この章の目標
- 符号付き測度のハーン分解・ジョルダン分解を証明できる
- 絶対連続性と特異性を理解し、ルベーグ分解とラドン–ニコディムの定理を証明できる
- Lp(1≤p<∞)の双対空間が Lq であることを証明できる
- 条件付き期待値がラドン–ニコディム導関数として定義されることを理解する
前提:第1章〜第4章
可積分関数 f から ν(E)=∫Ef dμ によって新しい測度が作れる(系 3.12)。逆に、測度 ν が与えられたとき、それは μ に関する「密度関数」をもつだろうか。答えを与えるのがラドン–ニコディムの定理であり、確率論の条件付き期待値や関数解析の双対空間の決定に欠かせない。この章では (X,M) を可測空間とする。
6.1 符号付き測度
定義 6.1(符号付き測度, signed measure)ν:M→[−∞,∞] が次を満たすとき、符号付き測度という。(1) ν(∅)=0。(2) ν は +∞ と −∞ の高々一方しか値にとらない。(3) 互いに交わらない Ej∈M について ν(⋃jEj)=∑jν(Ej) であり、左辺が有限のとき右辺は絶対収束する。
±∞ を両方とると ∞−∞ が現れうるので (2) を課す。これまでの測度(値が [0,∞])を、区別するときは正値測度と呼ぶ。
例 6.2 (1) 正値測度 μ1,μ2 の一方が有限なら μ1−μ2 は符号付き測度である。(2) μ を正値測度、f を可測関数で ∫f+ dμ と ∫f− dμ の少なくとも一方が有限なものとすると、ν(E)=∫Ef dμ は符号付き測度である。これを ν=f dμ と書く。
定義 6.3 符号付き測度 ν について、E∈M が正集合 (positive set) であるとは、E のすべての可測部分集合 F で ν(F)≥0 となることをいう。負集合、ν-零集合(すべての可測部分集合で ν(F)=0)も同様に定める。
ν(E)=0 でも E が ν-零集合とは限らない(正の部分と負の部分が打ち消し合っているかもしれない)。
補題 6.4 ν を符号付き測度とする。
- 正集合の可測部分集合は正集合であり、正集合の可算和は正集合である。
- 0<ν(E)<∞ ならば、E は ν(A)>0 となる正集合 A を含む。
証明. 1. 前半は定義から明らか。正集合 Pj の和 P について、Qj=Pj∖(P1∪⋯∪Pj−1) は正集合 Pj の部分集合だから、F⊂P なら ν(F)=∑jν(F∩Qj)≥0。
- E が正集合なら A=E でよい。そうでなければ、ν(B1)<−1/n1 となる B1⊂E が存在する最小の正整数 n1 をとる。帰納的に、E∖(B1∪⋯∪Bk−1) が正集合ならそこで止め、そうでなければ ν(Bk)<−1/nk となる Bk⊂E∖(B1∪⋯∪Bk−1) が存在する最小の正整数 nk をとる。A=E∖⋃kBk とおく。ν(E)=ν(A)+∑kν(Bk) は有限だから級数は絶対収束し、ν(A)≥ν(E)>0、かつ ∑k1/nk<∞ より nk→∞。A が正集合でないとすると、ν(C)<0 となる C⊂A があり、nk≥2 かつ ν(C)<−1/(nk−1) となる k がとれる。C⊂E∖(B1∪⋯∪Bk−1) だから、これは nk の最小性に反する。途中で止まった場合も、残った正集合 A は ν(A)≥ν(E)>0 を満たす。□
6.2 ハーン分解とジョルダン分解
定理 6.5(ハーン分解, Hahn decomposition)符号付き測度 ν に対し、正集合 P と負集合 N で X=P⊔N となるものが存在する。別の分解 (P′,N′) があれば、P△P′ は ν-零集合である。
証明. 必要なら −ν を考えて、ν は +∞ をとらないとしてよい。s=sup{ν(P)∣P は正集合} とおき(∅ は正集合なので s≥0)、正集合 Pj を ν(Pj)→s ととる。P=⋃jPj は正集合で、ν(P)=ν(Pj)+ν(P∖Pj)≥ν(Pj) より ν(P)=s、特に s<∞。N=X∖P が負集合でないとすると、ν(E)>0 となる E⊂N があり、補題 6.4 の 2 より ν(A)>0 となる正集合 A⊂E がある。P∪A は正集合で ν(P∪A)=s+ν(A)>s となり、s の定義に反する。
