この章の目標
- 各点収束と一様収束の違いを理解し、一様収束のもとで極限と連続性・積分・微分が交換できることを証明できる
- ワイエルシュトラスの M 判定法とディニの定理を使える
- べき級数の収束半径をコーシー–アダマールの公式で求め、項別微分・項別積分ができる
- 指数関数・三角関数をべき級数で定義し、加法定理を証明し、円周率 π を定義できる
- アーベルの定理、ワイエルシュトラスの多項式近似定理、至る所微分不可能な連続関数の存在を証明できる
前提:第2章〜第5章
6.1 各点収束と一様収束
解析学では「極限の順序交換」がいたるところに現れる。例えば、連続関数の列 fn が f に収束するとき、
x→alimn→∞limfn(x)=?n→∞limx→alimfn(x),∫abn→∞limfn=?n→∞lim∫abfn
は成り立つだろうか。高校ではこのような問いを意識せずに計算してきたが、一般には成り立たない。本章では、交換を保証する十分条件として一様収束を導入する。
定義 6.1(各点収束・一様収束)D⊂R 上の関数列 (fn) と関数 f について:
- 各 x∈D で fn(x)→f(x) となるとき、(fn) は f に各点収束する (converge pointwise) という。すなわち ∀x∈D, ∀ε>0, ∃N, ∀n≥N, ∣fn(x)−f(x)∣<ε。
- ∀ε>0, ∃N, ∀n≥N, ∀x∈D, ∣fn(x)−f(x)∣<ε が成り立つとき、(fn) は f に D 上一様収束する (converge uniformly) という。
違いは量化子の順序だけである。各点収束では N が x に依存してよいが、一様収束では N を x によらずに選べなければならない。∥g∥∞=supx∈D∣g(x)∣(一様ノルム, sup norm)とおくと、一様収束は ∥fn−f∥∞→0 と同値である。
例 6.2 fn(x)=xn は [0,1] 上で
f(x)={01(0≤x<1)(x=1)
に各点収束するが、一様収束しない。実際 sup0≤x<1∣xn−0∣=1 なので ∥fn−f∥∞=1。一方、0<a<1 なら [0,a] 上では ∥fn−f∥∞=an→0 で一様収束する。各 fn は連続なのに、極限 f は x=1 で不連続である。
命題 6.3(一様収束のコーシーの判定法)(fn) が D 上のある関数に一様収束するための必要十分条件は、∀ε>0, ∃N, ∀m,n≥N, ∥fm−fn∥∞<ε となることである。
証明. 必要性は三角不等式から。十分性:各 x で (fn(x)) はコーシー列なので収束し、その極限を f(x) とする。ε>0 に対する N をとり、n≥N、x∈D を固定して ∣fm(x)−fn(x)∣<ε で m→∞ とすると ∣f(x)−fn(x)∣≤ε。これが x によらないので一様収束する。□
6.2 一様収束と極限の交換
定理 6.4(一様収束と連続性)D 上の連続関数の列 (fn) が f に一様収束するならば、f は連続である。
証明. a∈D、ε>0 とする。∥fN−f∥∞<3ε となる N を一つ固定し、fN の a での連続性から ∣x−a∣<δ⇒∣fN(x)−fN(a)∣<3ε となる δ をとる。∣x−a∣<δ なら
∣f(x)−f(a)∣≤∣f(x)−fN(x)∣+∣fN(x)−fN(a)∣+∣fN(a)−f(a)∣<ε
である(ε/3 論法)。□
例 6.2 は、この定理の対偶として「xn は [0,1] 上一様収束しない」ことの別証明を与える。逆に、極限が連続でも一様収束するとは限らない:fn(x)=1+n2x2nx は [0,1] 上 0 に各点収束するが、fn(n1)=21 なので一様収束しない。
定理 6.5(一様収束と積分)[a,b] 上の可積分関数の列 (fn) が f に一様収束するならば、f は可積分で
n→∞lim∫abfn(x)dx=∫abf(x)dx
さらに ∫axfn→∫axf は x∈[a,b] について一様である。
