この章の目標
- 曲線の長さを定義し、C1 曲線の長さが ∫∥γ′∥ dt で与えられることを証明できる
- 線積分を計算し、グリーンの定理を長方形・縦線領域で証明できる
- 保存場(勾配場)の特徴づけと、領域の形(単連結性)が果たす役割を dθ の例で理解する
- パラメータ表示された曲面の面積・面積分(流束)を計算できる
- 勾配・発散・回転の関係式と物理的意味を理解し、ガウスの発散定理・ストークスの定理を使える
- これらの定理が多様体上のストークスの定理に統一されることの見通しを得る
前提:第7章、第9章 重積分
10.1 曲線の長さ
高校では曲線 (x(t),y(t)) の長さを ∫x′(t)2+y′(t)2 dt で求めた。この公式を「長さ」の定義から導こう。長さの自然な定義は、曲線に内接する折れ線の長さの上限である。
曲線とは連続写像 γ:[a,b]→Rn のことをいう。γ が C1 級(端点では片側微分)のとき C1 曲線、さらに γ′(t)=0 のとき正則という。有限個の C1 曲線をつないだものを区分的 C1 曲線という。γ(a)=γ(b) のとき閉曲線という。
定義 10.1(曲線の長さ)曲線 γ:[a,b]→Rn と [a,b] の分割 P:a=t0<⋯<tk=b に対して ℓ(γ,P)=∑i=1k∥γ(ti)−γ(ti−1)∥ とおき、L(γ)=supPℓ(γ,P) を γ の長さという。L(γ)<∞ のとき γ は長さをもつ(求長可能, rectifiable)という。
三角不等式より、分割を細かくすると ℓ(γ,P) は増えるか等しい。準備として、ベクトル値関数 v:[a,b]→Rn(各成分が可積分)の積分 ∫abv=(∫abv1,…,∫abvn) について
∫abv(t)dt≤∫ab∥v(t)∥dt(1)
を示しておく。w=∫abv とすると ∥w∥2=⟨w,∫v⟩=∫⟨w,v⟩≤∥w∥∫∥v∥(コーシー–シュワルツ)なので、w=0 なら ∥w∥ で割ればよい。
定理 10.2 C1 曲線 γ:[a,b]→Rn は長さをもち、L(γ)=∫ab∥γ′(t)∥ dt。
証明. 任意の分割 P について、(1) より ∥γ(ti)−γ(ti−1)∥=∫ti−1tiγ′≤∫ti−1ti∥γ′∥ なので ℓ(γ,P)≤∫ab∥γ′∥。逆向きの不等式を示す。ε>0 に対し、γ′ の一様連続性から ∣s−t∣<δ⇒∥γ′(s)−γ′(t)∥<ε となる δ をとり、幅 δ 未満の分割 P をとる。
∥γ(ti)−γ(ti−1)∥=γ′(ti)Δti−∫ti−1ti(γ′(ti)−γ′(s))ds≥∥γ′(ti)∥Δti−εΔti
よって ℓ(γ,P)≥∑∥γ′(ti)∥Δti−ε(b−a)。右辺の和は ∥γ′∥ のリーマン和なので、分割をさらに細かくすると ∫ab∥γ′∥ に近づく(定理 5.6)。したがって L(γ)≥∫ab∥γ′∥−ε(b−a) がすべての ε で成り立つ。□
φ:[c,d]→[a,b] が C1 級の全単射で φ′>0 のとき、γ∘φ を γ の(向きを保つ)パラメータの取り替えという。置換積分より ∫cd∥(γ∘φ)′∥=∫cd∥γ′(φ(u))∥φ′(u) du=∫ab∥γ′∥ で、長さはパラメータのとり方によらない。
例 10.3 (1) 円 γ(t)=(cost,sint)(0≤t≤2π)は ∥γ′∥=1 なので長さ 2π。第6章でべき級数から定義した π が、確かに単位円周の長さの半分であることがわかる。
(2) サイクロイド γ(t)=(t−sint,1−cost)(0≤t≤2π)は ∥γ′∥=2−2cost=2sin2t なので、長さは ∫02π2sin2t dt=8。
