この章の目標
- ヤング・ヘルダー・ミンコフスキーの不等式を証明できる
- Lp 空間を定義し、その完備性(リース–フィッシャーの定理)と稠密な部分空間を扱える
- 概収束・測度収束・Lp 収束の関係を証明し、反例を挙げられる
- エゴロフの定理・ルジンの定理・ヴィタリの収束定理を使える
前提:第3章、03-topology 第7章(完備距離空間)
第1章の命題 1.3 で、リーマン可積分関数の空間は距離 ∫∣f−g∣ について完備でないことを見た。この章では、ルベーグ積分に基づく関数空間 Lp が完備であることを示す。Lp は関数解析(10-functional-analysis 第1章)の最も基本的な例である。以下 (X,M,μ) は測度空間、関数は複素数値(実数値でもよい)とする。
4.1 ヘルダーとミンコフスキーの不等式
補題 4.1(ヤングの不等式, Young's inequality)1<p<∞、p1+q1=1 とする。a,b≥0 に対して ab≤pap+qbq であり、等号は ap=bq のときに限る。
証明. ab=0 なら明らか(等号は a=b=0 のとき)。a,b>0 なら、log の狭義凹性より log(pap+qbq)≥p1logap+q1logbq=log(ab) で、等号は ap=bq のときに限る。□
定義 4.2 1≤p<∞ と可測関数 f に対し ∥f∥p=(∫∣f∣p dμ)1/p とおく。p1+q1=1 を満たす q(p=1 なら q=∞、p=∞ なら q=1)を p の共役指数 (conjugate exponent) という。
定理 4.3(ヘルダーの不等式, Hölder's inequality)1<p<∞、q を共役指数とする。可測関数 f,g について ∥fg∥1≤∥f∥p∥g∥q。
証明. 右辺が 0 なら f または g が a.e. で 0 なので左辺も 0。右辺が ∞ なら自明。そうでなければ F=∣f∣/∥f∥p、G=∣g∣/∥g∥q とおき、ヤングの不等式 FG≤pFp+qGq を積分すると ∫FG≤p1+q1=1。□
p=q=2 の場合がコーシー–シュワルツの不等式である。
定理 4.4(ミンコフスキーの不等式, Minkowski's inequality)1≤p<∞ のとき ∥f+g∥p≤∥f∥p+∥g∥p。
証明. p=1 は ∣f+g∣≤∣f∣+∣g∣ を積分すればよい。p>1 とし、右辺は有限とする。∣f+g∣p≤(2max{∣f∣,∣g∣})p≤2p(∣f∣p+∣g∣p) より ∥f+g∥p<∞。(p−1)q=p に注意してヘルダーの不等式を使うと
∫∣f+g∣p≤∫∣f∣∣f+g∣p−1+∫∣g∣∣f+g∣p−1≤(∥f∥p+∥g∥p)∥f+g∥pp/q
p−p/q=1 だから、∥f+g∥p>0 のとき両辺を ∥f+g∥pp/q で割ればよい。□
4.2 Lp 空間と完備性
∥f∥p=0 は f=0(a.e.)を意味するだけなので、∥⋅∥p はノルムではなく半ノルムである。そこで a.e. で等しい関数を同一視する。
定義 4.5(Lp 空間)1≤p<∞ とする。∥f∥p<∞ となる可測関数全体を Lp(μ) とし、a.e. で等しいという同値関係で割った商空間を Lp(μ) と書く。Lp(μ) は ∥⋅∥p をノルムとしてノルム空間になる(ミンコフスキーの不等式が三角不等式)。X⊂Rn でルベーグ測度のときは Lp(X) と書く。
定義 4.6(L∞)可測関数 f の本質的上限 (essential supremum) を ∥f∥∞=inf{M≥0∣a.e. で ∣f∣≤M} と定め、∥f∥∞<∞ となる f の同値類全体を L∞(μ) とする。
各 k で a.e. に ∣f∣≤∥f∥∞+1/k だから、a.e. で ∣f∣≤∥f∥∞(下限は達成される)。したがって ∣fg∣≤∣f∣∥g∥∞(a.e.)であり、ヘルダーの不等式は (p,q)=(1,∞) でも成り立つ。三角不等式も同様である。