一意性:P∖P′⊂P∩N′ は正集合かつ負集合なので ν-零集合であり、P′∖P も同様である。□
定義 6.6(互いに特異, mutually singular)符号付き測度 ν1,ν2 について、X=E⊔F で、E が ν2-零集合、F が ν1-零集合となるものが存在するとき、ν1 と ν2 は互いに特異であるといい、ν1⊥ν2 と書く。
定理 6.7(ジョルダン分解, Jordan decomposition)符号付き測度 ν は、互いに特異な正値測度 ν+,ν− の差 ν=ν+−ν− として一意に書ける。
証明. ハーン分解 (P,N) をとり ν+(E)=ν(E∩P)、ν−(E)=−ν(E∩N) とおけばよい。一意性:ν=μ1−μ2、X=E⊔F、μ1(F)=0=μ2(E) とすると、E は ν の正集合、F は負集合だから (E,F) はハーン分解であり、P△E は ν-零集合。よって μ1(A)=ν(A∩E)=ν(A∩P)=ν+(A)。□
∣ν∣:=ν++ν− を ν の全変動 (total variation) という。∣ν(E)∣≤∣ν∣(E) であり、∣ν∣(X)<∞ のとき ν を有限符号付き測度という。例 6.2 (2) の ν=f dμ では、P={f≥0} がハーン分解を与え、ν±=f± dμ、∣ν∣=∣f∣ dμ である。複素数値の複素測度も、実部と虚部に分けて同様に扱える。
6.3 絶対連続性
定義 6.8(絶対連続, absolutely continuous)μ を正値測度、ν を符号付き測度とする。μ(E)=0 となるすべての E で ν(E)=0 となるとき、ν は μ に関して絶対連続であるといい、ν≪μ と書く。
例 6.9 (1) ν=f dμ なら ν≪μ。(2) δ0⊥λ({0} と R∖{0} で分ける)。(3) 第7章のカントール関数に対応するルベーグ–スティルチェス測度は、一点の測度が 0 なのに λ と互いに特異である(カントール集合に集中している)。
名前の由来は次の命題にある。
命題 6.10 ν を有限な正値測度、μ を正値測度とする。ν≪μ であるための必要十分条件は、任意の ε>0 に対して δ>0 が存在し、μ(E)<δ ならば ν(E)<ε となることである。
証明. 十分性は明らか。必要性を背理法で示す。ある ε>0 について、μ(Ek)<2−k かつ ν(Ek)≥ε となる Ek があるとする。F=limsupkEk はボレル–カンテリの補題より μ(F)=0。一方 ν は有限だから上からの連続性より ν(F)=limnν(⋃k≥nEk)≥ε となり、ν≪μ に反する。□
ν の有限性は必要である:(0,1) 上で ν=x1 dx は λ に関して絶対連続だが、ν((0,δ))=∞。
6.4 ラドン–ニコディムの定理
定理 6.11(ルベーグ–ラドン–ニコディムの定理)μ,ν を (X,M) 上の σ-有限な正値測度とする。
- (ルベーグ分解)ν=νa+νs、νa≪μ、νs⊥μ となる正値測度 νa,νs が一意に存在する。
- 可測関数 f≥0 で νa=f dμ となるものが存在し、f は μ-a.e. で一意である。
特に ν≪μ ならば ν=f dμ であり、f をラドン–ニコディム導関数と呼んで dμdν と書く。
証明. (μ,ν が有限の場合の存在)F={f≥0 可測∣すべての E で ∫Ef dμ≤ν(E)} とおく。0∈F である。f,g∈F なら max{f,g}∈F(E を {f≥g} と {f<g} で分ける)。a=supf∈F∫f dμ≤ν(X)<∞ とし、fn∈F を ∫fn→a ととって gn=max{f1,…,fn} とおくと、単調収束定理より f=limngn∈F、∫f dμ=a。
