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03 集合と位相 · 第 7 章

完備距離空間

目安 9〜13 時間定理など 13演習 10 問

この章の目標

  • コーシー列と完備性を理解し、完備な例(Rn\mathbb{R}^n、C(X)C(X)、有界関数の空間)と完備でない例を区別できる
  • 距離空間の完備化を構成し、その一意性を証明できる
  • 縮小写像の原理を証明し、連立一次方程式・積分方程式に応用できる
  • ベールのカテゴリー定理を証明し、「ほとんどすべて」の意味での存在証明に使える
  • ストーン–ワイエルシュトラスの定理を証明し、多項式・三角多項式による一様近似を導ける

前提:第1章、第4章、第5章

Q\mathbb{Q} では 1,1.4,1.41,1.414,…1, 1.4, 1.41, 1.414, \dots のように「互いにいくらでも近づく」のに極限をもたない数列がある。実数の連続性はこの欠陥を埋めるもので、微分積分学のほとんどの存在定理(中間値の定理、最大値の定理、級数の収束)はそこから導かれた。本章では、この性質を一般の距離空間で扱う。完備性は、「解を近似する列を作れば、極限として解が存在する」という形の存在証明を可能にする。縮小写像の原理とベールのカテゴリー定理は、その代表的な道具である。

7.1 コーシー列と完備性

定義 7.1(コーシー列, 完備)距離空間 (X,d)(X, d) の点列 (xn)(x_n) が

∀ε>0, ∃N, ∀m,n≥N, d(xm,xn)<ε\forall \varepsilon > 0,\ \exists N,\ \forall m, n \geq N,\ d(x_m, x_n) < \varepsilon

をみたすときコーシー列 (Cauchy sequence) という。XX のすべてのコーシー列が XX の点に収束するとき、XX は完備 (complete) であるという。

命題 7.2

  1. 収束列はコーシー列である。
  2. コーシー列は有界である。
  3. 収束部分列をもつコーシー列は収束する。

証明. 1. xn→ax_n \to a なら d(xm,xn)≤d(xm,a)+d(a,xn)d(x_m, x_n) \leq d(x_m, a) + d(a, x_n)。2. m,n≥Nm, n \geq N で d(xm,xn)<1d(x_m, x_n) < 1 となる NN をとれば、すべての項は xNx_N から距離 max⁡(1,d(x1,xN),…,d(xN−1,xN))\max(1, d(x_1, x_N), \dots, d(x_{N-1}, x_N)) 以内にある。3. 定理 5.20 の証明(2 ⇒\Rightarrow 3)で示した。□\square

例 7.3(完備な空間)

  1. R\mathbb{R} は完備である(コーシーの収束判定法、微分積分学 第2章)。
  2. (Rn,d2)(\mathbb{R}^n, d_2) は完備である。不等式 (1)(第1章)より、コーシー列の各成分は実数のコーシー列なので収束し、成分ごとの収束は d2d_2 での収束と同値である。
  3. 離散距離空間は完備である(コーシー列は ε=1/2\varepsilon = 1/2 として、ある番号以降定数)。
  4. コンパクト距離空間は完備である(定理 5.20)。

例 7.4(完備でない空間)

  1. Q\mathbb{Q}:2\sqrt{2} の小数近似の列は Q\mathbb{Q} のコーシー列だが、Q\mathbb{Q} に極限をもたない。
  2. (0,1)(0, 1):1/n1/n はコーシー列だが (0,1)(0, 1) に極限をもたない。(0,1)(0, 1) は完備な R\mathbb{R} と同相なので、完備性は位相的性質でない(例 1.36 も参照)。
  3. (C[0,1],d1)(C[0, 1], d_1):問題 7.1 を参照。
  4. (Q,ρp)(\mathbb{Q}, \rho_p)(pp 進距離)も完備でない。その完備化が pp 進数体 Qp\mathbb{Q}_p である(例 7.12)。

命題 7.5 AA を距離空間 XX の部分集合とする。

  1. AA が(部分距離空間として)完備ならば、AA は XX の閉集合である。
  2. XX が完備で AA が閉集合ならば、AA は完備である。

証明. 1. a∈A‾a \in \overline{A} なら AA の点列 an→aa_n \to a があり(命題 1.25)、(an)(a_n) は AA のコーシー列なので AA の点 a′a' に収束する。極限の一意性より a=a′∈Aa = a' \in A。2. AA のコーシー列は XX で収束し、AA が閉なので極限は AA に属する。□\square

次の定理が関数空間の完備性の基本である。集合 SS 上の有界な実数値関数全体を B(S)B(S) とし、一様距離 d∞(f,g)=sup⁡s∈S∣f(s)−g(s)∣d_\infty(f, g) = \sup_{s \in S} \lvert f(s) - g(s) \rvert を入れる。位相空間 XX 上の有界な実数値連続関数全体を Cb(X)⊂B(X)C_b(X) \subset B(X) と書く。

定理 7.6(関数空間の完備性)

  1. (B(S),d∞)(B(S), d_\infty) は完備である。
  2. 位相空間 XX について、Cb(X)C_b(X) は B(X)B(X) の閉集合であり、したがって完備である。
  3. XX がコンパクトなら C(X)=Cb(X)C(X) = C_b(X) であり、(C(X),d∞)(C(X), d_\infty) は完備である。特に (C[a,b],d∞)(C[a, b], d_\infty) は完備である。

証明. 1. (fn)(f_n) をコーシー列とする。各 ss で ∣fm(s)−fn(s)∣≤d∞(fm,fn)\lvert f_m(s) - f_n(s) \rvert \leq d_\infty(f_m, f_n) なので (fn(s))(f_n(s)) は実数のコーシー列で、極限 f(s)f(s) をもつ。ε>0\varepsilon > 0 に対し m,n≥Nm, n \geq N で d∞(fm,fn)<εd_\infty(f_m, f_n) < \varepsilon とすると、各 ss で ∣fn(s)−fm(s)∣<ε\lvert f_n(s) - f_m(s) \rvert < \varepsilon。m→∞m \to \infty として、n≥Nn \geq N ならすべての ss で ∣fn(s)−f(s)∣≤ε\lvert f_n(s) - f(s) \rvert \leq \varepsilon。よって ff は有界(∣f∣≤∣fN∣+ε\lvert f \rvert \leq \lvert f_N \rvert + \varepsilon)で f∈B(S)f \in B(S)、かつ d∞(fn,f)≤εd_\infty(f_n, f) \leq \varepsilon(n≥Nn \geq N)なので fn→ff_n \to f。

  1. Cb(X)C_b(X) の点列が B(X)B(X) で ff に収束するなら、それは一様収束なので補題 4.10 より ff は連続。よって Cb(X)C_b(X) は閉で、命題 7.5 より完備。

  2. コンパクト空間上の連続関数は有界(系 5.9)。□\square

例 7.7(数列空間の予告)有界な実数列全体 ℓ∞=B(N)\ell^\infty = B(\mathbb{N}) は定理 7.6 より完備である。1≤p<∞1 \leq p < \infty に対し ∑∣xn∣p<∞\sum \lvert x_n \rvert^p < \infty となる数列全体 ℓp\ell^p に距離 dp(x,y)=(∑∣xn−yn∣p)1/pd_p(x, y) = (\sum \lvert x_n - y_n \rvert^p)^{1/p} を入れた空間も完備である(関数解析 第1章)。完備なノルム空間をバナッハ空間という。

補足

完備性は位相的性質ではないが、「位相を変えずに完備な距離に取り替えられる」という性質(完備距離化可能性)は位相的性質である。(0,1)(0, 1) は R\mathbb{R} と同相なので完備距離化可能である。ベールのカテゴリー定理(7.4 節)は完備距離化可能な空間でそのまま成り立つ。

