Lemma数学ロードマップ

10 関数解析 · 第 4 章

ハーン–バナッハの定理と双対性

目安 8〜12 時間定理など 16演習 8 問

この章の目標

  • ハーン–バナッハの定理(解析形)をツォルンの補題から証明し、その帰結(ノルムを達成する汎関数、点の分離)を使える
  • 凸集合の分離定理(幾何形)を証明できる
  • (ℓp)∗=ℓq(\ell^p)^{\ast} = \ell^q, c0∗=ℓ1c_0^{\ast} = \ell^1 を証明し、反射性を具体例で判定できる
  • 弱位相・弱 ∗\ast 位相を扱い、バナッハ–アラオグルの定理を証明して使える

前提:第1章〜第3章、00-foundations 第6章(ツォルンの補題)、03-topology 第5章(チコノフの定理)

4.1 連続線形汎関数は十分にあるか

有限次元では、x≠0x \neq 0 に対し f(x)≠0f(x) \neq 0 となる線形汎関数(例えば座標)がいつでもあり、双対空間 X∗X^{\ast} は XX と同じ次元をもつ。無限次元のノルム空間では、連続な線形汎関数が十分にあるかどうかは自明でない。ヒルベルト空間ではリースの表現定理が答えを与えたが(定理 2.10)、ℓ∞\ell^\infty や C[0,1]C[0,1] のような空間ではどうか。

ハーン–バナッハの定理はこの問いに肯定的に答える。その結果、ノルム空間 XX はつねに双対空間 X∗X^{\ast} と対になって扱えるようになり、次の 2 つの道具が手に入る。

  • 幾何:凸集合を超平面で分離できる(最適化・凸解析の基礎)。
  • 位相:X∗X^{\ast} を使って XX にノルム位相より弱い位相を入れると、無限次元で失われた単位球のコンパクト性(リースの定理 1.23)を取り戻せる。

4.2 解析形

定義 4.1 実ベクトル空間 XX 上の関数 p ⁣:X→Rp\colon X \to \mathbb{R} が、すべての x,y∈Xx, y \in X と t≥0t \geq 0 について p(x+y)≤p(x)+p(y)p(x + y) \leq p(x) + p(y) および p(tx)=tp(x)p(tx) = t p(x) を満たすとき、劣線形 (sublinear) であるという。ノルムやセミノルムは劣線形である。

定理 4.2(ハーン–バナッハの定理・実の場合, Hahn–Banach theorem)XX を実ベクトル空間、pp を劣線形汎関数、MM を部分空間とし、線形汎関数 f ⁣:M→Rf\colon M \to \mathbb{R} が MM 上で f≤pf \leq p を満たすとする。このとき線形汎関数 F ⁣:X→RF\colon X \to \mathbb{R} で、F∣M=fF\vert_M = f かつ XX 上で F≤pF \leq p となるものが存在する。

証明. 第 1 段(1 次元の拡張):x0∉Mx_0 \notin M とし、M1=M+Rx0M_1 = M + \mathbb{R} x_0 上に拡張する。F(m+tx0)=f(m)+tcF(m + t x_0) = f(m) + tc の形で、すべての m∈Mm \in M, t∈Rt \in \mathbb{R} について f(m)+tc≤p(m+tx0)f(m) + tc \leq p(m + t x_0) となる cc を選べばよい。t>0t > 0 と t<0t < 0 の場合を tt で割って整理すると、条件は

sup⁡m′∈M(f(m′)−p(m′−x0))≤c≤inf⁡m∈M(p(m+x0)−f(m))\sup_{m' \in M} \bigl( f(m') - p(m' - x_0) \bigr) \leq c \leq \inf_{m \in M} \bigl( p(m + x_0) - f(m) \bigr)

となる(t>0t > 0 なら m/tm/t を mm と書き直して c≤p(m+x0)−f(m)c \leq p(m + x_0) - f(m)、t=−s<0t = -s < 0 なら m/sm/s を m′m' と書き直して c≥f(m′)−p(m′−x0)c \geq f(m') - p(m' - x_0))。このような cc が存在するのは、任意の m,m′∈Mm, m' \in M について

f(m′)+f(m)=f(m′+m)≤p(m′+m)≤p(m′−x0)+p(m+x0)f(m') + f(m) = f(m' + m) \leq p(m' + m) \leq p(m' - x_0) + p(m + x_0)

が成り立つからである。

第 2 段(ツォルンの補題):M⊂NM \subset N となる部分空間 NN と、ff を拡張し NN 上で g≤pg \leq p を満たす線形汎関数 gg の組 (N,g)(N, g) 全体を P\mathcal{P} とし、「(N,g)⪯(N′,g′)(N, g) \preceq (N', g') ⇔ N⊂N′N \subset N' かつ g′∣N=gg'\vert_N = g」で順序を入れる。(M,f)∈P(M, f) \in \mathcal{P} なので空でなく、全順序部分集合 {(Nλ,gλ)}\lbrace (N_\lambda, g_\lambda) \rbrace は和集合 ⋃Nλ\bigcup N_\lambda 上で gλg_\lambda をつないだものを上界にもつ。ツォルンの補題により極大元 (N,g)(N, g) が存在する。N≠XN \neq X なら第 1 段により真に大きい拡張が作れて極大性に反するので、N=XN = X であり、F=gF = g が求めるものである。□\square

定理 4.3(複素の場合)XX を複素ベクトル空間、pp をセミノルム、MM を部分空間とし、線形汎関数 f ⁣:M→Cf\colon M \to \mathbb{C} が MM 上で ∣f∣≤p\lvert f \rvert \leq p を満たすとする。このとき ff の線形な拡張 F ⁣:X→CF\colon X \to \mathbb{C} で、XX 上で ∣F∣≤p\lvert F \rvert \leq p となるものが存在する。

証明. XX を実ベクトル空間とみなし、u=Re⁡fu = \operatorname{Re} f とおくと uu は MM 上の実線形汎関数で u≤∣f∣≤pu \leq \lvert f \rvert \leq p。また Im⁡f(x)=−Re⁡(if(x))=−u(ix)\operatorname{Im} f(x) = -\operatorname{Re}(i f(x)) = -u(ix) なので f(x)=u(x)−iu(ix)f(x) = u(x) - i u(ix)。定理 4.2 により uu を XX 上の実線形汎関数 U≤pU \leq p に拡張し、F(x)=U(x)−iU(ix)F(x) = U(x) - i U(ix) とおく。FF は実線形で、F(ix)=U(ix)−iU(−x)=i(U(x)−iU(ix))=iF(x)F(ix) = U(ix) - iU(-x) = i(U(x) - iU(ix)) = iF(x) なので複素線形であり、MM 上で ff に一致する。x∈Xx \in X に対し θ∈R\theta \in \mathbb{R} を eiθF(x)=∣F(x)∣e^{i\theta} F(x) = \lvert F(x) \rvert となるようにとれば、∣F(x)∣=F(eiθx)\lvert F(x) \rvert = F(e^{i\theta} x) は実数なので

