この章の目標
- ε-N 論法で数列の収束・発散を証明でき、その否定を正しく書ける
- 上極限・下極限を定義し、ε による特徴づけと部分列による特徴づけを使える
- ネイピア数 e を厳密に定義し、e=∑1/n! と e の無理性を証明できる
- 正項級数の収束を比較・比・根の判定法で判定できる
- 絶対収束と条件収束の違いを、並べ替え(リーマンの再配列定理)と級数の積(メルテンスの定理)を通して理解する
前提:第1章 実数の連続性(特に定義 1.25、補題 1.28〜1.32、系 1.35)
2.1 収束の定義と例
高校では「n を限りなく大きくすると an は α に限りなく近づく」ことを limn→∞an=α と書き、極限は主に計算するものだった。大学の解析学では、極限が存在することを証明し、さらに極限についての一般的な定理(はさみうちの原理、単調収束定理など)そのものを証明する。そのための言葉が第1章で導入した ε-N 論法である。
定義 2.1(収束・発散)実数列 (an) と α∈R について
∀ε>0, ∃N∈N, ∀n≥N, ∣an−α∣<ε
が成り立つとき、(an) は α に収束するといい、limn→∞an=α と書く。ある実数に収束するとき (an) は収束する (convergent)、どの実数にも収束しないとき発散する (divergent) という。
極限は存在すればただ一つである(補題 1.28 (1))。また、量化子の否定の規則(00-foundations 第1章)により、「(an) が α に収束しない」ことは
∃ε>0, ∀N∈N, ∃n≥N, ∣an−α∣≥ε
と書ける。言い換えると「ある ε>0 について、∣an−α∣≥ε となる n が無限個ある」ということである。
実験ε-N 論法の実験数列のグラフに ε の帯を重ね、ある番号 N から先がすべて帯に入ることを確かめます。
この実験は JavaScript を有効にすると動きます。
ε-N 論法の証明は、第1章と同様に下書き(N を逆算する)と清書に分けて示す。下書きでは、∣an−α∣ を簡単な式で上から評価することが鍵になる。正確な値を求める必要はない。
補題 2.3(ベルヌーイの不等式)h≥0、n∈N ならば (1+h)n≥1+nh。さらに n≥2 ならば (1+h)n≥2n(n−1)h2。
証明. 二項定理 (1+h)n=∑k=0n(kn)hk の各項は 0 以上なので、k=0,1 の項だけ、あるいは k=2 の項だけを残せばよい。□
例 2.4 limn→∞n2+13n2+n=3。
下書き. n2+13n2+n−3=n2+1∣n−3∣。分子は ∣n−3∣≤n+3≤4n、分母は n2+1>n2 と粗く評価すると、全体は n4 未満。n4≤ε となるには n≥ε4 ならよい。
証明. ε>0 を任意にとり、N>ε4 となる N∈N をとる(アルキメデスの性質)。n≥N ならば
n2+13n2+n−3=n2+1∣n−3∣<n24n=n4≤N4<ε
である。□
例 2.5 ∣r∣<1 ならば limn→∞rn=0。
下書き. r=0 なら明らかなので r=0 とする。∣r∣1=1+h(h>0)とおくと、ベルヌーイの不等式より (1+h)n≥1+nh>nh、よって ∣r∣n<nh1。これが ε 以下になるには n≥hε1 ならよい。
証明. r=0 とし、h=∣r∣1−1>0 とおく。ε>0 に対して N>hε1 となる N をとる。n≥N ならば、補題 2.3 より ∣rn−0∣=(1+h)n1<nh1≤Nh1<ε。□
例 2.6 a≥1 ならば limn→∞a1/n=1(a1/n は正の n 乗根。存在は問題 1.6)。hn=a1/n−1 とおくと、a1/n<1 なら a<1 となるので hn≥0。ベルヌーイの不等式より a=(1+hn)n≥1+nhn、よって 0≤hn≤na−1。ε>0 に対し N>εa−1 をとれば、n≥N で ∣a1/n−1∣≤na−1<ε。0<a<1 の場合は例 2.11 で扱う。
例 2.7 limn→∞n1/n=1。
下書き. hn=n1/n−1≥0 とおく。例 2.6 と同じように 1+nhn で評価すると hn≤nn−1 となって役に立たない。そこで補題 2.3 の後半を使う:n≥2 なら n=(1+hn)n≥2n(n−1)hn2、よって hn≤n−12。これが ε 未満になるには n−1>ε22 ならよい。
証明. ε>0 に対して N>1+ε22 となる N∈N をとる(N≥2 となる)。n≥N ならば、補題 2.3 より hn2≤n−12≤N−12<ε2、よって ∣n1/n−1∣=hn<ε。□
命題 2.8 収束する数列は有界である。
証明. an→α とし、ε=1 に対する N をとると、n≥N で ∣an∣≤∣an−α∣+∣α∣<1+∣α∣。M=max{∣a1∣,…,∣aN−1∣,1+∣α∣} とおけば、すべての n で ∣an∣≤M。□
2.2 極限の基本性質
高校では「lim(an+bn)=liman+limbn」などを公式として使った。これらを ε-N 論法で証明しておく。
定理 2.9(極限の四則)an→α、bn→β とする。
- an+bn→α+β、can→cα(c∈R)。
- anbn→αβ。
- β=0 ならば、ある N0 以降 bn=0 であり、bnan→βα(n≥N0 で考える)。
証明. (1) ε>0 に対し、n≥N1 で ∣an−α∣<2ε、n≥N2 で ∣bn−β∣<2ε となる N1,N2 をとる。n≥max{N1,N2} なら ∣(an+bn)−(α+β)∣≤∣an−α∣+∣bn−β∣<ε。can については ∣can−cα∣=∣c∣∣an−α∣ から従う。
(2) 下書き. 差を「an の誤差」と「bn の誤差」に分ける:
∣anbn−αβ∣=∣an(bn−β)+β(an−α)∣≤∣an∣∣bn−β∣+∣β∣∣an−α∣