7.2 完備化

Q\mathbb{Q} に「足りない点」を補うと R\mathbb{R} が得られる。任意の距離空間でこれができる。

定義 7.8(完備化, completion)距離空間 XX の完備化とは、完備距離空間 X^\hat{X} と等長写像 ι ⁣:X→X^\iota\colon X \to \hat{X} の組で、ι(X)\iota(X) が X^\hat{X} で稠密なものをいう。

補題 7.9(一様連続写像の拡張)AA を距離空間 XX の稠密な部分集合、YY を完備距離空間、f ⁣:A→Yf\colon A \to Y を一様連続写像とする。ff はただ一つの連続写像 F ⁣:X→YF\colon X \to Y に拡張でき、FF は一様連続である。ff が等長写像なら FF も等長写像である。

証明. (定義)x∈Xx \in X に対し AA の点列 an→xa_n \to x をとる(稠密性と命題 1.25)。(an)(a_n) はコーシー列で、一様連続写像はコーシー列をコーシー列に写す(ε\varepsilon に対する δ\delta をとり、d(am,an)<δd(a_m, a_n) < \delta となる番号以降を考えればよい)ので、(f(an))(f(a_n)) は YY のコーシー列であり、極限をもつ。F(x)=lim⁡f(an)F(x) = \lim f(a_n) とおく。別の列 an′→xa'_n \to x をとっても、交互に並べた列 a1,a1′,a2,a2′,…a_1, a'_1, a_2, a'_2, \dots も xx に収束するので、その像も収束し、2 つの極限は一致する。よって FF は well-defined で、a∈Aa \in A なら定数列をとって F(a)=f(a)F(a) = f(a)。

(一様連続性)ε>0\varepsilon > 0 に対し、ff の一様連続性の δ\delta をとる。d(x,x′)<δd(x, x') < \delta なら an→xa_n \to x, an′→x′a'_n \to x' について d(an,an′)→d(x,x′)d(a_n, a'_n) \to d(x, x')(問題 1.1)なので、十分大きな nn で d(an,an′)<δd(a_n, a'_n) < \delta、したがって e(f(an),f(an′))<εe(f(a_n), f(a'_n)) < \varepsilon。n→∞n \to \infty として e(F(x),F(x′))≤εe(F(x), F(x')) \leq \varepsilon。

(一意性)2 つの連続な拡張は稠密集合 AA 上で一致するので、YY がハウスドルフであることから一致する(問題 4.4)。ff が等長写像なら e(F(x),F(x′))=lim⁡e(f(an),f(an′))=lim⁡d(an,an′)=d(x,x′)e(F(x), F(x')) = \lim e(f(a_n), f(a'_n)) = \lim d(a_n, a'_n) = d(x, x')。□\square

定理 7.10(完備化の存在と一意性)任意の距離空間 XX は完備化 (X^,ι)(\hat{X}, \iota) をもつ。また (Y,j)(Y, j) を別の完備化とすると、Φ∘ι=j\Phi \circ \iota = j となる全単射な等長写像 Φ ⁣:X^→Y\Phi\colon \hat{X} \to Y がただ一つ存在する。

証明. (構成)XX のコーシー列全体を C\mathcal{C} とし、(xn)∼(yn)⇔d(xn,yn)→0(x_n) \sim (y_n) \Leftrightarrow d(x_n, y_n) \to 0 と定める。これは同値関係である(推移律は三角不等式による)。X^=C/∼\hat{X} = \mathcal{C}/{\sim} とし、(xn)(x_n) の同値類を [xn][x_n] と書く。

(距離)問題 1.1 より ∣d(xm,ym)−d(xn,yn)∣≤d(xm,xn)+d(ym,yn)\lvert d(x_m, y_m) - d(x_n, y_n) \rvert \leq d(x_m, x_n) + d(y_m, y_n) なので (d(xn,yn))(d(x_n, y_n)) は実数のコーシー列で、極限をもつ。d^([xn],[yn])=lim⁡d(xn,yn)\hat{d}([x_n], [y_n]) = \lim d(x_n, y_n) とおく。(xn)∼(xn′)(x_n) \sim (x'_n), (yn)∼(yn′)(y_n) \sim (y'_n) なら同じ不等式で ∣d(xn,yn)−d(xn′,yn′)∣≤d(xn,xn′)+d(yn,yn′)→0\lvert d(x_n, y_n) - d(x'_n, y'_n) \rvert \leq d(x_n, x'_n) + d(y_n, y'_n) \to 0 なので、d^\hat{d} は代表元によらない。(D1):d^≥0\hat{d} \geq 0 で、d^=0\hat{d} = 0 は ∼\sim の定義そのもの。(D2)(D3) は dd の対称性・三角不等式の極限をとればよい。

(埋め込み)ι(x)=[x,x,x,… ]\iota(x) = [x, x, x, \dots] は明らかに等長写像。

(稠密性)ξ=[xn]∈X^\xi = [x_n] \in \hat{X} とする。ε>0\varepsilon > 0 に対し m,n≥Nm, n \geq N で d(xm,xn)<εd(x_m, x_n) < \varepsilon とすると、m≥Nm \geq N なら d^(ι(xm),ξ)=lim⁡nd(xm,xn)≤ε\hat{d}(\iota(x_m), \xi) = \lim_n d(x_m, x_n) \leq \varepsilon。よって ι(xm)→ξ\iota(x_m) \to \xi。

(完備性)(ξk)(\xi_k) を X^\hat{X} のコーシー列とする。稠密性から d^(ι(xk),ξk)<1/k\hat{d}(\iota(x_k), \xi_k) < 1/k となる xk∈Xx_k \in X を選ぶ。

d(xk,xl)=d^(ι(xk),ι(xl))≤1k+d^(ξk,ξl)+1ld(x_k, x_l) = \hat{d}(\iota(x_k), \iota(x_l)) \leq \frac{1}{k} + \hat{d}(\xi_k, \xi_l) + \frac{1}{l}

なので (xk)(x_k) は XX のコーシー列であり、ξ=[xk]∈X^\xi = [x_k] \in \hat{X} が定まる。d^(ξk,ξ)≤1/k+d^(ι(xk),ξ)=1/k+lim⁡ld(xk,xl)\hat{d}(\xi_k, \xi) \leq 1/k + \hat{d}(\iota(x_k), \xi) = 1/k + \lim_l d(x_k, x_l) で、右辺は (xk)(x_k) がコーシー列であることから k→∞k \to \infty で 00 に近づく。よって ξk→ξ\xi_k \to \xi。

(一意性)j∘ι−1 ⁣:ι(X)→Yj \circ \iota^{-1}\colon \iota(X) \to Y は等長写像なので、補題 7.9 により等長写像 Φ ⁣:X^→Y\Phi\colon \hat{X} \to Y に一意に拡張される。Φ(X^)\Phi(\hat{X}) は完備(等長同型な像)なので YY の閉集合(命題 7.5)で、稠密な j(X)j(X) を含むから Φ(X^)=Y\Phi(\hat{X}) = Y。等長写像は単射なので Φ\Phi は全単射。Φ∘ι=j\Phi \circ \iota = j をみたす連続写像の一意性も補題 7.9 による。□\square

例 7.11 問題 1.10 のクラトフスキーの埋め込み X→B(X)X \to B(X) を使うと、B(X)B(X) は完備(定理 7.6)なので、像の閉包として完備化が得られる。これは定理 7.10 の別証明である。

例 7.12

  1. Q\mathbb{Q}(通常の距離)の完備化は R\mathbb{R} である(Q\mathbb{Q} は R\mathbb{R} で稠密で R\mathbb{R} は完備だから、一意性による)。逆に、R\mathbb{R} の存在を仮定せずに定理 7.10 の構成(距離の値として Q\mathbb{Q} を使うよう修正したもの)で R\mathbb{R} を定義することもできる。これはカントールによる実数の構成である(数学の言葉 第7章)。
  2. (Q,ρp)(\mathbb{Q}, \rho_p) の完備化が pp 進数体 Qp\mathbb{Q}_p である(代数的整数論 第5章)。
  3. (C[a,b],d1)(C[a, b], d_1) の完備化は、ルベーグ可積分関数の空間 L1[a,b]L^1[a, b] と同一視できる(測度と積分 第4章;ここでは証明しない)。

