SY の点の集合は、点の集合のファイバー積ではない。SpecC×SpecRSpecC=Spec(C⊗RC) で、C⊗RC≅C[x]/(x2+1)≅C×C なので 2 点からなる。また Ak1×kAk1=Ak2 には曲線の生成点のように「点の組」でない点がある。
定義 5.8(ファイバーと基底変換)射 f:X→Y と y∈Y に対し、Xy=X×YSpecκ(y) を y 上のファイバー (fiber) という。Xy の位相空間は f−1(y) に同相である(主張)。Y′→Y に対し X×YY′→Y′ を基底変換 (base change) という。R 上の X から XC を作る係数拡大、Z 上の X から XFp を作る「p を法とする還元」は基底変換である。Y が整なら生成点上のファイバーを生成ファイバーという。
例 5.9(SpecZ[i]→SpecZ のファイバー)素数 p 上のファイバーは
Spec(Z[i]⊗ZFp)=SpecFp[x]/(x2+1)
である。
- p=2:x2+1=(x+1)2 なので、1 点からなる被約でないスキーム SpecF2[x]/((x+1)2)。(2)=(1+i)2 は分岐する。
- p≡1(mod4):−1 は平方剰余で x2+1=(x−a)(x+a), a=−a なので、Spec(Fp×Fp) は被約な 2 点。p は分解する(例:p=5, x2+1=(x−2)(x+2))。
- p≡3(mod4):x2+1 は既約で、SpecFp2 の 1 点。p は惰性的である。
- 生成ファイバーは SpecQ(i)。
どのファイバーでも環の κ(y) 上の次元は 2 で一定である(5.9 節の平坦性)。分解する素数が p=a2+b2 と書ける奇素数であること(2=12+12 は分岐する)(04-algebra 第6章)は、この幾何的な描像の数論的な内容である。
例 5.10(曲線の族)k を代数閉体(標数 =2)とする。(1) X=Speck[x,y,t]/(xy−t)→At1 の t=a=0 上のファイバーは双曲線 xy=a、t=0 上のファイバーは 2 直線 xy=0 である。(2) X′=Speck[x,t]/(x2−t)→At1 のファイバーは、t=a=0 では 2 点 x=±a、t=0 では二重点 Speck[x]/(x2) である。冪零元は族の極限として自然に現れる。
5.5 有限型の射と有限射
定義 5.11 射 f:X→Y について、Y のアフィン開被覆 Vi=SpecBi で次を満たすものがあるとする。
- f−1(Vi) が有限生成 Bi 代数 Aij の Spec で覆われるとき局所有限型、さらに各 i で有限個で覆えるとき有限型 (finite type)。
- f−1(Vi)=SpecAi で Ai が有限生成 Bi 加群のとき有限 (finite)。
例 5.12 (1) SpecZ[i]→SpecZ は有限(Z[i]=Z⊕Zi)。(2) A1→A1, x↦x2(t↦x2)は有限(k[x]=k[t]⊕k[t]x)。(3) 射影 V(xy−1)→Ax1 は有限型でファイバーは 1 点か空だが、k[x,x−1] は k[x] 上有限生成加群でないので有限でない。(4) PAn→SpecA(n≥1)は有限型だが有限でない。(5) SpecQ→SpecZ は局所有限型でない。
有限射のファイバーは有限個の点からなり(有限次元 κ(y) 代数の Spec)、有限射は閉写像である(問題 5.4)。
5.6 分離的射
位相空間 X がハウスドルフであることは、対角線 Δ⊂X×X が積位相で閉であることと同値である。ザリスキー位相では積位相を使えないので(例 1.5)、スキームのファイバー積の対角射で代用する。
定義 5.13(分離的, separated)射 f:X→Y の対角射 Δ:X→X×YX を p1∘Δ=p2∘Δ=idX で定める。Δ が閉埋め込みのとき f は分離的であるという。X→SpecZ が分離的なとき X は分離的であるという。