∣F(x)∣=Re⁡F(eiθx)=U(eiθx)≤p(eiθx)=p(x)\lvert F(x) \rvert = \operatorname{Re} F(e^{i\theta} x) = U(e^{i\theta} x) \leq p(e^{i\theta} x) = p(x)

□\square

系 4.4 XX をノルム空間、MM を部分空間、f∈M∗f \in M^{\ast} とすると、F∣M=fF\vert_M = f かつ ∥F∥=∥f∥\lVert F \rVert = \lVert f \rVert となる F∈X∗F \in X^{\ast} が存在する。

証明. p(x)=∥f∥∥x∥p(x) = \lVert f \rVert \lVert x \rVert として定理 4.2(実)または定理 4.3(複素)を適用すれば ∣F(x)∣≤∥f∥∥x∥\lvert F(x) \rvert \leq \lVert f \rVert \lVert x \rVert。FF は ff の拡張なので ∥F∥≥∥f∥\lVert F \rVert \geq \lVert f \rVert。□\square

系 4.5 XX をノルム空間とする。

  1. x0≠0x_0 \neq 0 ならば、∥f∥=1\lVert f \rVert = 1 かつ f(x0)=∥x0∥f(x_0) = \lVert x_0 \rVert となる f∈X∗f \in X^{\ast} が存在する。
  2. X∗X^{\ast} は XX の点を分離する:x≠yx \neq y ならば f(x)≠f(y)f(x) \neq f(y) となる f∈X∗f \in X^{\ast} がある。
  3. すべての xx について ∥x∥=max⁡{∣f(x)∣∣f∈X∗, ∥f∥≤1}\lVert x \rVert = \max \lbrace \lvert f(x) \rvert \mid f \in X^{\ast},\ \lVert f \rVert \leq 1 \rbrace。
  4. MM を閉部分空間、x0∉Mx_0 \notin M、d=d(x0,M)d = d(x_0, M) とすると、∥f∥=1\lVert f \rVert = 1, f∣M=0f\vert_M = 0, f(x0)=df(x_0) = d となる f∈X∗f \in X^{\ast} が存在する。特に、部分空間 MM が稠密であるための必要十分条件は、MM 上で 00 になる f∈X∗f \in X^{\ast} が 00 に限ることである。

証明. 1:Kx0\mathbb{K} x_0 上で g(tx0)=t∥x0∥g(t x_0) = t \lVert x_0 \rVert とおくと ∥g∥=1\lVert g \rVert = 1 なので、系 4.4 で拡張する。2:x−yx - y に 1 を適用。3:∣f(x)∣≤∥f∥∥x∥\lvert f(x) \rvert \leq \lVert f \rVert \lVert x \rVert と 1 から従う。4:M+Kx0M + \mathbb{K} x_0 上で g(m+tx0)=tdg(m + t x_0) = t d とおく。t≠0t \neq 0 なら ∣g(m+tx0)∣=∣t∣d≤∣t∣∥x0+m/t∥=∥m+tx0∥\lvert g(m + t x_0) \rvert = \lvert t \rvert d \leq \lvert t \rvert \lVert x_0 + m/t \rVert = \lVert m + t x_0 \rVert なので ∥g∥≤1\lVert g \rVert \leq 1。mn∈Mm_n \in M を ∥x0−mn∥→d\lVert x_0 - m_n \rVert \to d となるようにとれば g(x0−mn)=dg(x_0 - m_n) = d より ∥g∥≥d/∥x0−mn∥→1\lVert g \rVert \geq d / \lVert x_0 - m_n \rVert \to 1。これを系 4.4 で拡張する。最後の主張は、M‾≠X\overline{M} \neq X なら M‾\overline{M} に 4 を適用すればよい。□\square

系 4.5 の 3 は、第1章の作用素ノルムの定義 ∥f∥=sup⁡∥x∥≤1∣f(x)∣\lVert f \rVert = \sup_{\lVert x \rVert \leq 1} \lvert f(x) \rvert と「双対」な公式であり、XX のノルムが X∗X^{\ast} によって完全に決まることを表す。

注意

ハーン–バナッハの拡張は一般に一意でなく(問題 4.2)、証明はツォルンの補題(選択公理)に依存する非構成的なものである。ヒルベルト空間では、拡張はリースの表現定理と直交射影で具体的に書け、しかも一意である(問題 4.1)。

4.3 幾何形:凸集合の分離

有限次元では、交わらない 2 つの凸集合は超平面で分離できた。無限次元では「超平面」を連続線形汎関数の等位集合 {x∣Re⁡f(x)=γ}\lbrace x \mid \operatorname{Re} f(x) = \gamma \rbrace で表す。

補題 4.6(ミンコフスキー汎関数, Minkowski functional)CC をノルム空間 XX の開凸集合で 0∈C0 \in C とし、p(x)=inf⁡{t>0∣x/t∈C}p(x) = \inf \lbrace t > 0 \mid x/t \in C \rbrace とおく。このとき pp は劣線形で、ある KK について 0≤p(x)≤K∥x∥0 \leq p(x) \leq K \lVert x \rVert、かつ C={x∣p(x)<1}C = \lbrace x \mid p(x) < 1 \rbrace。

証明. B(0,r)⊂CB(0, r) \subset C とすると、t>∥x∥/rt > \lVert x \rVert / r なら x/t∈Cx/t \in C なので p(x)≤∥x∥/rp(x) \leq \lVert x \rVert / r。p(sx)=sp(x)p(sx) = s p(x)(s≥0s \geq 0)は定義から明らか。x/t0∈Cx/t_0 \in C かつ t>t0t > t_0 なら x/t=(t0/t)(x/t0)+(1−t0/t)0∈Cx/t = (t_0/t)(x/t_0) + (1 - t_0/t) 0 \in C に注意する。ε>0\varepsilon > 0 に対し a=p(x)+εa = p(x) + \varepsilon, b=p(y)+εb = p(y) + \varepsilon とおけば x/a,y/b∈Cx/a, y/b \in C で、凸性より

x+ya+b=aa+b⋅xa+ba+b⋅yb∈C\frac{x + y}{a + b} = \frac{a}{a+b} \cdot \frac{x}{a} + \frac{b}{a+b} \cdot \frac{y}{b} \in C

