この章の目標
- 内積空間の基本不等式と中線定理を使い、ヒルベルト空間とそうでない空間を見分けられる
- 射影定理とリースの表現定理を証明し、直交分解・最良近似に応用できる
- 完全正規直交系の同値な条件を証明し、フーリエ展開・ルジャンドル多項式などの具体例を扱える
- 可分ヒルベルト空間が ℓ2 と同型であることを証明できる
- 随伴作用素を計算し、自己共役・ユニタリ・正規作用素・直交射影を具体例で見分けられる
前提:第1章、02-linear-algebra 第7章、06-measure-integration 第4章
2.1 角度の測れるバナッハ空間
第1章のバナッハ空間には「長さ」はあるが「角度」がない。そのため、ユークリッド空間で当たり前だった次の操作が、一般のバナッハ空間ではできない。
- 部分空間への直交射影(最良近似)をとる。
- 正規直交基底で展開し、係数の二乗和でノルムを計算する(ピタゴラスの定理)。
- 連続線形汎関数を「あるベクトルとの内積」として表す。
ヒルベルト空間は、内積から定まるノルムで完備な空間であり、これらの操作が無限次元でもすべて可能になる。フーリエ級数の L2 理論、量子力学の状態空間、偏微分方程式の弱解、確率論の条件付き期待値は、いずれもヒルベルト空間の幾何学の上に立っている。ただし無限次元ゆえの注意点もある。正規直交基底による展開は無限和であって有限の一次結合ではなく、射影定理には完備性が欠かせない。
2.2 内積空間とヒルベルト空間
定義 2.1(内積, inner product)K 上のベクトル空間 H 上の写像 ⟨⋅,⋅⟩:H×H→K が、すべての x,y,z∈H, α,β∈K について次を満たすとき内積という。
- ⟨αx+βy,z⟩=α⟨x,z⟩+β⟨y,z⟩(第 1 変数について線形)
- ⟨y,x⟩=⟨x,y⟩
- ⟨x,x⟩≥0 であり、⟨x,x⟩=0⇔x=0
1 と 2 から ⟨x,αy⟩=αˉ⟨x,y⟩(第 2 変数について共役線形)となる。∥x∥:=⟨x,x⟩ とおく。内積をもつ空間を内積空間 (inner product space)、∥⋅∥ について完備な内積空間をヒルベルト空間 (Hilbert space) という。
命題 2.2 内積空間 H で次が成り立つ。
- (コーシー–シュワルツの不等式)∣⟨x,y⟩∣≤∥x∥∥y∥。
- ∥⋅∥ はノルムである。
- 内積は連続である:xn→x, yn→y ならば ⟨xn,yn⟩→⟨x,y⟩。
証明. 1:y=0 なら明らか。y=0 とし λ=⟨x,y⟩/∥y∥2 とおくと
0≤∥x−λy∥2=∥x∥2−λˉ⟨x,y⟩−λ⟨y,x⟩+∣λ∣2∥y∥2=∥x∥2−∥y∥2∣⟨x,y⟩∣2
2:三角不等式以外は明らか。1 より ∥x+y∥2=∥x∥2+2Re⟨x,y⟩+∥y∥2≤(∥x∥+∥y∥)2。3:⟨xn,yn⟩−⟨x,y⟩=⟨xn−x,yn⟩+⟨x,yn−y⟩ と 1 から、∣⟨xn,yn⟩−⟨x,y⟩∣≤∥xn−x∥∥yn∥+∥x∥∥yn−y∥→0(∥yn∥ は有界)。□
命題 2.3(中線定理と極化恒等式)内積空間で次が成り立つ。
∥x+y∥2+∥x−y∥2=2∥x∥2+2∥y∥2
また内積はノルムから復元できる:K=R なら ⟨x,y⟩=41(∥x+y∥2−∥x−y∥2)、K=C なら ⟨x,y⟩=41∑k=03ik∥x+iky∥2。
証明. ∥x±y∥2=∥x∥2±2Re⟨x,y⟩+∥y∥2 を足せば中線定理、引けば実の場合の式を得る。複素の場合、∥x+iky∥2=∥x∥2+∥y∥2+ik⟨x,y⟩+ik⟨x,y⟩ に ik を掛けると ik(∥x∥2+∥y∥2)+⟨x,y⟩+i2k⟨x,y⟩ となる。k=0,1,2,3 で足すと ∑kik=∑ki2k=0 より 4⟨x,y⟩ が残る。□
定理 2.4(ジョルダン–フォン・ノイマン, Jordan–von Neumann)ノルム空間のノルムが内積から定まるための必要十分条件は、中線定理が成り立つことである。
証明は省略する(極化恒等式の右辺で ⟨x,y⟩ を定義し、中線定理から加法性を、連続性から斉次性を導く。黒田『関数解析』などを参照)。
例 2.5
- ℓ2 は ⟨x,y⟩=∑nxnyn により、L2(Ω,μ) は ⟨f,g⟩=∫Ωfgˉ dμ によりヒルベルト空間である(完備性は第1章と 06-measure-integration 第4章)。
