この章の目標
- 位相(開集合系)の公理を距離空間の性質の抽象化として理解し、各公理が必要な理由を説明できる
- 離散位相・密着位相・補有限位相・順序位相・ゾルゲンフライ直線・ザリスキー位相などの例を扱える
- 閉集合・近傍・内部・閉包・集積点・稠密性を位相空間で扱える
- 開基の判定条件を証明し、開基・準開基から位相を作れる
- 連続写像・同相写像を定義し、同相でない空間を「位相的性質」で区別できる
前提:第1章
2.1 位相の公理
第1章で見たことをまとめよう。距離空間の開集合全体 O は
- (O1) ∅,X∈O、(O2) 有限個の共通部分で閉じる、(O3) 任意個の和集合で閉じる
という性質をもっていた(定理 1.14)。そして
- 点列の収束は「a を含む任意の開集合に、ある番号以降の xn がすべて入る」と言い換えられ(命題 1.22)、
- 写像の連続性は「開集合の逆像が開集合」と言い換えられ(定理 1.27)、
- 閉包は「A を含む最小の閉集合」、内部は「A に含まれる最大の開集合」であった(命題 1.19)。
どれも開集合の族だけで述べられていて、距離の値そのものは使っていない。実際 Rn の d1,d2,d∞ は値が違うのに同じ開集合を定め、収束も連続性も同じになる。つまり「近さ」の本質は開集合の族にある。
さらに、距離からは自然に作れない「近さ」も数学には現れる。
- 関数列の各点収束。関数全体に「各点収束をちょうど表す」距離を入れることはできない(第4章)。
- 円周を線分の両端の貼り合わせとして作るような構成(第3章)。
- 代数幾何学で多項式の零点集合を閉集合とするザリスキー位相(例 2.9)。
そこで (O1)〜(O3) そのものを公理として採用する。
定義 2.1(位相空間, topological space)X を集合とする。X の部分集合の族 O⊂P(X) が
- (O1) ∅∈O かつ X∈O
- (O2) U,V∈O ならば U∩V∈O
- (O3) Uλ∈O(λ∈Λ、Λ は任意の添字集合)ならば ⋃λ∈ΛUλ∈O
をみたすとき、O を X 上の位相 (topology) または開集合系といい、O の元を開集合 (open set) という。組 (X,O) を位相空間という。
(O2) を繰り返し使えば、有限個の開集合の共通部分も開集合である。
例 2.2(距離位相)距離空間 (X,d) の開集合全体は位相である(定理 1.14)。これを d の定める距離位相という。位相的に同値な距離は同じ位相を定める。位相空間 (X,O) に対し、O がある距離の距離位相になっているとき、(X,O) は距離化可能 (metrizable) であるという。
- (O3) が任意個の和集合なのは、「開集合であること」を局所的な性質にするためである。すなわち「各点のまわりに、その集合に含まれる開集合がある」ならその集合は開集合である(命題 2.13)。また、A に含まれる開集合をすべて合併すれば「A に含まれる最大の開集合」=内部が得られる。
- (O2) が有限個の共通部分に限られるのは、無限個を許すと距離空間の位相すら公理をみたさないからである。⋂n(−1/n,1/n)={0}(例 1.15)。しかも距離空間では 1 点集合 {a} が開球 B(a,1/n) の共通部分なので、無限個の共通部分で閉じることを要求すると、距離空間はすべて「すべての部分集合が開」な空間になってしまい、連続性や収束の議論が意味を失う。
- (O1) は、∅ を空な族の和集合、X を空な族の共通部分とみなす約束を明示したものである。
2.2 位相の例
例 2.4(離散位相, discrete topology)O=P(X)(すべての部分集合が開)。離散距離の距離位相である。
例 2.5(密着位相, indiscrete topology)O={∅,X}。X が 2 点以上をもつなら距離化可能でない。実際、距離空間で a=b なら B(a,d(a,b)) は a を含み b を含まない開集合だが、密着位相にそのような開集合はない。
例 2.6(有限集合上の位相)X={a,b} 上の位相はちょうど 4 つある:{∅,X}、{∅,{a},X}、{∅,{b},X}、P(X)。2 番目(と 3 番目)をシェルピンスキー空間 (Sierpiński space) という。{∅,{a},{b}} は X を含まないので位相でない。X={a,b,c} 上の {∅,{a},{b},X} は {a}∪{b} を含まないので (O3) に反する。
例 2.7(補有限位相, cofinite topology)X を無限集合とし
Ocf={∅}∪{U⊂X∣X∖U は有限集合}
とおく。(O1) X∖X=∅ は有限。(O2) U,V がともに空でなければ X∖(U∩V)=(X∖U)∪(X∖V) は有限;一方が空なら U∩V=∅。(O3) 空でない Uμ が一つでもあれば X∖⋃Uλ⊂X∖Uμ は有限;すべて空なら和集合も空。よって位相である。閉集合は有限集合と X である。この位相には次の著しい性質がある。
