この章の目標
- 長方形上のリーマン積分を定義し、連続関数が可積分であることを示せる
- フビニの定理を証明し、重積分を累次積分で計算できる
- ジョルダン可測集合(面積・体積の定まる集合)を理解し、一般の領域上で積分できる
- 変数変換公式の意味(ヤコビアンが体積の拡大率であること)を理解し、極座標・球座標で計算できる
- 広義重積分を扱い、ガウス積分 ∫−∞∞e−x2dx=π、B=ΓΓ/Γ、n 次元球の体積を導ける
前提:第5章 リーマン積分、第7章、02-linear-algebra 第4章 行列式
9.1 長方形上の積分
高校では立体の体積を「断面積を積分する」ことで求めた。これは後で述べるフビニの定理の特別な場合である。大学では、まず多変数関数の積分を 1 変数と同じくダルブー和で定義し、それを 1 変数の積分の繰り返し(累次積分)で計算できることを定理として証明する。
Rn の閉長方形(閉直方体)R=[a1,b1]×⋯×[an,bn] の体積を v(R)=∏i(bi−ai) とする。各辺 [ai,bi] の分割 Pi の組 P=(P1,…,Pn) を R の分割といい、P によって R は有限個の小長方形 S に分けられる。有界関数 f:R→R に対し、MS=supSf、mS=infSf として
U(f,P)=S∑MSv(S),L(f,P)=S∑mSv(S)
と定め、第5章と全く同様に上積分・下積分・可積分性・積分 ∫Rf=∫Rf(x) dx を定義する。補題 5.2(細分で上和は減り下和は増える)、定理 5.5(リーマンの判定条件:U−L をいくらでも小さくできる)、定理 5.10(線形性・単調性・∫f≤∫∣f∣)は証明も含めてそのまま成り立つ。
定理 9.1 閉長方形 R 上の連続関数は可積分である。
証明. R はコンパクトなので f は一様連続である(定理 7.7)。ε>0 に対し、∥x−y∥<δ⇒∣f(x)−f(y)∣<ε となる δ をとり、すべての小長方形の直径が δ 未満となる分割 P をとれば、MS−mS≤ε なので U(f,P)−L(f,P)≤εv(R)。□
9.2 フビニの定理
重積分を実際に計算するための基本定理である。Rp+q の長方形を R=A×B(A⊂Rp、B⊂Rq は長方形)と書き、点を (x,y) と書く。
定理 9.2(フビニの定理, Fubini's theorem)f が R=A×B で可積分であり、各 x∈A について y↦f(x,y) が B で可積分であるとする。このとき F(x)=∫Bf(x,y) dy は A で可積分で
∫A×Bf(x,y)d(x,y)=∫A(∫Bf(x,y)dy)dx
特に f が R 上連続なら、仮定はすべて満たされ、積分の順序を入れ替えた等式も成り立つ:
∫A(∫Bf(x,y)dy)dx=∫A×Bf=∫B(∫Af(x,y)dx)dy
証明. A の分割 PA と B の分割 PB から R の分割 P=PA×PB を作ると、その小長方形は S×T(S は PA の、T は PB の小長方形)である。x∈S を固定すると、区間についての加法性より
F(x)=T∑∫Tf(x,y)dy≥T∑mS×T(f)v(T)
(T 上で f(x,y)≥mS×T(f) だから)。x∈S について下限をとり、v(S) を掛けて S について足すと
L(F,PA)≥S,T∑mS×T(f)v(S)v(T)=L(f,P)
同様に U(F,PA)≤U(f,P)。したがって
L(f,P)≤L(F,PA)≤U(F,PA)≤U(f,P)
f は可積分なので、U(f,P)−L(f,P) はいくらでも小さくでき(任意の分割は PA×PB の形に細分できる)、F は可積分で ∫AF=∫Rf。f が連続なら、f も各 f(x,⋅) も連続なので可積分であり、x と y の役割を入れ替えた議論も成り立つ。□