∣an∣ は命題 2.8 より定数 M で抑えられる。各項を 2ε 未満にするには、∣bn−β∣<2Mε、∣an−α∣<2(∣β∣+1)ε とすればよい(∣β∣=0 のときも割り算できるように +1 しておく)。
清書. 命題 2.8 より、すべての n で ∣an∣≤M となる M>0 がある。ε>0 に対し、n≥N1 で ∣bn−β∣<2Mε、n≥N2 で ∣an−α∣<2(∣β∣+1)ε となる N1,N2 をとる。n≥max{N1,N2} なら、上の不等式より ∣anbn−αβ∣<M⋅2Mε+∣β∣⋅2(∣β∣+1)ε<ε。
(3) (2) より bn1→β1 を示せば十分である。ε0=2∣β∣ に対する N0 をとると、n≥N0 で ∣bn∣≥∣β∣−∣bn−β∣>2∣β∣、特に bn=0。このとき
bn1−β1=∣bn∣∣β∣∣bn−β∣≤∣β∣22∣bn−β∣
ε>0 に対し、n≥N1 で ∣bn−β∣<2∣β∣2ε となる N1 をとれば、n≥max{N0,N1} で右辺は ε 未満になる。□
定理 2.10(はさみうちの原理, squeeze theorem)ある n0 以降 an≤cn≤bn であり、an→α、bn→α ならば、cn→α である。
証明. ε>0 に対し、n≥N で ∣an−α∣<ε かつ ∣bn−α∣<ε となる N≥n0 をとる。n≥N なら α−ε<an≤cn≤bn<α+ε。□
補題 1.28 (2) とあわせると、an→α、bn→β で an≤bn なら α≤β である(bn−an≥0 に適用する)。
例 2.11 (1) 0<a<1 なら a1/n=(1/a)1/n1→1(例 2.6 と定理 2.9 (3))。
(2) n+1−n=n+1+n1 であり、0<n+1−n<n1。n1<ε⇔n>ε21 から n1→0 なので、はさみうちにより n+1−n→0。
(3) 3≤(2n+3n)1/n≤(2⋅3n)1/n=3⋅21/n であり、右辺は 3 に収束するので (2n+3n)1/n→3。一般に、a1,…,ak>0 なら (a1n+⋯+akn)1/n→maxiai である。
注意
定理 2.9 は liman と limbn が存在することを仮定している。an=(−1)n、bn=−(−1)n とすると an+bn=0→0 だが、liman も limbn も存在しないので、「lim(an+bn)=liman+limbn」と書くことはできない。
2.3 発散
定義 2.12 実数列 (an) が
∀M∈R, ∃N∈N, ∀n≥N, an>M
を満たすとき、(an) は正の無限大に発散する (diverge to +∞) といい、limn→∞an=+∞ または an→+∞ と書く。−∞ への発散も同様に定める。収束せず、±∞ にも発散しないとき、振動する (oscillate) という。
+∞ は実数ではないので、an→+∞ は「収束」ではなく発散の一種である。
例 2.13 (1) r>1 なら rn→+∞:r=1+h とおくと rn≥1+nh>nh なので、M に対して N>hM をとればよい。
(2) an=(−1)n は振動する。有界なので ±∞ に発散しない。α に収束したとすると、ε=1 に対する N について 2=∣aN+1−aN∣≤∣aN+1−α∣+∣α−aN∣<2 となり矛盾する。
命題 2.14 (1) 単調増加数列は、上に有界ならば収束し(系 1.35)、上に有界でなければ +∞ に発散する。
(2) an→+∞ で (bn) が下に有界ならば an+bn→+∞。an→+∞ で、ある c>0 についてすべての n で bn≥c ならば anbn→+∞。
(3) an>0 のとき、an→+∞⇔an1→0。
証明. (1) 上に有界でないなら、任意の M に対して aN>M となる N があり、単調性より n≥N で an≥aN>M。(2) bn≥−L とすると、M に対して n≥N で an>M+L となる N をとれば an+bn>M。積も同様(an>M/c となる N をとる、M>0 としてよい)。(3) an>ε1⇔0<an1<ε から直ちに従う。□
注意
∞−∞、0⋅∞、∞∞ の形は不定形であり、個別に調べる必要がある。例えば an=n に対して bn=−n、−n+1、−n とすると、an+bn はそれぞれ 0、1、+∞ に近づく。
2.4 部分列と上極限・下極限
振動する数列、例えば (−1)n や (−1)n(1+n1) は極限をもたないが、「上の方では 1 に、下の方では −1 に近づく」という構造がある。これをとらえるのが部分列と上極限・下極限である。
命題 2.15 (1) an→α ならば、任意の部分列も α に収束する。
(2) (an) の任意の部分列が、α に収束する部分列(部分列の部分列)をもつならば、an→α である。
証明. (1) は補題 1.30。(2) 対偶を示す。an→α なら、ある ε>0 について ∣an−α∣≥ε となる n が無限個ある。それらを小さい順に n1<n2<⋯ とすると、部分列 (ank) のどの部分列も、すべての項が α から ε 以上離れているので α に収束しない。□
特に、異なる極限に収束する二つの部分列があれば、もとの数列は発散する。例えば (−1)n は偶数番目が 1 に、奇数番目が −1 に収束するので発散する。
定義 2.16(上極限・下極限, limit superior / limit inferior)実数列 (an) が上に有界なとき、sn=sup{ak∣k≥n} とおくと (sn) は単調減少である。(sn) が下に有界なら
n→∞limsupan:=n→∞limsn=n∈Ninfk≥nsupak
と定め、下に有界でなければ limsupan=−∞ と定める。(an) が上に有界でなければ limsupan=+∞ と定める。同様に in=inf{ak∣k≥n} を使って liminfn→∞an:=limin=supninfk≥nak を定める。
