この章の目標
- 前層・層・茎を定義し、連続関数・正則関数・定数層・摩天楼層の例で確かめられる
- 層の射の単射・全射・同型が茎で判定できることを証明できる
- 層化を構成してその普遍性を証明し、大域切断関手が右完全でない例を挙げられる
- 順像と逆像の随伴を証明し、多様体を局所環付き空間として捉えられる
前提:第1章、第2章、03-topology 第2章、12-category-homological-algebra 第3章(随伴関手)。例で 05-complex-analysis 第3章 を使う。
3.1 動機:局所的なデータとその貼り合わせ
アフィン直線 A1 と尖点曲線 C′=V(y2−x3) は、位相空間としては区別できない。どちらも濃度 ∣k∣ の集合に補有限位相を入れたもので、t↦(t2,t3) は同相写像である。両者を区別するのは「どの関数が正則か」という情報であった(例 1.23)。そして正則関数は各点の近くの条件で定義される(定義 1.17)。
一方、局所的に存在するものが大域的に存在するとは限らない。C∖{0} の各点の近くには z の対数の分枝があるが、全体で定義された対数は存在しない。
層 (sheaf) は、「各開集合の上の関数(のようなもの)」と「それを小さい開集合に制限する操作」と「局所的なデータの貼り合わせ」を公理化したものである。局所から大域へ移るときの障害を測るのが層のコホモロジー(第7章)である。
3.2 前層と層
定義 3.1(前層, presheaf)位相空間 X 上のアーベル群の前層 F とは、各開集合 U にアーベル群 F(U) を、開集合の包含 V⊂U に準同型 ρUV:F(U)→F(V) を対応させ、ρUU=id, ρVW∘ρUV=ρUW(W⊂V⊂U)を満たすものである。F(U) の元を U 上の切断 (section) といい、ρUV(s) を s∣V と書く。F(U) を Γ(U,F) とも書く。
開集合を対象、包含を射とする圏を Open(X) とすれば、前層は反変関手 Open(X)op→Ab にほかならない。集合・環などの前層も同様に定める。
定義 3.2(層, sheaf)前層 F が層であるとは、任意の開集合 U と開被覆 U=⋃iUi について次が成り立つことをいう。
- (S1)(局所性)s∈F(U) がすべての i で s∣Ui=0 を満たせば s=0。
- (S2)(貼り合わせ)si∈F(Ui) がすべての i,j で si∣Ui∩Uj=sj∣Ui∩Uj を満たせば、s∣Ui=si となる s∈F(U) が存在する。
(S1)(S2) は、列 0→F(U)→∏iF(Ui)→∏i,jF(Ui∩Uj)(2 番目の写像は (si)↦(si∣Ui∩Uj−sj∣Ui∩Uj))が完全であることと同値である。空集合の空な被覆を考えると F(∅)=0 となる。
例 3.3(層の例)(1) 位相空間 X 上の実数値連続関数の全体 CX(U)。連続性は局所的な性質で、一致する関数は貼り合わさる。(2) 同様に、多様体上の滑らかな関数の層 CM∞、C の開集合上の正則関数の層 O、代数多様体 X 上の正則関数の層 OX(定義 1.17・2.6 は局所的な条件である)。(3) 定数層 (constant sheaf) A:A(U) は局所定数関数 U→A の全体。U が連結なら A(U)=A、U=U1⊔U2(開集合の非交和)なら A×A。(4) 摩天楼層 (skyscraper sheaf) ip∗A:p∈U なら A、そうでなければ 0。(5) 連続写像 π:E→X の連続な切断 s:U→E(π∘s=idU)の全体(集合の層)。
例 3.4(層でない前層)(1) R 上の有界連続関数の前層:関数 x は各区間 (n−1,n+1) 上では有界だが、貼り合わせた R 上の関数は有界でなく、(S2) が成り立たない。(2) A=0 に対し U↦A(すべての制限は恒等写像)とする定数前層:F(∅)=A=0 であり、交わらない開集合 U1,U2 上の異なる元 a,b は貼り合わさらない。
3.3 茎と芽
定義 3.5(茎, stalk)前層 F と p∈X に対し、p の開近傍 U と s∈F(U) の組 (U,s) に、「p のある開近傍 W⊂U∩V で s∣W=t∣W」で同値関係を入れた商を Fp=limU∋pF(U) と書き、p における茎という。(U,s) の類を s の p における芽 (germ) といい sp と書く。