例 9.3 ∫[0,1]×[0,2](x+y2)=∫01(∫02(x+y2) dy)dx=∫01(2x+38)dx=1+38=311。順序を入れ替えても ∫02(21+y2)dy=1+38 で一致する。
注意
積分可能性の仮定がないと、積分の順序は交換できないことがある。f(x,y)=(x2+y2)2x2−y2 を (0,1]2 で考えると、∂y∂x2+y2y=f より ∫01f(x,y) dy=1+x21 なので
∫01∫01fdydx=4π,∫01∫01fdxdy=−4π
(後者は f(x,y)=−f(y,x) による)。f は原点の近くで有界でなく、∣f∣ の広義積分は発散する。
9.3 ジョルダン可測集合
長方形以外の集合、例えば円板の上で積分するには、関数を 0 で拡張して長方形上で積分する。そのためには集合の「境界が薄い」ことが必要になる。
定義 9.4 (1) Z⊂Rn が体積 0(ジョルダン零集合, content zero)であるとは、任意の ε>0 に対して、体積の総和が ε 未満の有限個の閉長方形で Z を覆えることをいう。
(2) 有界集合 D⊂Rn と D 上の有界関数 f に対して、D を含む閉長方形 R をとり、f を R∖D で 0 として拡張した関数 f~ が R で可積分なとき、f は D で可積分であるといい、∫Df=∫Rf~ と定める(R のとり方によらない)。
(3) 定数関数 1 が D で可積分なとき、D はジョルダン可測 (Jordan measurable) であるといい、vol(D)=∫D1 を D の体積(n=2 なら面積)という。
高校の「面積」は、ここで初めて定義されたことになる。次の補題が基本的である。
補題 9.5 閉長方形 R 上の有界関数 f が、体積 0 の集合 Z の外で連続ならば、f は R で可積分である。
証明. ∣f∣≤M、ε>0 とする。Z を覆う閉長方形 R1,…,Rk で ∑v(Ri)<ε となるものをとり、各 Ri を少し広げて、Z が Ri′ たちの内部の和に含まれ ∑v(Ri′)<2ε となる閉長方形 Ri′ をとる。K=R∖⋃i(Ri′)∘ はコンパクトで、f は K の各点で(R 上の関数として)連続である。このとき、ある δ>0 があって「x∈K、y∈R、∥x−y∥<δ なら ∣f(x)−f(y)∣<ε」となる(そうでなければ ∥xj−yj∥→0、∣f(xj)−f(yj)∣≥ε となる xj∈K、yj∈R があり、収束部分列の極限 x∈K での連続性に反する)。すべての Ri′ の各辺の端点を分点に含み、小長方形の直径が δ 未満の分割 P をとる。P の小長方形 S は、ある Ri′ に含まれるか、どの (Ri′)∘ とも交わらない(このとき S⊂K)。前者の体積の和は 2ε 未満で MS−mS≤2M、後者では MS−mS≤ε。よって U(f,P)−L(f,P)≤4Mε+εv(R)。□
命題 9.6 有界集合 D がジョルダン可測であるための必要十分条件は、境界 ∂D が体積 0 であることである。
証明. D を含む長方形 R を、D が R の内部に含まれるようにとる。χ=1~(D の定義関数)は D∘ と R∖D で局所的に定数なので連続であり、不連続点は ∂D に含まれる。よって ∂D が体積 0 なら補題 9.5 より可積分。逆に χ が可積分とし、U(χ,P)−L(χ,P)<ε となる分割 P をとる。MS−mS は S が D と Dc の両方と交わるとき 1、そうでないとき 0 なので、そのような S の体積の和は ε 未満である。x∈∂D とする。x∈D なら x のどんな近傍も Dc と交わるので、x を含む小長方形(その和集合は x の近傍)のどれかは Dc の点を含み、それは x∈D も含むので両方と交わる。x∈/D でも同様。よって ∂D はそれらの小長方形で覆われ、体積 0 である。□
命題 9.7 (1) A⊂Rn−1 を閉長方形、φ:A→R を連続とすると、グラフ {(x,φ(x))∣x∈A} は Rn で体積 0 である。
