Lemma数学ロードマップ

03 集合と位相 · 第 1 章

距離空間

目安 10〜16 時間定理など 11演習 10 問実験 1

この章の目標

  • 距離の公理を理解し、Rn\mathbb{R}^n・関数空間・離散距離・ハミング距離・pp 進距離などの具体例で確かめられる
  • 開集合・閉集合・内部・閉包・境界を距離から定義し、基本性質を証明できる
  • 連続写像の ε-δ・点列・開集合による 3 通りの特徴づけを証明し、使い分けられる
  • 一様連続性・有界性のように「開集合だけでは決まらない」性質があることを、同値な距離の例で理解する

前提:集合と写像、微分積分学 第1〜3章

微分積分学では、数列の収束も関数の連続性も、すべて ∣x−y∣\lvert x - y \rvert という「2 点の近さ」だけを使って定義した。ところが同じ論法は、平面のベクトル、関数、符号語(0 と 1 の列)など、「近さ」が測れる対象ならどこでも使える。本章では「近さ」の本質だけを取り出した距離空間を導入し、開集合・収束・連続性を整理する。そのうえで、連続性や収束が「開集合」だけで言い表せることを確認する。これが次章で位相空間へ抽象化する動機になる。

1.1 距離の公理

実数の距離 ∣x−y∣\lvert x - y \rvert について、ε-δ 論法の証明で実際に使った性質を振り返ると、次の 3 つに尽きる:距離は 0 以上で、0 になるのは同じ点どうしのときだけ;xx から yy への距離と yy から xx への距離は等しい;寄り道すると遠くなる(三角不等式)。これを公理にする。

定義 1.1(距離空間, metric space)XX を集合とする。写像 d ⁣:X×X→Rd\colon X \times X \to \mathbb{R} が任意の x,y,z∈Xx, y, z \in X に対して

  • (D1) d(x,y)≥0d(x, y) \geq 0 であり、d(x,y)=0⇔x=yd(x, y) = 0 \Leftrightarrow x = y(正値性)
  • (D2) d(x,y)=d(y,x)d(x, y) = d(y, x)(対称性)
  • (D3) d(x,z)≤d(x,y)+d(y,z)d(x, z) \leq d(x, y) + d(y, z)(三角不等式, triangle inequality)

をみたすとき、dd を XX 上の距離(距離関数, metric)といい、組 (X,d)(X, d) を距離空間という。距離が明らかなときは単に XX と書く。

注意 1.2(各公理の役割)

  • (D1) の「d(x,y)≥0d(x,y) \geq 0」は他の公理から従う。実際 0=d(x,x)≤d(x,y)+d(y,x)=2d(x,y)0 = d(x, x) \leq d(x, y) + d(y, x) = 2d(x, y) である。
  • (D1) の「d(x,y)=0⇒x=yd(x, y) = 0 \Rightarrow x = y」を外したものを擬距離 (pseudometric) という。たとえば R2\mathbb{R}^2 上で d(x,y)=∣x1−y1∣d(x, y) = \lvert x_1 - y_1 \rvert(第 1 成分だけを見る)とおくと、(D2)(D3) はみたすが、第 1 成分が同じ異なる 2 点の距離が 0 になる。このとき点列 (1/n,0)(1/n, 0) は (0,0)(0, 0) にも (0,5)(0, 5) にも「近づく」ので、極限の一意性(命題 1.23)が崩れる。
  • (D3) は「aa に近い点に近い点は、やはり aa に近い」ことを保証する。開球が開集合であること(命題 1.13)はこれに依存する。d(x,y)=(x−y)2d(x, y) = (x - y)^2 は R\mathbb{R} 上で (D1)(D2) をみたすが、d(0,2)=4>2=d(0,1)+d(1,2)d(0, 2) = 4 > 2 = d(0, 1) + d(1, 2) なので距離ではない。

三角不等式からすぐ出る次の不等式はよく使う。

命題 1.3(逆三角不等式)距離空間 (X,d)(X, d) の任意の x,y,zx, y, z について ∣d(x,z)−d(y,z)∣≤d(x,y)\lvert d(x, z) - d(y, z) \rvert \leq d(x, y) が成り立つ。

証明. (D3) より d(x,z)≤d(x,y)+d(y,z)d(x, z) \leq d(x, y) + d(y, z)、すなわち d(x,z)−d(y,z)≤d(x,y)d(x, z) - d(y, z) \leq d(x, y)。xx と yy を入れ替えて (D2) を使えば d(y,z)−d(x,z)≤d(x,y)d(y, z) - d(x, z) \leq d(x, y)。両者を合わせればよい。□\square

例

例 1.4(Rn\mathbb{R}^n の 3 つの距離)x=(x1,…,xn)x = (x_1, \dots, x_n), y=(y1,…,yn)∈Rny = (y_1, \dots, y_n) \in \mathbb{R}^n に対して

d1(x,y)=∑i=1n∣xi−yi∣,d2(x,y)=(∑i=1n(xi−yi)2)1/2,d∞(x,y)=max⁡1≤i≤n∣xi−yi∣d_1(x, y) = \sum_{i=1}^n \lvert x_i - y_i \rvert, \qquad d_2(x, y) = \left( \sum_{i=1}^n (x_i - y_i)^2 \right)^{1/2}, \qquad d_\infty(x, y) = \max_{1 \leq i \leq n} \lvert x_i - y_i \rvert

とおく。d1d_1 と d∞d_\infty の三角不等式は、成分ごとの三角不等式 ∣xi−zi∣≤∣xi−yi∣+∣yi−zi∣\lvert x_i - z_i \rvert \leq \lvert x_i - y_i \rvert + \lvert y_i - z_i \rvert を足す(または最大値をとる)だけで得られる。d2d_2(ユークリッド距離, Euclidean metric)の三角不等式はコーシー–シュワルツの不等式 ∑aibi≤∥a∥∥b∥\sum a_i b_i \leq \lVert a \rVert \lVert b \rVert(∥a∥=(∑ai2)1/2\lVert a \rVert = (\sum a_i^2)^{1/2}、線形代数 第7章)から従う。実際

∥a+b∥2=∥a∥2+2∑i=1naibi+∥b∥2≤∥a∥2+2∥a∥∥b∥+∥b∥2=(∥a∥+∥b∥)2\lVert a + b \rVert^2 = \lVert a \rVert^2 + 2 \sum_{i=1}^n a_i b_i + \lVert b \rVert^2 \leq \lVert a \rVert^2 + 2 \lVert a \rVert \lVert b \rVert + \lVert b \rVert^2 = (\lVert a \rVert + \lVert b \rVert)^2

であり、a=x−ya = x - y, b=y−zb = y - z とおけば d2(x,z)≤d2(x,y)+d2(y,z)d_2(x, z) \leq d_2(x, y) + d_2(y, z) を得る。さらに、成分の絶対値を ci=∣xi−yi∣c_i = \lvert x_i - y_i \rvert とおくと max⁡ci≤(∑ci2)1/2≤∑ci≤nmax⁡ci\max c_i \leq (\sum c_i^2)^{1/2} \leq \sum c_i \leq n \max c_i だから

d∞(x,y)≤d2(x,y)≤d1(x,y)≤n d∞(x,y)(1)d_\infty(x, y) \leq d_2(x, y) \leq d_1(x, y) \leq n\, d_\infty(x, y) \tag{1}

が成り立つ(2 番目の不等号は (∑ci)2(\sum c_i)^2 を展開すると ∑ci2\sum c_i^2 に非負の交差項が加わることからわかる)。

例 1.5(関数空間)a<ba < b とし、C[a,b]C[a, b] を [a,b][a, b] 上の実数値連続関数全体とする。

  • 一様距離 (uniform metric):d∞(f,g)=max⁡a≤x≤b∣f(x)−g(x)∣d_\infty(f, g) = \max_{a \leq x \leq b} \lvert f(x) - g(x) \rvert。最大値の存在は最大値の定理(微分積分学 第3章)による。各 xx で ∣f(x)−h(x)∣≤∣f(x)−g(x)∣+∣g(x)−h(x)∣≤d∞(f,g)+d∞(g,h)\lvert f(x) - h(x) \rvert \leq \lvert f(x) - g(x) \rvert + \lvert g(x) - h(x) \rvert \leq d_\infty(f, g) + d_\infty(g, h) なので、左辺の最大値をとれば三角不等式を得る。
  • L1L^1 距離:d1(f,g)=∫ab∣f(x)−g(x)∣ dxd_1(f, g) = \int_a^b \lvert f(x) - g(x) \rvert\ dx。三角不等式は各点の三角不等式を積分すれば得られる。(D1) を確かめよう。f≠gf \neq g なら ∣f(x0)−g(x0)∣=c>0\lvert f(x_0) - g(x_0) \rvert = c > 0 となる x0x_0 がある。∣f−g∣\lvert f - g \rvert は連続なので、x0x_0 を含む長さ ℓ>0\ell > 0 の区間 J⊂[a,b]J \subset [a, b] 上で ∣f−g∣>c/2\lvert f - g \rvert > c/2 となり、d1(f,g)≥ℓc/2>0d_1(f, g) \geq \ell c / 2 > 0 である。

補足

L1L^1 距離の (D1) の証明では関数の連続性を使った。リーマン積分可能な関数全体で同じ式を考えると、1 点だけ値の違う 2 つの関数の距離が 0 になり、擬距離にしかならない。ルベーグ積分論で「ほとんど至るところ等しい関数を同一視する」のはこのためである(測度と積分 第4章)。