sn は「n 番目以降の最大値(の代わり)」であり、n を増やすと範囲が狭まるので減少する。limsn=infsn は系 1.35 (1) による。上極限・下極限は、±∞ を許せばどんな数列に対しても必ず存在する。これが極限と比べた最大の利点である。常に liminfan≤limsupan が成り立つ(in≤sn より)。
例 2.17 an=(−1)n(1+n1) のとき、sn は n 以上の最初の偶数 k に対する 1+k1 なので sn→1、よって limsupan=1。同様に liminfan=−1。一方 supnan=a2=23 であり、sup と limsup は異なる。上極限は「最初の有限個の項」に左右されない。
定理 2.18(上極限の特徴づけ)(an) を有界な実数列、α∈R とする。次は同値である。
- α=limsupn→∞an。
- 任意の ε>0 に対して、(i) ある N が存在して n≥N ならば an<α+ε、かつ (ii) an>α−ε となる n が無限個存在する。
- α に収束する (an) の部分列が存在し、かつ (an) の収束部分列の極限はすべて α 以下である。
すなわち、limsupan は部分列の極限として現れる値の最大値である。下極限についても、不等号を逆にして同様の特徴づけが成り立つ(部分列の極限の最小値)。
証明. (1)⇒(2):sn↓α なので、ε>0 に対して sN<α+ε となる N があり、n≥N で an≤sN<α+ε。これが (i)。また任意の n で sn≥α>α−ε なので、上限の性質(命題 1.12)より ak>α−ε となる k≥n がある。n は任意なので、そのような k は無限個ある。これが (ii)。
(2)⇒(1):(i) より sN≤α+ε となる N があり、(sn) は減少するので limsn≤α+ε。(ii) より、任意の n に対して ak>α−ε となる k≥n があるので sn>α−ε、よって limsn≥α−ε。ε は任意なので limsn=α(系 1.20 (3))。
(2)⇒(3):各 k について、(ii) の「an>α−k1 となる無限個の n」のうち、(i) により有限個を除いたものは ∣an−α∣<k1 を満たす。よって帰納的に n1<n2<⋯ を ∣ank−α∣<k1 となるように選べ、ank→α。次に amj→β とすると、(i) より十分大きな j で amj<α+ε なので β≤α+ε。ε は任意なので β≤α。
(3)⇒(2):(ii) は α に収束する部分列の十分先の項が α−ε より大きいことから従う。(i) が成り立たないとすると、ある ε>0 について an≥α+ε となる n が無限個あり、それらからなる部分列は有界なので、ボルツァノ–ワイエルシュトラスの定理(系 1.35 (3))により収束部分列をもつ。その極限 β は β≥α+ε>α を満たし(補題 1.28 (2))、(3) に反する。□
系 2.19 有界な数列 (an) が収束するための必要十分条件は limsupan=liminfan であり、このとき極限はこの共通の値に等しい。
証明. an→α なら、命題 2.15 (1) より収束部分列の極限はすべて α なので、定理 2.18 (3) より limsupan=liminfan=α。逆に両者が α に等しければ、定理 2.18 (2)(i) とその下極限版より、ε>0 に対して十分大きな n で α−ε<an<α+ε。□
2.5 コーシー列
第1章で、実数列が収束するための必要十分条件はコーシー列であることだと示した(系 1.35 (4))。この判定法の利点は、極限の値を知らなくても収束が示せることである。
例 2.20 an=∑k=1nk21 は収束する。m>n なら、k21<k(k−1)1=k−11−k1(k≥2)より
0<am−an=k=n+1∑mk21<k=n+1∑m(k−11−k1)=n1−m1<n1
よって ε>0 に対して N>ε1 をとれば、m>n≥N で ∣am−an∣<ε。(an) はコーシー列なので収束する。極限は 6π2 であることが知られている(フーリエ級数や留数定理を用いて示される。08-differential-equations 第6章 を参照)。
例 2.21 調和級数の部分和 Hn=∑k=1nk1 はコーシー列でない。実際
H2n−Hn=k=n+1∑2nk1≥n⋅2n1=21
なので、ε=21 に対してどんな N をとっても m=2N、n=N で条件が破れる。(Hn) は単調増加で収束しないので、命題 2.14 (1) より Hn→+∞ である。Hn−Hn−1=n1→0 であっても収束するとは限らない。コーシー列の条件は隣り合う項の差だけでなく、任意の二項の差についての条件である。
命題 2.22(縮小的な数列)ある 0≤r<1 についてすべての n で ∣an+2−an+1∣≤r∣an+1−an∣ ならば、(an) はコーシー列であり、したがって収束する。
証明. 帰納法で ∣ak+1−ak∣≤rk−1d(d=∣a2−a1∣)。m>n なら
∣am−an∣≤k=n∑m−1∣ak+1−ak∣≤dk=n∑m−1rk−1≤1−rdrn−1
右辺は例 2.5 より n→∞ で 0 に収束するので、コーシー列の条件が成り立つ。□
例 2.23 a1=1、an+1=1+an1 で定まる数列 1,2,23,35,58,813,…(フィボナッチ数の比)は単調ではないが収束する。帰納法ですべての n で an≥1 であり、anan−1=(1+an−11)an−1=an−1+1≥2 なので
∣an+1−an∣=an1−an−11=anan−1∣an−an−1∣≤21∣an−an−1∣
命題 2.22 より an→φ となる φ があり、φ≥1。漸化式で極限をとると(定理 2.9)φ=1+φ1、すなわち φ2−φ−1=0 なので φ=21+5(黄金比)。この論法は第8章の縮小写像の原理の原型である。
注意