- p=2 のとき ℓp のノルムは内積から来ない。x=e1, y=e2 とすると中線定理の左辺は 2⋅22/p(p=∞ なら 2)、右辺は 4 であり、一致するのは p=2 のときだけである。C[0,1] の一様ノルムも内積から来ない(f=1, g(t)=t で左辺 4+1=5、右辺 4)。
- C[0,1] に ⟨f,g⟩=∫01fgˉ dt を入れると内積空間だが完備でない(例 1.10 と同様)。その完備化が L2[0,1] である。
2.3 射影定理
有限次元では、点から部分空間への距離を実現する点(直交射影)が必ずただ一つ存在した。無限次元のバナッハ空間では、閉部分空間への最近点が存在しないことがある(問題 2.5 で c0 の例を扱う)。ヒルベルト空間では、中線定理と完備性が存在と一意性を保証する。
定理 2.6(最近点定理)H をヒルベルト空間、C⊂H を空でない閉凸集合とする。各 x∈H に対し、∥x−y∥=d(x,C):=infz∈C∥x−z∥ を満たす y∈C がただ一つ存在する。さらに、y∈C がこの点であることは次と同値である。
Re⟨x−y,z−y⟩≤0(∀z∈C)
証明. d=d(x,C) とし、yn∈C を ∥x−yn∥→d となるようにとる。中線定理を x−yn と x−ym に適用し、C が凸なので (yn+ym)/2∈C であることを使うと
∥yn−ym∥2=2∥x−yn∥2+2∥x−ym∥2−4x−2yn+ym2≤2∥x−yn∥2+2∥x−ym∥2−4d2
右辺は n,m→∞ で 0 に収束するから (yn) はコーシー列であり、H の完備性と C の閉性により極限 y∈C をもち、∥x−y∥=d。y,y′ がともに最近点なら、同じ不等式で yn=y, ym=y′ とおいて ∥y−y′∥2≤4d2−4d2=0。
特徴づけ:y が最近点なら、z∈C と 0<t≤1 に対し y+t(z−y)∈C なので
∥x−y∥2≤∥(x−y)−t(z−y)∥2=∥x−y∥2−2tRe⟨x−y,z−y⟩+t2∥z−y∥2
両辺から ∥x−y∥2 を引き t で割って t→0 とすれば不等式を得る。逆に不等式が成り立てば、上の展開式で t=1 とした等式から ∥x−z∥2≥∥x−y∥2。□
注意
完備性は本質的である。c00 に ℓ2 の内積を入れ、a=(1/n)n∈ℓ2 として閉凸集合 C={x∈c00∣⟨x,a⟩=1} を考える。x∈C ならコーシー–シュワルツより ∥x∥≥1/∥a∥ で、等号は x が a の定数倍のときに限るので c00 内では成立しない。一方 a を N 項で打ち切った a(N) について a(N)/∥a(N)∥2∈C のノルムは 1/∥a(N)∥→1/∥a∥ である。したがって 0 の C への最近点は存在しない。
定理 2.7(射影定理, projection theorem)M をヒルベルト空間 H の閉部分空間とし、M⊥:={x∈H∣⟨x,m⟩=0 (∀m∈M)} を直交補空間 (orthogonal complement) とする。各 x∈H は x=y+z(y∈M, z∈M⊥)とただ一通りに書け、y は x の M への最近点である。PMx:=y とおくと、PM は有界線形作用素で、PM2=PM, RanPM=M, kerPM=M⊥、M={0} なら ∥PM∥=1 である。さらに (M⊥)⊥=M。
PM を M への直交射影 (orthogonal projection) という。
証明. M⊥ は内積の連続性から閉部分空間である。y を x の M への最近点(定理 2.6)とする。m∈M に対し z=y+m∈M として定理 2.6 の不等式を使うと Re⟨x−y,m⟩≤0。m を −m に置き換えれば実部が 0、さらに(複素の場合)im に置き換えれば虚部も 0 となり、⟨x−y,m⟩=0、すなわち x−y∈M⊥。分解の一意性は M∩M⊥={0}(w∈M∩M⊥ なら ⟨w,w⟩=0)から従い、PM の線形性は一意性から従う。ピタゴラスの定理 ∥x∥2=∥y∥2+∥z∥2 から ∥PMx∥≤∥x∥ で、x∈M なら等号。最後に、M⊂(M⊥)⊥ は明らかである。x∈(M⊥)⊥ を x=y+z と分解すると、z=x−y∈(M⊥)⊥∩M⊥ なので z=0、すなわち x∈M。□
系 2.8 H の任意の部分空間 M について (M⊥)⊥=M。特に、M が H で稠密であるための必要十分条件は M⊥={0} である。
証明. 内積の連続性から M⊥=(M)⊥。定理 2.7 を閉部分空間 M に適用すればよい。□
例 2.9
