Lemma数学ロードマップ

01 微分積分学 · 第 4 章

1 変数関数の微分

目安 15〜20 時間定理など 19演習 10 問実験 1

この章の目標

  • 微分を「一次式による最良の近似」として理解し、ランダウの記号 oo, OO を使いこなせる
  • 合成関数・逆関数の微分法則を厳密に証明できる
  • ロルの定理・平均値の定理・コーシーの平均値定理・ロピタルの定理を証明し、不等式や極限計算に応用できる
  • テイラーの定理(ラグランジュ剰余・ペアノ剰余)を証明し、近似計算・極限・極値判定に使える
  • 凸関数の性質とイェンセンの不等式を理解する
  • 導関数が連続とは限らないが中間値の性質はもつこと(ダルブーの定理)を理解する

前提:第1章〜第3章

4.1 微分可能性と線形近似

高校では微分係数を f′(a)=lim⁡h→0f(a+h)−f(a)hf'(a) = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h} と定義し、接線の傾きと解釈した。定義そのものは大学でも同じだが、見方を少し変える。この極限が cc に等しいことは、

f(a+h)=f(a)+ch+(h より速く 0 に近づく誤差)f(a + h) = f(a) + ch + (\text{h より速く 0 に近づく誤差})

と書けることと同値である。つまり微分とは、aa の近くで ff を一次式で近似したときの係数である。この見方は、多変数関数の微分(第7章)でそのまま使える形になっている。

定義 4.1(微分可能性, differentiability)II を区間、f ⁣:I→Rf\colon I \to \mathbb{R}、a∈Ia \in I とする。極限

f′(a):=lim⁡h→0f(a+h)−f(a)hf'(a) := \lim_{h \to 0} \frac{f(a + h) - f(a)}{h}

が(有限の値として)存在するとき、ff は aa で微分可能 (differentiable) であるといい、f′(a)f'(a) を微分係数 (derivative) という。h→+0h \to +0、h→−0h \to -0 の片側極限をそれぞれ右微分係数・左微分係数という。II の各点で微分可能なとき、x↦f′(x)x \mapsto f'(x) を導関数といい、f′f' や dfdx\frac{df}{dx} と書く。

aa が II の端点なら、定義 4.1 は片側の微分係数を意味する。ff が aa で微分可能なとき、直線 y=f(a)+f′(a)(x−a)y = f(a) + f'(a)(x - a) を点 (a,f(a))(a, f(a)) における接線 (tangent line) という。命題 4.3 (2) が示すように、接線は aa の近くでグラフとの差が o(x−a)o(x - a) となるただ一つの直線である。

誤差の大きさを表すために、次の記号を用意する。

定義 4.2(ランダウの記号, Landau symbols)aa の近く(x≠ax \neq a)で定義された関数 f,gf, g について:

  • ∀ε>0, ∃δ>0, 0<∣x−a∣<δ⇒∣f(x)∣≤ε∣g(x)∣\forall \varepsilon > 0,\ \exists \delta > 0,\ 0 < \lvert x - a \rvert < \delta \Rightarrow \lvert f(x) \rvert \leq \varepsilon \lvert g(x) \rvert が成り立つとき、f(x)=o(g(x))f(x) = o(g(x))(x→ax \to a)と書く。g≠0g \neq 0 なら f(x)g(x)→0\frac{f(x)}{g(x)} \to 0 と同値である。
  • ある C>0C > 0 と δ>0\delta > 0 について 0<∣x−a∣<δ⇒∣f(x)∣≤C∣g(x)∣0 < \lvert x - a \rvert < \delta \Rightarrow \lvert f(x) \rvert \leq C\lvert g(x) \rvert が成り立つとき、f(x)=O(g(x))f(x) = O(g(x))(x→ax \to a)と書く。

x→∞x \to \infty の場合も同様に定める。

例えば x→0x \to 0 のとき x3=o(x2)x^3 = o(x^2)、sin⁡x=O(x)\sin x = O(x)、x2sin⁡1x=o(x)x^2 \sin\frac{1}{x} = o(x) である。次の計算規則は定義から直ちに確かめられる(x→0x \to 0、m≥n≥0m \geq n \geq 0):

o(xn)+o(xn)=o(xn),xm⋅o(xn)=o(xm+n),o(xm)=o(xn),O(xm)=o(xn) (m>n)o(x^n) + o(x^n) = o(x^n), \quad x^m \cdot o(x^n) = o(x^{m+n}), \quad o(x^m) = o(x^n), \quad O(x^m) = o(x^n) \ (m > n)

注意

f=o(g)f = o(g) の「==」は等号ではなく「ff は o(g)o(g) という性質をもつ」という意味の一方向の記号である。x3=o(x)x^3 = o(x) かつ x2=o(x)x^2 = o(x) だが x3=x2x^3 = x^2 ではない。また o(x2)=o(x)o(x^2) = o(x) は正しいが o(x)=o(x2)o(x) = o(x^2) は誤りである。

命題 4.3(微分可能性の言い換え)f ⁣:I→Rf\colon I \to \mathbb{R}、a∈Ia \in I、c∈Rc \in \mathbb{R} について、次は同値である。

  1. ff は aa で微分可能で f′(a)=cf'(a) = c。
  2. f(a+h)=f(a)+ch+o(h)f(a + h) = f(a) + ch + o(h)(h→0h \to 0)。
  3. aa で連続な関数 φ ⁣:I→R\varphi\colon I \to \mathbb{R} で、すべての x∈Ix \in I について f(x)−f(a)=φ(x)(x−a)f(x) - f(a) = \varphi(x)(x - a) かつ φ(a)=c\varphi(a) = c を満たすものが存在する。

証明. (1)⇔(2):f(a+h)−f(a)−chh→0\frac{f(a+h) - f(a) - ch}{h} \to 0 は (1) の言い換えそのものである。(1)⇒(3):x≠ax \neq a で φ(x)=f(x)−f(a)x−a\varphi(x) = \frac{f(x) - f(a)}{x - a}、φ(a)=c\varphi(a) = c とおけばよい。(3)⇒(1):x≠ax \neq a で f(x)−f(a)x−a=φ(x)→φ(a)=c\frac{f(x) - f(a)}{x - a} = \varphi(x) \to \varphi(a) = c。□\square

(3) の形(カラテオドリの定式化)は、分母を払った形なので証明で扱いやすい。直ちに次がわかる。

系 4.4 ff が aa で微分可能ならば、ff は aa で連続である。

証明. f(x)=f(a)+φ(x)(x−a)→f(a)+φ(a)⋅0=f(a)f(x) = f(a) + \varphi(x)(x - a) \to f(a) + \varphi(a) \cdot 0 = f(a)。□\square

逆は成り立たない。f(x)=∣x∣f(x) = \lvert x \rvert は 00 で連続だが、右微分係数 11 と左微分係数 −1-1 が異なるので微分可能でない。第6章では、すべての点で連続だがどの点でも微分可能でない関数を構成する。

例 4.5(基本的な関数の導関数) (1) (xn)′=nxn−1(x^n)' = nx^{n-1}(n∈Nn \in \mathbb{N}):二項定理より (x+h)n−xnh=∑k=1n(nk)xn−khk−1→nxn−1\frac{(x+h)^n - x^n}{h} = \sum_{k=1}^{n} \binom{n}{k} x^{n-k} h^{k-1} \to nx^{n-1}。 (2) (ex)′=ex(e^x)' = e^x:ex+h−exh=ex⋅eh−1h→ex\frac{e^{x+h} - e^x}{h} = e^x \cdot \frac{e^h - 1}{h} \to e^x(定理 3.37 (3))。 (3) (log⁡x)′=1x(\log x)' = \frac{1}{x}(x>0x > 0):t=h/xt = h/x とおくと log⁡(x+h)−log⁡xh=1x⋅log⁡(1+t)t→1x\frac{\log(x+h) - \log x}{h} = \frac{1}{x} \cdot \frac{\log(1 + t)}{t} \to \frac{1}{x}(定理 3.37 (2))。 (4) (三角関数を認めて)(sin⁡x)′=cos⁡x(\sin x)' = \cos x、(cos⁡x)′=−sin⁡x(\cos x)' = -\sin x。

4.2 微分法則

定理 4.6 f,gf, g が aa で微分可能ならば、f±gf \pm g、fgfg、および g(a)≠0g(a) \neq 0 のとき f/gf/g も aa で微分可能で、