「極限を φ とおいて漸化式で極限をとる」操作は、収束することを示した後でなければ使えない。a1=1、an+1=2an で「φ=2φ より φ=0」とするのは誤りで、実際は an=2n−1→+∞ である。
2.6 ネイピア数 e
高校では e=lim(1+n1)n と定義したが、この極限の存在は証明しなかった。ここで証明し、同時に e=∑k!1 を示す。
定理 2.24 an=(1+n1)n、bn=∑k=0nk!1 とおく(0!=1)。
- (an) は狭義単調増加で、an≤bn<3。
- (an) と (bn) はともに収束し、liman=limbn である。
この共通の極限をネイピア数 (Napier's constant) といい e と書く:e=limn→∞(1+n1)n=∑k=0∞k!1。
証明. (1) 二項定理より
an=k=0∑n(kn)nk1=k=0∑nk!1⋅nkn(n−1)⋯(n−k+1)=k=0∑nk!1j=1∏k−1(1−nj)
(k=0,1 のとき積は空で 1 とする)。an+1 も同様に展開すると、k≤n の各項で 1−n+1j>1−nj なので an+1 の項の方が大きいか等しく、さらに an+1 には正の項(k=n+1)が一つ多い。よって an<an+1。また積は 1 以下なので an≤bn。k≥1 で k!=1⋅2⋅3⋯k≥2k−1 なので
bn≤1+k=1∑n2k−11=1+2(1−2n1)<3
(2) (an)、(bn) は単調増加で上に有界なので、単調収束定理により収束する。極限をそれぞれ e、e′ とおくと、an≤bn より e≤e′。逆向きの不等式を示す。m を固定し、n≥m とすると、k>m の項を捨てて
an≥k=0∑mk!1j=1∏k−1(1−nj)
右辺は m を固定した有限和なので、n→∞ のとき定理 2.9 により ∑k=0mk!1=bm に収束する。よって e≥bm(補題 1.28 (2))。これがすべての m で成り立つので e≥e′。□
命題 2.25 すべての n∈N について 0<e−bn<n⋅n!1。
証明. m>n に対して
bm−bn=(n+1)!1(1+n+21+(n+2)(n+3)1+⋯)≤(n+1)!1j=0∑m−n−1(n+2)j1<(n+1)!1⋅n+1n+2
m→∞ として e−bn≤(n+1)!(n+1)n+2。n(n+2)<(n+1)2 より右辺は n⋅n!1 より小さい。また e−bn≥bn+1−bn=(n+1)!1>0。□
数値で比べると違いがよくわかる。b10=2.7182818011… であり、命題 2.25 より誤差は 10⋅10!1<2.8×10−8 である(実際 e=2.7182818284…)。一方 a10=1.110=2.5937…、a1000=2.7169… であり、(1+n1)n の収束は非常に遅い。
定理 2.26 e は無理数である。
証明. e=qp(p,q∈N)と仮定する。x=q! (e−bq) とおくと、q! e=p⋅(q−1)! も q! bq=∑k=0qk!q! も整数なので、x は整数である。一方、命題 2.25 より 0<x<q⋅q!q!=q1≤1。0 と 1 の間に整数はないので矛盾する。□
2.7 級数の収束
高校では無限等比級数を扱った。一般の無限和を正確に定義しよう。
定義 2.27(級数, series)数列 (an) に対して、部分和 (partial sum) Sn=∑k=1nak の列が S に収束するとき、級数 ∑n=1∞an は収束するといい、S をその和と呼んで ∑n=1∞an=S と書く。(Sn) が収束しないとき級数は発散するという。
∑n=1∞an という記号は、級数そのもの(部分和の列)とその和の両方を表す。添字が 0 から始まる場合も同様である。
命題 2.28 ∑an が収束すれば an→0 である。
証明. Sn→S なら an=Sn−Sn−1→S−S=0。□
逆は成り立たない。調和級数 ∑n1 は n1→0 だが発散する(例 2.21)。命題 2.28 は発散を示すための道具として使う。
例 2.29(等比級数, geometric series)∑n=0∞rn は ∣r∣<1 のとき収束して和は 1−r1、∣r∣≥1 のとき発散する。実際 r=1 なら Sn=∑k=0nrk=1−r1−rn+1 であり、∣r∣<1 なら例 2.5 より 1−r1 に収束する。∣r∣≥1 なら ∣rn∣≥1 で項が 0 に収束しない。
例 2.30(望遠鏡和)∑n=1∞n(n+1)1=1。n(n+1)1=n1−n+11 より Sn=1−n+11→1。
定理 2.31(級数のコーシーの判定法)∑an が収束するための必要十分条件は、次が成り立つことである。
∀ε>0, ∃N∈N, ∀m>n≥N, k=n+1∑mak<ε
証明. ∑k=n+1mak=Sm−Sn なので、これは (Sn) がコーシー列であるという条件そのものである。系 1.35 (4) による。□
収束する級数は項ごとに足したり定数倍したりでき、∑(an+bn)=∑an+∑bn、∑can=c∑an(定理 2.9 を部分和に適用)。また、収束する級数の残り rn=∑k=n+1∞ak=S−Sn は n→∞ で 0 に収束する。
2.8 正項級数の収束判定法
すべての項が an≥0 である級数を正項級数という。部分和は単調増加なので、命題 2.14 (1) から次が従う。
命題 2.33 正項級数 ∑an は、部分和が上に有界ならば収束し、そうでなければ +∞ に発散する。
正項級数が収束することを ∑an<∞ と書くことがある。
定理 2.34(比較判定法, comparison test)ある n0 以降 0≤an≤bn とする。∑bn<∞ ならば ∑an<∞ であり、∑an=∞ ならば ∑bn=∞ である。さらに、an,bn>0 で bnan→c(0<c<∞)ならば、∑an と ∑bn は収束・発散をともにする(極限比較判定法)。
証明. 前半は、n≥n0 からの部分和について ∑k=n0nak≤∑k=n0nbk となることと命題 2.33 から従う。後半は、十分大きな n で 2cbn<an<2c bn となるので前半を両方向に使えばよい。□