よって p(x+y)≤a+b=p(x)+p(y)+2εp(x + y) \leq a + b = p(x) + p(y) + 2\varepsilon。最後に、x∈Cx \in C なら CC が開なので (1+ε)x∈C(1 + \varepsilon) x \in C となる ε>0\varepsilon > 0 があり p(x)≤1/(1+ε)<1p(x) \leq 1/(1+\varepsilon) < 1。逆に p(x)<1p(x) < 1 なら x/t∈Cx/t \in C となる t<1t < 1 があり、x=t(x/t)+(1−t)0∈Cx = t(x/t) + (1 - t)0 \in C。□\square

定理 4.7(ハーン–バナッハの定理・第 1 幾何形)XX をノルム空間、A,B⊂XA, B \subset X を交わらない空でない凸集合とし、AA は開であるとする。このとき f∈X∗f \in X^{\ast} と γ∈R\gamma \in \mathbb{R} で、すべての a∈Aa \in A, b∈Bb \in B について Re⁡f(a)<γ≤Re⁡f(b)\operatorname{Re} f(a) < \gamma \leq \operatorname{Re} f(b) となるものが存在する。

証明. まず実の場合を示す。C=A−B={a−b∣a∈A, b∈B}C = A - B = \lbrace a - b \mid a \in A,\ b \in B \rbrace は凸で、開集合 A−bA - b の和なので開であり、0∉C0 \notin C。z0∈Cz_0 \in C を 1 つとり D=C−z0D = C - z_0 とおくと、DD は 00 を含む開凸集合で −z0∉D-z_0 \notin D。補題 4.6 の pp を DD についてとると p(−z0)≥1p(-z_0) \geq 1。R(−z0)\mathbb{R}(-z_0) 上で g(−tz0)=tg(-t z_0) = t とおけば、t>0t > 0 なら g(−tz0)=t≤tp(−z0)=p(−tz0)g(-tz_0) = t \leq t p(-z_0) = p(-tz_0)、t≤0t \leq 0 なら g≤0≤pg \leq 0 \leq p。定理 4.2 で拡張した FF は F≤p≤K∥⋅∥F \leq p \leq K \lVert \cdot \rVert かつ −F(x)=F(−x)≤K∥x∥-F(x) = F(-x) \leq K \lVert x \rVert を満たすので連続である。x∈Dx \in D なら F(x)≤p(x)<1=F(−z0)F(x) \leq p(x) < 1 = F(-z_0)、すなわち c∈Cc \in C について F(c)=F(c−z0)+F(z0)<1−1=0F(c) = F(c - z_0) + F(z_0) < 1 - 1 = 0。よって F(a)<F(b)F(a) < F(b)(a∈Aa \in A, b∈Bb \in B)。F≠0F \neq 0 なので F(A)F(A) は R\mathbb{R} の開集合(F(a+sz)=F(a)+sF(z)F(a + sz) = F(a) + sF(z))であり、γ=sup⁡F(A)\gamma = \sup F(A) とおけば F(a)<γ≤F(b)F(a) < \gamma \leq F(b)。

複素の場合は、XX を実ノルム空間とみて得られる実線形の uu に対し f(x)=u(x)−iu(ix)f(x) = u(x) - iu(ix) とおけば、定理 4.3 の証明と同様に f∈X∗f \in X^{\ast}, Re⁡f=u\operatorname{Re} f = u となる。□\square

定理 4.8(第 2 幾何形)XX をノルム空間、C⊂XC \subset X を空でない閉凸集合、x0∉Cx_0 \notin C とする。このとき f∈X∗f \in X^{\ast} で sup⁡c∈CRe⁡f(c)<Re⁡f(x0)\sup_{c \in C} \operatorname{Re} f(c) < \operatorname{Re} f(x_0) となるものが存在する。

証明. r=d(x0,C)>0r = d(x_0, C) > 0 とし、A=C+B(0,r/2)A = C + B(0, r/2)(開凸集合)と B={x0}B = \lbrace x_0 \rbrace に定理 4.7 を適用すると、c∈Cc \in C, ∥z∥<r/2\lVert z \rVert < r/2 について Re⁡f(c+z)<γ≤Re⁡f(x0)\operatorname{Re} f(c + z) < \gamma \leq \operatorname{Re} f(x_0)。zz について上限をとると Re⁡f(c)+r2∥f∥≤γ\operatorname{Re} f(c) + \frac{r}{2} \lVert f \rVert \leq \gamma であり、f≠0f \neq 0 なので sup⁡CRe⁡f≤γ−r2∥f∥<Re⁡f(x0)\sup_C \operatorname{Re} f \leq \gamma - \frac{r}{2} \lVert f \rVert < \operatorname{Re} f(x_0)。□\square

したがって、閉凸集合はそれを含む閉半空間 {x∣Re⁡f(x)≤γ}\lbrace x \mid \operatorname{Re} f(x) \leq \gamma \rbrace 全体の共通部分に等しい。凸な最適化問題の双対性(ラグランジュ乗数の存在など)は、この分離定理を無限次元で使うことで得られる。

4.4 双対空間の具体例

双対空間を「具体的に決定する」とは、X∗X^{\ast} と既知のバナッハ空間との等長同型を見つけることである。数列空間では、汎関数 ff を単位ベクトル上の値 yn=f(en)y_n = f(e_n) で表す。以下、1≤p≤∞1 \leq p \leq \infty に対し 1/p+1/q=11/p + 1/q = 1 で qq を定める。

定理 4.9 1≤p<∞1 \leq p < \infty とする。y∈ℓqy \in \ell^q に対し Φ(y)(x)=∑nxnyn\Phi(y)(x) = \sum_n x_n y_n とおくと、Φ ⁣:ℓq→(ℓp)∗\Phi\colon \ell^q \to (\ell^p)^{\ast} は線形な等長全単射である。すなわち (ℓp)∗=ℓq(\ell^p)^{\ast} = \ell^q。

証明. ヘルダーの不等式より ∣Φ(y)(x)∣≤∥x∥p∥y∥q\lvert \Phi(y)(x) \rvert \leq \lVert x \rVert_p \lVert y \rVert_q なので ∥Φ(y)∥≤∥y∥q\lVert \Phi(y) \rVert \leq \lVert y \rVert_q。f∈(ℓp)∗f \in (\ell^p)^{\ast} を任意にとり yn=f(en)y_n = f(e_n) とおく。y∈ℓqy \in \ell^q かつ ∥y∥q≤∥f∥\lVert y \rVert_q \leq \lVert f \rVert を示す。