注意
Lp の元は関数ではなく関数の同値類なので、「f∈Lp の一点 x での値」には意味がない。ディリクレ関数は L∞[0,1] の元として 0 に等しく、∥D∥∞=0 である。一方「f は連続な代表元をもつ」「a.e. で f≥0」のような言明には意味がある。
例 4.7 (1) 数え上げ測度の場合、Lp(N) は ∑n∣an∣p<∞ となる数列全体 ℓp である。
(2) f(x)=∣x∣−a1{∣x∣<1} は、ap<1 のとき、かつそのときに限り Lp(R) に属する(∫01x−apdx<∞⇔ap<1)。
定理 4.8(リース–フィッシャーの定理, Riesz–Fischer theorem)1≤p≤∞ に対し Lp(μ) はバナッハ空間(完備なノルム空間)である。さらに 1≤p<∞ のとき、Lp で fn→f ならば、a.e. で f に収束する部分列が存在する。
証明. 1≤p<∞ とし、(fn) をコーシー列とする。∥fnk+1−fnk∥p<2−k となる部分列をとり、
G=∣fn1∣+k=1∑∞∣fnk+1−fnk∣
とおく。部分和 GK はミンコフスキーの不等式より ∥GK∥p≤∥fn1∥p+1 を満たし、GKp↑Gp に単調収束定理を使えば ∥G∥p≤∥fn1∥p+1<∞。よって a.e. で G<∞ となり、級数 fn1+∑k(fnk+1−fnk) は a.e. で絶対収束する。その部分和は fnK だから、f:=limKfnK が a.e. で存在する(残りの零集合では 0 とおく)。∣fnK∣≤G、∣f∣≤G より ∣fnK−f∣p≤2pGp(可積分)だから、優収束定理より ∥fnK−f∥p→0。コーシー列が収束部分列をもてば列自身も収束するので、fn→f。後半は、収束列はコーシー列であり、上の議論で得た部分列の a.e. 極限が Lp 極限と一致することからわかる。
p=∞ のとき、N=⋃m,n{∣fn−fm∣>∥fn−fm∥∞} は零集合で、N の外で (fn) は一様コーシー列だから一様収束する。その極限を f とすれば ∥fn−f∥∞≤supx∈/N∣fn(x)−f(x)∣→0。□
p=2 のとき ⟨f,g⟩=∫fg dμ は内積で、L2(μ) はヒルベルト空間になる(10-functional-analysis 第2章)。
4.3 包含関係
命題 4.9 μ(X)<∞、1≤p<r≤∞ ならば Lr(μ)⊂Lp(μ) で、∥f∥p≤μ(X)1/p−1/r∥f∥r。
証明. r<∞ のとき、∣f∣p⋅1 に指数 r/p とその共役指数 r/(r−p) でヘルダーの不等式を使うと ∫∣f∣p≤(∫∣f∣r)p/rμ(X)1−p/r。1/p 乗すればよい。r=∞ なら ∫∣f∣p≤∥f∥∞pμ(X)。□
例 4.10 無限測度では包含関係は成り立たない。R 上で ∣x∣−1/21{∣x∣<1}∈L1∖L2(局所的な特異性)、(1+∣x∣)−1∈L2∖L1(無限遠での減衰の遅さ)。数え上げ測度では逆向きの包含 ℓp⊂ℓr(p<r)が成り立つ。実際、∣an∣≤∥a∥p だから ∑n∣an∣r≤∥a∥pr−p∑n∣an∣p、すなわち ∥a∥r≤∥a∥p。
4.4 稠密性
定理 4.11 1≤p<∞ のとき、μ({s=0})<∞ となる単関数 s 全体は Lp(μ) で稠密である。単関数全体は L∞(μ) で稠密である。
証明. f∈Lp に対し、定理 3.7 の単関数列 sn(∣sn∣≤∣f∣、sn→f)をとる。∣sn−f∣p≤2p∣f∣p だから優収束定理より ∥sn−f∥p→0。sn=∑jaj1Aj(aj=0、標準形)なら ∣aj∣pμ(Aj)≤∫∣f∣p<∞。p=∞ では、定理 3.7 の近似が零集合を除いた有界集合 {∣f∣≤∥f∥∞} 上で一様収束することによる。□
定理 4.12 1≤p<∞ のとき、Cc(Rn) および階段関数(有界な半開直方体の定義関数の有限一次結合)全体は、それぞれ Lp(Rn) で稠密である。
