Lemma数学ロードマップ

10 関数解析 · 第 5 章

コンパクト作用素

目安 10〜14 時間定理など 12演習 8 問

この章の目標

  • コンパクト作用素を定義し、有限ランク作用素・積分作用素・対角作用素がコンパクトかどうかを判定できる
  • コンパクト作用素の全体が閉イデアルであること、ヒルベルト空間では有限ランク作用素で近似できることを証明できる
  • リース–シャウダー理論とフレドホルムの択一定理を証明し、積分方程式に応用できる
  • コンパクト作用素のスペクトルの構造と、コンパクト自己共役作用素のスペクトル定理を証明できる
  • スツルム–リウヴィル問題の固有関数展開を導ける

前提:第1章〜第4章、03-topology 第5章(アスコリ–アルツェラの定理)、08-differential-equations 第5章

5.1 行列に最も近い作用素

第1章の冒頭の積分方程式 u−Ku=fu - Ku = f を思い出そう。区間を分割すれば、これは連立一次方程式 (I−An)u=f(I - A_n)\boldsymbol{u} = \boldsymbol{f} で近似される。有限次元では

  • I−AI - A が単射であることと全射であることは同値(次元定理)、
  • 固有値は高々有限個で、エルミート行列は正規直交基底で対角化できる、

という事実があった。無限次元の作用素一般ではどちらも成り立たない(シフト作用素は単射だが全射でなく、掛け算作用素 MtM_t は固有値をもたない)。しかし積分作用素のように「有限次元の作用素で近似できる」作用素に限れば、これらの事実がほぼそのまま生き残る。そのような作用素のクラスがコンパクト作用素である。

5.2 定義と基本的な性質

定義 5.1(コンパクト作用素, compact operator)X,YX, Y をノルム空間とする。線形写像 T ⁣:X→YT\colon X \to Y がコンパクトであるとは、閉単位球の像 T(BX)T(B_X) が YY で相対コンパクト(閉包がコンパクト)であることをいう。同値な条件として、XX の任意の有界列 (xn)(x_n) について、(Txn)(Tx_n) が YY で収束する部分列をもつ。コンパクト作用素の全体を K(X,Y)\mathcal{K}(X, Y)、K(X)=K(X,X)\mathcal{K}(X) = \mathcal{K}(X, X) と書く。

相対コンパクトな集合は有界なので、コンパクト作用素は有界である。値域が有限次元の有界作用素を有限ランク作用素 (finite rank operator) という。

例 5.2

  1. 有限ランク作用素はコンパクトである(有限次元ノルム空間の有界集合は相対コンパクト:系 1.21)。
  2. 無限次元ノルム空間上の恒等作用素はコンパクトでない(リースの定理 1.23)。ℓ2\ell^2 の右シフト SS もコンパクトでない(∥Sen−Sem∥=2\lVert Se_n - Se_m \rVert = \sqrt{2})。
  3. k∈C([0,1]2)k \in C([0,1]^2) に対し、C[0,1]C[0,1] 上の積分作用素 (Kf)(s)=∫01k(s,t)f(t) dt(Kf)(s) = \int_0^1 k(s,t) f(t)\ dt はコンパクトである。実際 ∥f∥∞≤1\lVert f \rVert_\infty \leq 1 なら ∣Kf(s)∣≤∥k∥∞\lvert Kf(s) \rvert \leq \lVert k \rVert_\infty かつ ∣Kf(s)−Kf(s′)∣≤max⁡t∣k(s,t)−k(s′,t)∣\lvert Kf(s) - Kf(s') \rvert \leq \max_t \lvert k(s,t) - k(s',t) \rvert で、右辺は kk の一様連続性により ∣s−s′∣→0\lvert s - s' \rvert \to 0 で一様に 00 に近づく。よって K(BC[0,1])K(B_{C[0,1]}) は一様有界かつ同程度連続であり、アスコリ–アルツェラの定理により相対コンパクトである。ヴォルテラ作用素 VV も、∣Vf(s)−Vf(s′)∣≤∣s−s′∣∥f∥∞\lvert Vf(s) - Vf(s') \rvert \leq \lvert s - s' \rvert \lVert f \rVert_\infty から同様にコンパクトである。

定理 5.3 XX をノルム空間、YY をバナッハ空間とする。K(X,Y)\mathcal{K}(X, Y) は B(X,Y)\mathcal{B}(X, Y) の閉部分空間である。また T∈K(X,Y)T \in \mathcal{K}(X, Y), A∈B(W,X)A \in \mathcal{B}(W, X), B∈B(Y,Z)B \in \mathcal{B}(Y, Z) ならば BTABTA はコンパクトである。特に XX がバナッハ空間ならば、K(X)\mathcal{K}(X) は B(X)\mathcal{B}(X) の閉な両側イデアルである。

証明. S,TS, T がコンパクトで (xn)(x_n) が有界なら、(Sxn)(Sx_n) が収束する部分列をとり、さらにその部分列で (Txn)(Tx_n) も収束するようにとれば (S+T)xn(S + T)x_n が収束する。スカラー倍は明らか。AA は有界列を有界列に、BB は収束列を収束列に写すので BTABTA はコンパクトである。

閉性:Tk∈K(X,Y)T_k \in \mathcal{K}(X, Y), ∥Tk−T∥→0\lVert T_k - T \rVert \to 0 とする。YY は完備なので、T(BX)T(B_X) が全有界であることを示せばよい(完備距離空間では全有界 ⇔ 相対コンパクト)。ε>0\varepsilon > 0 に対し ∥T−Tk∥<ε/3\lVert T - T_k \rVert < \varepsilon/3 となる kk をとる。Tk(BX)T_k(B_X) は全有界なので、有限個の y1,…,ymy_1, \dots, y_m で Tk(BX)⊂⋃iB(yi,ε/3)T_k(B_X) \subset \bigcup_i B(y_i, \varepsilon/3) となる。x∈BXx \in B_X なら ∥Tx−Tkx∥<ε/3\lVert Tx - T_k x \rVert < \varepsilon/3 なので T(BX)⊂⋃iB(yi,2ε/3)T(B_X) \subset \bigcup_i B(y_i, 2\varepsilon/3)。□\square

特に、有限ランク作用素のノルム極限はコンパクトである。コンパクト作用素が有界な逆をもてば I=T−1TI = T^{-1} T がコンパクトになるので、空間は有限次元である。無限次元ではコンパクト作用素は決して可逆でない。

命題 5.4 T∈K(X,Y)T \in \mathcal{K}(X, Y) で xn⇀xx_n \rightharpoonup x(弱収束)ならば、∥Txn−Tx∥→0\lVert Tx_n - Tx \rVert \to 0。

証明. g∈Y∗g \in Y^{\ast} について g(Txn)=(g∘T)(xn)→g(Tx)g(Tx_n) = (g \circ T)(x_n) \to g(Tx) なので Txn⇀TxTx_n \rightharpoonup Tx。ノルム収束しないとすると、ある ε>0\varepsilon > 0 と部分列で ∥Txnk−Tx∥≥ε\lVert Tx_{n_k} - Tx \rVert \geq \varepsilon。(xn)(x_n) は有界(命題 4.15)なので、さらに部分列をとって Txnkj→yTx_{n_{k_j}} \to y(ノルム)とできる。すると Txnkj⇀yTx_{n_{k_j}} \rightharpoonup y でもあり、弱極限の一意性から y=Txy = Tx となって矛盾する。□\square