1<p<∞1 < p < \infty の場合:NN を固定し、n≤Nn \leq N で yn≠0y_n \neq 0 なら xn=∣yn∣q−2yn‾x_n = \lvert y_n \rvert^{q-2} \overline{y_n}、それ以外は xn=0x_n = 0 とおく。xnyn=∣yn∣qx_n y_n = \lvert y_n \rvert^q かつ (q−1)p=q(q-1)p = q より ∥x∥pp=∑n≤N∣yn∣q\lVert x \rVert_p^p = \sum_{n \leq N} \lvert y_n \rvert^q なので、sN=∑n≤N∣yn∣qs_N = \sum_{n \leq N} \lvert y_n \rvert^q とおくと sN=f(x)≤∥f∥sN1/ps_N = f(x) \leq \lVert f \rVert s_N^{1/p}。sN>0s_N > 0 なら sN1/q≤∥f∥s_N^{1/q} \leq \lVert f \rVert で、N→∞N \to \infty として ∥y∥q≤∥f∥\lVert y \rVert_q \leq \lVert f \rVert。p=1p = 1 の場合:∣yn∣=∣f(en)∣≤∥f∥\lvert y_n \rvert = \lvert f(e_n) \rvert \leq \lVert f \rVert より ∥y∥∞≤∥f∥\lVert y \rVert_\infty \leq \lVert f \rVert。

ff と Φ(y)\Phi(y) は c00c_{00} 上で一致し(線形性)、c00c_{00} は ℓp\ell^p(p<∞p < \infty)で稠密なので f=Φ(y)f = \Phi(y)。以上より Φ\Phi は全射で ∥y∥q≤∥Φ(y)∥≤∥y∥q\lVert y \rVert_q \leq \lVert \Phi(y) \rVert \leq \lVert y \rVert_q。□\square

定理 4.10 同じ Φ\Phi により c0∗=ℓ1c_0^{\ast} = \ell^1(等長同型)。

証明. y∈ℓ1y \in \ell^1 なら ∣∑xnyn∣≤∥x∥∞∥y∥1\lvert \sum x_n y_n \rvert \leq \lVert x \rVert_\infty \lVert y \rVert_1。f∈c0∗f \in c_0^{\ast} に対し yn=f(en)y_n = f(e_n) とし、n≤Nn \leq N で xn=yn‾/∣yn∣x_n = \overline{y_n}/\lvert y_n \rvert(yn=0y_n = 0 なら 00)、n>Nn > N で xn=0x_n = 0 とおくと ∥x∥∞≤1\lVert x \rVert_\infty \leq 1 で f(x)=∑n≤N∣yn∣≤∥f∥f(x) = \sum_{n \leq N} \lvert y_n \rvert \leq \lVert f \rVert。よって ∥y∥1≤∥f∥\lVert y \rVert_1 \leq \lVert f \rVert で、あとは定理 4.9 と同様(c00c_{00} は c0c_0 で稠密)。□\square

例 4.11((ℓ∞)∗≠ℓ1(\ell^\infty)^{\ast} \neq \ell^1)Φ ⁣:ℓ1→(ℓ∞)∗\Phi\colon \ell^1 \to (\ell^\infty)^{\ast} は等長だが全射でない。実際 c0c_0 は ℓ∞\ell^\infty の閉な真部分空間なので、系 4.5 の 4 により c0c_0 上で 00 となる 0≠f∈(ℓ∞)∗0 \neq f \in (\ell^\infty)^{\ast} がある。f=Φ(y)f = \Phi(y) なら yn=f(en)=0y_n = f(e_n) = 0 となって f=0f = 0 となり矛盾。このような ff の例がバナッハ極限(問題 4.7)である。なお (Lp)∗=Lq(L^p)^{\ast} = L^q(1≤p<∞1 \leq p < \infty、p=1p = 1 では σ-有限を仮定)は 06-measure-integration 第6章、C(K)∗C(K)^{\ast} が正則ボレル測度の空間であること(リース–マルコフの定理)は 06-measure-integration 第8章 で扱う。

4.5 第 2 双対と反射性

x∈Xx \in X に対し (Jx)(f)=f(x)(Jx)(f) = f(x)(f∈X∗f \in X^{\ast})とおくと Jx∈X∗∗Jx \in X^{\ast\ast} であり、系 4.5 の 3 により ∥Jx∥=∥x∥\lVert Jx \rVert = \lVert x \rVert。J ⁣:X→X∗∗J\colon X \to X^{\ast\ast} を標準埋め込み (canonical embedding) という。X∗∗X^{\ast\ast} は完備なので、J(X)J(X) の閉包は XX の完備化を与える。

定義 4.12 JJ が全射であるとき、XX は反射的 (reflexive) であるという。反射的な空間は X∗∗=J(X)X^{\ast\ast} = J(X) と同型なので必ずバナッハ空間である。

例 4.13

  1. ヒルベルト空間は反射的。ξ∈H∗∗\xi \in H^{\ast\ast} に対し g(y)=ξ(⟨⋅,y⟩)‾g(y) = \overline{\xi(\langle \cdot, y \rangle)} とおくと、y↦⟨⋅,y⟩y \mapsto \langle \cdot, y \rangle が共役線形なので gg は線形かつ有界で、リースの表現定理により g(y)=⟨y,x⟩g(y) = \langle y, x \rangle となる xx がある。すると ξ(⟨⋅,y⟩)=⟨y,x⟩‾=⟨x,y⟩=(Jx)(⟨⋅,y⟩)\xi(\langle \cdot, y \rangle) = \overline{\langle y, x \rangle} = \langle x, y \rangle = (Jx)(\langle \cdot, y \rangle) で、H∗H^{\ast} の元はすべて ⟨⋅,y⟩\langle \cdot, y \rangle の形なので ξ=Jx\xi = Jx。
  2. 1<p<∞1 < p < \infty なら ℓp\ell^p は反射的。Φp ⁣:ℓq→(ℓp)∗\Phi_p\colon \ell^q \to (\ell^p)^{\ast}, Φq ⁣:ℓp→(ℓq)∗\Phi_q\colon \ell^p \to (\ell^q)^{\ast} を定理 4.9 の同型とする。ξ∈(ℓp)∗∗\xi \in (\ell^p)^{\ast\ast} に対し ξ∘Φp∈(ℓq)∗\xi \circ \Phi_p \in (\ell^q)^{\ast} なので ξ∘Φp=Φq(x)\xi \circ \Phi_p = \Phi_q(x) となる x∈ℓpx \in \ell^p がある。すると ξ(Φp(y))=∑xnyn=Φp(y)(x)\xi(\Phi_p(y)) = \sum x_n y_n = \Phi_p(y)(x) で、ξ=Jx\xi = Jx。同様に LpL^p(1<p<∞1 < p < \infty)も反射的である。
  3. c0c_0 は反射的でない。c0∗=ℓ1c_0^{\ast} = \ell^1, (ℓ1)∗=ℓ∞(\ell^1)^{\ast} = \ell^\infty により c0∗∗c_0^{\ast\ast} は ℓ∞\ell^\infty と等長同型で、この同一視のもとで JJ は包含写像 c0↪ℓ∞c_0 \hookrightarrow \ell^\infty になる((Jx)(Φ(y))=∑xnyn(Jx)(\Phi(y)) = \sum x_n y_n)。これは全射でない。ℓ1\ell^1, ℓ∞\ell^\infty, L1[0,1]L^1[0,1], C[0,1]C[0,1] も反射的でない(ℓ1\ell^1 は問題 4.4)。