(2) D がジョルダン可測で、f が D 上有界かつ連続ならば、f は D で可積分である。
証明. (1) φ は一様連続なので、ε>0 に対して A を小長方形 S に分け、各 S 上で φ の振幅(sup−inf)を ε 未満にできる。グラフは S×[infSφ,supSφ] の和で覆われ、その体積の和は εv(A) 以下。(2) f~ は D∘ では f に一致して連続、R∖D では 0 で連続なので、不連続点は ∂D(体積 0)に含まれる。補題 9.5 による。□
例 9.8 (1) 円板、球、多角形など、有限個の連続関数のグラフ(と長方形の面)で囲まれた有界集合はジョルダン可測である。
(2) D=Q2∩[0,1]2 はジョルダン可測でない(∂D=[0,1]2 は体積 0 でない。例 5.4 (2) と同じ理由)。可算集合であっても、ジョルダン可測とは限らない。ルベーグ測度(06-measure-integration 第2章)では、可算集合はすべて測度 0 になる。
9.4 累次積分
実際の計算で最もよく使うのは、次の形の領域である。
定理 9.9(縦線集合上の累次積分)φ1≤φ2 を [a,b] 上の連続関数とし、D={(x,y)∣a≤x≤b, φ1(x)≤y≤φ2(x)} とする。D 上の連続関数 f について
∫Df=∫ab(∫φ1(x)φ2(x)f(x,y)dy)dx
Rn の同様の領域(x∈A を長方形上で動かし、最後の変数が二つの連続関数の間を動く)についても同様である。
証明. ∂D は二つのグラフと二本の線分に含まれるので体積 0 であり、D はジョルダン可測、f は D で可積分(命題 9.7)。D⊂R=[a,b]×[c,d] として f~ を考えると、各 x で y↦f~(x,y) は [φ1(x),φ2(x)] で f(x,y)、その外で 0 であり、不連続点は高々 2 個なので可積分で、積分は ∫φ1(x)φ2(x)f(x,y) dy。フビニの定理(定理 9.2)を適用すればよい。□
例 9.10(積分の順序交換)∫01(∫x1ey2dy)dx は、内側の積分が初等関数で書けないのでこのままでは計算できない。積分領域 {0≤x≤y≤1} を「y を固定して x を動かす」形に見直すと
∫01(∫0yey2dx)dy=∫01yey2dy=2e−1
例 9.11(カヴァリエリの原理)ジョルダン可測な立体 K⊂R3 の、高さ z での断面 Kz の面積を s(z) とすると、フビニの定理より vol(K)=∫s(z) dz である(Kz が各 z で可測で、s が可積分なら)。高校で「断面積を積分して体積を求めた」のはこの定理の応用である。例えば二つの円柱 x2+z2≤1、y2+z2≤1 の共通部分は、高さ z での断面が一辺 21−z2 の正方形なので、体積は ∫−114(1−z2) dz=316。
9.5 変数変換公式
1 変数の置換積分 ∫φ(α)φ(β)f(x) dx=∫αβf(φ(t))φ′(t) dt の多変数版を考える。φ′(t) は「t の近くの微小区間が φ で何倍の長さに引き伸ばされるか」を表していた。多変数では、微小な長方形は Φ によって近似的に DΦ による像、つまり平行体に写される。その体積の拡大率が ∣detDΦ∣ である。
命題 9.12(線形変換と体積)T を n 次正則行列、E をジョルダン可測集合とすると、T(E) もジョルダン可測で vol(T(E))=∣detT∣vol(E)。
証明の概略. 正則行列は基本行列の積であり、det は乗法的なので、T が基本行列で E が長方形の場合に示せばよい(一般の E は長方形の有限和で内側と外側から近似する)。(i) 一つの座標を c 倍する行列なら、T(E) は長方形で体積は ∣c∣ 倍。(ii) 二つの座標を入れ替える行列なら、T(E) は同じ体積の長方形。(iii) xi↦xi+cxj(i=j)なら、T(E) は長方形ではないが、xi 以外の座標を固定した断面は同じ長さの区間を平行移動したものなので、フビニの定理(xi について先に積分する)より体積は変わらない。det はそれぞれ c、−1、1 である。□
