この章の目標
- ダルブーの上和・下和によってリーマン積分を定義し、可積分性の判定条件を使える
- 連続関数・単調関数が可積分であることを証明できる
- 微分積分学の基本定理を証明し、置換積分・部分積分・積分剰余のテイラーの定理を導ける
- 広義積分の収束を判定でき、ガンマ関数・ベータ関数の基本的な関係式を導ける
- ウォリスの公式とスターリングの公式を理解し、級数の積分判定法を使える
前提:第1章〜第4章
5.1 積分を定義し直す理由
高校では、f の原始関数 F(F′=f)を使って ∫abf(x) dx=F(b)−F(a) と定義し、それが「面積」を表すことを図で説明した。この定義にはいくつか問題がある。
- 原始関数が式で書けない関数(例えば e−x2)の積分は、そもそも存在するのか。
- 不連続な関数(例えば階段関数)の積分はどう定義するのか。原始関数をもたない関数もある(第4章のダルブーの定理により、符号関数はどんな関数の導関数でもない)。
- 「面積」とは何か。面積を定義しないまま積分を面積と呼ぶのは循環している。
そこで大学では、区間を細かく分けて長方形の面積の和で近似するという考え方で積分を直接定義し、「積分 = 原始関数の差」は定理(微分積分学の基本定理)として証明する。本章では、ダルブーによる上和・下和を使った定式化を採用する。
5.2 上和・下和とリーマン積分
以下、f:[a,b]→R は有界な関数とする。
定義 5.1 (1) 有限個の点 a=x0<x1<⋯<xn=b の集合 P={x0,…,xn} を [a,b] の分割 (partition) という。Δxi=xi−xi−1 とし、∣P∣=maxiΔxi を分割の幅 (mesh) という。分割 Q⊃P を P の細分 (refinement) という。
(2) Mi=sup[xi−1,xi]f、mi=inf[xi−1,xi]f とおき、
U(f,P)=i=1∑nMiΔxi,L(f,P)=i=1∑nmiΔxi
をそれぞれ上和 (upper sum)、下和 (lower sum) という。
上和はグラフを上から覆う長方形の面積の和、下和は下から埋める長方形の面積の和である。
補題 5.2 (1) Q が P の細分ならば L(f,P)≤L(f,Q)≤U(f,Q)≤U(f,P)。
(2) 任意の分割 P,Q について L(f,P)≤U(f,Q)。
証明. (1) P に 1 点 y∈(xi−1,xi) を加えた場合を示せば、帰納法で一般の場合が従う。[xi−1,y] と [y,xi] 上の上限はどちらも Mi 以下なので、U の第 i 項 MiΔxi は sup[xi−1,y]f⋅(y−xi−1)+sup[y,xi]f⋅(xi−y) 以下のものに置き換わる。よって U は増えない。L も同様。(2) P∪Q は両方の細分なので L(f,P)≤L(f,P∪Q)≤U(f,P∪Q)≤U(f,Q)。□
補題 5.2 (2) より、上和全体は下に有界、下和全体は上に有界なので、次の上限・下限が存在する。
定義 5.3(リーマン積分, Riemann integral)
∫abf=PinfU(f,P),∫abf=PsupL(f,P)
をそれぞれ上積分・下積分という。補題 5.2 (2) より常に ∫abf≤∫abf である。両者が等しいとき、f は [a,b] でリーマン積分可能(または可積分, integrable)であるといい、その共通の値を ∫abf(x) dx と書く。
例 5.4 (1) 定数関数 f=c は U(f,P)=L(f,P)=c(b−a) なので可積分で、∫abc dx=c(b−a)。
(2) ディリクレ関数 f=1Q は [0,1] で可積分でない。どの小区間にも有理数と無理数がある(定理 1.23、系 1.24)ので、すべての分割で Mi=1、mi=0、したがって上積分は 1、下積分は 0 である。
実験リーマン和と上和・下和分割を細かくすると上和と下和が挟み撃ちで積分に近づく様子を観察します。
この実験は JavaScript を有効にすると動きます。
5.3 可積分性の条件
定理 5.5(リーマンの判定条件)有界関数 f が [a,b] で可積分であるための必要十分条件は、任意の ε>0 に対して U(f,P)−L(f,P)<ε となる分割 P が存在することである。