(fg)′(a)=f′(a)g(a)+f(a)g′(a),(fg)′(a)=f′(a)g(a)−f(a)g′(a)g(a)2(fg)'(a) = f'(a)g(a) + f(a)g'(a), \qquad \left(\frac{f}{g}\right)'(a) = \frac{f'(a)g(a) - f(a)g'(a)}{g(a)^2}

証明. 積:f(x)g(x)−f(a)g(a)x−a=f(x)g(x)−g(a)x−a+g(a)f(x)−f(a)x−a\frac{f(x)g(x) - f(a)g(a)}{x - a} = f(x)\frac{g(x) - g(a)}{x - a} + g(a)\frac{f(x) - f(a)}{x - a} であり、ff は aa で連続(系 4.4)なので f(a)g′(a)+g(a)f′(a)f(a)g'(a) + g(a)f'(a) に収束する。商:gg は aa で連続なので aa の近くで g(x)≠0g(x) \neq 0 であり、

1x−a(1g(x)−1g(a))=−g(x)−g(a)x−a⋅1g(x)g(a)→−g′(a)g(a)2\frac{1}{x - a}\left(\frac{1}{g(x)} - \frac{1}{g(a)}\right) = -\frac{g(x) - g(a)}{x - a} \cdot \frac{1}{g(x)g(a)} \to -\frac{g'(a)}{g(a)^2}

これと積の公式を合わせればよい。□\square

定理 4.7(合成関数の微分, chain rule)f ⁣:I→Rf\colon I \to \mathbb{R} が aa で微分可能、g ⁣:J→Rg\colon J \to \mathbb{R} が b=f(a)b = f(a) で微分可能で f(I)⊂Jf(I) \subset J ならば、g∘fg \circ f は aa で微分可能で (g∘f)′(a)=g′(f(a))f′(a)(g \circ f)'(a) = g'(f(a)) f'(a)。

証明. 命題 4.3 (3) より、aa で連続な φ\varphi と bb で連続な ψ\psi があって、f(x)−f(a)=φ(x)(x−a)f(x) - f(a) = \varphi(x)(x - a)、g(y)−g(b)=ψ(y)(y−b)g(y) - g(b) = \psi(y)(y - b)、φ(a)=f′(a)\varphi(a) = f'(a)、ψ(b)=g′(b)\psi(b) = g'(b)。y=f(x)y = f(x) を代入すると

g(f(x))−g(f(a))=ψ(f(x))(f(x)−f(a))=ψ(f(x))φ(x)(x−a)g(f(x)) - g(f(a)) = \psi(f(x))\bigl(f(x) - f(a)\bigr) = \psi(f(x))\varphi(x)(x - a)

x↦ψ(f(x))φ(x)x \mapsto \psi(f(x))\varphi(x) は aa で連続(ff は aa で連続、ψ\psi は bb で連続)なので、命題 4.3 より (g∘f)′(a)=ψ(b)φ(a)=g′(b)f′(a)(g \circ f)'(a) = \psi(b)\varphi(a) = g'(b)f'(a)。□\square

補足

高校でよく見る証明「g(f(x))−g(f(a))x−a=g(f(x))−g(f(a))f(x)−f(a)⋅f(x)−f(a)x−a\frac{g(f(x)) - g(f(a))}{x - a} = \frac{g(f(x)) - g(f(a))}{f(x) - f(a)} \cdot \frac{f(x) - f(a)}{x - a}」は、aa のいくらでも近くで f(x)=f(a)f(x) = f(a) となる場合(例えば f(x)=x2sin⁡1xf(x) = x^2 \sin\frac{1}{x}、a=0a = 0)に分母が 00 になって破綻する。カラテオドリの形を使うとこの問題が起きない。

定理 4.8(逆関数の微分)ff を区間 II 上の狭義単調な連続関数、J=f(I)J = f(I) とする。ff が a∈Ia \in I で微分可能で f′(a)≠0f'(a) \neq 0 ならば、f−1f^{-1} は b=f(a)b = f(a) で微分可能で

(f−1)′(b)=1f′(a)=1f′(f−1(b))(f^{-1})'(b) = \frac{1}{f'(a)} = \frac{1}{f'(f^{-1}(b))}

証明. 命題 4.3 (3) の φ\varphi をとる。φ(a)=f′(a)≠0\varphi(a) = f'(a) \neq 0 であり、x≠ax \neq a では ff の単射性より f(x)≠f(a)f(x) \neq f(a) なので φ(x)≠0\varphi(x) \neq 0。y∈Jy \in J に対し x=f−1(y)x = f^{-1}(y) を代入すると y−b=φ(f−1(y))(f−1(y)−a)y - b = \varphi(f^{-1}(y))\bigl(f^{-1}(y) - a\bigr)、すなわち

f−1(y)−f−1(b)=1φ(f−1(y))(y−b)f^{-1}(y) - f^{-1}(b) = \frac{1}{\varphi(f^{-1}(y))}(y - b)

f−1f^{-1} は bb で連続(定理 3.30)、φ\varphi は aa で連続で 00 にならないので、y↦1/φ(f−1(y))y \mapsto 1/\varphi(f^{-1}(y)) は bb で連続である。命題 4.3 より結論を得る。□\square

f′(a)≠0f'(a) \neq 0 の仮定は外せない。f(x)=x3f(x) = x^3 は f′(0)=0f'(0) = 0 で、逆関数 x1/3x^{1/3}(x<0x < 0 では −∣x∣1/3-\lvert x \rvert^{1/3})は 00 で微分可能でない(接線が垂直になる)。

例 4.9 (1) x>0x > 0、α∈R\alpha \in \mathbb{R} のとき (xα)′=αxα−1(x^\alpha)' = \alpha x^{\alpha - 1}:xα=eαlog⁡xx^\alpha = e^{\alpha \log x} に合成関数の微分を使うと eαlog⁡x⋅αx=αxα−1e^{\alpha \log x} \cdot \frac{\alpha}{x} = \alpha x^{\alpha - 1}。同様に (ax)′=axlog⁡a(a^x)' = a^x \log a。 (2) (xx)′=(exlog⁡x)′=xx(log⁡x+1)(x^x)' = (e^{x \log x})' = x^x(\log x + 1)(x>0x > 0)。 (3) (三角関数を認めて)arcsin⁡\arcsin は (−1,1)(-1, 1) で微分可能で、y=arcsin⁡xy = \arcsin x とすると (arcsin⁡x)′=1cos⁡y=11−x2(\arcsin x)' = \frac{1}{\cos y} = \frac{1}{\sqrt{1 - x^2}}(cos⁡y>0\cos y > 0)。同様に (arctan⁡x)′=11+x2(\arctan x)' = \frac{1}{1 + x^2}。

4.3 平均値の定理

微分係数は 1 点の情報だが、平均値の定理は「区間全体での変化」と「導関数の値」を結びつける。関数の増減・不等式・誤差評価など、微分の応用のほとんどはこの定理を経由する。

補題 4.10(フェルマー)ff が開区間 (a,b)(a, b) の点 cc で最大値(または最小値)をとり、cc で微分可能ならば f′(c)=0f'(c) = 0。

証明. 最大値の場合、h>0h > 0 で f(c+h)−f(c)h≤0\frac{f(c+h) - f(c)}{h} \leq 0、h<0h < 0 で f(c+h)−f(c)h≥0\frac{f(c+h) - f(c)}{h} \geq 0。h→±0h \to \pm 0 として f′(c)≤0f'(c) \leq 0 かつ f′(c)≥0f'(c) \geq 0。□\square

この補題は cc の近くだけで最大(極大)であっても成り立つ。逆は成り立たない:f(x)=x3f(x) = x^3 は f′(0)=0f'(0) = 0 だが 00 で極値をとらない。

定理 4.11(ロルの定理, Rolle's theorem)ff が [a,b][a, b] で連続、(a,b)(a, b) で微分可能で、f(a)=f(b)f(a) = f(b) ならば、f′(c)=0f'(c) = 0 となる c∈(a,b)c \in (a, b) が存在する。