定理 9.13(変数変換公式, change of variables formula)U⊂Rn を開集合、Φ:U→Rn を C1 級の単射で、U 上 detDΦ=0 とする。D⊂U をコンパクトなジョルダン可測集合、f を Φ(D) 上の連続関数とすると、Φ(D) はジョルダン可測で
∫Φ(D)f(y)dy=∫Df(Φ(x))∣detDΦ(x)∣dx
さらに、Φ が D を含む開集合上で C1 級であれば、単射性と detDΦ=0 が D の体積 0 の部分集合(例えば境界 ∂D)上で破れていても、同じ等式が成り立つ。
∣detDΦ∣ をヤコビアン (Jacobian) と呼ぶ(detDΦ そのものを呼ぶこともある)。記号的には dy=∣detDΦ(x)∣ dx と覚えればよい。
証明の概略. D を一辺 h の小さな立方体 Q に分割し、各 Q の中心を cQ とする。Φ は Q の上で一次近似 x↦Φ(cQ)+DΦ(cQ)(x−cQ) に近く、その誤差は DΦ の一様連続性と平均値の不等式(定理 8.4)により o(h) で一様に抑えられる。したがって、命題 9.12 より
vol(Φ(Q))=∣detDΦ(cQ)∣vol(Q)+o(hn)
となり、o(hn) は Q によらず一様である。Φ(D) は Φ(Q) たちに(境界の重なりを除いて)分割されるので
∫Φ(D)f≈Q∑f(Φ(cQ))vol(Φ(Q))≈Q∑f(Φ(cQ))∣detDΦ(cQ)∣vol(Q)≈∫D(f∘Φ)∣detDΦ∣
であり、立方体の個数は O(h−n) なので、h→0 で誤差の総和は 0 に近づく。Φ(D) のジョルダン可測性や、D の境界付近の立方体の扱いなどの細部を詰めるには相当の議論が必要である。完全な証明は、例えば README の参考文献の杉浦『解析入門』や Rudin, Principles of Mathematical Analysis 第10章を参照。□
1 変数の置換積分では φ の単射性は不要だった(向きの付いた積分 ∫αβ で打ち消し合う)が、多変数では単射性と絶対値 ∣det∣ が必要である。向きを考えた積分は、第10章と 07-manifolds 第6章 の微分形式の積分で扱う。
9.6 極座標・球座標
極座標 Φ(r,θ)=(rcosθ,rsinθ) では
detDΦ=det(cosθsinθ−rsinθrcosθ)=r
なので dx dy=r dr dθ。[0,R]×[0,2π] は円板 {x2+y2≤R2} に写され、単射性と det=0 が破れるのは境界(r=0 や θ=0,2π)だけなので、定理 9.13 の後半が使える。
例 9.14 (1) 半径 R の円板の面積は ∫02π∫0Rr dr dθ=πR2。
(2) ∫x2+y2≤1(x2+y2) dx dy=∫02π∫01r3 dr dθ=2π。
(3) 放物面 z=x2+y2 と平面 z=1 で囲まれた部分の体積は ∫x2+y2≤1(1−x2−y2)=2π∫01(1−r2)r dr=2π。
球座標 Φ(r,ϕ,θ)=(rsinϕcosθ,rsinϕsinθ,rcosϕ)(0≤ϕ≤π、0≤θ≤2π)では、第 3 行で余因子展開すると
detDΦ=detsinϕcosθsinϕsinθcosϕrcosϕcosθrcosϕsinθ−rsinϕ−rsinϕsinθrsinϕcosθ0=r2sinϕ
なので dx dy dz=r2sinϕ dr dϕ dθ。例えば半径 R の球の体積は ∫02π∫0π∫0Rr2sinϕ dr dϕ dθ=2π⋅2⋅3R3=34πR3。
9.7 広義重積分
非有界な領域や非有界な関数の積分は、1 変数と同様に有界な場合の極限として定める。ただし多変数では「近づき方」がたくさんあるので、それによらないことを確かめる必要がある。