証明. ε>0 に対し ∥fn−f∥∞<ε となる n をとると、f は有界であり、各小区間で supf−inff≤supfn−inffn+2ε なので U(f,P)−L(f,P)≤U(fn,P)−L(fn,P)+2ε(b−a)。fn の可積分性から右辺を ε(1+2(b−a)) 未満にできるので、f は可積分である。また ∫axfn−∫axf≤(b−a)∥fn−f∥∞→0。□
例 6.6(各点収束では積分と交換できない)fn(x)=nx(1−x2)n は [0,1] 上 0 に各点収束する(0<x≤1 で n(1−x2)n→0)。しかし
∫01fn(x)dx=n[−2(n+1)(1−x2)n+1]01=2(n+1)n→21=0=∫01n→∞limfn
定理 6.7(一様収束と微分)[a,b] 上の C1 級関数の列 (fn) について、(fn′) が g に一様収束し、ある x0∈[a,b] で (fn(x0)) が収束するならば、(fn) はある関数 f に一様収束し、f は C1 級で f′=g である。
証明. c=limfn(x0) とし、f(x)=c+∫x0xg(t) dt とおく。g は連続関数の一様極限なので連続(定理 6.4)であり、微分積分学の基本定理より f は C1 級で f′=g。また fn(x)=fn(x0)+∫x0xfn′ なので
∣fn(x)−f(x)∣≤∣fn(x0)−c∣+(b−a)∥fn′−g∥∞→0
は x について一様である。□
導関数の一様収束の仮定は外せない。fn(x)=nsinnx は 0 に一様収束するが、fn′(x)=ncosnx は収束しない。また fn(x)=x2+n1 は C∞ 級で ∣x∣ に一様収束する(0≤fn(x)−∣x∣≤n1)が、極限は 0 で微分できない。
6.3 関数項級数と M 判定法
関数の列 (fn) に対し、部分和 SN=∑n=1Nfn が(各点・一様に)収束するとき、関数項級数 ∑fn は(各点・一様に)収束するという。定理 6.4、6.5、6.7 を部分和に適用すれば、一様収束する級数は項別に連続性を保ち、項別に積分でき、導関数の級数が一様収束すれば項別に微分できる。一様収束を示す最も簡単な方法が次の判定法である。
定理 6.8(ワイエルシュトラスの M 判定法, Weierstrass M-test)D 上の関数列 (fn) について、すべての x∈D で ∣fn(x)∣≤Mn となる定数 Mn があり、∑Mn<∞ ならば、∑fn は D 上で絶対かつ一様に収束する。
証明. m>n なら ∑k=n+1mfk(x)≤∑k=n+1mMk であり、右辺は x によらず n→∞ で 0 に近づく(定理 2.31)。命題 6.3 より一様収束する。□
例 6.9 ∑n=1∞n2sinnx は n2sinnx≤n21 より R 上一様収束し、その和は連続関数である。一方 ∑nsinnx は M 判定法では扱えない(各点収束はするが、x=0 の近くで一様収束しない。フーリエ級数の話題である:08-differential-equations 第6章)。
単調性があれば、各点収束から一様収束が従う。
定理 6.10(ディニの定理, Dini's theorem)[a,b] 上の連続関数の列 (fn) が連続関数 f に各点収束し、各 x で (fn(x)) が n について単調(増加または減少)ならば、収束は一様である。
証明. gn=∣fn−f∣ とおくと、gn は連続で、各 x で (fn(x)) が f(x) に単調に近づくことから gn(x)↓0(単調減少して 0 に収束)。一様収束しないとすると、ある ε>0 と xn∈[a,b] があって gn(xn)≥ε(無限個の n について。その部分列で考えてよい)。ボルツァノ–ワイエルシュトラスの定理より xnk→c∈[a,b] としてよい。m を固定すると、nk≥m なら単調性より gm(xnk)≥gnk(xnk)≥ε で、k→∞ として gm(c)≥ε(gm の連続性)。これがすべての m で成り立ち、gm(c)→0 に反する。□