証明. 最大値・最小値の定理(定理 3.21)より、ff は [a,b][a, b] で最大値 MM と最小値 mm をとる。M=mM = m なら ff は定数で、任意の c∈(a,b)c \in (a,b) で f′(c)=0f'(c) = 0。M>mM > m なら、f(a)=f(b)f(a) = f(b) なので MM と mm の少なくとも一方は (a,b)(a, b) の点 cc でとられ、補題 4.10 より f′(c)=0f'(c) = 0。□\square

定理 4.12(平均値の定理, mean value theorem)ff が [a,b][a, b] で連続、(a,b)(a, b) で微分可能ならば、

f(b)−f(a)=f′(c)(b−a)f(b) - f(a) = f'(c)(b - a)

となる c∈(a,b)c \in (a, b) が存在する。

証明. g(x)=f(x)−f(b)−f(a)b−a(x−a)g(x) = f(x) - \frac{f(b) - f(a)}{b - a}(x - a) は g(a)=g(b)=f(a)g(a) = g(b) = f(a) を満たすので、ロルの定理より g′(c)=f′(c)−f(b)−f(a)b−a=0g'(c) = f'(c) - \frac{f(b) - f(a)}{b - a} = 0 となる cc がある。□\square

定理 4.13(コーシーの平均値定理, Cauchy's mean value theorem)f,gf, g が [a,b][a, b] で連続、(a,b)(a, b) で微分可能ならば、

(f(b)−f(a))g′(c)=(g(b)−g(a))f′(c)\bigl(f(b) - f(a)\bigr) g'(c) = \bigl(g(b) - g(a)\bigr) f'(c)

となる c∈(a,b)c \in (a, b) が存在する。特に (a,b)(a, b) で g′≠0g' \neq 0 ならば g(b)≠g(a)g(b) \neq g(a) であり、f(b)−f(a)g(b)−g(a)=f′(c)g′(c)\frac{f(b) - f(a)}{g(b) - g(a)} = \frac{f'(c)}{g'(c)}。

証明. h(x)=(f(b)−f(a))g(x)−(g(b)−g(a))f(x)h(x) = \bigl(f(b) - f(a)\bigr)g(x) - \bigl(g(b) - g(a)\bigr)f(x) とおくと h(a)=f(b)g(a)−g(b)f(a)=h(b)h(a) = f(b)g(a) - g(b)f(a) = h(b)。ロルの定理を hh に適用すればよい。後半:g(b)=g(a)g(b) = g(a) ならロルの定理より g′g' が (a,b)(a,b) で 00 になる点があり、仮定に反する。□\square

注意

平均値の定理を ff と gg に別々に使って f(b)−f(a)g(b)−g(a)=f′(c1)g′(c2)\frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)} = \frac{f'(c_1)}{g'(c_2)} としても、c1c_1 と c2c_2 は一般に異なる。同じ cc がとれることがコーシーの平均値定理の要点である。

系 4.14 ff が [a,b][a, b] で連続、(a,b)(a, b) で微分可能とする。

  1. (a,b)(a, b) で f′=0f' = 0 ならば、ff は [a,b][a, b] で定数である。
  2. (a,b)(a, b) で f′≥0f' \geq 0 ならば ff は単調増加、f′>0f' > 0 ならば狭義単調増加である。
  3. (a,b)(a, b) で ∣f′∣≤L\lvert f' \rvert \leq L ならば、∣f(x)−f(y)∣≤L∣x−y∣\lvert f(x) - f(y) \rvert \leq L\lvert x - y \rvert(x,y∈[a,b]x, y \in [a, b])。

証明. x<yx < y に平均値の定理を使うと f(y)−f(x)=f′(c)(y−x)f(y) - f(x) = f'(c)(y - x)(x<c<yx < c < y)。これから (1)〜(3) が直ちに従う。□\square

(2) の逆は成り立たない:f(x)=x3f(x) = x^3 は狭義単調増加だが f′(0)=0f'(0) = 0。また (1) で区間であることは本質的である:(0,1)∪(2,3)(0, 1) \cup (2, 3) 上で 00 と 11 の値をとる関数は f′=0f' = 0 だが定数でない。

例 4.15 (1) x≠0x \neq 0 で ex>1+xe^x > 1 + x。x>0x > 0 なら平均値の定理より ex−1=ecx>xe^x - 1 = e^c x > x(0<c<x0 < c < x)。x<0x < 0 でも ex−1=ecxe^x - 1 = e^c x で 0<ec<10 < e^c < 1、x<0x < 0 より ecx>xe^c x > x。 (2) x>0x > 0 で x1+x<log⁡(1+x)<x\frac{x}{1+x} < \log(1 + x) < x。log⁡(1+x)=x1+c\log(1 + x) = \frac{x}{1 + c}(0<c<x0 < c < x)で、11+x<11+c<1\frac{1}{1+x} < \frac{1}{1+c} < 1 だから。

4.4 ロピタルの定理

00\frac{0}{0} や ∞∞\frac{\infty}{\infty} の形の極限を、導関数の比の極限に帰着させる定理である。高校でも「便利な公式」として使われることがあるが、仮定を正確に確認しないと誤った結論を導く。

定理 4.16(ロピタルの定理, l'Hôpital's rule)f,gf, g は (a,b)(a, b) で微分可能で、(a,b)(a, b) 上 g′(x)≠0g'(x) \neq 0 とする。L∈R∪{±∞}L \in \mathbb{R} \cup \lbrace \pm\infty \rbrace について lim⁡x→a+0f′(x)g′(x)=L\lim_{x \to a+0} \frac{f'(x)}{g'(x)} = L であり、さらに次のいずれかが成り立つとする。

  • (i)(00\frac{0}{0} 型)lim⁡x→a+0f(x)=lim⁡x→a+0g(x)=0\lim_{x \to a+0} f(x) = \lim_{x \to a+0} g(x) = 0
  • (ii)(∞∞\frac{\infty}{\infty} 型)lim⁡x→a+0∣g(x)∣=+∞\lim_{x \to a+0} \lvert g(x) \rvert = +\infty

このとき lim⁡x→a+0f(x)g(x)=L\lim_{x \to a+0} \frac{f(x)}{g(x)} = L。x→b−0x \to b - 0 や、a=−∞a = -\infty、b=+∞b = +\infty の場合も同様である。

証明. L∈RL \in \mathbb{R} の場合を示す(L=±∞L = \pm\infty も同様の議論でできる)。

(i) f(a)=g(a)=0f(a) = g(a) = 0 と定めると、f,gf, g は [a,x][a, x](a<x<ba < x < b)で連続、(a,x)(a, x) で微分可能である。コーシーの平均値定理より、g(x)=g(x)−g(a)≠0g(x) = g(x) - g(a) \neq 0 であり、

f(x)g(x)=f(x)−f(a)g(x)−g(a)=f′(cx)g′(cx),a<cx<x\frac{f(x)}{g(x)} = \frac{f(x) - f(a)}{g(x) - g(a)} = \frac{f'(c_x)}{g'(c_x)}, \quad a < c_x < x

ε>0\varepsilon > 0 に対し、a<t<a+δa < t < a + \delta で ∣f′(t)g′(t)−L∣<ε\left\lvert \frac{f'(t)}{g'(t)} - L \right\rvert < \varepsilon となる δ\delta をとる。a<x<a+δa < x < a + \delta なら cx∈(a,a+δ)c_x \in (a, a+\delta) なので ∣f(x)g(x)−L∣<ε\left\lvert \frac{f(x)}{g(x)} - L \right\rvert < \varepsilon。

(ii) 下書き. 今度は aa での値が使えないので、aa の近くの点 yy を固定し、[x,y][x, y] でコーシーの平均値定理を使う。x→ax \to a で ∣g(x)∣→∞\lvert g(x) \rvert \to \infty なので、固定した yy での値 f(y)f(y)、g(y)g(y) の影響は g(x)g(x) で割ると消える。