(3) グラフ y=f(x)(a≤x≤b、f は C1 級)の長さは ∫ab1+f′(x)2 dx。
連続な曲線でも長さをもつとは限らない。f(x)=xsinx1(f(0)=0)のグラフ [0,1]→R2 は、x=(k+1/2)π1 で ∣f∣=x となる点を順にたどる折れ線の長さが調和級数程度に発散するので、長さをもたない。
10.2 線積分
定義 10.4(線積分, line integral)γ:[a,b]→U⊂Rn を区分的 C1 曲線とする。
- 連続関数 f:U→R に対して ∫γf ds=∫abf(γ(t))∥γ′(t)∥ dt を弧長についての線積分という。
- 連続なベクトル場 F:U→Rn に対して
∫γF⋅dr=∫ab⟨F(γ(t)),γ′(t)⟩dt
を F の γ に沿った線積分という。F=(F1,…,Fn) のとき ∫γF1 dx1+⋯+Fn dxn とも書く(n=2 では ∫γP dx+Q dy)。
F を力の場とすれば、∫γF⋅dr は粒子を γ に沿って動かすときに力がする仕事である。γ が閉曲線のときは ∮γF⋅dr と書き、循環 (circulation) ともいう。
置換積分より、ベクトル場の線積分は向きを保つパラメータの取り替えで変わらず、向きを逆にすると符号が変わる(φ′<0 の取り替えでは積分の上端と下端が入れ替わる)。一方 ∫γf ds は向きによらない。
例 10.5 F(x,y)=(−y,x)、γ(t)=(cost,sint)(0≤t≤2π)なら ⟨F(γ),γ′⟩=sin2t+cos2t=1 で、∮γF⋅dr=2π。F は原点のまわりの回転の流れであり、流れに沿って一周すると正の仕事をする。
10.3 グリーンの定理
微分積分学の基本定理 ∫abf′(x) dx=f(b)−f(a) は、「区間の上での導関数の積分は、境界(端点)での値で決まる」と読める。この 2 次元版がグリーンの定理である。
有界領域 D⊂R2 の境界 ∂D が有限個の区分的 C1 閉曲線からなるとき、∂D には正の向き(進行方向の左側に D がある向き)をつけて考える。
定理 10.6(グリーンの定理, Green's theorem)D を上のような有界閉領域で、次の意味で「縦にも横にも単純」なものとする:
D={a≤x≤b, φ1(x)≤y≤φ2(x)}={c≤y≤d, ψ1(y)≤x≤ψ2(y)}
(φi、ψi は区分的 C1 級)。P,Q が D を含む開集合で C1 級ならば
∮∂DPdx+Qdy=∬D(∂x∂Q−∂y∂P)dxdy
証明. ∮∂DP dx=−∬DPy と ∮∂DQ dy=∬DQx を別々に示す。
前者を縦線集合の表示で示す。フビニの定理(定理 9.9)と微分積分学の基本定理より
−∬D∂y∂Pdxdy=−∫ab(P(x,φ2(x))−P(x,φ1(x)))dx
一方、正の向きの ∂D は、(i) 下の曲線 t↦(t,φ1(t))(t は a から b)、(ii) 右の縦の線分(あれば)、(iii) 上の曲線を右から左へ、(iv) 左の縦の線分(あれば)からなる。縦の線分上では x が一定なので dx の成分は 0 で、∫P dx=0。(i) では ∫abP(t,φ1(t)) dt、(iii) では向きが逆なので −∫abP(t,φ2(t)) dt。和は上式の右辺に一致する。
後者は横線集合の表示で同様に示せる(右の曲線 x=ψ2(y) を下から上へ、左の曲線を上から下へたどるので、符号がちょうど逆になる)。□
長方形、円板、三角形などは定理 10.6 の条件を満たす。より一般の領域も、有限個のそのような領域に分割できれば、分割線上の線積分は隣り合う二つの領域で逆向きにたどられて打ち消し合うので、グリーンの定理が成り立つ(円環領域 1≤x2+y2≤4 など、穴のある領域も含む。このとき内側の円は時計回りの向きになる)。