証明. 定理 4.11 とミンコフスキーの不等式より、λ(E)<∞ となる 1E を近似すればよい。∥1E−1E∩B(0,R)∥pp=λ(E∖B(0,R))→0(R→∞、上からの連続性)だから、E⊂B(0,R) としてよい。ε>0 に対し、正則性(定理 2.11)からコンパクト集合 K と開集合 U で K⊂E⊂U⊂B(0,R)、λ(U∖K)<ε となるものをとる。
(Cc) φ(x)=d(x,Uc)+d(x,K)d(x,Uc) は連続で(分母は 0 にならない)、0≤φ≤1、K 上で 1、Uc 上で 0 であり、台は有界閉集合 U に含まれるから φ∈Cc(Rn)。∣1E−φ∣≤1U∖K より ∥1E−φ∥pp<ε。
(階段関数)二つの二進立方体は入れ子か交わらないかのどちらかなので、U に含まれる二進立方体のうち極大なものを集めれば、命題 1.14 より U は互いに交わらない二進立方体 Q1,Q2,… の和になる。∥1U−1Q1∪⋯∪QN∥pp=λ(⋃j>NQj)→0 で、∥1E−1U∥pp<ε。□
L∞ では成り立たない:連続関数 φ に対し常に ∥1[0,∞)−φ∥∞≥21 である(φ(0) の近くで考えよ)。第1章の命題 1.3 と合わせると、L1[0,1] は階段関数を含み、リーマン可積分関数の空間の完備化になっている。
系 4.13(平行移動の連続性)1≤p<∞、f∈Lp(Rn) とし、τhf(x)=f(x+h) とおく。h→0 のとき ∥τhf−f∥p→0。
証明. g∈Cc なら、∣h∣≤1 で τhg−g の台は固定された有界集合 B に含まれ、一様連続性から ∥τhg−g∥p≤sup∣τhg−g∣ λ(B)1/p→0。一般の f は、ルベーグ測度の平行移動不変性から ∥τhu∥p=∥u∥p なので ∥τhf−f∥p≤2∥f−g∥p+∥τhg−g∥p と評価し、定理 4.12 を使う。□
p=∞ では成り立たない(f=1[0,∞) なら h=0 で ∥τhf−f∥∞=1)。
例 4.14(リーマン–ルベーグの補題)f∈L1(R) ならば ∫Rf(x)e−iξx dx→0(∣ξ∣→∞)。f=1(a,b] なら積分は −iξe−iξb−e−iξa で絶対値は 2/∣ξ∣ 以下、したがって階段関数でも成り立つ。一般の f には、積分の差が ∥f−g∥1 以下であることと定理 4.12 を使う。「稠密な部分集合で示して、一様な評価で広げる」のは Lp 理論の定石である。
4.5 収束の諸概念
定義 4.15(測度収束, convergence in measure)可測関数列 fn が f に測度収束するとは、任意の ε>0 について μ({∣fn−f∣>ε})→0 となることをいう。
確率論では確率収束と呼ばれる。a.e. 収束(概収束)、測度収束、Lp 収束の関係は次のとおりである。
定理 4.16 可測関数(有限値)fn,f について次が成り立つ。
- 1≤p<∞ で ∥fn−f∥p→0 ならば、fn は f に測度収束する。
- μ(X)<∞ で fn→f(a.e.)ならば、fn は f に測度収束する。
- fn が f に測度収束すれば、a.e. で f に収束する部分列が存在する。
証明. 1. チェビシェフの不等式より μ({∣fn−f∣>ε})≤ε−p∥fn−f∥pp。
-
En={∣fn−f∣>ε} とおくと、limsupnEn の点では fn→f とならないので μ(limsupnEn)=0。有限測度だから問題 1.3 (2) より limsupnμ(En)≤μ(limsupnEn)=0。
-
n1<n2<⋯ を μ({∣fnk−f∣>2−k})<2−k ととる。ボレル–カンテリの補題より、a.e. の x は有限個の k を除いて ∣fnk(x)−f(x)∣≤2−k を満たすので、fnk(x)→f(x)。□