コンパクト作用素は「弱収束をノルム収束に変える」。有界作用素は弱収束を弱収束にしか写さない。

例 5.5

  1. 対角作用素。a∈ℓ∞a \in \ell^\infty とし、ℓp\ell^p(1≤p≤∞1 \leq p \leq \infty)上の Max=(anxn)M_a x = (a_n x_n) を考える。MaM_a がコンパクトであるための必要十分条件は a∈c0a \in c_0 である。実際、a∈c0a \in c_0 なら a(N)=(a1,…,aN,0,… )a^{(N)} = (a_1, \dots, a_N, 0, \dots) について ∥Ma−Ma(N)∥=sup⁡n>N∣an∣→0\lVert M_a - M_{a^{(N)}} \rVert = \sup_{n > N} \lvert a_n \rvert \to 0 で、Ma(N)M_{a^{(N)}} は有限ランクなので定理 5.3 よりコンパクト。a∉c0a \notin c_0 なら ∣ank∣≥ε\lvert a_{n_k} \rvert \geq \varepsilon となる部分列があり、k≠lk \neq l で ∥Maenk−Maenl∥≥ε\lVert M_a e_{n_k} - M_a e_{n_l} \rVert \geq \varepsilon なので (Maenk)(M_a e_{n_k}) は収束部分列をもたない。
  2. 掛け算作用素。φ∈C[0,1]\varphi \in C[0,1] が恒等的に 00 でなければ、L2[0,1]L^2[0,1] 上の MφM_\varphi はコンパクトでない。∣φ∣≥c>0\lvert \varphi \rvert \geq c > 0 となる区間 JJ をとり、L2(J)L^2(J) の正規直交系を JJ の外で 00 として L2[0,1]L^2[0,1] の正規直交系 (fn)(f_n) とみなす。fn⇀0f_n \rightharpoonup 0(問題 2.2)だが ∥φfn∥2≥c\lVert \varphi f_n \rVert_2 \geq c なので、命題 5.4 に反する。

定理 5.6 XX をノルム空間、HH をヒルベルト空間とする。任意の T∈K(X,H)T \in \mathcal{K}(X, H) は有限ランク作用素のノルム極限である。より詳しく、各 ε>0\varepsilon > 0 について、有限次元部分空間への直交射影 PP で ∥T−PT∥≤ε\lVert T - PT \rVert \leq \varepsilon となるものが存在する。

証明. T(BX)‾\overline{T(B_X)} はコンパクトなので、有限個の y1,…,ymy_1, \dots, y_m で T(BX)⊂⋃iB(yi,ε)T(B_X) \subset \bigcup_i B(y_i, \varepsilon) となる。PP を F=span⁡{y1,…,ym}F = \operatorname{span} \lbrace y_1, \dots, y_m \rbrace への直交射影とする。x∈BXx \in B_X に対し ∥Tx−yi∥<ε\lVert Tx - y_i \rVert < \varepsilon となる ii を選べば、PxPx は最近点なので ∥Tx−PTx∥=d(Tx,F)≤∥Tx−yi∥<ε\lVert Tx - PTx \rVert = d(Tx, F) \leq \lVert Tx - y_i \rVert < \varepsilon。□\square

補足

一般のバナッハ空間では定理 5.6 は成り立たない。有限ランク作用素で近似できないコンパクト作用素をもつバナッハ空間が存在する(エンフロ, 1973 年)。ヒルベルト空間では直交射影がつねに使えることが本質である。

定理 5.7(シャウダーの定理, Schauder's theorem)X,YX, Y をバナッハ空間、T∈B(X,Y)T \in \mathcal{B}(X, Y) とする。TT がコンパクトであることと、双対作用素 T′ ⁣:Y∗→X∗T'\colon Y^{\ast} \to X^{\ast}(T′g=g∘TT' g = g \circ T)がコンパクトであることは同値である。特にヒルベルト空間 HH 上で T∈K(H)T \in \mathcal{K}(H) ならば T∗∈K(H)T^{\ast} \in \mathcal{K}(H)。

一般の場合の証明は省略する(アスコリ–アルツェラの定理を T(BX)‾\overline{T(B_X)} 上の関数族 {g∣T(BX)‾∣g∈BY∗}\lbrace g\vert_{\overline{T(B_X)}} \mid g \in B_{Y^{\ast}} \rbrace に適用する)。ヒルベルト空間の場合は定理 5.6 から直ちに従う:∥T−PkT∥→0\lVert T - P_k T \rVert \to 0 となる有限ランクの直交射影 PkP_k をとると、(PkT)∗=T∗Pk(P_k T)^{\ast} = T^{\ast} P_k は有限ランクで ∥T∗−T∗Pk∥=∥T−PkT∥→0\lVert T^{\ast} - T^{\ast} P_k \rVert = \lVert T - P_k T \rVert \to 0 なので、定理 5.3 により T∗T^{\ast} はコンパクトである。

5.3 ヒルベルト–シュミット作用素

積分作用素のコンパクト性を L2L^2 で判定するのに便利なクラスを導入する。以下 HH は可分なヒルベルト空間とする。

命題 5.8(ヒルベルト–シュミット作用素, Hilbert–Schmidt operator)T∈B(H)T \in \mathcal{B}(H) と HH の正規直交基底 (en)(e_n) について、∥T∥HS:=(∑n∥Ten∥2)1/2\lVert T \rVert_{HS} := (\sum_n \lVert Te_n \rVert^2)^{1/2} は正規直交基底の選び方によらず、∥T∥HS=∥T∗∥HS\lVert T \rVert_{HS} = \lVert T^{\ast} \rVert_{HS} である。∥T∥HS<∞\lVert T \rVert_{HS} < \infty のとき TT をヒルベルト–シュミット作用素という。このとき ∥T∥≤∥T∥HS\lVert T \rVert \leq \lVert T \rVert_{HS} であり、TT はコンパクトである。

証明. 正規直交基底 (en)(e_n), (fm)(f_m) について、パーセヴァルの等式と非負項の二重級数の順序交換により

∑n∥Ten∥2=∑n∑m∣⟨Ten,fm⟩∣2=∑m∑n∣⟨en,T∗fm⟩∣2=∑m∥T∗fm∥2\sum_n \lVert Te_n \rVert^2 = \sum_n \sum_m \lvert \langle Te_n, f_m \rangle \rvert^2 = \sum_m \sum_n \lvert \langle e_n, T^{\ast} f_m \rangle \rvert^2 = \sum_m \lVert T^{\ast} f_m \rVert^2

これを (en)=(fm)(e_n) = (f_m) の場合にも使えば ∑m∥Tfm∥2=∑m∥T∗fm∥2=∑n∥Ten∥2\sum_m \lVert T f_m \rVert^2 = \sum_m \lVert T^{\ast} f_m \rVert^2 = \sum_n \lVert Te_n \rVert^2 となり、基底によらないことと ∥T∥HS=∥T∗∥HS\lVert T \rVert_{HS} = \lVert T^{\ast} \rVert_{HS} がわかる。また ∥Tx∥2=∑m∣⟨x,T∗fm⟩∣2≤∥x∥2∑m∥T∗fm∥2\lVert Tx \rVert^2 = \sum_m \lvert \langle x, T^{\ast} f_m \rangle \rvert^2 \leq \lVert x \rVert^2 \sum_m \lVert T^{\ast} f_m \rVert^2。最後に PNP_N を e1,…,eNe_1, \dots, e_N の張る空間への直交射影とすると、T(I−PN)T(I - P_N) に上の評価を使って ∥T−TPN∥≤(∑n>N∥Ten∥2)1/2→0\lVert T - TP_N \rVert \leq (\sum_{n > N} \lVert Te_n \rVert^2)^{1/2} \to 0。TPNTP_N は有限ランクなので TT はコンパクトである。□\square