例 3.6 (1) C 上の正則関数の層の茎 Oa は、z−a の収束べき級数環である(一致の定理により芽はテイラー展開で決まる)。(2) 代数多様体 X では OX,p≅A(X)mp(定理 1.18)。(3) 摩天楼層 ip∗A の茎は、q∈{p} なら A、そうでなければ 0 である。実際 q∈{p} なら q の任意の開近傍は p を含み、そうでなければ p を含まない q の開近傍がある。X がハウスドルフ(あるいは 1 点が閉)なら茎は p でだけ A だが、第4章で扱う Spec のように閉でない点をもつ空間では、その閉包全体で茎が A になる。
命題 3.7 F を層とする。s∈F(U) がすべての p∈U で sp=0 を満たせば s=0。
証明. 各 p に開近傍 Wp⊂U があって s∣Wp=0。U=⋃pWp なので (S1) より s=0。□
3.4 層の射と茎による判定
定義 3.8(層の射)前層の射 φ:F→G とは、準同型の族 φU:F(U)→G(U) で制限と可換なもの(関手の間の自然変換)である。射は茎の準同型 φp:Fp→Gp を引き起こす。層の射 φ が
- 単射 (injective) であるとは、すべての φU が単射であることをいう。
- 全射 (surjective) であるとは、任意の t∈G(U) と p∈U に対し、p の開近傍 W⊂U と s∈F(W) があって φ(s)=t∣W となること(局所的に持ち上がること)をいう。
核 U↦kerφU は層である(問題 3.1)が、像 U↦imφU は一般に層でない(例 3.10)。全射の定義で各 φU の全射性を要求しないのはこのためである。
定理 3.9 φ:F→G を層の射とする。
(1) φ が単射 ⇔ すべての p で φp が単射。
(2) φ が全射 ⇔ すべての p で φp が全射。
(3) すべての φU が同型 ⇔ すべての p で φp が同型 ⇔ φ は単射かつ全射。
証明. (1) (⇒) φp(sp)=0 なら p の近傍 W で φ(s)∣W=φ(s∣W)=0、単射性から s∣W=0 で sp=0。(⇐) φ(s)=0 なら各 p で φp(sp)=0 より sp=0、命題 3.7 より s=0。
(2) (⇒) 定義から直ちに従う。(⇐) t∈G(U), p∈U とする。tp=φp(σ) となる芽 σ を s∈F(V) で代表させると、φ(s)p=tp なので、p の近傍 W⊂U∩V で φ(s∣W)=t∣W。
(3) 第 1 の条件から第 2 の条件は明らかで、第 2 の条件から第 3 の条件は (1)(2) による。第 3 から第 1 を示す。(1) より各 φU は単射。t∈G(U) に対し、全射性から開被覆 U=⋃Ui と si∈F(Ui) で φ(si)=t∣Ui となるものがある。Ui∩Uj 上で φ(si−sj)=0 なので、単射性から si と sj は一致し、(S2) で s∈F(U) に貼り合わさる。φ(s) と t は各 Ui 上で一致するので (S1) より φ(s)=t。□
例 3.10(指数関数)X=C∖{0} 上で、正則関数の加法群の層 O から、至るところ 0 でない正則関数の乗法群の層 O× への射 e(f)=exp(2πif) を考える。円板上では対数の分枝がとれるので e は全射(すべての茎で全射)である。しかし e:O(X)→O×(X) は全射でない:exp(2πig)=z となる g∈O(X) があれば 2πi g′=1/z となり、単位円に沿った積分で 0=∮2πig′ dz=∮dz/z=2πi という矛盾が生じる。関数 z は局所的には像に属するが大域的には属さず、像の前層は (S2) を満たさない。
3.5 層化
定理 3.11(層化, sheafification)前層 F に対し、層 F+ と前層の射 θ:F→F+ で次を満たすものが存在する。
(a) すべての p で θp:Fp→Fp+ は同型。
(b) 任意の層 G と前層の射 φ:F→G に対し、φ=ψ∘θ となる層の射 ψ:F+→G がただ一つ存在する。