例 4.17(反例の一覧)第3章の四つの列(極限はいずれも 0)について、収束するものを ○、しないものを × で示す。
| 列 |
概収束 |
測度収束 |
L1 収束 |
| 逃げる質量 1[n,n+1](R) |
○ |
× |
× |
| 集中する山 n1(0,1/n)([0,1]) |
○ |
○ |
× |
| 広がる山 n11[0,n](R) |
○(一様) |
○ |
× |
| 動く山([0,1]) |
× |
○ |
○ |
逃げる質量は定理 4.16 の 2 で有限測度の仮定が必要なことを、動く山は 3 で「部分列」が必要なことを示す(動く山の部分列 1[0,2−k] は (0,1] で 0 に収束する)。広がる山は p>1 なら ∥n11[0,n]∥p=n1/p−1→0 で Lp 収束する。
4.6 エゴロフの定理とルジンの定理
リトルウッドは実解析の「三原理」として、(有限測度の)可測集合はほぼ区間の有限和、可測関数はほぼ連続、各点収束する列はほぼ一様収束する、と述べた。後の二つを正確にしたのが次の二定理である。
定理 4.18(エゴロフの定理, Egorov's theorem)μ(X)<∞ とし、有限値の可測関数列 fn が a.e. で有限値の可測関数 f に収束するとする。任意の ε>0 に対し、μ(E)<ε となる E∈M で、X∖E 上で fn→f が一様収束となるものが存在する。
証明. Ek,N=⋃n≥N{∣fn−f∣≥1/k} は N について減少し、⋂NEk,N の点では fn→f とならないから、μ(⋂NEk,N)=0。有限測度なので上からの連続性より μ(Ek,N)→0(N→∞)。Nk を μ(Ek,Nk)<ε2−k ととり E=⋃kEk,Nk とおくと μ(E)<ε で、X∖E 上では n≥Nk のとき ∣fn−f∣<1/k。□
有限測度の仮定は外せない:逃げる質量 1[n,n+1] が R∖E 上で一様に 0 に収束すれば、十分大きい n で [n,n+1]⊂E となり λ(E)=∞。また E を零集合にはできない:[0,1] 上の xn は a.e. で 0 に収束するが、零集合 N を除いても [0,1)∖N は 1 のいくらでも近くに点をもつので、一様収束しない。
定理 4.19(ルジンの定理, Lusin's theorem)f:Rn→R をルベーグ可測とする。任意の ε>0 に対し、閉集合 F で λ(Rn∖F)<ε かつ f∣F が連続となるものが存在する。さらに、g=f が F 上で成り立つ g∈C(Rn) が存在し、∣f∣≤M なら ∣g∣≤M ととれる。
証明. 有理数を端点とする開区間を I1,I2,… と並べ、Ej=f−1(Ij) とおく。正則性より、開集合 Uj と閉集合 Fj で Fj⊂Ej⊂Uj、λ(Uj∖Fj)<ε2−j となるものをとり、F=⋂j(Fj∪Ujc) とおく。F は閉集合で、Rn∖F⊂⋃j(Uj∖Fj) より λ(Rn∖F)<ε。
F∩Ej=F∩Uj である。実際、x∈F∩Ej なら x∈Uj。逆に x∈F∩Uj なら x∈Fj∪Ujc かつ x∈Uj より x∈Fj⊂Ej。よって (f∣F)−1(Ij)=F∩Uj は F の相対開集合である。R の開集合は Ij たちの和だから、f∣F は連続である。後半はティーツェの拡張定理(03-topology 第4章)による。□
注意
ルジンの定理は「制限 f∣F が連続」と言っているのであり、「f が F の点で連続」ではない。ディリクレ関数は至るところ不連続だが、R∖Q への制限は恒等的に 0 で連続であり、F として無理数からなる閉集合で補集合の測度が小さいものがとれる。
4.7 一様可積分性とヴィタリの収束定理
優収束定理は十分条件にすぎなかった(注意 3.20)。L1 収束の必要十分条件を与えるのが一様可積分性である。この節では μ(X)<∞ とする。
