Lemma数学ロードマップ

00 数学の言葉:論理・集合・写像 · 第 7 章

数の体系

目安 4.5〜8 時間定理など 17演習 10 問

この章の目標

  • ペアノの公理によって自然数を特徴づけ、帰納的定義の定理を証明できる
  • 自然数の加法・乗法・順序を帰納的に定義し、基本性質や整列性を帰納法で示せる
  • 整数を N×N\mathbb{N} \times \mathbb{N} の、有理数を Z×(Z∖{0})\mathbb{Z} \times (\mathbb{Z} \setminus \lbrace 0 \rbrace) の同値類として構成できる
  • 有理数に「穴」があること(2\sqrt{2} の無理性、上限をもたない有界集合)を証明できる
  • デデキント切断による実数の構成の要点(順序・上限の存在・加法と加法の逆元)を証明し、コーシー列による構成の概略と、実数が完備順序体として一意に特徴づけられることを説明できる
  • 複素数を R2\mathbb{R}^2 上の演算として定義できる

前提:第1章(帰納法)、第4章(同値関係・well-definedness・上限)

高校までは、自然数・整数・有理数・実数・複素数を「知っているもの」として使ってきた。では、たとえば実数とは何なのだろうか。「数直線上の点」や「無限小数」という説明は直観的だが、そこから 2⋅3=6\sqrt{2} \cdot \sqrt{3} = \sqrt{6} や「上に有界な集合は上限をもつ」を厳密に導くのは難しい。本章では、自然数の公理から出発して、整数・有理数・実数・複素数を集合論の中で順に構成する。これは、解析学のすべての議論が確かな土台の上に立っていることの保証である。構成のすべての細部を追う必要はないが、各段階で「何を付け加えたのか、なぜ付け加える必要があったのか」を理解してほしい。

7.1 ペアノの公理

自然数の本質は「11 から始めて、次へ次へと進むと、すべての自然数をちょうど一回ずつ通る」ことである。これを公理として述べる。

定義 7.1(ペアノの公理)集合 NN、元 1∈N1 \in N、写像 s ⁣:N→Ns\colon N \to N の組 (N,1,s)(N, 1, s) が次の三条件を満たすとき、ペアノ系 (Peano system) という。s(n)s(n) を nn の後者 (successor) という。

  • (P1) ss は単射である。
  • (P2) 1∉s(N)1 \notin s(N)、すなわち 11 はどの元の後者でもない。
  • (P3)(帰納法の公理)A⊂NA \subset N が 1∈A1 \in A かつ「n∈A⇒s(n)∈An \in A \Rightarrow s(n) \in A」を満たすならば、A=NA = N である。

(P3) で A:={n∈N∣P(n)}A := \lbrace n \in N \mid P(n) \rbrace とおけば、第1章の数学的帰納法(定理 1.31)がそのまま得られる。ペアノ系が存在することは、ZF の無限公理から示される(2.7 節。無限公理が保証する集合の中で最小のものをとる)。また次節で示すように、ペアノ系は本質的に一つしかない。そこで一つのペアノ系を固定して (N,1,s)(\mathbb{N}, 1, s) と書き、2:=s(1)2 := s(1)、3:=s(2)3 := s(2)、… と名前をつける。

例 7.2(各公理の役割)三つの公理はどれも省けない。

  1. N={1}N = \lbrace 1 \rbrace、s(1)=1s(1) = 1:(P1)(P3) は満たすが (P2) を満たさない(ループする)。
  2. N={1,2,3}N = \lbrace 1, 2, 3 \rbrace、s(1)=2s(1) = 2、s(2)=3s(2) = 3、s(3)=2s(3) = 2:(P2)(P3) は満たすが (P1) を満たさない(途中で合流する)。
  3. N=N∪{a,b}N = \mathbb{N} \cup \lbrace a, b \rbrace に通常の後者と s(a)=bs(a) = b、s(b)=as(b) = a を入れたもの:(P1)(P2) は満たすが (P3) を満たさない(A=NA = \mathbb{N} が反例。11 から到達できない余分な元がある)。

なお (Z≥0,0,n↦n+1)(\mathbb{Z}_{\geq 0}, 0, n \mapsto n + 1) もペアノ系であり、「最初の元」を 00 と呼ぶか 11 と呼ぶかは名前の問題にすぎない。本教材は N\mathbb{N} を 11 から始める(記法)。

7.2 帰納的定義

数列を「a1=1a_1 = 1、an+1=2ana_{n+1} = 2a_n」のように定めることを帰納的定義(再帰的定義, recursive definition)という。これが実際に写像 N→X\mathbb{N} \to X を一つ定めることは、自明ではない。写像はグラフという集合であり、定義の中に定義されるべきもの自身が現れているからである。

定理 7.3(帰納的定義の定理, recursion theorem)XX を集合、a∈Xa \in X、φ ⁣:X→X\varphi\colon X \to X を写像とする。このとき

f(1)=a,f(s(n))=φ(f(n))(n∈N)f(1) = a, \qquad f(s(n)) = \varphi(f(n)) \quad (n \in \mathbb{N})

を満たす写像 f ⁣:N→Xf\colon \mathbb{N} \to X がただ一つ存在する。

証明. 一意性:f,f′f, f' がともに条件を満たすとし、A:={n∣f(n)=f′(n)}A := \lbrace n \mid f(n) = f'(n) \rbrace とおく。1∈A1 \in A であり、n∈An \in A なら f(s(n))=φ(f(n))=φ(f′(n))=f′(s(n))f(s(n)) = \varphi(f(n)) = \varphi(f'(n)) = f'(s(n)) なので s(n)∈As(n) \in A。(P3) より A=NA = \mathbb{N}。

存在:N×X\mathbb{N} \times X の部分集合 GG で

(1,a)∈G,(n,x)∈G⇒(s(n),φ(x))∈G(1, a) \in G, \qquad (n, x) \in G \Rightarrow (s(n), \varphi(x)) \in G

を満たすもの全体を S\mathcal{S} とする。N×X∈S\mathbb{N} \times X \in \mathcal{S} なので S≠∅\mathcal{S} \neq \emptyset。F:=⋂SF := \bigcap \mathcal{S} とおくと、条件は共通部分で保たれるので F∈SF \in \mathcal{S} であり、FF はすべての G∈SG \in \mathcal{S} に含まれる。したがって「FF からある組を取り除いたものが S\mathcal{S} に属するなら矛盾」である。これを使って、A:={n∈N∣(n,x)∈F となる x がただ一つ}A := \lbrace n \in \mathbb{N} \mid (n, x) \in F \text{ となる } x \text{ がただ一つ} \rbrace が N\mathbb{N} に一致することを示す。

1∈A1 \in A:(1,a)∈F(1, a) \in F である。(1,b)∈F(1, b) \in F、b≠ab \neq a とし、G:=F∖{(1,b)}G := F \setminus \lbrace (1, b) \rbrace とおく。(1,a)∈G(1, a) \in G であり、(n,x)∈G(n, x) \in G なら (s(n),φ(x))∈F(s(n), \varphi(x)) \in F で、(P2) より s(n)≠1s(n) \neq 1 なので (s(n),φ(x))≠(1,b)(s(n), \varphi(x)) \neq (1, b)、すなわち (s(n),φ(x))∈G(s(n), \varphi(x)) \in G。よって G∈SG \in \mathcal{S} となり矛盾する。

n∈A⇒s(n)∈An \in A \Rightarrow s(n) \in A:(n,x)∈F(n, x) \in F となるただ一つの xx をとると (s(n),φ(x))∈F(s(n), \varphi(x)) \in F。(s(n),y)∈F(s(n), y) \in F、y≠φ(x)y \neq \varphi(x) とし、G:=F∖{(s(n),y)}G := F \setminus \lbrace (s(n), y) \rbrace とおく。s(n)≠1s(n) \neq 1 より (1,a)∈G(1, a) \in G。(m,z)∈G(m, z) \in G とすると (s(m),φ(z))∈F(s(m), \varphi(z)) \in F であり、もしこれが (s(n),y)(s(n), y) に等しければ、(P1) より m=nm = n、n∈An \in A より z=xz = x となって y=φ(x)y = \varphi(x) に反する。よって (s(m),φ(z))∈G(s(m), \varphi(z)) \in G で G∈SG \in \mathcal{S} となり、矛盾する。