例 1.6(離散距離, discrete metric)任意の集合 XX 上で、x=yx = y なら d(x,y)=0d(x, y) = 0、x≠yx \neq y なら d(x,y)=1d(x, y) = 1 とおく。三角不等式は、x≠zx \neq z なら yy は x,zx, z の少なくとも一方と異なるので右辺が 1 以上になることからわかる。

例 1.7(ハミング距離, Hamming distance)有限集合 AA(アルファベット)の元の長さ nn の列全体 AnA^n 上で、dH(x,y)d_H(x, y) を「xi≠yix_i \neq y_i となる添字 ii の個数」と定める。xi≠zix_i \neq z_i なら xi≠yix_i \neq y_i または yi≠ziy_i \neq z_i なので三角不等式が成り立つ。符号理論では、送信する語(符号語)どうしのハミング距離を 3 以上にしておくと、1 文字の誤りを訂正できる。実際、受信語 ww が符号語 cc から 1 文字だけ誤っていれば、別の符号語 c′c' について dH(w,c′)≥dH(c,c′)−dH(c,w)≥3−1=2d_H(w, c') \geq d_H(c, c') - d_H(c, w) \geq 3 - 1 = 2 となり、ww に最も近い符号語は cc だけだからである。

例 1.8(pp 進距離, pp-adic metric)pp を素数とする。00 でない有理数 xx は、pp で割り切れない整数 a,ba, b と整数 kk を用いて x=pka/bx = p^k a / b と表せ、このとき kk は xx だけから一意に定まる(a,ba, b は一意ではないが、kk は xx の既約分数表示の分子・分母に含まれる素因数 pp の個数の差である)。このとき vp(x)=kv_p(x) = k、∣x∣p=p−k\lvert x \rvert_p = p^{-k} とおき、∣0∣p=0\lvert 0 \rvert_p = 0 と定める。「pp で何回割れるか」が大きいほど小さくなる量である。∣xy∣p=∣x∣p∣y∣p\lvert xy \rvert_p = \lvert x \rvert_p \lvert y \rvert_p は明らかで、さらに

∣x+y∣p≤max⁡(∣x∣p,∣y∣p)\lvert x + y \rvert_p \leq \max(\lvert x \rvert_p, \lvert y \rvert_p)

が成り立つ。実際 x,y,x+yx, y, x + y がどれも 00 でないとき、x=pka/bx = p^k a/b, y=plc/dy = p^l c/d(k≤lk \leq l)と書けば x+y=pk(ad+pl−kbc)/(bd)x + y = p^k (ad + p^{l-k} bc)/(bd) で、bdbd は pp で割り切れないから vp(x+y)≥kv_p(x + y) \geq k となる(残りの場合は自明)。したがって ρp(x,y)=∣x−y∣p\rho_p(x, y) = \lvert x - y \rvert_p は Q\mathbb{Q} 上の距離で、三角不等式より強い

ρp(x,z)≤max⁡(ρp(x,y),ρp(y,z))\rho_p(x, z) \leq \max(\rho_p(x, y), \rho_p(y, z))

をみたす。これを超距離不等式 (ultrametric inequality) といい、これをみたす距離を超距離という。たとえば ρ5(1,26)=∣25∣5=1/25\rho_5(1, 26) = \lvert 25 \rvert_5 = 1/25、ρ5(1,2)=1\rho_5(1, 2) = 1 であり、5 進距離では 26 のほうが 2 よりも 1 に近い。pp の高いべきほど 0 に近い:ρp(pn,0)=p−n\rho_p(p^n, 0) = p^{-n}。pp 進距離は整数論の基本的な道具である(代数的整数論 第5章)。

例 1.9(ノルムから定まる距離)実ベクトル空間 VV 上のノルム ∥⋅∥\lVert \cdot \rVert があれば d(x,y)=∥x−y∥d(x, y) = \lVert x - y \rVert は距離である。d1,d2,d∞d_1, d_2, d_\infty や C[a,b]C[a, b] の一様距離はこの形をしている。ノルム空間の理論は関数解析 第1章で扱う。

1.2 開球と開集合

R\mathbb{R} の開区間 (0,1)(0, 1) の各点のまわりには「すき間」があり、少し動いても (0,1)(0, 1) からはみ出さない。[0,1)[0, 1) の点 00 にはそのすき間がない。この「まわりに余裕がある」ことを距離で表す。

定義 1.10(開球, 閉球)距離空間 (X,d)(X, d) の点 aa と r>0r > 0 に対して

B(a,r)={x∈X∣d(a,x)<r},D(a,r)={x∈X∣d(a,x)≤r}B(a, r) = \lbrace x \in X \mid d(a, x) < r \rbrace, \qquad D(a, r) = \lbrace x \in X \mid d(a, x) \leq r \rbrace

をそれぞれ中心 aa、半径 rr の開球 (open ball)、閉球 (closed ball) という。距離を明示するときは Bd(a,r)B_d(a, r) と書く。

例 1.11(開球の形)

  • (R,∣⋅∣)(\mathbb{R}, \lvert \cdot \rvert) では B(a,r)=(a−r,a+r)B(a, r) = (a - r, a + r)。
  • R2\mathbb{R}^2 で原点中心・半径 1 の開球は、d2d_2 では円板 x2+y2<1x^2 + y^2 < 1 の内部;d∞d_\infty では座標軸に平行な辺をもち 4 頂点が (±1,±1)(\pm 1, \pm 1) の正方形の内部;d1d_1 では 4 頂点が (±1,0),(0,±1)(\pm 1, 0), (0, \pm 1) の、45° 傾いた正方形(ひし形)の内部 ∣x∣+∣y∣<1\lvert x \rvert + \lvert y \rvert < 1 である。不等式 (1) は、ひし形が円板に、円板が正方形に含まれることを表す。
  • 離散距離では r≤1r \leq 1 なら B(a,r)={a}B(a, r) = \lbrace a \rbrace、r>1r > 1 なら B(a,r)=XB(a, r) = X。
  • (C[a,b],d∞)(C[a, b], d_\infty) の B(f,r)B(f, r) は、ff のグラフの上下に幅 rr の「帯」{(x,y)∣∣y−f(x)∣<r}\lbrace (x, y) \mid \lvert y - f(x) \rvert < r \rbrace を考えたとき、グラフがこの帯に収まる連続関数の全体である(最大値が達成されるので、帯に収まることと d∞<rd_\infty < r は同値)。一方 (C[a,b],d1)(C[a, b], d_1) の開球 B(f,r)B(f, r) には、ff から高く細い「とげ」を突き出した関数も含まれる。とげの面積さえ小さければよいからである。
  • ハミング距離では距離が整数値なので、B(x,2)B(x, 2) は「xx と高々 1 文字しか違わない語」の全体である。
実験いろいろな距離の単位球ℓᵖ 距離の単位球が p によって菱形・円・正方形と形を変える様子を見ます。

この実験は JavaScript を有効にすると動きます。

定義 1.12(開集合, open set)U⊂XU \subset X が開集合であるとは、任意の a∈Ua \in U に対してある r>0r > 0 が存在して B(a,r)⊂UB(a, r) \subset U となることをいう。

命題 1.13 開球 B(a,r)B(a, r) は開集合である。

証明. x∈B(a,r)x \in B(a, r) とし、s=r−d(a,x)>0s = r - d(a, x) > 0 とおく。y∈B(x,s)y \in B(x, s) なら三角不等式より d(a,y)≤d(a,x)+d(x,y)<d(a,x)+s=rd(a, y) \leq d(a, x) + d(x, y) < d(a, x) + s = r なので y∈B(a,r)y \in B(a, r)。よって B(x,s)⊂B(a,r)B(x, s) \subset B(a, r) である。□\square

定理 1.14(開集合の基本性質)距離空間 XX の開集合全体を O\mathcal{O} とすると:

  • (O1) ∅∈O\emptyset \in \mathcal{O}, X∈OX \in \mathcal{O}
  • (O2) U1,…,Un∈OU_1, \dots, U_n \in \mathcal{O} ならば U1∩⋯∩Un∈OU_1 \cap \dots \cap U_n \in \mathcal{O}
  • (O3) Uλ∈OU_\lambda \in \mathcal{O}(λ∈Λ\lambda \in \Lambda、Λ\Lambda は任意の添字集合)ならば ⋃λ∈ΛUλ∈O\bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_\lambda \in \mathcal{O}

証明. (O1) ∅\emptyset には条件を確かめるべき点がない。XX については任意の rr で B(a,r)⊂XB(a, r) \subset X。(O2) a∈U1∩⋯∩Una \in U_1 \cap \dots \cap U_n なら各 ii で B(a,ri)⊂UiB(a, r_i) \subset U_i となる ri>0r_i > 0 がある。r=min⁡(r1,…,rn)>0r = \min(r_1, \dots, r_n) > 0 とおけば B(a,r)⊂U1∩⋯∩UnB(a, r) \subset U_1 \cap \dots \cap U_n。(O3) a∈⋃Uλa \in \bigcup U_\lambda なら a∈Uμa \in U_\mu となる μ\mu があり、B(a,r)⊂Uμ⊂⋃UλB(a, r) \subset U_\mu \subset \bigcup U_\lambda となる r>0r > 0 がとれる。□\square