証明. (十分性) 任意の ε について 0≤∫f−∫f≤U(f,P)−L(f,P)<ε なので、両者は等しい。(必要性) 共通の値を I とすると、下積分・上積分の定義より L(f,P1)>I−2ε、U(f,P2)<I+2ε となる分割 P1,P2 がある。P=P1∪P2 とすれば補題 5.2 より U(f,P)−L(f,P)≤U(f,P2)−L(f,P1)<ε。□
高校の区分求積法に対応するのが次の定理である。分割 P と各小区間の点 ξi∈[xi−1,xi] に対して S(f,P,ξ)=∑i=1nf(ξi)Δxi をリーマン和 (Riemann sum) という。
定理 5.6 有界関数 f について、次は同値である。
- f は [a,b] で可積分で ∫abf=I。
- 任意の ε>0 に対して δ>0 が存在し、∣P∣<δ を満たす任意の分割 P と任意の点 ξi の選び方について ∣S(f,P,ξ)−I∣<ε。
証明. (1)⇒(2):∣f∣≤M とする。ε>0 に対し U(f,P0)−L(f,P0)<ε となる分割 P0 をとり、その内部の分点の個数を k とする。∣P∣<δ の分割 P に P0 の点を 1 個加えると、その点を含む P の小区間は高々 1 個(分点と一致すれば 0 個)なので、U は高々 2Mδ しか減らない。よって U(f,P)≤U(f,P∪P0)+2Mkδ≤U(f,P0)+2Mkδ。同様に L(f,P)≥L(f,P0)−2Mkδ。したがって δ=4Mk+1ε とすれば U(f,P)−L(f,P)<2ε。S(f,P,ξ) と I はともに [L(f,P),U(f,P)] に属するので、∣S(f,P,ξ)−I∣<2ε。
(2)⇒(1):ε>0 に対する δ をとり、∣P∣<δ の分割 P を一つ固定する。各 i で f(ξi)>Mi−b−aε となる ξi を選ぶと U(f,P)<S(f,P,ξ)+ε<I+2ε。同様に L(f,P)>I−2ε。よって U−L<4ε であり、定理 5.5 より可積分で、積分値は I である。□
特に f が可積分なら、等分割 xi=a+ni(b−a) に対して
n→∞limnb−ai=1∑nf(a+ni(b−a))=∫abf(x)dx
が成り立つ(区分求積法)。
5.4 可積分な関数
定理 5.7 [a,b] 上の連続関数は可積分である。
証明. f はハイネ–カントールの定理(定理 3.25)により一様連続である。ε>0 に対し、∣x−y∣<δ⇒∣f(x)−f(y)∣<b−aε となる δ をとり、∣P∣<δ の分割 P をとる。各小区間で f は最大値・最小値をとる(定理 3.21)ので Mi−mi=f(si)−f(ti)<b−aε(si,ti∈[xi−1,xi])。よって U(f,P)−L(f,P)<b−aε∑Δxi=ε。□
定理 5.8 [a,b] 上の単調関数は可積分である。
証明. f を単調増加とし、n 等分割 Pn をとると Mi=f(xi)、mi=f(xi−1) なので
U(f,Pn)−L(f,Pn)=i=1∑n(f(xi)−f(xi−1))nb−a=n(f(b)−f(a))(b−a)
n→∞ で 0 に収束するので、定理 5.5 より可積分。□
単調関数は不連続点を可算無限個もちうる(問題 3.10)が、それでも可積分である。可積分性は連続性よりずっと弱い条件である。
例 5.9 トマエ関数(例 3.17 (3))は [0,1] で可積分で、積分は 0 である。すべての小区間に無理数があるので L(f,P)=0。ε>0 に対し、f(x)≥2ε となる x∈[0,1](分母が ε2 以下の有理数)は有限個で、その個数を N とする。∣P∣<δ の分割では、それらの点を含む小区間は高々 2N 個でその上で Mi≤1、残りの小区間では Mi<2ε なので、U(f,P)≤2Nδ+2ε。δ=4Nε とすれば U(f,P)≤ε。この関数は有理数の点(稠密な集合)すべてで不連続である。
補足
有界関数がリーマン積分可能であるための必要十分条件は、その不連続点全体が「測度 0」(任意の ε>0 に対して、長さの総和が ε 未満の可算個の開区間で覆える)であることが知られている(ルベーグの判定条件)。証明は 06-measure-integration 第3章 の内容と合わせて学ぶとよい。