(P3) より A=NA = \mathbb{N} なので、FF は写像 f ⁣:N→Xf\colon \mathbb{N} \to X のグラフであり、F∈SF \in \mathcal{S} から f(1)=af(1) = a、f(s(n))=φ(f(n))f(s(n)) = \varphi(f(n)) が従う。□\square

(P2) の役割に注意しよう。(Z,0,n↦n+1)(\mathbb{Z}, 0, n \mapsto n + 1) は (P2) を満たさず、実際「f(0)=1f(0) = 1、f(n+1)=0f(n + 1) = 0(すべての n∈Zn \in \mathbb{Z})」を満たす ff は存在しない(f(0)=f((−1)+1)=0f(0) = f((-1) + 1) = 0 となってしまう)。

系 7.4(ペアノ系の一意性)(N,1,s)(N, 1, s)、(N′,1′,s′)(N', 1', s') をペアノ系とすると、h(1)=1′h(1) = 1' かつ h∘s=s′∘hh \circ s = s' \circ h を満たす全単射 h ⁣:N→N′h\colon N \to N' がただ一つ存在する。

証明. 定理 7.3((N,1,s)(N, 1, s) で証明したものがそのまま使える)により、h(1)=1′h(1) = 1'、h(s(n))=s′(h(n))h(s(n)) = s'(h(n)) を満たす h ⁣:N→N′h\colon N \to N' と、同様の h′ ⁣:N′→Nh'\colon N' \to N が一意に存在する。h′∘hh' \circ h と idN\mathrm{id}_N はどちらも「1↦11 \mapsto 1、g(s(n))=s(g(n))g(s(n)) = s(g(n))」を満たすので、定理 7.3 の一意性より h′∘h=idNh' \circ h = \mathrm{id}_N。同様に h∘h′=idN′h \circ h' = \mathrm{id}_{N'}。□\square

注意 7.5 帰納的定義にはいくつかの変形がある。(1) 漸化式が nn にも依存する形 f(s(n))=φ(n,f(n))f(s(n)) = \varphi(n, f(n)) は、X′:=N×XX' := \mathbb{N} \times X、a′:=(1,a)a' := (1, a)、φ′(n,x):=(s(n),φ(n,x))\varphi'(n, x) := (s(n), \varphi(n, x)) に定理 7.3 を適用し、第 2 成分をとれば得られる。(2) f(s(n))f(s(n)) が f(1),…,f(n)f(1), \dots, f(n) のすべてに依存する形も、XX の元の有限列全体を X′X' として同様に扱える。第5章・第6章で使った帰納的定義はこれらの形である。

7.3 自然数の加法・乗法・順序

定義 7.6(加法と乗法)m∈Nm \in \mathbb{N} を固定し、定理 7.3 を用いて m+nm + n と m⋅nm \cdot n を nn について帰納的に定める。

m+1:=s(m),m+s(n):=s(m+n);m⋅1:=m,m⋅s(n):=m⋅n+mm + 1 := s(m), \quad m + s(n) := s(m + n); \qquad m \cdot 1 := m, \quad m \cdot s(n) := m \cdot n + m

特に s(n)=n+1s(n) = n + 1 であり、以後は後者を n+1n + 1 と書く。m⋅nm \cdot n は mnmn とも書く。

定理 7.7(加法の性質)m,n,k∈Nm, n, k \in \mathbb{N} について次が成り立つ。

  1. (m+n)+k=m+(n+k)(m + n) + k = m + (n + k)
  2. m+n=n+mm + n = n + m
  3. m+k=n+km + k = n + k ならば m=nm = n
  4. m+k≠mm + k \neq m

証明. (1) kk についての帰納法。k=1k = 1:(m+n)+1=s(m+n)=m+s(n)=m+(n+1)(m + n) + 1 = s(m + n) = m + s(n) = m + (n + 1)。kk で成り立てば (m+n)+(k+1)=s((m+n)+k)=s(m+(n+k))=m+s(n+k)=m+(n+(k+1))(m + n) + (k + 1) = s((m + n) + k) = s(m + (n + k)) = m + s(n + k) = m + (n + (k + 1))。

(2) まず 1+n=n+11 + n = n + 1 を nn についての帰納法で示す。n=1n = 1 は明らか。1+(n+1)=s(1+n)=s(n+1)=(n+1)+11 + (n + 1) = s(1 + n) = s(n + 1) = (n + 1) + 1。次に m+n=n+mm + n = n + m を nn についての帰納法で示す。n=1n = 1 はいま示した。nn で成り立てば、(1) を使って

m+(n+1)=(m+n)+1=(n+m)+1=n+(m+1)=n+(1+m)=(n+1)+mm + (n + 1) = (m + n) + 1 = (n + m) + 1 = n + (m + 1) = n + (1 + m) = (n + 1) + m

(3) kk についての帰納法。k=1k = 1:s(m)=s(n)s(m) = s(n) なら (P1) より m=nm = n。m+(k+1)=n+(k+1)m + (k + 1) = n + (k + 1) なら s(m+k)=s(n+k)s(m + k) = s(n + k) より m+k=n+km + k = n + k、帰納法の仮定より m=nm = n。

(4) mm についての帰納法。1+k=s(k)≠11 + k = s(k) \neq 1 は (P2) による。m+k≠mm + k \neq m と仮定すると、(m+1)+k=(m+k)+1=s(m+k)(m + 1) + k = (m + k) + 1 = s(m + k) であり、これが s(m)=m+1s(m) = m + 1 に等しければ (P1) より m+k=mm + k = m となって矛盾する。□\square

定理 7.8(乗法の性質)m,n,k∈Nm, n, k \in \mathbb{N} について、m(n+k)=mn+mkm(n + k) = mn + mk、(mn)k=m(nk)(mn)k = m(nk)、mn=nmmn = nm が成り立つ。

証明. 分配法則を kk についての帰納法で示す。k=1k = 1 は定義 m(n+1)=mn+mm(n + 1) = mn + m そのものである。kk で成り立てば、定義と定理 7.7 より m(n+(k+1))=m((n+k)+1)=m(n+k)+m=(mn+mk)+m=mn+(mk+m)=mn+m(k+1)m(n + (k + 1)) = m((n + k) + 1) = m(n + k) + m = (mn + mk) + m = mn + (mk + m) = mn + m(k + 1)。結合法則と交換法則も同様の帰納法で示せる(問題 7.2)。□\square

定義 7.9(順序)m,n∈Nm, n \in \mathbb{N} について、m+k=nm + k = n となる k∈Nk \in \mathbb{N} が存在するとき m<nm < n と書く。m<nm < n または m=nm = n のとき m≤nm \leq n と書く。

定理 7.10(順序の性質)m,n,k∈Nm, n, k \in \mathbb{N} について次が成り立つ。

  1. 1≤n1 \leq n。また m<n  ⟺  m+1≤nm < n \iff m + 1 \leq n
  2. (三分律)m<nm < n、m=nm = n、n<mn < m のうちちょうど一つが成り立つ。
  3. m<nm < n かつ n<kn < k ならば m<km < k
  4. m<nm < n ならば m+k<n+km + k < n + k かつ mk<nkmk < nk

特に ≤\leq は N\mathbb{N} 上の全順序である。

証明. (1) A:={1}∪s(N)A := \lbrace 1 \rbrace \cup s(\mathbb{N}) は 11 を含み後者で閉じているので、(P3) より A=NA = \mathbb{N}。よって n≠1n \neq 1 なら n=p+1=1+pn = p + 1 = 1 + p(p∈Np \in \mathbb{N})と書け、1<n1 < n。後半:m+k=nm + k = n のとき、k=1k = 1 なら m+1=nm + 1 = n、k≠1k \neq 1 なら k=1+pk = 1 + p と書けて (m+1)+p=n(m + 1) + p = n、すなわち m+1<nm + 1 < n。逆は定義から明らかである。