7.3 縮小写像の原理

定義 7.13(縮小写像, contraction)距離空間の写像 f ⁣:X→Xf\colon X \to X が、ある定数 0≤k<10 \leq k < 1 について常に d(f(x),f(y))≤k d(x,y)d(f(x), f(y)) \leq k\ d(x, y) をみたすとき、縮小写像という。

定理 7.14(縮小写像の原理, バナッハの不動点定理)XX を空でない完備距離空間、f ⁣:X→Xf\colon X \to X を縮小写像(定数 kk)とする。

  1. ff はただ一つの不動点 x∗x^{\ast}(f(x∗)=x∗f(x^{\ast}) = x^{\ast})をもつ。
  2. 任意の x0∈Xx_0 \in X から xn+1=f(xn)x_{n+1} = f(x_n) で定めた点列は x∗x^{\ast} に収束し、次の誤差評価が成り立つ。
d(xn,x∗)≤kn1−k d(x0,x1)d(x_n, x^{\ast}) \leq \frac{k^n}{1 - k}\ d(x_0, x_1)

証明. 帰納法で d(xn+1,xn)≤knd(x1,x0)d(x_{n+1}, x_n) \leq k^n d(x_1, x_0)。m>nm > n なら

d(xm,xn)≤∑i=nm−1d(xi+1,xi)≤∑i=nm−1ki d(x1,x0)≤kn1−k d(x1,x0)d(x_m, x_n) \leq \sum_{i=n}^{m-1} d(x_{i+1}, x_i) \leq \sum_{i=n}^{m-1} k^i\ d(x_1, x_0) \leq \frac{k^n}{1 - k}\ d(x_1, x_0)

で、kn→0k^n \to 0 なので (xn)(x_n) はコーシー列であり、極限 x∗x^{\ast} をもつ。縮小写像はリプシッツ連続なので f(x∗)=lim⁡f(xn)=lim⁡xn+1=x∗f(x^{\ast}) = \lim f(x_n) = \lim x_{n+1} = x^{\ast}。上の不等式で m→∞m \to \infty とすれば誤差評価を得る。y∗y^{\ast} も不動点なら d(x∗,y∗)=d(f(x∗),f(y∗))≤k d(x∗,y∗)d(x^{\ast}, y^{\ast}) = d(f(x^{\ast}), f(y^{\ast})) \leq k\ d(x^{\ast}, y^{\ast}) で、k<1k < 1 より d(x∗,y∗)=0d(x^{\ast}, y^{\ast}) = 0。□\square

この定理は構成的である:不動点の存在を示すだけでなく、それを求める反復法と収束の速さを与える。

注意 7.15(仮定は落とせない)

  • 完備性:X=(0,1]X = (0, 1]、f(x)=x/2f(x) = x/2 は縮小写像だが不動点をもたない(反復列は 0∉X0 \notin X に向かう)。
  • 一様な縮小率 k<1k < 1:X=[1,∞)X = [1, \infty)(完備)、f(x)=x+1/xf(x) = x + 1/x とする。f(X)⊂[2,∞)⊂Xf(X) \subset [2, \infty) \subset X で、x≠yx \neq y なら ∣f(x)−f(y)∣=∣x−y∣(1−1/(xy))<∣x−y∣\lvert f(x) - f(y) \rvert = \lvert x - y \rvert (1 - 1/(xy)) < \lvert x - y \rvert だが、x+1/x=xx + 1/x = x は解をもたない。縮小率 1−1/(xy)1 - 1/(xy) が 11 にいくらでも近づくことが問題である。

例 7.16(連立一次方程式)nn 次正方行列 B=(bij)B = (b_{ij}) が k=max⁡i∑j∣bij∣<1k = \max_i \sum_j \lvert b_{ij} \rvert < 1 をみたすとする。c∈Rnc \in \mathbb{R}^n に対し f(x)=Bx+cf(x) = Bx + c は (Rn,d∞)(\mathbb{R}^n, d_\infty) 上の縮小写像である:

∣(Bx−By)i∣≤∑j∣bij∣∣xj−yj∣≤k d∞(x,y)\lvert (Bx - By)_i \rvert \leq \sum_j \lvert b_{ij} \rvert \lvert x_j - y_j \rvert \leq k\ d_\infty(x, y)

よって x=Bx+cx = Bx + c はただ一つの解をもち、反復 xn+1=Bxn+cx_{n+1} = Bx_n + c で求まる。たとえば A=(aij)A = (a_{ij}) が狭義対角優位(各 ii で ∑j≠i∣aij∣<∣aii∣\sum_{j \neq i} \lvert a_{ij} \rvert < \lvert a_{ii} \rvert)なら、Ax=bAx = b は xi=(bi−∑j≠iaijxj)/aiix_i = (b_i - \sum_{j \neq i} a_{ij} x_j)/a_{ii} と書き直せ、この右辺は上の条件をみたす。したがって AA は正則で、反復法(ヤコビ法)は解に収束する。

例 7.17(積分方程式と常微分方程式)

(a) フレドホルム型積分方程式。g∈C[a,b]g \in C[a, b]、KK を [a,b]2[a, b]^2 上の連続関数で ∣K∣≤M\lvert K \rvert \leq M とし、未知関数 f∈C[a,b]f \in C[a, b] についての方程式

f(x)=g(x)+λ∫abK(x,y)f(y) dyf(x) = g(x) + \lambda \int_a^b K(x, y) f(y)\ dy

を考える。右辺を (Tf)(x)(Tf)(x) とおく。KK は一様連続(定理 5.22)なので TfTf は連続であり、T ⁣:C[a,b]→C[a,b]T\colon C[a, b] \to C[a, b] で

∣(Tf)(x)−(Th)(x)∣≤∣λ∣∫ab∣K(x,y)∣∣f(y)−h(y)∣ dy≤∣λ∣M(b−a) d∞(f,h)\lvert (Tf)(x) - (Th)(x) \rvert \leq \lvert \lambda \rvert \int_a^b \lvert K(x, y) \rvert \lvert f(y) - h(y) \rvert\ dy \leq \lvert \lambda \rvert M (b - a)\ d_\infty(f, h)

が成り立つ。∣λ∣M(b−a)<1\lvert \lambda \rvert M (b - a) < 1 なら TT は完備空間 C[a,b]C[a, b](定理 7.6)上の縮小写像で、方程式はただ一つの連続解をもつ。上限を xx まで(∫ax\int_a^x)にしたヴォルテラ型なら、λ\lambda の大きさによらず解が一意に存在する(問題 7.4)。

(b) 常微分方程式(予告)。初期値問題 y′=F(t,y)y' = F(t, y), y(t0)=y0y(t_0) = y_0 は、積分方程式 y(t)=y0+∫t0tF(s,y(s)) dsy(t) = y_0 + \int_{t_0}^t F(s, y(s))\ ds と同値である。FF が yy についてリプシッツ連続なら、右辺の写像は(区間を十分短くとるか、重みつきの一様距離を使えば)縮小写像になり、解の存在と一意性が従う。これがピカール–リンデレーフの定理であり、微分方程式 第2章で詳しく扱う。多変数の逆関数定理の証明(微分積分学 第8章)も縮小写像の原理を用いる。

7.4 ベールのカテゴリー定理

「ほとんどすべての点で成り立つ」をどう定式化するか。測度論では「測度 0 の集合を除いて」と言う。位相的には「小さい集合」を次のように定める。

定義 7.18 位相空間 XX の部分集合 AA について:

  • A‾\overline{A} の内部が空のとき、AA は疎(至る所稠密でない, nowhere dense)であるという。
  • 可算個の疎な集合の和集合を第一類集合(痩せた集合, meager set)といい、第一類でない集合を第二類集合という。
  • 補集合が第一類である集合を剰余集合(comeager / residual)という。
  • 可算個の開集合の共通部分を GδG_\delta 集合という。