4.6 弱位相と弱 ∗\ast 位相

リースの定理 1.23 により、無限次元ノルム空間の閉単位球はノルム位相でコンパクトでない。そこで位相を弱めて、コンパクト性を取り戻すことを考える。

定義 4.14 ノルム空間 XX 上で、すべての f∈X∗f \in X^{\ast} を連続にする最弱の位相を弱位相 (weak topology) σ(X,X∗)\sigma(X, X^{\ast}) という。x0x_0 の基本近傍系は {x∣∣fi(x−x0)∣<ε, i=1,…,n}\lbrace x \mid \lvert f_i(x - x_0) \rvert < \varepsilon,\ i = 1, \dots, n \rbrace(fi∈X∗f_i \in X^{\ast}, ε>0\varepsilon > 0)で与えられる。点列 (xn)(x_n) が xx に弱収束する(xn⇀xx_n \rightharpoonup x)とは、すべての f∈X∗f \in X^{\ast} で f(xn)→f(x)f(x_n) \to f(x) となることである。

双対空間 X∗X^{\ast} 上で、すべての x∈Xx \in X について f↦f(x)f \mapsto f(x) を連続にする最弱の位相を弱 ∗\ast 位相 (weak-star topology) σ(X∗,X)\sigma(X^{\ast}, X) という。fnf_n が ff に弱 ∗\ast 収束するとは、すべての xx で fn(x)→f(x)f_n(x) \to f(x) となることである。

X∗X^{\ast} 上の弱 ∗\ast 位相は、X∗X^{\ast} の弱位相 σ(X∗,X∗∗)\sigma(X^{\ast}, X^{\ast\ast}) よりさらに弱い(J(X)⊂X∗∗J(X) \subset X^{\ast\ast} だから)。XX が反射的なら両者は一致する。ヒルベルト空間では、リースの表現定理により xn⇀xx_n \rightharpoonup x は「すべての yy で ⟨xn,y⟩→⟨x,y⟩\langle x_n, y \rangle \to \langle x, y \rangle」と同じである。

命題 4.15 XX をノルム空間とする。(1) 弱極限は一意である。(2) 弱収束列 xn⇀xx_n \rightharpoonup x は有界であり、∥x∥≤lim inf⁡n∥xn∥\lVert x \rVert \leq \liminf_n \lVert x_n \rVert。

証明. (1) 系 4.5 の 2(点の分離)から。(2) X∗X^{\ast} はバナッハ空間(定理 1.18)で、Jxn∈X∗∗=B(X∗,K)Jx_n \in X^{\ast\ast} = \mathcal{B}(X^{\ast}, \mathbb{K}) は各点 ff で有界なので、一様有界性原理(定理 3.4)により sup⁡n∥xn∥=sup⁡n∥Jxn∥<∞\sup_n \lVert x_n \rVert = \sup_n \lVert Jx_n \rVert < \infty。系 4.5 の 1 で ∥f∥=1\lVert f \rVert = 1, f(x)=∥x∥f(x) = \lVert x \rVert となる ff をとれば、∥x∥=lim⁡n∣f(xn)∣≤lim inf⁡n∥xn∥\lVert x \rVert = \lim_n \lvert f(x_n) \rvert \leq \liminf_n \lVert x_n \rVert。□\square

例 4.16 1<p<∞1 < p < \infty なら ℓp\ell^p で en⇀0e_n \rightharpoonup 0 である(f=Φ(y)f = \Phi(y), y∈ℓqy \in \ell^q について f(en)=yn→0f(e_n) = y_n \to 0)。しかし ∥en∥=1\lVert e_n \rVert = 1 なのでノルム収束はしない。命題 4.15 の不等式が等号にならない典型例である。一方 ℓ1\ell^1 では ene_n は弱収束しない(問題 4.3)が、ℓ1=c0∗\ell^1 = c_0^{\ast} の弱 ∗\ast 位相では en→0e_n \to 0 である(x∈c0x \in c_0 について ⟨x,en⟩=xn→0\langle x, e_n \rangle = x_n \to 0)。

命題 4.17(マズールの定理, Mazur)ノルム位相で閉な凸集合は弱位相でも閉である。

証明. CC を閉凸集合、x0∉Cx_0 \notin C とする。定理 4.8 により sup⁡CRe⁡f<γ<Re⁡f(x0)\sup_C \operatorname{Re} f < \gamma < \operatorname{Re} f(x_0) となる ff, γ\gamma がある。{x∣Re⁡f(x)>γ}\lbrace x \mid \operatorname{Re} f(x) > \gamma \rbrace は x0x_0 の弱近傍で CC と交わらない。よって X∖CX \setminus C は弱開集合である。□\square

定理 4.18(バナッハ–アラオグルの定理, Banach–Alaoglu theorem)ノルム空間 XX について、双対空間の閉単位球 BX∗B_{X^{\ast}} は弱 ∗\ast 位相でコンパクトである。

証明. 各 x∈Xx \in X に対し Dx={λ∈K∣∣λ∣≤∥x∥}D_x = \lbrace \lambda \in \mathbb{K} \mid \lvert \lambda \rvert \leq \lVert x \rVert \rbrace はコンパクトなので、チコノフの定理により直積 P=∏x∈XDxP = \prod_{x \in X} D_x(直積位相)はコンパクトである。ι ⁣:BX∗→P\iota\colon B_{X^{\ast}} \to P, ι(f)=(f(x))x∈X\iota(f) = (f(x))_{x \in X} は単射で、座標射影 πx\pi_x について πx∘ι\pi_x \circ \iota は評価写像 f↦f(x)f \mapsto f(x) である。弱 ∗\ast 位相も直積位相も「各評価(各座標)を連続にする最弱の位相」なので、ι\iota は BX∗B_{X^{\ast}} から像 ι(BX∗)\iota(B_{X^{\ast}}) への同相写像である。