清書. ε∈(0,1)\varepsilon \in (0, 1) に対し、a<t<y0:=a+δ1a < t < y_0 := a + \delta_1 で ∣f′(t)g′(t)−L∣<ε\left\lvert \frac{f'(t)}{g'(t)} - L \right\rvert < \varepsilon となる δ1\delta_1 をとり、y∈(a,y0)y \in (a, y_0) を一つ固定する。a<x<ya < x < y なら、コーシーの平均値定理より g(x)≠g(y)g(x) \neq g(y) で、Q(x):=f(x)−f(y)g(x)−g(y)=f′(c)g′(c)Q(x) := \frac{f(x) - f(y)}{g(x) - g(y)} = \frac{f'(c)}{g'(c)}(x<c<yx < c < y)なので ∣Q(x)−L∣<ε\lvert Q(x) - L \rvert < \varepsilon。g(x)≠0g(x) \neq 0 となる xx で

f(x)g(x)−L=(Q(x)−L)(1−g(y)g(x))−Lg(y)g(x)+f(y)g(x)\frac{f(x)}{g(x)} - L = \bigl(Q(x) - L\bigr)\left(1 - \frac{g(y)}{g(x)}\right) - L\frac{g(y)}{g(x)} + \frac{f(y)}{g(x)}

が成り立つ(右辺を展開すれば確かめられる)。∣g(x)∣→∞\lvert g(x) \rvert \to \infty なので、a<x<a+δ2a < x < a + \delta_2(δ2≤y−a\delta_2 \leq y - a)で ∣g(y)g(x)∣<ε∣L∣+1\left\lvert \frac{g(y)}{g(x)} \right\rvert < \frac{\varepsilon}{\lvert L \rvert + 1} かつ ∣f(y)g(x)∣<ε\left\lvert \frac{f(y)}{g(x)} \right\rvert < \varepsilon となる δ2\delta_2 がある。このとき

∣f(x)g(x)−L∣<ε⋅2+ε+ε=4ε\left\lvert \frac{f(x)}{g(x)} - L \right\rvert < \varepsilon \cdot 2 + \varepsilon + \varepsilon = 4\varepsilon

ε\varepsilon は任意なので f(x)g(x)→L\frac{f(x)}{g(x)} \to L。無限区間の場合は x=1/tx = 1/t と変数変換すればよい。□\square

例 4.17 (1) lim⁡x→0ex−1−xx2\lim_{x \to 0}\frac{e^x - 1 - x}{x^2}:(i) 型で ex−12x→12\frac{e^x - 1}{2x} \to \frac{1}{2}(定理 3.37)なので、極限は 12\frac{1}{2}。 (2) lim⁡x→+0xlog⁡x=lim⁡x→+0log⁡x1/x\lim_{x \to +0} x \log x = \lim_{x \to +0} \frac{\log x}{1/x}:(ii) 型で 1/x−1/x2=−x→0\frac{1/x}{-1/x^2} = -x \to 0 なので、極限は 00。したがって lim⁡x→+0xx=lim⁡exlog⁡x=1\lim_{x \to +0} x^x = \lim e^{x \log x} = 1。 (3) lim⁡x→∞xkex=0\lim_{x \to \infty} \frac{x^k}{e^x} = 0(k∈Nk \in \mathbb{N}):(ii) 型のロピタルを kk 回使う(問題 3.8 の別証明)。

注意

ロピタルの定理は「f′g′\frac{f'}{g'} の極限が存在すれば fg\frac{f}{g} の極限も存在する」という片方向の主張である。f(x)=x+sin⁡xf(x) = x + \sin x、g(x)=xg(x) = x とすると、x→∞x \to \infty で fg=1+sin⁡xx→1\frac{f}{g} = 1 + \frac{\sin x}{x} \to 1 だが、f′g′=1+cos⁡x\frac{f'}{g'} = 1 + \cos x は極限をもたない。また、不定形でないものに使うと誤る:lim⁡x→0x+1x+2=12\lim_{x \to 0}\frac{x + 1}{x + 2} = \frac{1}{2} だが、導関数の比は 11 である。

4.5 テイラーの定理

平均値の定理 f(x)=f(a)+f′(c)(x−a)f(x) = f(a) + f'(c)(x - a) は「ff を定数 f(a)f(a) で近似したときの誤差」を表す。これを nn 次多項式による近似に一般化したものがテイラーの定理である。

ff の nn 階導関数を f(n)f^{(n)} と書く。f(n)f^{(n)} が存在して連続なとき、ff は CnC^n 級であるといい、すべての nn で CnC^n 級なとき C∞C^\infty 級であるという。

定義 4.18(テイラー多項式)ff が aa で nn 回微分可能なとき、

Tn(x)=∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k=f(a)+f′(a)(x−a)+⋯+f(n)(a)n!(x−a)nT_n(x) = \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x - a)^k = f(a) + f'(a)(x - a) + \cdots + \frac{f^{(n)}(a)}{n!}(x-a)^n

を ff の aa における nn 次テイラー多項式 (Taylor polynomial) という。

TnT_n は Tn(k)(a)=f(k)(a)T_n^{(k)}(a) = f^{(k)}(a)(0≤k≤n0 \leq k \leq n)を満たすただ一つの nn 次以下の多項式である。

定理 4.19(テイラーの定理・ラグランジュ剰余, Taylor's theorem with Lagrange remainder)ff が区間 II で n+1n+1 回微分可能で、a,x∈Ia, x \in I、x≠ax \neq a とする。このとき aa と xx の間(端点を除く)に cc が存在して

f(x)=∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k+f(n+1)(c)(n+1)!(x−a)n+1f(x) = \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x - a)^k + \frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}(x - a)^{n+1}

証明. xx を固定し、定数 KK を f(x)−Tn(x)=K(x−a)n+1f(x) - T_n(x) = K(x - a)^{n+1} となるように定める。t∈It \in I の関数

φ(t)=f(x)−∑k=0nf(k)(t)k!(x−t)k−K(x−t)n+1\varphi(t) = f(x) - \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x - t)^k - K(x - t)^{n+1}

を考えると、φ(x)=0\varphi(x) = 0、また KK の定め方より φ(a)=0\varphi(a) = 0。積の微分で

ddt[f(k)(t)k!(x−t)k]=f(k+1)(t)k!(x−t)k−f(k)(t)(k−1)!(x−t)k−1(k≥1)\frac{d}{dt}\left[\frac{f^{(k)}(t)}{k!}(x - t)^k\right] = \frac{f^{(k+1)}(t)}{k!}(x - t)^k - \frac{f^{(k)}(t)}{(k-1)!}(x - t)^{k-1} \quad (k \geq 1)

であり、k=0k = 0 の項の微分は f′(t)f'(t) なので、k=0,…,nk = 0, \dots, n について足すと望遠鏡和になって

φ′(t)=−f(n+1)(t)n!(x−t)n+K(n+1)(x−t)n\varphi'(t) = -\frac{f^{(n+1)}(t)}{n!}(x - t)^n + K(n+1)(x - t)^n

aa と xx を端点とする閉区間でロルの定理を使うと、その内部の cc で φ′(c)=0\varphi'(c) = 0。x−c≠0x - c \neq 0 なので K=f(n+1)(c)(n+1)!K = \frac{f^{(n+1)}(c)}{(n+1)!}。□\square

n=0n = 0 の場合が平均値の定理である。剰余項を積分で表す形(積分剰余)は第5章で扱う。

定理 4.20(テイラーの定理・ペアノ剰余)ff が aa の近くで n−1n - 1 回微分可能で、f(n)(a)f^{(n)}(a) が存在するならば、

f(x)=∑k=0nf(k)(a)k!(x−a)k+o((x−a)n)(x→a)f(x) = \sum_{k=0}^{n} \frac{f^{(k)}(a)}{k!}(x - a)^k + o\bigl((x - a)^n\bigr) \quad (x \to a)

証明. R(x)=f(x)−Tn(x)R(x) = f(x) - T_n(x) とおくと R(a)=R′(a)=⋯=R(n)(a)=0R(a) = R'(a) = \cdots = R^{(n)}(a) = 0。R(x)(x−a)n→0\frac{R(x)}{(x - a)^n} \to 0 を示す。n=1n = 1 なら微分の定義そのもの。n≥2n \geq 2 のとき、R(n−1)(a)=0R^{(n-1)}(a) = 0 と R(n)(a)=0R^{(n)}(a) = 0 より

R(n−1)(x)n! (x−a)=1n!⋅R(n−1)(x)−R(n−1)(a)x−a→R(n)(a)n!=0\frac{R^{(n-1)}(x)}{n!\,(x - a)} = \frac{1}{n!} \cdot \frac{R^{(n-1)}(x) - R^{(n-1)}(a)}{x - a} \to \frac{R^{(n)}(a)}{n!} = 0