命題 5.14 アフィンスキームの間の射は分離的である。
証明. SpecA→SpecB の対角射は乗法 A⊗BA→A, a⊗a′↦aa′ に対応し、これは全射なので例 5.5 より閉埋め込みである。□
例 5.15(原点が 2 つある直線)例 4.14 の X=U1∪U2(Ui≅A1=Speck[t])を考える。X×kX は 4 つのアフィン開集合 Ua×Ub≅A2 で覆われる。Δ−1(U1×U2)=U1∩U2=A1∖{0} の像は、U1×U2=Speck[s,t] の中で対角線 V(s−t) から原点を除いたものであり、閉でない(閉包は (01,02) に当たる原点を含む)。よって Δ(X) は閉でなく、X は分離的でない。
命題 5.16(主張)(1) 開埋め込み・閉埋め込みは分離的であり、分離的な射の合成と基底変換は分離的である。射影スキーム・準射影多様体は分離的である。(2) 分離的なスキームでは、2 つのアフィン開集合の共通部分はアフィンである。
(2) は第7章のチェック・コホモロジーで重要になる。平面 A2 の原点を 2 つにしたスキームでは、2 つのアフィン開集合の共通部分が A2∖{0} となりアフィンでない(問題 4.3)ので、分離的でない。
定理 5.17(分離性の付値判定法、主張)X をネータースキーム、f:X→Y を射とする。f が分離的であるための必要十分条件は、任意の付値環 R(商体 K)と可換図式 SpecK→X, SpecR→Y に対し、SpecR→X への持ち上げが高々一つであることである。
証明は Hartshorne 第 II 章定理 4.3 を参照。SpecR は「生成点 SpecK と閉点からなる小さな曲線の芽」であり、判定法は「曲線の極限点は高々一つ」と読める。原点が 2 つある直線では、t→0 となる曲線の極限が 01,02 の 2 つある。
5.7 固有射
定義 5.18(固有, proper)射 f:X→Y が普遍的に閉 (universally closed) とは、任意の基底変換 X×YY′→Y′ が閉写像であることをいう。分離的・有限型・普遍的に閉である射を固有射という。
例 5.19 Ak1→Speck は閉写像(像は 1 点)だが固有でない。Ak1 への基底変換 Ak2→Ak1 で、閉集合 V(xy−1) の像は A1∖{0} で閉でない。同様に AZ1→SpecZ は閉写像でない(問題 5.5)。
定理 5.20(主張)(1) 有限射は固有である。(2) 射影的な射(閉埋め込み X→PYn と射影 PYn→Y の合成)は固有である。特に Pkn→Speck は固有で、定理 2.18 はこの特別な場合である。(3)(固有性の付値判定法)X をネータースキーム、f を有限型の射とする。f が固有 ⇔ 定理 5.17 の状況で持ち上げがちょうど一つ存在する。
証明は Hartshorne 第 II 章定理 4.7, 4.9 を参照。(3) でネーターの場合は離散付値環だけを考えれば十分である(同 演習 4.11)。
例 5.21(P1 と A1)R を k を含む離散付値環、π を素元、K を商体、v を付値とする。k 上の射 SpecK→Pk1 は [a:b](a,b∈K は同時に 0 でない)で与えられる。m=min(v(a),v(b)) とおくと [a:b]=[π−ma:π−mb] で、両成分は R に属し一方は単元なので、SpecR→Pk1 への延長が得られる。一方 Ak1 の K 値点 x=π−1 は R 値点に延びない。R=k[t](t) なら、これは「t→0 で x=1/t が無限遠に逃げる」ことであり、P1 では ∞ が極限として補われている。
5.8 スキームの次元
スキームの次元は位相空間としての次元(定義 1.24)とする。dimSpecA=dimA である。