例 5.9

  1. (Ω,μ)(\Omega, \mu) を σ-有限測度空間で L2(Ω,μ)L^2(\Omega, \mu) が可分なものとし、k∈L2(Ω×Ω,μ⊗μ)k \in L^2(\Omega \times \Omega, \mu \otimes \mu) とすると、積分作用素 (Kf)(s)=∫k(s,t)f(t) dμ(t)(Kf)(s) = \int k(s,t) f(t)\ d\mu(t) はヒルベルト–シュミット作用素で ∥K∥HS=∥k∥L2\lVert K \rVert_{HS} = \lVert k \rVert_{L^2}。実際、フビニの定理によりほとんどすべての ss で ks=k(s,⋅)∈L2k_s = k(s, \cdot) \in L^2 であり、(Ken)(s)=⟨ks,en‾⟩(Ke_n)(s) = \langle k_s, \overline{e_n} \rangle。(en‾)(\overline{e_n}) も正規直交基底なので、単調収束定理とパーセヴァルの等式から ∑n∥Ken∥2=∫∑n∣⟨ks,en‾⟩∣2 dμ(s)=∫∥ks∥2 dμ(s)=∥k∥L22\sum_n \lVert Ke_n \rVert^2 = \int \sum_n \lvert \langle k_s, \overline{e_n} \rangle \rvert^2\ d\mu(s) = \int \lVert k_s \rVert^2\ d\mu(s) = \lVert k \rVert_{L^2}^2。
  2. L2[0,1]L^2[0,1] 上のヴォルテラ作用素は核 1{t≤s}\mathbf{1}_{\lbrace t \leq s \rbrace} をもつので ∥V∥HS2=∫01∫0sdt ds=1/2\lVert V \rVert_{HS}^2 = \int_0^1 \int_0^s dt\ ds = 1/2 で、コンパクトである。
  3. ℓ2\ell^2 上の対角作用素 MaM_a では ∥Ma∥HS=∥a∥2\lVert M_a \rVert_{HS} = \lVert a \rVert_2。an=n−1/2a_n = n^{-1/2} なら a∈c0∖ℓ2a \in c_0 \setminus \ell^2 なので、MaM_a はコンパクトだがヒルベルト–シュミットでない。

5.4 リース–シャウダー理論

定理 5.10(リース–シャウダー, Riesz–Schauder)XX をバナッハ空間、T∈K(X)T \in \mathcal{K}(X)、S=I−TS = I - T とする。

  1. ker⁡S\ker S は有限次元である。
  2. Ran⁡S\operatorname{Ran} S は閉である。
  3. SS が単射であることと全射であることは同値であり、このとき S−1∈B(X)S^{-1} \in \mathcal{B}(X)。

証明. 1:N=ker⁡SN = \ker S 上では x=Txx = Tx なので BN=T(BN)B_N = T(B_N) は相対コンパクトかつ閉、すなわちコンパクトである。リースの定理 1.23 により dim⁡N<∞\dim N < \infty。

2:まず、ある c>0c > 0 ですべての xx について ∥Sx∥≥c d(x,N)\lVert Sx \rVert \geq c\ d(x, N) となることを示す。そうでないとすると、∥Sxn∥<d(xn,N)/n\lVert Sx_n \rVert < d(x_n, N)/n となる xnx_n がとれる。スカラー倍して d(xn,N)=1d(x_n, N) = 1 とし、∥xn−zn∥<2\lVert x_n - z_n \rVert < 2 となる zn∈Nz_n \in N で xnx_n を wn=xn−znw_n = x_n - z_n に置き換えると、d(wn,N)=1d(w_n, N) = 1, ∥wn∥<2\lVert w_n \rVert < 2, ∥Swn∥<1/n\lVert Sw_n \rVert < 1/n。TT はコンパクトなので部分列で Twnk→vTw_{n_k} \to v。すると wnk=Swnk+Twnk→vw_{n_k} = Sw_{n_k} + Tw_{n_k} \to v で、Sv=lim⁡Swnk=0Sv = \lim Sw_{n_k} = 0 より v∈Nv \in N。これは d(wnk,N)≤∥wnk−v∥→0d(w_{n_k}, N) \leq \lVert w_{n_k} - v \rVert \to 0 を意味し、矛盾である。

さて Sxn→ySx_n \to y とすると、d(xn−xm,N)≤c−1∥Sxn−Sxm∥d(x_n - x_m, N) \leq c^{-1} \lVert Sx_n - Sx_m \rVert なので ([xn])([x_n]) は商空間 X/NX/N(命題 1.25 によりバナッハ空間)のコーシー列であり、ある [x][x] に収束する。zn∈Nz_n \in N を ∥xn−x−zn∥<d(xn−x,N)+1/n\lVert x_n - x - z_n \rVert < d(x_n - x, N) + 1/n となるようにとれば xn−zn→xx_n - z_n \to x、よって y=lim⁡S(xn−zn)=Sxy = \lim S(x_n - z_n) = Sx。

3:単射 ⇒ 全射:SS が単射だが全射でないとし、Xn=Sn(X)X_n = S^n(X) とおく。Sn=I−TnS^n = I - T_n(Tn=−∑k=1n(nk)(−T)kT_n = -\sum_{k=1}^n \binom{n}{k}(-T)^k はコンパクト)なので、2 により XnX_n は閉である。Xn+1=XnX_{n+1} = X_n となる nn があるとすると、x∉X1x \notin X_1 に対し Snx∈Xn+1S^n x \in X_{n+1} より Snx=Sn+1yS^n x = S^{n+1} y となる yy があり、SnS^n の単射性から x=Sy∈X1x = Sy \in X_1 となって矛盾。よって X1⊋X2⊋⋯X_1 \supsetneq X_2 \supsetneq \cdots。リースの補題 1.22 により、yn∈Xny_n \in X_n, ∥yn∥=1\lVert y_n \rVert = 1, d(yn,Xn+1)≥1/2d(y_n, X_{n+1}) \geq 1/2 となる yny_n がとれる。n<mn < m なら

Tyn−Tym=yn−(Syn+ym−Sym)Ty_n - Ty_m = y_n - (Sy_n + y_m - Sy_m)

で、括弧内は Xn+1X_{n+1} に属する(Syn∈Xn+1Sy_n \in X_{n+1}, ym∈Xm⊂Xn+1y_m \in X_m \subset X_{n+1}, Sym∈Xm+1Sy_m \in X_{m+1})ので ∥Tyn−Tym∥≥1/2\lVert Ty_n - Ty_m \rVert \geq 1/2。これは TT のコンパクト性に反する。

全射 ⇒ 単射:SS が全射で Sx1=0Sx_1 = 0, x1≠0x_1 \neq 0 とする。全射性から Sxk+1=xkSx_{k+1} = x_k となる x2,x3,…x_2, x_3, \dots がとれ、Skxk+1=x1≠0S^k x_{k+1} = x_1 \neq 0, Sk+1xk+1=0S^{k+1} x_{k+1} = 0。よって Nk=ker⁡SkN_k = \ker S^k(1 により有限次元で閉)は狭義単調増加である。リースの補題で yk∈Nky_k \in N_k, ∥yk∥=1\lVert y_k \rVert = 1, d(yk,Nk−1)≥1/2d(y_k, N_{k-1}) \geq 1/2 をとると、k>lk > l なら Tyk−Tyl=yk−(Syk+yl−Syl)Ty_k - Ty_l = y_k - (Sy_k + y_l - Sy_l) の括弧内は Nk−1N_{k-1} に属し、同様に矛盾する。

SS が全単射なら、系 3.10 により S−1S^{-1} は有界である。□\square

λ≠0\lambda \neq 0 なら λI−T=λ(I−T/λ)\lambda I - T = \lambda(I - T/\lambda) にも定理 5.10 が適用できる。ヒルベルト空間では、さらに随伴を使って可解条件を記述できる。

定理 5.11(フレドホルムの択一定理, Fredholm alternative)HH をヒルベルト空間、T∈K(H)T \in \mathcal{K}(H)、λ≠0\lambda \neq 0 とする。

  1. λI−T\lambda I - T が単射であることと全射であることは同値である。すなわち、方程式 (λI−T)u=f(\lambda I - T)u = f は、すべての ff に対してただ一つの解をもつか、または斉次方程式 (λI−T)u=0(\lambda I - T)u = 0 が非自明な解をもつかのどちらかである。
  2. dim⁡ker⁡(λI−T)=dim⁡ker⁡(λˉI−T∗)<∞\dim \ker(\lambda I - T) = \dim \ker(\bar{\lambda} I - T^{\ast}) < \infty。
  3. (λI−T)u=f(\lambda I - T)u = f が解をもつための必要十分条件は、f⊥ker⁡(λˉI−T∗)f \perp \ker(\bar{\lambda} I - T^{\ast}) である。

証明. 1 は定理 5.10 の 3。3:定理 5.10 の 2 より値域は閉なので、命題 2.22 により Ran⁡(λI−T)=ker⁡((λI−T)∗)⊥=ker⁡(λˉI−T∗)⊥\operatorname{Ran}(\lambda I - T) = \ker((\lambda I - T)^{\ast})^\perp = \ker(\bar{\lambda} I - T^{\ast})^\perp。