例 1.15(無限個の共通部分)(O2) の証明で min⁡\min が正であることに有限性を使った。実際、⋂n∈N(−1/n,1/n)={0}\bigcap_{n \in \mathbb{N}} (-1/n, 1/n) = \lbrace 0 \rbrace は R\mathbb{R} の開集合ではない。無限個の開集合の共通部分は一般に開集合ではない。

定義 1.16(閉集合, closed set)F⊂XF \subset X が閉集合であるとは、補集合 X∖FX \setminus F が開集合であることをいう。

ド・モルガンの法則により、定理 1.14 から次が従う:∅\emptyset と XX は閉集合;有限個の閉集合の和集合は閉集合;任意個の閉集合の共通部分は閉集合。無限個の和集合は一般に閉ではない:⋃n[1/n,1]=(0,1]\bigcup_{n} [1/n, 1] = (0, 1]。

例 1.17

  1. 閉球 D(a,r)D(a, r) は閉集合である。実際 x∉D(a,r)x \notin D(a, r) なら s=d(a,x)−r>0s = d(a, x) - r > 0 で、y∈B(x,s)y \in B(x, s) ならば d(a,y)≥d(a,x)−d(x,y)>rd(a, y) \geq d(a, x) - d(x, y) > r なので B(x,s)⊂X∖D(a,r)B(x, s) \subset X \setminus D(a, r)。特に 1 点集合 {a}=D(a,0)\lbrace a \rbrace = D(a, 0) も(同じ議論で)閉集合である。
  2. 「開でない」ことは「閉である」ことを意味しない。[0,1)⊂R[0, 1) \subset \mathbb{R} は開でも閉でもない。∅\emptyset と XX は開かつ閉である。
  3. 離散距離空間では {a}=B(a,1)\lbrace a \rbrace = B(a, 1) が開集合なので、(O3) によってすべての部分集合が開集合であり、したがってすべての部分集合が閉集合でもある。
  4. R\mathbb{R} で開かつ閉な集合は ∅\emptyset と R\mathbb{R} だけである(第6章で証明する)。これに対し Q\mathbb{Q} に R\mathbb{R} の距離を制限した距離空間では、{q∈Q∣q2<2}\lbrace q \in \mathbb{Q} \mid q^2 < 2 \rbrace が開かつ閉になる(例 1.42)。

1.3 内部・閉包・境界

定義 1.18(内部・閉包・境界)A⊂XA \subset X とする。

  • aa が AA の内点 (interior point) であるとは、ある r>0r > 0 で B(a,r)⊂AB(a, r) \subset A となることをいう。内点全体を AA の内部 (interior) といい A∘A^\circ と書く。
  • aa が AA の触点 (adherent point) であるとは、任意の r>0r > 0 で B(a,r)∩A≠∅B(a, r) \cap A \neq \emptyset となることをいう。触点全体を AA の閉包 (closure) といい A‾\overline{A} と書く。
  • ∂A=A‾∖A∘\partial A = \overline{A} \setminus A^\circ を AA の境界 (boundary) という。

A∘⊂A⊂A‾A^\circ \subset A \subset \overline{A} は定義から明らかである。

命題 1.19 A⊂XA \subset X について次が成り立つ。

  1. A∘A^\circ は開集合であり、AA に含まれる最大の開集合(AA に含まれる開集合全体の和集合)である。
  2. X∖A‾=(X∖A)∘X \setminus \overline{A} = (X \setminus A)^\circ、X∖A∘=X∖A‾X \setminus A^\circ = \overline{X \setminus A}。
  3. A‾\overline{A} は閉集合であり、AA を含む最小の閉集合(AA を含む閉集合全体の共通部分)である。
  4. AA が開 ⇔\Leftrightarrow A=A∘A = A^\circ。AA が閉 ⇔\Leftrightarrow A=A‾A = \overline{A}。
  5. ∂A=A‾∩X∖A‾\partial A = \overline{A} \cap \overline{X \setminus A}。特に ∂A\partial A は閉集合である。

証明. 1. a∈A∘a \in A^\circ とし、B(a,r)⊂AB(a, r) \subset A とする。x∈B(a,r)x \in B(a, r) に対し命題 1.13 から B(x,s)⊂B(a,r)⊂AB(x, s) \subset B(a, r) \subset A となる s>0s > 0 があるので x∈A∘x \in A^\circ。よって B(a,r)⊂A∘B(a, r) \subset A^\circ で、A∘A^\circ は開集合。また U⊂AU \subset A が開集合なら UU の各点は AA の内点なので U⊂A∘U \subset A^\circ。

  1. a∉A‾a \notin \overline{A} ⇔\Leftrightarrow ある r>0r > 0 で B(a,r)∩A=∅B(a, r) \cap A = \emptyset ⇔\Leftrightarrow ある r>0r > 0 で B(a,r)⊂X∖AB(a, r) \subset X \setminus A ⇔\Leftrightarrow a∈(X∖A)∘a \in (X \setminus A)^\circ。後半は前半を X∖AX \setminus A に適用して補集合をとればよい。

  2. 2 と 1 より A‾=X∖(X∖A)∘\overline{A} = X \setminus (X \setminus A)^\circ は閉集合。F⊃AF \supset A が閉集合なら X∖FX \setminus F は X∖AX \setminus A に含まれる開集合なので、1 より X∖F⊂(X∖A)∘=X∖A‾X \setminus F \subset (X \setminus A)^\circ = X \setminus \overline{A}、すなわち A‾⊂F\overline{A} \subset F。

  3. 1 と 3 から直ちに従う。5. 2 より ∂A=A‾∩(X∖A∘)=A‾∩X∖A‾\partial A = \overline{A} \cap (X \setminus A^\circ) = \overline{A} \cap \overline{X \setminus A} で、閉集合の共通部分なので閉。□\square

例 1.20

  1. A=[0,1)⊂RA = [0, 1) \subset \mathbb{R}:A∘=(0,1)A^\circ = (0, 1)、A‾=[0,1]\overline{A} = [0, 1]、∂A={0,1}\partial A = \lbrace 0, 1 \rbrace。
  2. Q⊂R\mathbb{Q} \subset \mathbb{R}:どの開区間も有理数と無理数の両方を含むので、Q∘=∅\mathbb{Q}^\circ = \emptyset、Q‾=R\overline{\mathbb{Q}} = \mathbb{R}、∂Q=R\partial \mathbb{Q} = \mathbb{R}。境界が集合そのものより「大きい」こともある。
  3. 離散距離空間では任意の AA について A∘=A=A‾A^\circ = A = \overline{A}、∂A=∅\partial A = \emptyset。
  4. 開球の閉包は閉球とは限らない。離散距離空間(2 点以上)で B(a,1)={a}B(a, 1) = \lbrace a \rbrace は閉集合なので B(a,1)‾={a}\overline{B(a, 1)} = \lbrace a \rbrace だが、D(a,1)=XD(a, 1) = X である。一般には B(a,r)‾⊂D(a,r)\overline{B(a, r)} \subset D(a, r) しか言えない(D(a,r)D(a, r) は B(a,r)B(a, r) を含む閉集合だから)。ノルム空間では等号が成り立つ。

1.4 点列の収束

定義 1.21(収束, convergence)距離空間 XX の点列 (xn)n∈N(x_n)_{n \in \mathbb{N}} が a∈Xa \in X に収束するとは、実数列 d(xn,a)d(x_n, a) が 00 に収束すること、すなわち

∀ε>0, ∃N∈N, ∀n≥N, d(xn,a)<ε\forall \varepsilon > 0,\ \exists N \in \mathbb{N},\ \forall n \geq N,\ d(x_n, a) < \varepsilon

が成り立つことをいう。このとき xn→ax_n \to a または lim⁡n→∞xn=a\lim_{n \to \infty} x_n = a と書き、aa を極限という。

次の書き換えは、収束が開集合だけで述べられることを示している。

命題 1.22 xn→ax_n \to a であるための必要十分条件は、aa を含む任意の開集合 UU に対して、ある NN が存在して n≥Nn \geq N ならば xn∈Ux_n \in U となることである。

証明. (⇒\Rightarrow) UU が開なら B(a,ε)⊂UB(a, \varepsilon) \subset U となる ε>0\varepsilon > 0 があり、n≥Nn \geq N で xn∈B(a,ε)⊂Ux_n \in B(a, \varepsilon) \subset U。(⇐\Leftarrow) U=B(a,ε)U = B(a, \varepsilon) は開集合(命題 1.13)なので、条件から n≥Nn \geq N で d(xn,a)<εd(x_n, a) < \varepsilon。□\square

命題 1.23(極限の一意性)距離空間の点列の極限はただ一つである。

証明. xn→ax_n \to a かつ xn→bx_n \to b なら d(a,b)≤d(a,xn)+d(xn,b)→0d(a, b) \leq d(a, x_n) + d(x_n, b) \to 0 なので d(a,b)=0d(a, b) = 0、(D1) より a=ba = b。□\square