(2) 二つが同時に成り立たないこと:m<nm < n かつ m=nm = n なら m+k=mm + k = m となり定理 7.7 (4) に反する。m<nm < n かつ n<mn < m なら m+k=nm + k = n、n+l=mn + l = m より m+(k+l)=mm + (k + l) = m となり同様に矛盾。少なくとも一つ成り立つことを mm についての帰納法で示す。m=1m = 1 のときは (1) による。mm で成り立つとする。n<mn < m または n=mn = m なら n<m+1n < m + 1。m<nm < n なら (1) より m+1≤nm + 1 \leq n。いずれにせよ m+1m + 1 で成り立つ。

(3) m+a=nm + a = n、n+b=kn + b = k なら m+(a+b)=km + (a + b) = k。(4) m+a=nm + a = n なら (m+k)+a=n+k(m + k) + a = n + k、また分配法則より mk+ak=nkmk + ak = nk。□\square

定理 7.11(整列性)N\mathbb{N} の空でない部分集合は最小元をもつ。

証明. S⊂NS \subset \mathbb{N} が最小元をもたないと仮定し、S=∅S = \emptyset を示す。A:={n∈N∣k≤n を満たすどの k も S に属さない}A := \lbrace n \in \mathbb{N} \mid k \leq n \text{ を満たすどの } k \text{ も } S \text{ に属さない} \rbrace とおく。

1∈A1 \in A:k≤1k \leq 1 なら定理 7.10 (1) より k=1k = 1 である。もし 1∈S1 \in S なら、すべての mm で 1≤m1 \leq m なので 11 が SS の最小元になってしまう。よって 1∉S1 \notin S。

n∈A⇒n+1∈An \in A \Rightarrow n + 1 \in A:定理 7.10 より k≤n+1  ⟺  (k≤n∨k=n+1)k \leq n + 1 \iff (k \leq n \lor k = n + 1) なので、n+1∉Sn + 1 \notin S を示せばよい。n+1∈Sn + 1 \in S とすると、SS の任意の元 mm は nn 以下でないので三分律より n<mn < m、よって n+1≤mn + 1 \leq m となり、n+1n + 1 が SS の最小元になって矛盾する。

(P3) より A=NA = \mathbb{N} であり、どの nn も SS に属さない。□\square

整列性は第5章の定理 5.10 などですでに使っており、7.6 節の定理 7.16 でも使う。逆に、整列性から帰納法を導くこともできる(定理 4.28 の証明と同じ)。

7.4 整数の構成

N\mathbb{N} では引き算がいつもできるとは限らない。そこで「a−ba - b」を組 (a,b)(a, b) で表すことにする。ただし (5,2)(5, 2) と (4,1)(4, 1) はどちらも「33」を表すべきなので、同値関係で同一視する。a−b=c−da - b = c - d は a+d=b+ca + d = b + c と引き算を使わずに書ける。

定義 7.12(整数)N×N\mathbb{N} \times \mathbb{N} 上に (a,b)∼(c,d)  ⟺  a+d=b+c(a, b) \sim (c, d) \iff a + d = b + c と定め、Z:=(N×N)/∼\mathbb{Z} := (\mathbb{N} \times \mathbb{N})/{\sim} とおく。加法と乗法を

[(a,b)]+[(c,d)]:=[(a+c, b+d)],[(a,b)]⋅[(c,d)]:=[(ac+bd, ad+bc)][(a, b)] + [(c, d)] := [(a + c,\ b + d)], \qquad [(a, b)] \cdot [(c, d)] := [(ac + bd,\ ad + bc)]

で定める。

乗法の式は (a−b)(c−d)=(ac+bd)−(ad+bc)(a - b)(c - d) = (ac + bd) - (ad + bc) から来ている。

定理 7.13

  1. ∼\sim は同値関係であり、加法と乗法は well-defined である。
  2. Z\mathbb{Z} はこれらの演算で可換環になる。零元は 0:=[(1,1)]0 := [(1, 1)]、単位元は [(2,1)][(2, 1)]、[(a,b)][(a, b)] の加法の逆元は [(b,a)][(b, a)] である。
  3. ι ⁣:N→Z\iota\colon \mathbb{N} \to \mathbb{Z}、n↦[(n+1,1)]n \mapsto [(n + 1, 1)] は単射であり、加法と乗法を保つ。
  4. Z\mathbb{Z} の各元は、ある n∈Nn \in \mathbb{N} について ι(n)\iota(n)、00、−ι(n)-\iota(n) のちょうど一つの形に書ける。

証明. (1) 反射律・対称律は明らか。推移律:a+d=b+ca + d = b + c、c+f=d+ec + f = d + e なら

(a+f)+(c+d)=(a+d)+(c+f)=(b+c)+(d+e)=(b+e)+(c+d)(a + f) + (c + d) = (a + d) + (c + f) = (b + c) + (d + e) = (b + e) + (c + d)

なので、定理 7.7 (3) より a+f=b+ea + f = b + e。加法の well-definedness:(a,b)∼(a′,b′)(a, b) \sim (a', b')、すなわち a+b′=b+a′a + b' = b + a' なら (a+c)+(b′+d)=(a+b′)+(c+d)=(b+a′)+(c+d)=(b+d)+(a′+c)(a + c) + (b' + d) = (a + b') + (c + d) = (b + a') + (c + d) = (b + d) + (a' + c) なので、(a+c,b+d)∼(a′+c,b′+d)(a + c, b + d) \sim (a' + c, b' + d)。乗法:a+b′=b+a′a + b' = b + a' の両辺に cc を掛けた式 ac+b′c=bc+a′cac + b'c = bc + a'c と、b+a′=a+b′b + a' = a + b' の両辺に dd を掛けた式 bd+a′d=ad+b′dbd + a'd = ad + b'd を辺々加えると

(ac+b′c)+(bd+a′d)=(bc+a′c)+(ad+b′d)(ac + b'c) + (bd + a'd) = (bc + a'c) + (ad + b'd)

となり、並べ替えれば (ac+bd)+(a′d+b′c)=(ad+bc)+(a′c+b′d)(ac + bd) + (a'd + b'c) = (ad + bc) + (a'c + b'd)、すなわち (ac+bd,ad+bc)∼(a′c+b′d,a′d+b′c)(ac + bd, ad + bc) \sim (a'c + b'd, a'd + b'c) である。第 2 引数についても同様であり、両方を取り替える場合は例 4.14 と同じく一つずつ取り替えればよい。

(2) 環の公理(結合法則・分配法則など)は、代表元の N\mathbb{N} での計算に帰着して確かめられる。零元と逆元については (a,b)+(1,1)=(a+1,b+1)∼(a,b)(a, b) + (1, 1) = (a + 1, b + 1) \sim (a, b)、(a+b,b+a)∼(1,1)(a + b, b + a) \sim (1, 1) から従う。残りの確認は省略する。

(3) ι(m)=ι(n)\iota(m) = \iota(n) なら (m+1)+1=1+(n+1)(m + 1) + 1 = 1 + (n + 1) より m=nm = n。ι(m)+ι(n)=[(m+n+2,2)]=[(m+n+1,1)]\iota(m) + \iota(n) = [(m + n + 2, 2)] = [(m + n + 1, 1)] であり、乗法も同様に確かめられる。

(4) 三分律より、a=ba = b なら [(a,b)]=0[(a, b)] = 0、a=b+na = b + n なら (a,b)∼(n+1,1)(a, b) \sim (n + 1, 1) なので ι(n)\iota(n)、b=a+nb = a + n なら (a,b)∼(1,n+1)(a, b) \sim (1, n + 1) なので −ι(n)-\iota(n)。これらが重ならないことも定理 7.7 (4) から確かめられる。□\square

以後 ι(n)\iota(n) を nn と同一視して N⊂Z\mathbb{N} \subset \mathbb{Z} とみなす。順序は [(a,b)]<[(c,d)]  ⟺  a+d<b+c[(a, b)] < [(c, d)] \iff a + d < b + c で定める(well-definedness は問題 7.4)。