- L2[−1,1] の偶関数全体 M は、有界作用素 Rf(t)=f(−t) の核 ker(I−R) なので閉部分空間である。M⊥ は奇関数全体で、PMf(t)=(f(t)+f(−t))/2。実際、奇関数と偶関数の積は奇関数なので奇関数は M⊥ に属する。逆に f∈M⊥ を偶部分 fe と奇部分 fo に分けると fe=f−fo∈M∩M⊥={0}。
- M=c00 は ℓ2 の閉でない部分空間で、M⊥={0}(x⊥en なら xn=0)である。M+M⊥=c00=ℓ2 なので、閉でない部分空間では射影定理は成り立たない。
- 確率空間 (Ω,F,P) と部分 σ-加法族 G について、L2(Ω,G,P) は L2(Ω,F,P) の閉部分空間であり、そこへの直交射影が条件付き期待値 E[X∣G] である(11-probability 第5章)。
2.4 リースの表現定理
有限次元では、Kn 上の線形汎関数はすべて x↦∑jxjyj の形であった。ヒルベルト空間ではこれが連続線形汎関数について成り立つ。
定理 2.10(リースの表現定理, Riesz representation theorem)H をヒルベルト空間とする。各 f∈H∗ に対し、f(x)=⟨x,y⟩(∀x∈H)を満たす y∈H がただ一つ存在し、∥f∥=∥y∥ である。写像 y↦⟨⋅,y⟩ は H から H∗ への共役線形な等長全単射である。
証明. 一意性:⟨x,y−y′⟩=0 がすべての x で成り立てば、x=y−y′ として y=y′。存在:f=0 なら y=0 とする。f=0 なら N=kerf は閉な真部分空間なので、定理 2.7 より N⊥={0}(N⊥={0} なら N=(N⊥)⊥=H)。z∈N⊥ を f(z)=1 となるようにとる。任意の x について x−f(x)z∈N だから ⟨x−f(x)z,z⟩=0、すなわち ⟨x,z⟩=f(x)∥z∥2。y=z/∥z∥2 とおけば f(x)=⟨x,y⟩。ノルム:コーシー–シュワルツより ∥f∥≤∥y∥ で、f(y)=∥y∥2 より等号。共役線形性は ⟨x,αy⟩=αˉ⟨x,y⟩ から従う。□
例 2.11(完備性は必要)c00 に ℓ2 の内積を入れ、f(x)=∑nxn/n とおく。コーシー–シュワルツより ∣f(x)∣≤(∑nn−2)1/2∥x∥2 なので f は有界である。しかし f(x)=⟨x,y⟩ となる y は、x=en を代入すれば yn=1/n でなければならず、c00 の中には存在しない。ℓ2 に拡張すれば y=(1/n)n で表現される。
補足
リースの表現定理は偏微分方程式の弱解の出発点である。例えば −u′′+u=f(u(0)=u(1)=0)の弱解は、境界条件を満たす関数の空間に内積 ∫01(uvˉ+u′v′) dt を入れたヒルベルト空間で、有界線形汎関数 v↦∫01vfˉ dt を表現する元として得られる。一般化(ラックス–ミルグラムの定理)は 18-pde 第4章 で扱う。
2.5 正規直交系とフーリエ展開
定義 2.12 ヒルベルト空間の元の族 (eα)α∈A が ⟨eα,eβ⟩=δαβ を満たすとき正規直交系 (orthonormal system) という。⟨x,eα⟩ を x のフーリエ係数 (Fourier coefficient) という。
以下では主に添字集合が高々可算の場合を扱う(可分な空間ではこれで十分である。定理 2.17)。
命題 2.13(ベッセルの不等式, Bessel's inequality)(en)n≥1 を正規直交系とすると、各 x∈H に対し
n=1∑∞∣⟨x,en⟩∣2≤∥x∥2
証明. sN=∑n=1N⟨x,en⟩en とおくと、k≤N で ⟨x−sN,ek⟩=0 なので x−sN⊥sN。ピタゴラスの定理より ∥x∥2=∥sN∥2+∥x−sN∥2≥∑n=1N∣⟨x,en⟩∣2。N→∞ とする。□
補題 2.14 (en) を正規直交系、(cn) を数列とする。級数 ∑ncnen が H で収束するための必要十分条件は ∑n∣cn∣2<∞ である。このとき ∥∑ncnen∥2=∑n∣cn∣2、⟨∑ncnen,ek⟩=ck であり、和は項の順序によらない。
証明. 部分和 sN=∑n≤Ncnen について、N<M なら ∥sM−sN∥2=∑N<n≤M∣cn∣2。よって (sN) がコーシー列であることと ∑∣cn∣2<∞ は同値であり、H の完備性から前半を得る。ノルムと係数の式は有限和の等式で極限をとればよい(内積の連続性)。項を並べ替えた級数の和を x′、もとの和を x とすると、どちらも M=span{en} に属し、すべての k で ⟨x−x′,ek⟩=ck−ck=0 だから x−x′∈M∩M⊥={0}。□