定義域がコンパクト(有界閉区間)であること、極限が連続であることはどちらも必要である(例 6.2 と、[0,1) 上の xn)。
6.4 べき級数と収束半径
∑n=0∞an(x−c)n の形の関数項級数をべき級数 (power series) という。以下 c=0 とする(平行移動すればよい)。
補題 6.11(アーベルの補題)∑anx0n が収束する(あるいは (anx0n) が有界である)ならば、∣x∣<∣x0∣ を満たす任意の x で ∑anxn は絶対収束する。さらに 0<r<∣x0∣ なら [−r,r] 上で一様収束する。
証明. ∣anx0n∣≤M とすると、∣x∣≤r で ∣anxn∣≤M(∣x0∣r)n であり、右辺の等比級数は収束する。M 判定法による。□
したがって、べき級数の収束する点の集合は 0 を中心とする「区間」になる。
定義 6.12(収束半径, radius of convergence)R=sup{∣x∣∣∑anxn が収束する}∈[0,∞] をべき級数 ∑anxn の収束半径という。
定理 6.13(コーシー–アダマールの公式, Cauchy–Hadamard formula)べき級数 ∑anxn の収束半径 R は
R1=n→∞limsup∣an∣1/n
で与えられる(右辺が 0 なら R=∞、∞ なら R=0)。∣x∣<R で絶対収束、∣x∣>R で発散し、0≤r<R なら [−r,r] 上で一様収束する。また anan+1→ρ ならば R=ρ1。
証明. ρ=limsup∣an∣1/n とおく。limsup∣anxn∣1/n=ρ∣x∣ なので、根判定法(定理 2.38)より ρ∣x∣<1 なら絶対収束、ρ∣x∣>1 なら項が 0 に収束せず発散する。よって R=ρ1。一様収束は、r<R なら ∑∣an∣rn<∞ なので M 判定法(Mn=∣an∣rn)による。最後の主張は命題 2.39 から従う。□
∣x∣=R での挙動は級数ごとに異なる。
例 6.14 (1) ∑xn:R=1。x=±1 でともに発散。
(2) ∑nxn:R=1。x=1 で発散(調和級数)、x=−1 で収束(ライプニッツ)。
(3) ∑n2xn:R=1。x=±1 でともに絶対収束。
(4) ∑n! xn:R=0。∑n!xn:R=∞。
6.5 項別微分と項別積分
定理 6.15(項別微分・項別積分)f(x)=∑n=0∞anxn の収束半径を R>0 とする。
- ∑n=1∞nanxn−1 と ∑n=0∞n+1anxn+1 の収束半径も R である。
- f は (−R,R) で微分可能で f′(x)=∑n=1∞nanxn−1。したがって f は C∞ 級で、an=n!f(n)(0)。
- ∣x∣<R で ∫0xf(t) dt=∑n=0∞n+1anxn+1。
証明. (1) n1/n→1(例 2.7)なので、任意の ε>0 に対し十分大きな n で ∣an∣1/n≤∣nan∣1/n≤(1+ε)∣an∣1/n。上極限をとると limsup∣nan∣1/n=limsup∣an∣1/n。∑nanxn−1 と ∑nanxn は x=0 で収束・発散をともにするので、収束半径は R。項別積分の級数についても同様((n+1)1/n→1)。
(2) 0<r<R とすると、[−r,r] 上で部分和の導関数 ∑n=1Nnanxn−1 は一様収束する(定理 6.13)。定理 6.7 より f は (−r,r) で微分可能で導関数は項別微分に等しい。r は任意なので (−R,R) で成り立つ。これを繰り返せば f(k)(x)=∑n≥kn(n−1)⋯(n−k+1)anxn−k で、x=0 とすると f(k)(0)=k! ak。
(3) [−r,r] 上の一様収束と定理 6.5。□
(2) より、べき級数の係数は関数から一意に決まる:0 の近くで ∑anxn=∑bnxn ならすべての n で an=bn。また、べき級数で表される関数はそのテイラー級数に等しい。