Z\mathbb{Z} を N∪{0}∪{−n∣n∈N}\mathbb{N} \cup \lbrace 0 \rbrace \cup \lbrace -n \mid n \in \mathbb{N} \rbrace として定義することもできるが、演算を符号による場合分けで定義しなければならず、法則の確認が煩雑になる。組の同値類による構成では場合分けが要らない。次の有理数の構成も同じ発想である。

7.5 有理数の構成

Z\mathbb{Z} では割り算がいつもできるとは限らない。そこで、例 4.14 で見たように、Q:=(Z×(Z∖{0}))/∼\mathbb{Q} := (\mathbb{Z} \times (\mathbb{Z} \setminus \lbrace 0 \rbrace))/{\sim}((a,b)∼(c,d)  ⟺  ad=bc(a, b) \sim (c, d) \iff ad = bc)と定め、(a,b)(a, b) の同値類を a/ba/b と書き、a/b+c/d:=(ad+bc)/(bd)a/b + c/d := (ad + bc)/(bd)、(a/b)(c/d):=(ac)/(bd)(a/b)(c/d) := (ac)/(bd) と定める。これらは well-defined である(例 4.14、問題 4.5)。a↦a/1a \mapsto a/1 により Z⊂Q\mathbb{Z} \subset \mathbb{Q} とみなす。

定義 7.14(体・順序体)集合 KK に加法 ++ と乗法 ⋅\cdot が与えられ、次を満たすとき KK を体 (field) という:加法は結合的・可換で零元 00 と逆元 −x-x をもち、乗法は結合的・可換で単位元 1≠01 \neq 0 をもち、00 でないすべての xx が逆元 x−1x^{-1} をもち、分配法則 x(y+z)=xy+xzx(y + z) = xy + xz が成り立つ。体 KK 上の全順序 ≤\leq が

(O1) x≤y⇒x+z≤y+zx \leq y \Rightarrow x + z \leq y + z  (O2) 0≤x0 \leq x かつ 0≤y⇒0≤xy0 \leq y \Rightarrow 0 \leq xy

を満たすとき、KK を順序体 (ordered field) という。順序体 KK で、任意の x∈Kx \in K に対し x<n⋅1x < n \cdot 1 となる n∈Nn \in \mathbb{N} があるとき、KK はアルキメデス的 (Archimedean) であるという。

体の一般論は代数学で扱う。順序体では x2≥0x^2 \geq 0、1>01 > 0 などが公理から導かれる(問題 7.8)。

定理 7.15 Q\mathbb{Q} は体である。さらに、各元を分母が正の形 a/ba/b(b>0b > 0)で表して「a/b≥0  ⟺  a≥0a/b \geq 0 \iff a \geq 0」と定め、x≤y  ⟺  y−x≥0x \leq y \iff y - x \geq 0 とおくと、Q\mathbb{Q} はアルキメデス的順序体になる。

証明. 主要な点を示す。零元は 0/10/1 であり、a/b=0/1  ⟺  a=0a/b = 0/1 \iff a = 0 である。a/b≠0a/b \neq 0 なら a≠0a \neq 0 なので b/ab/a が定義でき、(a/b)(b/a)=(ab)/(ba)=1/1(a/b)(b/a) = (ab)/(ba) = 1/1。よって 00 でない元は逆元をもつ。他の体の公理は Z\mathbb{Z} での計算に帰着する(省略)。

(a,b)∼(−a,−b)(a, b) \sim (-a, -b) なので、どの元も分母が正の形に書ける。「≥0\geq 0」が well-defined であること:a/b=a′/b′a/b = a'/b'(b,b′>0b, b' > 0)なら ab′=a′bab' = a'b であり、b,b′>0b, b' > 0 より aa と a′a' の符号は一致する。(O1)(O2) と全順序性も Z\mathbb{Z} の性質に帰着する(省略)。アルキメデス性:x=a/bx = a/b(b≥1b \geq 1)とする。a≤0a \leq 0 なら x≤0<1x \leq 0 < 1。a>0a > 0 なら a−a/b=a(b−1)/b≥0a - a/b = a(b - 1)/b \geq 0 より x≤a<a+1x \leq a < a + 1 で、n:=a+1∈Nn := a + 1 \in \mathbb{N} とすればよい。□\square

7.6 有理数の不完全性

Q\mathbb{Q} は四則演算と大小関係をもつ、よくできた数の体系である。しかし数直線には「穴」がある。

定理 7.16 x2=2x^2 = 2 を満たす x∈Qx \in \mathbb{Q} は存在しない。

第1章の定理 1.36 で既約分数を使って証明したが、ここでは整列性を使う別証明を与える。

証明. 存在したとすると、x≠0x \neq 0 で ∣x∣=m/n\lvert x \rvert = m/n(m,n∈Nm, n \in \mathbb{N})と書けて m2=2n2m^2 = 2n^2 となる。このような (m,n)(m, n) のうち nn が最小のものを整列性(定理 7.11)によりとる。n2<m2<4n2n^2 < m^2 < 4n^2 より n<m<2nn < m < 2n なので、m′:=2n−mm' := 2n - m、n′:=m−nn' := m - n はともに自然数で n′<nn' < n である。そして

m′2−2n′2=(4n2−4mn+m2)−2(m2−2mn+n2)=2n2−m2=0m'^2 - 2n'^2 = (4n^2 - 4mn + m^2) - 2(m^2 - 2mn + n^2) = 2n^2 - m^2 = 0

となり、nn の最小性に反する。□\square

定理 7.17 A:={x∈Q∣x>0, x2<2}A := \lbrace x \in \mathbb{Q} \mid x > 0,\ x^2 < 2 \rbrace は空でなく Q\mathbb{Q} の中で上に有界だが、Q\mathbb{Q} の中に上限をもたない。

証明. 1∈A1 \in A であり、x>2x > 2 なら x2>4x^2 > 4 なので 22 は上界である。s∈Qs \in \mathbb{Q} が AA の上限であると仮定する。s≥1>0s \geq 1 > 0 であり、定理 7.16 より s2≠2s^2 \neq 2。

s2<2s^2 < 2 の場合:h:=min⁡{1/2, (2−s2)/(2s+1)}h := \min \lbrace 1/2,\ (2 - s^2)/(2s + 1) \rbrace とおくと h∈Qh \in \mathbb{Q}、0<h<10 < h < 1 で、h2<hh^2 < h より

(s+h)2=s2+2sh+h2<s2+h(2s+1)≤s2+(2−s2)=2(s + h)^2 = s^2 + 2sh + h^2 < s^2 + h(2s + 1) \leq s^2 + (2 - s^2) = 2

なので s+h∈As + h \in A となり、ss が上界であることに反する。

s2>2s^2 > 2 の場合:h:=(s2−2)/(2s)>0h := (s^2 - 2)/(2s) > 0、t:=s−h=(s2+2)/(2s)>0t := s - h = (s^2 + 2)/(2s) > 0 とおくと t2=s2−2sh+h2>s2−2sh=2t^2 = s^2 - 2sh + h^2 > s^2 - 2sh = 2 である。x∈Ax \in A が x>tx > t を満たせば x2>t2>2x^2 > t^2 > 2 となり矛盾するので、tt は AA の上界である。t<st < s なので、ss が最小の上界であることに反する。□\square

R\mathbb{R} の中では sup⁡A=2\sup A = \sqrt{2} である。Q\mathbb{Q} の中では、AA の「すぐ上」にあるべき数が欠けている。同じことは数列でも起こる:x1=2x_1 = 2、xn+1=(xn+2/xn)/2x_{n+1} = (x_n + 2/x_n)/2 で定まる有理数列はコーシー列だが、Q\mathbb{Q} の中に極限をもたない。この穴を埋めて実数を作る方法が、次の二つの構成である。

7.7 デデキント切断による実数の構成

実数 α\alpha は、それより小さい有理数全体 {p∈Q∣p<α}\lbrace p \in \mathbb{Q} \mid p < \alpha \rbrace によって決まるはずである。そこで逆に、このような有理数の集合そのものを実数と定義する。