定義 9.15 開集合 D⊂Rn に対し、コンパクトなジョルダン可測集合の増大列 K1⊂K2⊂⋯⊂D で ⋃mKm∘=D を満たすものを、D の近似列 (exhaustion) という。
近似列 (Km) について、D に含まれる任意のコンパクト集合 C は、ある Km に含まれる。実際、そうでなければ xm∈C∖Km がとれ、収束部分列の極限 x∈C⊂D はある Km0∘ に属するが、十分先の xm は開集合 Km0∘⊂Km に入るので矛盾する。
命題 9.16 f≥0 を開集合 D 上の連続関数とする。近似列 (Km) に対する極限 limm→∞∫Kmf∈[0,∞] は、近似列のとり方によらない。
証明. ∫Kmf は m について単調増加なので極限が存在する。別の近似列 (Ll) をとると、各 Km はある Ll に含まれるので ∫Kmf≤∫Llf≤liml∫Llf。m→∞ として limm∫Kmf≤liml∫Llf。逆も同様。□
この極限を ∫Df と書き、有限のとき広義積分が収束するという。符号の変わる f については、∫D∣f∣<∞(絶対収束)のときに、f±=max{±f,0} を使って ∫Df=∫Df+−∫Df− と定める。9.2 節の警告の例が示すように、絶対収束しない場合は近似の仕方で値が変わりうるので、多変数では絶対収束を要求するのが自然である。
9.8 ガウス積分
広義重積分の最も有名な応用は、1 変数の積分 ∫−∞∞e−x2dx を 2 変数の積分に「持ち上げて」計算する方法である。
定理 9.17(ガウス積分, Gaussian integral)
∫−∞∞e−x2dx=π
証明. f(x,y)=e−(x2+y2)>0 の R2 上の広義積分を、二つの近似列で計算する。
(円板) Km={x2+y2≤m2} とすると、極座標で
∫Kmf=∫02π∫0me−r2rdrdθ=2π[−2e−r2]0m=π(1−e−m2)→π
(正方形) Lm=[−m,m]2 とすると、フビニの定理より
∫Lmf=∫−mm∫−mme−x2e−y2dydx=(∫−mme−x2dx)2→G2
ここで G=∫−∞∞e−x2dx(e−x2≤e−∣x∣+1 より収束する)。命題 9.16 より G2=π、G>0 なので G=π。□
x=y/2 などと置換すると、確率論で基本的な正規分布の密度の積分 ∫−∞∞2π1e−y2/2dy=1 が得られる(11-probability 第4章)。また x=t と置換すると Γ(21)=∫0∞t−1/2e−tdt=2∫0∞e−x2dx=π。
9.9 ガンマ関数とベータ関数、n 次元球の体積
第5章で予告した関係式を証明する。
定理 9.18 p,q>0 に対して B(p,q)=Γ(p+q)Γ(p)Γ(q)。
証明. D=(0,∞)2 上の f(x,y)=xp−1yq−1e−(x+y)>0 の広義積分を考える。近似列 Lm=[m1,m]2 についてはフビニの定理より
∫Lmf=∫1/mmxp−1e−xdx⋅∫1/mmyq−1e−ydy→Γ(p)Γ(q)
一方、Φ(u,v)=(uv,u(1−v)) は (0,∞)×(0,1) から D への C1 級全単射(逆写像は u=x+y、v=x+yx)で、
detDΦ=det(v1−vu−u)=−u=0
Km=Φ([m1,m]×[m1,1−m1]) は D の近似列であり、変数変換公式とフビニの定理より
∫Kmf=∫1/mm∫1/m1−1/m(uv)p−1(u(1−v))q−1e−uudvdu=∫1/mmup+q−1e−udu⋅∫1/m1−1/mvp−1(1−v)q−1dv
これは Γ(p+q)B(p,q) に収束する。命題 9.16 より Γ(p)Γ(q)=Γ(p+q)B(p,q)。□
半径 r の n 次元球 Bn(r)={x∈Rn∣∥x∥≤r} の体積を求めよう。線形変換 x↦rx(det=rn)と命題 9.12 より vol(Bn(r))=Vnrn、ただし Vn=vol(Bn(1))。