定理 2.15(完全正規直交系)ヒルベルト空間 H の正規直交系 (en)n≥1 について、次は同値である。
- すべての n で ⟨x,en⟩=0 ならば x=0。
- span{en} は H で稠密である。
- すべての x∈H について x=∑n⟨x,en⟩en(フーリエ展開)。
- すべての x∈H について ∥x∥2=∑n∣⟨x,en⟩∣2(パーセヴァルの等式, Parseval's identity)。
- すべての x,y∈H について ⟨x,y⟩=∑n⟨x,en⟩⟨y,en⟩。
これらを満たす正規直交系を完全正規直交系 (complete orthonormal system) または正規直交基底 (orthonormal basis) という。
証明. (1 ⇔ 2) (span{en})⊥={en}⊥ なので系 2.8 から従う。(2 ⇒ 3) ベッセルの不等式と補題 2.14 から Px:=∑n⟨x,en⟩en は収束して M:=span{en} に属し、すべての k で ⟨x−Px,ek⟩=0 だから x−Px∈M⊥。よって P は M への直交射影であり、2 より M=H なので Px=x。(3 ⇒ 5) 内積の連続性より ⟨x,y⟩=limN∑n≤N⟨x,en⟩⟨en,y⟩。(5 ⇒ 4) y=x とおく。(4 ⇒ 1) 明らか。□
証明からわかるように、正規直交系が完全でなくても、∑n⟨x,en⟩en は閉線形包 span{en} への直交射影を与える。
注意
正規直交基底は線形代数の意味の基底(ハメル基底, Hamel basis)ではない。ℓ2 の標準基底 (en) は正規直交基底だが、(1/n)n∈ℓ2 は en の有限一次結合では書けない。実は無限次元バナッハ空間のハメル基底は必ず非可算になる(第3章)。
命題 2.16(グラム–シュミットの直交化, Gram–Schmidt process)(xn)n≥1 を一次独立な列とし、帰納的に
un=xn−k<n∑⟨xn,ek⟩ek,en=∥un∥un
とおくと、(en) は正規直交系で、各 n について span{e1,…,en}=span{x1,…,xn} となる。
証明は有限次元の場合(02-linear-algebra 第7章)と同じ帰納法である(un=0 は一次独立性から、un⊥ek(k<n)は直接計算から従う)。
定理 2.17 ヒルベルト空間 H={0} が可分であるための必要十分条件は、高々可算な正規直交基底をもつことである。H が可分かつ無限次元で (en)n≥1 がその正規直交基底ならば、
U:H→ℓ2,Ux=(⟨x,en⟩)n≥1
は内積を保つ線形全単射(ユニタリ作用素)である。したがって無限次元の可分ヒルベルト空間はすべて ℓ2 と同型である。
証明. H が可分なら、稠密な可算集合 {xn} から、それより前の元の一次結合で書ける xn を順に取り除くと、同じ線形包をもつ一次独立な列(有限列のこともある)が残る。これにグラム–シュミットを施した正規直交系の線形包は稠密なので、定理 2.15 により正規直交基底である。逆に (en) が高々可算な正規直交基底なら、係数の実部・虚部が有理数である有限一次結合の全体は可算であり、定理 2.15 の 3 により稠密である。
U はベッセルの不等式により ℓ2 に値をとる線形写像で、定理 2.15 の 5 から内積を保つ(特に等長で単射)。全射性:c∈ℓ2 に対し x=∑ncnen は補題 2.14 により収束し、Ux=c。□
補足
非可算な正規直交基底をもつヒルベルト空間(非可算集合 A 上の ℓ2(A) など)もある。ツォルンの補題により、任意のヒルベルト空間は正規直交基底をもつ:極大な正規直交系 E をとると、0=x∈E⊥ があれば E∪{x/∥x∥} がより大きな正規直交系になってしまうので、E⊥={0} である。本教材では主に可分な場合を扱う。
2.6 正規直交基底の例
例 2.18(フーリエ基底)複素 L2[0,2π] で en(t)=eint/2π(n∈Z)は正規直交系である(∫02πei(n−m)t dt=2πδnm)。これは完全である。実際、Cc((0,2π)) は L2[0,2π] で稠密であり(06-measure-integration 第4章)、その元は 2π 周期に拡張すれば連続な周期関数なので、ストーン–ワイエルシュトラスの定理(03-topology 第7章)により三角多項式で一様近似できる。∥g∥2≤2π∥g∥∞ だから三角多項式は L2 で稠密であり、定理 2.15 の 2 が成り立つ(添字集合 Z は N と一対一に対応させればよく、補題 2.14 により和は順序によらない)。