定理 2.35(コーシーの凝集判定法, Cauchy condensation test)(an) が単調減少で an≥0 ならば、∑n=1∞an<∞⇔∑k=0∞2ka2k<∞。
証明. Sn=∑k=1nak、Tm=∑k=0m2ka2k とおく。2j≤i<2j+1 の 2j 個の項は a2j 以下、2j−1<i≤2j の 2j−1 個の項は a2j 以上なので、
S2m+1−1=j=0∑mi=2j∑2j+1−1ai≤Tm,S2m=a1+j=1∑mi=2j−1+1∑2jai≥a1+j=1∑m2j−1a2j≥21Tm
よって (Sn) が有界であることと (Tm) が有界であることは同値である。□
例 2.36(p 級数)有理数 p に対して、∑n=1∞np1 は p>1 のとき収束し、p≤1 のとき発散する。p≤0 なら項が 0 に収束しない。p>0 なら np1 は単調減少で、2k⋅(2k)p1=(21−p)k だから、凝集判定法により等比級数 ∑(21−p)k と収束・発散をともにする。21−p<1⇔p>1 である。実数 p に対するべき np は第3章で定義し、同じ結果が成り立つ(第5章の積分判定法でも示せる)。
定理 2.37(ダランベールの判定法, ratio test)an>0 とする。
- ある r<1 と N があって n≥N で anan+1≤r ならば、∑an は収束する。
- ある N があって n≥N で anan+1≥1 ならば、∑an は発散する。
特に ρ=limanan+1 が存在するとき、ρ<1 なら収束、ρ>1(ρ=+∞ を含む)なら発散する。
証明. (1) n≥N で an≤aNrn−N なので、等比級数との比較(定理 2.34)。(2) n≥N で an≥aN>0 なので項が 0 に収束しない。極限版は、ρ<1 なら r=21+ρ に対し十分大きな n で anan+1<r となること、ρ>1 なら十分大きな n で比が 1 を超えることから従う。□
定理 2.38(コーシーの根判定法, root test)an≥0 とし、ρ=limsupn→∞an1/n とおく。ρ<1 ならば ∑an は収束し、ρ>1 ならば発散する。
証明. ρ<1 なら ρ<r<1 となる r をとる。ρ<∞ なので (an1/n) は有界であり、定理 2.18 (2)(i) より、十分大きな n で an1/n<r、すなわち an<rn なので等比級数と比較すればよい。ρ>1 なら an1/n>1、すなわち an>1 となる n が無限個あり、項が 0 に収束しない。□
どちらの判定法も ρ=1 のときは何も言えない。∑n1(発散)と ∑n21(収束)はどちらも比・根の極限が 1 である。
命題 2.39 an>0 ならば
n→∞liminfanan+1≤n→∞liminfan1/n≤n→∞limsupan1/n≤n→∞limsupanan+1
特に anan+1→ρ ならば an1/n→ρ であり、比判定法で判定できる級数は根判定法でも判定できる。
証明. 最後の不等式を示す(最初の不等式は問題 2.8)。L=limsupanan+1 とし、L<∞ としてよい。β>L を任意にとると、十分大きな N について n≥N で anan+1<β なので、an≤aNβn−N=cβn(c=aNβ−N)。よって an1/n≤c1/nβ であり、例 2.6・2.11 より c1/n→1。任意の δ>0 に対し十分大きな n で an1/n<β+δ となるので、上極限の定義より limsupan1/n≤β+δ。δ>0 と β>L は任意なので limsupan1/n≤L。□
例 2.40 (1) ∑2nnk(k∈N):anan+1=21(1+n1)k→21 なので収束する。
(2) ∑n!xn(x>0):anan+1=n+1x→0 なので、すべての x>0 で収束する。
(3) ∑nncnn!(c>0):anan+1=c(n+1n)n=(1+1/n)nc→ec。c<e なら収束、c>e なら発散する。c=e のときは比の極限が 1 だが、問題 2.6 の (1+n1)n<e より比は常に 1 より大きいので、定理 2.37 (2) により発散する。
(4) an=2−n+(−1)n とおくと、anan+1 は n が偶数のとき 81、奇数のとき 2 なので比判定法は使えない。一方 an1/n=21⋅2(−1)n/n→21 なので、根判定法により収束する。
2.9 絶対収束と条件収束
項の符号が一定でない級数では、打ち消し合いによって収束することがある。この「打ち消し合いに頼るかどうか」が、級数の性質を大きく左右する。
定義 2.41 ∑∣an∣<∞ のとき、∑an は絶対収束する (converge absolutely) という。収束するが絶対収束しないとき、条件収束する (converge conditionally) という。
定理 2.42 絶対収束する級数は収束し、∣∑an∣≤∑∣an∣ が成り立つ。
証明. ∑k=n+1mak≤∑k=n+1m∣ak∣ なので、∑∣an∣ がコーシーの判定法(定理 2.31)の条件を満たせば ∑an も満たす。不等式は部分和で ∣Sn∣≤∑k=1n∣ak∣ として極限をとればよい。□
an+=max{an,0}、an−=max{−an,0} とおくと、an=an+−an−、∣an∣=an++an− である。
命題 2.43 (1) ∑an が絶対収束する ⇔ ∑an+ と ∑an− がともに収束する。
(2) ∑an が条件収束するならば、∑an+=∑an−=+∞ である。
証明. (1) 0≤an±≤∣an∣=an++an− と比較判定法。(2) 例えば ∑an+<∞ なら、an−=an+−an より ∑an− も収束し、(1) より絶対収束となって仮定に反する。∑an− についても同様。□