5.5 積分の性質
定理 5.10 f,g を [a,b] 上の可積分関数、c∈R とする。
- (線形性)f+g、cf は可積分で、∫(f+g)=∫f+∫g、∫cf=c∫f。
- (単調性)f≤g ならば ∫f≤∫g。
- ∣f∣ は可積分で、∫abf≤∫ab∣f∣。
- 積 fg は可積分である。
- (区間についての加法性)a<c<b のとき、f が [a,b] で可積分であることと [a,c]、[c,b] の両方で可積分であることは同値で、∫abf=∫acf+∫cbf。
証明. (1) 各小区間で sup(f+g)≤supf+supg、inf(f+g)≥inff+infg なので L(f,P)+L(g,P)≤L(f+g,P)≤U(f+g,P)≤U(f,P)+U(g,P)。U(f,P)−L(f,P) と U(g,P)−L(g,P) を同時に小さくする分割(共通細分)をとれば、定理 5.5 より f+g は可積分で、積分値は ∫f+∫g と ε 以内の差しかない。cf は c≥0 なら U(cf,P)=cU(f,P) などから、c<0 なら U(cf,P)=cL(f,P) から従う。
(2) g−f≥0 なので L(g−f,P)≥0、よって ∫(g−f)≥0 で (1) を使う。
(3) 各小区間で sup∣f∣−inf∣f∣≤supf−inff(∣f(s)∣−∣f(t)∣≤∣f(s)−f(t)∣ による)なので ∣f∣ も定理 5.5 の条件を満たす。不等式は −∣f∣≤f≤∣f∣ と (2) から。
(4) ∣f∣≤M なら各小区間で supf2−inff2≤2M(sup∣f∣−inf∣f∣) なので、(3) より f2 は可積分。fg=41((f+g)2−(f−g)2) と (1) による。
(5) [a,b] の分割に点 c を加えても U−L は増えないので、c を含む分割だけを考えてよい。そのような分割は [a,c] と [c,b] の分割の組と対応し、上和・下和は和に分かれる。これと定理 5.5 から従う。□
a>b のとき ∫abf=−∫baf、また ∫aaf=0 と約束すると、(5) の等式は a,b,c の大小によらず成り立つ。
定理 5.11(積分の平均値定理)f が [a,b] で連続、g が可積分で g≥0 ならば、
∫abf(x)g(x)dx=f(c)∫abg(x)dx
となる c∈[a,b] が存在する。特に g=1 として ∫abf=f(c)(b−a)。
証明. m=minf、M=maxf とすると mg≤fg≤Mg なので m∫g≤∫fg≤M∫g。∫g=0 なら ∫fg=0 で任意の c でよい。∫g>0 なら ∫g∫fg∈[m,M] であり、中間値の定理より f(c) がこの値に等しい c がある。□
5.6 微分積分学の基本定理
定理 5.12(微分積分学の基本定理, fundamental theorem of calculus)f を [a,b] で可積分とし、F(x)=∫axf(t) dt とおく。
- F は [a,b] でリプシッツ連続である。
- f が x0∈[a,b] で連続ならば、F は x0 で微分可能で F′(x0)=f(x0)。
証明. (1) ∣f∣≤M なら ∣F(x)−F(y)∣=∫yxf≤M∣x−y∣。
(2) ε>0 に対し、∣t−x0∣<δ⇒∣f(t)−f(x0)∣<ε となる δ をとる。0<∣h∣<δ(x0+h∈[a,b])なら
hF(x0+h)−F(x0)−f(x0)=h1∫x0x0+h(f(t)−f(x0))dt≤ε
である。□
定理 5.13(微分積分学の基本定理・その 2)F が [a,b] で微分可能(端点では片側微分)で、F′=f が [a,b] で可積分ならば
∫abf(x)dx=F(b)−F(a)
証明. 任意の分割 P について、各小区間に平均値の定理を使うと
F(b)−F(a)=i=1∑n(F(xi)−F(xi−1))=i=1∑nf(ξi)Δxi(ξi∈(xi−1,xi))
右辺は L(f,P) と U(f,P) の間にある。P は任意なので ∫f≤F(b)−F(a)≤∫f であり、f は可積分なので両端は ∫abf に等しい。□