定義 7.18(デデキント切断)α⊂Q\alpha \subset \mathbb{Q} が次を満たすとき、α\alpha を切断 (Dedekind cut) という。

  • (C1) α≠∅\alpha \neq \emptyset かつ α≠Q\alpha \neq \mathbb{Q}
  • (C2) p∈αp \in \alpha、q∈Qq \in \mathbb{Q}、q<pq < p ならば q∈αq \in \alpha
  • (C3) α\alpha は最大元をもたない(p∈αp \in \alpha ならば p<rp < r となる r∈αr \in \alpha がある)

切断全体の集合を R\mathbb{R} とし、その元を実数と呼ぶ。α,β∈R\alpha, \beta \in \mathbb{R} について α⊂β\alpha \subset \beta のとき α≤β\alpha \leq \beta と書く。

(C2) から、「p∈αp \in \alpha、q∉αq \notin \alpha ならば p<qp < q」が従う(q≤pq \leq p なら q∈αq \in \alpha となるから)。この事実を以下でたびたび使う。

例 7.19 (1) r∈Qr \in \mathbb{Q} に対し r∗:={p∈Q∣p<r}r^{\ast} := \lbrace p \in \mathbb{Q} \mid p < r \rbrace は切断である((C3) は p<rp < r なら (p+r)/2∈r∗(p + r)/2 \in r^{\ast} による)。r↦r∗r \mapsto r^{\ast} により Q\mathbb{Q} を R\mathbb{R} の中にみなす。(2) α2:={p∈Q∣p≤0∨p2<2}\alpha_2 := \lbrace p \in \mathbb{Q} \mid p \leq 0 \lor p^2 < 2 \rbrace は切断であり((C3) は定理 7.17 の証明の前半による)、r∗r^{\ast} の形ではない。α2\alpha_2 が 2\sqrt{2} を表す。

定理 7.20 ≤\leq は R\mathbb{R} 上の全順序である。

証明. 包含関係なので半順序である。α⊄β\alpha \not\subset \beta とし、p∈α∖βp \in \alpha \setminus \beta をとる。q∈βq \in \beta とすると、p∉βp \notin \beta より q<pq < p であり、p∈αp \in \alpha と (C2) より q∈αq \in \alpha。よって β⊂α\beta \subset \alpha。□\square

次の定理がこの構成の核心である。順序を包含関係で定めたので、上限は和集合として自動的に得られる。

定理 7.21(上限の存在)A⊂R\mathcal{A} \subset \mathbb{R} が空でなく上に有界ならば、γ:=⋃α∈Aα\gamma := \bigcup_{\alpha \in \mathcal{A}} \alpha は切断であり、A\mathcal{A} の上限である。

証明. γ\gamma が切断であること:A≠∅\mathcal{A} \neq \emptyset で各 α\alpha は空でないので γ≠∅\gamma \neq \emptyset。A\mathcal{A} の上界 β\beta をとると、すべての α∈A\alpha \in \mathcal{A} で α⊂β\alpha \subset \beta なので γ⊂β≠Q\gamma \subset \beta \neq \mathbb{Q}。(C2):p∈γp \in \gamma、q<pq < p なら、pp はある α∈A\alpha \in \mathcal{A} に属し、q∈α⊂γq \in \alpha \subset \gamma。(C3):p∈γp \in \gamma なら p∈αp \in \alpha となる α\alpha があり、p<rp < r となる r∈α⊂γr \in \alpha \subset \gamma がある。

上限であること:各 α∈A\alpha \in \mathcal{A} について α⊂γ\alpha \subset \gamma なので γ\gamma は上界である。δ\delta が A\mathcal{A} の上界なら、すべての α\alpha で α⊂δ\alpha \subset \delta なので γ⊂δ\gamma \subset \delta、すなわち γ≤δ\gamma \leq \delta。□\square

定理 7.22(加法)α,β∈R\alpha, \beta \in \mathbb{R} に対し α+β:={p+q∣p∈α, q∈β}\alpha + \beta := \lbrace p + q \mid p \in \alpha,\ q \in \beta \rbrace は切断である。この加法は結合的かつ可換であり、α+0∗=α\alpha + 0^{\ast} = \alpha が成り立つ。

証明. (C1):空でないことは明らか。p′∉αp' \notin \alpha、q′∉βq' \notin \beta をとると、任意の p∈αp \in \alpha、q∈βq \in \beta について p<p′p < p'、q<q′q < q' なので p+q<p′+q′p + q < p' + q'、よって p′+q′∉α+βp' + q' \notin \alpha + \beta。(C2):r<p+qr < p + q(p∈αp \in \alpha、q∈βq \in \beta)なら r−q<pr - q < p より r−q∈αr - q \in \alpha で、r=(r−q)+q∈α+βr = (r - q) + q \in \alpha + \beta。(C3):p+qp + q に対し p<p′′p < p'' となる p′′∈αp'' \in \alpha をとれば p′′+q∈α+βp'' + q \in \alpha + \beta はより大きい。結合法則と交換法則は Q\mathbb{Q} の加法の性質から直ちに従う。α+0∗⊂α\alpha + 0^{\ast} \subset \alpha:q<0q < 0 なら p+q<pp + q < p なので (C2) より p+q∈αp + q \in \alpha。逆に p∈αp \in \alpha なら p<rp < r となる r∈αr \in \alpha をとり、p=r+(p−r)p = r + (p - r)、p−r∈0∗p - r \in 0^{\ast}。□\square

加法の逆元の構成は少し工夫を要する。−α-\alpha は「−p-p が α\alpha より余裕をもって大きい」ような pp の全体として定める。

定理 7.23(加法の逆元)α∈R\alpha \in \mathbb{R} に対し

−α:={p∈Q∣ある有理数 r>0 について −p−r∉α}-\alpha := \lbrace p \in \mathbb{Q} \mid \text{ある有理数 } r > 0 \text{ について } -p - r \notin \alpha \rbrace

は切断であり、α+(−α)=0∗\alpha + (-\alpha) = 0^{\ast} が成り立つ。

証明. (C1):s∉αs \notin \alpha をとり p:=−s−1p := -s - 1 とおくと −p−1=s∉α-p - 1 = s \notin \alpha なので p∈−αp \in -\alpha。また q∈αq \in \alpha について −q∉−α-q \notin -\alpha である。実際 −q∈−α-q \in -\alpha なら、ある r>0r > 0 で q−r∉αq - r \notin \alpha となるが、q−r<q∈αq - r < q \in \alpha より q−r∈αq - r \in \alpha で矛盾する。(C2):p∈−αp \in -\alpha(rr で −p−r∉α-p - r \notin \alpha)、q<pq < p とすると −q−r>−p−r-q - r > -p - r であり、−q−r∈α-q - r \in \alpha なら (C2) より −p−r∈α-p - r \in \alpha となるので、−q−r∉α-q - r \notin \alpha、すなわち q∈−αq \in -\alpha。(C3):同じ p,rp, r について t:=p+r/2t := p + r/2 とおくと −t−r/2=−p−r∉α-t - r/2 = -p - r \notin \alpha なので t∈−αt \in -\alpha かつ t>pt > p。

α+(−α)⊂0∗\alpha + (-\alpha) \subset 0^{\ast}:p∈αp \in \alpha、q∈−αq \in -\alpha(rr で −q−r∉α-q - r \notin \alpha)なら p<−q−rp < -q - r なので p+q<−r<0p + q < -r < 0。