例 1.24

  1. Rn\mathbb{R}^n で d1,d2,d∞d_1, d_2, d_\infty のどれについて収束を考えても、不等式 (1) によりすべて「各成分が収束すること」と同値である。
  2. 離散距離空間では、xn→ax_n \to a ⇔\Leftrightarrow ある NN 以降 xn=ax_n = a。(ε=1\varepsilon = 1 とすればよい。)
  3. C[0,1]C[0, 1] で fn(x)=xnf_n(x) = x^n とする。d1(fn,0)=∫01xn dx=1/(n+1)→0d_1(f_n, 0) = \int_0^1 x^n\ dx = 1/(n+1) \to 0 なので、L1L^1 距離では fn→0f_n \to 0。一方 d∞(fn,0)=1d_\infty(f_n, 0) = 1 で、一様距離では 00 に収束しない。しかも一様距離ではどんな g∈C[0,1]g \in C[0, 1] にも収束しない:もし d∞(fn,g)→0d_\infty(f_n, g) \to 0 なら各点で fn(x)→g(x)f_n(x) \to g(x) となるので x<1x < 1 で g(x)=0g(x) = 0、g(1)=1g(1) = 1 となり、gg の連続性に反する。同じ集合・同じ点列でも、距離が違えば収束するかどうかが変わる。
  4. pp 進距離では pn→0p^n \to 0。さらに sn=1+p+⋯+pn−1=(pn−1)/(p−1)s_n = 1 + p + \dots + p^{n-1} = (p^n - 1)/(p - 1) について sn−1/(1−p)=pn/(p−1)s_n - 1/(1-p) = p^n/(p-1) で、p−1p - 1 は pp で割り切れないから ρp(sn,1/(1−p))=p−n→0\rho_p(s_n, 1/(1-p)) = p^{-n} \to 0。たとえば 2 進距離では 1+2+4+8+⋯=−11 + 2 + 4 + 8 + \dots = -1 である。

命題 1.25(閉包の点列による特徴づけ)A⊂XA \subset X、a∈Xa \in X とする。

  1. a∈A‾a \in \overline{A} ⇔\Leftrightarrow AA の点からなる点列で aa に収束するものが存在する。
  2. AA が閉集合 ⇔\Leftrightarrow AA の点からなる点列が XX で収束すれば、その極限は必ず AA に属する。

証明. 1. (⇒\Rightarrow) 各 nn について B(a,1/n)∩A≠∅B(a, 1/n) \cap A \neq \emptyset なので xnx_n をこの集合から選べば d(xn,a)<1/nd(x_n, a) < 1/n で xn→ax_n \to a。(⇐\Leftarrow) 任意の r>0r > 0 に対し、十分大きな nn で xn∈B(a,r)x_n \in B(a, r) なので B(a,r)∩A≠∅B(a, r) \cap A \neq \emptyset。

  1. (⇒\Rightarrow) 1 より極限は A‾=A\overline{A} = A に属する。(⇐\Leftarrow) 1 より A‾\overline{A} の各点は AA の点列の極限なので仮定から AA に属する。よって A‾=A\overline{A} = A で AA は閉。□\square

補足

1 の証明では、半径 1/n1/n の可算個の開球が aa の「近さ」をすべて捉えていることを使った。一般の位相空間ではこれが成り立たず、閉包を点列で捉えられないことがある(第4章)。

1.5 連続写像

定義 1.26(連続写像, continuous map)(X,d)(X, d), (Y,e)(Y, e) を距離空間、f ⁣:X→Yf\colon X \to Y を写像とする。ff が点 a∈Xa \in X で連続であるとは

∀ε>0, ∃δ>0, ∀x∈X, d(x,a)<δ⇒e(f(x),f(a))<ε\forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\ \forall x \in X,\ d(x, a) < \delta \Rightarrow e(f(x), f(a)) < \varepsilon

が成り立つこと、すなわち「任意の ε>0\varepsilon > 0 に対して f(B(a,δ))⊂B(f(a),ε)f(B(a, \delta)) \subset B(f(a), \varepsilon) となる δ>0\delta > 0 がある」ことをいう。XX のすべての点で連続なとき、ff は連続であるという。

次の定理が本章の中心である。

定理 1.27(連続性の特徴づけ)f ⁣:X→Yf\colon X \to Y を距離空間の間の写像とする。

(1) a∈Xa \in X について、次の 3 条件は同値である。

  • (i) ff は aa で連続(ε-δ の意味で)。
  • (ii) xn→ax_n \to a となる任意の点列について f(xn)→f(a)f(x_n) \to f(a)。
  • (iii) f(a)f(a) を含む任意の開集合 V⊂YV \subset Y に対して、aa を含む開集合 U⊂XU \subset X で f(U)⊂Vf(U) \subset V となるものが存在する。

(2) 次の 3 条件は同値である。

  • (i) ff は連続。
  • (ii) YY の任意の開集合 VV に対して f−1(V)f^{-1}(V) は XX の開集合。
  • (iii) YY の任意の閉集合 FF に対して f−1(F)f^{-1}(F) は XX の閉集合。

証明. (1) (i)⇒\Rightarrow(ii):ε>0\varepsilon > 0 に対し (i) の δ\delta をとる。xn→ax_n \to a なので n≥Nn \geq N で d(xn,a)<δd(x_n, a) < \delta、したがって e(f(xn),f(a))<εe(f(x_n), f(a)) < \varepsilon。

(ii)⇒\Rightarrow(i):対偶を示す。(i) が成り立たないとすると、ある ε>0\varepsilon > 0 が存在して、どの δ=1/n\delta = 1/n に対しても d(xn,a)<1/nd(x_n, a) < 1/n かつ e(f(xn),f(a))≥εe(f(x_n), f(a)) \geq \varepsilon となる xnx_n がとれる。この点列は aa に収束するが f(xn)f(x_n) は f(a)f(a) に収束しないので (ii) が成り立たない。

(i)⇒\Rightarrow(iii):VV が開なので B(f(a),ε)⊂VB(f(a), \varepsilon) \subset V となる ε\varepsilon があり、(i) の δ\delta について U=B(a,δ)U = B(a, \delta) とおけば、UU は開(命題 1.13)で f(U)⊂B(f(a),ε)⊂Vf(U) \subset B(f(a), \varepsilon) \subset V。

(iii)⇒\Rightarrow(i):ε>0\varepsilon > 0 に対し V=B(f(a),ε)V = B(f(a), \varepsilon) は開なので、(iii) の UU がとれる。UU は aa を含む開集合なので B(a,δ)⊂UB(a, \delta) \subset U となる δ>0\delta > 0 があり、f(B(a,δ))⊂f(U)⊂Vf(B(a, \delta)) \subset f(U) \subset V。

(2) (i)⇒\Rightarrow(ii):VV を開集合、a∈f−1(V)a \in f^{-1}(V) とする。(1) の (iii) より a∈Ua \in U, f(U)⊂Vf(U) \subset V となる開集合 UU があり、U⊂f−1(V)U \subset f^{-1}(V)。UU は開なので B(a,r)⊂U⊂f−1(V)B(a, r) \subset U \subset f^{-1}(V) となる r>0r > 0 がある。よって f−1(V)f^{-1}(V) は開。

(ii)⇒\Rightarrow(i):a∈Xa \in X と f(a)f(a) を含む開集合 VV に対し、U=f−1(V)U = f^{-1}(V) は aa を含む開集合で f(U)⊂Vf(U) \subset V。(1) より ff は aa で連続。

(ii)⇔\Leftrightarrow(iii):f−1(Y∖F)=X∖f−1(F)f^{-1}(Y \setminus F) = X \setminus f^{-1}(F) による。□\square

条件 (2)(ii) には距離も ε も現れない。連続性は開集合だけで述べられる。これが次章の出発点になる。

注意

連続写像で開集合に移るのは逆像であって像ではない。f(x)=x2f(x) = x^2 は連続だが f((−1,1))=[0,1)f((-1, 1)) = [0, 1) は開でない。定数写像 R→R\mathbb{R} \to \mathbb{R} の像は 1 点で開でない。閉集合の像も閉とは限らない:arctan⁡\arctan による閉集合 R\mathbb{R} の像は (−π/2,π/2)(-\pi/2, \pi/2) である。

例 1.28

  1. a∈Xa \in X を固定すると x↦d(x,a)x \mapsto d(x, a) は連続である。命題 1.3 より ∣d(x,a)−d(y,a)∣≤d(x,y)\lvert d(x, a) - d(y, a) \rvert \leq d(x, y) だからである(δ=ε\delta = \varepsilon ととれる)。
  2. 空でない A⊂XA \subset X に対し d(x,A)=inf⁡a∈Ad(x,a)d(x, A) = \inf_{a \in A} d(x, a) とおく(点と集合の距離)。任意の a∈Aa \in A で d(x,A)≤d(x,a)≤d(x,y)+d(y,a)d(x, A) \leq d(x, a) \leq d(x, y) + d(y, a) なので、aa について下限をとって d(x,A)≤d(x,y)+d(y,A)d(x, A) \leq d(x, y) + d(y, A)。x,yx, y を入れ替えて ∣d(x,A)−d(y,A)∣≤d(x,y)\lvert d(x, A) - d(y, A) \rvert \leq d(x, y) を得る。よって x↦d(x,A)x \mapsto d(x, A) は連続。さらに d(x,A)=0d(x, A) = 0 ⇔\Leftrightarrow 任意の r>0r > 0 で d(x,a)<rd(x, a) < r となる a∈Aa \in A がある ⇔\Leftrightarrow x∈A‾x \in \overline{A}。
  3. 離散距離空間からの写像はすべて連続である(すべての部分集合が開なので (2)(ii) が自明に成り立つ)。
  4. 恒等写像 (C[0,1],d∞)→(C[0,1],d1)(C[0,1], d_\infty) \to (C[0,1], d_1) は連続(d1≤d∞d_1 \leq d_\infty なので δ=ε\delta = \varepsilon)だが、逆向きの恒等写像 (C[0,1],d1)→(C[0,1],d∞)(C[0,1], d_1) \to (C[0,1], d_\infty) は連続でない:例 1.24 の fn=xnf_n = x^n は d1d_1 で 00 に収束するが d∞d_\infty では収束しないので、(1)(ii) が崩れる。
  5. t∈[0,1]t \in [0, 1] での値をとる写像 ev⁡t(f)=f(t)\operatorname{ev}_t(f) = f(t) は、d∞d_\infty に関しては ∣f(t)−g(t)∣≤d∞(f,g)\lvert f(t) - g(t) \rvert \leq d_\infty(f, g) より連続である。d1d_1 に関しては連続でない:高さ 1、底辺の長さ 2/n2/n の「三角形のとげ」を tt に立てた関数 gng_n(tt から距離 1/n1/n 以上離れたところでは 00)は d1(gn,0)≤1/n→0d_1(g_n, 0) \leq 1/n \to 0 だが gn(t)=1g_n(t) = 1 である。