νs(E):=ν(E)−∫Ef dμ≥0 は有限な正値測度である。νs⊥μ を示す。各 n について有限符号付き測度 νs−n1μ のハーン分解 (Pn,Nn) をとり、P=⋃nPn、N=⋂nNn=X∖P とおく。N はすべての n で νs−n1μ の負集合だから νs(N)≤n1μ(N)、よって νs(N)=0。もし μ(P)>0 なら、ある n で μ(Pn)>0 である。Pn 上では νs≥n1μ なので
∫E(f+n11Pn)dμ=∫Ef dμ+n1μ(E∩Pn)≤∫Ef dμ+νs(E∩Pn)≤ν(E)
となり、f+n11Pn∈F。しかしその積分は a+n1μ(Pn)>a で、a の定義に反する。よって μ(P)=0 で、νs は μ-零集合 P に集中する。νa=f dμ≪μ である。
(有限の場合の一意性)ν=νa+νs=νa′+νs′ を二つのルベーグ分解とし、νs,νs′ がそれぞれ μ-零集合 A,A′ に集中している(νs(X∖A)=0、νs′(X∖A′)=0)とする。B=A∪A′ とおくと μ(B)=0 だから、νa≪μ、νa′≪μ より νa(E∩B)=νa′(E∩B)=0。よって任意の E で νs(E)=νs(E∩B)=ν(E∩B)=νs′(E∩B)=νs′(E) となり νs=νs′、有限なので νa=ν−νs=νa′。さらに f dμ=f′ dμ ならすべての E で ∫E(f−f′) dμ=0(f,f′ は可積分)だから f=f′(a.e.)。
(σ-有限の場合)X を、μ と ν の両方について有限測度の互いに交わらない可測集合 Xj に分割する(二つの分割の共通細分をとる)。各 Xj 上で有限の場合を適用し、f=∑jfj1Xj、νs=∑jνs,j(⋅∩Xj) とすればよい。一意性は各 Xj への制限で有限の場合に帰着する。□
ν が符号付き測度で ∣ν∣ が σ-有限なら、ν+ と ν− に適用して同様の分解が得られる(f は実数値になりうる)。
例 6.12 (1) σ-有限性は外せない。[0,1] のボレル集合族上で μ を数え上げ測度、ν=λ とすると、μ-零集合は ∅ だけなので λ≪μ。しかし λ=f dμ なら 0=λ({x})=f(x) がすべての x で成り立ち、λ=0 となって矛盾する。
(2) 数え上げ測度の場合、ν≪μ は自動的で、dμdν(n)=ν({n}) である。確率論では、λ に関して絶対連続な分布の密度関数がラドン–ニコディム導関数にあたる。
命題 6.13(連鎖律)μ,ν,ρ を σ-有限な正値測度とする。ν≪μ ならば、可測関数 g≥0 について ∫g dν=∫gdμdν dμ。さらに ρ≪ν≪μ ならば、μ-a.e. で dμdρ=dνdρdμdν。
証明. 前半は系 3.12 の 3。後半は、前半を g=1Edνdρ に使うと ρ(E)=∫Edνdρ dν=∫Edνdρdμdν dμ となるので、一意性による。□
補足
フォン・ノイマンによる別証明(概略):μ,ν を有限とし ρ=μ+ν とおく。g↦∫g dν は ∣∫g dν∣≤ρ(X)1/2∥g∥L2(ρ) より L2(ρ) 上の有界線形汎関数だから、ヒルベルト空間のリースの表現定理(10-functional-analysis 第2章)により ∫g dν=∫gh dρ となる h がある。0≤h≤1(a.e.)がわかり、A={h=1} とおくと νs=ν(⋅∩A)、dμdνa=1−hh1X∖A となる(問題 6.7)。
6.5 Lp の双対空間
1≤p≤∞、q を共役指数とする。g∈Lq(μ) に対し φg(f)=∫fg dμ はヘルダーの不等式より Lp 上の有界線形汎関数で、∥φg∥≤∥g∥q である。
定理 6.14(Lp の双対)1≤p<∞ とし、p=1 のときは μ が σ-有限であると仮定する。g↦φg は Lq(μ) から Lp(μ)∗ への等長同型写像である。
証明. μ が σ-有限の場合に証明する(1<p<∞ で σ-有限でない場合については証明の後の注意を参照)。実数値の場合を示す(複素数値でも sgng を g/∣g∣ に替えれば同様である)。sgng は g の符号(g=0 では 0)とする。