定理 9.19(n 次元球の体積)
Vn=Γ(2n+1)πn/2
証明. n についての帰納法。n=1 では V1=2、右辺は Γ(3/2)π=21ππ=2。n≥2 のとき、Bn(1) を最後の座標 t で切ると、断面は半径 1−t2 の (n−1) 次元球なので、フビニの定理より
Vn=∫−11Vn−1(1−t2)2n−1dt=Vn−1⋅2∫01(1−t2)2n−1dt=Vn−1B(21,2n+1)
(最後は t2=s と置換した)。定理 9.18 と Γ(21)=π より
Vn=Vn−1Γ(2n+1)πΓ(2n+1)
帰納法の仮定 Vn−1=Γ(2n+1)π(n−1)/2 を代入すれば主張を得る。□
具体的には V1=2、V2=π、V3=34π、V4=2π2、V5=158π2、V6=6π3 である。数値では V5≈5.264 が最大で、その後 Vn は減少して Vn→0(スターリングの公式より超指数的に)となる。高次元の単位球は、それを囲む一辺 2 の立方体(体積 2n)に比べて極めて小さい。また、半径 r の球面 Sn−1 の「面積」は drdVnrn=nVnrn−1 であり、n=3 で 4πr2 となる。
まとめ
- 長方形上の積分はダルブー和で定義され、連続関数は可積分である。
- フビニの定理:可積分な f の重積分は累次積分に等しい。可積分性がないと積分の順序交換は失敗しうる。
- 境界が体積 0 の集合がジョルダン可測集合であり、その上の有界連続関数は可積分。連続関数のグラフは体積 0 なので、縦線集合上の積分は累次積分で計算できる。
- 変数変換公式 ∫Φ(D)f=∫D(f∘Φ)∣detDΦ∣ において、∣detDΦ∣ は体積の局所的な拡大率である。線形変換では vol(T(E))=∣detT∣vol(E)。
- 極座標で dx dy=r dr dθ、球座標で dx dy dz=r2sinϕ dr dϕ dθ。
- 正値関数の広義重積分は近似列によらない。これを使ってガウス積分 ∫e−x2=π と B(p,q)=Γ(p+q)Γ(p)Γ(q) が示せる。
- n 次元単位球の体積は Vn=Γ(n/2+1)πn/2。
演習問題
問題 9.1 ★ 次を計算せよ。
(1) ∫Dxy dx dy、D={0≤y≤x≤1} (2) ∫01(∫x1ey3dy)dx
解答
(1) ∫01∫0xxy dy dx=∫012x3dx=81。
(2) 領域は {0≤x≤y2, 0≤y≤1} なので、順序を入れ替えて ∫01∫0y2ey3dx dy=∫01y2ey3dy=3e−1。
問題 9.2 ★ 楕円体 a2x2+b2y2+c2z2≤1 の体積を求めよ。
解答
線形変換 (u,v,w)↦(au,bv,cw)(行列式 abc)は単位球をこの楕円体に写すので、命題 9.12 より体積は abc⋅34π=34πabc。
問題 9.3 ★★ (1) ∫R2(1+x2+y2)αdx dy が収束する α の範囲と値を求めよ。(2) ∫0<x2+y2<1(x2+y2)α/2dx dy が収束する α の範囲と値を求めよ。
解答
(1) 円板の近似列と極座標で 2π∫0m(1+r2)αr dr。α=1 なら =1−απ((1+m2)1−α−1) で、α>1 のとき α−1π に収束、α<1 で発散。α=1 なら πlog(1+m2)→∞。よって α>1 で収束し値は α−1π。
(2) 開集合 D={0<x2+y2<1} の近似列として円環 Km={m+21≤x2+y2≤1−m+21} をとる(Km はコンパクトで増大し、内部の和集合は D)。極座標で ∫Km=2π∫1/(m+2)1−1/(m+2)r1−αdr→2π∫01r1−αdr であり、α<2 で 2−α2π に収束し、α≥2 で発散する。一般に Rn では、原点の近くで ∥x∥−α が可積分 ⇔α<n、無限遠で可積分 ⇔α>n である。