2:有限次元性は定理 5.10 の 1(T∗T^{\ast} もコンパクト:定理 5.7)。T/λT/\lambda を考えて λ=1\lambda = 1 としてよい。定理 5.6 により T=F+RT = F + R(FF は有限ランク、∥R∥<1\lVert R \rVert < 1)と書ける。I−RI - R はノイマン級数で可逆であり、I−T=(I−R)(I−G)I - T = (I - R)(I - G)、G=(I−R)−1FG = (I - R)^{-1} F は有限ランクである。I−RI - R と (I−R)∗=I−R∗(I - R)^{\ast} = I - R^{\ast} は可逆なので

ker⁡(I−T)=ker⁡(I−G),ker⁡(I−T∗)=(I−R∗)−1ker⁡(I−G∗)\ker(I - T) = \ker(I - G), \qquad \ker(I - T^{\ast}) = (I - R^{\ast})^{-1} \ker(I - G^{\ast})

となり、dim⁡ker⁡(I−G)=dim⁡ker⁡(I−G∗)\dim \ker(I - G) = \dim \ker(I - G^{\ast}) を示せばよい。v1,…,vmv_1, \dots, v_m を Ran⁡G\operatorname{Ran} G の正規直交基底とすると Gx=∑i⟨Gx,vi⟩vi=∑i⟨x,ui⟩viGx = \sum_i \langle Gx, v_i \rangle v_i = \sum_i \langle x, u_i \rangle v_i(ui=G∗viu_i = G^{\ast} v_i)、G∗x=∑i⟨x,vi⟩uiG^{\ast} x = \sum_i \langle x, v_i \rangle u_i。E=span⁡{ui,vi}E = \operatorname{span} \lbrace u_i, v_i \rbrace とおくと、GG と G∗G^{\ast} は EE を EE に写し、E⊥E^\perp 上で 00 である。x=e+e′x = e + e'(e∈Ee \in E, e′∈E⊥e' \in E^\perp)と分解すれば、(I−G)x=(e−Ge)+e′(I - G)x = (e - Ge) + e' で e−Ge∈Ee - Ge \in E なので、ker⁡(I−G)=ker⁡(IE−A)\ker(I - G) = \ker(I_E - A)(A=G∣EA = G\vert_E)。同様に ker⁡(I−G∗)=ker⁡(IE−A∗)\ker(I - G^{\ast}) = \ker(I_E - A^{\ast}) で、A∗=G∗∣EA^{\ast} = G^{\ast}\vert_E は有限次元空間 EE での AA の随伴である。行列の階数は共役転置で変わらないので、次元定理より両者の次元は等しい。□\square

例 5.12(退化核の積分方程式)L2[0,1]L^2[0,1] で u(s)−λ∫01st u(t) dt=f(s)u(s) - \lambda \int_0^1 st\ u(t)\ dt = f(s) を考える。c=∫01tu(t) dtc = \int_0^1 t u(t)\ dt とおくと u=f+λcsu = f + \lambda c s で、両辺に tt を掛けて積分すると c(1−λ/3)=∫01tf(t) dtc(1 - \lambda/3) = \int_0^1 t f(t)\ dt。

  • λ≠3\lambda \neq 3 なら、すべての ff に対してただ一つの解 u(s)=f(s)+3λs3−λ∫01tf(t) dtu(s) = f(s) + \frac{3\lambda s}{3 - \lambda} \int_0^1 t f(t)\ dt がある。
  • λ=3\lambda = 3 なら、斉次方程式は非自明解 u=su = s をもつ。核 stst は実対称なので T∗=TT^{\ast} = T で、定理 5.11 の可解条件は f⊥sf \perp s、すなわち ∫01tf(t) dt=0\int_0^1 t f(t)\ dt = 0 である。このとき解は u=f+csu = f + cs(cc は任意)で、確かに一意でない。

5.5 コンパクト作用素のスペクトル

スペクトルは第6章で詳しく扱うが、ここではコンパクト作用素について必要な定義だけ述べる。

定義 5.13 複素バナッハ空間 XX 上の T∈B(X)T \in \mathcal{B}(X) について、λI−T\lambda I - T が全単射でない λ∈C\lambda \in \mathbb{C} の全体をスペクトル (spectrum) σ(T)\sigma(T) という(全単射なら逆は自動的に有界:系 3.10)。ker⁡(λI−T)≠{0}\ker(\lambda I - T) \neq \lbrace 0 \rbrace となる λ\lambda を固有値 (eigenvalue) という。

有限次元ではスペクトルは固有値の集合に一致する。無限次元では、固有値でないスペクトルの点がありうる(例:ℓ2\ell^2 上の MaM_a, an=1/na_n = 1/n の 00)。

定理 5.14(コンパクト作用素のスペクトル)XX を無限次元の複素バナッハ空間、T∈K(X)T \in \mathcal{K}(X) とする。

  1. 0∈σ(T)0 \in \sigma(T)。
  2. σ(T)∖{0}\sigma(T) \setminus \lbrace 0 \rbrace の点はすべて固有値であり、固有空間は有限次元である。
  3. 各 ε>0\varepsilon > 0 について、∣λ∣≥ε\lvert \lambda \rvert \geq \varepsilon を満たす λ∈σ(T)\lambda \in \sigma(T) は有限個である。したがって σ(T)\sigma(T) は高々可算で、σ(T)∖{0}\sigma(T) \setminus \lbrace 0 \rbrace が無限集合ならそれは 00 に収束する列である。

証明. 1:定理 5.3 の後の注意による。2:定理 5.10 を T/λT/\lambda に適用すればよい。

3:∣λn∣≥ε\lvert \lambda_n \rvert \geq \varepsilon を満たす相異なる固有値の無限列 (λn)(\lambda_n) があるとし、固有ベクトル xnx_n をとる。相異なる固有値の固有ベクトルは一次独立なので、En=span⁡{x1,…,xn}E_n = \operatorname{span} \lbrace x_1, \dots, x_n \rbrace は狭義単調増加で、TEn⊂EnT E_n \subset E_n、(λnI−T)En⊂En−1(\lambda_n I - T) E_n \subset E_{n-1} である((λn−T)xk=(λn−λk)xk(\lambda_n - T)x_k = (\lambda_n - \lambda_k)x_k)。リースの補題で yn∈Eny_n \in E_n, ∥yn∥=1\lVert y_n \rVert = 1, d(yn,En−1)≥1/2d(y_n, E_{n-1}) \geq 1/2 をとる。n>mn > m なら

Tyn−Tym=λnyn−((λnI−T)yn+Tym)Ty_n - Ty_m = \lambda_n y_n - \bigl( (\lambda_n I - T) y_n + T y_m \bigr)

で括弧内は En−1E_{n-1} に属するので、∥Tyn−Tym∥≥∣λn∣/2≥ε/2\lVert Ty_n - Ty_m \rVert \geq \lvert \lambda_n \rvert / 2 \geq \varepsilon/2。これはコンパクト性に反する。□\square

例 5.15(固有値をもたないコンパクト作用素)ヴォルテラ作用素 VV(C[0,1]C[0,1] 上でも L2[0,1]L^2[0,1] 上でもコンパクト)は固有値をもたない。Vf=λfVf = \lambda f とすると、λ=0\lambda = 0 なら ∫0sf=0\int_0^s f = 0(∀s\forall s)から f=0f = 0。λ≠0\lambda \neq 0 なら f=λ−1Vff = \lambda^{-1} Vf は連続かつ微分可能で f′=λ−1ff' = \lambda^{-1} f, f(0)=0f(0) = 0 なので f=0f = 0。定理 5.14 より σ(V)={0}\sigma(V) = \lbrace 0 \rbrace であり、しかも 00 は固有値でない。有限次元のべき零行列(スペクトル {0}\lbrace 0 \rbrace)では 00 は必ず固有値だったことと対照的である。

5.6 コンパクト自己共役作用素のスペクトル定理

エルミート行列は固有ベクトルからなる正規直交基底で対角化できた。コンパクト自己共役作用素でも同じことが成り立つ。鍵は、固有値の存在を「最大化問題」で示すことである。