AA が疎 ⇔\Leftrightarrow X∖A‾X \setminus \overline{A} が稠密な開集合、である。たとえば R\mathbb{R} で有限集合、Z\mathbb{Z}、カントール集合は疎であり、Q\mathbb{Q} は(1 点集合の可算和なので)第一類だが疎ではない。

定理 7.19(ベールのカテゴリー定理, Baire category theorem)XX を完備距離空間とする。

  1. 稠密な開集合の可算族 U1,U2,…U_1, U_2, \dots に対し、⋂nUn\bigcap_n U_n は XX で稠密である。
  2. X≠∅X \neq \emptyset が閉集合の可算和 X=⋃nFnX = \bigcup_n F_n に書けるなら、ある FnF_n は内点をもつ。同値だが、空でない完備距離空間は第一類集合でない。

証明. 1. 空でない開集合 WW をとり、W∩⋂nUn≠∅W \cap \bigcap_n U_n \neq \emptyset を示す。U1U_1 は稠密な開集合なので W∩U1W \cap U_1 は空でない開集合で、B(x1,2r1)⊂W∩U1B(x_1, 2r_1) \subset W \cap U_1、0<r1<10 < r_1 < 1 となる x1,r1x_1, r_1 があり、閉球について D(x1,r1)⊂W∩U1D(x_1, r_1) \subset W \cap U_1。xn,rnx_n, r_n が定まったら、B(xn,rn)∩Un+1B(x_n, r_n) \cap U_{n+1} は空でない開集合なので、同様に

D(xn+1,rn+1)⊂B(xn,rn)∩Un+1,0<rn+1<1n+1D(x_{n+1}, r_{n+1}) \subset B(x_n, r_n) \cap U_{n+1}, \qquad 0 < r_{n+1} < \frac{1}{n+1}

となる xn+1,rn+1x_{n+1}, r_{n+1} がとれる。m>nm > n なら xm∈B(xn,rn)x_m \in B(x_n, r_n) なので d(xm,xn)<rn<1/nd(x_m, x_n) < r_n < 1/n で、(xn)(x_n) はコーシー列である。完備性から xm→xx_m \to x となる xx がある。各 nn について、m≥nm \geq n なら xm∈D(xn,rn)x_m \in D(x_n, r_n) で、D(xn,rn)D(x_n, r_n) は閉なので x∈D(xn,rn)⊂W∩Unx \in D(x_n, r_n) \subset W \cap U_n。よって x∈W∩⋂nUnx \in W \cap \bigcap_n U_n。

  1. すべての FnF_n の内部が空なら Un=X∖FnU_n = X \setminus F_n は稠密な開集合で、1 より ⋂Un\bigcap U_n は稠密、特に空でない。その点はどの FnF_n にも属さず、X=⋃FnX = \bigcup F_n に反する。後半:第一類 X=⋃AnX = \bigcup A_n(AnA_n は疎)なら X=⋃An‾X = \bigcup \overline{A_n} で、各 An‾\overline{A_n} は内点をもたないので前半に反する。□\square

ヒント

ベールの定理の典型的な使い方は「XX を可算個の『悪い』閉集合で覆おうとしても、どれかは内点をもつ」という背理法、あるいは「良い性質をもつ点の集合が可算個の稠密開集合の共通部分を含むので、そのような点は(稠密に)存在する」という存在証明である。後者は、具体例を作らずに存在を示す強力な方法である。

局所コンパクト・ハウスドルフ空間でも同じ結論が成り立つ(証明は、閉球の代わりにコンパクトな閉包をもつ開集合(命題 5.36)の減少列を作り、有限交叉性(定理 5.4)を使えばよい)。この結論が成り立つ空間をベール空間という。

系 7.20 孤立点をもたない空でない完備距離空間は非可算である。特に R\mathbb{R} は非可算であり、R\mathbb{R} は可算個の点の和集合ではない。

証明. 1 点集合 {x}\lbrace x \rbrace は閉で、xx が孤立点でなければ内部は空。XX が可算なら X=⋃x∈X{x}X = \bigcup_{x \in X} \lbrace x \rbrace は定理 7.19 の 2 に反する。□\square

カントールの対角線論法とは異なる、R\mathbb{R} の非可算性の「位相的な」証明である(数学の言葉 第5章)。同じ議論で、カントール集合も非可算であることがわかる。

例 7.21(Q\mathbb{Q} は GδG_\delta 集合でない)Q=⋂nGn\mathbb{Q} = \bigcap_n G_n(GnG_n は開)とすると、各 GnG_n は Q\mathbb{Q} を含むので稠密な開集合である。また Q={q1,q2,… }\mathbb{Q} = \lbrace q_1, q_2, \dots \rbrace と並べると R∖{qk}\mathbb{R} \setminus \lbrace q_k \rbrace も稠密な開集合である。これら可算個の稠密開集合の共通部分は Q∩(R∖Q)=∅\mathbb{Q} \cap (\mathbb{R} \setminus \mathbb{Q}) = \emptyset となり、定理 7.19 の 1 に反する。応用として、有理数の点でちょうど連続になる関数 R→R\mathbb{R} \to \mathbb{R} は存在しない(問題 7.5)。一方、無理数の点でちょうど連続な関数は存在する(トマエ関数)。

至る所微分不可能な連続関数

ワイエルシュトラスは、至る所微分不可能な連続関数を具体的な級数で構成した。ベールの定理を使うと、そのような関数は例外どころか「ほとんどすべて」であることがわかる。

定理 7.22 C[0,1]C[0, 1](一様距離)において、[0,1)[0, 1) のどの点でも右微分可能でない関数全体は剰余集合であり、特に稠密である。

証明の概略. n∈Nn \in \mathbb{N} に対し

En={f∈C[0,1]∣ある x∈[0,1−1/n] が存在して、すべての h∈(0,1/n] で ∣f(x+h)−f(x)∣≤nh}E_n = \lbrace f \in C[0, 1] \mid \text{ある } x \in [0, 1 - 1/n] \text{ が存在して、すべての } h \in (0, 1/n] \text{ で } \lvert f(x + h) - f(x) \rvert \leq nh \rbrace

とおく。

  1. ff がある x∈[0,1)x \in [0, 1) で右微分可能なら、ある nn で f∈Enf \in E_n となる。(hh が小さいところでは差分商が有界、hh が大きいところでは ff の有界性から ∣f(x+h)−f(x)∣≤2∥f∥∞\lvert f(x+h) - f(x) \rvert \leq 2 \lVert f \rVert_\infty で、nn を大きくとればよい。)
  2. EnE_n は閉集合である。(fk∈Enf_k \in E_n, fk→ff_k \to f(一様)とし、対応する xk∈[0,1−1/n]x_k \in [0, 1 - 1/n] の収束部分列 xkj→x∈[0,1−1/n]x_{k_j} \to x \in [0, 1 - 1/n] をとる。各 h∈(0,1/n]h \in (0, 1/n] について、一様収束と ff の連続性から fkj(xkj+h)→f(x+h)f_{k_j}(x_{k_j} + h) \to f(x + h)、fkj(xkj)→f(x)f_{k_j}(x_{k_j}) \to f(x) なので、極限をとって ∣f(x+h)−f(x)∣≤nh\lvert f(x + h) - f(x) \rvert \leq nh。よって f∈Enf \in E_n。)
  3. EnE_n の内部は空である。(任意の ff と ε>0\varepsilon > 0 に対し、ff に ε/2\varepsilon/2 以内で近い折れ線関数 pp をとり、それに振幅 ε/2\varepsilon/2 で傾きの絶対値が非常に大きい鋸歯状の関数を加えると、どの点でも十分小さな h>0h > 0 について差分商の絶対値が nn を超え、EnE_n に属さない関数が ff の ε\varepsilon 近傍に得られる。)