f が連続なら、定理 5.12 より F(x)=∫axf は f の原始関数であり、任意の原始関数 G は F と定数の差しかない(系 4.14)ので、∫abf=G(b)−G(a)。こうして高校の「定義」は定理として回復される。以後、[G]ab=G(b)−G(a) と書く。
注意
(1) 可積分関数は原始関数をもつとは限らない。[−1,1] 上の符号関数は(単調なので)可積分だが、ダルブーの定理により原始関数をもたない。
(2) F が至るところ微分可能でも、F′ が可積分とは限らない。F(x)=x2sinx21(x=0)、F(0)=0 は [0,1] で微分可能だが、F′(x)=2xsinx21−x2cosx21 は有界でないのでリーマン積分可能でない。定理 5.13 で「F′ が可積分」を仮定したのはこのためである。
5.7 置換積分と部分積分
定理 5.14 (1)(部分積分, integration by parts)f,g が [a,b] で C1 級ならば
∫abf(x)g′(x)dx=[f(x)g(x)]ab−∫abf′(x)g(x)dx
(2)(置換積分, substitution)φ:[α,β]→R が C1 級で、f が φ([α,β]) を含む区間で連続ならば
∫φ(α)φ(β)f(x)dx=∫αβf(φ(t))φ′(t)dt
証明. (1) (fg)′=f′g+fg′ は連続なので、定理 5.13 より ∫ab(f′g+fg′)=[fg]ab。(2) F を f の原始関数とすると、合成関数の微分より (F∘φ)′=f(φ)φ′ は連続なので、右辺は F(φ(β))−F(φ(α)) に等しく、これは左辺に等しい。□
置換積分で φ の単調性は不要である。多変数の変数変換(第9章)では単射性が必要になるので対照的である。
例 5.15 (1) ∫1elogx dx=[xlogx]1e−∫1ex⋅x1 dx=e−(e−1)=1。
(2) ∫01xex2dx:φ(t)=t2 として 21∫01eu du=2e−1。
(3) (三角関数を認めて)∫−111−x2 dx:x=sint(t∈[−2π,2π])として ∫−π/2π/2cos2t dt=2π。単位円の面積の半分である。
例 5.16(ウォリス積分)In=∫0π/2sinnx dx とおく。I0=2π、I1=1 であり、n≥2 で部分積分により
In=[−sinn−1xcosx]0π/2+(n−1)∫0π/2sinn−2xcos2xdx=(n−1)(In−2−In)
よって In=nn−1In−2。これから
I2m=2m(2m−2)⋯2(2m−1)(2m−3)⋯1⋅2π,I2m+1=(2m+1)(2m−1)⋯32m(2m−2)⋯2=(2m+1)!22m(m!)2
5.8 積分剰余のテイラーの定理
定理 5.17(テイラーの定理・積分剰余)f が区間 I で Cn+1 級で、a,x∈I ならば
f(x)=k=0∑nk!f(k)(a)(x−a)k+n!1∫ax(x−t)nf(n+1)(t)dt
証明. n についての帰納法。n=0 は f(x)=f(a)+∫axf′(t) dt(定理 5.13)。n−1 で成り立つとし、その剰余項を u(t)=f(n)(t)、v(t)=−n!(x−t)n(v′(t)=(n−1)!(x−t)n−1)として部分積分すると
(n−1)!1∫ax(x−t)n−1f(n)(t)dt=[−n!(x−t)nf(n)(t)]ax+n!1∫ax(x−t)nf(n+1)(t)dt
第 1 項は n!f(n)(a)(x−a)n なので、n の場合が得られる。□
x>a のとき (x−t)n≥0 なので、積分の平均値定理(定理 5.11)より剰余項は n!f(n+1)(c)∫ax(x−t)ndt=(n+1)!f(n+1)(c)(x−a)n+1 となり、ラグランジュ剰余が再び得られる(x<a も同様)。積分剰余はラグランジュ剰余より精密な評価ができることがある。
例 5.18 −1<x≤1 で log(1+x)=∑k=1∞k(−1)k−1xk。0≤x≤1 は例 4.22 (2) で示した。−1<x<0 のとき、f(n+1)(t)=(1+t)n+1(−1)nn! より剰余項の絶対値は ∫x0(1+t)n+1(t−x)ndt。x≤t≤0 では t(1+x)≤0 より t−x≤∣x∣(1+t) なので、これは