補題 5.16 HH をヒルベルト空間、T∈K(H)T \in \mathcal{K}(H) を自己共役とすると、∥T∥\lVert T \rVert または −∥T∥-\lVert T \rVert は TT の固有値である(H≠{0}H \neq \lbrace 0 \rbrace)。また TT の固有値は実数で、異なる固有値の固有ベクトルは直交する。

証明. 後半:Tx=λxTx = \lambda x, ∥x∥=1\lVert x \rVert = 1 なら λ=⟨Tx,x⟩∈R\lambda = \langle Tx, x \rangle \in \mathbb{R}(命題 2.25)。Ty=μyTy = \mu y, μ≠λ\mu \neq \lambda なら λ⟨x,y⟩=⟨Tx,y⟩=⟨x,Ty⟩=μ⟨x,y⟩\lambda \langle x, y \rangle = \langle Tx, y \rangle = \langle x, Ty \rangle = \mu \langle x, y \rangle より ⟨x,y⟩=0\langle x, y \rangle = 0。

前半:T=0T = 0 なら明らか。T≠0T \neq 0 とする。命題 2.25 により ∥T∥=sup⁡∥x∥=1∣⟨Tx,x⟩∣\lVert T \rVert = \sup_{\lVert x \rVert = 1} \lvert \langle Tx, x \rangle \rvert なので、単位ベクトル xnx_n と実数 λ\lambda(∣λ∣=∥T∥\lvert \lambda \rvert = \lVert T \rVert)で ⟨Txn,xn⟩→λ\langle Tx_n, x_n \rangle \to \lambda となるものがとれる。すると

∥Txn−λxn∥2=∥Txn∥2−2λ⟨Txn,xn⟩+λ2≤2λ2−2λ⟨Txn,xn⟩→0\lVert Tx_n - \lambda x_n \rVert^2 = \lVert Tx_n \rVert^2 - 2\lambda \langle Tx_n, x_n \rangle + \lambda^2 \leq 2\lambda^2 - 2\lambda \langle Tx_n, x_n \rangle \to 0

コンパクト性より部分列で Txnk→yTx_{n_k} \to y となり、xnk=λ−1(Txnk−(Txnk−λxnk))→λ−1y=:xx_{n_k} = \lambda^{-1}(Tx_{n_k} - (Tx_{n_k} - \lambda x_{n_k})) \to \lambda^{-1} y =: x。∥x∥=1\lVert x \rVert = 1 かつ Tx=lim⁡Txnk=λxTx = \lim Tx_{n_k} = \lambda x。□\square

定理 5.17(コンパクト自己共役作用素のスペクトル定理)HH をヒルベルト空間、T∈K(H)T \in \mathcal{K}(H) を自己共役とする。有限または可算な正規直交系 (en)(e_n) と実数 λn≠0\lambda_n \neq 0(∣λ1∣≥∣λ2∣≥⋯\lvert \lambda_1 \rvert \geq \lvert \lambda_2 \rvert \geq \cdots、無限個なら λn→0\lambda_n \to 0)で、Ten=λnenTe_n = \lambda_n e_n かつ

Tx=∑nλn⟨x,en⟩en(x∈H)Tx = \sum_n \lambda_n \langle x, e_n \rangle e_n \qquad (x \in H)

となるものが存在する。H=ker⁡T⊕span⁡‾{en}H = \ker T \oplus \overline{\operatorname{span}} \lbrace e_n \rbrace であり、TT の 00 でない固有値は λn\lambda_n たちに限られ、固有値 μ≠0\mu \neq 0 の固有空間は λn=μ\lambda_n = \mu となる ene_n たちで張られる。特に HH が可分なら、TT の固有ベクトルからなる正規直交基底が存在する。

証明. H1=HH_1 = H とする。T∣Hn≠0T\vert_{H_n} \neq 0 である限り、補題 5.16 を T∣HnT\vert_{H_n} に適用して en∈Hne_n \in H_n, ∥en∥=1\lVert e_n \rVert = 1, Ten=λnenTe_n = \lambda_n e_n, ∣λn∣=∥T∣Hn∥\lvert \lambda_n \rvert = \lVert T\vert_{H_n} \rVert をとり、Hn+1={e1,…,en}⊥H_{n+1} = \lbrace e_1, \dots, e_n \rbrace^\perp とおく。ここで Hn+1H_{n+1} は TT で不変である(x⊥ekx \perp e_k なら ⟨Tx,ek⟩=⟨x,Tek⟩=λk⟨x,ek⟩=0\langle Tx, e_k \rangle = \langle x, Te_k \rangle = \lambda_k \langle x, e_k \rangle = 0)ので、T∣Hn+1T\vert_{H_{n+1}} は Hn+1H_{n+1} 上のコンパクト自己共役作用素である。Hn+1⊂HnH_{n+1} \subset H_n より ∣λn∣\lvert \lambda_n \rvert は単調非増加である。

yn=x−∑k≤n⟨x,ek⟩eky_n = x - \sum_{k \leq n} \langle x, e_k \rangle e_k とおくと yn∈Hn+1y_n \in H_{n+1}、∥yn∥≤∥x∥\lVert y_n \rVert \leq \lVert x \rVert で、Tyn=Tx−∑k≤nλk⟨x,ek⟩ekTy_n = Tx - \sum_{k \leq n} \lambda_k \langle x, e_k \rangle e_k。操作が nn 回で止まる(T∣Hn+1=0T\vert_{H_{n+1}} = 0)なら Tyn=0Ty_n = 0 で展開式を得る。止まらないなら λn→0\lambda_n \to 0 である:∣λn∣≥ε\lvert \lambda_n \rvert \geq \varepsilon が続けば ∥Ten−Tem∥2=λn2+λm2≥2ε2\lVert Te_n - Te_m \rVert^2 = \lambda_n^2 + \lambda_m^2 \geq 2\varepsilon^2 となりコンパクト性に反する。すると ∥Tyn∥≤∣λn+1∣∥x∥→0\lVert Ty_n \rVert \leq \lvert \lambda_{n+1} \rvert \lVert x \rVert \to 0 で展開式を得る。

展開式から Ran⁡T⊂span⁡‾{en}\operatorname{Ran} T \subset \overline{\operatorname{span}} \lbrace e_n \rbrace、また en=T(en/λn)e_n = T(e_n/\lambda_n) なので Ran⁡T‾=span⁡‾{en}\overline{\operatorname{Ran} T} = \overline{\operatorname{span}} \lbrace e_n \rbrace。ker⁡T=ker⁡T∗=(Ran⁡T)⊥\ker T = \ker T^{\ast} = (\operatorname{Ran} T)^\perp(命題 2.22)より直交分解を得る。Tx=μxTx = \mu x(μ≠0\mu \neq 0)なら μ⟨x,en⟩=⟨Tx,en⟩=λn⟨x,en⟩\mu \langle x, e_n \rangle = \langle Tx, e_n \rangle = \lambda_n \langle x, e_n \rangle なので、λn≠μ\lambda_n \neq \mu なら ⟨x,en⟩=0\langle x, e_n \rangle = 0 で、x=μ−1Tx=∑λn=μ⟨x,en⟩enx = \mu^{-1} Tx = \sum_{\lambda_n = \mu} \langle x, e_n \rangle e_n。可分なら ker⁡T\ker T の正規直交基底(高々可算)を (en)(e_n) に加えればよい。□\square

ヒント

証明は「∣⟨Tx,x⟩∣\lvert \langle Tx, x \rangle \rvert を単位球面上で最大化する → 最大値を実現する xx が固有ベクトル → その直交補空間で繰り返す」という手順であり、有限次元のレイリー商による議論(02-linear-algebra 第8章)と同じである。無限次元では最大値の存在が問題で、そこでコンパクト性が使われる。正の固有値を重複度込みで大きい順に μ1≥μ2≥⋯\mu_1 \geq \mu_2 \geq \cdots と並べると、少なくとも kk 個の正の固有値があるとき、ミニマックス原理 μk=min⁡dim⁡F=k−1sup⁡{⟨Tx,x⟩∣x⊥F, ∥x∥=1}\mu_k = \min_{\dim F = k-1} \sup \lbrace \langle Tx, x \rangle \mid x \perp F,\ \lVert x \rVert = 1 \rbrace も有限次元と同様に成り立つ(証明は省略)。