0∗⊂α+(−α)0^{\ast} \subset \alpha + (-\alpha):v<0v < 0 を有理数とし、w:=−v/2>0w := -v/2 > 0 とおく。p0∈αp_0 \in \alpha、s∉αs \notin \alpha をとる。Q\mathbb{Q} のアルキメデス性より n1w<p0n_1 w < p_0、n2w>sn_2 w > s となる整数 n1,n2n_1, n_2 がある。整数の集合 T:={n∈Z∣nw∈α}T := \lbrace n \in \mathbb{Z} \mid nw \in \alpha \rbrace は n1n_1 を含み、n∈Tn \in T なら nw<s<n2wnw < s < n_2 w より n<n2n < n_2 なので上に有界であり、最大元 nn をもつ。すると nw∈αnw \in \alpha、(n+1)w∉α(n + 1)w \notin \alpha である。p:=nwp := nw、q:=−(n+2)wq := -(n + 2)w とおくと、−q−w=(n+1)w∉α-q - w = (n + 1)w \notin \alpha より q∈−αq \in -\alpha であり、p+q=−2w=vp + q = -2w = v。□\square

注意 7.24(乗法と残りの検証)正の切断 α,β>0∗\alpha, \beta > 0^{\ast} に対しては、乗法を αβ:={p∈Q∣ある q∈α, r∈β, q>0, r>0 について p≤qr}\alpha\beta := \lbrace p \in \mathbb{Q} \mid \text{ある } q \in \alpha,\ r \in \beta,\ q > 0,\ r > 0 \text{ について } p \leq qr \rbrace で定め、一般の場合は符号で場合分けして(たとえば α<0∗<β\alpha < 0^{\ast} < \beta なら αβ:=−((−α)β)\alpha\beta := -((-\alpha)\beta))定義する。そして R\mathbb{R} が順序体になること、r↦r∗r \mapsto r^{\ast} が Q\mathbb{Q} の演算と順序を保つ単射であることを確かめる。これらの検証は長いが、ここで示した議論と同種のものなので省略する。詳細は W. Rudin, Principles of Mathematical Analysis (McGraw-Hill) の第1章付録や、E. Landau, Grundlagen der Analysis(英訳 Foundations of Analysis)を参照してほしい。以上により、上限をもつ順序体、すなわち 7.9 節の完備順序体が存在することがわかる。

7.8 コーシー列による構成(概略)

実数を構成するもう一つの方法は、「収束すべきなのに Q\mathbb{Q} の中に極限がない数列」を、その極限の代わりに使うものである。概略を述べる。

  1. 有理数列 (an)(a_n) がコーシー列であるとは、任意の有理数 ε>0\varepsilon > 0 に対し、m,n≥Nm, n \geq N なら ∣am−an∣<ε\lvert a_m - a_n \rvert < \varepsilon となる NN が存在することをいう。有理数のコーシー列全体を C\mathcal{C} とする。
  2. (an),(bn)∈C(a_n), (b_n) \in \mathcal{C} について、an−bn→0a_n - b_n \to 0(任意の有理数 ε>0\varepsilon > 0 に対し、十分大きい nn で ∣an−bn∣<ε\lvert a_n - b_n \rvert < \varepsilon)のとき (an)∼(bn)(a_n) \sim (b_n) と定める。これは同値関係であり(問題 7.10)、R:=C/∼\mathbb{R} := \mathcal{C}/{\sim} とおく。「同じ数に近づく数列を同一視する」のである。
  3. 演算を項ごとに [(an)]+[(bn)]:=[(an+bn)][(a_n)] + [(b_n)] := [(a_n + b_n)]、[(an)][(bn)]:=[(anbn)][(a_n)][(b_n)] := [(a_n b_n)] で定める。コーシー列は有界なので積もコーシー列になり、これらは well-defined である。[(an)]≠0[(a_n)] \neq 0 なら、十分先で ∣an∣\lvert a_n \rvert はある正の有理数以上になるので、逆元が [(1/an)][(1/a_n)](最初の有限項は適当に修正)で与えられる。
  4. 順序は「ある有理数 δ>0\delta > 0 と NN があって、n≥Nn \geq N なら an≥δa_n \geq \delta」のとき [(an)]>0[(a_n)] > 0 と定める。
  5. こうして得られた順序体で、任意のコーシー列が収束すること、そこから上限の存在が導かれる。

この方法は、距離空間の完備化(位相空間論 第7章)や、別の絶対値を使った pp 進数体 Qp\mathbb{Q}_p の構成(代数的整数論 第5章)へとそのまま一般化される。

7.9 実数の公理的特徴づけ

二つの構成は見かけがまったく違うが、できあがるものは同じである。そのことを述べるために、実数がもつべき性質を公理としてまとめる。

定義 7.25(完備順序体)順序体 KK の空でない上に有界な部分集合が、つねに KK の中に上限をもつとき、KK を完備順序体 (complete ordered field) という。

定理 7.26 完備順序体はアルキメデス的である。

証明. 完備順序体 KK で、N\mathbb{N} の像 {n⋅1∣n∈N}\lbrace n \cdot 1 \mid n \in \mathbb{N} \rbrace(n⋅1n \cdot 1 は 11 を nn 個足したもの。定理 7.3 で定める)がある xx で上から押さえられたとする。上限 ss が存在し、s−1<ss - 1 < s は上界でないので n⋅1>s−1n \cdot 1 > s - 1 となる nn がある。すると (n+1)⋅1>s(n + 1) \cdot 1 > s となり、ss が上界であることに反する。□\square

定理 7.27(完備順序体の一意性)K,K′K, K' を完備順序体とすると、加法・乗法・順序を保つ全単射 K→K′K \to K' がただ一つ存在する。

この定理の証明は省略する(主張のみ)。証明の方針は、まず KK と K′K' の中にある Q\mathbb{Q} の「コピー」どうしを対応させ、次に x∈Kx \in K を sup⁡{q∈Q∣q<x}\sup \lbrace q \in \mathbb{Q} \mid q < x \rbrace に対応させる、というものである。

定理 7.27 により、実数とは「完備順序体」のことだと言ってよい。デデキント切断やコーシー列による構成は、その存在を保証するためのものであり、いったん存在がわかれば、解析学は完備順序体の公理だけから展開できる(微分積分学 第1章)。

7.10 複素数

R\mathbb{R} では x2=−1x^2 = -1 が解をもたない。そこで R2\mathbb{R}^2 に演算を入れて、この方程式が解をもつ体を作る。

定義 7.28(複素数)C:=R2\mathbb{C} := \mathbb{R}^2 とし、加法と乗法を

(a,b)+(c,d):=(a+c, b+d),(a,b)(c,d):=(ac−bd, ad+bc)(a, b) + (c, d) := (a + c,\ b + d), \qquad (a, b)(c, d) := (ac - bd,\ ad + bc)

で定める。C\mathbb{C} の元を複素数 (complex number) という。

定理 7.29 C\mathbb{C} は、零元 (0,0)(0, 0)、単位元 (1,0)(1, 0) をもつ体である。(a,b)≠(0,0)(a, b) \neq (0, 0) の逆元は (aa2+b2, −ba2+b2)\left( \dfrac{a}{a^2 + b^2},\ \dfrac{-b}{a^2 + b^2} \right) である。また a↦(a,0)a \mapsto (a, 0) は R\mathbb{R} から C\mathbb{C} への単射で、加法と乗法を保つ。

証明. 加法についての性質は成分ごとの R\mathbb{R} の性質から従う。乗法の可換性は定義式が (a,b)(a, b) と (c,d)(c, d) について対称であることから、結合法則と分配法則は両辺を展開する直接の計算から従う(問題 7.9)。(a,b)(1,0)=(a,b)(a, b)(1, 0) = (a, b) である。(a,b)≠(0,0)(a, b) \neq (0, 0) なら順序体 R\mathbb{R} で a2+b2>0a^2 + b^2 > 0 なので上の元が定義でき、

(a,b)(aa2+b2,−ba2+b2)=(a2+b2a2+b2,−ab+baa2+b2)=(1,0)(a, b) \left( \frac{a}{a^2 + b^2}, \frac{-b}{a^2 + b^2} \right) = \left( \frac{a^2 + b^2}{a^2 + b^2}, \frac{-ab + ba}{a^2 + b^2} \right) = (1, 0)