フーリエ係数を f^(n)=2π1∫02πf(t)e−int dt と書けば ⟨f,en⟩=2π f^(n) であり、パーセヴァルの等式は
2π1∫02π∣f(t)∣2 dt=n∈Z∑∣f^(n)∣2
となる。f∈L2 のフーリエ級数は L2 ノルムで必ず f に収束する。各点収束はまったく別の問題であり、連続関数でもフーリエ級数が 1 点で発散しうる(第3章)。
例 2.19(ルジャンドル多項式)実 L2[−1,1] で 1,t,t2,… にグラム–シュミットを施すと
en=22n+1 Pn,Pn(t)=2nn!1dtndn(t2−1)n
を得る(Pn をルジャンドル多項式 (Legendre polynomial) といい、右の式をロドリゲスの公式という)。実際、Pn は最高次係数が正の n 次多項式であり、n 次未満の多項式 q に対して n 回部分積分すると、(t2−1)n が ±1 で n 位の零点をもつので境界項が消え、∫−11qPn dt は q(n)=0 の積分に帰着して 0 になる。span{1,…,tn} のうち span{1,…,tn−1} に直交する部分は 1 次元なので en=Pn/∥Pn∥ であり、∥Pn∥2=2/(2n+1)(計算は省略)から上式が従う。例えば P0=1, P1=t, P2=(3t2−1)/2。ワイエルシュトラスの近似定理により多項式は C[−1,1] で一様稠密で、C[−1,1] は L2[−1,1] で稠密だから、(en) は正規直交基底である。
例 2.20(エルミート関数)L2(R) で tne−t2/2(n≥0)にグラム–シュミットを施すと、エルミート関数 (Hermite function)
hn(t)=(2nn!π)−1/2Hn(t)e−t2/2,Hn(t)=(−1)net2dtndne−t2
を得る(Hn はエルミート多項式で、H0=1, H1=2t, H2=4t2−2)。(hn) は L2(R) の正規直交基底である。完全性の証明の方針だけ述べる:f がすべての hn と直交すれば、F(z)=∫f(t)e−t2/2e−izt dt は整関数で、z=0 でのすべての微分係数が 0 なので F≡0 となり、フーリエ変換の単射性(18-pde 第2章)から f=0。hn は調和振動子の固有関数である:−hn′′+t2hn=(2n+1)hn(n=0 なら h0′′=(t2−1)h0 から直接確かめられる)。この微分作用素は非有界であり、第7章 の自己共役作用素の典型例になる。
2.7 随伴作用素
有限次元では、行列 A の共役転置 A∗ は ⟨Ax,y⟩=⟨x,A∗y⟩ で特徴づけられた。ヒルベルト空間ではリースの表現定理が同じ構成を可能にする。
定理 2.21(随伴作用素, adjoint operator)H,K をヒルベルト空間、T∈B(H,K) とする。すべての x∈H, y∈K で ⟨Tx,y⟩=⟨x,T∗y⟩ を満たす T∗∈B(K,H) がただ一つ存在し、
∥T∗∥=∥T∥,∥T∗T∥=∥T∥2
が成り立つ。また (S+T)∗=S∗+T∗, (αT)∗=αˉT∗, (ST)∗=T∗S∗, T∗∗=T である。
証明. y∈K を固定すると、x↦⟨Tx,y⟩ は H 上の有界線形汎関数で、ノルムは ∥T∥∥y∥ 以下である。リースの表現定理により ⟨Tx,y⟩=⟨x,z⟩(∀x)となる z がただ一つ存在し、∥z∥≤∥T∥∥y∥。T∗y:=z とおく。線形性は一意性から従い(例えば ⟨x,T∗(y1+y2)⟩=⟨Tx,y1+y2⟩=⟨x,T∗y1+T∗y2⟩)、∥T∗∥≤∥T∥。代数的な性質も同様に一意性から従う。⟨T∗y,x⟩=⟨Tx,y⟩=⟨y,Tx⟩ より T∗∗=T なので ∥T∥=∥T∗∗∥≤∥T∗∥。最後に ∥T∗T∥≤∥T∥2 であり、逆は ∥Tx∥2=⟨T∗Tx,x⟩≤∥T∗T∥∥x∥2 から従う。□
命題 2.22 T∈B(H,K) について kerT∗=(RanT)⊥ および RanT=(kerT∗)⊥。
証明. y∈kerT∗ ⇔ すべての x で ⟨x,T∗y⟩=0 ⇔ すべての x で ⟨Tx,y⟩=0 ⇔ y∈(RanT)⊥。後半はこれと系 2.8 から従う。□
例 2.23(4 つの基本例の随伴)