R(k)R^{(k)}(k≤n−2k \leq n - 2)は aa の近くで微分可能で R(k)(a)=0R^{(k)}(a) = 0、また (x−a)m(x - a)^m の導関数は x≠ax \neq a で 00 にならないので、ロピタルの定理 (i) を k=n−2,n−3,…,0k = n-2, n-3, \dots, 0 の順に適用すると

R(n−2)(x)n!2(x−a)2→0,…,R(x)(x−a)n→0\frac{R^{(n-2)}(x)}{\frac{n!}{2}(x - a)^2} \to 0, \quad \dots, \quad \frac{R(x)}{(x-a)^n} \to 0

を得る(R(k)(x)R^{(k)}(x) の分母は n!(n−k)!(x−a)n−k\frac{n!}{(n-k)!}(x - a)^{n-k} であり、その導関数 n!(n−k−1)!(x−a)n−k−1\frac{n!}{(n-k-1)!}(x - a)^{n-k-1} が一つ前の分母になっている)。□\square

ペアノ剰余は誤差の大きさの程度しか与えないが、仮定が弱く、極限の計算に便利である。ラグランジュ剰余は誤差を具体的に評価できる。

例 4.21(代表的な展開)x→0x \to 0 で次が成り立つ。

ex=1+x+x22!+⋯+xnn!+o(xn)log⁡(1+x)=x−x22+x33−⋯+(−1)n−1xnn+o(xn)(1+x)α=∑k=0n(αk)xk+o(xn),(αk):=α(α−1)⋯(α−k+1)k!sin⁡x=x−x33!+x55!−⋯ ,cos⁡x=1−x22!+x44!−⋯\begin{aligned} e^x &= 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \cdots + \frac{x^n}{n!} + o(x^n) \\ \log(1 + x) &= x - \frac{x^2}{2} + \frac{x^3}{3} - \cdots + (-1)^{n-1}\frac{x^n}{n} + o(x^n) \\ (1 + x)^\alpha &= \sum_{k=0}^{n} \binom{\alpha}{k} x^k + o(x^n), \quad \binom{\alpha}{k} := \frac{\alpha(\alpha - 1)\cdots(\alpha - k + 1)}{k!} \\ \sin x &= x - \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} - \cdots, \qquad \cos x = 1 - \frac{x^2}{2!} + \frac{x^4}{4!} - \cdots \end{aligned}

いずれも f(k)(0)f^{(k)}(0) を計算すればよい。例えば f(x)=log⁡(1+x)f(x) = \log(1 + x) なら f(k)(x)=(−1)k−1(k−1)!(1+x)kf^{(k)}(x) = (-1)^{k-1}\frac{(k-1)!}{(1+x)^k} なので f(k)(0)k!=(−1)k−1k\frac{f^{(k)}(0)}{k!} = \frac{(-1)^{k-1}}{k}。

例 4.22(剰余が 00 に収束する場合)(1) f(x)=exf(x) = e^x では、ラグランジュ剰余は ec(n+1)!xn+1\frac{e^c}{(n+1)!}x^{n+1} で、∣⋅∣≤e∣x∣∣x∣n+1(n+1)!→0\lvert \cdot \rvert \leq \frac{e^{\lvert x \rvert}\lvert x \rvert^{n+1}}{(n+1)!} \to 0(例 2.40 (2) より ∑∣x∣nn!\sum \frac{\lvert x \rvert^n}{n!} が収束するので項は 00 に収束する)。よってすべての実数 xx で

ex=∑n=0∞xnn!e^x = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!}

これは第3章の注意で予告した一致の別証明である。 (2) 0≤x≤10 \leq x \leq 1 で log⁡(1+x)\log(1 + x) のラグランジュ剰余は (−1)nxn+1(n+1)(1+c)n+1\frac{(-1)^n x^{n+1}}{(n+1)(1+c)^{n+1}} で、絶対値は 1n+1\frac{1}{n+1} 以下。よって log⁡2=1−12+13−⋯\log 2 = 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{3} - \cdots(例 2.45 で予告した値)。

例 4.23(近似計算と誤差評価)1.1\sqrt{1.1} を f(x)=(1+x)1/2f(x) = (1 + x)^{1/2} の 2 次テイラー多項式で近似すると 1+0.12−0.018=1.048751 + \frac{0.1}{2} - \frac{0.01}{8} = 1.04875。f′′′(t)=38(1+t)−5/2f'''(t) = \frac{3}{8}(1+t)^{-5/2} なので、ラグランジュ剰余は 0≤f′′′(c)3!(0.1)3≤38⋅0.0016=6.25×10−50 \leq \frac{f'''(c)}{3!}(0.1)^3 \leq \frac{3}{8} \cdot \frac{0.001}{6} = 6.25 \times 10^{-5}。実際 1.1=1.0488088…\sqrt{1.1} = 1.0488088\ldots で、誤差は 5.9×10−55.9 \times 10^{-5} である。

例 4.24(極限の計算)ペアノ剰余を使うと、ロピタルの定理を繰り返すより見通しよく計算できる。

1x−1ex−1=ex−1−xx(ex−1)=x22+o(x2)x2+o(x2)=12+o(1)1+o(1)→12(x→0)\frac{1}{x} - \frac{1}{e^x - 1} = \frac{e^x - 1 - x}{x(e^x - 1)} = \frac{\frac{x^2}{2} + o(x^2)}{x^2 + o(x^2)} = \frac{\frac{1}{2} + o(1)}{1 + o(1)} \to \frac{1}{2} \quad (x \to 0)

例 4.25(テイラー展開が関数を表さない例)

f(x)={e−1/x2(x≠0)0(x=0)f(x) = \begin{cases} e^{-1/x^2} & (x \neq 0) \\ 0 & (x = 0) \end{cases}

は C∞C^\infty 級で、すべての nn で f(n)(0)=0f^{(n)}(0) = 0 である。実際、帰納法により x≠0x \neq 0 で f(n)(x)=Pn(1/x)e−1/x2f^{(n)}(x) = P_n(1/x)e^{-1/x^2}(PnP_n は多項式)と書け、t=1/xt = 1/x とおくと問題 3.8 より tke−t2→0t^k e^{-t^2} \to 0(∣t∣→∞\lvert t \rvert \to \infty)なので、f(n)(x)→0f^{(n)}(x) \to 0(x→0x \to 0)。f(n)(0)=0f^{(n)}(0) = 0 を仮定すると f(n)(x)−f(n)(0)x=1xPn(1/x)e−1/x2→0\frac{f^{(n)}(x) - f^{(n)}(0)}{x} = \frac{1}{x}P_n(1/x)e^{-1/x^2} \to 0 なので f(n+1)(0)=0f^{(n+1)}(0) = 0。したがってテイラー多項式はすべて 00 だが、x≠0x \neq 0 で f(x)>0f(x) > 0 である。C∞C^\infty 級であっても、テイラー級数が ff に収束するとは限らない。これは実関数と正則関数(05-complex-analysis 第3章)の大きな違いである。

実験テイラー近似次数を上げるとテイラー多項式が関数に近づく様子と、収束半径の壁を見ます。

この実験は JavaScript を有効にすると動きます。

4.6 極値の判定

定義 4.26 ff が aa を含む開区間で定義され、ある δ>0\delta > 0 について 0<∣x−a∣<δ0 < \lvert x - a \rvert < \delta ならば f(x)≤f(a)f(x) \leq f(a) となるとき、ff は aa で極大 (local maximum) であるという。f(x)<f(a)f(x) < f(a) なら狭義の極大という。極小も同様である。

定理 4.27(極値の判定)ff が aa の近くで n−1n - 1 回微分可能で f(n)(a)f^{(n)}(a) が存在し(n≥2n \geq 2)、

f′(a)=f′′(a)=⋯=f(n−1)(a)=0,f(n)(a)≠0f'(a) = f''(a) = \cdots = f^{(n-1)}(a) = 0, \quad f^{(n)}(a) \neq 0

とする。nn が偶数なら、ff は aa で f(n)(a)>0f^{(n)}(a) > 0 のとき狭義の極小、f(n)(a)<0f^{(n)}(a) < 0 のとき狭義の極大である。nn が奇数なら、ff は aa で極値をとらない。