証明. 構成:F+(U) を、写像 s:U→⨆p∈UFp で s(p)∈Fp かつ次を満たすものの全体とする:各 p∈U に開近傍 W⊂U と t∈F(W) があって、すべての q∈W で s(q)=tq。制限は写像の制限、θ(t)=(p↦tp) とする。条件が局所的なので F+ は層である(写像は局所的に一致すれば一致し、局所的に定義されていれば貼り合わさる)。
(a) 全射:Fp+ の元を代表する s は p の近傍 W 上で θ(t) に一致するので、その芽は θp(tp)。単射:θ(t)p=0 なら p の近傍で θ(t)=0、特に tp=θ(t)(p)=0。
(b) 一意性:ψ1,ψ2 が条件を満たせば、茎で ψi,p∘θp=φp で θp は同型なので ψ1,p=ψ2,p。よって ψ1(s) と ψ2(s) の芽はすべて一致し、命題 3.7 より ψ1=ψ2。存在:s∈F+(U) に対し、開被覆 U=⋃Wi と ti∈F(Wi) で s∣Wi=θ(ti) となるものをとる。φ(ti)∈G(Wi) の q∈Wi∩Wj での芽は φq(s(q)) で、i によらない。命題 3.7 より φ(ti) と φ(tj) は Wi∩Wj 上一致するので、G(U) の元に貼り合わさる。これを ψ(s) とすれば、被覆のとり方によらず(芽が φq(s(q)) で決まるため)、ψ は層の射で ψ∘θ=φ を満たす。□
F+ を F の層化という。定数前層の層化は定数層である。層の射 φ:F→G の像の前層の層化を像層 imφ という。茎は imφp⊂Gp なので、定理 3.9(1) より imφ は G の部分層であり、φ が全射 ⇔imφ=G である。同様に余核の前層の層化を余核層とする。こうして X 上のアーベル群の層の全体はアーベル圏 Ab(X) をなす(12-category-homological-algebra 第4章)。
3.6 層の完全列と大域切断
定義 3.12(完全列)層の射の列 F′αFβF′′ が F で完全であるとは、kerβ=imα(部分層として)となることをいう。茎は核・像と可換なので、これはすべての p で茎の列 Fp′→Fp→Fp′′ が完全であることと同値である。
命題 3.13(大域切断の左完全性)層の完全列 0→F′αFβF′′ に対し、任意の開集合 U で 0→F′(U)→F(U)→F′′(U) は完全である。
証明. αU の単射性は定理 3.9(1) による。β∘α は茎で 0 なので命題 3.7 より 0 である。s∈F(U), β(s)=0 とする。各 p で sp∈kerβp=imαp なので、定理 3.9(2) の証明と同様に、開被覆 U=⋃Wi と ti∈F′(Wi) で α(ti)=s∣Wi となるものがとれる。α(ti−tj)=0 と単射性から ti たちは貼り合わさって t∈F′(U) となり、(S1) より α(t)=s。□
層の全射 F→F′′ から大域切断の全射は従わない。つまり関手 Γ(X,−) は右完全でない。
例 3.14 (1) 例 3.10 の e の核は、局所定数関数で値が整数のもの、すなわち定数層 Z なので、層の完全列
0→Z→OeO×→0
(指数関数列)を得るが、X=C∖{0} 上の大域切断では右端が全射でない。
(2)(代数的な例)X=P1 と相異なる 2 点 p,q に対し、OX→ip∗k⊕iq∗k, f↦(f(p),f(q)) を考える。p での茎の写像は評価写像 OX,p→k で全射、q でも同様、他の点 r では右辺の茎が 0 である(1 点は閉集合)。よってこれは層の全射だが、大域切断は O(P1)=k(命題 2.8)から k2 への c↦(c,c) で、全射でない。「p と q で値を指定した大域的な関数」が存在しないのである。この障害は第7章で H1 として測られる。
3.7 順像・逆像と随伴
定義 3.15(順像と逆像)f:X→Y を連続写像とする。
- X 上の層 F の順像 (direct image) f∗F を (f∗F)(V)=F(f−1(V)) で定める(Y 上の層)。
- Y 上の層 G の逆像 (inverse image) f−1G を、前層 fpG:U↦limV⊃f(U)G(V) の層化で定める。
例 f:X→{pt} なら f∗F=Γ(X,F)。i:{p}→X なら i−1G=Gp で、i∗A は摩天楼層。開集合の包含 j:U→X なら j−1G=G∣U(制限)。茎については (f−1G)x=Gf(x) が成り立つ(問題 3.5)。