- 空でない 2 つの開集合は必ず交わる。 X∖(U∩V) は有限なので X(無限集合)と一致しえず、U∩V=∅。
- 互いに異なる点からなる点列は、すべての点に収束する(収束の定義は定義 2.23)。a を含む開集合 U の補集合は有限なので、xn∈/U となる n は有限個しかない。
特に、極限がただ一つとは限らない。距離空間ではありえない現象である。
例 2.8(可算補位相, cocountable topology)X を非可算集合とし、∅ と「補集合が高々可算な集合」を開集合とする。補有限位相と同じ議論で位相になる。点列の議論が位相を捉えきれない例として第4章で使う。
例 2.9(ザリスキー位相の予告, Zariski topology)K を体とし、n 変数多項式環 K[x1,…,xn] の部分集合 S に対して、共通零点集合
V(S)={a∈Kn∣すべての f∈S について f(a)=0}
を考える。次が成り立つ:V({1})=∅、V({0})=Kn、⋂λV(Sλ)=V(⋃λSλ)、そして ST={fg∣f∈S,g∈T} とおくと V(S)∪V(T)=V(ST)。最後の等式の ⊂ は明らか。⊃ は、a∈/V(S)∪V(T) なら f(a)=0 となる f∈S と g(a)=0 となる g∈T があり、K は体なので (fg)(a)=f(a)g(a)=0、したがって a∈/V(ST) となることからわかる。よって V(S) の形の集合は閉集合の公理(命題 2.11)をみたし、その補集合全体が位相になる。これをザリスキー位相という。
n=1 のとき、0 でない多項式の根は有限個なので V(S) は有限集合か K 全体であり、逆に有限集合 {a1,…,am}=V({(x−a1)⋯(x−am)}) である。したがって K が無限体なら、K 上のザリスキー位相は補有限位相と一致する。n≥2 では(K が無限体のとき)、直線 V({x1}) のような Kn 全体でない無限の閉集合があるので補有限位相ではない。ザリスキー位相は代数幾何学 第1章の主役であり、可換環論 第2章では環の素イデアル全体にも同様の位相を入れる。
2.3 閉集合と近傍
定義 2.10(閉集合, closed set)位相空間 X の部分集合 F は、X∖F が開集合であるとき閉集合であるという。
命題 2.11 閉集合全体 F は次をみたす。(C1) ∅,X∈F;(C2) F1,F2∈F なら F1∪F2∈F;(C3) 任意個の Fλ∈F について ⋂Fλ∈F。逆に、P(X) の部分族 F が (C1)〜(C3) をみたせば、{X∖F∣F∈F} は閉集合全体がちょうど F となる位相である。
証明. ド・モルガンの法則 X∖⋃Uλ=⋂(X∖Uλ), X∖(U∩V)=(X∖U)∪(X∖V) により (O1)〜(O3) と (C1)〜(C3) は互いに翻訳される。□
定義 2.12(近傍, neighborhood)x∈X とする。N⊂X が x の近傍であるとは、x∈U⊂N となる開集合 U が存在することをいう。x の近傍全体を N(x) と書き、x の近傍系という。開集合である近傍を開近傍という。
本によっては近傍を開集合に限る流儀もあるが、本教材では開でなくてもよいとする。
命題 2.13 U⊂X が開集合であるための必要十分条件は、U がその各点の近傍であることである。
証明. 開集合 U は各点 x∈U について x∈U⊂U なので近傍。逆に、各 x∈U について x∈Ux⊂U となる開集合 Ux があれば U=⋃x∈UUx で、(O3) より開集合。□
命題 2.14(近傍系の性質)各 x∈X について次が成り立つ。
- (N1) N∈N(x) ならば x∈N。また X∈N(x)。
- (N2) N∈N(x), N⊂M ならば M∈N(x)。
- (N3) N,M∈N(x) ならば N∩M∈N(x)。
- (N4) N∈N(x) ならば、ある M∈N(x) が存在して、すべての y∈M について N∈N(y)。
証明. (N1)(N2) は定義から明らか。(N3) x∈U⊂N, x∈V⊂M(U,V 開)なら x∈U∩V⊂N∩M で U∩V は開。(N4) x∈U⊂N となる開集合 U を M とすれば、U の各点 y について y∈U⊂N なので N∈N(y)。□
逆に、各点に (N1)〜(N4) をみたす集合族を与えると、それをちょうど近傍系とする位相が一意に定まることが知られている(ここでは使わないので証明は省略する)。位相を「開集合」でなく「近傍」から定める流儀もあるということである。
定義 2.15(基本近傍系, neighborhood base)B(x)⊂N(x) が x の基本近傍系であるとは、x の任意の近傍 N に対して B⊂N となる B∈B(x) が存在することをいう。
距離空間では {B(x,1/n)∣n∈N} が可算個からなる基本近傍系である。離散空間では {{x}} が基本近傍系である。
2.4 内部・閉包・集積点・稠密性
定義 2.16 A⊂X とする。