例 5.22 dimSpecZ=1、dimAkn=n、dimAZn=n+1(ネーター環 A で dimA[x]=dimA+1)、dimSpeck[x]/(x2)=0。SpecZ[x] は 2 次元の「数論的曲面」である(問題 4.6)。
注意
一般のスキームでは開集合の次元が全体より小さくなりうる。離散付値環 R の SpecR は 1 次元だが、開集合 {η} は 0 次元である。体上有限型の整スキーム X では、空でない任意の開集合の次元は dimX=trdegK(X) に等しい(主張)。
5.9 平坦射とファイバーの次元
定義 5.23(平坦, flat)射 f:X→Y が x∈X で平坦であるとは、OX,x が平坦 OY,f(x) 加群であることをいう。すべての点で平坦なとき f は平坦であるという。
B が平坦 A 加群なら SpecB→SpecA は平坦である(局所化は平坦性を保つ)。単項イデアル整域 A 上の加群は、ねじれがないとき、かつそのときに限り平坦である。
例 5.24 (1) 開埋め込みは平坦(局所化は平坦)。(2) SpecZ[i]→SpecZ と x2=t の族(例 5.10(2))は、階数 2 の自由加群なので平坦。ファイバーの「長さ」がつねに 2 であることと対応する。(3) Speck→Ak1(t=0 での閉埋め込み)は平坦でない:単射 k[t]tk[t] に ⊗k[t]/(t) を施すと零写像 k→k になる。(4) Speck[x,t]/(xt)→At1 は平坦でない:t⋅x=0 なので t 倍が単射でなく、ねじれがある。幾何的には、ファイバーは t=0 で 1 点 x=0 だが、t=0 では直線 Ax1 全体で、次元が跳ね上がる。
平坦性は「ファイバーが連続的に変化する」ことの代数的な定式化であり、次の定理が成り立つ。
定理 5.25(ファイバーの次元、主張)(1) f:X→Y を体 k 上有限型のスキームの間の平坦な射、x∈X を閉点、y=f(x) とすると、dimxXy=dimxX−dimyY(dimx は x を含む既約成分の次元の最大値)。
(2) f:X→Y を k 上有限型の整スキームの間の支配的な射とすると、空でない各ファイバーの既約成分の次元は dimX−dimY 以上であり、Y の空でない開集合上では等号が成り立つ。
証明は Hartshorne 第 III 章 9 節と第 II 章演習 3.22 を参照。
例 5.26(原点での爆発)A2={((x,y),[u:v])∣xv=yu}⊂A2×P1 と射影 π:A2→A2 を考える。(x,y)=0 上のファイバーは 1 点 [x:y]、原点上のファイバーは P1 全体である。A2 と A2 はともに 2 次元なので、定理 5.25(1) より π は原点上の点で平坦でない。π は固有で、原点の外では同型である(爆発 (blow-up):第9章)。
まとめ
- 整 ⇔ 被約かつ既約。閉部分スキームはイデアル(層)に対応し、同じ集合に冪零元を含む様々な構造が入る。
- ファイバー積はアフィンではテンソル積で、ファイバー Xy は X×YSpecκ(y)。SpecZ[i] のファイバーは素数の分岐・分解・惰性を表す。
- 有限射は有限生成加群に対応し、ファイバーは有限集合。
- 分離的 = 対角が閉(ハウスドルフの類似)。原点が 2 つある直線は分離的でない。
- 固有 = 分離的・有限型・普遍的に閉(コンパクトの類似)。射影的な射は固有で、A1 は固有でない。付値判定法は「曲線の極限がただ一つ存在する」と読める。
- 平坦性はファイバーの連続的な変化を表し、平坦ならファイバーの次元は dimX−dimY で一定である。
演習問題
問題 5.1 ★ SpecFp2×SpecFpSpecFp2 は何点からなるか。
解答