像は PP の元 ω\omega のうち線形なもの全体、すなわち、すべての x,y∈Xx, y \in X, α∈K\alpha \in \mathbb{K} について ω(x+y)=ω(x)+ω(y)\omega(x + y) = \omega(x) + \omega(y) かつ ω(αx)=αω(x)\omega(\alpha x) = \alpha \omega(x) を満たすもの全体に等しい(線形で ∣ω(x)∣≤∥x∥\lvert \omega(x) \rvert \leq \lVert x \rVert なら ω∈BX∗\omega \in B_{X^{\ast}})。各条件は有限個の座標の連続関数で書けるので閉集合を定め、その共通部分である像は PP の閉集合、したがってコンパクトである。□\square

定理 4.19 XX が可分なノルム空間ならば、X∗X^{\ast} の有界列は弱 ∗\ast 収束する部分列をもつ。

証明. ∥fn∥≤C\lVert f_n \rVert \leq C とし、{xk}\lbrace x_k \rbrace を XX の稠密な可算集合とする。対角線論法により、すべての kk で fnj(xk)f_{n_j}(x_k) が収束する部分列がとれる。x∈Xx \in X, ε>0\varepsilon > 0 に対し ∥x−xk∥<ε\lVert x - x_k \rVert < \varepsilon となる kk を選べば ∣fnj(x)−fnl(x)∣≤2Cε+∣fnj(xk)−fnl(xk)∣\lvert f_{n_j}(x) - f_{n_l}(x) \rvert \leq 2C\varepsilon + \lvert f_{n_j}(x_k) - f_{n_l}(x_k) \rvert なので fnj(x)f_{n_j}(x) は収束する。極限 f(x)f(x) は線形で ∣f(x)∣≤C∥x∥\lvert f(x) \rvert \leq C \lVert x \rVert だから f∈X∗f \in X^{\ast}。□\square

定理 4.20(反射的空間の弱点列コンパクト性)反射的なバナッハ空間の有界列は、弱収束する部分列をもつ。さらに、バナッハ空間 XX が反射的であることと、BXB_X が弱位相でコンパクトであることは同値である(角谷の定理)。

証明は省略する(前半は、有界列の閉線形包 YY が可分かつ反射的であることから Y∗Y^{\ast} も可分になることを示し、定理 4.19 を Y∗Y^{\ast} の双対に適用する。Brezis の本などを参照)。ヒルベルト空間の場合は問題 2.9 で直接示した。定理 4.20 は、有界な最小化列から弱収束部分列を取り出して汎関数の最小元を得る直接法の基礎であり、偏微分方程式の変分法で繰り返し使われる。

4.7 端点と一様凸性

定義 4.21 凸集合 KK の点 xx が、x=12(y+z)x = \frac{1}{2}(y + z)(y,z∈Ky, z \in K)ならば y=z=xy = z = x となるとき、xx を KK の端点 (extreme point) という。

定理 4.22(クライン–ミルマンの定理, Krein–Milman theorem)XX をノルム空間とし、KK を X∗X^{\ast} の空でない弱 ∗\ast コンパクト凸集合(または XX の空でない弱コンパクト凸集合)とする。このとき KK は端点をもち、KK は端点全体の凸包の弱 ∗\ast 閉包(弱閉包)に等しい。

証明は省略する(一般に局所凸空間のコンパクト凸集合について成り立ち、ツォルンの補題と定理 4.7 型の分離定理を使う。Rudin, Functional Analysis などを参照)。

例 4.23 Bc0B_{c_0} は端点をもたない。実際 x∈Bc0x \in B_{c_0} なら ∣xN∣<1/2\lvert x_N \rvert < 1/2 となる NN があり、x±12eN∈Bc0x \pm \frac{1}{2} e_N \in B_{c_0} で xx はその中点である。もし c0c_0 があるバナッハ空間 YY の双対 Y∗Y^{\ast} と等長同型なら、Bc0B_{c_0} は BY∗B_{Y^{\ast}} に対応し、バナッハ–アラオグルの定理とクライン–ミルマンの定理により端点をもつはずである。よって c0c_0 はどんなバナッハ空間の双対とも等長同型でない。

定義 4.24 バナッハ空間 XX が一様凸 (uniformly convex) であるとは、任意の ε>0\varepsilon > 0 に対し δ>0\delta > 0 があって、∥x∥,∥y∥≤1\lVert x \rVert, \lVert y \rVert \leq 1 かつ ∥x−y∥≥ε\lVert x - y \rVert \geq \varepsilon ならば ∥(x+y)/2∥≤1−δ\lVert (x + y)/2 \rVert \leq 1 - \delta となることである。

ヒルベルト空間は中線定理 ∥(x+y)/2∥2=12(∥x∥2+∥y∥2)−∥(x−y)/2∥2≤1−ε2/4\lVert (x+y)/2 \rVert^2 = \frac{1}{2}(\lVert x \rVert^2 + \lVert y \rVert^2) - \lVert (x-y)/2 \rVert^2 \leq 1 - \varepsilon^2/4 により一様凸である。LpL^p(1<p<∞1 < p < \infty)もクラークソンの不等式により一様凸である(証明は省略)。ℓ1\ell^1 や c0c_0 は一様凸でない(ℓ1\ell^1 では x=e1x = e_1, y=e2y = e_2、c0c_0 では x=e1+e2x = e_1 + e_2, y=e1−e2y = e_1 - e_2 とすると ∥x−y∥=2\lVert x - y \rVert = 2 だが中点のノルムは 11)。