例 6.16 (1) ∣x∣<1 で 1−x1=∑xn を項別微分して (1−x)21=∑n=0∞(n+1)xn。
(2) 1+t1=∑(−1)ntn(∣t∣<1)を 0 から x まで項別積分して、∣x∣<1 で log(1+x)=∑n=1∞n(−1)n−1xn。第5章の例 5.18 の別証明である。
6.6 アーベルの定理
収束半径の端点 x=R で級数が収束するとき、和は端点で連続だろうか。答えは肯定的である。
定理 6.17(アーベルの定理, Abel's theorem)∑n=0∞an が収束するならば、∑anxn は [0,1] 上で一様収束し、
x→1−0limn=0∑∞anxn=n=0∑∞an
証明. rk=∑i>kai とおく(rk→0)。x∈[0,1]、m>n に対し、アーベルの総和公式(問題 2.10)を bk=xk に使うと
k=n+1∑makxk=rnxn+1−rmxm+k=n+1∑m−1rk(xk+1−xk)
ε>0 に対し、k≥N で ∣rk∣<ε となる N をとる。n≥N なら、xk−xk+1≥0 に注意して
k=n+1∑makxk≤ε(xn+1+xm+k=n+1∑m−1(xk−xk+1))=2εxn+1≤2ε
これは x∈[0,1] によらないので、命題 6.3 より一様収束する。各項 anxn は連続なので、和は [0,1] 上連続(定理 6.4)であり、x→1−0 の極限は x=1 での値 ∑an に等しい。□
例 6.18 例 6.16 (2) の級数は x=1 で収束する(ライプニッツ)ので、アーベルの定理と log の連続性より ∑n=1∞n(−1)n−1=limx→1−0log(1+x)=log2。
注意
アーベルの定理の逆は成り立たない。∑n=0∞(−1)nxn=1+x1→21(x→1−0)だが、∑(−1)n は発散する。逆向きの結論を得るには係数に追加の条件が必要である(タウバー型定理)。
6.7 指数関数と三角関数
第3章では ex を有理数乗の上限として定義し、三角関数は例の中でだけ高校の知識を借りて使ってきた。ここでべき級数によって指数関数と三角関数を定義し直し、それらの性質をすべて証明する。
定義 6.19 任意の実数 x に対して
expx=n=0∑∞n!xn,sinx=n=0∑∞(2n+1)!(−1)nx2n+1,cosx=n=0∑∞(2n)!(−1)nx2n
と定める(比判定法により、いずれも収束半径は ∞)。
定理 6.20 (1) exp′=exp、sin′=cos、cos′=−sin。sin は奇関数、cos は偶関数で、sin0=0、cos0=1。
(2) exp(x+y)=expxexpy。expx>0 であり、expx=ex(第3章の定義)がすべての実数 x で成り立つ。
(3) sin2x+cos2x=1。
(4)(加法定理)sin(x+y)=sinxcosy+cosxsiny、cos(x+y)=cosxcosy−sinxsiny。
証明. (1) 定理 6.15 で項別微分すればよい。奇偶性は級数の形から明らか。
(2) 加法公式は例 2.53(メルテンスの定理)で示した。expx=exp(x/2)2≥0 かつ expxexp(−x)=exp0=1 なので expx>0。定理 2.24 より exp1=e。加法公式から expn=en(n∈Z)であり、exp(nm)n=expm=em と正の n 乗根の一意性から expr=er(r∈Q)。exp と x↦ex はともに連続なので、有理数列の極限をとればすべての実数で一致する。
(3) h=sin2+cos2 とおくと h′=2sincos−2cossin=0 なので、h は定数で h(0)=1。
(4) y を固定し、f(x)=sin(x+y)−sinxcosy−cosxsiny、g(x)=cos(x+y)−cosxcosy+sinxsiny とおく。(1) より f′=g、g′=−f なので (f2+g2)′=2fg−2gf=0。f(0)=g(0)=0 より f2+g2≡0、すなわち f=g=0。□