例 10.7(面積の公式)P=−2y、Q=2x とすると Qx−Py=1 なので
Area(D)=21∮∂D(xdy−ydx)
楕円 (acost,bsint) なら 21∫02π(abcos2t+absin2t) dt=πab。例 10.5 は F=(−y,x) に対してこの公式の 2 倍を計算したもので、∬D2=2π と一致する。
10.4 保存場とポテンシャル
定義 10.8(保存場, conservative field)開集合 U 上の連続なベクトル場 F が、ある C1 級関数 φ:U→R によって F=∇φ と書けるとき、F を保存場(勾配場)といい、φ をポテンシャル (potential) という。
F=∇φ なら、連鎖律より ⟨F(γ(t)),γ′(t)⟩=dtdφ(γ(t)) なので
∫γF⋅dr=φ(γ(b))−φ(γ(a))(2)
が成り立つ(線積分の基本定理)。つまり線積分は始点と終点だけで決まり、閉曲線に沿った積分は 0 である。物理では、保存力のする仕事がポテンシャルエネルギーの差に等しいことを意味する。
定理 10.9 U を連結な開集合(任意の 2 点を U 内の区分的 C1 曲線で結べる)、F を U 上の連続なベクトル場とする。次は同値である。
- F は保存場である。
- U 内の任意の区分的 C1 閉曲線 γ について ∮γF⋅dr=0。
- ∫γF⋅dr は γ の始点と終点だけで決まる(経路によらない)。
証明. (1)⇒(2) は (2) 式。(2)⇒(3):同じ始点・終点をもつ γ1,γ2 に対し、γ1 に γ2 を逆向きにつないだ閉曲線を考えればよい。(3)⇒(1):点 x0∈U を固定し、φ(x)=∫x0xF⋅dr(x0 から x への任意の経路に沿った積分)と定める。B(x,r)⊂U とし、∣t∣<r に対して x0 から x への経路に線分 s↦x+sej(0≤s≤t)をつなぐと
φ(x+tej)−φ(x)=∫0t⟨F(x+sej),ej⟩ds=∫0tFj(x+sej)ds
Fj の連続性と微分積分学の基本定理より ∂jφ(x)=Fj(x)。偏導関数が連続なので φ は C1 級で ∇φ=F。□
F=∇φ で φ が C2 級(F が C1 級)なら、シュワルツの定理より
∂xi∂Fj=∂xi∂xj∂2φ=∂xj∂Fi(3)
が成り立つ。これは保存場であるための必要条件である。では逆は成り立つだろうか。
例 10.10(dθ の例)U=R2∖{0} 上のベクトル場
F(x,y)=(x2+y2−y,x2+y2x)
は、直接計算で ∂x∂F2=(x2+y2)2y2−x2=∂y∂F1 を満たす。しかし単位円に沿って一周すると ⟨F(γ(t)),γ′(t)⟩=1 なので ∮F⋅dr=2π=0 であり、定理 10.9 より F は保存場でない。
実は、原点を通る半直線を除いた領域(例えば x>0 や、負の x 軸を除いた平面)では F=∇θ(θ は偏角)である。偏角は局所的には滑らかな関数として定まるが、原点のまわりを一周すると 2π だけずれてしまい、U 全体では 1 価の連続関数として定義できない。F の線積分は 2π1∮F⋅dr が曲線の回転数(原点のまわりを何周するか)を数える(問題 10.9)。このため F を dθ(角度形式)と書く。
条件 (3) から保存場であることを導くには、領域の形に条件が必要である。
補題 10.11(積分記号下の微分)U⊂Rn を開集合、g:U×[0,1]→R を連続で、∂xjg も U×[0,1] で連続とする。このとき G(x)=∫01g(x,t) dt は xj について偏微分可能で、∂jG(x)=∫01∂xjg(x,t) dt。