となる。最後に (a,0)+(c,0)=(a+c,0)(a, 0) + (c, 0) = (a + c, 0)、(a,0)(c,0)=(ac,0)(a, 0)(c, 0) = (ac, 0) である。□\square

a∈Ra \in \mathbb{R} を (a,0)(a, 0) と同一視し、i:=(0,1)i := (0, 1) とおくと、i2=(−1,0)=−1i^2 = (-1, 0) = -1 であり、(a,b)=(a,0)+(b,0)(0,1)=a+bi(a, b) = (a, 0) + (b, 0)(0, 1) = a + bi と書ける。こうして高校で学んだ複素数の計算規則がすべて正当化される。z=a+biz = a + bi の共役 z‾:=a−bi\overline{z} := a - bi、絶対値 ∣z∣:=a2+b2\lvert z \rvert := \sqrt{a^2 + b^2} について zz‾=∣z∣2z\overline{z} = \lvert z \rvert^2、z−1=z‾/∣z∣2z^{-1} = \overline{z}/\lvert z \rvert^2 である。

C\mathbb{C} をどのように順序づけても順序体にはならない(問題 7.8)。一方で C\mathbb{C} は、定数でない任意の複素係数多項式が根をもつという著しい性質(代数学の基本定理)をもつ。その証明は複素関数論で与える。複素数は、多項式環の剰余環 R[x]/(x2+1)\mathbb{R}[x]/(x^2 + 1) として(代数学 第5章)、あるいは次の形の 22 次実正方行列全体として構成することもできる。

(a−bba)(a,b∈R)\begin{pmatrix} a & -b \\ b & a \end{pmatrix} \qquad (a, b \in \mathbb{R})

まとめ

  • 自然数はペアノの公理(後者関数の単射性、11 は後者でない、帰納法の公理)で特徴づけられ、ペアノ系は本質的に一つである。
  • 帰納的定義の定理により、漸化式で写像を定義することが正当化される。これを使って加法・乗法を定義し、その性質を帰納法で証明する。N\mathbb{N} は整列性をもつ。
  • 整数は (a,b)∼(c,d)  ⟺  a+d=b+c(a, b) \sim (c, d) \iff a + d = b + c による N×N\mathbb{N} \times \mathbb{N} の商集合として、有理数は ad=bcad = bc による Z×(Z∖{0})\mathbb{Z} \times (\mathbb{Z} \setminus \lbrace 0 \rbrace) の商集合として構成される。演算の well-definedness の確認が要である。
  • Q\mathbb{Q} はアルキメデス的順序体だが、{x>0∣x2<2}\lbrace x > 0 \mid x^2 < 2 \rbrace は Q\mathbb{Q} の中に上限をもたない。
  • デデキント切断では実数を「有理数の下側の集合」として定義する。順序は包含、上限は和集合で与えられる。加法の逆元の構成にはアルキメデス性を使う。
  • コーシー列による構成は、完備化・pp 進数へと一般化される。
  • 実数は完備順序体として一意に特徴づけられる。複素数は R2\mathbb{R}^2 に乗法 (a,b)(c,d)=(ac−bd,ad+bc)(a, b)(c, d) = (ac - bd, ad + bc) を入れた体である。

演習問題

問題 7.1 ★ 2:=s(1)2 := s(1)、3:=s(2)3 := s(2)、4:=s(3)4 := s(3) とする。定義 7.6 だけを用いて 2+2=42 + 2 = 4 および 2⋅2=42 \cdot 2 = 4 を示せ。

解答

2+2=2+s(1)=s(2+1)=s(s(2))=s(3)=42 + 2 = 2 + s(1) = s(2 + 1) = s(s(2)) = s(3) = 4。ここで 2+1=s(2)=32 + 1 = s(2) = 3 を使った。2⋅2=2⋅s(1)=2⋅1+2=2+2=42 \cdot 2 = 2 \cdot s(1) = 2 \cdot 1 + 2 = 2 + 2 = 4。

問題 7.2 ★★ 自然数の乗法について、交換法則 mn=nmmn = nm と結合法則 (mn)k=m(nk)(mn)k = m(nk) を帰納法で示せ(定理 7.7 と分配法則 m(n+k)=mn+mkm(n + k) = mn + mk は使ってよい)。

解答

交換法則:まず 1⋅n=n1 \cdot n = n を nn の帰納法で示す(1⋅1=11 \cdot 1 = 1、1⋅(n+1)=1⋅n+1=n+11 \cdot (n + 1) = 1 \cdot n + 1 = n + 1)。次に (m+1)n=mn+n(m + 1)n = mn + n を nn の帰納法で示す。n=1n = 1 は (m+1)⋅1=m+1=m⋅1+1(m + 1) \cdot 1 = m + 1 = m \cdot 1 + 1。nn で成り立てば (m+1)(n+1)=(m+1)n+(m+1)=mn+n+m+1(m + 1)(n + 1) = (m + 1)n + (m + 1) = mn + n + m + 1、一方 m(n+1)+(n+1)=mn+m+n+1m(n + 1) + (n + 1) = mn + m + n + 1 で、加法の交換・結合法則より等しい。最後に mn=nmmn = nm を mm の帰納法で示す。m=1m = 1 は 1⋅n=n=n⋅11 \cdot n = n = n \cdot 1。mm で成り立てば (m+1)n=mn+n=nm+n=n(m+1)(m + 1)n = mn + n = nm + n = n(m + 1)(最後は乗法の定義)。

結合法則:kk の帰納法。k=1k = 1 は (mn)⋅1=mn=m(n⋅1)(mn) \cdot 1 = mn = m(n \cdot 1)。kk で成り立てば、分配法則より (mn)(k+1)=(mn)k+mn=m(nk)+mn=m(nk+n)=m(n(k+1))(mn)(k + 1) = (mn)k + mn = m(nk) + mn = m(nk + n) = m(n(k + 1))。

問題 7.3 ★ 次の組がペアノの公理 (P1)(P2)(P3) のどれを満たさないか答えよ。 (a) (N,2,n↦n+1)(\mathbb{N}, 2, n \mapsto n + 1) (b) (Z,0,n↦n+1)(\mathbb{Z}, 0, n \mapsto n + 1) (c) (N,1,n↦n+2)(\mathbb{N}, 1, n \mapsto n + 2) (d) ({1,2},1,s)(\lbrace 1, 2 \rbrace, 1, s)、s(1)=s(2)=2s(1) = s(2) = 2

解答

(a) (P2)(2=s(1)2 = s(1))と (P3)(A={2,3,… }A = \lbrace 2, 3, \dots \rbrace が反例)。(b) (P2)(0=s(−1)0 = s(-1))と (P3)(A=Z≥0A = \mathbb{Z}_{\geq 0} が反例)。(c) (P3)(奇数全体が反例)。(P1)(P2) は満たす。(d) (P1)(s(1)=s(2)s(1) = s(2))。(P2)(P3) は満たす。

問題 7.4 ★★ 定義 7.12 の Z\mathbb{Z} で、関係 [(a,b)]<[(c,d)]  ⟺  a+d<b+c[(a, b)] < [(c, d)] \iff a + d < b + c が well-defined であることを示せ。

解答

(a,b)∼(a′,b′)(a, b) \sim (a', b')、すなわち a+b′=b+a′a + b' = b + a' とし、a+d<b+ca + d < b + c を仮定する。定理 7.10 (4) より両辺に b′b' を加えて (a+b′)+d<b+b′+c(a + b') + d < b + b' + c、左辺を (b+a′)+d(b + a') + d に書き換えると b+(a′+d)<b+(b′+c)b + (a' + d) < b + (b' + c) となる。三分律と定理 7.10 (4) から、x+k<y+kx + k < y + k なら x<yx < y が従う(y≤xy \leq x なら y+k≤x+ky + k \leq x + k となり矛盾)。よって a′+d<b′+ca' + d < b' + c。第 2 引数についても同様である。

問題 7.5 ★★ 6\sqrt{6} と 2+3\sqrt{2} + \sqrt{3} が無理数であることを示せ。

解答

6=m/n\sqrt{6} = m/n(m,n∈Nm, n \in \mathbb{N}、11 以外の正の公約数なし)とすると m2=6n2m^2 = 6n^2 は偶数なので mm は偶数(例 1.29)、m=2km = 2k とおくと 2k2=3n22k^2 = 3n^2。3n23n^2 が偶数なので n2n^2 は偶数(nn が奇数なら 3n23n^2 は奇数)、よって nn も偶数となり矛盾。