- x が A の内点であるとは、A が x の近傍であることをいう。内点全体を内部 A∘ という。
- x が A の触点であるとは、x の任意の近傍が A と交わることをいう。触点全体を閉包 A という。
- ∂A=A∖A∘ を境界という。
命題 2.17 A⊂X について:
- A∘ は A に含まれる最大の開集合である。
- X∖A=(X∖A)∘。
- A は A を含む最小の閉集合である。
- x∈A ⇔ x を含む任意の開集合が A と交わる ⇔ x のある基本近傍系のすべての元が A と交わる。
証明. 1. x∈A∘ なら x∈Ux⊂A となる開集合 Ux があり、Ux の各点も A の内点なので Ux⊂A∘。よって A∘=⋃x∈A∘Ux は開。U⊂A が開なら U の各点は内点なので U⊂A∘。
-
x∈/A ⇔ A と交わらない x の近傍 N がある ⇔ X∖A が x の近傍((N2) による)⇔ x∈(X∖A)∘。
-
2 と 1 より A は開集合の補集合なので閉。F⊃A が閉なら X∖F は X∖A に含まれる開集合なので X∖F⊂(X∖A)∘=X∖A。
-
任意の近傍は x を含む開集合や基本近傍系の元を含み、逆にそれらは近傍であることから従う。□
例 2.18 無限集合 X 上の補有限位相では、A が有限なら A=A、A が無限なら A=X(A を含む閉集合は X しかない)。密着位相では A=∅ なら A=X、A=X なら A∘=∅。
定義 2.19(集積点, 孤立点)A⊂X とする。x∈X の任意の近傍が A∖{x} と交わるとき、x を A の集積点 (accumulation point) という。集積点全体を A′ と書き A の導集合という。x∈A に対し N∩A={x} となる近傍 N があるとき、x を A の孤立点 (isolated point) という。
命題 2.20 A=A∪A′。
証明. A∪A′⊂A は定義から明らか。x∈A∖A なら、x の任意の近傍は A=A∖{x} と交わるので x∈A′。□
例 2.21 R で A={1/n∣n∈N} なら A′={0} で、A の点はすべて孤立点である。Z′=∅、Q′=R。一方、2 点以上の密着空間で A={a} とすると、x=a の近傍は X しかなく A∖{x}={a} と交わるので、A′=X∖{a}。
定義 2.22(稠密, dense)A⊂X が A=X をみたすとき、A は X で稠密であるという。命題 2.17 の 4 より、これは「空でない任意の開集合が A と交わる」ことと同値である。
Q と R∖Q はともに R で稠密である。補有限位相では任意の無限部分集合が稠密であり、密着位相では空でない任意の部分集合が稠密である。離散位相で稠密なのは X 自身だけである。[0,1] 上の多項式関数全体が C[0,1] で(一様距離に関して)稠密であることは、第7章のワイエルシュトラスの近似定理の内容である。
定義 2.23(点列の収束)位相空間 X の点列 (xn) が a∈X に収束するとは、a の任意の近傍 N に対し、ある n0 が存在して n≥n0 ならば xn∈N となることをいう。
命題 1.22 により、距離空間ではこれは第1章の定義と一致する。
注意
位相空間では点列の極限は一つとは限らない。密着空間ではすべての点列がすべての点に収束し、補有限位相では異なる点からなる点列がすべての点に収束する(例 2.7)。極限の一意性はハウスドルフ性(第4章)で保証される。また、A の点列の極限は A に属するが、逆に A の点がすべて A の点列の極限になるとは限らない(第4章)。
2.5 開基と準開基
距離空間の開集合は、ちょうど開球の和集合として書ける集合である。開球のような「部品」を指定して位相を作る方法を整備しよう。
定義 2.24(開基, base)位相空間 (X,O) において、B⊂O が O の開基であるとは、すべての開集合が B の元の和集合として書けることをいう(空集合は空な族の和集合とみなす)。
命題 2.25 B⊂O が開基であるための必要十分条件は、任意の開集合 U と x∈U に対して x∈B⊂U となる B∈B が存在することである。
証明. (⇒) U=⋃Bλ と書けば、x はある Bλ に属する。(⇐) 条件より U=⋃{B∈B∣B⊂U}。□
例 2.26 距離空間では開球全体が開基である(開集合の定義そのもの)。Rn では、中心が有理点 q∈Qn で半径が正の有理数の開球全体が開基であり、これは可算個である。実際、x∈U(U 開)なら B(x,r)⊂U となる r があり、有理数 s を 0<s<r/2 となるようにとり、Qn の稠密性から d2(x,q)<s となる q∈Qn をとれば、x∈B(q,s)⊂B(x,2s)⊂U となる。
どのような集合族が何らかの位相の開基になれるかを判定する定理が次である。
定理 2.27(開基の判定条件)X を集合、B⊂P(X) とする。B を開基とする X 上の位相が存在するための必要十分条件は、次の 2 条件が成り立つことである。