証明. x∈U を固定し、B(x,r)⊂U とする。0<∣h∣<r で、各 t について平均値の定理より hg(x+hej,t)−g(x,t)=∂xjg(x+θhej,t)(0<θ<1、θ は t に依存)。よって
hG(x+hej)−G(x)−∫01∂xjg(x,t)dt≤∣s∣≤∣h∣, t∈[0,1]sup∣∂xjg(x+sej,t)−∂xjg(x,t)∣
右辺は、コンパクト集合 B(x,r)×[0,1] 上での ∂xjg の一様連続性より、h→0 で 0 に収束する。□
定理 10.12(ポアンカレの補題)U が点 x0 に関して星形(任意の x∈U に対して線分 [x0,x]⊂U)で、F が U 上の C1 級ベクトル場で (3) を満たすならば、F は保存場であり、
φ(x)=∫01⟨F(x0+t(x−x0)),x−x0⟩dt
がポテンシャルを与える。
証明. x0=0 としてよい。補題 10.11 と (3) より
∂jφ(x)=∫01(Fj(tx)+i∑t∂jFi(tx)xi)dt=∫01(Fj(tx)+ti∑∂iFj(tx)xi)dt=∫01dtd(tFj(tx))dt=Fj(x)
偏導関数は連続なので φ は C1 級で ∇φ=F。□
凸集合は星形なので、Rn や球の上では (3) は保存場であるための必要十分条件である。より一般に、U が単連結(U 内の任意の閉曲線が U 内で連続的に 1 点に縮められる)ならば同じ結論が成り立つ。R2∖{0} は単連結でなく(原点を囲む円は縮められない)、例 10.10 はまさにその反映である。この「局所的には解けるが大域的には解けない」という現象を測るのがド・ラーム・コホモロジー(07-manifolds 第7章)と基本群(09-algebraic-topology 第1章)である。
10.5 曲面と面積分
定義 10.13(パラメータ表示された曲面)D⊂R2 をジョルダン可測な有界閉集合とし、Φ:D→R3 を(D を含む開集合上の)C1 級写像で、D の内部で単射かつ Φu×Φv=0 を満たすとする。S=Φ(D) をパラメータ表示された曲面という。ここで Φu=∂u∂Φ、Φv=∂v∂Φ、× は外積(ベクトル積)である。
Φu×Φv=0 は、DΦ の階数が 2 であること(Φu と Φv が線形独立)と同値で、このとき Φu、Φv は接平面を張り、Φu×Φv は曲面の法ベクトルである。
パラメータ領域の微小な長方形 [u,u+Δu]×[v,v+Δv] は、近似的に ΦuΔu と ΦvΔv が張る平行四辺形に写され、その面積は ∥Φu×Φv∥ΔuΔv である。そこで次のように定義する。
定義 10.14(曲面積・面積分)
Area(S)=∬D∥Φu×Φv∥dudv,∬SfdS=∬Df(Φ(u,v))∥Φu×Φv∥dudv
単位法ベクトル n=∥Φu×Φv∥Φu×Φv を選んだ(向きをつけた)とき、連続なベクトル場 F に対して
∬SF⋅ndS=∬D⟨F(Φ(u,v)),Φu×Φv⟩dudv
を S を通過する F の流束 (flux) という。
∥Φu×Φv∥2=∥Φu∥2∥Φv∥2−⟨Φu,Φv⟩2(グラム行列式)である。パラメータを (u,v)=Ψ(s,t) と取り替えると、連鎖律より Φs×Φt=(detDΨ) Φu×Φv となるので、変数変換公式により曲面積・面積分はパラメータのとり方によらない(流束は detDΨ>0、すなわち向きを保つ取り替えで不変)。
補足
曲線の長さのように「内接する多面体の面積の上限」で曲面積を定義しようとすると、有限な円柱の側面に対しても上限が ∞ になってしまう(シュワルツの提灯)。細長い三角形は曲面に対して大きく傾きうるからである。そのため曲面積は定義 10.14 のように積分で定義する。