定理 2.44(ライプニッツの判定法, alternating series test)(bn) が単調減少で bn→0 ならば、交代級数 ∑n=1∞(−1)n−1bn=b1−b2+b3−⋯ は収束する。さらに和を S、部分和を Sn とすると ∣S−Sn∣≤bn+1。
証明. S2n+2=S2n+(b2n+1−b2n+2)≥S2n、S2n+1=S2n−1−(b2n−b2n+1)≤S2n−1、S2n+1=S2n+b2n+1≥S2n。よって [S2n,S2n+1] は閉区間の減少列で、長さ b2n+1→0。系 1.35 (2) よりすべての区間に属する点 S がただ一つあり、∣S2n−S∣≤b2n+1、∣S2n+1−S∣≤b2n+1 なので Sn→S。誤差評価:S は S2m と S2m+1 の間、また S2m+2 と S2m+1 の間にあるので、∣S−S2m∣≤b2m+1、∣S−S2m+1∣≤S2m+1−S2m+2=b2m+2。□
例 2.45 ∑n=1∞n(−1)n−1=1−21+31−⋯ はライプニッツの判定法により収束するが、絶対値の級数は調和級数なので絶対収束しない(条件収束)。和は log2 である(第4章・第6章で示す)。同様に有理数 p について、∑np(−1)n−1 は p>1 で絶対収束、0<p≤1 で条件収束、p≤0 で発散する。
2.10 級数の並べ替え
有限和は足す順序によらない。無限和ではどうだろうか。驚くべきことに、条件収束する級数は並べ替えで和が変わってしまう。
定義 2.46 全単射 σ:N→N に対して、級数 ∑n=1∞aσ(n) を ∑an の並べ替え (rearrangement) という。
定理 2.47(ディリクレ)∑an が絶対収束して和が S ならば、任意の並べ替え ∑aσ(n) も絶対収束し、和は S である。
証明. ε>0 に対し、∑n>N∣an∣<2ε となる N をとる。M=max{σ−1(1),…,σ−1(N)} とおくと、m≥M なら {1,…,N}⊂{σ(1),…,σ(m)} である。よって Tm=∑k=1maσ(k) について、Tm−SN は N より大きい相異なる番号の an の有限和であり、∣Tm−SN∣≤∑n>N∣an∣<2ε。また ∣SN−S∣≤∑n>N∣an∣<2ε。したがって m≥M で ∣Tm−S∣<ε。絶対収束することは、∣an∣ に同じ議論を適用すればわかる。□
例 2.48 S=1−21+31−41+⋯ とする。定理 2.44 の証明より S≥S2=21>0。これを「正の項 1 個、負の項 2 個」の順に並べ替える:
1−21−41+31−61−81+51−101−121+⋯
第 k 群は 2k−11−4k−21−4k1 で、各項はちょうど一回ずつ現れる。2k−11−4k−21=4k−21 より第 k 群の和は 21(2k−11−2k1) なので、並べ替えた級数の部分和 Tn について T3k=21S2k→2S。T3k+1、T3k+2 と T3k の差は 2k+11 以下なので Tn→2S=S。和が半分になってしまった。
定理 2.49(リーマンの再配列定理, Riemann rearrangement theorem)∑an が条件収束するならば、任意の α∈R に対して、和が α となる並べ替えが存在する。
証明の方針. 正の項を足して α を超えたら負の項を足して α を下回り、また正の項を足す……を繰り返す。正の項も負の項もいくらでも使える(和が +∞)ので各段階は有限回で終わり、項が 0 に近づくので行き過ぎの幅も 0 に近づく。
証明. an≥0 である項を番号順に p1,p2,…、an<0 である項の絶対値を番号順に q1,q2,… とする。命題 2.43 (2) より ∑pk=∑qk=+∞ であり、特にどちらも無限個ある。また命題 2.28 より an→0 なので pk→0、qk→0。
次の規則で項を並べる。現在の部分和を T とする。
- 第 j 段の前半:まだ使っていない p を番号順に、少なくとも 1 個、T>α となるまで加える。
- 第 j 段の後半:まだ使っていない q を番号順に、少なくとも 1 個、T<α となるまで引く。
残りの p の和は +∞ なので前半は有限個で終わり、後半も同様である。各段で p と q を少なくとも 1 個ずつ新たに使うので、すべての項がちょうど一回ずつ使われ、これは並べ替えである。
収束を示す。以下 j≥2 とする(第 1 段の前半は T=0 から始まるので、α<0 のとき下の評価が成り立たないことがある)。前半の最後に加えた項を p(j) とすると、それを加える直前の T は α 以下である(前半で 2 個目以降の項なら「まだ α を超えていない」から、1 個目なら直前の第 j−1 段の後半の終わりで T<α だから)。よって前半の終わりで α<T≤α+p(j)。後半で引いている途中の部分和は、最後の項を引く前まで α 以上かつ前半の終わりの値以下であり、後半の最後に引いた項を q(j) とすると、後半の終わりで α−q(j)≤T<α。同様に次の段の前半の途中の部分和は α−q(j) 以上 α 以下である。以上より、第 j 段の後半から第 j+1 段の前半の終わりまでの部分和 Tn はすべて
∣Tn−α∣≤max{p(j),q(j),p(j+1)}
を満たす。ε>0 に対し、k≥K で pk<ε、qk<ε となる K≥2 をとる。第 j 段では少なくとも j 番目以降の p と q が使われるので、j≥K なら p(j),q(j),p(j+1)<ε。よって第 K 段の後半以降のすべての n で ∣Tn−α∣<ε となり、Tn→α。□
同様の構成で、+∞ や −∞ に発散する並べ替え、振動する並べ替えも作れる(問題 2.9)。定理 2.47 と 2.49 をあわせると、級数がどう並べ替えても同じ和に収束するための必要十分条件は、絶対収束することである。
2.11 級数の積
二つの級数の積 (∑an)(∑bn) を展開すると、すべての積 akbl の和になる。これを一列に並べる方法はいろいろあるが、べき級数 (∑anxn)(∑bnxn) で xn の係数をまとめる並べ方が特に重要である。