∫x01+t∣x∣ndt=∣x∣n(−log(1+x))→0(n→∞)
以下である(ラグランジュ剰余では x が −1 に近いとき評価がうまくいかない)。
5.9 広義積分
区間が無限であったり、関数が非有界であったりすると、リーマン積分は定義できない。そのような場合は、有界閉区間上の積分の極限として積分を定める。
定義 5.19(広義積分, improper integral)−∞<a<b≤∞ とし、f は [a,b) で定義され、任意の c∈(a,b) について [a,c] で可積分とする。極限
∫abf(x)dx:=c→b−0lim∫acf(x)dx
(b=∞ なら c→∞)が存在するとき、広義積分は収束するという。左端が問題になる場合も同様に定め、両端が問題になる場合は内部の点で分けて、両方が収束するとき収束するという。∫ab∣f∣ が収束するとき、絶対収束するという。
例 5.20 (1) ∫01x−p dx は p<1 で収束して値は 1−p1、p≥1 で発散する。p=1 なら ∫c1x−pdx=1−p1−c1−p で、c→+0 のとき c1−p は p<1 なら 0 に、p>1 なら ∞ に近づく。p=1 なら −logc→∞。
(2) ∫1∞x−p dx は p>1 で収束して値は p−11、p≤1 で発散する。
(3) ∫0∞e−xdx=limc→∞(1−e−c)=1。
定理 5.21 (1)(コーシーの判定法)∫abf(b で広義)が収束するための必要十分条件は、任意の ε>0 に対して c0<b が存在し、c0<c<c′<b ならば ∫cc′f<ε となることである。
(2) 絶対収束する広義積分は収束する。
(3)(比較判定法)[a,b) で ∣f∣≤g であり ∫abg が収束すれば、∫abf は絶対収束する。
証明. (1) Φ(c)=∫acf に命題 3.12 を適用すればよい(Φ(c′)−Φ(c)=∫cc′f)。(2) ∫cc′f≤∫cc′∣f∣ と (1)。(3) ∫cc′∣f∣≤∫cc′g と (1)。□
実用上は、例 5.20 と比較して次のように判定することが多い:x→∞ で f(x)=O(x−p)(p>1)なら ∫∞f は絶対収束し、x→+0 で f(x)=O(x−p)(p<1)なら ∫0f は絶対収束する。
例 5.22(条件収束する広義積分)∫0∞xsinx dx は収束するが、絶対収束しない。x→0 で xsinx→1 なので [0,1] では問題ない(0 での値を 1 とすれば連続)。c>1 で部分積分すると
∫1cxsinxdx=[−xcosx]1c−∫1cx2cosxdx
で、ccosc→0、x2cosx≤x21 より第 2 項は絶対収束するので、c→∞ で収束する。一方 ∫kπ(k+1)πx∣sinx∣dx≥(k+1)π1∫kπ(k+1)π∣sinx∣dx=(k+1)π2 で、∑k+11 は発散するので絶対収束しない。値が 2π であることは 05-complex-analysis 第5章 の留数定理などで示される。
5.10 ガンマ関数とベータ関数
定義 5.23 s>0、p>0、q>0 に対して
Γ(s)=∫0∞xs−1e−xdx,B(p,q)=∫01xp−1(1−x)q−1dx
と定め、Γ をガンマ関数 (gamma function)、B をベータ関数 (beta function) という。
収束の確認:Γ(s) は x→+0 で xs−1e−x≤xs−1(s−1>−1)、x→∞ で xs+1e−x→0(問題 3.8)より xs−1e−x=O(x−2) なので、両端で絶対収束する。B(p,q) は x→+0 で O(xp−1)、x→1−0 で O((1−x)q−1) なので収束する。
定理 5.24 (1) Γ(s+1)=sΓ(s)(s>0)、Γ(1)=1。特に Γ(n+1)=n!(n∈Z≥0)。
(2) B(p,q)=B(q,p)、B(p,q)=2∫0π/2sin2p−1θcos2q−1θ dθ。
(3) B(p+1,q)=p+qpB(p,q)。
(4) 正の整数 m,n について B(m,n)=(m+n−1)!(m−1)!(n−1)!=Γ(m+n)Γ(m)Γ(n)。