2, 3 より各 EnE_n は疎で、⋃nEn\bigcup_n E_n は第一類集合である。定理 7.19 より補集合は剰余集合で稠密であり、1 よりその元はどの点でも右微分可能でない。□\square

注意 7.23 ベールの定理は関数解析の 3 つの基本原理——一様有界性原理(バナッハ–シュタインハウスの定理)、開写像定理、閉グラフ定理——の基礎である(関数解析 第3章)。たとえば「フーリエ級数が発散する連続関数が存在する」ことも、一様有界性原理を通じてベールの定理から導かれる。

7.5 ストーン–ワイエルシュトラスの定理

連続関数を多項式で一様に近似できるか(ワイエルシュトラスの近似定理)。これを大きく一般化したのが次の定理である。以下 XX をコンパクト・ハウスドルフ空間とし、実数値連続関数全体 C(X)C(X) に一様距離を入れる。C(X)C(X) の部分集合 A\mathcal{A} が部分代数であるとは、和・積・実数倍で閉じていることをいう。A\mathcal{A} が点を分離するとは、任意の x≠yx \neq y に対して f(x)≠f(y)f(x) \neq f(y) となる f∈Af \in \mathcal{A} があることをいう。

まず、絶対値関数を多項式で近似する。

補題 7.24 p0(t)=0p_0(t) = 0, pn+1(t)=pn(t)+12(t−pn(t)2)p_{n+1}(t) = p_n(t) + \frac{1}{2}(t - p_n(t)^2) で多項式 pnp_n を定めると、t∈[0,1]t \in [0, 1] で

0≤t−pn(t)≤2n+10 \leq \sqrt{t} - p_n(t) \leq \frac{2}{n + 1}

が成り立つ。したがって ∣pn(s2)−∣s∣∣≤2/(n+1)\lvert p_n(s^2) - \lvert s \rvert \rvert \leq 2/(n+1)(s∈[−1,1]s \in [-1, 1])であり、∣s∣\lvert s \rvert は [−1,1][-1, 1] 上の多項式で一様に近似できる。

証明. t∈[0,1]t \in [0, 1] を固定し、0≤pn≤t0 \leq p_n \leq \sqrt{t} を帰納法で示す。n=0n = 0 は明らか。0≤pn≤t0 \leq p_n \leq \sqrt{t} とすると

t−pn+1=(t−pn)−12(t−pn)(t+pn)=(t−pn)(1−t+pn2)\sqrt{t} - p_{n+1} = (\sqrt{t} - p_n) - \frac{1}{2}(\sqrt{t} - p_n)(\sqrt{t} + p_n) = (\sqrt{t} - p_n)\left(1 - \frac{\sqrt{t} + p_n}{2}\right)

で、0≤(t+pn)/2≤t≤10 \leq (\sqrt{t} + p_n)/2 \leq \sqrt{t} \leq 1 なので右辺は 00 以上、また pn+1≥pn≥0p_{n+1} \geq p_n \geq 0。さらに (t+pn)/2≥t/2(\sqrt{t} + p_n)/2 \geq \sqrt{t}/2 なので t−pn+1≤(t−pn)(1−t/2)\sqrt{t} - p_{n+1} \leq (\sqrt{t} - p_n)(1 - \sqrt{t}/2)、したがって t−pn≤t(1−t/2)n\sqrt{t} - p_n \leq \sqrt{t}(1 - \sqrt{t}/2)^n。s=t∈[0,1]s = \sqrt{t} \in [0, 1] の関数 φ(s)=s(1−s/2)n\varphi(s) = s(1 - s/2)^n は φ′(s)=(1−s/2)n−1(1−(n+1)s/2)\varphi'(s) = (1 - s/2)^{n-1}(1 - (n+1)s/2) より s=2/(n+1)s = 2/(n+1) で最大となり、最大値は 2n+1(1−1n+1)n≤2n+1\frac{2}{n+1}(1 - \frac{1}{n+1})^n \leq \frac{2}{n+1}(n=0n = 0 のときも φ≤1≤2\varphi \leq 1 \leq 2)。□\square

定理 7.25(ストーン–ワイエルシュトラスの定理, Stone–Weierstrass theorem)XX をコンパクト・ハウスドルフ空間、A⊂C(X)\mathcal{A} \subset C(X) を、定数関数を含み点を分離する部分代数とする。このとき A\mathcal{A} は C(X)C(X) で稠密である。すなわち任意の f∈C(X)f \in C(X) と ε>0\varepsilon > 0 に対し、d∞(f,g)<εd_\infty(f, g) < \varepsilon となる g∈Ag \in \mathcal{A} がある。

証明. A‾\overline{\mathcal{A}} を A\mathcal{A} の閉包とする。A‾=C(X)\overline{\mathcal{A}} = C(X) を示す。

ステップ 0. A‾\overline{\mathcal{A}} も部分代数である。fn→ff_n \to f, gn→gg_n \to g(一様)なら fn+gn→f+gf_n + g_n \to f + g、cfn→cfcf_n \to cf は明らかで、∣fngn−fg∣≤∣fn∣∣gn−g∣+∣g∣∣fn−f∣\lvert f_n g_n - fg \rvert \leq \lvert f_n \rvert \lvert g_n - g \rvert + \lvert g \rvert \lvert f_n - f \rvert と sup⁡n∥fn∥∞<∞\sup_n \lVert f_n \rVert_\infty < \infty より fngn→fgf_n g_n \to fg。

ステップ 1(絶対値). f∈A‾f \in \overline{\mathcal{A}} なら ∣f∣∈A‾\lvert f \rvert \in \overline{\mathcal{A}}。f≠0f \neq 0 とし c=∥f∥∞c = \lVert f \rVert_\infty, h=f/ch = f/c とおくと ∣h∣≤1\lvert h \rvert \leq 1。補題 7.24 の多項式 pnp_n(定数項を含んでよい)について pn(h2)∈A‾p_n(h^2) \in \overline{\mathcal{A}}(ステップ 0 と定数関数を含むこと)で、∣pn(h(x)2)−∣h(x)∣∣≤2/(n+1)\lvert p_n(h(x)^2) - \lvert h(x) \rvert \rvert \leq 2/(n+1)。A‾\overline{\mathcal{A}} は閉なので ∣h∣∈A‾\lvert h \rvert \in \overline{\mathcal{A}}、∣f∣=c∣h∣∈A‾\lvert f \rvert = c \lvert h \rvert \in \overline{\mathcal{A}}。

ステップ 2(最大・最小). f,g∈A‾f, g \in \overline{\mathcal{A}} なら

max⁡(f,g)=f+g+∣f−g∣2,min⁡(f,g)=f+g−∣f−g∣2\max(f, g) = \frac{f + g + \lvert f - g \rvert}{2}, \qquad \min(f, g) = \frac{f + g - \lvert f - g \rvert}{2}

も A‾\overline{\mathcal{A}} に属する。帰納法で有限個の最大・最小も属する。

ステップ 3(2 点補間). x≠yx \neq y と a,b∈Ra, b \in \mathbb{R} に対し、h(x)=ah(x) = a, h(y)=bh(y) = b となる h∈Ah \in \mathcal{A} がある。実際、g(x)≠g(y)g(x) \neq g(y) となる g∈Ag \in \mathcal{A} をとり、h=a+(b−a)g−g(x)g(y)−g(x)h = a + (b - a)\dfrac{g - g(x)}{g(y) - g(x)} とすればよい(定数を含む部分代数の元)。

ステップ 4(近似). f∈C(X)f \in C(X), ε>0\varepsilon > 0 とする。点 x∈Xx \in X を固定する。各 y∈Xy \in X に対し、ステップ 3 により hy(x)=f(x)h_y(x) = f(x), hy(y)=f(y)h_y(y) = f(y) となる hy∈Ah_y \in \mathcal{A} をとる(y=xy = x なら定数 f(x)f(x))。Vy={z∣hy(z)<f(z)+ε}V_y = \lbrace z \mid h_y(z) < f(z) + \varepsilon \rbrace は yy を含む開集合なので、コンパクト性から Vy1,…,VymV_{y_1}, \dots, V_{y_m} で XX を覆える。gx=min⁡(hy1,…,hym)∈A‾g_x = \min(h_{y_1}, \dots, h_{y_m}) \in \overline{\mathcal{A}} は

gx(z)<f(z)+ε(すべての z),gx(x)=f(x)g_x(z) < f(z) + \varepsilon \quad (\text{すべての } z), \qquad g_x(x) = f(x)