- (B1) X=⋃B∈BB
- (B2) B1,B2∈B と x∈B1∩B2 に対して、x∈B3⊂B1∩B2 となる B3∈B が存在する。
このとき、その位相は OB={⋃C∣C⊂B}(B の部分族の和集合全体)として一意に定まる。
証明. (必要性)B が位相 O の開基なら、X∈O が B の元の和集合なので (B1)。B1∩B2∈O に命題 2.25 を適用すれば (B2)。
(一意性)B が O の開基なら、開集合はすべて B の元の和集合であり、逆に B⊂O の元の和集合は (O3) より開集合なので、O=OB。
(十分性)(B1)(B2) を仮定し、OB が位相であることを示す。(O1):∅ は空な族の和集合、X は (B1) より B 全体の和集合。(O3):和集合の和集合は B の元の和集合である。(O2):U=⋃C1, V=⋃C2 とし、x∈U∩V とする。x∈B1∈C1, x∈B2∈C2 となる B1,B2 があり、(B2) より x∈Bx⊂B1∩B2⊂U∩V となる Bx∈B がある。よって U∩V=⋃x∈U∩VBx∈OB。B⊂OB で、OB の元は定義により B の元の和集合なので、B は OB の開基である。□
例 2.28(ゾルゲンフライ直線, Sorgenfrey line)B={[a,b)∣a<b}(左閉右開区間全体)は (B1) をみたし、[a,b)∩[c,d)=[max(a,c),min(b,d)) は空か B の元なので (B2) もみたす。B を開基とする R 上の位相を下限位相といい、この位相空間をゾルゲンフライ直線 Rl と書く。
- 通常の開区間は (a,b)=⋃n>1/(b−a)[a+1/n,b) なので Rl で開であり、通常の位相の開集合はすべて Rl の開集合である。[0,1) は通常の位相では開でない。
- [a,b) は Rl で閉集合でもある:補集合 (−∞,a)∪[b,∞)=⋃n[a−n,a)∪⋃n[b,b+n) は開。
- Rl で xn→a ⇔ 任意の ε>0 についてある番号以降 a≤xn<a+ε。つまり右から近づく点列だけが収束する。1/n→0 だが、−1/n は Rl でどこにも収束しない(a に収束するなら、ある番号以降 a≤−1/n なので a<0 だが、ε=−a/2 とすると −1/n<a+ε=a/2<0 が番号以降ずっと成り立つことはない)。
ゾルゲンフライ直線は、分離公理・可算公理・連結性の反例として本科目で繰り返し登場する。
定義 2.29(準開基, subbase)位相空間 (X,O) において、S⊂O が準開基であるとは、S の元の有限個の共通部分全体(空な共通部分は X とみなす)が O の開基になることをいう。
命題 2.30 任意の集合族 S⊂P(X) に対して、S を準開基とする X 上の位相 O(S) がただ一つ存在する。O(S) は S を含む最小の位相であり、S が生成する位相という。
証明. B={S1∩⋯∩Sk∣k≥0,Si∈S}(k=0 は X)とおく。X∈B より (B1)、B の 2 元の共通部分はまた B の元なので (B2) が成り立つ。定理 2.27 より B を開基とする位相 O(S) が一意に存在し、S を準開基とする位相はこれに限る。S を含む任意の位相 O′ は (O1)(O2) より B を含み、(O3) よりその和集合を含むので O(S)⊂O′。□
例 2.31(順序位相, order topology)(X,<) を 2 元以上の全順序集合とし、(←,a)={x∣x<a}, (a,→)={x∣x>a} とおく。これら全体を準開基とする位相を順序位相という。開基は開区間 (a,b)、半直線、X からなる。
- R の通常の順序による順序位相は通常の位相である。
- N の順序位相は離散位相である:{1}=(←,2)、n≥2 なら {n}=(n−1,n+1)。
- N∪{∞}(∞ をすべての自然数より大きい元とする)の順序位相では、∞ の基本近傍系は (n,→)={n+1,n+2,…}∪{∞} である。この空間は R の部分空間 {1/n∣n∈N}∪{0} と「同じ形」をしており(同相、定義 2.38)、n→∞ は ∞ への収束と読める。
例 2.32 R2 で、開区間の積 (a,b)×(c,d) 全体はユークリッド位相の開基である。d∞ の開球 Bd∞(x,r) がこの形をしていて、d∞ と d2 は同じ位相を定めるからである。これは第3章の積位相の原型である。
位相を開基で与えたとき、2 つの位相の比較は次で行える。
命題 2.33(開基による位相の比較)B,B′ をそれぞれ X 上の位相 O,O′ の開基とする。O⊂O′ であるための必要十分条件は、任意の B∈B と x∈B に対して x∈B′⊂B となる B′∈B′ が存在することである。
証明. (⇒) B∈O⊂O′ に命題 2.25 を適用する。(⇐) 各 B∈B は、各点 x∈B に対して選んだ Bx′ の和集合 ⋃x∈BBx′ に等しいので O′ の元。O の元は B の元の和集合なので (O3) より O′ の元。□