定理 4.25(ミルマン–ペティスの定理, Milman–Pettis theorem)一様凸なバナッハ空間は反射的である。

証明は省略する。これにより LpL^p(1<p<∞1 < p < \infty)の反射性が、双対空間の決定を経ずに幾何学的に示される。

まとめ

  • ハーン–バナッハの定理:劣線形汎関数で押さえられた線形汎関数は全体に拡張できる。証明はツォルンの補題による。複素の場合は実部を拡張して復元する。
  • 帰結として、ノルムを保つ拡張、∥f∥=1\lVert f \rVert = 1 で f(x0)=∥x0∥f(x_0) = \lVert x_0 \rVert となる汎関数が存在し、∥x∥=max⁡∥f∥≤1∣f(x)∣\lVert x \rVert = \max_{\lVert f \rVert \leq 1} \lvert f(x) \rvert。部分空間の稠密性は汎関数で判定できる。
  • 幾何形:開凸集合と凸集合、閉凸集合と点は閉超平面で分離できる(ミンコフスキー汎関数を使う)。
  • (ℓp)∗=ℓq(\ell^p)^{\ast} = \ell^q(1≤p<∞1 \leq p < \infty)、c0∗=ℓ1c_0^{\ast} = \ell^1 だが、(ℓ∞)∗(\ell^\infty)^{\ast} は ℓ1\ell^1 より真に大きい。
  • 標準埋め込み J ⁣:X→X∗∗J\colon X \to X^{\ast\ast} は等長であり、全射のとき反射的という。ヒルベルト空間、ℓp\ell^p, LpL^p(1<p<∞1 < p < \infty)は反射的、c0c_0, ℓ1\ell^1, ℓ∞\ell^\infty, C[0,1]C[0,1] は反射的でない。
  • 弱収束列は有界で、ノルムは弱収束について下半連続である。閉凸集合は弱閉である(マズール)。
  • バナッハ–アラオグルの定理:BX∗B_{X^{\ast}} は弱 ∗\ast コンパクトである。ノルム位相で失われたコンパクト性を弱い位相で取り戻すのが双対性の要点である。
  • クライン–ミルマンの定理により、c0c_0 はどの空間の双対とも等長同型でない。一様凸な空間は反射的である(ミルマン–ペティス)。

演習問題

問題 4.1 ★ HH をヒルベルト空間、MM を部分空間、f∈M∗f \in M^{\ast} とする。∥F∥=∥f∥\lVert F \rVert = \lVert f \rVert を満たす ff の拡張 F∈H∗F \in H^{\ast} はただ一つであることを示せ。

解答

ff は一様連続なので閉包 M‾\overline{M} にノルムを変えずに一意に拡張でき(命題 1.19)、M‾\overline{M} はヒルベルト空間だからリースの表現定理により f(m)=⟨m,y⟩f(m) = \langle m, y \rangle(y∈M‾y \in \overline{M}, ∥y∥=∥f∥\lVert y \rVert = \lVert f \rVert)。F=⟨⋅,y⟩F = \langle \cdot, y \rangle はノルムを保つ拡張である。別の拡張 G=⟨⋅,z⟩G = \langle \cdot, z \rangle が ∥z∥=∥f∥\lVert z \rVert = \lVert f \rVert を満たすとすると、MM 上で ⟨m,z−y⟩=0\langle m, z - y \rangle = 0 なので w=z−y∈M⊥w = z - y \in M^\perp で、∥z∥2=∥y∥2+∥w∥2\lVert z \rVert^2 = \lVert y \rVert^2 + \lVert w \rVert^2。∥z∥=∥y∥\lVert z \rVert = \lVert y \rVert より w=0w = 0。

問題 4.2 ★ R2\mathbb{R}^2 にノルム ∥(x,y)∥1=∣x∣+∣y∣\lVert (x, y) \rVert_1 = \lvert x \rvert + \lvert y \rvert を入れ、M=R(1,0)M = \mathbb{R}(1, 0) 上の f(t,0)=tf(t, 0) = t を考える。ff のノルムを保つ拡張が無数にあることを示せ。

解答

∥f∥=1\lVert f \rVert = 1。拡張は F(x,y)=x+cyF(x, y) = x + cy の形で、∣x+cy∣≤max⁡(1,∣c∣)(∣x∣+∣y∣)\lvert x + cy \rvert \leq \max(1, \lvert c \rvert)(\lvert x \rvert + \lvert y \rvert) かつ F(0,1)=cF(0, 1) = c より ∥F∥=max⁡(1,∣c∣)\lVert F \rVert = \max(1, \lvert c \rvert)。したがって ∣c∣≤1\lvert c \rvert \leq 1 を満たすすべての cc がノルムを保つ拡張を与える。単位球が「角」をもつ(一様凸でない)ことが非一意性の原因である。

問題 4.3 ★★ (1) c0c_0 で en⇀0e_n \rightharpoonup 0 を示せ。(2) ℓ1\ell^1 で (en)(e_n) は弱収束しないことを示せ。(3) L2[0,2π]L^2[0, 2\pi] で sin⁡(nt)⇀0\sin(nt) \rightharpoonup 0 だが、ノルムでは収束しないことを示せ。

解答

(1) 定理 4.10 より f∈c0∗f \in c_0^{\ast} は y∈ℓ1y \in \ell^1 で表され、f(en)=yn→0f(e_n) = y_n \to 0。

(2) en⇀xe_n \rightharpoonup x とすると、座標汎関数 x↦xkx \mapsto x_k を考えて xk=lim⁡n(en)k=0x_k = \lim_n (e_n)_k = 0、よって x=0x = 0。しかし y=(1,1,… )∈ℓ∞=(ℓ1)∗y = (1, 1, \dots) \in \ell^\infty = (\ell^1)^{\ast} について Φ(y)(en)=1↛0\Phi(y)(e_n) = 1 \not\to 0 で矛盾する。

(3) (sin⁡(nt)/π)n≥1(\sin(nt)/\sqrt{\pi})_{n \geq 1} は正規直交系なので、ベッセルの不等式より任意の gg で ⟨sin⁡(nt),g⟩→0\langle \sin(nt), g \rangle \to 0。リースの表現定理により、これは弱収束 sin⁡(nt)⇀0\sin(nt) \rightharpoonup 0 を意味する(これはリーマン–ルベーグの補題の L2L^2 版でもある)。一方 ∥sin⁡(nt)∥2=π\lVert \sin(nt) \rVert_2 = \sqrt{\pi} なのでノルムでは 00 に収束しない。

問題 4.4 ★★ ノルム空間 XX の双対 X∗X^{\ast} が可分ならば XX も可分であることを示せ。これを用いて ℓ1\ell^1 が反射的でないことを示せ。

解答

{fn}\lbrace f_n \rbrace を X∗X^{\ast} の稠密な可算集合とし、∥xn∥=1\lVert x_n \rVert = 1, ∣fn(xn)∣≥∥fn∥/2\lvert f_n(x_n) \rvert \geq \lVert f_n \rVert / 2 となる xnx_n をとる。M=span⁡‾{xn}M = \overline{\operatorname{span}} \lbrace x_n \rbrace は可分である。M≠XM \neq X なら系 4.5 の 4 により ∥f∥=1\lVert f \rVert = 1, f∣M=0f\vert_M = 0 となる ff がある。∥f−fn∥<1/3\lVert f - f_n \rVert < 1/3 となる nn をとると ∥fn∥>2/3\lVert f_n \rVert > 2/3 なので ∣fn(xn)∣>1/3\lvert f_n(x_n) \rvert > 1/3 だが、∣fn(xn)∣=∣(fn−f)(xn)∣<1/3\lvert f_n(x_n) \rvert = \lvert (f_n - f)(x_n) \rvert < 1/3 となり矛盾。よって X=MX = M は可分である。