(等長性)1<p<∞ のとき、f=∣g∣q−1sgng とおくと ∣f∣p=∣g∣q だから ∥f∥p=∥g∥qq/p、φg(f)=∥g∥qq。よって ∥φg∥≥∥g∥qq−q/p=∥g∥q。p=1 のとき、ε>0 に対し {∣g∣>∥g∥∞−ε} は正の測度をもち、σ-有限性からその部分集合 B で 0<μ(B)<∞ となるものがとれる。f=1Bsgng について φg(f)≥(∥g∥∞−ε)∥f∥1。
(全射性、μ が有限の場合)φ∈Lp(μ)∗ とし、ν(E)=φ(1E) とおく。ν は線形性から有限加法的で、E=⨆jEj なら ∥1E−1E1∪⋯∪En∥p=μ(⋃j>nEj)1/p→0(ここで p<∞ を使う)だから、φ の連続性より ν(E)=∑jν(Ej)。よって ν は有限符号付き測度で、μ(E)=0 なら 1E=0(Lp の元として)だから ν≪μ。ν±≪μ にラドン–ニコディムの定理を使えば、g∈L1(μ) で φ(1E)=∫Eg dμ となるものがある。線形性から単関数 s について φ(s)=∫sg で、有界な f は一様収束する単関数列 ∣sk∣≤∣f∣ で近似できる(Lp でも収束し、∫skg→∫fg は優収束定理)から、f∈L∞ について φ(f)=∫fg。
次に g∈Lq、∥g∥q≤∥φ∥ を示す。1<p<∞ なら、En={∣g∣≤n}、fn=1En∣g∣q−1sgng∈L∞ に対し
∫En∣g∣q=φ(fn)≤∥φ∥∥fn∥p=∥φ∥(∫En∣g∣q)1/p
だから (∫En∣g∣q)1/q≤∥φ∥ で、単調収束定理より ∥g∥q≤∥φ∥。p=1 なら、E={∣g∣>∥φ∥+ε}、f=1Esgng について (∥φ∥+ε)μ(E)≤∫E∣g∣=φ(f)≤∥φ∥μ(E) だから μ(E)=0。最後に、φ と φg は単関数(稠密、定理 4.11)の上で一致する有界線形汎関数なので等しい。
(σ-有限の場合)Yn↑X、μ(Yn)<∞ とする。Yn の外で 0 となる関数に φ を制限して上の結果を使うと、gn が得られ、一意性(等長性)から Yn 上で gn+1=gn(a.e.)。g=limngn は ∥g1Yn∥q≤∥φ∥ を満たすので、単調収束定理より g∈Lq。φ と φg はある Yn の外で 0 となる関数の上で一致し、そのような関数は Lp で稠密(f1Yn→f)だから等しい。□
1<p<∞ では σ-有限性がなくても結論は成り立つ(証明は省略する)。p=1 では必要である:一点集合 X={a} で μ({a})=∞ とすると L1={0} だが L∞≅R で、g↦φg は単射でない。
6.6 条件付き期待値への予告
(Ω,F,P) を確率空間、G⊂F を部分 σ-加法族、X∈L1(P) とする。G は「観測できる情報」を表し、X そのものは一般に G-可測でない。G∈G に対し ν(G)=∫GX dP とおくと、ν は (Ω,G) 上の有限符号付き測度で、P∣G に関して絶対連続である。ラドン–ニコディムの定理より、G-可測な Z∈L1 で
∫GZ dP=∫GX dP(G∈G)
を満たすものが a.s. で一意に存在する。これを X の G に関する条件付き期待値 E[X∣G] という(11-probability 第5章)。
G が Ω の有限分割 B1,…,Bm(P(Bi)>0)で生成されるとき、G-可測関数は各 Bi 上で定数だから、E[X∣G]=∑iP(Bi)1(∫BiX dP)1Bi となり、初等的な「条件付き平均」に一致する。たとえば Ω=[0,1](ルベーグ測度)、X(ω)=ω、G=σ([0,21)) なら、E[X∣G] は [0,21) 上で 41、[21,1] 上で 43 である。一般の G ではこのような公式はなく、ラドン–ニコディムの定理が存在を保証する。
まとめ
- 符号付き測度は、全体を正集合と負集合に分けられ(ハーン分解)、互いに特異な二つの正値測度の差として一意に書ける(ジョルダン分解)。
- ν≪μ は「μ-零集合は ν-零集合」を意味し、有限なら ε-δ 型の条件と同値である。