証明. 広義積分での部分積分・置換積分は、有界閉区間 [ε,R] や [ε,1−ε] で行ってから極限をとればよい。
(1) ∫εRxse−xdx=[−xse−x]εR+s∫εRxs−1e−xdx で、ε→0、R→∞ とすると境界項は 0 に収束する。Γ(1)=∫0∞e−xdx=1。
(2) 前半は x=1−y、後半は x=sin2θ(dx=2sinθcosθ dθ)と置換する。
(3) 部分積分で B(p,q+1)=[pxp(1−x)q]01+pq∫01xp(1−x)q−1dx=pqB(p+1,q)。また xp−1(1−x)q−1=xp−1(1−x)q−1(x+(1−x)) より B(p,q)=B(p+1,q)+B(p,q+1)=(1+pq)B(p+1,q)。
(4) B(1,n)=∫01(1−x)n−1dx=n1 と (3) から、m についての帰納法で B(m,n)=m+n−1m−1B(m−1,n)=(m+n−1)!(m−1)!(n−1)!。□
(4) の関係式は、実はすべての p,q>0 で成り立つ:
B(p,q)=Γ(p+q)Γ(p)Γ(q)
この証明には重積分の変数変換を使うので、第9章で行う。そこでは Γ(21)=π も示す(本章の問題 5.10 でも別の方法で示す)。
5.11 ウォリスの公式とスターリングの公式
n! は n とともに急激に増大する。その増え方を正確にとらえるのがスターリングの公式であり、その定数 2π を決めるのにウォリス積分を使う。
命題 5.25(ウォリスの公式)例 5.16 の In について nInIn−1=2π であり、n In→2π。また
n→∞lim(2n)!n22n(n!)2=π
証明. In=nn−1In−2 より nInIn−1=(n−1)In−1In−2=⋯=1⋅I1I0=2π。0≤sinx≤1 より (In) は正の単調減少列なので nn−1=In−2In≤In−1In≤1、よって In−1In→1。nIn2=2π⋅In−1In→2π。最後の式は、例 5.16 の I2n+1=(2n+1)!22n(n!)2 より
(2n)!n22n(n!)2=n(2n+1)I2n+1=n2n+12n+1⋅2n+1I2n+1→2⋅2π=π
である。□
定理 5.26(スターリングの公式, Stirling's formula)
n→∞lim2πn(n/e)nn!=1
さらに 1<2πn(n/e)nn!<e1/(12n) が成り立つ。
証明. an=nn+1/2n! en とおく。直接計算すると
logan+1an=(n+21)log(1+n1)−1
t=2n+11 とおくと 1+n1=1−t1+t、n+21=2t1 であり、例 5.18 の展開 log1−t1+t=2(t+3t3+5t5+⋯)(0<t<1)を使うと
logan+1an=3t2+5t4+7t6+⋯
これは正であり、3t2(1+t2+t4+⋯)=3(1−t2)t2=12n(n+1)1=12n1−12(n+1)1 以下である。よって (an) は単調減少、(ane−1/(12n)) は単調増加であり、an≥a1e−1/12>0。単調収束定理より an→C>0 で、C<an<Ce1/(12n)。
C を決める。n!=annn+1/2e−n をウォリスの公式に代入すると
(2n)!n22n(n!)2=a2n(2n)2n+1/2e−2nn22nan2n2n+1e−2n=2a2nan2→2C
命題 5.25 よりこれは π なので C=2π。□
数値例:10!=3628800 に対して 20π(10/e)10=3598695.6… で、比は 1.00837…(e1/120=1.00837… 未満)である。
5.12 級数の積分判定法
定理 5.27(積分判定法, integral test)f:[1,∞)→[0,∞) が単調減少ならば、∑n=1∞f(n) と ∫1∞f(x) dx は収束・発散をともにする。さらに dn=∑k=1nf(k)−∫1nf(x) dx は単調減少で 0≤dn≤f(1) を満たし、収束する。
証明. f は単調なので各有界閉区間で可積分(定理 5.8)。k≤x≤k+1 で f(k+1)≤f(x)≤f(k) なので
f(k+1)≤∫kk+1f(x)dx≤f(k)