命題 1.29 連続写像の合成は連続である。

証明. f ⁣:X→Yf\colon X \to Y, g ⁣:Y→Zg\colon Y \to Z が連続なら、ZZ の開集合 WW に対し (g∘f)−1(W)=f−1(g−1(W))(g \circ f)^{-1}(W) = f^{-1}(g^{-1}(W)) は開集合である。□\square

ε-δ で直接示すより、開集合による特徴づけのほうが一行で済むことに注意しよう。

1.6 一様連続性

定義 1.30(一様連続, リプシッツ連続)f ⁣:(X,d)→(Y,e)f\colon (X, d) \to (Y, e) が一様連続 (uniformly continuous) であるとは

∀ε>0, ∃δ>0, ∀x,y∈X, d(x,y)<δ⇒e(f(x),f(y))<ε\forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\ \forall x, y \in X,\ d(x, y) < \delta \Rightarrow e(f(x), f(y)) < \varepsilon

が成り立つことをいう。また、ある定数 L≥0L \geq 0 で常に e(f(x),f(y))≤L d(x,y)e(f(x), f(y)) \leq L\ d(x, y) となるとき、ff はリプシッツ連続 (Lipschitz continuous) であるという。

連続性では δ\delta が点 aa に依存してよいが、一様連続性では δ\delta が点によらず共通にとれる。リプシッツ連続なら δ=ε/(L+1)\delta = \varepsilon/(L+1) として一様連続であり、一様連続なら連続である。

例 1.31

  1. f(x)=x2f(x) = x^2 は R\mathbb{R} 上連続だが一様連続でない。どんな δ>0\delta > 0 に対しても、x=1/δx = 1/\delta、y=x+δ/2y = x + \delta/2 とおけば ∣x−y∣<δ\lvert x - y \rvert < \delta だが ∣f(y)−f(x)∣=δx+δ2/4>1\lvert f(y) - f(x) \rvert = \delta x + \delta^2/4 > 1 となる。
  2. f(x)=xf(x) = \sqrt{x} は [0,∞)[0, \infty) 上一様連続(∣x−y∣≤∣x−y∣\lvert \sqrt{x} - \sqrt{y} \rvert \leq \sqrt{\lvert x - y \rvert} より δ=ε2\delta = \varepsilon^2)だが、リプシッツ連続でない(x/x→∞\sqrt{x}/x \to \infty (x→+0)(x \to +0))。
  3. 例 1.28 の x↦d(x,A)x \mapsto d(x, A) は L=1L = 1 のリプシッツ連続写像である。
  4. コンパクト距離空間上の連続写像は一様連続である(第5章)。

連続写像はコーシー列(第7章)をコーシー列に移すとは限らない。f(x)=1/xf(x) = 1/x は (0,1](0, 1] 上連続だが、コーシー列 1/n1/n を発散列 nn に移す。一様連続写像はコーシー列をコーシー列に移す。

1.7 同値な距離

Rn\mathbb{R}^n の d1,d2,d∞d_1, d_2, d_\infty は開球の形こそ違うが、例 1.24 のとおり収束する点列は同じである。距離の違いのうち、どこまでが本質的なのだろうか。

定義 1.32(同値な距離)d,d′d, d' を集合 XX 上の距離とする。

  • dd と d′d' が位相的に同値 (topologically equivalent) であるとは、dd に関する開集合と d′d' に関する開集合が一致することをいう。
  • dd と d′d' が強同値(リプシッツ同値, strongly equivalent)であるとは、定数 c,C>0c, C > 0 が存在して任意の x,yx, y で c d(x,y)≤d′(x,y)≤C d(x,y)c\ d(x, y) \leq d'(x, y) \leq C\ d(x, y) となることをいう。

命題 1.33

  1. 次の 3 条件は同値である:(a) dd と d′d' は位相的に同値;(b) 恒等写像 (X,d)→(X,d′)(X, d) \to (X, d') とその逆がともに連続;(c) 任意の点列と点 aa について、dd で xn→ax_n \to a ⇔\Leftrightarrow d′d' で xn→ax_n \to a。
  2. 強同値な距離は位相的に同値である。

証明. 1. 恒等写像による開集合 VV の逆像は VV 自身なので、定理 1.27 (2) より (a)⇔\Leftrightarrow(b)。定理 1.27 (1) の (i)⇔\Leftrightarrow(ii) を各点で使えば (b)⇔\Leftrightarrow(c)。

  1. c d≤d′c\ d \leq d' より Bd′(a,cr)⊂Bd(a,r)B_{d'}(a, cr) \subset B_d(a, r)、d′≤C dd' \leq C\ d より Bd(a,r/C)⊂Bd′(a,r)B_d(a, r/C) \subset B_{d'}(a, r)。よって dd の開球の中に同じ中心の d′d' の開球があり、逆も成り立つ。開集合の定義に戻れば、dd で開であることと d′d' で開であることは同値。□\square

例 1.34 不等式 (1) より Rn\mathbb{R}^n の d1,d2,d∞d_1, d_2, d_\infty は互いに強同値であり、同じ開集合を定める。これを Rn\mathbb{R}^n のユークリッド位相の開集合という。

例 1.35(有界な距離)dd を XX 上の距離とし、d′(x,y)=min⁡(d(x,y),1)d'(x, y) = \min(d(x, y), 1) とおく。d′d' も距離である:三角不等式は、d(x,y)≥1d(x, y) \geq 1 または d(y,z)≥1d(y, z) \geq 1 なら右辺が 1 以上なので成り立ち、そうでなければ右辺は d(x,y)+d(y,z)≥d(x,z)≥d′(x,z)d(x, y) + d(y, z) \geq d(x, z) \geq d'(x, z)。r≤1r \leq 1 なら Bd′(a,r)=Bd(a,r)B_{d'}(a, r) = B_d(a, r) であり、開集合かどうかは小さな開球だけで判定できるから、dd と d′d' は位相的に同値である。ところが (R,∣⋅∣)(\mathbb{R}, \lvert \cdot \rvert) は有界でない(定義 1.43)のに対し d′≤1d' \leq 1 である。d(x,y)/(1+d(x,y))d(x,y)/(1 + d(x, y)) についても同様のことが成り立つ(問題 1.3 の解答を参照)。

例 1.36(位相では決まらない性質)R\mathbb{R} 上で e(x,y)=∣arctan⁡x−arctan⁡y∣e(x, y) = \lvert \arctan x - \arctan y \rvert とおく。arctan⁡\arctan は単射なので ee は距離である。arctan⁡ ⁣:R→(−π/2,π/2)\arctan\colon \mathbb{R} \to (-\pi/2, \pi/2) は連続で逆写像 tan⁡\tan も連続なので、xn→ax_n \to a(通常の距離)⇔\Leftrightarrow arctan⁡xn→arctan⁡a\arctan x_n \to \arctan a ⇔\Leftrightarrow e(xn,a)→0e(x_n, a) \to 0。命題 1.33 より ee は通常の距離と位相的に同値である。しかし

  • R\mathbb{R} は ee について有界(直径 ≤π\leq \pi)である。
  • 点列 xn=nx_n = n は ee についてコーシー列(arctan⁡n\arctan n が収束するので)だが、(R,e)(\mathbb{R}, e) で収束しない(収束列は通常の距離と同じだから)。完備性(第7章)は距離に依存する。
  • 恒等写像 (R,e)→(R,∣⋅∣)(\mathbb{R}, e) \to (\mathbb{R}, \lvert \cdot \rvert) は連続だが一様連続でない:e(n,n+1)→0e(n, n+1) \to 0 なのに ∣n−(n+1)∣=1\lvert n - (n+1) \rvert = 1。