証明. ペアノ剰余のテイラーの定理より f(x)−f(a)=(f(n)(a)n!+ρ(x))(x−a)nf(x) - f(a) = \left(\frac{f^{(n)}(a)}{n!} + \rho(x)\right)(x - a)^n、ρ(x)→0\rho(x) \to 0。∣ρ(x)∣<∣f(n)(a)∣n!\lvert \rho(x) \rvert < \frac{\lvert f^{(n)}(a) \rvert}{n!} となる範囲 0<∣x−a∣<δ0 < \lvert x - a \rvert < \delta では、括弧内は f(n)(a)f^{(n)}(a) と同符号である。nn が偶数なら (x−a)n>0(x - a)^n > 0 なので f(x)−f(a)f(x) - f(a) は f(n)(a)f^{(n)}(a) と同符号。nn が奇数なら (x−a)n(x - a)^n は x>ax > a と x<ax < a で符号が変わるので、f(x)−f(a)f(x) - f(a) も符号を変える。□\square

特に n=2n = 2 の場合:f′(a)=0f'(a) = 0 かつ f′′(a)>0f''(a) > 0 なら狭義の極小、f′′(a)<0f''(a) < 0 なら狭義の極大。f′′(a)=0f''(a) = 0 のときはこれだけでは判定できない(x4x^4 は極小、x3x^3 は極値なし、−x4-x^4 は極大)。例 4.25 の ff はすべての導関数が 00 で定理 4.27 は使えないが、00 で狭義の極小(最小)である。

4.7 凸関数

定義 4.28(凸関数, convex function)区間 II 上の関数 ff が、任意の x,y∈Ix, y \in I と t∈[0,1]t \in [0, 1] について

f((1−t)x+ty)≤(1−t)f(x)+tf(y)f\bigl((1 - t)x + ty\bigr) \leq (1 - t)f(x) + tf(y)

を満たすとき、ff は II で凸 (convex) であるという(下に凸ともいう)。x≠yx \neq y、0<t<10 < t < 1 で狭義の不等号が成り立つとき狭義凸という。−f-f が凸のとき ff は凹 (concave) であるという。

幾何学的には、グラフ上の 2 点を結ぶ線分(弦)がグラフの上側にあることを意味する。

補題 4.29(傾きの単調性)ff が II で凸であることと、II の任意の 3 点 x<y<zx < y < z について

f(y)−f(x)y−x≤f(z)−f(x)z−x≤f(z)−f(y)z−y\frac{f(y) - f(x)}{y - x} \leq \frac{f(z) - f(x)}{z - x} \leq \frac{f(z) - f(y)}{z - y}

が成り立つことは同値である。

証明. y=(1−t)x+tzy = (1 - t)x + tz、t=y−xz−xt = \frac{y - x}{z - x} と書くと、凸性の不等式は f(y)≤z−yz−xf(x)+y−xz−xf(z)f(y) \leq \frac{z - y}{z - x}f(x) + \frac{y - x}{z - x}f(z) である。これを変形すると、左の不等式・右の不等式・両端の不等式のどれとも同値になる(例えば両辺に z−xz - x を掛けて f(y)f(y) を (z−y)+(y−x)(z - y) + (y - x) 倍と見れば (f(y)−f(x))(z−y)≤(f(z)−f(y))(y−x)(f(y) - f(x))(z - y) \leq (f(z) - f(y))(y - x))。□\square

定理 4.30(凸性の判定)ff が区間 II で微分可能ならば、次は同値である。

  1. ff は凸である。
  2. f′f' は単調増加である。
  3. 任意の x,y∈Ix, y \in I について f(y)≥f(x)+f′(x)(y−x)f(y) \geq f(x) + f'(x)(y - x)(接線はグラフの下にある)。

ff が 2 回微分可能ならば、これらは II 上 f′′≥0f'' \geq 0 とも同値である。

証明. (1)⇒(2):x<yx < y とし、x<s<t<yx < s < t < y に補題 4.29 を使うと f(s)−f(x)s−x≤f(y)−f(x)y−x≤f(y)−f(t)y−t\frac{f(s) - f(x)}{s - x} \leq \frac{f(y) - f(x)}{y - x} \leq \frac{f(y) - f(t)}{y - t}。s→xs \to x、t→yt \to y として f′(x)≤f(y)−f(x)y−x≤f′(y)f'(x) \leq \frac{f(y) - f(x)}{y - x} \leq f'(y)。

(2)⇒(1):x<y<zx < y < z に平均値の定理を使うと f(y)−f(x)y−x=f′(ξ)≤f′(η)=f(z)−f(y)z−y\frac{f(y) - f(x)}{y - x} = f'(\xi) \leq f'(\eta) = \frac{f(z) - f(y)}{z - y}(ξ<y<η\xi < y < \eta)。補題 4.29 の証明より、これは凸性と同値である。

(1)⇒(3):(1)⇒(2) の証明の途中の不等式 f′(x)≤f(y)−f(x)y−xf'(x) \leq \frac{f(y) - f(x)}{y - x}(x<yx < y)と、同様に得られる f(x)−f(y)x−y≤f′(x)\frac{f(x) - f(y)}{x - y} \leq f'(x)(y<xy < x)から従う。(3)⇒(2):x<yx < y に対して (3) を (x,y)(x, y) と (y,x)(y, x) で使って足すと 0≥(f′(x)−f′(y))(y−x)0 \geq (f'(x) - f'(y))(y - x)。

最後の主張は、系 4.14 (2) と、単調増加な微分可能関数の導関数が 00 以上であることから従う。□\square

例えば exe^x((ex)′′=ex>0(e^x)'' = e^x > 0)、xpx^p(p≥1p \geq 1、x≥0x \geq 0)は凸、log⁡x\log x((log⁡x)′′=−1x2<0(\log x)'' = -\frac{1}{x^2} < 0)は凹である。

定理 4.31(イェンセンの不等式, Jensen's inequality)ff が区間 II で凸で、x1,…,xn∈Ix_1, \dots, x_n \in I、λ1,…,λn≥0\lambda_1, \dots, \lambda_n \geq 0、∑iλi=1\sum_i \lambda_i = 1 ならば

f(∑i=1nλixi)≤∑i=1nλif(xi)f\left(\sum_{i=1}^{n} \lambda_i x_i\right) \leq \sum_{i=1}^{n} \lambda_i f(x_i)

証明. nn についての帰納法。n=1n = 1 は自明、n=2n = 2 は凸性の定義。n≥3n \geq 3 で λn<1\lambda_n < 1 としてよい(λn=1\lambda_n = 1 なら他は 00 で自明)。μ=1−λn\mu = 1 - \lambda_n、y=∑i=1n−1λiμxiy = \sum_{i=1}^{n-1}\frac{\lambda_i}{\mu}x_i とおくと、yy は区間 II の点の重み付き平均なので II に属し、

f(∑i=1nλixi)=f(μy+λnxn)≤μf(y)+λnf(xn)≤μ∑i=1n−1λiμf(xi)+λnf(xn)f\left(\sum_{i=1}^{n}\lambda_i x_i\right) = f(\mu y + \lambda_n x_n) \leq \mu f(y) + \lambda_n f(x_n) \leq \mu \sum_{i=1}^{n-1}\frac{\lambda_i}{\mu}f(x_i) + \lambda_n f(x_n)

(最後に帰納法の仮定を使った)。右辺は ∑i=1nλif(xi)\sum_{i=1}^{n}\lambda_i f(x_i) である。□\square

例 4.32(相加相乗平均の不等式)log⁡\log は凹なので、xi>0x_i > 0、λi≥0\lambda_i \geq 0、∑λi=1\sum \lambda_i = 1 に対して log⁡(∑λixi)≥∑λilog⁡xi\log\left(\sum \lambda_i x_i\right) \geq \sum \lambda_i \log x_i、すなわち

x1λ1⋯xnλn≤λ1x1+⋯+λnxnx_1^{\lambda_1}\cdots x_n^{\lambda_n} \leq \lambda_1 x_1 + \cdots + \lambda_n x_n

λi=1n\lambda_i = \frac{1}{n} とすれば x1⋯xnn≤x1+⋯+xnn\sqrt[n]{x_1 \cdots x_n} \leq \frac{x_1 + \cdots + x_n}{n}。