Fp2=Fp[x]/(g)(g は 2 次の既約多項式)と書くと、Fp2⊗FpFp2≅Fp2[x]/(g)。g は Fp2 で相異なる 2 根 α,αp をもつ(有限体は完全体)ので、中国剰余定理より ≅Fp2×Fp2。よって 2 点からなる。一般に有限次ガロア拡大 L/K で L⊗KL≅L[L:K] である。
問題 5.2 ★★ SpecZ[2]→SpecZ の各素数 p 上のファイバーを決定せよ。
解答
ファイバーは SpecFp[x]/(x2−2)。p=2 では x2 なので、1 点の被約でないスキーム(分岐)。p が奇素数のとき、2 が p を法とする平方剰余なら x2−2 は相異なる 2 根をもち 2 点(分解)、そうでなければ既約で SpecFp2 の 1 点(惰性)である。平方剰余の相互法則の第 2 補充法則(04-algebra 第1章)より、分解するのは p≡±1(mod8)、惰性なのは p≡±3(mod8) のときである。
問題 5.3 ★★ X=Speck[x,y]/(x2,xy) について、(1) X は既約だが被約でないこと、(2) Xred=Speck[y]、(3) 原点以外の点では局所環が被約であることを示せ。
解答
A=k[x,y]/(x2,xy) とおく。x2=0 より x は冪零で、x=0(x∈/(x2,xy))なので被約でない。nil(A)∋x で A/(x)=k[y] は整域なので nil(A)=(x)、Xred=Speck[y]。位相空間は Xred と同じなので既約である。点 p が原点 (x,y) でなければ y∈/p である(p∋x なので p は k[y] の素イデアルに対応し、y を含むのは原点だけ)。このとき Ap で y は単元なので、xy=0 から x=0、Ap=k[y]p は被約。原点では x=0 なので被約でない。原点が「埋め込まれた点」である。
問題 5.4 ★★ 有限射 f:SpecB→SpecA は閉写像であることを示せ。
解答
閉集合 V(J)⊂SpecB の像が V(φ−1(J))(φ:A→B)に一致することを示す。q⊃J なら φ−1(q)⊃φ−1(J) なので像は V(φ−1(J)) に含まれる。逆に A′=A/φ−1(J)→B′=B/J は単射で、B′ は A′ 上有限生成加群なので整拡大である。整拡大の上昇定理(lying over、13-commutative-algebra 第4章)より、A′ の任意の素イデアルの上に B′ の素イデアルがある。すなわち V(φ−1(J)) の任意の点は V(J) の点の像である。
問題 5.5 ★★ 素数 p について、AZ1=SpecZ[x]→SpecZ による閉集合 V(px−1) の像を求め、この射が固有でないことを示せ。
解答
Z[x]/(px−1)≅Z[1/p] なので V(px−1)≅SpecZ[1/p] で、その像は p を含まない素イデアル全体 D(p)=SpecZ∖{(p)} である。これは (0) を含み (p) を含まないので閉でない((0) の閉包は全体)。よって射は閉写像でなく、固有でない。直観的には、点 x=1/p は p を法とする還元で「無限遠に逃げる」。
問題 5.6 ★★★ 平面 Ak2 の 2 つのコピーを A2∖{0} に沿って恒等写像で貼り合わせたスキーム Y(原点が 2 つある平面)が分離的でないことを、命題 5.16(2) を使わずに示せ。
解答
例 5.15 と同様に考える。Y=U1∪U2, Ui≅A2=Speck[x,y] とし、U1×kU2=Speck[x,y,x′,y′] とする。Δ−1(U1×U2)=U1∩U2=A2∖{0} の Δ による像は、対角線 V(x−x′,y−y′)≅A2 から原点を除いたものである。これは U1×U2 で閉でない(原点はその閉包に属する)。Δ(Y)∩(U1×U2) がこの集合なので、Δ(Y) は閉でなく、Y は分離的でない。なお U1∩U2 はアフィンでない(問題 4.3)ので、命題 5.16(2) からもわかる。