2.6 連続写像
定義 2.34(連続写像)位相空間の間の写像 f:X→Y が連続であるとは、Y の任意の開集合 V について f−1(V) が X の開集合であることをいう。また f が点 x で連続であるとは、f(x) の任意の近傍 V について f−1(V) が x の近傍であること(すなわち f(U)⊂V となる x の近傍 U があること)をいう。
定理 1.27 により、距離空間ではどちらも第1章の定義と一致する。
定理 2.35(連続性の同値条件)f:X→Y を位相空間の間の写像とするとき、次は同値である。
- f は連続。
- Y の任意の閉集合 F について f−1(F) は閉集合。
- X の任意の部分集合 A について f(A)⊂f(A)。
- Y のある準開基 S(または開基)のすべての元 S について f−1(S) は開集合。
- f は X のすべての点で連続。
証明. 1 ⇔ 2:f−1(Y∖F)=X∖f−1(F) による。
2 ⇒ 3:f(A) は閉集合なので f−1(f(A)) は A を含む閉集合であり、閉包の最小性(命題 2.17)より A⊂f−1(f(A))。すなわち f(A)⊂f(A)。
3 ⇒ 2:F を閉集合、A=f−1(F) とすると f(A)⊂f(A)⊂F=F なので A⊂f−1(F)=A。よって A=A は閉。
1 ⇒ 4:準開基の元は開集合である。
4 ⇒ 1:Y の開集合 V は S の元の有限個の共通部分の和集合 V=⋃λ(Sλ,1∩⋯∩Sλ,kλ) と書ける。逆像は和集合と共通部分を保つので f−1(V)=⋃λ(f−1(Sλ,1)∩⋯∩f−1(Sλ,kλ)) は開集合。開基は準開基でもあるので開基の場合も含まれる。
1 ⇒ 5:V が f(x) の近傍なら f(x)∈W⊂V となる開集合 W があり、f−1(W) は x を含む開集合で f−1(V) に含まれる。
5 ⇒ 1:V を開集合とし x∈f−1(V) とする。V は f(x) の近傍なので f−1(V) は x の近傍。よって f−1(V) はその各点の近傍であり、命題 2.13 より開集合。□
命題 2.36 (1) 恒等写像と定数写像は連続である。(2) 連続写像の合成は連続である。(3) 連続写像 f について、xn→a ならば f(xn)→f(a)。
証明. (1)(2) は定義から直ちに従う(定数写像による開集合の逆像は ∅ か X)。(3) f(a) の近傍 V に対し f−1(V) は a の近傍なので、ある番号以降 xn∈f−1(V)、すなわち f(xn)∈V。□
(3) の逆(点列を保つ写像は連続か)は一般には成り立たない(第4章)。
例 2.37
- 離散空間からの写像、密着空間への写像はすべて連続である。
- 同じ集合上の 2 つの位相について、恒等写像 (X,O1)→(X,O2) が連続 ⇔ O2⊂O1。
- 恒等写像 Rl→R は連続だが、R→Rl は連続でない([0,1) の逆像が開でない)。
- 床関数 x↦⌊x⌋ は R→R としては連続でないが、Rl→R としては連続である。実際、任意の V⊂R について逆像は区間 [n,n+1) の和集合で、Rl で開である。一般に、f:Rl→R が連続 ⇔ f が各点で右連続(問題 2.4)。
- 多項式写像 f=(f1,…,fm):Kn→Km はザリスキー位相に関して連続である:閉集合 V(S) の逆像は V({g∘f∣g∈S}) で、g∘f は多項式だから閉集合である。
2.7 同相写像
定義 2.38(同相写像, homeomorphism)全単射 f:X→Y で、f と f−1 がともに連続なものを同相写像という。同相写像が存在するとき X と Y は同相 (homeomorphic) であるといい、X≅Y と書く。
同相写像 f は開集合と開集合を 1 対 1 に対応させる(U が開 ⇔ f(U) が開)。したがって、開集合だけで定義される性質はすべて同相写像で保たれる。そのような性質を位相的性質 (topological property) という。「孤立点をもつ」「交わらない空でない開集合の組がある」「稠密な可算部分集合をもつ」などは位相的性質であり、「有界である」は位相的性質ではない(次の例)。
例 2.39(同相の例)
(1) 開区間はすべて互いに同相であり、さらに R とも同相である。f(x)=x/(1−∣x∣) は (−1,1) から R への連続な全単射で、逆写像 g(y)=y/(1+∣y∣) も連続である(g(f(x))=x、f(g(y))=y は直接計算で確かめられる)。有界な (−1,1) と有界でない R が同相なので、有界性は位相的性質でない。同様に x↦x/(1−∥x∥) により、Rn の開球 B(0,1) は Rn と同相である。
(2)(立体射影, stereographic projection)N=(0,…,0,1)∈Sn とする。x∈Sn∖{N} に対し、N と x を通る直線が超平面 xn+1=0 と交わる点を σ(x) とすると、x=(x′,xn+1)(x′∈Rn)について σ(x)=x′/(1−xn+1) である。逆写像は