有界性・完備性・一様連続性は、開集合(位相)だけからは決まらない「距離の性質」である。

例 1.37(同値でない距離)C[0,1]C[0, 1] の d∞d_\infty と d1d_1 は位相的に同値でない(例 1.24 の 3)。具体的に、d∞d_\infty の開球 Bd∞(0,1)B_{d_\infty}(0, 1) は d1d_1 の開集合ではない:どんな r>0r > 0 に対しても(rr を小さくしても主張は弱まらないので r≤1r \leq 1 としてよい)、高さ 2、底辺の長さ r/2r/2 の三角形のとげの形をした関数 gg(とげの外では 00)を考えると、d1(g,0)d_1(g, 0) はとげの面積 r/2r/2 に等しいので g∈Bd1(0,r)g \in B_{d_1}(0, r) だが、d∞(g,0)=2d_\infty(g, 0) = 2 なので g∉Bd∞(0,1)g \notin B_{d_\infty}(0, 1)。一方 d1≤d∞d_1 \leq d_\infty なので Bd∞(f,r)⊂Bd1(f,r)B_{d_\infty}(f, r) \subset B_{d_1}(f, r) となり、d1d_1 の開集合はすべて d∞d_\infty の開集合である。

1.8 等長写像・部分距離空間・有界性

定義 1.38(等長写像, isometry)距離空間の間の写像 f ⁣:(X,d)→(Y,e)f\colon (X, d) \to (Y, e) が任意の x,x′x, x' で e(f(x),f(x′))=d(x,x′)e(f(x), f(x')) = d(x, x') をみたすとき、ff を等長写像という。全単射な等長写像があるとき、XX と YY は等長同型 (isometric) であるという。

等長写像は自動的に単射(f(x)=f(x′)f(x) = f(x') なら d(x,x′)=0d(x, x') = 0)で、リプシッツ連続である。等長同型な距離空間は、距離空間として区別できない。

例 1.39

  1. (Rn,d2)(\mathbb{R}^n, d_2) の平行移動 x↦x+bx \mapsto x + b と直交変換 x↦Axx \mapsto Ax(AA は直交行列)は等長写像である。
  2. t↦(t,0)t \mapsto (t, 0) は R\mathbb{R} から (R2,di)(\mathbb{R}^2, d_i)(i=1,2,∞i = 1, 2, \infty)への等長写像である。
  3. (R2,d1)(\mathbb{R}^2, d_1) と (R2,d∞)(\mathbb{R}^2, d_\infty) は等長同型だが、(R2,d2)(\mathbb{R}^2, d_2) はどちらとも等長同型でない(問題 1.8)。ひし形を 45° 回転して拡大すれば正方形になる、という直観に対応している。

定義 1.40(部分距離空間, metric subspace)(X,d)(X, d) を距離空間、A⊂XA \subset X とする。dd を A×AA \times A に制限した dAd_A は AA 上の距離であり、(A,dA)(A, d_A) を XX の部分距離空間という。

部分距離空間の開球は BA(a,r)=BX(a,r)∩AB_A(a, r) = B_X(a, r) \cap A(a∈Aa \in A)である。

命題 1.41 A⊂XA \subset X を部分距離空間とする。V⊂AV \subset A が AA の開集合であるための必要十分条件は、XX のある開集合 UU によって V=U∩AV = U \cap A と書けることである。閉集合についても同様(XX の閉集合 FF によって F∩AF \cap A と書ける)である。

証明. (⇐\Leftarrow) a∈U∩Aa \in U \cap A なら BX(a,r)⊂UB_X(a, r) \subset U となる rr があり、BA(a,r)=BX(a,r)∩A⊂U∩AB_A(a, r) = B_X(a, r) \cap A \subset U \cap A。(⇒\Rightarrow) 各 a∈Va \in V について BA(a,ra)⊂VB_A(a, r_a) \subset V となる ra>0r_a > 0 を選び、U=⋃a∈VBX(a,ra)U = \bigcup_{a \in V} B_X(a, r_a) とおく。UU は XX の開集合で、U∩A=⋃a∈VBA(a,ra)=VU \cap A = \bigcup_{a \in V} B_A(a, r_a) = V。閉集合については、F′⊂AF' \subset A が AA で閉 ⇔\Leftrightarrow A∖F′=U∩AA \setminus F' = U \cap A(UU は XX で開)⇔\Leftrightarrow F′=(X∖U)∩AF' = (X \setminus U) \cap A による。□\square

注意

「開集合」は、どの空間の中で考えるかを明示しないと意味が定まらない。A=[0,2]A = [0, 2] のとき、[0,1)=(−1,1)∩A[0, 1) = (-1, 1) \cap A は AA の開集合だが R\mathbb{R} の開集合ではない。

例 1.42 A=QA = \mathbb{Q}(R\mathbb{R} の部分距離空間)で、S={q∈Q∣q2<2}S = \lbrace q \in \mathbb{Q} \mid q^2 < 2 \rbrace は S=(−2,2)∩QS = (-\sqrt{2}, \sqrt{2}) \cap \mathbb{Q} なので Q\mathbb{Q} の開集合であり、2\sqrt{2} が無理数であることから S=[−2,2]∩QS = [-\sqrt{2}, \sqrt{2}] \cap \mathbb{Q} でもあるので Q\mathbb{Q} の閉集合でもある。Q\mathbb{Q} は「すき間だらけ」で、∅\emptyset でも全体でもない開かつ閉な集合をもつ。

定義 1.43(有界, bounded)A⊂XA \subset X の直径 (diameter) を diam⁡A=sup⁡{d(x,y)∣x,y∈A}\operatorname{diam} A = \sup \lbrace d(x, y) \mid x, y \in A \rbrace(diam⁡∅=0\operatorname{diam} \emptyset = 0)と定め、diam⁡A<∞\operatorname{diam} A < \infty のとき AA は有界であるという。写像 f ⁣:S→Xf\colon S \to X は像 f(S)f(S) が有界なとき有界であるという。

A≠∅A \neq \emptyset が有界 ⇔\Leftrightarrow ある a∈Xa \in X, r>0r > 0 で A⊂B(a,r)A \subset B(a, r) である。実際、A⊂B(a,r)A \subset B(a, r) なら三角不等式から diam⁡A≤2r\operatorname{diam} A \leq 2r であり、逆に diam⁡A=D<∞\operatorname{diam} A = D < \infty なら任意の a∈Aa \in A について A⊂B(a,D+1)A \subset B(a, D + 1) である。

例 1.44

  1. (Rn,d2)(\mathbb{R}^n, d_2) では、有界 ⇔\Leftrightarrow ある立方体 [−M,M]n[-M, M]^n に含まれる。d1,d∞d_1, d_\infty でも同じである(不等式 (1))。
  2. 例 1.35・例 1.36 のとおり、有界性は位相的に同値な距離で変わりうる。
  3. Rn\mathbb{R}^n では「有界閉集合」がコンパクト集合と一致する(ハイネ–ボレルの定理、第5章)。しかし無限集合 XX に離散距離を入れると、XX 自身は有界閉集合なのに、互いに異なる点からなる点列は収束部分列をもたない(例 1.24 の 2)。「有界閉ならよい性質をもつ」のは Rn\mathbb{R}^n の特殊事情である。

まとめ

  • 距離空間は、正値性・対称性・三角不等式をみたす距離 dd をもつ集合である。Rn\mathbb{R}^n の d1,d2,d∞d_1, d_2, d_\infty、C[a,b]C[a,b] の一様距離と L1L^1 距離、離散距離、ハミング距離、pp 進距離(超距離)などがある。
  • 開集合とは「各点のまわりに開球が入る」集合であり、空集合と全体を含み、有限個の共通部分と任意個の和集合で閉じている。無限個の共通部分では閉じていない。
  • 内部は含まれる最大の開集合、閉包は含む最小の閉集合で、閉包は点列の極限全体と一致する。
  • 連続性は ε-δ、点列、「開集合の逆像が開」の 3 通りで特徴づけられる。最後の条件は距離を使わずに述べられる。
  • 一様連続性・有界性・完備性は、位相的に同値な距離の取り替えで変わりうる「距離の性質」である。
  • 部分距離空間の開集合は、全体の開集合と部分集合の共通部分である。

演習問題

問題 1.1 ★ 距離空間 (X,d)(X, d) で ∣d(x,y)−d(x′,y′)∣≤d(x,x′)+d(y,y′)\lvert d(x, y) - d(x', y') \rvert \leq d(x, x') + d(y, y') を示せ。これを用いて、xn→xx_n \to x, yn→yy_n \to y ならば d(xn,yn)→d(x,y)d(x_n, y_n) \to d(x, y) であることを示せ。

解答

三角不等式を 2 回使うと d(x,y)≤d(x,x′)+d(x′,y′)+d(y′,y)d(x, y) \leq d(x, x') + d(x', y') + d(y', y)、すなわち d(x,y)−d(x′,y′)≤d(x,x′)+d(y,y′)d(x, y) - d(x', y') \leq d(x, x') + d(y, y')。(x,y)(x, y) と (x′,y′)(x', y') を入れ替えれば逆向きの不等式も得られる。後半は ∣d(xn,yn)−d(x,y)∣≤d(xn,x)+d(yn,y)→0\lvert d(x_n, y_n) - d(x, y) \rvert \leq d(x_n, x) + d(y_n, y) \to 0 による。

問題 1.2 ★ (R2,d2)(\mathbb{R}^2, d_2) の次の部分集合の内部・閉包・境界を求めよ。 (a) A={(x,y)∣0<x2+y2≤1}A = \lbrace (x, y) \mid 0 < x^2 + y^2 \leq 1 \rbrace (b) B={(x,0)∣x∈Q}B = \lbrace (x, 0) \mid x \in \mathbb{Q} \rbrace (c) C={(1/n,0)∣n∈N}C = \lbrace (1/n, 0) \mid n \in \mathbb{N} \rbrace