定義 4.20(一様可積分, uniformly integrable)可積分関数の族 {fn} が limM→∞supn∫{∣fn∣>M}∣fn∣ dμ=0 を満たすとき、一様可積分であるという。
命題 4.21 {fn} が一様可積分であることは、次の二条件と同値である。(a) supn∥fn∥1<∞。(b)(一様絶対連続性)任意の ε>0 に対し δ>0 があって、μ(E)<δ ならば supn∫E∣fn∣<ε。
証明. (⇒)∫E∣fn∣≤Mμ(E)+∫{∣fn∣>M}∣fn∣ で、M を第2項が ε/2 未満となるようにとれば、E=X として (a)、δ=ε/(2M) として (b) を得る。(⇐)チェビシェフの不等式より μ({∣fn∣>M})≤supk∥fk∥1/M で、これが δ 未満になるよう M を大きくとり (b) を使う。□
例 4.22 (1) 可積分な g で ∣fn∣≤g なら一様可積分である(∫{∣fn∣>M}∣fn∣≤∫{g>M}g→0)。(2) ある p>1 で supn∥fn∥p<∞ なら一様可積分である(∣fn∣>M 上で ∣fn∣≤M1−p∣fn∣p)。(3) 集中する山 n1(0,1/n) は L1 で有界だが、n>M で ∫{fn>M}fn=1 だから一様可積分でない。(4) 注意 3.20 の fn=n1(1/(n+1),1/n] は、n>M で ∫{fn>M}fn=n+11<M1 だから一様可積分だが、優関数をもたない。
定理 4.23(ヴィタリの収束定理, Vitali convergence theorem)μ(X)<∞ とする。fn∈L1(μ) が a.e. で可測関数 f に収束し、{fn} が一様可積分ならば、f∈L1(μ) かつ ∥fn−f∥1→0。逆に fn,f∈L1 で ∥fn−f∥1→0 ならば {fn} は一様可積分である。
証明. ファトゥの補題より ∫∣f∣≤liminfn∫∣fn∣<∞。ε>0 に対し、命題 4.21 (b) と問題 3.4 から、μ(E)<δ ならば supn∫E∣fn∣<ε かつ ∫E∣f∣<ε となる δ をとる。エゴロフの定理より μ(E)<δ で X∖E 上 fn→f が一様収束となる E をとれば
∫∣fn−f∣≤μ(X)X∖Esup∣fn−f∣+∫E∣fn∣+∫E∣f∣
の右辺第1項は 0 に収束し、残りは 2ε 未満である。逆は、(a) は明らかで、(b) は ∫E∣fn∣≤∫E∣f∣+∥fn−f∥1 と、有限個の関数 f1,…,fN,f に問題 3.4 を適用すればよい。□
無限測度では、一様可積分性に加えて「質量が無限遠へ逃げない」条件(緊密性 (tightness):任意の ε に対し μ(A)<∞ で supn∫X∖A∣fn∣<ε となる A がある)を課せば同じ結論が成り立つ(A 上で上の定理を使う)。逃げる質量 1[n,n+1] は定義 4.20 の条件を満たすが緊密でない。
まとめ
- ヤングの不等式からヘルダーの不等式、そこからミンコフスキーの不等式(三角不等式)が導かれる。
- a.e. で等しい関数を同一視して Lp 空間を作る。Lp は 1≤p≤∞ でバナッハ空間であり(リース–フィッシャー)、Lp 収束列は a.e. 収束する部分列をもつ。
- 有限測度なら p<r で Lr⊂Lp。無限測度では一般に包含関係はない。
- 1≤p<∞ で単関数・Cc・階段関数は稠密であり、平行移動は Lp で連続である。L∞ ではこれらは成り立たない。
- Lp 収束 ⇒ 測度収束 ⇒ 部分列の a.e. 収束。有限測度なら a.e. 収束 ⇒ 測度収束。逆向きは四つの典型例で否定される。
- エゴロフ(a.e. 収束はほぼ一様収束)とルジン(可測関数はほぼ連続)は有限測度・正則性に基づく。
- 有限測度では、a.e. 収束する列が L1 収束するための必要十分条件は一様可積分性である(ヴィタリ)。
演習問題
問題 4.1 ★ a,b>0、f(x)=x−a1(0,1)(x)+x−b1[1,∞)(x) とする。1≤p<∞ について、f∈Lp(0,∞) となる条件を求めよ。