ℓ1\ell^1 が反射的なら (ℓ1)∗∗=J(ℓ1)(\ell^1)^{\ast\ast} = J(\ell^1) は可分である。(ℓ1)∗(\ell^1)^{\ast} は ℓ∞\ell^\infty と等長同型なので、(ℓ∞)∗(\ell^\infty)^{\ast} も可分になり、前半により ℓ∞\ell^\infty が可分となって問題 1.9 に反する。

問題 4.5 ★★ 無限次元ノルム空間 XX では、単位球面 S={x∣∥x∥=1}S = \lbrace x \mid \lVert x \rVert = 1 \rbrace の弱閉包が 00 を含むことを示せ。

解答

00 の弱近傍は V={x∣∣fi(x)∣<ε, i=1,…,n}V = \lbrace x \mid \lvert f_i(x) \rvert < \varepsilon,\ i = 1, \dots, n \rbrace の形の集合を含む。写像 x↦(f1(x),…,fn(x))∈Knx \mapsto (f_1(x), \dots, f_n(x)) \in \mathbb{K}^n の核 N=⋂iker⁡fiN = \bigcap_i \ker f_i は余次元 nn 以下なので、XX が無限次元なら N≠{0}N \neq \lbrace 0 \rbrace。y∈Ny \in N, ∥y∥=1\lVert y \rVert = 1 をとれば y∈V∩Sy \in V \cap S。よって 00 のどの弱近傍も SS と交わる。特に無限次元では弱位相はノルム位相より真に弱く、00 の弱近傍はすべて非有界である。

問題 4.6 ★★(マズールの補題)xn⇀xx_n \rightharpoonup x ならば、xnx_n たちの凸結合からなる列で xx にノルム収束するものが存在することを示せ。

解答

C=conv⁡{xn}C = \operatorname{conv} \lbrace x_n \rbrace(有限凸結合全体)のノルム閉包 C‾\overline{C} は閉凸集合なので、命題 4.17 により弱閉である。xn∈C‾x_n \in \overline{C} で xn⇀xx_n \rightharpoonup x だから x∈C‾x \in \overline{C}、すなわち xx は CC の元のノルム極限である。同じ議論を {xn∣n≥N}\lbrace x_n \mid n \geq N \rbrace に適用すれば、各 NN について n≥Nn \geq N の xnx_n だけの凸結合 zNz_N で ∥zN−x∥<1/N\lVert z_N - x \rVert < 1/N となるものがとれる。

問題 4.7 ★★★(バナッハ極限)実数値の ℓ∞\ell^\infty 上の線形汎関数 Λ\Lambda で、(i) lim inf⁡nxn≤Λ(x)≤lim sup⁡nxn\liminf_n x_n \leq \Lambda(x) \leq \limsup_n x_n、(ii) Λ(Lx)=Λ(x)\Lambda(Lx) = \Lambda(x)(LL は左シフト)を満たすものが存在することを示せ。また Λ((1,0,1,0,… ))=1/2\Lambda((1, 0, 1, 0, \dots)) = 1/2 を示せ。

解答

p(x)=lim sup⁡n→∞1n∑k=1nxkp(x) = \limsup_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n x_k は劣線形である。収束列の空間 cc 上の lim⁡\lim は、チェザロ平均が同じ極限に収束するので lim⁡x=p(x)\lim x = p(x) を満たす。定理 4.2 で拡張した Λ\Lambda は Λ≤p\Lambda \leq p を満たし、チェザロ平均の上極限は lim sup⁡xn\limsup x_n 以下なので Λ(x)≤lim sup⁡xn\Lambda(x) \leq \limsup x_n。−x-x に適用して Λ(x)≥lim inf⁡xn\Lambda(x) \geq \liminf x_n。特に ∣Λ(x)∣≤∥x∥∞\lvert \Lambda(x) \rvert \leq \lVert x \rVert_\infty で Λ\Lambda は連続である。

(ii):1n∑k=1n(xk−xk+1)=x1−xn+1n→0\frac{1}{n} \sum_{k=1}^n (x_k - x_{k+1}) = \frac{x_1 - x_{n+1}}{n} \to 0 なので p(x−Lx)=p(Lx−x)=0p(x - Lx) = p(Lx - x) = 0。よって Λ(x−Lx)≤0\Lambda(x - Lx) \leq 0 かつ Λ(Lx−x)≤0\Lambda(Lx - x) \leq 0 で、Λ(Lx)=Λ(x)\Lambda(Lx) = \Lambda(x)。

x=(1,0,1,0,… )x = (1, 0, 1, 0, \dots) なら x+Lx=(1,1,1,… )x + Lx = (1, 1, 1, \dots) なので 2Λ(x)=Λ(x+Lx)=12\Lambda(x) = \Lambda(x + Lx) = 1。Λ\Lambda は c0c_0 上で 00 だが 00 でないので、例 4.11 の汎関数の具体例になっている。

問題 4.8 ★★★ L1[0,1]L^1[0,1] の閉単位球は端点をもたないことを示し、L1[0,1]L^1[0,1] がどんなバナッハ空間の双対とも等長同型でないことを導け。

解答

∥f∥1<1\lVert f \rVert_1 < 1 の元は端点でない:f≠0f \neq 0 なら f=12((1+ε)f+(1−ε)f)f = \frac{1}{2}((1 + \varepsilon) f + (1 - \varepsilon) f)(ε\varepsilon は小さく)、f=0f = 0 なら 0=12(g+(−g))0 = \frac{1}{2}(g + (-g))(∥g∥1=1\lVert g \rVert_1 = 1)。∥f∥1=1\lVert f \rVert_1 = 1 とする。ϕ(s)=∫0s∣f∣ dt\phi(s) = \int_0^s \lvert f \rvert\ dt は ϕ(0)=0\phi(0) = 0 から ϕ(1)=1\phi(1) = 1 まで連続に増加するので、ϕ(s0)=1/2\phi(s_0) = 1/2 となる s0s_0 がある。g=2f1[0,s0]g = 2 f \mathbf{1}_{[0, s_0]}, h=2f1(s0,1]h = 2 f \mathbf{1}_{(s_0, 1]} とおくと ∥g∥1=∥h∥1=1\lVert g \rVert_1 = \lVert h \rVert_1 = 1, f=(g+h)/2f = (g + h)/2, g≠hg \neq h。よって端点はない。

L1[0,1]L^1[0,1] が Y∗Y^{\ast} と等長同型なら、単位球はバナッハ–アラオグルの定理により弱 ∗\ast コンパクト凸集合に対応し、クライン–ミルマンの定理により端点をもつはずで、矛盾する。

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