4.8 導関数の性質とダルブーの定理

微分可能な関数の導関数は連続とは限らない。

例 4.33(微分可能だが導関数が不連続な関数)

f(x)={x2sin⁡1x(x≠0)0(x=0)f(x) = \begin{cases} x^2 \sin\frac{1}{x} & (x \neq 0) \\ 0 & (x = 0) \end{cases}

x=0x = 0 では ∣f(h)−f(0)h∣=∣hsin⁡1h∣≤∣h∣→0\left\lvert \frac{f(h) - f(0)}{h} \right\rvert = \left\lvert h\sin\frac{1}{h} \right\rvert \leq \lvert h \rvert \to 0 なので f′(0)=0f'(0) = 0。x≠0x \neq 0 では f′(x)=2xsin⁡1x−cos⁡1xf'(x) = 2x\sin\frac{1}{x} - \cos\frac{1}{x} で、第 1 項は 00 に収束するが第 2 項は振動するので、lim⁡x→0f′(x)\lim_{x \to 0} f'(x) は存在しない。ff は R\mathbb{R} 上微分可能だが C1C^1 級ではない。

それでも導関数は「中間値の性質」をもつ。連続性を仮定しない点が驚くべきところである。

定理 4.34(ダルブーの定理, Darboux's theorem)ff が [a,b][a, b] で微分可能(端点では片側微分)で、γ\gamma が f′(a)f'(a) と f′(b)f'(b) の間にあれば、f′(c)=γf'(c) = \gamma となる c∈(a,b)c \in (a, b) が存在する。

証明. f′(a)<γ<f′(b)f'(a) < \gamma < f'(b) とする(逆は −f-f を考える)。g(x)=f(x)−γxg(x) = f(x) - \gamma x とおくと g′(a)<0<g′(b)g'(a) < 0 < g'(b)。gg は [a,b][a, b] で連続なので最小値をとる(定理 3.21)。g′(a)<0g'(a) < 0 より、aa に十分近い x>ax > a で g(x)−g(a)x−a<0\frac{g(x) - g(a)}{x - a} < 0、すなわち g(x)<g(a)g(x) < g(a) なので、最小値は aa でとられない。同様に g′(b)>0g'(b) > 0 より bb に十分近い x<bx < b で g(x)<g(b)g(x) < g(b) なので、bb でもとられない。最小値をとる点 c∈(a,b)c \in (a, b) で、補題 4.10 より g′(c)=0g'(c) = 0、すなわち f′(c)=γf'(c) = \gamma。□\square

したがって、導関数は跳躍型の不連続点をもたない。例えば符号関数(x>0x > 0 で 11、x<0x < 0 で −1-1、x=0x = 0 で 00)は、どんな関数の導関数にもならない。関連して、次の命題も便利である。

命題 4.35 ff が aa で連続、aa の近く(aa を除く)で微分可能で、lim⁡x→af′(x)=L\lim_{x \to a} f'(x) = L が存在するならば、ff は aa で微分可能で f′(a)=Lf'(a) = L。

証明. h≠0h \neq 0 が小さいとき、平均値の定理より f(a+h)−f(a)h=f′(a+θhh)\frac{f(a+h) - f(a)}{h} = f'(a + \theta_h h)(0<θh<10 < \theta_h < 1)。h→0h \to 0 のとき a+θhh→aa + \theta_h h \to a なので右辺は LL に収束する。□\square

まとめ

  • ff が aa で微分可能 ⇔\Leftrightarrow f(a+h)=f(a)+f′(a)h+o(h)f(a+h) = f(a) + f'(a)h + o(h)。微分は一次式による最良の近似であり、この見方が多変数へ一般化される。
  • 合成関数・逆関数の微分は、カラテオドリの定式化 f(x)−f(a)=φ(x)(x−a)f(x) - f(a) = \varphi(x)(x - a) を使うと厳密かつ簡潔に証明できる。
  • ロルの定理(最大値定理から)→ 平均値の定理 → コーシーの平均値定理 → ロピタルの定理、テイラーの定理、という流れで、微分の応用の大半が導かれる。
  • テイラーの定理のラグランジュ剰余は誤差の具体的な評価に、ペアノ剰余は極限計算や極値判定に使う。C∞C^\infty 級でもテイラー級数が関数を表すとは限らない(e−1/x2e^{-1/x^2})。
  • 凸関数は「傾きの単調性」で特徴づけられ、微分可能なら f′f' の単調増加、2 回微分可能なら f′′≥0f'' \geq 0 と同値。イェンセンの不等式から相加相乗平均の不等式が従う。
  • 導関数は連続とは限らないが、中間値の性質をもつ(ダルブーの定理)。

演習問題

問題 4.1 ★ (1) f(x)=x∣x∣f(x) = x\lvert x \rvert は R\mathbb{R} 上微分可能であることを示し、f′f' を求めよ。f′f' は 00 で微分可能か。(2) lim⁡h→0f(a+h)−f(a−h)2h\lim_{h \to 0}\frac{f(a+h) - f(a-h)}{2h} が存在しても ff は aa で微分可能とは限らないことを例で示せ。

解答

(1) x>0x > 0 で f(x)=x2f(x) = x^2、x<0x < 0 で f(x)=−x2f(x) = -x^2 なので f′(x)=2∣x∣f'(x) = 2\lvert x \rvert(x≠0x \neq 0)。x=0x = 0 では f(h)−f(0)h=∣h∣→0\frac{f(h) - f(0)}{h} = \lvert h \rvert \to 0 なので f′(0)=0f'(0) = 0。よって f′(x)=2∣x∣f'(x) = 2\lvert x \rvert。これは 00 で微分可能でない。

(2) f(x)=∣x∣f(x) = \lvert x \rvert、a=0a = 0 とすると f(h)−f(−h)2h=0\frac{f(h) - f(-h)}{2h} = 0 で極限は 00 だが、ff は 00 で微分可能でない。

問題 4.2 ★ 平均値の定理を用いて次を示せ。(1) ∣arctan⁡x−arctan⁡y∣≤∣x−y∣\lvert \arctan x - \arctan y \rvert \leq \lvert x - y \rvert (2) 0<a<b0 < a < b のとき b−ab<log⁡ba<b−aa\frac{b - a}{b} < \log\frac{b}{a} < \frac{b - a}{a} (3) x>0x > 0 のとき 1+x<1+x2\sqrt{1 + x} < 1 + \frac{x}{2}

解答

(1) (arctan⁡)′(t)=11+t2∈(0,1](\arctan)'(t) = \frac{1}{1 + t^2} \in (0, 1] なので系 4.14 (3)。(2) log⁡b−log⁡a=b−ac\log b - \log a = \frac{b - a}{c}(a<c<ba < c < b)で 1b<1c<1a\frac{1}{b} < \frac{1}{c} < \frac{1}{a}。(3) 1+x−1=x21+c\sqrt{1 + x} - 1 = \frac{x}{2\sqrt{1 + c}}(0<c<x0 < c < x)で 121+c<12\frac{1}{2\sqrt{1 + c}} < \frac{1}{2}。

問題 4.3 ★ 次の極限を求めよ。 (1) lim⁡x→0ex−1−x−x2/2x3\lim_{x \to 0}\frac{e^x - 1 - x - x^2/2}{x^3} (2) lim⁡x→0(1x−1log⁡(1+x))\lim_{x \to 0}\left(\frac{1}{x} - \frac{1}{\log(1+x)}\right) (3) lim⁡x→0sin⁡x−xcos⁡xx3\lim_{x \to 0}\frac{\sin x - x\cos x}{x^3} (4) lim⁡x→∞(1+ax)x\lim_{x \to \infty}\left(1 + \frac{a}{x}\right)^x

解答

(1) ex=1+x+x22+x36+o(x3)e^x = 1 + x + \frac{x^2}{2} + \frac{x^3}{6} + o(x^3) より 16\frac{1}{6}。

(2) log⁡(1+x)−xxlog⁡(1+x)=−x22+o(x2)x2+o(x2)→−12\frac{\log(1+x) - x}{x\log(1+x)} = \frac{-\frac{x^2}{2} + o(x^2)}{x^2 + o(x^2)} \to -\frac{1}{2}。

(3) sin⁡x=x−x36+o(x3)\sin x = x - \frac{x^3}{6} + o(x^3)、xcos⁡x=x−x32+o(x3)x\cos x = x - \frac{x^3}{2} + o(x^3) より分子は x33+o(x3)\frac{x^3}{3} + o(x^3)。答えは 13\frac{1}{3}。