5.7 応用:スツルム–リウヴィル問題の固有関数展開

p∈C1[a,b]p \in C^1[a,b], p>0p > 0、q∈C[a,b]q \in C[a,b] を実数値で q≥0q \geq 0 とし、微分作用素 Lu=−(pu′)′+quLu = -(pu')' + qu にディリクレ境界条件 u(a)=u(b)=0u(a) = u(b) = 0 を課した固有値問題

Lu=λu,u(a)=u(b)=0Lu = \lambda u, \qquad u(a) = u(b) = 0

を考える(スツルム–リウヴィル問題)。LL は非有界だが、その逆(グリーン作用素)はコンパクトな積分作用素になる。これが定理 5.17 を使う鍵である。以下、実数値関数の L2[a,b]L^2[a,b] で考える。

準備として、Lu=0Lu = 0, u(a)=u(b)=0u(a) = u(b) = 0 の C2C^2 解は u=0u = 0 に限る:部分積分により 0=∫ab(Lu)u ds=∫ab(pu′2+qu2) ds0 = \int_a^b (Lu) u\ ds = \int_a^b (p u'^2 + q u^2)\ ds なので u′=0u' = 0、境界条件から u=0u = 0。このとき 08-differential-equations 第5章 で示したように、次の性質をもつグリーン関数 (Green's function) GG が存在する:GG は [a,b]2[a,b]^2 上の実数値連続関数で G(s,t)=G(t,s)G(s,t) = G(t,s) を満たし、各 f∈C[a,b]f \in C[a,b] に対し u=Gfu = \mathcal{G} f, (Gf)(s)=∫abG(s,t)f(t) dt(\mathcal{G} f)(s) = \int_a^b G(s,t) f(t)\ dt は Lu=fLu = f, u(a)=u(b)=0u(a) = u(b) = 0 を満たすただ一つの C2C^2 級関数である。

定理 5.18(固有関数展開)上の設定で次が成り立つ。

  1. 固有値は 0<λ1<λ2<⋯→∞0 < \lambda_1 < \lambda_2 < \cdots \to \infty と並べられ、各固有空間は 1 次元である。
  2. 正規化した実数値の固有関数 (φn)(\varphi_n) は L2[a,b]L^2[a,b] の正規直交基底である。
  3. u∈C2[a,b]u \in C^2[a,b] が u(a)=u(b)=0u(a) = u(b) = 0 を満たせば、u=∑n⟨u,φn⟩φnu = \sum_n \langle u, \varphi_n \rangle \varphi_n は [a,b][a,b] 上で絶対かつ一様に収束する。

証明. 第 1 段:G\mathcal{G} は連続核をもつのでヒルベルト–シュミット作用素(例 5.9)でありコンパクト、核が実対称なので自己共役である。また ∣Gf(s)−Gf(s′)∣≤∥G(s,⋅)−G(s′,⋅)∥2∥f∥2\lvert \mathcal{G}f(s) - \mathcal{G}f(s') \rvert \leq \lVert G(s, \cdot) - G(s', \cdot) \rVert_2 \lVert f \rVert_2 なので、G\mathcal{G} は L2L^2 を C[a,b]C[a,b] に写す。G\mathcal{G} は単射である:Gf=0\mathcal{G}f = 0 とする。境界条件を満たす v∈C2v \in C^2 は一意性から v=G(Lv)v = \mathcal{G}(Lv) と書けるので、⟨f,v⟩=⟨f,G(Lv)⟩=⟨Gf,Lv⟩=0\langle f, v \rangle = \langle f, \mathcal{G}(Lv) \rangle = \langle \mathcal{G}f, Lv \rangle = 0。このような vv には Cc∞((a,b))C_c^\infty((a,b)) の元がすべて含まれ、それらは L2L^2 で稠密なので f=0f = 0。

第 2 段:定理 5.17 と ker⁡G={0}\ker \mathcal{G} = \lbrace 0 \rbrace より、G\mathcal{G} の固有関数 φn\varphi_n(固有値 μn≠0\mu_n \neq 0)からなる正規直交基底がある(L2L^2 は無限次元なので無限個)。φn=μn−1Gφn\varphi_n = \mu_n^{-1} \mathcal{G} \varphi_n は連続で、したがって φn=G(μn−1φn)\varphi_n = \mathcal{G}(\mu_n^{-1} \varphi_n) は C2C^2 級、境界条件を満たし Lφn=μn−1φnL\varphi_n = \mu_n^{-1} \varphi_n。逆に Lu=λuLu = \lambda u の C2C^2 解 u≠0u \neq 0 は、λ≠0\lambda \neq 0 で u=G(Lu)=λGuu = \mathcal{G}(Lu) = \lambda \mathcal{G} u を満たす。よってスツルム–リウヴィル問題の固有値は λn=1/μn\lambda_n = 1/\mu_n たちである。部分積分により λ∥u∥2=∫(pu′2+qu2)>0\lambda \lVert u \rVert^2 = \int (p u'^2 + q u^2) > 0 なので固有値は正である。固有空間が 1 次元であること:u,vu, v が同じ λ\lambda の固有関数なら、w=v′(a)u−u′(a)vw = v'(a) u - u'(a) v は同じ 2 階線形微分方程式の解で w(a)=w′(a)=0w(a) = w'(a) = 0 を満たすので w=0w = 0。u′(a)≠0u'(a) \neq 0(さもなくば u≡0u \equiv 0)なので vv は uu の定数倍である。μn→0\mu_n \to 0 より λn→∞\lambda_n \to \infty。

第 3 段:Gs=G(s,⋅)G_s = G(s, \cdot) とおくと μnφn(s)=⟨Gs,φn⟩\mu_n \varphi_n(s) = \langle G_s, \varphi_n \rangle なので、ベッセルの不等式から ∑nμn2φn(s)2≤∥Gs∥22≤M2(b−a)\sum_n \mu_n^2 \varphi_n(s)^2 \leq \lVert G_s \rVert_2^2 \leq M^2(b - a)(M=max⁡∣G∣M = \max \lvert G \rvert)。uu を 3 の関数とし f=Luf = Lu とおくと u=Gfu = \mathcal{G} f で、⟨u,φn⟩=⟨f,Gφn⟩=μn⟨f,φn⟩\langle u, \varphi_n \rangle = \langle f, \mathcal{G} \varphi_n \rangle = \mu_n \langle f, \varphi_n \rangle。コーシー–シュワルツより

∑n≥N∣⟨u,φn⟩φn(s)∣≤(∑n≥N∣⟨f,φn⟩∣2)1/2Mb−a\sum_{n \geq N} \lvert \langle u, \varphi_n \rangle \varphi_n(s) \rvert \leq \Bigl( \sum_{n \geq N} \lvert \langle f, \varphi_n \rangle \rvert^2 \Bigr)^{1/2} M \sqrt{b - a}

右辺は ss によらず N→∞N \to \infty で 00 に収束するので、級数は絶対かつ一様に収束する。その和は連続で、L2L^2 での和 uu とほとんど至るところ一致するので、至るところ一致する。□\square

例 5.19 −u′′=λu-u'' = \lambda u, u(0)=u(1)=0u(0) = u(1) = 0 では、G(s,t)=min⁡(s,t)(1−max⁡(s,t))G(s,t) = \min(s,t)(1 - \max(s,t)) である(u(s)=(1−s)∫0stf(t) dt+s∫s1(1−t)f(t) dtu(s) = (1 - s) \int_0^s t f(t)\ dt + s \int_s^1 (1 - t) f(t)\ dt を 2 回微分すると u′′=−fu'' = -f)。固有値は λn=n2π2\lambda_n = n^2 \pi^2、固有関数は φn=2sin⁡(nπs)\varphi_n = \sqrt{2} \sin(n\pi s) であり、定理 5.18 から {2sin⁡(nπs)}\lbrace \sqrt{2} \sin(n\pi s) \rbrace の完全性(問題 2.7)が改めて従う。