τ(y)=(∥y∥2+12y,∥y∥2+1∥y∥2−1)(y∈Rn)
で与えられる。実際 s=∥y∥2 とおくと ∥τ(y)∥2=(4s+(s−1)2)/(s+1)2=1 で、第 n+1 成分は 1 未満、1−(s−1)/(s+1)=2/(s+1) より σ(τ(y))=y。逆に x∈Sn∖{N}、y=σ(x) なら ∥x′∥2=1−xn+12 より s=(1+xn+1)/(1−xn+1) で、代入すれば τ(y)=x。σ,τ は分母が 0 にならない有理式で与えられるので連続であり、Sn∖{N}≅Rn である。「球面から 1 点を除くと平面に広げられる」ということである。
注意
連続な全単射が同相写像とは限らない。
- 2 点以上の集合 X で、恒等写像 (X,離散位相)→(X,密着位相) は連続な全単射だが、逆は連続でない。
- f:[0,2π)→S1, f(t)=(cost,sint) は連続な全単射だが、逆写像は点 (1,0) で連続でない。[0,π)=(−1,π)∩[0,2π) は [0,2π) の開集合(部分距離空間として)だが、その像は「y>0 の上半円に点 (1,0) を加えた集合」で、(1,0) のどんなに小さな近くにも y<0 の円周上の点(t が 2π に近いときの f(t))があるので S1 の開集合でない。点列で言えば、tn=2π−1/n は [0,2π) で収束しないのに f(tn)→(1,0)=f(0) となる。[0,2π) の点 0 は右側にしか隣人がいないが、円周上の (1,0) には両側に隣人がいる、という違いである。
例 2.40(同相でない空間の例)同相でないことを示すには、一方だけがもつ位相的性質を見つければよい。
- N と Q(ともに R の部分距離空間)はどちらも可算集合で全単射があるが、同相でない。N では {n}=B(n,1/2)∩N が開なのですべての点が孤立点であるが、Q のどの点の近傍も無限個の有理数を含むので Q には孤立点がない。同相写像 h は開集合 {x} を開集合 {h(x)} に写すので、孤立点の有無は位相的性質である。
- R(通常の位相)と R(補有限位相)は同相でない。前者には交わらない空でない開集合 (0,1),(2,3) があるが、後者にはない(例 2.7)。
- R と Rl は同相でない。Rl では [0,1) が空でも全体でもない開かつ閉な集合だが、R にはそのような集合がない(第6章で証明する)。問題 2.9 の方法(可算開基の有無)でも区別できる。
- [0,1] と (0,1) はコンパクト性(第5章)で、R と R2 は「1 点を除いたときの連結性」(第6章)で区別される。n=m のとき Rn≅Rm であることの証明には代数的位相幾何学の道具が要る(位相幾何学 第5章)。
第4〜6章で扱う分離性・可算性・コンパクト性・連結性は、このように空間を区別する位相不変量を与える。
2.8 位相の強弱
定義 2.41(位相の強弱)同じ集合 X 上の位相 O1,O2 が O1⊂O2 をみたすとき、O2 は O1 より強い(細かい, finer)、O1 は O2 より弱い(粗い, coarser)という。
注意
「強い・弱い」の使い方は本によって逆のことがある。本教材では開集合が多いほうを強いという。迷ったら「細かい(開集合が多い)・粗い(開集合が少ない)」と言い換えて確認するとよい。
位相が強いほど、
- その空間からの連続写像は増え、その空間への連続写像は減る(例 2.37 の 2)。
- 収束する点列は減る:強い位相で xn→a なら弱い位相でも xn→a(近傍が少ないので条件が弱い)。
離散位相が最も強く、密着位相が最も弱い。
例 2.42(R 上の位相の比較)
密着位相⊊補有限位相⊊通常の位相⊊下限位相(Rl)⊊離散位相
通常の位相で有限集合は閉なので補有限位相の開集合は通常の開集合であり、(0,1) は補有限位相で開でない。通常の位相 ⊊ 下限位相は例 2.28 で見た。{0} はどの [0,ε) も含まないので Rl で開でない。なお可算補位相(例 2.8)は通常の位相と比較できない:R∖Q は可算補位相で開だが通常の位相で開でなく、(0,1) はその逆である。
命題 2.43 X 上の位相の族 {Oλ} の共通部分 ⋂λOλ は X 上の位相である。
証明. (O1)〜(O3) の各条件は、各 Oλ で成り立つので共通部分でも成り立つ。□
S を含む位相全体(離散位相を含むので空でない)の共通部分は、S を含む最小の位相であり、命題 2.30 の O(S) と一致する。一方、2 つの位相の和集合は位相とは限らない:X={a,b,c} 上の {∅,{a},X} と {∅,{b},X} の和集合は {a,b} を含まない。
「与えられた写像をすべて連続にする最も弱い位相」という考え方は、積位相(第3章)や関数解析の弱位相(関数解析 第4章)の基礎になる。
まとめ