例 10.15 (1)(球面)Φ(ϕ,θ)=R(sinϕcosθ,sinϕsinθ,cosϕ)(0≤ϕ≤π、0≤θ≤2π)とすると、計算により Φϕ×Φθ=R2sinϕ(sinϕcosθ,sinϕsinθ,cosϕ)(外向き)、∥Φϕ×Φθ∥=R2sinϕ。よって面積は ∫02π∫0πR2sinϕ dϕ dθ=4πR2。
(2)(グラフ)z=f(x,y) なら Φ(x,y)=(x,y,f(x,y))、Φx×Φy=(−fx,−fy,1)(上向き)で、dS=1+fx2+fy2 dx dy。
(3)(流束)F(x)=x の単位球面を外向きに通過する流束は、球面上で F⋅n=⟨x,x⟩=1 なので ∬S1 dS=4π。
流束の物理的意味:F を流体の速度場とすると、F⋅n dS は微小な面 dS を単位時間に n の側へ通り抜ける流体の体積である。
10.6 勾配・発散・回転
R3 の開集合 U 上の関数 f とベクトル場 F=(F1,F2,F3) に対して、∇=(∂1,∂2,∂3) を形式的なベクトルと見て
gradf=∇f,divF=∇⋅F=i=1∑3∂iFi,rotF=∇×F=∂2F3−∂3F2∂3F1−∂1F3∂1F2−∂2F1
と定め、それぞれ勾配 (gradient)、発散 (divergence)、回転 (rotation, curl) という。divgradf=Δf=∑∂i2f はラプラシアンである。条件 (3) は rotF=0 と同じことである。
命題 10.16 f、F が C2 級ならば
rot(gradf)=0,div(rotF)=0
また C1 級なら div(fF)=⟨∇f,F⟩+fdivF、rot(fF)=∇f×F+frotF。
証明. rot(∇f) の第 1 成分は ∂2∂3f−∂3∂2f=0(シュワルツの定理)。他の成分も同様。div(rotF)=∂1(∂2F3−∂3F2)+∂2(∂3F1−∂1F3)+∂3(∂1F2−∂2F1) で、2 階偏導関数が対ごとに打ち消し合う。後半は積の微分から従う。□
例 10.17 (1) F=(x,y,z):divF=3、rotF=0。湧き出しのある、渦のない流れ。
(2) F=(−y,x,0)(z 軸まわりの回転):divF=0、rotF=(0,0,2)。湧き出しのない、渦のある流れ。回転の大きさは角速度の 2 倍である。
発散と回転の物理的意味は、次節の定理から明らかになる:divF(a) は a のまわりの単位体積あたりの湧き出しの量、⟨rotF(a),n⟩ は n に垂直な面内での単位面積あたりの循環(渦の強さ)である((4)、(5) 式)。
10.7 ガウスの発散定理とストークスの定理
定理 10.18(ガウスの発散定理, divergence theorem)V⊂R3 を有界閉領域で、その境界 ∂V が有限個の区分的に滑らかな曲面からなるものとし、∂V には外向きの単位法ベクトル n をとる。F が V を含む開集合で C1 級ならば
∭VdivFdV=∬∂VF⋅ndS
証明の概略. F=(0,0,F3) の場合を、V={(x,y)∈D, φ1(x,y)≤z≤φ2(x,y)}(D は平面のジョルダン可測な閉集合、φi は C1 級)の形の領域で示す。フビニの定理より
∭V∂3F3dV=∬D(F3(x,y,φ2(x,y))−F3(x,y,φ1(x,y)))dxdy
一方、上面 z=φ2 を Φ(x,y)=(x,y,φ2(x,y)) で表すと、外向き(上向き)の法ベクトルは Φx×Φy=(−∂xφ2,−∂yφ2,1) で、⟨(0,0,F3),Φx×Φy⟩=F3。よって上面の流束は右辺の第 1 項に等しい。下面では外向きの法ベクトルが下向きなので、流束は第 2 項(負号を含む)に等しい。側面(あれば)では法ベクトルが水平なので F⋅n=0。V が三方向のどれについてもこのような形に表せる(球、直方体など)なら、F1、F2 の部分も同様に示せて、足し合わせると定理を得る。一般の領域は、このような領域に分割して、内部の境界面での流束が打ち消し合うことを使う。□