定理 3.16(随伴)f:X→Y を連続写像とする。X 上の層 F と Y 上の層 G について、自然な全単射
HomX(f−1G,F)≅HomY(G,f∗F)
が存在する。すなわち f−1 は f∗ の左随伴である。
証明. 定理 3.11(b) より左辺は前層の射 fpG→F の全体に等しい。帰納極限の普遍性から、そのような射 α は、U⊂f−1(V) を満たす開集合の組 (U,V) ごとの準同型 αU,V:G(V)→F(U) で、U の縮小と V の縮小の両方について制限と両立するものと同じである。右辺の元 β は、制限と両立する準同型 βV:G(V)→F(f−1V) の族である。β に対し αU,V=(制限 F(f−1V)→F(U))∘βV とおき、α に対し βV=αf−1V,V とおく。α の U についての両立性から αU,V は αf−1V,V の制限に等しいので、二つの対応は互いに逆である。自然性は構成から明らかである。□
随伴の一般論から、f∗ は極限を保ち左完全であり、f−1 は茎の計算から完全である。
3.8 環付き空間と局所環付き空間
多様体を「位相空間と正則関数の層の組」として捉え直す。
定義 3.17(局所環付き空間, locally ringed space)位相空間 X と X 上の環の層 OX の組 (X,OX) を環付き空間という。環付き空間の射 (f,f♯):(X,OX)→(Y,OY) は、連続写像 f と環の層の射 f♯:OY→f∗OX の組である。f♯ は茎の準同型 fx♯:OY,f(x)→OX,x を引き起こす。すべての茎が局所環である環付き空間を局所環付き空間といい、その射としては、各 fx♯ が局所準同型((fx♯)−1(mx)=mf(x))であるものだけを考える。
局所性の意味は「f(x) で 0 になる関数の引き戻しは x で 0 になる」である。
例 3.18 (1) 滑らかな多様体 (M,CM∞) や代数多様体 (X,OX) は局所環付き空間であり、茎の極大イデアルはその点で 0 になる関数の芽の全体である。(2) 1 点に環 Z(p) をのせた空間 Y と、1 点に Q をのせた空間 X の間で、包含 Z(p)→Q は環付き空間の射 X→Y を定めるが、極大イデアルの元 p が単元に写るので局所環付き空間の射ではない。
命題 3.19 X,Y を k 上の多様体とする。
(1) 多様体の射 φ:X→Y は、φ♯(g)=g∘φ によって局所環付き空間の射を定める。
(2) 逆に、局所環付き空間の射 (f,f♯):(X,OX)→(Y,OY) で f♯ が k 線形なものは、つねに f♯(g)=g∘f を満たし、f は多様体の射である。
証明. (1) g∘φ が x で 0 になることと g が φ(x) で 0 になることは同値なので、φx♯ は局所準同型である。(2) g∈OY,f(x) に対し g−g(f(x))∈mf(x) である。fx♯ は k 線形な局所準同型なので fx♯(g)−g(f(x))∈mx、すなわち f♯(g)(x)=g(f(x))。正則関数は値で決まるので f♯(g)=g∘f であり、f は正則関数を正則関数に引き戻す連続写像、すなわち多様体の射である(定義 2.6)。□
こうして k 上の多様体は「アフィン多様体 (X,OX) に局所的に同型な局所環付き空間」とみなせ、射は局所環付き空間の射と一致する。アフィン多様体を任意の環 A の SpecA に置き換えたものが次章のスキームである。
まとめ
- 前層は開集合の圏上の反変関手、層は局所性 (S1) と貼り合わせ (S2) を満たす前層である。
- 茎 Fp は p の近くの切断の芽の全体。層の切断は芽で決まる。
- 層の射の単射・全射・同型は茎で判定できる。全射は「局所的に持ち上がる」ことで、各開集合上の全射ではない。
- 層化 F+ は茎を変えずに前層を層にする普遍的な構成で、像層・余核層を与える。
- Γ(U,−) は左完全だが右完全でない(指数関数列、P1 上の 2 点での評価)。
- 逆像 f−1 は順像 f∗ の左随伴。
- 多様体は局所環付き空間であり、射は局所環付き空間の射と一致する。
演習問題