2+3=r∈Q\sqrt{2} + \sqrt{3} = r \in \mathbb{Q} とすると、両辺を 2 乗して r2=5+26r^2 = 5 + 2\sqrt{6}、6=(r2−5)/2∈Q\sqrt{6} = (r^2 - 5)/2 \in \mathbb{Q} となり、前半に矛盾する。

問題 7.6 ★★ 例 7.19 の r∗r^{\ast} について、有理数 r,tr, t に対し (a) r<t  ⟺  r∗⊊t∗r < t \iff r^{\ast} \subsetneq t^{\ast}、(b) (r+t)∗=r∗+t∗(r + t)^{\ast} = r^{\ast} + t^{\ast} を示せ。

解答

(a) r<tr < t なら、p<rp < r は p<tp < t を導くので r∗⊂t∗r^{\ast} \subset t^{\ast}、さらに r∈t∗∖r∗r \in t^{\ast} \setminus r^{\ast}。逆に r≥tr \geq t なら同様に t∗⊂r∗t^{\ast} \subset r^{\ast} なので、r∗⊊t∗r^{\ast} \subsetneq t^{\ast} は成り立たない。

(b) p<rp < r、q<tq < t なら p+q<r+tp + q < r + t なので r∗+t∗⊂(r+t)∗r^{\ast} + t^{\ast} \subset (r + t)^{\ast} が成り立つ。逆に v<r+tv < r + t とし、d:=(r+t−v)/2>0d := (r + t - v)/2 > 0、p:=r−dp := r - d、q:=t−dq := t - d とおくと、p∈r∗p \in r^{\ast}、q∈t∗q \in t^{\ast}、p+q=vp + q = v なので (r+t)∗⊂r∗+t∗(r + t)^{\ast} \subset r^{\ast} + t^{\ast}。

問題 7.7 ★★ デデキント切断 α,β,γ\alpha, \beta, \gamma について、(a) α≤β\alpha \leq \beta ならば α+γ≤β+γ\alpha + \gamma \leq \beta + \gamma であること、(b) α>0∗  ⟺  0∈α\alpha > 0^{\ast} \iff 0 \in \alpha であることを示せ。

解答

(a) α⊂β\alpha \subset \beta なら、p+qp + q(p∈αp \in \alpha、q∈γq \in \gamma)は p∈βp \in \beta なので β+γ\beta + \gamma に属する。

(b) α>0∗\alpha > 0^{\ast} なら 0∗⊊α0^{\ast} \subsetneq \alpha なので p∈α∖0∗p \in \alpha \setminus 0^{\ast} があり、p≥0p \geq 0 だから (C2) より 0∈α0 \in \alpha(p=0p = 0 ならそのまま)。逆に 0∈α0 \in \alpha なら (C2) より 0∗⊂α0^{\ast} \subset \alpha であり、0∈α∖0∗0 \in \alpha \setminus 0^{\ast} なので 0∗≠α0^{\ast} \neq \alpha、すなわち α>0∗\alpha > 0^{\ast}。

問題 7.8 ★★ 順序体 KK では、すべての xx について x2≥0x^2 \geq 0 であり、1>01 > 0 であることを示せ。これを用いて、C\mathbb{C} にどのような全順序を入れても順序体にならないことを示せ。

解答

x≥0x \geq 0 なら (O2) より x2≥0x^2 \geq 0。x<0x < 0 なら (O1) で両辺に −x-x を加えて 0≤−x0 \leq -x となり、(O2) より (−x)2=x2≥0(-x)^2 = x^2 \geq 0。特に 1=12≥01 = 1^2 \geq 0 で 1≠01 \neq 0 なので 1>01 > 0。

C\mathbb{C} が順序体なら −1=i2≥0-1 = i^2 \geq 0 である。(O1) で両辺に 11 を加えると 1≤1+(−1)=01 \leq 1 + (-1) = 0 となり、1>01 > 0 に矛盾する。

問題 7.9 ★★ (a) C\mathbb{C} の乗法が結合法則を満たすことを確かめよ。(b) (1+2i)/(3−i)(1 + 2i)/(3 - i) を a+bia + bi の形で求めよ。(c) z,w∈Cz, w \in \mathbb{C} について ∣zw∣=∣z∣∣w∣\lvert zw \rvert = \lvert z \rvert \lvert w \rvert を示せ。

解答

(a) ((a,b)(c,d))(e,f)=(ac−bd,ad+bc)(e,f)=(ace−bde−adf−bcf, acf−bdf+ade+bce)((a, b)(c, d))(e, f) = (ac - bd, ad + bc)(e, f) = (ace - bde - adf - bcf,\ acf - bdf + ade + bce)、(a,b)((c,d)(e,f))=(a,b)(ce−df,cf+de)=(ace−adf−bcf−bde, acf+ade+bce−bdf)(a, b)((c, d)(e, f)) = (a, b)(ce - df, cf + de) = (ace - adf - bcf - bde,\ acf + ade + bce - bdf) で一致する。

(b) 1+2i3−i=(1+2i)(3+i)(3−i)(3+i)=3+7i+2i210=110+710i\dfrac{1 + 2i}{3 - i} = \dfrac{(1 + 2i)(3 + i)}{(3 - i)(3 + i)} = \dfrac{3 + 7i + 2i^2}{10} = \dfrac{1}{10} + \dfrac{7}{10} i。

(c) z=a+biz = a + bi、w=c+diw = c + di とすると zw‾=(ac−bd)−(ad+bc)i=z‾ w‾\overline{zw} = (ac - bd) - (ad + bc)i = \overline{z}\ \overline{w} が直接確かめられる。よって ∣zw∣2=zwzw‾=(zz‾)(ww‾)=∣z∣2∣w∣2\lvert zw \rvert^2 = zw\overline{zw} = (z\overline{z})(w\overline{w}) = \lvert z \rvert^2 \lvert w \rvert^2 であり、両辺の非負の平方根をとればよい。

問題 7.10 ★★★ 7.8 節の有理数コーシー列の間の関係 ∼\sim が同値関係であること、コーシー列の和がコーシー列であること、加法 [(an)]+[(bn)]:=[(an+bn)][(a_n)] + [(b_n)] := [(a_n + b_n)] が well-defined であることを示せ。

解答

反射律・対称律は明らか。推移律:an−bn→0a_n - b_n \to 0、bn−cn→0b_n - c_n \to 0 とし、有理数 ε>0\varepsilon > 0 をとる。n≥N1n \geq N_1 で ∣an−bn∣<ε/2\lvert a_n - b_n \rvert < \varepsilon/2、n≥N2n \geq N_2 で ∣bn−cn∣<ε/2\lvert b_n - c_n \rvert < \varepsilon/2 となる N1,N2N_1, N_2 をとれば、n≥max⁡{N1,N2}n \geq \max \lbrace N_1, N_2 \rbrace で ∣an−cn∣<ε\lvert a_n - c_n \rvert < \varepsilon。

和:(an),(bn)(a_n), (b_n) がコーシー列なら、ε/2\varepsilon/2 に対する N1,N2N_1, N_2 をとり、m,n≥max⁡{N1,N2}m, n \geq \max \lbrace N_1, N_2 \rbrace で ∣(am+bm)−(an+bn)∣≤∣am−an∣+∣bm−bn∣<ε\lvert (a_m + b_m) - (a_n + b_n) \rvert \leq \lvert a_m - a_n \rvert + \lvert b_m - b_n \rvert < \varepsilon。

well-definedness:(an)∼(an′)(a_n) \sim (a'_n) なら (an+bn)−(an′+bn)=an−an′→0(a_n + b_n) - (a'_n + b_n) = a_n - a'_n \to 0 なので (an+bn)∼(an′+bn)(a_n + b_n) \sim (a'_n + b_n)。第 2 引数も同様で、両方を取り替えるときは推移律を使う。

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