定義 2.50(コーシー積, Cauchy product)∑n=0∞an と ∑n=0∞bn に対して、cn=∑k=0nakbn−k とおいた級数 ∑n=0∞cn をコーシー積という。
定理 2.51(メルテンスの定理, Mertens' theorem)∑n=0∞an が絶対収束して和が A、∑n=0∞bn が収束して和が B ならば、コーシー積 ∑cn は収束して和は AB である。
下書き. 部分和を AN,BN,CN とし、βn=Bn−B(→0)とおく。和の順序を入れ替えると
CN=n=0∑Nk=0∑nakbn−k=k=0∑Nakl=0∑N−kbl=k=0∑NakBN−k=ANB+k=0∑NakβN−k
ANB→AB なので、γN=∑k=0NakβN−k→0 を示せばよい。γN の和を「k が小さい部分」と「k が大きい部分」に分ける。k が小さければ N−k が大きいので βN−k が小さい。k が大きければ ∑∣ak∣ の残りが小さい。ここで絶対収束が効く。
証明. α=∑k=0∞∣ak∣、M=supn∣βn∣(収束列なので有限)とおく。ε>0 に対し、n≥L で ∣βn∣<ε となる L と、∑k>K∣ak∣<ε となる K をとる。N≥K+L ならば、k≤K で N−k≥L なので
∣γN∣≤k=0∑K∣ak∣∣βN−k∣+k=K+1∑N∣ak∣∣βN−k∣≤αε+Mε=(α+M)ε
よって γN→0 であり、CN=ANB+γN→AB。□
両方が絶対収束する場合は、∑n=0N∣cn∣≤∑n=0N∑k=0n∣ak∣∣bn−k∣≤(∑∣ak∣)(∑∣bl∣) よりコーシー積も絶対収束する。
例 2.52(両方が条件収束すると積は発散しうる)an=bn=n+1(−1)n(n≥0)とすると、∑an はライプニッツの判定法で収束する。コーシー積は cn=(−1)n∑k=0n(k+1)(n−k+1)1 であり、相加相乗平均の不等式より (k+1)(n−k+1)≤(2n+2)2 なので
∣cn∣≥k=0∑nn+22=n+22(n+1)≥1
項が 0 に収束しないので ∑cn は発散する。メルテンスの定理で一方の絶対収束を仮定したのは本質的である。
例 2.53(指数法則の予告)E(x)=∑n=0∞n!xn は任意の実数 x で絶対収束する(例 2.40 (2))。E(x) と E(y) のコーシー積は、二項定理より
cn=k=0∑nk!xk⋅(n−k)!yn−k=n!1k=0∑n(kn)xkyn−k=n!(x+y)n
なので、メルテンスの定理より E(x)E(y)=E(x+y)。定理 2.24 より E(1)=e である。第6章で E(x)=ex であることを示し、指数関数の基本的な性質をこの等式から導く。
まとめ
- 数列の収束は ε-N 論法で定義する。証明では ∣an−α∣ を簡単な式で上から評価し、そこから N を逆算する(下書き)。清書では N を先に宣言する。
- 極限の四則・はさみうちの原理は定義から証明できる。ただし四則は各極限の存在が前提である。
- 上極限・下極限は常に(±∞ を許して)存在し、部分列の極限の最大値・最小値として特徴づけられる。有界数列は limsup=liminf のとき、そのときに限り収束する。
- コーシー列の判定法を使えば、極限の値を知らずに収束を示せる。
- (1+n1)n は単調増加で有界なので収束し、その極限 e は ∑n!1 に等しい。誤差評価 0<e−∑k=0nk!1<n⋅n!1 から e の無理性が従う。
- 正項級数の収束は、比較・凝集・比(ダランベール)・根(コーシー)の判定法で調べる。根判定法の方が強い。
- 絶対収束する級数は収束し、並べ替えても和が変わらない。条件収束する級数は、並べ替えで任意の値に収束させられる(リーマンの再配列定理)。
- 一方が絶対収束すれば、コーシー積は積の和に収束する(メルテンスの定理)。
演習問題
問題 2.1 ★ 次を ε-N 論法で証明せよ(下書きもつけよ)。
(1) limn→∞2n2+1n2−3n=21 (2) limn→∞(n2+n−n)=21
解答
(1) 下書き. 2n2+1n2−3n−21=2(2n2+1)6n+1≤4n27n=4n7。4n7<ε となるには n>4ε7 ならよい。
証明. ε>0 に対し N>4ε7 をとる。n≥N なら 6n+1≤7n、2(2n2+1)>4n2 より 2n2+1n2−3n−21<4n7≤4N7<ε。
(2) 下書き. 有理化すると n2+n−n=n2+n+nn で、
n2+n+nn−21=2(n2+n+n)n−n2+n=2(n2+n+n)2−n
n2+n≥n より絶対値は 2⋅4n2n=8n1 以下。n>8ε1 ならよい。
証明. ε>0 に対し N>8ε1 をとれば、n≥N で上の計算より n2+n−n−21≤8n1≤8N1<ε。
問題 2.2 ★ an→α ならば na1+a2+⋯+an→α であることを示せ(チェザロ平均)。逆が成り立たない例を挙げよ。
解答
下書き. n1∑k=1n(ak−α) を、k<N の部分(有限個なので n1 倍すれば小さい)と k≥N の部分(各項が小さい)に分ける。
証明. ε>0 に対し、k≥N で ∣ak−α∣<2ε となる N をとり、C=∑k=1N−1∣ak−α∣ とおく。N′≥N を N′C<2ε となるようにとる。n≥N′ なら
n1k=1∑nak−α≤nC+n1k=N∑n∣ak−α∣<2ε+nn−N+1⋅2ε≤ε
逆の反例:an=(−1)n は発散するが、平均は n1∑k=1n(−1)k≤n1→0。
問題 2.3 ★ (1) an=(−1)nn+1n+21+(−1)n の上極限・下極限を求めよ。
(2) 有界な数列について limsup(an+bn)≤limsupan+limsupbn を示し、等号が成り立たない例を挙げよ。
解答