- シフト作用素。ℓ2 上で ⟨Sx,y⟩=∑n≥1xnyn+1=⟨x,Ly⟩ なので S∗=L(左シフト)。S∗S=LS=I だが、SS∗=SL は e1⊥ への直交射影である。命題 2.22 のとおり kerS∗=Ke1=(RanS)⊥。
- 掛け算作用素。φ∈L∞(Ω,μ) に対し、L2(Ω,μ) 上で ⟨φf,g⟩=∫φfgˉ dμ=⟨f,φˉg⟩ なので Mφ∗=Mφˉ。
- 積分作用素。k∈L2([0,1]2) に対し (Kf)(s)=∫01k(s,t)f(t) dt とおく。コーシー–シュワルツより ∣Kf(s)∣2≤∥f∥22∫01∣k(s,t)∣2 dt で、s で積分して ∥K∥≤∥k∥L2([0,1]2)。フビニの定理により ⟨Kf,g⟩=∬k(s,t)f(t)g(s) dt ds=⟨f,K∗g⟩、ただし (K∗g)(t)=∫01k(s,t)g(s) ds。つまり K∗ は核 k(t,s) の積分作用素である(共役転置の連続版)。ヴォルテラ作用素 V(核 1{t≤s})では (V∗g)(t)=∫t1g(s) ds。
- 微分作用素。C1 級で u(0)=u(1)=0 を満たす u,v について、部分積分から ⟨−iu′,v⟩=⟨u,−iv′⟩。−i d/dt は「自己共役に見える」が非有界であり、L2[0,1] 全体では定義されない。随伴の定義域と境界条件の関係は第7章の主題である。
定義 2.24 T∈B(H) が T∗=T のとき自己共役 (self-adjoint)、T∗T=TT∗=I のときユニタリ (unitary)、T∗T=TT∗ のとき正規 (normal) という。P2=P=P∗ を満たす P∈B(H) を直交射影という(命題 2.26 で定理 2.7 の PM と一致することを見る)。自己共役な T がすべての x で ⟨Tx,x⟩≥0 を満たすとき正作用素 (positive operator) といい、T≥0 と書く。
命題 2.25 T∈B(H) とする。
- T が自己共役ならば、すべての x で ⟨Tx,x⟩∈R。K=C なら逆も成り立つ。
- T が自己共役ならば ∥T∥=sup∥x∥=1∣⟨Tx,x⟩∣。
- T が正規であることと、すべての x で ∥Tx∥=∥T∗x∥ となることは同値である。
- T がユニタリであることと、T が全射な等長作用素であることは同値である。
証明. 1:⟨Tx,x⟩=⟨x,Tx⟩=⟨Tx,x⟩。逆に ⟨Tx,x⟩ が常に実数なら、A=T−T∗ について ⟨Ax,x⟩=⟨Tx,x⟩−⟨Tx,x⟩=0。命題 2.3 と同じ計算で確かめられる極化恒等式
⟨Ax,y⟩=41k=0∑3ik⟨A(x+iky),x+iky⟩
から A=0。
2:右辺を m とおくと m≤∥T∥。∥x∥=∥y∥=1 とする。自己共役性から ⟨Ty,x⟩=⟨Tx,y⟩ なので、中線定理と合わせて
4Re⟨Tx,y⟩=⟨T(x+y),x+y⟩−⟨T(x−y),x−y⟩≤m(∥x+y∥2+∥x−y∥2)=4m
y に絶対値 1 の定数を掛けて ∣⟨Tx,y⟩∣≤m を得る。Tx=0 なら y=Tx/∥Tx∥ として ∥Tx∥≤m。
3:∥Tx∥2−∥T∗x∥2=⟨(T∗T−TT∗)x,x⟩ で、T∗T−TT∗ は自己共役だから、2 によりこれが常に 0 であることと T∗T=TT∗ は同値である。
4:T∗T=I なら ∥Tx∥2=⟨T∗Tx,x⟩=∥x∥2 で、TT∗=I なら全射。逆に T が等長なら ⟨(T∗T−I)x,x⟩=0 で T∗T−I は自己共役なので、2 より T∗T=I。T は全単射だから T∗=T∗TT−1=T−1、よって TT∗=I。□
命題 2.26 P∈B(H) が P2=P=P∗ を満たすことと、ある閉部分空間 M について P=PM であることは同値である。このとき M=RanP。
証明. P=PM なら P2=P であり、⟨Px,y⟩=⟨Px,Py+(I−P)y⟩=⟨Px,Py⟩、同様に ⟨x,Py⟩=⟨Px,Py⟩ なので P∗=P。逆に P2=P=P∗ とし、M=RanP とおく。M=ker(I−P) なので M は閉である。x=Px+(I−P)x で Px∈M、また ⟨(I−P)x,Py⟩=⟨P(I−P)x,y⟩=0 より (I−P)x∈M⊥。分解の一意性から P=PM。□
例 2.27
- 右シフト S は等長だが全射でないので、ユニタリでない(有限次元では等長ならユニタリだった)。ℓ2(Z) 上の両側シフト (Wx)n=xn−1 はユニタリである。
- σ-有限測度空間上の Mφ は常に正規であり、自己共役であることと φ が a.e. 実数値であること、ユニタリであることと ∣φ∣=1 a.e. であることがそれぞれ同値である。