解答

(a) A∘={0<x2+y2<1}A^\circ = \lbrace 0 < x^2 + y^2 < 1 \rbrace、A‾={x2+y2≤1}\overline{A} = \lbrace x^2 + y^2 \leq 1 \rbrace、∂A={x2+y2=1}∪{(0,0)}\partial A = \lbrace x^2 + y^2 = 1 \rbrace \cup \lbrace (0, 0) \rbrace。原点は AA に属さないが、原点中心のどの開球も AA の点を含むので触点であり、AA の外の点(原点自身)も含むので内点ではない。単位円上の点も同様に境界点である。

(b) BB は xx 軸に含まれ、どの開球も xx 軸の外の点を含むので B∘=∅B^\circ = \emptyset。xx 軸上の任意の点 (t,0)(t, 0) には有理数列 qn→tq_n \to t による点列 (qn,0)(q_n, 0) が収束するので (t,0)∈B‾(t, 0) \in \overline{B}。xx 軸の外の点 (s,t)(s, t)(t≠0t \neq 0)は B(⋅,∣t∣)B(\cdot, \lvert t \rvert) が xx 軸と交わらないので触点でない。よって B‾=∂B=R×{0}\overline{B} = \partial B = \mathbb{R} \times \lbrace 0 \rbrace。

(c) 同様に C∘=∅C^\circ = \emptyset。(1/n,0)→(0,0)(1/n, 0) \to (0, 0) なので原点は触点。それ以外の点 p∉C∪{(0,0)}p \notin C \cup \lbrace (0, 0) \rbrace は触点でない:ρ=d2(p,(0,0))>0\rho = d_2(p, (0,0)) > 0 とおくと、CC の点で pp からの距離が ρ/2\rho/2 未満のものは原点からの距離が ρ/2\rho/2 より大きいので 1/n>ρ/21/n > \rho/2 をみたし、有限個しかない。それらと pp との距離の最小値(正)と ρ/2\rho/2 より小さい r>0r > 0 をとれば B(p,r)∩C=∅B(p, r) \cap C = \emptyset となる。よって C‾=∂C=C∪{(0,0)}\overline{C} = \partial C = C \cup \lbrace (0, 0) \rbrace。

問題 1.3 ★ (a) d(x,y)=∣x−y∣d(x, y) = \sqrt{\lvert x - y \rvert} は R\mathbb{R} 上の距離で、通常の距離と位相的に同値であることを示せ。(b) 距離 dd に対し d′′(x,y)=d(x,y)/(1+d(x,y))d''(x, y) = d(x, y)/(1 + d(x, y)) は距離で、dd と位相的に同値であることを示せ。

解答

(a) (D1)(D2) は明らか。∣x−z∣≤∣x−y∣+∣y−z∣≤∣x−y∣+∣y−z∣\sqrt{\lvert x - z \rvert} \leq \sqrt{\lvert x - y \rvert + \lvert y - z \rvert} \leq \sqrt{\lvert x - y \rvert} + \sqrt{\lvert y - z \rvert}(2 番目は両辺を 2 乗すればわかる)より三角不等式が成り立つ。∣xn−a∣→0⇔∣xn−a∣→0\sqrt{\lvert x_n - a \rvert} \to 0 \Leftrightarrow \lvert x_n - a \rvert \to 0 なので収束列が一致し、命題 1.33 より位相的に同値。

(b) φ(t)=t/(1+t)\varphi(t) = t/(1+t) は [0,∞)[0, \infty) で単調増加で、s,t≥0s, t \geq 0 に対し

φ(s+t)=s1+s+t+t1+s+t≤s1+s+t1+t=φ(s)+φ(t)\varphi(s + t) = \frac{s}{1 + s + t} + \frac{t}{1 + s + t} \leq \frac{s}{1 + s} + \frac{t}{1 + t} = \varphi(s) + \varphi(t)

をみたす。よって d′′(x,z)=φ(d(x,z))≤φ(d(x,y)+d(y,z))≤d′′(x,y)+d′′(y,z)d''(x, z) = \varphi(d(x, z)) \leq \varphi(d(x, y) + d(y, z)) \leq d''(x, y) + d''(y, z)。(D1)(D2) は明らか。d′′≤dd'' \leq d であり、d′′<1/2d'' < 1/2 なら d<1d < 1 なので d≤2d′′d \leq 2 d''。よって d(xn,a)→0⇔d′′(xn,a)→0d(x_n, a) \to 0 \Leftrightarrow d''(x_n, a) \to 0 で、位相的に同値である。

問題 1.4 ★★ (X,d)(X, d) を超距離空間(d(x,z)≤max⁡(d(x,y),d(y,z))d(x, z) \leq \max(d(x, y), d(y, z)) をみたす)とする。次を示せ。 (a) d(x,y)≠d(y,z)d(x, y) \neq d(y, z) ならば d(x,z)=max⁡(d(x,y),d(y,z))d(x, z) = \max(d(x, y), d(y, z))(「すべての三角形は二等辺三角形」)。 (b) b∈B(a,r)b \in B(a, r) ならば B(b,r)=B(a,r)B(b, r) = B(a, r)(開球のすべての点が中心)。 (c) 2 つの開球は、交わらないか一方が他方を含む。 (d) 開球は閉集合でもある。

解答

(a) d(x,y)<d(y,z)d(x, y) < d(y, z) としてよい。超距離不等式より d(x,z)≤d(y,z)d(x, z) \leq d(y, z)。一方 d(y,z)≤max⁡(d(y,x),d(x,z))d(y, z) \leq \max(d(y, x), d(x, z)) で、d(y,x)<d(y,z)d(y, x) < d(y, z) だから右辺の最大値は d(x,z)d(x, z) でなければならず、d(y,z)≤d(x,z)d(y, z) \leq d(x, z)。よって等号。

(b) x∈B(a,r)x \in B(a, r) なら d(b,x)≤max⁡(d(b,a),d(a,x))<rd(b, x) \leq \max(d(b, a), d(a, x)) < r なので B(a,r)⊂B(b,r)B(a, r) \subset B(b, r)。a∈B(b,r)a \in B(b, r) なので同様に逆の包含も成り立つ。

(c) c∈B(a,r)∩B(b,s)c \in B(a, r) \cap B(b, s)、r≤sr \leq s とする。(b) より B(a,r)=B(c,r)⊂B(c,s)=B(b,s)B(a, r) = B(c, r) \subset B(c, s) = B(b, s)。

(d) x∉B(a,r)x \notin B(a, r) とする。B(x,r)∩B(a,r)≠∅B(x, r) \cap B(a, r) \neq \emptyset なら (c) の証明(半径が等しい場合)から B(x,r)=B(a,r)B(x, r) = B(a, r) となり x∈B(a,r)x \in B(a, r) に反する。よって B(x,r)⊂X∖B(a,r)B(x, r) \subset X \setminus B(a, r) で、補集合は開。

問題 1.5 ★★ 距離空間 XX の部分集合 A,BA, B について次を示せ。 (a) ∂A=∅\partial A = \emptyset ⇔\Leftrightarrow AA は開かつ閉。 (b) A∪B‾=A‾∪B‾\overline{A \cup B} = \overline{A} \cup \overline{B}、(A∩B)∘=A∘∩B∘(A \cap B)^\circ = A^\circ \cap B^\circ。 (c) A∩B‾⊂A‾∩B‾\overline{A \cap B} \subset \overline{A} \cap \overline{B} であり、等号が成り立たない例がある。

解答

(a) ∂A=A‾∖A∘\partial A = \overline{A} \setminus A^\circ で A∘⊂A⊂A‾A^\circ \subset A \subset \overline{A} なので、∂A=∅⇔A‾=A∘⇔A‾=A=A∘\partial A = \emptyset \Leftrightarrow \overline{A} = A^\circ \Leftrightarrow \overline{A} = A = A^\circ。命題 1.19 の 4 より、これは AA が開かつ閉であることと同値。

(b) A‾∪B‾\overline{A} \cup \overline{B} は A∪BA \cup B を含む閉集合なので A∪B‾⊂A‾∪B‾\overline{A \cup B} \subset \overline{A} \cup \overline{B}。逆に A⊂A∪BA \subset A \cup B より A‾⊂A∪B‾\overline{A} \subset \overline{A \cup B}(閉包の最小性)、BB も同様。内部の等式は補集合をとって命題 1.19 の 2 を使えば閉包の等式に帰着する。

(c) A‾∩B‾\overline{A} \cap \overline{B} は A∩BA \cap B を含む閉集合なので包含が成り立つ。A=QA = \mathbb{Q}, B=R∖QB = \mathbb{R} \setminus \mathbb{Q} とすると左辺は ∅\emptyset、右辺は R\mathbb{R}。

問題 1.6 ★★ f,g ⁣:X→Rf, g\colon X \to \mathbb{R} を連続関数とする。(a) {x∣f(x)<g(x)}\lbrace x \mid f(x) < g(x) \rbrace は開集合、{x∣f(x)≤g(x)}\lbrace x \mid f(x) \leq g(x) \rbrace は閉集合であることを示せ。(b) P={f∈C[0,1]∣すべての x で f(x)>0}P = \lbrace f \in C[0,1] \mid \text{すべての } x \text{ で } f(x) > 0 \rbrace は d∞d_\infty の開集合だが d1d_1 の開集合でないことを示せ。