(4) a=0a = 0 なら 11。a≠0a \neq 0 なら (1+ax)x=exp⁡(a⋅log⁡(1+a/x)a/x)\left(1 + \frac{a}{x}\right)^x = \exp\left(a \cdot \frac{\log(1 + a/x)}{a/x}\right) で、t=a/x→0t = a/x \to 0 より指数は aa に収束する。答えは eae^a。

問題 4.4 ★★ log⁡1.1\log 1.1 を log⁡(1+x)\log(1 + x) の 3 次テイラー多項式で近似し、ラグランジュ剰余を用いて誤差を評価せよ。

解答

T3(0.1)=0.1−0.012+0.0013=0.0953333…T_3(0.1) = 0.1 - \frac{0.01}{2} + \frac{0.001}{3} = 0.0953333\ldots。f(4)(t)=−6(1+t)4f^{(4)}(t) = -\frac{6}{(1+t)^4} なので剰余は f(4)(c)4!(0.1)4=−(0.1)44(1+c)4\frac{f^{(4)}(c)}{4!}(0.1)^4 = -\frac{(0.1)^4}{4(1+c)^4}(0<c<0.10 < c < 0.1)で、絶対値は 10−44=2.5×10−5\frac{10^{-4}}{4} = 2.5 \times 10^{-5} 未満、符号は負。よって 0.0953083<log⁡1.1<0.09533340.0953083 < \log 1.1 < 0.0953334。実際 log⁡1.1=0.0953102…\log 1.1 = 0.0953102\ldots で、誤差は約 2.3×10−52.3 \times 10^{-5}。

問題 4.5 ★ f ⁣:R→Rf\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} が微分可能で f′=ff' = f、f(0)=1f(0) = 1 を満たすならば f(x)=exf(x) = e^x であることを示せ。

解答

g(x)=f(x)e−xg(x) = f(x)e^{-x} とおくと g′(x)=f′(x)e−x−f(x)e−x=0g'(x) = f'(x)e^{-x} - f(x)e^{-x} = 0。系 4.14 (1)(任意の有界閉区間に適用)より gg は定数で、g(0)=1g(0) = 1。よって f(x)=exf(x) = e^x。

問題 4.6 ★★ (1)(ヤングの不等式)p,q>1p, q > 1、1p+1q=1\frac{1}{p} + \frac{1}{q} = 1、a,b≥0a, b \geq 0 のとき ab≤app+bqqab \leq \frac{a^p}{p} + \frac{b^q}{q} を示せ。(2)(ヘルダーの不等式)ai,bi≥0a_i, b_i \geq 0 に対して ∑i=1naibi≤(∑aip)1/p(∑biq)1/q\sum_{i=1}^{n} a_i b_i \leq \left(\sum a_i^p\right)^{1/p}\left(\sum b_i^q\right)^{1/q} を示せ。

解答

(1) a=0a = 0 または b=0b = 0 なら自明。a,b>0a, b > 0 なら例 4.32(n=2n = 2、λ1=1p\lambda_1 = \frac{1}{p}、λ2=1q\lambda_2 = \frac{1}{q}、x1=apx_1 = a^p、x2=bqx_2 = b^q)より (ap)1/p(bq)1/q≤app+bqq(a^p)^{1/p}(b^q)^{1/q} \leq \frac{a^p}{p} + \frac{b^q}{q}。

(2) A=(∑aip)1/pA = \left(\sum a_i^p\right)^{1/p}、B=(∑biq)1/qB = \left(\sum b_i^q\right)^{1/q} とし、A,B>0A, B > 0 としてよい(どちらかが 00 なら左辺も 00)。(1) を aiA\frac{a_i}{A}、biB\frac{b_i}{B} に適用して足すと ∑aibiAB≤1p∑aipAp+1q∑biqBq=1p+1q=1\sum \frac{a_i b_i}{AB} \leq \frac{1}{p}\sum \frac{a_i^p}{A^p} + \frac{1}{q}\sum\frac{b_i^q}{B^q} = \frac{1}{p} + \frac{1}{q} = 1。積分版は 06-measure-integration 第4章 で扱う。

問題 4.7 ★★ (1) ff が区間 II で微分可能で f′f' が有界ならば、ff は II で一様連続であることを示せ。(2) 逆は成り立たないことを例で示せ。

解答

(1) ∣f′∣≤L\lvert f' \rvert \leq L なら系 4.14 (3) より ∣f(x)−f(y)∣≤L∣x−y∣\lvert f(x) - f(y) \rvert \leq L\lvert x - y \rvert でリプシッツ連続、よって一様連続。(2) f(x)=xf(x) = \sqrt{x} は (0,1)(0, 1) で一様連続(問題 3.4)だが、f′(x)=12xf'(x) = \frac{1}{2\sqrt{x}} は有界でない。

問題 4.8 ★★ ff が R\mathbb{R} で微分可能な凸関数で、有界ならば定数であることを示せ。

解答

ある x0x_0 で f′(x0)≠0f'(x_0) \neq 0 とすると、定理 4.30 (3) より f(x)≥f(x0)+f′(x0)(x−x0)f(x) \geq f(x_0) + f'(x_0)(x - x_0)。右辺は f′(x0)>0f'(x_0) > 0 なら x→∞x \to \infty、f′(x0)<0f'(x_0) < 0 なら x→−∞x \to -\infty で +∞+\infty に発散し、ff の有界性に反する。よって f′≡0f' \equiv 0 であり、ff は定数(系 4.14 (1))。

問題 4.9 ★★ 開区間 (a,b)(a, b) 上の凸関数は、各点で右微分係数と左微分係数をもち、特に連続であることを示せ。

解答

x∈(a,b)x \in (a, b) を固定し、s(t)=f(t)−f(x)t−xs(t) = \frac{f(t) - f(x)}{t - x}(t≠xt \neq x)とおく。補題 4.29 より ss は tt について単調増加であり(t<x<ut < x < u でも s(t)≤s(u)s(t) \leq s(u))、t>xt > x の範囲では xx より左の点 t0t_0 での値 s(t0)s(t_0) を下界にもつ。よって命題 3.27 と同様に lim⁡t→x+0s(t)=inf⁡t>xs(t)\lim_{t \to x+0}s(t) = \inf_{t > x}s(t) が存在し、これが右微分係数である。左も同様。右微分可能なら右連続(f(t)−f(x)=s(t)(t−x)→0f(t) - f(x) = s(t)(t - x) \to 0)、左も同様なので ff は xx で連続。閉区間の端点では連続とは限らない([0,1][0, 1] 上で f(0)=1f(0) = 1、それ以外 00 は凸)。

問題 4.10 ★★★ f ⁣:R→Rf\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} が 2 回微分可能で、∣f∣≤M0\lvert f \rvert \leq M_0、∣f′′∣≤M2\lvert f'' \rvert \leq M_2 ならば、∣f′∣≤2M0M2\lvert f' \rvert \leq \sqrt{2M_0M_2} であることを示せ。

解答

x∈Rx \in \mathbb{R}、h>0h > 0 に対し、テイラーの定理(n=1n = 1)より

f(x+h)=f(x)+f′(x)h+f′′(ξ)2h2,f(x−h)=f(x)−f′(x)h+f′′(η)2h2f(x + h) = f(x) + f'(x)h + \frac{f''(\xi)}{2}h^2, \qquad f(x - h) = f(x) - f'(x)h + \frac{f''(\eta)}{2}h^2

辺々引くと 2hf′(x)=f(x+h)−f(x−h)−f′′(ξ)−f′′(η)2h22hf'(x) = f(x+h) - f(x-h) - \frac{f''(\xi) - f''(\eta)}{2}h^2 なので

∣f′(x)∣≤2M02h+2M2h24h=M0h+M2h2\lvert f'(x) \rvert \leq \frac{2M_0}{2h} + \frac{2M_2 h^2}{4h} = \frac{M_0}{h} + \frac{M_2 h}{2}

M2=0M_2 = 0 なら h→∞h \to \infty として f′(x)=0f'(x) = 0。M2>0M_2 > 0 なら h=2M0/M2h = \sqrt{2M_0/M_2} とすれば右辺は 2M0M2\sqrt{2M_0M_2}(M0=0M_0 = 0 なら f≡0f \equiv 0)。

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