(2) により、べき級数による定義と第3章の定義は一致する。また (1) から limx→0xsinx=sin′(0)=cos0=1 が従う。高校ではこの極限を円の面積の比較から「示した」が、そこでは面積や弧長の概念が前提になっていた。
次に円周率を定義する。
定理 6.21(円周率の定義)cos は区間 [0,2] で狭義単調減少で、(0,2) にただ一つの零点をもつ。その零点の 2 倍を π と定義する。このとき
- cos2π=0、sin2π=1、3<π<4。
- sin(x+2π)=cosx、cos(x+2π)=−sinx。特に sin、cos は周期 2π をもち、sinπ=0、cosπ=−1。
- sinx>0(0<x<π)であり、sin は [−2π,2π] で狭義単調増加である。
証明. まず 0<x≤2 で sinx>0 を示す。sinx=x−3!x3+5!x5−⋯ の項の絶対値 cn=(2n+1)!x2n+1 は cncn+1=(2n+2)(2n+3)x2≤64<1 を満たして単調減少なので、交代級数の評価(定理 2.44 の証明より、和は偶数番目の部分和以上)から sinx≥x−6x3=x(1−6x2)>0。よって cos′=−sin<0 で、cos は [0,2] で狭義単調減少。
cos2=1−(b1−b2+b3−⋯)、bn=(2n)!4n であり、b1=2、b2=32、bnbn+1=(2n+1)(2n+2)4<1(n≥1)なので、括弧内は b1−b2=34 以上。よって cos2≤−31<0。同様に cos23≥1−89+38481−46080729=460803231>0。中間値の定理と単調性より、cos は (23,2) にただ一つの零点をもち、それが (0,2) の唯一の零点である。よって 3<π<4。
(1) sin2π>0 と sin22π=1−cos22π=1 より sin2π=1。
(2) 加法定理に y=2π を代入すればよい。2 回使うと sin(x+π)=−sinx、cos(x+π)=−cosx、4 回使うと周期 2π を得る。
(3) (0,2π] では上で示した。2π≤x<π なら sinx=cos(x−2π)>0(0≤x−2π<2π で cos>0)。(−2π,2π) で sin′=cos>0(cos は偶関数)なので狭義単調増加。□
これで、第3章〜第5章の例で借りていた三角関数の性質(導関数、xsinx→1、arcsin、arctan の存在と微分、ウォリス積分など)がすべて正当化された。単位円周の長さが 2π であることは、第10章で曲線の長さを定義してから確かめる(t↦(cost,sint) の速さは sin2t+cos2t=1)。
補足
複素数 z に対しても expz=∑n!zn は絶対収束し、定義 6.19 の級数を比べるとオイラーの公式 exp(ix)=cosx+isinx が得られる。指数関数・三角関数の本来の姿は複素数の世界で見えてくる(05-complex-analysis 第1章)。
6.8 ワイエルシュトラスの多項式近似定理
多項式は最も扱いやすい関数である。任意の連続関数が多項式で一様に近似できることを示そう。べき級数と違い、近似する多項式の係数は n ごとに変わってよい(連続関数はテイラー級数で表せるとは限らないので、これは本質的である)。
定理 6.22(ワイエルシュトラスの近似定理, Weierstrass approximation theorem)[a,b] 上の任意の連続関数 f と任意の ε>0 に対して、∥f−p∥∞<ε となる多項式 p が存在する。
x=a+(b−a)t と変数変換すれば、[0,1] の場合に帰着する。[0,1] 上の f に対して、ベルンシュタイン多項式 (Bernstein polynomial)
Bnf(x)=k=0∑nf(nk)pn,k(x),pn,k(x)=(kn)xk(1−x)n−k