- σ-有限な測度 ν は、μ に関して絶対連続な部分と特異な部分に一意に分解され、絶対連続な部分は密度関数 dμdν をもつ(ルベーグ–ラドン–ニコディム)。σ-有限性は外せない。
- 1≤p<∞(p=1 では σ-有限を仮定)で Lp の双対は Lq である。L∞ の双対は L1 より真に大きい。
- 条件付き期待値は、部分 σ-加法族上のラドン–ニコディム導関数として定義される。
演習問題
問題 6.1 ★ [0,2π] のボレル集合 E に対し ν(E)=∫Esinx dx とおく。ハーン分解、ジョルダン分解、∣ν∣([0,2π]) を求めよ。
解答
P=[0,π]、N=(π,2π] がハーン分解である(P 上で sinx≥0、N 上で sinx≤0)。ν+(E)=∫E∩[0,π]sinx dx、ν−(E)=−∫E∩(π,2π]sinx dx で、∣ν∣([0,2π])=∫02π∣sinx∣ dx=4。一方 ν([0,2π])=0 である。
問題 6.2 ★ F∈C1(R) が単調非減少ならば、ルベーグ–スティルチェス測度について μF≪λ かつ dλdμF=F′ であることを示せ。
解答
微分積分学の基本定理より μF((a,b])=F(b)−F(a)=∫abF′(x) dx。F′≥0 は連続なので F′ dλ は有界集合上で有限な測度であり、区間 (a,b] の上で μF と一致する。系 1.32 より μF=F′ dλ。
問題 6.3 ★★ 符号付き測度 ν について、∣ν∣(E)=sup∑j=1n∣ν(Ej)∣(上限は E の有限個の可測集合への分割 E=E1⊔⋯⊔En についてとる)を示せ。
解答
任意の分割について ∑j∣ν(Ej)∣≤∑j∣ν∣(Ej)=∣ν∣(E)。逆に、ハーン分解 (P,N) による分割 E=(E∩P)⊔(E∩N) では ∣ν(E∩P)∣+∣ν(E∩N)∣=ν+(E)+ν−(E)=∣ν∣(E) となり、上限が達成される。
問題 6.4 ★★ 符号付き測度 ν と正値測度 μ について、ν≪μ、∣ν∣≪μ、「ν+≪μ かつ ν−≪μ」の三つは同値であることを示せ。
解答
ν≪μ とし μ(E)=0 とする。E の可測部分集合も μ-零集合だから、ν+(E)=ν(E∩P)=0、ν−(E)=−ν(E∩N)=0。よって ν±≪μ。このとき ∣ν∣(E)=ν+(E)+ν−(E)=0。最後に ∣ν∣≪μ なら ∣ν(E)∣≤∣ν∣(E)=0。
問題 6.5 ★★ σ-有限な正値測度 μ,ν が ν≪μ かつ μ≪ν を満たすならば、dμdν>0(μ-a.e.)かつ dνdμ=(dμdν)−1(a.e.)であることを示せ。
解答
E={dμdν=0} とすると ν(E)=∫Edμdν dμ=0 で、μ≪ν より μ(E)=0。連鎖律(命題 6.13)を μ≪ν≪μ に使うと 1=dμdμ=dνdμdμdν(μ-a.e.)。ここで dμdμ=1 は一意性による。
問題 6.6 ★ 問題 2.1 の μF のルベーグ測度 λ に関するルベーグ分解を求めよ。
解答
μF=21δ0+λ∣[0,1]+21δ1 だから、νa=1[0,1] dλ(dλdνa=1[0,1])、νs=21(δ0+δ1) である。νs は λ-零集合 {0,1} に集中しているので νs⊥λ。
問題 6.7 ★★★ 6.4 節の NOTE のフォン・ノイマンの証明を完成させよ。
解答
g=1E とすると ν(E)=∫Eh dρ で、0≤ν(E)≤ρ(E) だから 0≤∫Eh dρ≤ρ(E) がすべての E で成り立ち、0≤h≤1(ρ-a.e.)。∫g dν=∫gh dμ+∫gh dν より、有界な g≥0 について ∫g(1−h) dν=∫gh dμ(単調収束定理で非負可測な g 全体に広がる)。A={h=1} とし g=1A とおけば μ(A)=0。g=1E∖A(1+h+⋯+hn−1) とおけば ∫E∖A(1−hn) dν=∫E∖Ah(1+⋯+hn−1) dμ で、A の外では hn→0 だから、n→∞ として(左辺は優収束定理、右辺は単調収束定理)ν(E∖A)=∫Ef dμ、f=1−hh1X∖A。νs=ν(⋅∩A) は μ-零集合 A に集中するので νs⊥μ。