をみたす。次に Wx={z∣gx(z)>f(z)−ε}W_x = \lbrace z \mid g_x(z) > f(z) - \varepsilon \rbrace は xx を含む開集合なので、Wx1,…,WxkW_{x_1}, \dots, W_{x_k} で XX を覆える。g=max⁡(gx1,…,gxk)∈A‾g = \max(g_{x_1}, \dots, g_{x_k}) \in \overline{\mathcal{A}} は、すべての zz で f(z)−ε<g(z)<f(z)+εf(z) - \varepsilon < g(z) < f(z) + \varepsilon をみたす。XX はコンパクトなので ∣g−f∣\lvert g - f \rvert の最大値は達成され、d∞(f,g)<εd_\infty(f, g) < \varepsilon。ε\varepsilon は任意で A‾\overline{\mathcal{A}} は閉なので f∈A‾f \in \overline{\mathcal{A}}。□\square

ステップ 4 は、各点での「上からの近似」を最小値でまとめ、次に「下からの近似」を最大値でまとめるという、コンパクト性の典型的な使い方になっている。

系 7.26

  1. (ワイエルシュトラスの近似定理)[a,b][a, b] 上の連続関数は多項式で一様に近似できる。
  2. Rn\mathbb{R}^n のコンパクト集合 KK 上の連続関数は、nn 変数多項式で一様に近似できる。
  3. 2π2\pi を周期とする実数値連続関数は、三角多項式 a0+∑k=1N(akcos⁡kx+bksin⁡kx)a_0 + \sum_{k=1}^N (a_k \cos kx + b_k \sin kx) で一様に近似できる。

証明. 1, 2:多項式全体は定数を含む部分代数で、座標関数が点を分離する。3:2π2\pi 周期の連続関数は S1S^1 上の連続関数と対応する(R/2πZ≅S1\mathbb{R}/2\pi\mathbb{Z} \cong S^1、問題 3.6 と定理 3.16)。三角多項式全体は、積和の公式(cos⁡jxcos⁡kx=12(cos⁡(j+k)x+cos⁡(j−k)x)\cos jx \cos kx = \frac{1}{2}(\cos(j+k)x + \cos(j-k)x) など)より部分代数で定数を含み、cos⁡x,sin⁡x\cos x, \sin x は S1S^1 の座標関数なので点を分離する。□\square

3 はフーリエ級数論(微分方程式 第6章)の出発点である。

例 7.27(仮定は落とせない)

  1. 定数を含むこと:[0,1][0, 1] 上で定数項のない多項式全体は点を分離する部分代数だが、どの元も f(0)=0f(0) = 0 をみたし、{f∣f(0)=0}\lbrace f \mid f(0) = 0 \rbrace は閉なので、閉包は定数関数 11 を含まない。
  2. 点を分離すること:[−1,1][-1, 1] 上の偶多項式全体は定数を含む部分代数だが、閉包は偶関数に限られ、xx を近似できない。
  3. 複素数値の場合:S1⊂CS^1 \subset \mathbb{C} 上の zz の多項式全体は定数を含み点を分離する複素部分代数だが、zˉ\bar{z} を一様近似できない。実際、多項式 pp について ∫02πp(eiθ)eiθ dθ=0\int_0^{2\pi} p(e^{i\theta}) e^{i\theta}\ d\theta = 0(各項 ei(k+1)θe^{i(k+1)\theta} の積分が 00)だが、∫02πeiθ‾eiθ dθ=2π\int_0^{2\pi} \overline{e^{i\theta}} e^{i\theta}\ d\theta = 2\pi であり、一様収束なら積分も収束するので矛盾する。

複素数値の場合は、複素共役で閉じていることを仮定に加えればよい。

定理 7.28(複素版)XX をコンパクト・ハウスドルフ空間、A\mathcal{A} を複素数値連続関数全体 C(X,C)C(X, \mathbb{C}) の複素部分代数で、定数を含み、点を分離し、複素共役で閉じているものとする。このとき A\mathcal{A} は C(X,C)C(X, \mathbb{C}) で稠密である。

証明. AR=A∩C(X)\mathcal{A}_{\mathbb{R}} = \mathcal{A} \cap C(X)(実数値の元)は実部分代数で実数の定数を含む。f∈Af \in \mathcal{A} なら Re⁡f=(f+fˉ)/2\operatorname{Re} f = (f + \bar{f})/2, Im⁡f=(f−fˉ)/(2i)\operatorname{Im} f = (f - \bar{f})/(2i) は AR\mathcal{A}_{\mathbb{R}} に属する。f(x)≠f(y)f(x) \neq f(y) なら Re⁡f\operatorname{Re} f か Im⁡f\operatorname{Im} f が x,yx, y を分離するので、AR\mathcal{A}_{\mathbb{R}} も点を分離する。定理 7.25 より AR\mathcal{A}_{\mathbb{R}} は C(X)C(X) で稠密。g∈C(X,C)g \in C(X, \mathbb{C}) に対し、Re⁡g,Im⁡g\operatorname{Re} g, \operatorname{Im} g を u,v∈ARu, v \in \mathcal{A}_{\mathbb{R}} で ε/2\varepsilon/2 以内に近似すれば、u+iv∈Au + iv \in \mathcal{A} は gg を ε\varepsilon 以内に近似する。□\square

S1S^1 上では zˉ=z−1\bar{z} = z^{-1} なので、zkz^k(k∈Zk \in \mathbb{Z})の 1 次結合(複素三角多項式)が C(S1,C)C(S^1, \mathbb{C}) で稠密であることが従う。

まとめ

  • コーシー列がすべて収束する距離空間を完備という。Rn\mathbb{R}^n、B(S)B(S)、Cb(X)C_b(X)、コンパクト XX 上の C(X)C(X) は完備で、Q\mathbb{Q}、(0,1)(0, 1)、(C[0,1],d1)(C[0,1], d_1) は完備でない。完備性は位相的性質でない。
  • 完備空間の部分空間が完備 ⇔\Leftrightarrow 閉集合。任意の距離空間はコーシー列の同値類として完備化でき、完備化は等長同型を除いて一意である。
  • 縮小写像の原理:完備空間上の縮小写像はただ一つの不動点をもち、反復で求まる。連立方程式・積分方程式・常微分方程式の解の存在と一意性に使われる。
  • ベールのカテゴリー定理:完備距離空間で稠密開集合の可算個の共通部分は稠密。R\mathbb{R} の非可算性、Q\mathbb{Q} が GδG_\delta でないこと、至る所微分不可能な関数の「一般性」が従う。
  • ストーン–ワイエルシュトラス:定数を含み点を分離する部分代数は C(X)C(X) で稠密。多項式・三角多項式による一様近似が得られ、複素数値では共役で閉じることが必要。