を考える。pn,k(x) は「確率 x で表が出るコインを n 回投げて表が k 回出る確率」であり、Bnf(x) は f(表の割合) の期待値である。大数の法則(11-probability 第2章)により表の割合は x に集中するので、Bnf(x) は f(x) に近いはずである。
補題 6.23 x∈[0,1] について
k=0∑npn,k(x)=1,k=0∑nkpn,k(x)=nx,k=0∑n(k−nx)2pn,k(x)=nx(1−x)
証明. 二項定理 (s+y)n=∑k(kn)skyn−k を s で 1 回・2 回微分すると
n(s+y)n−1=k∑k(kn)sk−1yn−k,n(n−1)(s+y)n−2=k∑k(k−1)(kn)sk−2yn−k
s=x、y=1−x とし、それぞれ x、x2 を掛けると ∑pn,k=1、∑kpn,k=nx、∑k(k−1)pn,k=n(n−1)x2。よって
∑(k−nx)2pn,k=(n(n−1)x2+nx)−2nx⋅nx+n2x2=nx(1−x)
である。□
定理 6.22 の証明. ∣f∣≤M とする。ε>0 に対し、一様連続性(定理 3.25)から ∣s−t∣<δ⇒∣f(s)−f(t)∣<ε となる δ をとる。x∈[0,1] を固定すると、補題 6.23 の第 1 式より
∣Bnf(x)−f(x)∣≤k=0∑nf(nk)−f(x)pn,k(x)
右辺の和を nk−x<δ の部分と ≥δ の部分に分ける。前者は ε∑pn,k≤ε 以下。後者では n2δ2(k−nx)2≥1 なので、補題 6.23 の第 3 式より
∣k/n−x∣≥δ∑2Mpn,k(x)≤n2δ22Mk=0∑n(k−nx)2pn,k(x)=nδ22Mx(1−x)≤2nδ2M
よって ∥Bnf−f∥∞≤ε+2nδ2M であり、n>2δ2εM なら 2ε 未満になる。□
この定理は、多項式の代わりに一般の「関数の代数」を考えたストーン–ワイエルシュトラスの定理(03-topology 第7章)に一般化され、関数解析(10-functional-analysis)でも基本的な役割を果たす。
6.9 至る所微分不可能な連続関数
第4章で見たように、微分可能なら連続だが、逆は成り立たない(∣x∣)。では、連続関数は「ほとんどの点で」微分可能なのだろうか。19 世紀半ばまでは多くの数学者がそう信じていたが、ワイエルシュトラスはどの点でも微分可能でない連続関数を構成した。ここでは構成が簡単な高木関数を扱う。
φ(x) を x から最も近い整数までの距離とする。φ は周期 1 の連続関数で、0≤φ≤21 であり、各区間 [2j,2j+1](j∈Z)上では傾き ±1 の一次関数である(ギザギザの三角波)。
定理 6.24(高木関数, Takagi function)T(x)=∑n=0∞2nφ(2nx) は R 上の連続関数であり、どの点でも微分可能でない。
証明. 2nφ(2nx)≤2n+11 なので、M 判定法と定理 6.4 より T は連続である。
x を固定する。各 n∈N について、un=2nk≤x<vn=2nk+1 となる整数 k をとる。傾き sn=vn−unT(vn)−T(un) を計算する。
- m≥n なら 2mun と 2mvn は整数なので φ(2mun)=φ(2mvn)=0。
- m<n なら、2mun と 2mvn は 2m−n の隣り合う倍数である。n−m≥1 より半整数 2j はすべて 2m−n の倍数なので、区間 [2mun,2mvn] の内部には半整数がなく、φ はこの区間上で傾き εm=±1 の一次関数である。したがって φ(2mvn)−φ(2mun)=εm2m(vn−un)。
よって
sn=m=0∑n−12m(vn−un)φ(2mvn)−φ(2mun)=m=0∑n−1εm
は ±1 を n 個足した整数であり、n と偶奇が一致する。したがって sn+1=sn、すなわち ∣sn+1−sn∣≥1 がすべての n で成り立ち、(sn) は収束しない。
一方、T が x で微分可能で T′(x)=L なら sn→L となることを示す(これで矛盾が得られる)。un=x なら sn=vn−xT(vn)−T(x)。un<x なら λn=vn−unvn−x∈(0,1) として