解答

(a) h=g−fh = g - f は連続なので(∣h(x)−h(a)∣≤∣g(x)−g(a)∣+∣f(x)−f(a)∣\lvert h(x) - h(a) \rvert \leq \lvert g(x) - g(a) \rvert + \lvert f(x) - f(a) \rvert)、{f<g}=h−1((0,∞))\lbrace f < g \rbrace = h^{-1}((0, \infty)) は開、{f≤g}=h−1([0,∞))\lbrace f \leq g \rbrace = h^{-1}([0, \infty)) は閉(定理 1.27)。

(b) f∈Pf \in P なら最大値の定理より m=min⁡f>0m = \min f > 0。d∞(g,f)<md_\infty(g, f) < m なら各点で g(x)>f(x)−m≥0g(x) > f(x) - m \geq 0 なので Bd∞(f,m)⊂PB_{d_\infty}(f, m) \subset P。一方、定数関数 1∈P1 \in P について、どんな r>0r > 0 に対しても(r≤1r \leq 1 としてよい)、11 から下向きに深さ 2、底辺の長さ r/2r/2 の三角形のくぼみを作った関数 gg(くぼみの外では 11、最小値 −1-1)を考えると、d1(g,1)d_1(g, 1) はくぼみの面積 r/2r/2 に等しいので g∈Bd1(1,r)g \in B_{d_1}(1, r) だが、gg は負の値をとるので g∉Pg \notin P。よって Bd1(1,r)⊄PB_{d_1}(1, r) \not\subset P で、PP は d1d_1 の開集合でない。

問題 1.7 ★★ A,BA, B を距離空間 XX の交わらない空でない閉集合とし、f(x)=d(x,A)/(d(x,A)+d(x,B))f(x) = d(x, A)/(d(x, A) + d(x, B)) とおく。ff は XX 上で定義された連続関数で、AA 上で 00、BB 上で 11 となることを示せ。これを用いて、A⊂UA \subset U, B⊂VB \subset V, U∩V=∅U \cap V = \emptyset となる開集合 U,VU, V が存在することを示せ。

解答

分母が 00 になるのは d(x,A)=d(x,B)=0d(x, A) = d(x, B) = 0、すなわち(例 1.28 の 2 より)x∈A‾∩B‾=A∩B=∅x \in \overline{A} \cap \overline{B} = A \cap B = \emptyset のときだけなので、分母は常に正。d(⋅,A),d(⋅,B)d(\cdot, A), d(\cdot, B) は連続なので、商 ff も連続である(実数値連続関数の和・商の連続性は微分積分学と同じ証明、または点列による特徴づけで示せる)。x∈Ax \in A なら d(x,A)=0d(x, A) = 0 で f(x)=0f(x) = 0、x∈Bx \in B なら d(x,B)=0d(x, B) = 0 で f(x)=1f(x) = 1。U=f−1((−∞,1/2))U = f^{-1}((-\infty, 1/2)), V=f−1((1/2,∞))V = f^{-1}((1/2, \infty)) とおけば求める開集合になる。

問題 1.8 ★★ (a) φ(x,y)=(x+y,x−y)\varphi(x, y) = (x + y, x - y) は (R2,d1)(\mathbb{R}^2, d_1) から (R2,d∞)(\mathbb{R}^2, d_\infty) への等長同型であることを示せ。(b) (R2,d2)(\mathbb{R}^2, d_2) は (R2,d∞)(\mathbb{R}^2, d_\infty) と等長同型でないことを示せ。(ヒント:2 点 p,qp, q に対し d(p,m)=d(m,q)=d(p,q)/2d(p, m) = d(m, q) = d(p, q)/2 となる点 mm の個数を比べよ。)

解答

(a) 実数 a,ba, b について max⁡(∣a+b∣,∣a−b∣)=∣a∣+∣b∣\max(\lvert a + b \rvert, \lvert a - b \rvert) = \lvert a \rvert + \lvert b \rvert が成り立つ(a,ba, b が同符号なら ∣a+b∣\lvert a + b \rvert、異符号なら ∣a−b∣\lvert a - b \rvert が右辺に等しく、他方は右辺以下)。a=x−x′a = x - x', b=y−y′b = y - y' とすれば d∞(φ(x,y),φ(x′,y′))=d1((x,y),(x′,y′))d_\infty(\varphi(x, y), \varphi(x', y')) = d_1((x, y), (x', y'))。φ\varphi は逆写像 (u,v)↦((u+v)/2,(u−v)/2)(u, v) \mapsto ((u+v)/2, (u-v)/2) をもつ全単射である。

(b) 2 点 p,qp, q の「中点集合」M(p,q)={m∣d(p,m)=d(m,q)=d(p,q)/2}M(p, q) = \lbrace m \mid d(p, m) = d(m, q) = d(p, q)/2 \rbrace を考える。等長同型 ψ\psi は M(p,q)M(p, q) を M(ψ(p),ψ(q))M(\psi(p), \psi(q)) に全単射で写す。d∞d_\infty で p=(0,0)p = (0, 0), q=(2,0)q = (2, 0) とすると、(1,t)(1, t)(∣t∣≤1\lvert t \rvert \leq 1)はすべて中点なので M(p,q)M(p, q) は無限集合。d2d_2 では M(p,q)M(p, q) は常に 1 点 (p+q)/2(p+q)/2 である:mm が中点なら ∥m−p∥+∥q−m∥=∥q−p∥\lVert m - p \rVert + \lVert q - m \rVert = \lVert q - p \rVert で、例 1.4 の証明で等号が成り立つにはコーシー–シュワルツの不等式で等号、すなわち m−pm - p と q−mq - m が同じ向きに平行である必要があり、長さが等しいので m−p=q−mm - p = q - m。もし等長同型 ψ ⁣:(R2,d∞)→(R2,d2)\psi\colon (\mathbb{R}^2, d_\infty) \to (\mathbb{R}^2, d_2) があれば、無限集合 Md∞(p,q)M_{d_\infty}(p, q) が 1 点集合 Md2(ψ(p),ψ(q))M_{d_2}(\psi(p), \psi(q)) と全単射で対応することになり矛盾する。(a) より d1d_1 についても同じ結論を得る。

問題 1.9 ★★ N\mathbb{N} 上で d(m,n)=∣1/m−1/n∣d(m, n) = \lvert 1/m - 1/n \rvert とおく。(a) dd は距離であり、離散距離と位相的に同値であることを示せ。(b) dd と離散距離は強同値でないことを示せ。(c) 点列 xn=nx_n = n は dd に関してコーシー列(任意の ε>0\varepsilon > 0 に対し m,n≥Nm, n \geq N で d(xm,xn)<εd(x_m, x_n) < \varepsilon)だが収束しないことを示せ。

解答

(a) n↦1/nn \mapsto 1/n は単射なので dd は距離。nn に最も近い別の点までの距離は 1/n−1/(n+1)=1/(n(n+1))>01/n - 1/(n+1) = 1/(n(n+1)) > 0 なので、rn=1/(n(n+1))r_n = 1/(n(n+1)) とおくと Bd(n,rn)={n}B_d(n, r_n) = \lbrace n \rbrace。よって 1 点集合は dd で開、すべての部分集合が開となり、離散距離と同じ開集合をもつ。

(b) 強同値なら c>0c > 0 で c⋅1≤d(m,n)c \cdot 1 \leq d(m, n)(m≠nm \neq n)となるはずだが、d(n,n+1)→0d(n, n+1) \to 0。

(c) m,n≥Nm, n \geq N なら d(m,n)<1/Nd(m, n) < 1/N なのでコーシー列。a∈Na \in \mathbb{N} に収束するなら、(a) の位相の同値性から「離散距離でも収束」するので、ある番号以降 xn=ax_n = a となるが、xn=nx_n = n はそうならない。

問題 1.10 ★★★ (X,d)(X, d) を空でない距離空間とし、点 a∈Xa \in X を固定する。XX 上の有界な実数値関数全体 B(X)B(X) に一様距離 d∞(f,g)=sup⁡z∈X∣f(z)−g(z)∣d_\infty(f, g) = \sup_{z \in X} \lvert f(z) - g(z) \rvert を入れる。fx(z)=d(z,x)−d(z,a)f_x(z) = d(z, x) - d(z, a) とおくと、x↦fxx \mapsto f_x は XX から B(X)B(X) への等長写像であることを示せ(クラトフスキーの埋め込み)。

解答

命題 1.3 より ∣fx(z)∣=∣d(z,x)−d(z,a)∣≤d(x,a)\lvert f_x(z) \rvert = \lvert d(z, x) - d(z, a) \rvert \leq d(x, a) なので fxf_x は有界で fx∈B(X)f_x \in B(X)。また任意の zz で ∣fx(z)−fy(z)∣=∣d(z,x)−d(z,y)∣≤d(x,y)\lvert f_x(z) - f_y(z) \rvert = \lvert d(z, x) - d(z, y) \rvert \leq d(x, y) なので d∞(fx,fy)≤d(x,y)d_\infty(f_x, f_y) \leq d(x, y)。z=yz = y とすると ∣d(y,x)−d(y,y)∣=d(x,y)\lvert d(y, x) - d(y, y) \rvert = d(x, y) なので上限は達成され、d∞(fx,fy)=d(x,y)d_\infty(f_x, f_y) = d(x, y)。これは任意の距離空間が(完備な)関数空間の部分空間とみなせることを意味し、第7章の完備化の別証明にも使える。

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