- 例 2.18 のフーリエ係数をとる写像 L2[0,2π]→ℓ2(Z) は(定数倍を除いて)定理 2.17 の U であり、ユニタリである。
- R2 上の P(x,y)=(x+y,0) は P2=P を満たすが P∗=P(斜交射影)であり、∥P∥=2>1。問題 2.8 で、P2=P かつ ∥P∥≤1 ならば直交射影であることを示す。
まとめ
- 内積から定まるノルムは中線定理を満たし、逆に中線定理を満たすノルムは内積から来る。ℓp(p=2)や一様ノルムの C[0,1] はヒルベルト空間でない。
- ヒルベルト空間の閉凸集合への最近点はただ一つ存在する。証明には中線定理と完備性の両方が必要である。
- 閉部分空間 M について H=M⊕M⊥ で、直交射影 PM は P2=P=P∗ で特徴づけられる。部分空間が稠密であることは直交補空間が {0} であることと同値である。
- リースの表現定理により H∗ は H と共役線形・等長に同一視される。
- 正規直交系についてベッセルの不等式が成り立ち、完全性は「直交補空間が 0」「線形包が稠密」「フーリエ展開」「パーセヴァルの等式」と同値である。展開は有限和ではなく無限和である。
- 無限次元の可分ヒルベルト空間はすべて ℓ2 と同型である。フーリエ基底、ルジャンドル多項式、エルミート関数が代表例である。
- 随伴作用素は ∥T∗∥=∥T∥, ∥T∗T∥=∥T∥2, kerT∗=(RanT)⊥ を満たす。S∗=L, Mφ∗=Mφˉ で、積分作用素の随伴は核を共役転置したものである。
- 自己共役作用素のノルムは sup∥x∥=1∣⟨Tx,x⟩∣ に等しい。無限次元では等長作用素がユニタリとは限らない(シフト)。
演習問題
問題 2.1 ★ 1≤p≤∞, p=2 のとき、Lp[0,1] のノルムは内積から来ないことを示せ。
解答
f=1[0,1/2], g=1(1/2,1] とおくと ∣f±g∣=1 なので ∥f±g∥p=1、また ∥f∥p=∥g∥p=2−1/p(p=∞ なら 1)。中線定理の左辺は 2、右辺は 4⋅2−2/p(p=∞ なら 4)である。4⋅2−2/p=2 となるのは 2/p=1、すなわち p=2 のときだけなので、p=2 では中線定理が成り立たない。
問題 2.2 ★ (en)n≥1 をヒルベルト空間の正規直交系とする。(1) すべての y∈H で ⟨en,y⟩→0 を示せ。(2) (en) は収束する部分列をもたないことを示せ。
解答
(1) ベッセルの不等式より ∑n∣⟨y,en⟩∣2≤∥y∥2<∞ なので、一般項 ⟨y,en⟩=⟨en,y⟩ は 0 に収束する。
(2) n=m なら ∥en−em∥2=∥en∥2+∥em∥2=2 なので、どの部分列もコーシー列でない。
単位球の中の列 (en) はノルムでは収束する部分列をもたない(リースの定理 1.23 の具体例)が、(1) の意味では 0 に「収束」している。これが第4章で扱う弱収束である。有限次元にはそもそも無限個の正規直交系がない。
問題 2.3 ★ [0,2π] 上の f(t)=t のフーリエ係数 f^(n) を求め、パーセヴァルの等式から ∑n=1∞1/n2=π2/6 を導け。
解答
f^(0)=2π1∫02πt dt=π。n=0 では部分積分により
∫02πte−int dt=[−inte−int]02π+in1∫02πe−int dt=−in2π=n2πi
なので f^(n)=i/n。パーセヴァルの等式の左辺は 2π1∫02πt2 dt=34π2、右辺は π2+∑n=0n−2=π2+2∑n≥1n−2。よって ∑n≥1n−2=21(34π2−π2)=6π2。
問題 2.4 ★★ mina,b∈R∫01∣t2−a−bt∣2 dt を求めよ。
解答
実 L2[0,1] における t2 の M=span{1,t} への直交射影を求めればよい(定理 2.7)。t2−a−bt⊥1,t という条件(正規方程式)は
31−a−2b=0,41−2a−3b=0
で、第 1 式から a=1/3−b/2 を第 2 式に代入すると 121−12b=0、よって b=1, a=−1/6。最小値は
∫01(t2−t+61)2dt=51−21+94−61+361=18036−90+80−30+5=1801
(被積分関数は t4−2t3+34t2−31t+361)。