- 位相とは (O1) ∅,X を含み、(O2) 有限共通部分と (O3) 任意の和集合で閉じた部分集合族である。距離空間の開集合の性質を公理にしたもので、無限共通部分を要求しないことが本質的である。
- 補有限位相・密着位相のように、極限が一意でない「距離化できない」位相がある。ゾルゲンフライ直線やザリスキー位相も重要な例である。
- 近傍・内部・閉包・集積点・稠密性は開集合だけで定義され、第1章と同じ性質をもつ。
- 開基は定理 2.27 の条件 (B1)(B2) で特徴づけられ、任意の集合族は準開基として位相を生成する。
- 連続性は「開集合の逆像が開」で定義され、閉集合・閉包・準開基・各点の連続性で言い換えられる。
- 同相写像は開集合を 1 対 1 に対応させる全単射であり、連続な全単射でも同相とは限らない。空間を区別するには位相的性質を使う。
- 位相の強弱は開集合の包含関係で、強いほど連続写像の始域として有利で収束列は減る。
演習問題
問題 2.1 ★ X={a,b,c} 上の次の族のうち位相であるものはどれか。位相であるものについては {b} の閉包を求めよ。
(a) {∅,{a},{a,b},X} (b) {∅,{a},{b},{a,b},X} (c) {∅,{a,b},{b,c},X} (d) {∅,{a},{b,c},X}
解答
(a) 位相。閉集合は X,{b,c},{c},∅ なので {b}={b,c}。
(b) 位相。閉集合は X,{b,c},{a,c},{c},∅ なので {b}={b,c}。
(c) 位相でない。{a,b}∩{b,c}={b} を含まない。
(d) 位相。閉集合は X,{b,c},{a},∅ なので {b}={b,c}。
問題 2.2 ★ 無限集合 X に補有限位相を入れる。写像 f:X→X で、各点の逆像 f−1({y}) がすべて有限集合であるものは連続であることを示せ。また定数写像も連続であることを確かめよ。
解答
閉集合は有限集合と X なので、閉集合の逆像が閉であることを示せばよい(定理 2.35)。f−1(X)=X。有限集合 F について f−1(F)=⋃y∈Ff−1({y}) は有限集合の有限個の和なので有限、したがって閉。定数写像は命題 2.36 で連続。
問題 2.3 ★ ゾルゲンフライ直線 Rl で、(0,1)、A={1/n∣n∈N}、B={−1/n∣n∈N} の閉包を求めよ。
解答
Rl の位相は通常の位相より強いので、閉包は通常の閉包に含まれる。
- (0,1):通常の閉包は [0,1]。0 の基本近傍 [0,ε) は (0,1) と交わるので 0 は触点。1 の近傍 [1,2) は (0,1) と交わらないので触点でない。よって (0,1)=[0,1)。
- A:通常の閉包は A∪{0}。[0,ε) は A と交わるので A=A∪{0}。
- B:通常の閉包は B∪{0}。[0,1) は B と交わらないので B=B。
問題 2.4 ★★ f:R→R を関数とする。f が Rl から R(通常の位相)への写像として連続であるための必要十分条件は、f が各点 a で右連続(∀ε>0,∃δ>0,a≤x<a+δ⇒∣f(x)−f(a)∣<ε)であることを示せ。
解答
{[a,a+δ)∣δ>0} は Rl における a の基本近傍系、{(f(a)−ε,f(a)+ε)} は R における f(a) の基本近傍系である。a で連続 ⇔ f(a) の任意の近傍 V に対し f(U)⊂V となる a の近傍 U がある ⇔ 任意の ε に対し f([a,a+δ))⊂(f(a)−ε,f(a)+ε) となる δ がある ⇔ a で右連続。定理 2.35 の 1 ⇔ 5 より結論を得る。
問題 2.5 ★★ 写像 f:X→Y について、次が同値であることを示せ。(a) f は連続。(b) 任意の B⊂Y について f−1(B∘)⊂(f−1(B))∘。(c) 任意の B⊂Y について f−1(B)⊂f−1(B)。
解答
(a)⇒(b):f−1(B∘) は開集合で f−1(B) に含まれるので、内部の最大性より (f−1(B))∘ に含まれる。(b)⇒(a):V が開なら V∘=V なので f−1(V)⊂(f−1(V))∘⊂f−1(V)、よって f−1(V) は開。(b)⇔(c):(b) を Y∖B に適用して補集合をとると、X∖f−1((Y∖B)∘)=f−1(Y∖(Y∖B)∘)=f−1(B)、X∖(f−1(Y∖B))∘=X∖(X∖f−1(B))∘=f−1(B)(命題 2.17 の 2)なので、(b) の包含は (c) の包含と同値である。
問題 2.6 ★★ 写像 c:P(X)→P(X) が (K1) c(∅)=∅、(K2) A⊂c(A)、(K3) c(c(A))=c(A)、(K4) c(A∪B)=c(A)∪c(B) をみたすとする(クラトフスキーの閉包公理)。F={A∣c(A)=A} はある位相の閉集合全体であり、その位相での閉包が c と一致することを示せ。
解答