a を中心とする半径 r の球 Br に適用し、divF の連続性を使うと
divF(a)=r→0limvol(Br)1∬∂BrF⋅ndS(4)
となり、発散が「単位体積あたりの湧き出し」であることがわかる。
定理 10.19(ストークスの定理, Stokes' theorem)S を向きのついた区分的に滑らかな曲面、その境界 ∂S を区分的 C1 閉曲線とし、∂S には S の向きと整合する向き(法ベクトル n の方向を頭にして立ち、∂S に沿って歩くと S が左側にある向き)をつける。F が S を含む開集合で C1 級ならば
∬S(rotF)⋅ndS=∮∂SF⋅dr
証明の概略. S がグラフ z=f(x,y)((x,y)∈D、f は C2 級、D はグリーンの定理が使える領域)で、n が上向きの場合を考える。F=(P,0,0) とすると rotF=(0,∂zP,−∂yP)、例 10.15 (2) より
(rotF)⋅ndS=(−∂zPfy−∂yP)dxdy=−∂y∂(P(x,y,f(x,y)))dxdy
∂S は ∂D を (x,y)↦(x,y,f(x,y)) で持ち上げた曲線で、その上で ∫P dx=∮∂Dp dx(p(x,y)=P(x,y,f(x,y)))。グリーンの定理より ∮∂Dp dx=−∬Dpy なので、両辺は一致する。(0,Q,0) も同様、(0,0,R) では ∮R dz=∮∂DR(fx dx+fy dy) にグリーンの定理を使い、fxy=fyx を用いる。一般の曲面は、このような小片に分割して、内部の境界曲線上の線積分が打ち消し合うことを使う。□
S を平面上の領域 D(n=(0,0,1))とすれば、ストークスの定理はグリーンの定理そのものである。また、a を中心とし n に垂直な半径 r の円板 Sr に適用すると
⟨rotF(a),n⟩=r→0limπr21∮∂SrF⋅dr(5)
となり、回転が「単位面積あたりの循環」であることがわかる。
例 10.20 (1)(ストークスの定理の検証)上半球面 S={x2+y2+z2=1, z≥0}(外向き)と F=(−y,x,0) を考える。rotF=(0,0,2) なので左辺は 2∬Sn3 dS で、n3 dS は xy 平面への射影の面積要素(例 10.15 (2) の形で n dS=(∗,∗,1) dx dy)なので、2π。右辺は単位円に沿った線積分で、例 10.5 より 2π。
(2)(ガウスの法則)E(x)=∥x∥3x(原点の点電荷による電場)は R3∖{0} で divE=0 である(∂i(xi∥x∥−3)=∥x∥−3−3xi2∥x∥−5 を足すと 0)。半径 R の球面上では E⋅n=R21 なので流束は 4π。原点を含む任意の領域 V の境界を通る流束は、V から小さな球を除いた領域に発散定理を使うと、やはり 4π になる。原点を含まない領域では 0 である(問題 10.8)。
10.8 多様体上のストークスの定理へ
本章の諸定理は、形がよく似ている:
| 定理 |
左辺(内部での微分の積分) |
右辺(境界での積分) |
| 微分積分学の基本定理 |
∫abf′ dx |
f(b)−f(a) |
| 線積分の基本定理 |
∫γ∇φ⋅dr |
φ(終点)−φ(始点) |
| グリーン・ストークスの定理 |
∬S(rotF)⋅n dS |
∮∂SF⋅dr |
| ガウスの発散定理 |
∭VdivF dV |