5.8 フレドホルム作用素と指数

定理 5.11 の 2 は、「解の自由度」と「可解条件の数」が一致することを述べている。この差を一般の作用素について測るのが指数である。

定義 5.20 バナッハ空間の間の T∈B(X,Y)T \in \mathcal{B}(X, Y) がフレドホルム作用素 (Fredholm operator) であるとは、dim⁡ker⁡T<∞\dim \ker T < \infty、Ran⁡T\operatorname{Ran} T が閉、かつ codim⁡Ran⁡T:=dim⁡(Y/Ran⁡T)<∞\operatorname{codim} \operatorname{Ran} T := \dim(Y / \operatorname{Ran} T) < \infty であることをいう。その指数 (index) を ind⁡T=dim⁡ker⁡T−codim⁡Ran⁡T\operatorname{ind} T = \dim \ker T - \operatorname{codim} \operatorname{Ran} T と定める。

例 5.21

  1. 有限次元では、次元定理により ind⁡A=dim⁡X−dim⁡Y\operatorname{ind} A = \dim X - \dim Y。正方行列の指数は常に 00 で、これが「単射 ⇔ 全射」の言い換えである。
  2. KK がコンパクトなら I−KI - K は指数 00 のフレドホルム作用素である(ヒルベルト空間では定理 5.11:Ran⁡(I−K)=ker⁡(I−K∗)⊥\operatorname{Ran}(I - K) = \ker(I - K^{\ast})^\perp なので余次元は dim⁡ker⁡(I−K∗)\dim \ker(I - K^{\ast}))。
  3. ℓ2\ell^2 の右シフト SS は単射で Ran⁡S=e1⊥\operatorname{Ran} S = e_1^\perp なので ind⁡S=−1\operatorname{ind} S = -1、左シフト LL は ind⁡L=1\operatorname{ind} L = 1。SkS^k の指数は −k-k。無限次元では指数が 00 でない作用素があり、それが「単射だが全射でない」現象の定量化になっている。

定理 5.22(フレドホルム作用素の基本定理)X,Y,ZX, Y, Z をバナッハ空間とする。

  1. (アトキンソンの定理)T∈B(X,Y)T \in \mathcal{B}(X, Y) がフレドホルムであることと、RT−IRT - I と TR−ITR - I がともにコンパクトとなる R∈B(Y,X)R \in \mathcal{B}(Y, X) が存在することは同値である。
  2. フレドホルム作用素全体は B(X,Y)\mathcal{B}(X, Y) の開集合で、指数はその上で局所定数である。
  3. TT がフレドホルムで KK がコンパクトなら、T+KT + K もフレドホルムで ind⁡(T+K)=ind⁡T\operatorname{ind}(T + K) = \operatorname{ind} T。
  4. T ⁣:X→YT\colon X \to Y, S ⁣:Y→ZS\colon Y \to Z がフレドホルムなら ind⁡(ST)=ind⁡S+ind⁡T\operatorname{ind}(ST) = \operatorname{ind} S + \operatorname{ind} T。

証明は省略する(Conway の本などを参照)。例えば 3 から、ℓ2\ell^2 の右シフトにどんなコンパクト作用素を加えても可逆にはならない(指数 −1-1 は 00 でない)。指数はコンパクトな摂動や連続変形で変わらない「位相的」な量であり、楕円型微分作用素の指数を位相的に計算するアティヤ–シンガーの指数定理へとつながる(17-riemannian-geometry 第7章)。

まとめ

  • コンパクト作用素は有界列を収束部分列をもつ列に写す作用素であり、有限ランク作用素・連続核の積分作用素・c0c_0 の列による対角作用素が代表例である。シフトや恒等作用素(無限次元)はコンパクトでない。
  • コンパクト作用素の全体は閉な両側イデアルである。ヒルベルト空間では有限ランク作用素のノルム極限と一致し、随伴もコンパクトである(シャウダー)。
  • コンパクト作用素は弱収束をノルム収束に変える。無限次元ではコンパクト作用素は可逆でない。
  • ヒルベルト–シュミット作用素(∑∥Ten∥2<∞\sum \lVert Te_n \rVert^2 < \infty)はコンパクトで、L2L^2 核の積分作用素がその例である。
  • リース–シャウダー理論:I−KI - K の核は有限次元、値域は閉で、単射 ⇔ 全射が成り立つ。フレドホルムの択一定理により (λI−K)u=f(\lambda I - K)u = f の可解条件は f⊥ker⁡(λˉI−K∗)f \perp \ker(\bar{\lambda} I - K^{\ast}) である。
  • コンパクト作用素のスペクトルは 00 と、00 にしか集積しない固有値(有限次元の固有空間)からなる。00 は固有値とは限らない(ヴォルテラ作用素)。
  • コンパクト自己共役作用素は固有ベクトルの正規直交系で対角化できる。グリーン作用素に適用すると、スツルム–リウヴィル問題の固有関数展開が得られる。
  • フレドホルム作用素の指数は「単射 ⇔ 全射」の破れを測る不変量で、コンパクトな摂動で変わらない。

演習問題

問題 5.1 ★ ℓ2\ell^2 上の Tx=(xn/n)nTx = (x_n / n)_n について、TT がコンパクトであること、固有値と固有空間、σ(T)\sigma(T) を求めよ。また 00 は固有値でないが σ(T)\sigma(T) に属することを確かめよ。

解答

a=(1/n)∈c0a = (1/n) \in c_0 なので例 5.5 よりコンパクト。Ten=en/nTe_n = e_n/n で、Tx=λxTx = \lambda x なら各成分で (1/n−λ)xn=0(1/n - \lambda) x_n = 0 だから、固有値は 1/n1/n(n∈Nn \in \mathbb{N})で固有空間は Cen\mathbb{C} e_n。TT は単射なので 00 は固有値でないが、無限次元なので定理 5.14 より 0∈σ(T)0 \in \sigma(T)(例 3.12 のとおり値域は閉でない)。定理 5.14 より σ(T)={0}∪{1/n∣n∈N}\sigma(T) = \lbrace 0 \rbrace \cup \lbrace 1/n \mid n \in \mathbb{N} \rbrace。

問題 5.2 ★ ℓ2\ell^2 上の対角作用素 MaM_a で、an=n−1/2a_n = n^{-1/2} のものはコンパクトだがヒルベルト–シュミットでないことを確かめよ。また L2[0,1]L^2[0,1] 上の V2V^2 の核を求め、∥V2∥HS\lVert V^2 \rVert_{HS} を計算せよ。

解答

a∈c0a \in c_0 なのでコンパクト、∥Ma∥HS2=∑n∥Maen∥2=∑n1/n=∞\lVert M_a \rVert_{HS}^2 = \sum_n \lVert M_a e_n \rVert^2 = \sum_n 1/n = \infty。

(V2f)(s)=∫0s∫0rf(t) dt dr=∫0s(s−t)f(t) dt(V^2 f)(s) = \int_0^s \int_0^r f(t)\ dt\ dr = \int_0^s (s - t) f(t)\ dt(フビニ)なので、核は (s−t)1{t≤s}(s - t) \mathbf{1}_{\lbrace t \leq s \rbrace}。∥V2∥HS2=∫01∫0s(s−t)2 dt ds=∫01s33 ds=112\lVert V^2 \rVert_{HS}^2 = \int_0^1 \int_0^s (s - t)^2\ dt\ ds = \int_0^1 \frac{s^3}{3}\ ds = \frac{1}{12} なので ∥V2∥HS=1/(23)\lVert V^2 \rVert_{HS} = 1/(2\sqrt{3})。

問題 5.3 ★★ X,YX, Y をバナッハ空間、T∈K(X,Y)T \in \mathcal{K}(X, Y) とする。Ran⁡T\operatorname{Ran} T が閉ならば TT は有限ランクであることを示せ。

解答

Z=Ran⁡TZ = \operatorname{Ran} T はバナッハ空間で、T ⁣:X→ZT\colon X \to Z は有界な全射である。開写像定理 3.9 より T(BX(0,1))⊃BZ(0,δ)T(B_X(0,1)) \supset B_Z(0, \delta) となる δ>0\delta > 0 がある。T(BX)T(B_X) は相対コンパクトなので、ZZ の閉球 BZ(0,δ/2)‾\overline{B_Z(0, \delta/2)} はコンパクトであり、リースの定理 1.23 より dim⁡Z<∞\dim Z < \infty。