sn=λnvn−xT(vn)−T(x)+(1−λn)x−unT(x)−T(un)
どちらの場合も、vn−x→0、x−un→0 なので二つの差分商は L に近づき、∣sn−L∣ はそれらと L の差の最大値以下なので sn→L。□
補足
実は、ある意味で「ほとんどすべての」連続関数はどの点でも微分可能でない。これはベールのカテゴリー定理を使って示される(03-topology 第7章)。直観に反するが、滑らかな関数の方が例外なのである。
まとめ
- 各点収束と一様収束の違いは量化子の順序にある。一様収束は ∥fn−f∥∞→0 と同値で、コーシーの判定法をもつ。
- 一様収束のもとで、連続性は保たれ、積分と極限は交換できる。微分との交換には導関数の一様収束が必要である。xn、nx(1−x2)n、nsinnx が典型的な反例。
- 関数項級数の一様収束は M 判定法で示すのが基本。コンパクト区間上で単調に連続関数へ収束すれば一様収束する(ディニ)。
- べき級数の収束半径は R1=limsup∣an∣1/n で与えられ、収束円の内部で項別微分・項別積分できる。端点で収束すれば和は端点まで連続(アーベルの定理)。
- exp、sin、cos をべき級数で定義すると、微分公式・指数法則・加法定理はすべて証明でき、π は cos の最小の正の零点の 2 倍として定義される。
- 有界閉区間上の連続関数は多項式で一様近似できる(ベルンシュタイン多項式による証明)。
- 至る所微分不可能な連続関数が存在する(高木関数)。
演習問題
問題 6.1 ★ 次の関数列の各点収束極限を求め、一様収束するかどうかを判定せよ。
(1) fn(x)=1+nx2x(x∈R) (2) fn(x)=xn(1−x)(x∈[0,1]) (3) fn(x)=1+nxnx(x∈[0,1])
解答
(1) 極限は 0。∣fn(x)∣ は ∣x∣=n1 で最大値 2n1 をとる(1+nx2≥2n∣x∣ より ∣fn∣≤2n1)ので、一様収束する。
(2) 極限は 0。(xn(1−x))′=xn−1(n−(n+1)x) より最大値は x=n+1n で (n+1n)nn+11≤n+11→0。一様収束する。
(3) x=0 で 0、0<x≤1 で 1 に収束する。極限が不連続なので、定理 6.4 より一様収束しない。
問題 6.2 ★ 次のべき級数の収束半径を求めよ。
(1) ∑n2xn (2) ∑2nnxn (3) ∑nnn!xn (4) ∑xn2 (5) ∑(1+n1)n2xn
解答
(1) (n2)1/n→1 より R=1。(2) (2nn1)1/n→21 より R=2。(3) 問題 2.8 より (nnn!)1/n→e1 なので R=e。(4) 係数は n が平方数なら 1、それ以外は 0 なので limsup∣an∣1/n=1、R=1。(5) an1/n=(1+n1)n→e より R=e1。
問題 6.3 ★ ∣x∣<1 で ∑n=1∞nxn=(1−x)2x、∑n=1∞n2xn=(1−x)3x(1+x) を示し、∑n=1∞2nn2 を求めよ。
解答
例 6.16 (1) に x を掛けて ∑nxn=(1−x)2x。これを項別微分して x を掛けると ∑n2xn=xdxd(1−x)2x=x⋅(1−x)3(1−x)+2x=(1−x)3x(1+x)。x=21 で 8121⋅23=6。
問題 6.4 ★ F(x)=∑n=1∞n3sinnx は R 上 C1 級で、F′(x)=∑n=1∞n2cosnx であることを示せ。
解答
各項は C1 級で、導関数の級数 ∑n2cosnx は M 判定法(Mn=n21)により一様収束する。x=0 で F の級数は収束する(値 0)。任意の有界閉区間で定理 6.7 を部分和に適用すればよい。
問題 6.5 ★★(二項級数)α∈R とし、(nα)=n!α(α−1)⋯(α−n+1) とおく。∣x∣<1 で (1+x)α=∑n=0∞(nα)xn を示せ。