∬∂VF⋅n dS |
微分形式 (differential form) の言葉を使うと、これらはすべて一つの定理
∫Mdω=∫∂Mω
(M は境界付きの向きづけられた多様体、ω は微分形式、d は外微分)の特別な場合になる。関数(0 次形式)の d が勾配、1 次形式の d が回転、2 次形式の d が発散に対応し、命題 10.16 の rotgrad=0、divrot=0 は d∘d=0 という一つの等式にまとめられる。また例 10.10 の dθ は、「dω=0 だが ω=dφ とは書けない」微分形式の典型例であり、その存在が領域の穴を検出する。これらは 07-manifolds 第5章、第6章、第7章 の主題である。
まとめ
- C1 曲線の長さ(内接折れ線の長さの上限)は ∫∥γ′∥ dt に等しく、パラメータのとり方によらない。
- ベクトル場の線積分は仕事・循環を表し、向きを逆にすると符号が変わる。
- グリーンの定理 ∮∂DP dx+Q dy=∬D(Qx−Py) は、縦線・横線集合に対してフビニの定理と基本定理から証明できる。面積の公式が従う。
- F が保存場 ⇔ 閉曲線に沿った線積分がすべて 0 ⇔ 経路独立。rotF=0 は必要条件で、星形(より一般に単連結)領域では十分条件でもある(ポアンカレの補題)。R2∖{0} 上の dθ が反例である。
- パラメータ表示された曲面の面積は ∬∥Φu×Φv∥ du dv で定義され、流束は ∬⟨F,Φu×Φv⟩ du dv で計算する。
- rotgrad=0、divrot=0。発散は湧き出しの密度、回転は循環の密度である。
- ガウスの発散定理とストークスの定理は、微分積分学の基本定理の高次元版であり、多様体上のストークスの定理 ∫Mdω=∫∂Mω に統一される。
演習問題
問題 10.1 ★ 次の曲線の長さを求めよ。
(1) 螺旋 (cost,sint,t)(0≤t≤2π) (2) 懸垂線 y=coshx=2ex+e−x(0≤x≤a)
解答
(1) ∥γ′∥=sin2t+cos2t+1=2 なので 22π。
(2) y′=sinhx、1+sinh2x=cosh2x なので ∫0acoshx dx=sinha=2ea−e−a。
問題 10.2 ★ F=(y,−x) の線積分を、原点から (1,1) への二つの経路 (a) y=x、(b) y=x2 に沿って計算し、F が保存場でないことを確かめよ。
解答
(a) γ(t)=(t,t):∫01(t⋅1−t⋅1) dt=0。(b) γ(t)=(t,t2):∫01(t2⋅1−t⋅2t) dt=−31。値が経路によるので、定理 10.9 より保存場でない(実際 ∂xF2−∂yF1=−2=0)。
問題 10.3 ★ グリーンの定理を用いて、アステロイド x=cos3t、y=sin3t(0≤t≤2π)で囲まれた領域の面積を求めよ。
解答
例 10.7 より面積は 21∫02π(xy′−yx′) dt=21∫02π(3cos4tsin2t+3sin4tcos2t) dt=23∫02πsin2tcos2t dt=83∫02πsin22t dt=83π。
問題 10.4 ★★ F=(2xy+z,x2,x) は R3 上の保存場であることを示し、ポテンシャルを求めよ。これを用いて、(0,0,0) から (1,2,3) への任意の経路に沿った線積分を求めよ。
解答
rotF=(0−0,1−1,2x−2x)=0 で R3 は星形なので、ポアンカレの補題より保存場。φx=2xy+z より φ=x2y+xz+g(y,z)、φy=x2 より gy=0、φz=x より gz=0。よって φ=x2y+xz(定数を除く)。線積分は φ(1,2,3)−φ(0,0,0)=2+3=5。