問題 5.4 ★★ HH をヒルベルト空間、T∈B(H)T \in \mathcal{B}(H) とする。「xn⇀xx_n \rightharpoonup x ならば Txn→TxTx_n \to Tx」が成り立てば TT はコンパクトであることを示せ(命題 5.4 の逆)。

解答

(xn)(x_n) を有界列とする。問題 2.9 により弱収束する部分列 xnk⇀xx_{n_k} \rightharpoonup x がある。仮定より Txnk→TxTx_{n_k} \to Tx(ノルム)なので、(Txn)(Tx_n) は収束部分列をもつ。よって TT はコンパクトである。

問題 5.5 ★★ L2[0,1]L^2[0,1] 上の積分作用素 (Kf)(s)=∫01(s+t)f(t) dt(Kf)(s) = \int_0^1 (s + t) f(t)\ dt の 00 でない固有値をすべて求めよ。また、固有値の二乗和が ∥K∥HS2\lVert K \rVert_{HS}^2 に等しいことを確かめよ。

解答

Kf=sA+BKf = s A + B(A=∫01fA = \int_0^1 f, B=∫01tfB = \int_0^1 t f)なので、μ≠0\mu \neq 0 の固有関数は f=αs+βf = \alpha s + \beta の形である。Kf=μfKf = \mu f を A=α/2+βA = \alpha/2 + \beta, B=α/3+β/2B = \alpha/3 + \beta/2 を使って係数比較すると

(1/211/31/2)(αβ)=μ(αβ)\begin{pmatrix} 1/2 & 1 \\ 1/3 & 1/2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} \alpha \\ \beta \end{pmatrix} = \mu \begin{pmatrix} \alpha \\ \beta \end{pmatrix}

特性方程式は (1/2−μ)2=1/3(1/2 - \mu)^2 = 1/3 で、μ=12±13\mu = \frac{1}{2} \pm \frac{1}{\sqrt{3}}。二乗和は 2(14+13)=762(\frac{1}{4} + \frac{1}{3}) = \frac{7}{6}。一方 ∥K∥HS2=∫01∫01(s+t)2 ds dt=13+12+13=76\lVert K \rVert_{HS}^2 = \int_0^1 \int_0^1 (s + t)^2\ ds\ dt = \frac{1}{3} + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} = \frac{7}{6} で一致する(KK は自己共役で、ker⁡K\ker K の外では 2 つの固有ベクトルで対角化されるので、定理 5.17 の正規直交基底で ∥K∥HS\lVert K \rVert_{HS} を計算すればよい)。

問題 5.6 ★★ 例 5.19 のグリーン作用素 G\mathcal{G} について、∥G∥HS2\lVert \mathcal{G} \rVert_{HS}^2 を 2 通りに計算して ∑n=1∞1/n4=π4/90\sum_{n=1}^\infty 1/n^4 = \pi^4/90 を導け。

解答

固有関数の正規直交基底 (φn)(\varphi_n) で計算すると ∥Gφn∥=1/(n2π2)\lVert \mathcal{G} \varphi_n \rVert = 1/(n^2\pi^2) なので ∥G∥HS2=∑n(nπ)−4\lVert \mathcal{G} \rVert_{HS}^2 = \sum_n (n\pi)^{-4}。一方、例 5.9 より、対称性を使って

∥G∥L22=2∫01∫0ts2(1−t)2 ds dt=23∫01t3(1−t)2 dt=23⋅160=190\lVert G \rVert_{L^2}^2 = 2 \int_0^1 \int_0^t s^2 (1 - t)^2\ ds\ dt = \frac{2}{3} \int_0^1 t^3 (1 - t)^2\ dt = \frac{2}{3} \cdot \frac{1}{60} = \frac{1}{90}

(∫01t3(1−t)2 dt=14−25+16=160\int_0^1 t^3(1-t)^2\ dt = \frac{1}{4} - \frac{2}{5} + \frac{1}{6} = \frac{1}{60})。よって ∑nn−4=π4/90\sum_n n^{-4} = \pi^4/90。

問題 5.7 ★★ ℓ2\ell^2 の右シフト SS について、SkS^k と LkL^k の指数を求めよ。また、どんな K∈K(ℓ2)K \in \mathcal{K}(\ell^2) についても S+KS + K は可逆でないことを示せ。

解答

SkS^k は単射で Ran⁡Sk={e1,…,ek}⊥\operatorname{Ran} S^k = \lbrace e_1, \dots, e_k \rbrace^\perp なので ind⁡Sk=−k\operatorname{ind} S^k = -k。LkL^k は全射で ker⁡Lk=span⁡{e1,…,ek}\ker L^k = \operatorname{span} \lbrace e_1, \dots, e_k \rbrace なので ind⁡Lk=k\operatorname{ind} L^k = k。定理 5.22 の 3 より ind⁡(S+K)=−1\operatorname{ind}(S + K) = -1。可逆な作用素は単射かつ全射なので指数 00 であり、S+KS + K は可逆でない。

問題 5.8 ★★★ L2[0,1]L^2[0,1] 上のヴォルテラ作用素について ∥V∥=2/π\lVert V \rVert = 2/\pi を示せ。

解答

∥V∥2=∥V∗V∥\lVert V \rVert^2 = \lVert V^{\ast} V \rVert(定理 2.21)で、V∗VV^{\ast}V はコンパクトな正作用素である。補題 5.16 より ∥V∗V∥\lVert V^{\ast} V \rVert は V∗VV^{\ast} V の最大固有値に等しい(固有値は ⟨V∗Vf,f⟩=∥Vf∥2≥0\langle V^{\ast}Vf, f \rangle = \lVert Vf \rVert^2 \geq 0 より非負)。

V∗Vf=μfV^{\ast} V f = \mu f(μ>0\mu > 0)とし、g=V∗Vfg = V^{\ast} V f、すなわち g(s)=∫s1(Vf)(t) dtg(s) = \int_s^1 (Vf)(t)\ dt とおく。gg は連続で f=g/μf = g/\mu も連続だから gg は C2C^2 級で、g′=−Vfg' = -Vf, g′′=−f=−g/μg'' = -f = -g/\mu, g(1)=0g(1) = 0, g′(0)=−(Vf)(0)=0g'(0) = -(Vf)(0) = 0。ω=μ−1/2\omega = \mu^{-1/2} とおくと g=Acos⁡(ωs)g = A\cos(\omega s) で、cos⁡ω=0\cos \omega = 0 より ω=(k−12)π\omega = (k - \frac{1}{2})\pi。逆に f=cos⁡(ωs)f = \cos(\omega s)(cos⁡ω=0\cos\omega = 0)なら V∗Vf(s)=∫s1sin⁡(ωt)ω dt=cos⁡(ωs)ω2V^{\ast} V f(s) = \int_s^1 \frac{\sin(\omega t)}{\omega}\ dt = \frac{\cos(\omega s)}{\omega^2} で確かに固有関数である。固有値は μk=((k−12)π)−2\mu_k = ((k - \frac{1}{2})\pi)^{-2} で最大は μ1=4/π2\mu_1 = 4/\pi^2。よって ∥V∥=2/π\lVert V \rVert = 2/\pi。

検算:∑kμk=4π2∑k(2k−1)−2=4π2⋅π28=12=∥V∥HS2\sum_k \mu_k = \frac{4}{\pi^2} \sum_k (2k - 1)^{-2} = \frac{4}{\pi^2} \cdot \frac{\pi^2}{8} = \frac{1}{2} = \lVert V \rVert_{HS}^2(例 5.9)で、固有関数 2cos⁡((k−12)πs)\sqrt{2}\cos((k - \frac{1}{2})\pi s) の正規直交基底で ∥V∥HS2=∑k∥Vφk∥2=∑kμk\lVert V \rVert_{HS}^2 = \sum_k \lVert V\varphi_k \rVert^2 = \sum_k \mu_k と計算したものと一致する。

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