k=1,…,n−1 で足すと ∑k=2nf(k)≤∫1nf≤∑k=1n−1f(k)。f≥0 なので部分和も ∫1cf も c について単調増加であり、一方が有界なら他方も有界である。また dn−dn+1=∫nn+1f−f(n+1)≥0、dn=f(n)+∑k=1n−1(f(k)−∫kk+1f)≥0、dn≤d1=f(1)。□
例 5.28 (1) 実数 p について ∑np1 は p>1 で収束、p≤1 で発散する(例 5.20 (2)。例 2.36 の拡張)。
(2) ∑n≥2nlogn1 は発散する:∫2cxlogxdx=loglogc−loglog2→∞。
(3)(オイラーの定数)f(x)=x1 とすると、dn=1+21+⋯+n1−logn は収束する。その極限 γ=0.5772… をオイラーの定数 (Euler's constant) という。したがって Hn=logn+γ+o(1) であり、調和級数の部分和は対数の速さで発散する。
まとめ
- リーマン積分は上和の下限(上積分)と下和の上限(下積分)が一致することで定義される。可積分性は「U(f,P)−L(f,P) をいくらでも小さくできる」ことと同値であり、リーマン和の極限としても特徴づけられる。
- 連続関数(ハイネ–カントールの定理による)と単調関数は可積分である。可積分性は連続性よりずっと弱い(トマエ関数)。
- 微分積分学の基本定理:f が連続なら dxd∫axf=f(x)。F′=f が可積分なら ∫abf=F(b)−F(a)。高校の積分の定義はこの定理として回復される。
- 置換積分・部分積分・積分剰余のテイラーの定理は基本定理から導かれる。
- 広義積分は有界閉区間上の積分の極限であり、比較判定法と x−p との比較で収束を判定する。絶対収束しないが収束する広義積分もある。
- Γ(s+1)=sΓ(s)、Γ(n+1)=n!、B(p+1,q)=p+qpB(p,q)。一般の B=ΓΓ/Γ は第9章で示す。
- ウォリス積分から (2n)!n22n(n!)2→π が得られ、スターリングの公式 n!∼2πn(n/e)n の定数が決まる。
- 単調減少な正値関数では、級数と広義積分の収束・発散は一致する(積分判定法)。
演習問題
問題 5.1 ★ ∫01x2 dx=31 を、定義(上和・下和)から直接示せ。
解答
n 等分割 Pn では、x2 が [0,1] で単調増加なので
U(f,Pn)=i=1∑nn2i2⋅n1=6n3n(n+1)(2n+1),L(f,Pn)=i=1∑nn3(i−1)2=6n3(n−1)n(2n−1)
U−L=n1→0 なので可積分で、∫≥L(f,Pn)→31、∫≤U(f,Pn)→31 より積分は 31。
問題 5.2 ★ [a,b] 上の有界関数で、不連続点が有限個しかないものは可積分であることを示せ。
解答
∣f∣≤M とし、不連続点を c1<⋯<ck とする。ε>0 に対し、各 cj を中心とする長さ η の小区間 Jj(互いに交わらないように η を小さくとる)を考える。[a,b] から Jj の内部を除いた部分は有限個の閉区間の和で、その上で f は連続なので可積分であり、それぞれ U−L<2(k+1)ε となる分割がとれる。これらと Jj の端点を合わせた分割 P では、Jj 上の寄与は 2Mη 以下なので U(f,P)−L(f,P)<2ε+2Mkη。η<4Mkε とすれば ε 未満。
問題 5.3 ★ 次の極限を求めよ。
(1) limn→∞∑k=1nn2+k2n (2) limn→∞n1((n+1)(n+2)⋯(2n))1/n
解答
(1) n1∑k=1n1+(k/n)21→∫011+x2dx=arctan1=4π(定理 5.6)。
(2) 対数をとると n1∑k=1nlog(1+nk)→∫01log(1+x) dx=[(1+x)log(1+x)−x]01=2log2−1。exp の連続性より極限は e2log2−1=e4。
問題 5.4 ★ (1) dxd∫xx2et2dt を求めよ。(2) limx→0x31∫0xlog(1+t2) dt を求めよ。
解答
(1) G(u)=∫0uet2dt とすると G′(u)=eu2(定理 5.12)で、積分は G(x2)−G(x)。合成関数の微分より 2xex4−ex2。