問題 9.4 ★★ a>0、b∈R とする。次を示せ。
(1) ∫0∞x2e−x2dx=4π (2) ∫−∞∞e−ax2+bxdx=aπ eb2/(4a)
解答
(1) x=t と置換して 21∫0∞t1/2e−tdt=21Γ(23)=21⋅21π=4π。
(2) −ax2+bx=−a(x−2ab)2+4ab2 と平方完成し、y=a(x−2ab) と置換すると eb2/(4a)a1∫−∞∞e−y2dy=aπeb2/(4a)。
問題 9.5 ★★ (1) n∈Z≥0 について Γ(n+21)=4nn!(2n)!π を示せ。(2) p>−1 について ∫0π/2sinpθ dθ=2π⋅Γ(2p+1)Γ(2p+1) を示し、例 5.16 と比較せよ。
解答
(1) Γ(s+1)=sΓ(s) より Γ(n+21)=22n−1⋅22n−3⋯21π=2n(2n−1)(2n−3)⋯1π。(2n−1)(2n−3)⋯1=2nn!(2n)! なので主張を得る。
(2) 定理 5.24 (2) で 2p′−1=p、2q′−1=0 とすると ∫0π/2sinpθ dθ=21B(2p+1,21)。定理 9.18 と Γ(21)=π から主張を得る。例えば p=2m なら (1) より 2π⋅m!(2m)!π/(4mm!)=2π⋅4m(m!)2(2m)! で、例 5.16 の I2m と一致する。
問題 9.6 ★★ 0<a<R とする。xz 平面の円板 (x−R)2+z2≤a2 を z 軸のまわりに回転してできるトーラスの体積が 2π2Ra2 であることを示せ。
解答
円柱座標 (x,y,z)=(ρcosθ,ρsinθ,z)(ヤコビアン ρ)を使うと、トーラスは {(ρ−R)2+z2≤a2} なので、体積は ∫02π∫Eρ dρ dz dθ=2π∫Eρ dρ dz(E は ρz 平面の円板)。ρ=R+s とすると ∫Eρ=R⋅πa2+∫s2+z2≤a2s=πRa2(第 2 項は対称性より 0)。よって 2π2Ra2。(体積 = 断面積 × 重心の描く円周の長さ、というパップス–ギュルダンの定理の一例。)
問題 9.7 ★★ 3 次元の正四面体 T={x,y,z≥0, x+y+z≤1} について、vol(T)=61 と ∫Tx dx dy dz=241 を示し、T の重心を求めよ。
解答
vol(T)=∫01∫01−x(1−x−y) dy dx=∫012(1−x)2dx=61。∫Tx=∫01x2(1−x)2dx=21B(2,3)=21⋅4!1! 2!=241。対称性から重心は (1/61/24,41,41)=(41,41,41)。
問題 9.8 ★★★ (1) ∫Rne−∥x∥2dx=πn/2 を示せ。(2) 連続関数 g:[0,∞)→[0,∞) について ∫∥x∥≤Rg(∥x∥) dx=nVn∫0Rg(r)rn−1dr を示せ。(3) (1)、(2) から Vn=Γ(n/2+1)πn/2 を再び導け。
解答
(1) 立方体の近似列 [−m,m]n とフビニの定理より (∫−mme−t2dt)n→πn/2。
(2) [0,R] の分割 0=r0<⋯<rk=R をとると、球殻 {ri−1≤∥x∥≤ri} の体積は Vn(rin−ri−1n)=Vnnξin−1Δri(平均値の定理、ξi∈(ri−1,ri))。その上で g(∥x∥) は g の [ri−1,ri] 上の最小値 mi と最大値 Mi の間にあるので
i∑minVnξin−1Δri≤∫∥x∥≤Rg(∥x∥)dx≤i∑MinVnξin−1Δri
分割を細かくすると、両辺は g の一様連続性によりリーマン和 ∑g(ξi)nVnξin−1Δri との差が 0 に近づき、nVn∫0Rg(r)rn−1dr に収束する。
(3) (2) で g(r)=e−r2、R→∞ とすると、(1) より πn/2=nVn∫0∞e−r2rn−1dr=nVn⋅21Γ(2n)=VnΓ(2n+1)(r=t と置換した)。