問題 10.5 ★★ 放物面 z=x2+y2 のうち x2+y2≤1 の部分の面積を求めよ。
解答
dS=1+4x2+4y2 dx dy で、極座標により ∫02π∫011+4r2 r dr dθ=2π[12(1+4r2)3/2]01=6π(55−1)。
問題 10.6 ★★ C1 級のベクトル場 F,G について div(F×G)=⟨G,rotF⟩−⟨F,rotG⟩ を示せ。
解答
F×G=(F2G3−F3G2,F3G1−F1G3,F1G2−F2G1) を積の微分で展開すると、F の成分に微分がかかった項と G の成分に微分がかかった項に分かれる。前者(F を微分した項)を集めると
G1(∂2F3−∂3F2)+G2(∂3F1−∂1F3)+G3(∂1F2−∂2F1)=⟨G,rotF⟩
後者も同様に集めると −⟨F,rotG⟩ になる。
問題 10.7 ★★ (1) F=(x,y,z) と単位立方体 [0,1]3 について、発散定理の両辺を計算して一致を確かめよ。(2) F=(x3,y3,z3) の単位球面を外向きに通過する流束を求めよ。
解答
(1) 左辺は ∭3=3。右辺:面 x=1 では n=e1、F⋅n=1 で流束 1。面 x=0 では F⋅n=−x=0。他の面も同様で、合計 3。
(2) divF=3(x2+y2+z2) なので、球座標で ∭3r2 dV=3∫02π∫0π∫01r4sinϕ dr dϕ dθ=3⋅4π⋅51=512π。
問題 10.8 ★★ E(x)=∥x∥3x とし、S を球面 ∥x−a∥=R(外向き)とする。∥a∥=R のとき、S を通過する E の流束は、∥a∥<R なら 4π、∥a∥>R なら 0 であることを示せ。
解答
∥a∥>R なら、球 V={∥x−a∥≤R} は原点を含まず、E は V の近くで C1 級で divE=0 なので、発散定理より流束は 0。∥a∥<R なら、ε>0 を小さくとり Vε=V∖{∥x∥<ε} に発散定理を使う。∂Vε は S(外向き)と球面 ∥x∥=ε(Vε から見て外向き、すなわち原点向き)からなるので、0=(S の流束)−(∥x∥=ε を外向きに通る流束)=(S の流束)−4π(例 10.20 (2))。
問題 10.9 ★★★(回転数)γ:[a,b]→R2∖{0} を区分的 C1 閉曲線とする。2π1∮γx2+y2x dy−y dx は整数であることを示せ。
解答
γ=(x,y)、r=∥γ∥、u=γ/r(単位ベクトル)とし、γ(a) の偏角の一つを θ0 とする(u(a)=(cosθ0,sinθ0))。θ(t)=θ0+∫atx2+y2xy′−yx′ds、v(t)=(cosθ(t),sinθ(t)) とおく。J を 90° 回転 J(p,q)=(−q,p) とすると、∥u∥=1 より ⟨u,u′⟩=0 なので u′=cJu、ここで c=⟨u′,Ju⟩=r2xy′−yx′=θ′(直接計算)。また v′=θ′Jv。J は ⟨Jp,q⟩=−⟨p,Jq⟩ を満たすので
dtd⟨u,v⟩=θ′(⟨Ju,v⟩+⟨u,Jv⟩)=0
(区分的に成り立ち、⟨u,v⟩ は連続)。t=a で ⟨u,v⟩=1 なので常に ⟨u,v⟩=1、単位ベクトルなので u=v(∥u−v∥2=2−2⟨u,v⟩=0)。γ は閉曲線なので v(b)=u(b)=u(a)=v(a)、すなわち δ=θ(b)−θ0 は cosδ=1、sinδ=0 を満たす。定理 6.21 より sin の零点は π の整数倍で、cos(kπ)=(−1)k なので、δ∈2πZ。∮γ=δ なので、2π1∮γ は整数である。この整数を γ の原点のまわりの回転数 (winding number) といい、複素関数論(05-complex-analysis 第2章)で基本的な役割を果たす。