解答
α∈Z≥0 なら有限和で二項定理そのもの。そうでなければ (n+1α)/(nα)=n+1∣α−n∣→1 なので R=1。f(x)=∑(nα)xn とおくと、項別微分と (n+1)(n+1α)=(α−n)(nα) より、(1+x)f′(x) の xn の係数は (n+1)(n+1α)+n(nα)=α(nα)、すなわち (1+x)f′=αf。すると
dxd(f(x)(1+x)−α)=(1+x)−α−1((1+x)f′(x)−αf(x))=0
なので f(x)(1+x)−α=f(0)=1。
問題 6.6 ★★ べき級数による定義と定理 6.20、6.21 だけを用いて、sin6π=21、cos4π=sin4π=21 を示せ。
解答
加法定理より sin3θ=3sinθ−4sin3θ(sin2θ=2sinθcosθ、cos2θ=1−2sin2θ を使う)。θ=6π、s=sin6π とすると 1=3s−4s3、すなわち (s+1)(2s−1)2=0。定理 6.21 (3) より s>0 なので s=21。また 0=cos2π=cos24π−sin24π と cos2+sin2=1 より cos24π=sin24π=21。sin4π>0、cos4π=sin(4π+2π)>0 なので、ともに 21。
問題 6.7 ★★ ∣x∣<1 で arctanx=∑n=0∞2n+1(−1)nx2n+1 を示し、ライプニッツの公式 4π=1−31+51−71+⋯ を導け。
解答
(arctant)′=1+t21=∑(−1)nt2n(∣t∣<1)を 0 から x まで項別積分すればよい(arctan0=0)。x=1 で右辺はライプニッツの判定法により収束するので、アーベルの定理と arctan の連続性より和は arctan1。問題 6.6 より tan4π=1 なので arctan1=4π。
問題 6.8 ★★ ∑an、∑bn とそのコーシー積 ∑cn がすべて収束するならば、∑cn=(∑an)(∑bn) であることを示せ(例 2.52 と比較せよ)。
解答
アーベルの補題より、∑anxn、∑bnxn、∑cnxn は ∣x∣<1 で絶対収束する。絶対収束する級数どうしのコーシー積なので、メルテンスの定理より 0≤x<1 で ∑cnxn=(∑anxn)(∑bnxn)(xn の係数が cn になる)。x→1−0 とすると、アーベルの定理より左辺は ∑cn、右辺は (∑an)(∑bn) に収束する。
問題 6.9 ★★ f が [0,1] で連続で、すべての n∈Z≥0 について ∫01xnf(x) dx=0 ならば、f=0 であることを示せ。
解答
仮定からすべての多項式 p について ∫01pf=0。定理 6.22 より ∥pk−f∥∞→0 となる多項式 pk をとると、pkf→f2 は一様収束なので(∥pkf−f2∥∞≤∥pk−f∥∞∥f∥∞)、定理 6.5 より ∫01f2=lim∫01pkf=0。f2≥0 は連続なので、問題 5.5 より f2=0。
問題 6.10 ★★★ p0(x)=0、pn+1(x)=pn(x)+21(x−pn(x)2) で多項式の列を定める。[0,1] 上で pn は x に一様収束することを示せ。これから、[−1,1] 上で ∣t∣ は多項式で一様近似できることを(ワイエルシュトラスの定理を使わずに)導け。
解答
0≤pn(x)≤x を帰納法で示す。n=0 は明らか。成り立つとすると
x−pn+1(x)=(x−pn(x))(1−2x+pn(x))
で、0≤2x+pn(x)≤x≤1 より右辺は 0 以上。また pn+1−pn=21(x−pn2)≥0 なので (pn(x)) は単調増加。よって各 x で極限 L(x)≤x があり、漸化式で極限をとると L=L+21(x−L2)、L≥0 より L(x)=x。pn も x も [0,1] で連続なので、ディニの定理により一様収束する。最後に ∣t∣=t2 なので、qn(t)=pn(t2) は [−1,1] 上で ∣t∣ に一様収束する多項式である。