演習問題

問題 7.1 ★ (C[0,1],d1)(C[0, 1], d_1) は完備でないことを示せ。

解答

fnf_n を、[0,1/2][0, 1/2] で 00、[1/2,1/2+1/n][1/2, 1/2 + 1/n] で n(x−1/2)n(x - 1/2)、[1/2+1/n,1][1/2 + 1/n, 1] で 11 となる連続関数とする(n≥2n \geq 2)。fmf_m と fnf_n は [1/2,1/2+1/min⁡(m,n)][1/2, 1/2 + 1/\min(m, n)] の外で一致し、差の絶対値は 1 以下なので d1(fm,fn)≤1/min⁡(m,n)d_1(f_m, f_n) \leq 1/\min(m, n) で、コーシー列である。fn→f∈C[0,1]f_n \to f \in C[0, 1](d1d_1)とすると、∫01/2∣f∣=lim⁡∫01/2∣f−fn∣=0\int_0^{1/2} \lvert f \rvert = \lim \int_0^{1/2} \lvert f - f_n \rvert = 0 なので [0,1/2][0, 1/2] 上 f=0f = 0(連続性)。c>1/2c > 1/2 について、nn が大きければ [c,1][c, 1] 上 fn=1f_n = 1 なので ∫c1∣f−1∣≤d1(f,fn)→0\int_c^1 \lvert f - 1 \rvert \leq d_1(f, f_n) \to 0、よって [c,1][c, 1] 上 f=1f = 1。cc は任意なので (1/2,1](1/2, 1] 上 f=1f = 1 となり、x=1/2x = 1/2 での連続性に反する。

問題 7.2 ★ X=(0,∞)X = (0, \infty) 上の距離 d(x,y)=∣log⁡x−log⁡y∣d(x, y) = \lvert \log x - \log y \rvert は通常の距離と位相的に同値であり、(X,d)(X, d) は完備だが (X,∣⋅∣)(X, \lvert \cdot \rvert) は完備でないことを示せ。

解答

log⁡ ⁣:(X,d)→(R,∣⋅∣)\log\colon (X, d) \to (\mathbb{R}, \lvert \cdot \rvert) は全単射な等長写像なので、(X,d)(X, d) は完備な R\mathbb{R} と等長同型で完備。log⁡\log とその逆 exp⁡\exp は通常の意味で連続なので、xn→ax_n \to a(通常)⇔\Leftrightarrow log⁡xn→log⁡a\log x_n \to \log a ⇔\Leftrightarrow d(xn,a)→0d(x_n, a) \to 0 で、位相的に同値(命題 1.33)。通常の距離では 1/n1/n がコーシー列だが XX に極限をもたない。

問題 7.3 ★ 方程式 cos⁡x=x\cos x = x は R\mathbb{R} でただ一つの解をもち、任意の x0∈Rx_0 \in \mathbb{R} から xn+1=cos⁡xnx_{n+1} = \cos x_n で定めた列がその解に収束することを示せ。

解答

解は cos⁡\cos の値域 [−1,1][-1, 1] にある。cos⁡\cos は [−1,1][-1, 1] を [cos⁡1,1]⊂[−1,1][\cos 1, 1] \subset [-1, 1] に写し、平均値の定理より x,y∈[−1,1]x, y \in [-1, 1] で ∣cos⁡x−cos⁡y∣≤sin⁡1⋅∣x−y∣\lvert \cos x - \cos y \rvert \leq \sin 1 \cdot \lvert x - y \rvert(∣sin⁡ξ∣≤sin⁡1\lvert \sin \xi \rvert \leq \sin 1)。sin⁡1<1\sin 1 < 1 なので完備な [−1,1][-1, 1] 上の縮小写像で、定理 7.14 よりただ一つの不動点をもつ。任意の x0x_0 について x1=cos⁡x0∈[−1,1]x_1 = \cos x_0 \in [-1, 1] なので、以後の列は不動点に収束する。

問題 7.4 ★★ (a) XX を空でない完備距離空間、f ⁣:X→Xf\colon X \to X とし、ある m≥1m \geq 1 について fmf^m(mm 回合成)が縮小写像であるとする。ff はただ一つの不動点をもつことを示せ。(b) KK を [a,b]2[a, b]^2 上の連続関数、∣K∣≤M\lvert K \rvert \leq M、g∈C[a,b]g \in C[a, b] とする。任意の λ\lambda について、ヴォルテラ型方程式 f(x)=g(x)+λ∫axK(x,y)f(y) dyf(x) = g(x) + \lambda \int_a^x K(x, y) f(y)\ dy は C[a,b]C[a, b] でただ一つの解をもつことを示せ。

解答

(a) fmf^m の不動点を x∗x^{\ast} とすると fm(f(x∗))=f(fm(x∗))=f(x∗)f^m(f(x^{\ast})) = f(f^m(x^{\ast})) = f(x^{\ast}) なので f(x∗)f(x^{\ast}) も fmf^m の不動点であり、一意性から f(x∗)=x∗f(x^{\ast}) = x^{\ast}。ff の不動点は fmf^m の不動点なので一意。

(b) 右辺を (Tf)(x)(Tf)(x) とおく(KK の一様連続性から TfTf は連続)。帰納法で ∣(Tkf)(x)−(Tkh)(x)∣≤(∣λ∣M(x−a))kk!d∞(f,h)\lvert (T^k f)(x) - (T^k h)(x) \rvert \leq \frac{(\lvert \lambda \rvert M (x - a))^k}{k!} d_\infty(f, h) を示す:kk で成り立てば

∣(Tk+1f−Tk+1h)(x)∣≤∣λ∣M∫ax(∣λ∣M(y−a))kk!d∞(f,h) dy=(∣λ∣M(x−a))k+1(k+1)!d∞(f,h)\lvert (T^{k+1} f - T^{k+1} h)(x) \rvert \leq \lvert \lambda \rvert M \int_a^x \frac{(\lvert \lambda \rvert M (y - a))^k}{k!} d_\infty(f, h)\ dy = \frac{(\lvert \lambda \rvert M (x - a))^{k+1}}{(k+1)!} d_\infty(f, h)

よって d∞(Tkf,Tkh)≤(∣λ∣M(b−a))kk!d∞(f,h)d_\infty(T^k f, T^k h) \leq \frac{(\lvert \lambda \rvert M (b - a))^k}{k!} d_\infty(f, h) で、kk が大きければ係数は 11 未満となり TkT^k は縮小写像。(a) と定理 7.6 より一意解が存在する。

問題 7.5 ★★ 関数 f ⁣:R→Rf\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} の連続点全体は GδG_\delta 集合であることを示せ。これを用いて、ちょうど有理数の点で連続になる関数は存在しないことを示せ。

解答

UnU_n を「ある δ>0\delta > 0 について sup⁡{∣f(y)−f(z)∣∣y,z∈(x−δ,x+δ)}<1/n\sup \lbrace \lvert f(y) - f(z) \rvert \mid y, z \in (x - \delta, x + \delta) \rbrace < 1/n となる xx」全体とする。x∈Unx \in U_n(δ\delta で)なら、∣x′−x∣<δ/2\lvert x' - x \rvert < \delta/2 の x′x' について (x′−δ/2,x′+δ/2)⊂(x−δ,x+δ)(x' - \delta/2, x' + \delta/2) \subset (x - \delta, x + \delta) なので x′∈Unx' \in U_n。よって UnU_n は開集合。ff が xx で連続なら、∣f(y)−f(x)∣<1/(3n)\lvert f(y) - f(x) \rvert < 1/(3n) となる近傍で振動は 2/(3n)<1/n2/(3n) < 1/n なので x∈Unx \in U_n;逆にすべての nn で x∈Unx \in U_n なら ∣f(y)−f(x)∣<1/n\lvert f(y) - f(x) \rvert < 1/n が近傍で成り立つので連続。よって連続点全体は ⋂Un\bigcap U_n で GδG_\delta。Q\mathbb{Q} は GδG_\delta でない(例 7.21)ので、連続点全体が Q\mathbb{Q} に一致することはない。