まず (K4) より A⊂B なら c(B)=c(A∪B)=c(A)∪c(B)⊃c(A)(単調性)。(C1):(K1) より ∅∈F、(K2) より X⊂c(X)⊂X で X∈F。(C2):(K4) より明らか。(C3):F=⋂Fλ(Fλ∈F)について、単調性から c(F)⊂c(Fλ)=Fλ がすべての λ で成り立つので c(F)⊂F。(K2) と合わせて c(F)=F。命題 2.11 より F を閉集合全体とする位相がある。その閉包を A とする。(K3) より c(A)∈F で、(K2) より A⊂c(A) なので A⊂c(A)。逆に A∈F は A を含むので単調性から c(A)⊂c(A)=A。
問題 2.7 ★★ R2 のザリスキー位相について次を示せ。(a) ユークリッド位相より真に弱い。(b) 空でない 2 つの開集合は必ず交わる。(c) 補有限位相ではない。
解答
(a) V(S)=⋂f∈Sf−1({0}) で多項式関数は連続なので、ザリスキー閉集合はユークリッド位相で閉。逆は成り立たない:閉円板 D={x2+y2≤1} を含むザリスキー閉集合は R2 しかない。実際 f が D 上で 0 なら、各 y0∈[−1/2,1/2] について 1 変数多項式 f(x,y0) は無限個の根をもつので恒等的に 0、したがって f(x,y)=∑kgk(y)xk と書くと各係数 gk が [−1/2,1/2] 上で 0 で、gk=0。よって f=0 で、D はザリスキー閉でない。
(b) 空でない開集合 U=R2∖V(S), U′=R2∖V(T) に対し、V(S)=R2 なので f(a)=0 となる f∈S, a があり f=0。同様に 0 でない g∈T がある。V(S)∪V(T)⊂V({f})∪V({g})=V({fg}) で、fg=0 は (a) と同じ議論で R2 全体では 0 にならない。よって U∩U′=R2∖(V(S)∪V(T))=∅。
(c) x 軸 V({y}) は無限集合で R2 でないザリスキー閉集合である。
問題 2.8 ★★ R 上で Or={(a,∞)∣a∈R}∪{∅,R} は位相であることを示せ。さらに、f:R→R が R(通常の位相)から (R,Or) への写像として連続であるための必要十分条件は、f が下半連続(任意の a で {x∣f(x)>a} が開集合)であることを示せ。
解答
(O2):(a,∞)∩(b,∞)=(max(a,b),∞)。(O3):(aλ,∞) の和集合は、infaλ=−∞ なら R、そうでなければ (infaλ,∞)(下限が達成されても開区間の和なので inf は含まれない)。∅ や R を含む場合も明らか。後半は、Or の開集合の逆像が開であることが、f−1((a,∞))={f>a} が開であることと同値(∅, R の逆像は自明に開)であることから従う。
問題 2.9 ★★★ (a) ゾルゲンフライ直線 Rl のどんな開基も非可算であることを示せ。(b) Q は Rl で稠密であることを示せ。(c) 稠密な可算部分集合をもつ距離空間は可算な開基をもつことを示し、Rl は距離化可能でないことを結論せよ。
解答
(a) B を開基とする。各 x∈R について、開集合 [x,x+1) と x に命題 2.25 を適用して x∈Bx⊂[x,x+1) となる Bx∈B を選ぶ。Bx の最小元は x なので、x=y なら Bx=By。よって x↦Bx は R から B への単射で、B は非可算。
(b) 空でない開集合は [a,b) を含み、[a,b) は有理数を含む。
(c) D={q1,q2,…} を距離空間 X の稠密な可算部分集合とし、B={B(qi,1/m)∣i,m∈N} とおく。x∈U(開)なら B(x,2/m)⊂U となる m があり、稠密性から d(x,qi)<1/m となる qi がある。すると x∈B(qi,1/m)⊂B(x,2/m)⊂U(三角不等式)。命題 2.25 より B は可算開基。もし Rl が距離化可能なら、(b) と今示したことから可算開基をもつことになり (a) に反する。
問題 2.10 ★★★(フュルステンベルクによる素数の無限性の証明)Z 上で、a∈Z, b∈N に対する等差数列 S(a,b)=a+bZ 全体を B とする。(a) B はある位相の開基であることを示せ。(b) この位相で空でない開集合は無限集合であり、各 S(a,b) は閉集合でもあることを示せ。(c) Z∖{1,−1}=⋃p 素数S(0,p) を用いて、素数が無限個あることを示せ。
解答
(a) (B1):Z=S(0,1)。(B2):x∈S(a,b)∩S(c,d) なら S(x,bd)⊂S(a,b)∩S(c,d)(x+bdk=a+b(⋯)=c+d(⋯) の形になる)で、x∈S(x,bd)。
(b) 空でない開集合はある S(a,b) を含み、S(a,b) は無限集合。また Z∖S(a,b)=⋃i=1b−1S(a+i,b) は開なので S(a,b) は閉。
(c) 整数 n=±1 は素因数をもつので、等式が成り立つ。素数が有限個なら、右辺は有限個の閉集合の和なので閉集合となり、その補集合 {1,−1} は開集合となる。これは空でない有限集合なので (b) に反する。