問題 3.1 ★ 層の射 φ:F→G の核の前層 U↦kerφU は層であることを示せ。
解答
(S1) は F の (S1) から従う。(S2):si∈kerφUi が共通部分で一致すれば、F の (S2) で s∈F(U) に貼り合わさる。φ(s)∣Ui=φ(si)=0 なので、G の (S1) より φ(s)=0、すなわち s∈kerφU。
問題 3.2 ★ X={s,η} に開集合 ∅,{η},X を与えた空間(第4章で見るように離散付値環の Spec である)を考える。X 上の層は準同型 F(X)→F({η}) と同じものであることを示し、茎 Fs,Fη を求めよ。また摩天楼層 iη∗A の茎を求めよ。
解答
空でない開集合は {η}⊂X だけで、自明でない開被覆は X=X∪{η} などしかなく、(S1)(S2) は自動的に成り立つ(F(∅)=0 とすればよい)。よって層は制限写像 F(X)→F({η}) で決まり、任意の準同型が層を与える。s の最小の開近傍は X、η の最小の開近傍は {η} なので Fs=F(X), Fη=F({η})。iη∗A は X と {η} の両方で A なので、茎は両点で A である(s∈{η}=X)。
問題 3.3 ★★ 茎がすべて 0 だが 0 でない前層の例を挙げ、定理 3.9(3) が前層では成り立たないことを示せ。
解答
X={a,b} を離散空間とし、F(X)=Z, F({a})=F({b})=F(∅)=0 とする(制限はすべて 0 写像)。a の最小の開近傍は {a} なので Fa=0、同様に Fb=0。よって射 0→F は茎で同型だが、X 上で同型でない。F は (S1) を満たさない(1∈F(X) は被覆 {a},{b} への制限が 0)。
問題 3.4 ★★ S1=R/Z 上で、実数値連続関数の層 CR から S1 値連続写像の層 CS1 への射 f↦(fmodZ) を考える。層の完全列 0→Z→CR→CS1→0 を示し、大域切断では全射でないことを示せ。
解答
R→R/Z は被覆写像なので、S1 値連続写像は十分小さい区間(単連結)の上で実数値に持ち上がる(09-algebraic-topology 第3章)。よって全射。核は Z 値の連続関数、すなわち局所定数関数なので Z。大域切断:恒等写像 id:S1→S1 が連続関数 f:S1→R の像なら、R→S1 と合成して id が R を経由し、基本群 π1(S1)≅Z 上で恒等写像が 0 写像を経由することになり矛盾する。よって全射でない。
問題 3.5 ★★ 連続写像 f:X→Y と Y 上の層 G について (f−1G)x≅Gf(x) を示し、f−1 が完全関手であることを導け。
解答
層化は茎を変えないので、(fpG)x=limU∋xlimV⊃f(U)G(V) を計算すればよい。これは f(x)∈V かつ x∈U⊂f−1(V) となる組 (U,V) 上の帰納極限で、各 V∋f(x) に対し U=f−1(V) がとれるので、V だけの帰納極限 limV∋f(x)G(V)=Gf(x) に等しい(共終性)。完全性は茎で判定でき(定義 3.12)、f−1 を施した列の x での茎はもとの列の f(x) での茎なので、完全列は完全列に写る。
問題 3.6 ★★★ 前層 F に対し E=⨆p∈XFp とおき、π:E→X を自然な射影とする。s∈F(U) ごとの集合 {sp∣p∈U} を開基とする位相を E に入れる(エタール空間)。π の連続な切断の層が F+ に一致することを示せ。
解答
ヒント. まず与えられた集合族が開基の条件を満たすこと(二つの基本開集合の共通部分に属する σ が sp=tp を満たせば、p の近傍 W で s∣W=t∣W となり {sq∣q∈W} が σ を含む共通部分内の基本開集合になる)と、π が局所同相であることを確かめる。次に写像 σ:U→E(σ(p)∈Fp)が連続であることと、定理 3.11 の証明の条件「各点の近くで t∈F(W) の芽の族に一致する」が同値であることを示す。(⇐) W 上で σ=(q↦tq) なら、基本開集合の逆像は {q∣tq=sq} で開集合。(⇒) σ(p)=tp となる t をとると、基本開集合 {tq} の逆像は p を含む開集合 W で、W 上 σ(q)=tq。以上より連続な切断の全体は F+(U) と一致する。