問題 2.5 ★★ 実数値の c0 上で φ(x)=∑n=1∞2−nxn とおき、M=kerφ とする。M は閉部分空間で d(e1,M)=1/2 だが、∥e1−m∥∞=1/2 となる m∈M は存在しないことを示せ。
解答
∣φ(x)∣≤∑2−n∥x∥∞=∥x∥∞ なので φ は連続で、M は閉部分空間である。0=y∈c0 なら ∣yn∣→0 より ∣yn∣<∥y∥∞ となる n があるので、∣φ(y)∣<∥y∥∞(狭義)。m∈M に対し y=e1−m とおくと φ(y)=φ(e1)=1/2 だから ∥e1−m∥∞>1/2。一方 y(k)=ck(e1+⋯+ek)、ck=2(1−2−k)1 とおくと φ(y(k))=ck(1−2−k)=1/2 なので mk=e1−y(k)∈M であり、∥e1−mk∥∞=ck→1/2。よって d(e1,M)=1/2 だが最近点は存在しない。中線定理のないバナッハ空間では定理 2.6 が成り立たない例である。
問題 2.6 ★★ L2[0,1] 上のヴォルテラ作用素 (Vf)(s)=∫0sf(t) dt について、V+V∗ は f↦⟨f,1⟩1(1 は定数関数 1)に等しいことを示せ。また V は正規でないことを示せ。
解答
例 2.23 より (V∗f)(s)=∫s1f(t) dt なので、(V+V∗)f(s)=∫01f(t) dt=⟨f,1⟩。∥1∥=1 だから、V+V∗ は定数関数の空間への直交射影である。特に V の「実部」(V+V∗)/2 は階数 1 である。
f=1 とすると V∗V1(s)=∫s1t dt=21−s2、VV∗1(s)=∫0s(1−t) dt=s−2s2 で、両者は異なる(s=0 で 1/2=0)。よって V∗V=VV∗。
問題 2.7 ★★ {2sin(nπt)}n≥1 は L2[0,1] の正規直交基底であることを示せ。
解答
正規直交性:2sin(nπt)sin(mπt)=cos((n−m)πt)−cos((n+m)πt) を [0,1] で積分すると、0=k∈Z なら ∫01cos(kπt) dt=0 なので δnm を得る。
完全性:f∈L2[0,1] がすべての sin(nπt) と直交するとし、f を [−1,1] 上の奇関数 f~ に拡張する。f~(t)cos(nπt) は奇関数、f~(t)sin(nπt) は偶関数なので
∫−11f~(t)e−inπt dt=−i∫−11f~(t)sin(nπt) dt=−2i∫01f(t)sin(nπt) dt=0(n∈Z)
変数変換 u=π(t+1) により例 2.18 から {einπt/2}n∈Z は L2[−1,1] の正規直交基底である(einu=(−1)neinπt)。よって f~=0、すなわち f=0 で、定理 2.15 の 1 が成り立つ。この基底は第5章で −u′′ の固有関数として再び現れる。
問題 2.8 ★★ P∈B(H) が P2=P かつ ∥P∥≤1 を満たすならば、P は直交射影であることを示せ。
解答
N=kerP は閉部分空間である。x∈N⊥ とすると、P(x−Px)=Px−P2x=0 より x−Px∈N なので ⟨x−Px,x⟩=0、つまり ⟨Px,x⟩=∥x∥2。すると
∥x−Px∥2=∥x∥2−2Re⟨Px,x⟩+∥Px∥2=∥Px∥2−∥x∥2≤0
(∥P∥≤1 を使った)ので Px=x。任意の y∈H を y=u+v(u∈N, v∈N⊥)と分解すると Py=Pv=v。よって P=PN⊥ である。
問題 2.9 ★★★ ヒルベルト空間の有界列 (xn) は、ある部分列 (xnk) と x∈H について「すべての y∈H で ⟨xnk,y⟩→⟨x,y⟩」を満たすことを示せ。
解答
∥xn∥≤C とする。M=span{xn} は可分である(係数の実部・虚部が有理数の有限一次結合が稠密)。M の稠密な可算集合 {yj} をとる。各 j で (⟨xn,yj⟩)n は有界数列なので、対角線論法により、すべての j で ⟨xnk,yj⟩ が収束する部分列がとれる。
y∈M と ε>0 に対し ∥y−yj∥<ε となる j をとると、∣⟨xnk−xnl,y⟩∣≤2Cε+∣⟨xnk−xnl,yj⟩∣ なので、⟨xnk,y⟩ はコーシー列で収束する。y∈M⊥ なら ⟨xnk,y⟩=0。射影定理で y=PMy+(y−PMy) と分解すれば、すべての y∈H で ℓ(y):=limk⟨y,xnk⟩ が存在する。ℓ は線形で ∣ℓ(y)∣≤C∥y∥ だから、リースの表現定理により ℓ(y)=⟨y,x⟩ となる x がある。共役をとって ⟨xnk,y⟩→⟨x,y⟩。これは第4章のバナッハ–アラオグルの定理のヒルベルト空間版である。