問題 7.6 ★★ 距離空間 XX の完備化 X^\hat{X} がコンパクトであるための必要十分条件は、XX が全有界であることを示せ。

解答

X^\hat{X} は完備なので、定理 5.20 よりコンパクト ⇔\Leftrightarrow 全有界。XX が全有界なら、XX の ε\varepsilon 網 x1,…,xmx_1, \dots, x_m(X=⋃B(xi,ε)X = \bigcup B(x_i, \varepsilon))について、ξ∈X^\xi \in \hat{X} は稠密性から d^(ξ,ι(x))<ε\hat{d}(\xi, \iota(x)) < \varepsilon となる x∈Xx \in X をもち、d(x,xi)<εd(x, x_i) < \varepsilon となる ii があるので d^(ξ,ι(xi))<2ε\hat{d}(\xi, \iota(x_i)) < 2\varepsilon。よって X^\hat{X} は全有界。逆に X^\hat{X} が全有界なら、ε/2\varepsilon/2 網 ξ1,…,ξm\xi_1, \dots, \xi_m をとり、d^(ι(xi),ξi)<ε/2\hat{d}(\iota(x_i), \xi_i) < \varepsilon/2 となる xi∈Xx_i \in X を選ぶと、任意の x∈Xx \in X はある ξi\xi_i から ε/2\varepsilon/2 以内にあり、d(x,xi)<εd(x, x_i) < \varepsilon。よって XX は全有界。

問題 7.7 ★★ C[0,1]C[0, 1] の中で、次数 nn 以下の多項式全体を PnP_n、多項式全体を P=⋃nPnP = \bigcup_n P_n とする。(a) PnP_n は C[0,1]C[0, 1] の閉集合であることを示せ。(b) PnP_n の内部は空であることを示せ。(c) (P,d∞)(P, d_\infty) は完備でないことを、ベールの定理を用いて示せ。

解答

(a) 相異なる t0,…,tn∈[0,1]t_0, \dots, t_n \in [0, 1] を固定すると、次数 nn 以下の多項式の係数は値 (p(t0),…,p(tn))(p(t_0), \dots, p(t_n)) の 1 次式で表される(ヴァンデルモンド行列が正則)。pk∈Pnp_k \in P_n が一様に ff に収束すれば、各 tit_i での値が収束するので係数も収束し、その極限を係数とする多項式 q∈Pnq \in P_n に pkp_k は [0,1][0, 1] 上一様収束する。極限の一意性から f=q∈Pnf = q \in P_n。

(b) PnP_n が開球 B(p,r)B(p, r) を含むとすると、線形空間であることから B(0,r)=B(p,r)−p⊂PnB(0, r) = B(p, r) - p \subset P_n で、任意の f∈C[0,1]f \in C[0, 1] について r2∥f∥∞+1f∈Pn\frac{r}{2 \lVert f \rVert_\infty + 1} f \in P_n、よって f∈Pnf \in P_n。これは Pn≠C[0,1]P_n \neq C[0, 1](たとえば xn+1∉Pnx^{n+1} \notin P_n)に反する。

(c) 同じ議論を PP の中で行えば、各 PnP_n は PP の閉集合で PP の中での内部は空(xn+1∈P∖Pnx^{n+1} \in P \setminus P_n)。P=⋃PnP = \bigcup P_n は疎な閉集合の可算和なので、定理 7.19 より (P,d∞)(P, d_\infty) は完備でない。(完備でないことは、ワイエルシュトラスの近似定理より PP が C[0,1]C[0, 1] で稠密かつ真部分集合であることと命題 7.5 からもわかる。)

問題 7.8 ★★ (a) [0,1][0, 1] 上の連続関数は、偶数次の項だけからなる多項式 ∑akx2k\sum a_k x^{2k} で一様に近似できることを示せ。(b) [0,1]2[0, 1]^2 上の連続関数は、∑i=1Ngi(x)hi(y)\sum_{i=1}^N g_i(x) h_i(y)(gi,hi∈C[0,1]g_i, h_i \in C[0, 1])の形の関数で一様に近似できることを示せ。

解答

(a) 偶多項式全体は定数を含む部分代数で、x2x^2 は [0,1][0, 1] 上単調増加なので点を分離する。定理 7.25 より稠密。([−1,1][-1, 1] 上では点を分離しないので成り立たない、例 7.27 と比較せよ。)

(b) そのような関数全体は和・実数倍で閉じ、積 (g(x)h(y))(g′(x)h′(y))=(gg′)(x)(hh′)(y)(g(x) h(y))(g'(x) h'(y)) = (gg')(x) (hh')(y) でも閉じるので部分代数で、定数を含む。(x,y)≠(x′,y′)(x, y) \neq (x', y') なら x≠x′x \neq x' か y≠y′y \neq y' で、関数 xx または yy が分離する。定理 7.25 より稠密。

問題 7.9 ★★(カントールの共通部分定理)距離空間 XX が完備であるための必要十分条件は、空でない閉集合の減少列 F1⊃F2⊃⋯F_1 \supset F_2 \supset \cdots で diam⁡Fn→0\operatorname{diam} F_n \to 0 となるものが、常に空でない共通部分をもつことであることを示せ。

解答

(⇒\Rightarrow) xn∈Fnx_n \in F_n を選ぶと、m≥nm \geq n で xm∈Fnx_m \in F_n なので d(xm,xn)≤diam⁡Fn→0d(x_m, x_n) \leq \operatorname{diam} F_n \to 0、コーシー列で極限 xx をもつ。FnF_n は閉で xmx_m(m≥nm \geq n)を含むので x∈Fnx \in F_n。よって x∈⋂Fnx \in \bigcap F_n。(⇐\Leftarrow) (xn)(x_n) をコーシー列とし、Fn={xm∣m≥n}‾F_n = \overline{\lbrace x_m \mid m \geq n \rbrace} とおく。閉包をとっても直径は変わらないので diam⁡Fn=sup⁡m,m′≥nd(xm,xm′)→0\operatorname{diam} F_n = \sup_{m, m' \geq n} d(x_m, x_{m'}) \to 0。仮定より x∈⋂Fnx \in \bigcap F_n があり、d(xn,x)≤diam⁡Fn→0d(x_n, x) \leq \operatorname{diam} F_n \to 0。

問題 7.10 ★★★ C[0,1]C[0, 1](一様距離)において、ある部分区間(長さが正の区間)上で単調となる関数全体は第一類集合であることを示せ。したがって「どの区間上でも単調でない連続関数」は稠密に存在する。

解答

有理数 a<ba < b(0≤a<b≤10 \leq a < b \leq 1)に対し、Ma,b+={f∣f は [a,b] 上で広義単調増加}M_{a,b}^{+} = \lbrace f \mid f \text{ は } [a, b] \text{ 上で広義単調増加} \rbrace、Ma,b−M_{a,b}^{-} を同様に単調減少のものとする。長さ正の区間はある有理区間 [a,b][a, b] を含むので、ある区間で単調な関数全体は可算個の Ma,b±M_{a,b}^{\pm} の和集合に含まれる。各 Ma,b+M_{a,b}^{+} が疎であることを示せばよい(M−M^- も同様)。

(閉)条件「a≤s<t≤ba \leq s < t \leq b なら f(s)≤f(t)f(s) \leq f(t)」は各点収束で保たれるので、一様収束の極限でも保たれる。

(内部が空)f∈Ma,b+f \in M_{a,b}^{+} と ε>0\varepsilon > 0 をとる。ff は一様連続なので、a≤s<t≤ba \leq s < t \leq b かつ f(t)−f(s)<εf(t) - f(s) < \varepsilon となる s,ts, t がある(t−st - s を十分小さくとる)。∣φ∣≤1\lvert \varphi \rvert \leq 1、φ(s)=1\varphi(s) = 1、φ(t)=−1\varphi(t) = -1 となる連続関数 φ\varphi(たとえば折れ線)をとり、g=f+(ε/2)φg = f + (\varepsilon/2) \varphi とおくと、d∞(f,g)≤ε/2<εd_\infty(f, g) \leq \varepsilon/2 < \varepsilon かつ g(t)−g(s)=f(t)−f(s)−ε<0g(t) - g(s) = f(t) - f(s) - \varepsilon < 0 なので g∉Ma,b+g \notin M_{a,b}^{+}。よって Ma,b+M_{a,b}^{+} はどの開球も含まない。

以上より、ある区間で単調な関数全体は第一類集合で、定理 7.19 よりその補集合は稠密である。

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