(2) ロピタルの定理 (i) と定理 5.12 より lim3x2log(1+x2)=31(定理 3.37 (2))。
問題 5.5 ★★ f が [a,b] で可積分、f≥0、∫abf=0 ならば、f の連続点 x0 では f(x0)=0 であることを示せ。また、f が 0 でない点をもちうることを例で示せ。
解答
連続点 x0 で f(x0)>0 なら、∣x−x0∣<δ で f(x)>2f(x0) となる δ があり、[a,b] と (x0−δ,x0+δ) の共通部分を含む長さ ℓ>0 の閉区間 J がとれる。f≥0 と定理 5.10 より ∫abf≥∫Jf≥2f(x0)ℓ>0 となり矛盾。例:トマエ関数(例 5.9)は f≥0、∫f=0 だが有理数で正の値をとる。
問題 5.6 ★★ 次の広義積分の収束・発散を判定し、収束するものは値を求めよ。
(1) ∫01logx dx (2) ∫0∞x2e−xdx (3) ∫2∞x(logx)pdx(p∈R) (4) ∫01x(1−x)dx
解答
(1) ∫ε1logx dx=[xlogx−x]ε1=−1−εlogε+ε→−1(例 4.17 (2))。値は −1。
(2) Γ(3)=2!=2。
(3) u=logx と置換すると ∫log2logcupdu なので、例 5.20 (2) より p>1 で収束(値 p−1(log2)1−p)、p≤1 で発散。
(4) B(21,21)=2∫0π/2dθ=π(定理 5.24 (2))。
問題 5.7 ★ ベータ関数を用いて ∫01x3(1−x)4dx と ∫0π/2sin5θcos3θ dθ を求めよ。
解答
∫01x3(1−x)4dx=B(4,5)=8!3! 4!=40320144=2801。∫0π/2sin5θcos3θ dθ=21B(3,2)=21⋅4!2! 1!=241。(検算:u=sinθ とすると ∫01u5(1−u2)du=61−81=241。)
問題 5.8 ★★ ∑n≥2n(logn)p1 が収束する p の範囲を求めよ。また ∑n≥3nlognloglogn1 の収束・発散を判定せよ。
解答
f(x)=x(logx)p1 は p≥0 なら x≥2 で単調減少。積分判定法と問題 5.6 (3) より、p>1 で収束、0≤p≤1 で発散。p<0 なら項は n1 以上(n≥3)なので発散。よって p>1 のときに限り収束。第 2 の級数は ∫3cxlogxloglogxdx=logloglogc−logloglog3→∞ なので発散する。
問題 5.9 ★★ f が [0,1] で連続ならば、limn→∞n∫01xnf(x) dx=f(1) であることを示せ。
解答
n∫01xndx=n+1n→1 なので、n∫01xn(f(x)−f(1))dx→0 を示せばよい。∣f∣≤M とし、ε>0 に対して 1−δ≤x≤1 で ∣f(x)−f(1)∣<ε となる δ∈(0,1) をとる。
n∫01xn(f(x)−f(1))dx≤2Mn∫01−δxndx+εn∫1−δ1xndx≤2M(1−δ)n+1+ε
第 1 項は n→∞ で 0 に収束するので、十分大きな n で全体は 2ε 未満。
問題 5.10 ★★★(ガウス積分)G=∫0∞e−x2dx が収束することを示し、G=2π を示せ。(ヒント:(1−x2)n≤e−nx2≤(1+x2)n1 とウォリス積分。)これから Γ(21)=π を導け。
解答
収束:x≥1 で e−x2≤e−x。不等式:1−u≤e−u と eu≥1+u(例 4.15)に u=x2 を代入し n 乗する(左は 0≤x≤1 で使う)。∫0∞e−nx2dx=nG(x=y/n)なので
∫01(1−x2)ndx≤∫01e−nx2dx≤nG≤∫0∞(1+x2)ndx
左端は x=cosθ で I2n+1、右端は x=tanθ で ∫0π/2cos2n−2θ dθ=I2n−2(cos の積分は θ↦2π−θ で sin の積分に等しい)。よって nI2n+1≤G≤nI2n−2。命題 5.25 の mIm→π/2 より
nI2n+1=2n+1n2n+1I2n+1→212π=2π
同様に nI2n−2→2π。はさみうちにより G=2π。最後に x=y2 と置換すると Γ(21)=∫0∞x−1/2e−xdx=2∫0∞e−y2dy=π。