解答
∫01x−apdx<∞⇔ap<1、∫1∞x−bpdx<∞⇔bp>1。よって条件は b1<p<a1。たとえば a<b なら、ちょうど p∈(1/b,1/a) のときに Lp に属する関数が作れる。
問題 4.2 ★★ μ(X)<∞、f∈L∞(μ) ならば limp→∞∥f∥p=∥f∥∞ を示せ。
解答
∥f∥p≤μ(X)1/p∥f∥∞ で μ(X)1/p→1(μ(X)>0 とする)だから limsupp∥f∥p≤∥f∥∞。0<t<∥f∥∞ に対し A={∣f∣>t} は μ(A)>0 を満たし、∥f∥p≥tμ(A)1/p→t。よって liminfp∥f∥p≥t で、t↑∥f∥∞ とすればよい。
問題 4.3 ★★ 1≤p<r<s≤∞、r1=pθ+s1−θ(0<θ<1)とする。∥f∥r≤∥f∥pθ∥f∥s1−θ を示せ。特に Lp∩Ls⊂Lr。
解答
s<∞ のとき、∣f∣r=∣f∣θr∣f∣(1−θ)r に指数 θrp、(1−θ)rs(逆数の和は pθr+s(1−θ)r=1)でヘルダーの不等式を使うと ∫∣f∣r≤∥f∥pθr∥f∥s(1−θ)r。s=∞ のときは θ=p/r で、∫∣f∣r≤∥f∥∞r−p∫∣f∣p。
問題 4.4 ★★ fn が f に測度収束し、可積分な g について ∣fn∣≤g(a.e.)ならば、∥fn−f∥1→0 を示せ(測度収束版の優収束定理)。
解答
結論が成り立たないとすると、ε>0 と部分列で ∥fnk−f∥1≥ε となるものがある。この部分列も f に測度収束するので、定理 4.16 の 3 よりさらに a.e. で f に収束する部分列がとれる。その部分列について ∣f∣≤g(a.e.)で、優収束定理より L1 収束するが、これは ∥fnk−f∥1≥ε に矛盾する。
問題 4.5 ★★ f∈L1(R) が一様連続ならば、∣x∣→∞ で f(x)→0 となることを示せ。一様連続性を連続性に弱めると成り立たない例を挙げよ。
解答
成り立たないとすると、ε>0 と ∣xk∣→∞ で ∣f(xk)∣≥ε となるものがあり、∣xk+1∣>∣xk∣+2 としてよい。一様連続性から 0<δ<1 を ∣x−y∣<δ⇒∣f(x)−f(y)∣<ε/2 ととると、互いに交わらない区間 (xk−δ,xk+δ) 上で ∣f∣>ε/2 なので ∫∣f∣≥∑kεδ=∞ となり矛盾。反例:各 k∈N に高さ 1、底辺 2−k の三角形の山を x=k を中心に置いた連続関数は、積分が ∑k2−k−1<∞ だが f(k)=1。
問題 4.6 ★★(シェフェの補題, Scheffé's lemma)fn,f≥0 が可積分で、a.e. で fn→f、かつ ∫fn→∫f ならば、∥fn−f∥1→0 を示せ。
解答
∣f−fn∣=2(f−fn)+−(f−fn) で、0≤(f−fn)+≤f、(f−fn)+→0(a.e.)だから、優収束定理より ∫(f−fn)+→0。仮定より ∫(f−fn)→0 なので ∫∣f−fn∣→0。確率論では「密度関数の各点収束から全変動収束が従う」と読む。
問題 4.7 ★★★ 1≤p<∞ のとき Lp(Rn) は可分(可算な稠密部分集合をもつ)であり、L∞(R) は可分でないことを示せ。
解答
有理数を端点とする半開直方体の定義関数の、有理数(複素数なら実部・虚部が有理数)係数の有限一次結合全体 D は可算である。任意の有界な半開直方体 R に対し、有理端点の直方体 Rk で λ(R△Rk)→0 となるものがとれ、∥1R−1Rk∥p=λ(R△Rk)1/p→0。係数も有理数で近似できるので、D の閉包は階段関数を含み、定理 4.12 より Lp 全体に等しい。
L∞(R) では、0<s<t<1 に対し ∥1[0,s]−1[0,t]∥∞=1 である。非可算個の開球 B(1[0,t],1/2) は互いに交わらないので、任意の稠密部分集合はそれぞれの球と交わり、非可算である。