(1) n が偶数なら an=n+1n+1→2、奇数なら an=−n+1n→−1。部分列の極限はこの二つだけなので(どの部分列も偶数番目か奇数番目の項を無限個含み、収束するならその極限は 2 か −1)、定理 2.18 より limsupan=2、liminfan=−1。
(2) sn=supk≥nak、tn=supk≥nbk とおくと、k≥n で ak+bk≤sn+tn なので supk≥n(ak+bk)≤sn+tn。n→∞ とすればよい(補題 1.28 (2))。例:an=(−1)n、bn=−(−1)n なら左辺は 0、右辺は 2。
問題 2.4 ★ 次の級数の収束・発散を判定せよ。
(1) ∑3nn2 (2) ∑nnn! (3) ∑n(n+1)1 (4) ∑(n+1n)n2 (5) ∑(n+1−n)
解答
(1) 比 3n2(n+1)2→31<1 なので収束。(2) 例 2.40 (3) で c=1<e の場合なので収束。(3) n(n+1)1≥n+11 で ∑n+11 は発散するので、比較判定法により発散。(4) an1/n=(n+1n)n=(1+1/n)n1→e1<1 なので根判定法により収束。(5) 部分和は N+1−1→+∞ なので発散(項は 0 に収束するが級数は発散する例)。
問題 2.5 ★★ x>0 とする。(1+nx)n は単調増加で、limn→∞(1+nx)n=∑k=0∞k!xk であることを示せ。
解答
定理 2.24 の証明と同様に、二項定理より (1+nx)n=∑k=0nk!xk∏j=1k−1(1−nj)。x>0 なので各項は正であり、n を n+1 にすると各項は増えるか等しく、正の項が一つ増えるので狭義単調増加。積は 1 以下なので (1+nx)n≤∑k=0nk!xk≤E(x):=∑k=0∞k!xk(例 2.40 (2) より収束)。よって極限 L が存在して L≤E(x)。逆に m を固定して n≥m で k>m の項を捨て、n→∞ とすれば L≥∑k=0mk!xk。m→∞ として L≥E(x)。
問題 2.6 ★★ cn=(1+n1)n+1 は狭義単調減少で e に収束することを示し、(1+n1)n<e<(1+n1)n+1 を導け。
解答
n≥2 で
cncn−1=((n+1)/n)n+1(n/(n−1))n=(n2−1n2)nn+1n=(1+n2−11)nn+1n
ベルヌーイの不等式より (1+n2−11)n≥1+n2−1n>1+n1 なので cncn−1>nn+1⋅n+1n=1。よって (cn) は狭義単調減少。cn=an(1+n1)→e⋅1=e。狭義単調増加で e に収束する an は an<e を満たし(an<an+1≤e)、狭義単調減少な cn は cn>e を満たす。
問題 2.7 ★★ (an) が単調減少、an≥0 で ∑an が収束するならば、nan→0 であることを示せ。また、単調性の仮定を外すと成り立たない例を挙げよ。
解答
単調性より ma2m≤∑k=m+12mak であり、右辺は定理 2.31 より m→∞ で 0 に収束する。よって 2ma2m→0。また (2m+1)a2m+1≤(2m+1)a2m=2m2m+1⋅2ma2m→0。偶数番目と奇数番目がともに 0 に収束するので nan→0。
反例:n が平方数 k2 のとき an=k21、それ以外で an=n21 とすると ∑an≤2∑k21<∞ だが、n=k2 で nan=1 なので nan→0。
問題 2.8 ★★ an>0 のとき liminfanan+1≤liminfan1/n を示せ。これと命題 2.39 を用いて limn→∞n(n!)1/n=e1 を示せ。
解答
ℓ=liminfanan+1 とし、ℓ>0 としてよい。0<β<ℓ を任意にとると、十分大きな N について n≥N で anan+1>β なので an≥aNβn−N=cβn。an1/n≥c1/nβ で c1/n→1 なので、任意の δ>0 に対して十分大きな n で an1/n>β−δ、よって liminfan1/n≥β−δ。δ、β は任意なので liminfan1/n≥ℓ。
an=nnn! とおくと anan+1=(n+1n)n→e1。命題 2.39 より an1/n=n(n!)1/n→e1。
問題 2.9 ★★★ ∑an が条件収束するとき、+∞ に発散する並べ替えが存在することを示せ。
解答
定理 2.49 の証明の記号を使う。第 j 段で、まだ使っていない p を番号順に、少なくとも 1 個、部分和が j を超えるまで加え(∑pk=+∞ なので有限個で終わる)、次に q を1 個だけ引く。各段で p と q を少なくとも 1 個ずつ使うので並べ替えになる。qk→0 なので、ある j0 以降の段で引く q は 1 以下である。j>j0 とする。第 j−1 段の終わりの部分和は (j−1)−1 より大きいので、第 j 段の前半の途中の部分和はすべて j−2 より大きく、第 j 段の終わりの値は j−1 より大きい。よって第 j 段以降の部分和はすべて j−2 より大きく、部分和は +∞ に発散する。
問題 2.10 ★★★(アーベルの判定法)∑an が収束し、(bn) が単調かつ有界ならば、∑anbn は収束することを示せ。(ヒント:アーベルの総和公式(部分和分)∑k=n+1makbk=rnbn+1−rmbm+∑k=n+1m−1rk(bk+1−bk)、ただし rk=∑i>kai。)
解答
まず総和公式を確かめる。ak=rk−1−rk なので
k=n+1∑makbk=k=n+1∑mrk−1bk−k=n+1∑mrkbk=rnbn+1+k=n+1∑m−1rkbk+1−k=n+1∑m−1rkbk−rmbm
で、これはヒントの式である。∣bk∣≤B とし、(bk) は単調なので ∑k=n+1m−1∣bk+1−bk∣=∣bm−bn+1∣≤2B。ε>0 に対し、k≥N で ∣rk∣<ε となる N をとる(収束級数の残りは 0 に収束する)。m>n≥N なら
k=n+1∑makbk≤εB+εB+ε⋅2B=4Bε
定理 2.31 より ∑anbn は収束する。