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12 圏論とホモロジー代数 · 第 3 章

随伴関手

目安 8〜11 時間定理など 7演習 6 問

この章の目標

  • 随伴を Hom 集合の自然な全単射として定義し、自由–忘却・テンソル–Hom・アーベル化・位相の例で確かめられる
  • 単位・余単位と三角等式による随伴の特徴づけを証明できる
  • 右随伴が極限を保つことを証明し、随伴の非存在の判定に使える
  • 随伴関手定理・圏同値との関係・モナド・カン拡張の考え方を説明できる

前提:第1章、第2章。例で 04-algebra 第9章(ガロア対応)と 03-topology 第5章(コンパクト性)を使う。

3.1 動機

集合 SS 上の自由群 F(S)F(S) は、「SS から群を作るもっとも効率のよい方法」である。その意味は、SS から群 GG の下部集合への写像と、群準同型 F(S)→GF(S) \to G が 1 対 1 に対応することにある:

Hom⁡Grp(F(S),G)≅Hom⁡Set(S,U(G))\operatorname{Hom}_{\mathbf{Grp}}(F(S), G) \cong \operatorname{Hom}_{\mathbf{Set}}(S, U(G))

左辺では FF が左の成分に、右辺では UU が右の成分に現れる。これは線形代数の随伴作用素の関係 ⟨Ax,y⟩=⟨x,A∗y⟩\langle Ax, y \rangle = \langle x, A^{\ast} y \rangle に形が似ているので、FF と UU は随伴 (adjoint) であるという。随伴は、自由な構成・完備化・アーベル化・テンソル積・層の逆像など、数学のいたるところに現れる。しかも随伴であることがわかれば、極限や余極限を保つかどうかが自動的にわかる(3.4 節)。

3.2 随伴の定義と例

定義 3.1(随伴, adjunction)関手 F ⁣:C→DF\colon \mathcal{C} \to \mathcal{D}, G ⁣:D→CG\colon \mathcal{D} \to \mathcal{C} について、全単射

φX,Y ⁣:Hom⁡D(F(X),Y)→ ≅ Hom⁡C(X,G(Y))\varphi_{X, Y}\colon \operatorname{Hom}_{\mathcal{D}}(F(X), Y) \xrightarrow{\ \cong\ } \operatorname{Hom}_{\mathcal{C}}(X, G(Y))

が X∈CX \in \mathcal{C}, Y∈DY \in \mathcal{D} について自然に与えられているとき、FF は GG の左随伴 (left adjoint)、GG は FF の右随伴 (right adjoint) であるといい、F⊣GF \dashv G と書く。自然性とは、f ⁣:X′→Xf\colon X' \to X, g ⁣:Y→Y′g\colon Y \to Y', h ⁣:F(X)→Yh\colon F(X) \to Y について

φ(g∘h∘F(f))=G(g)∘φ(h)∘f\varphi(g \circ h \circ F(f)) = G(g) \circ \varphi(h) \circ f

が成り立つことである。

例 3.2(自由–忘却)F ⁣:Set→GrpF\colon \mathbf{Set} \to \mathbf{Grp}(自由群)は忘却関手 UU の左随伴であり、φ(h)=h∣S\varphi(h) = h\vert_S(準同型を生成元に制限した写像)である。自然性は、制限してから合成しても合成してから制限しても同じことからわかる。同様に次は左随伴である:自由加群 Set→R-Mod\mathbf{Set} \to R\text{-}\mathbf{Mod}, S↦R(S)S \mapsto R^{(S)}(線形写像は基底の行き先で決まり、行き先は任意)、多項式環 Set→CRing\mathbf{Set} \to \mathbf{CRing}, S↦Z[xs]s∈SS \mapsto \mathbb{Z}[x_s]_{s \in S}(環準同型は変数の行き先で決まる)。

例 3.3(アーベル化)アーベル群への準同型 G→AG \to A は交換子群 [G,G][G, G] を潰すので、Gab=G/[G,G]G^{\mathrm{ab}} = G/[G, G] を経由する:

Hom⁡Ab(Gab,A)≅Hom⁡Grp(G,A)\operatorname{Hom}_{\mathbf{Ab}}(G^{\mathrm{ab}}, A) \cong \operatorname{Hom}_{\mathbf{Grp}}(G, A)

よってアーベル化 (−)ab ⁣:Grp→Ab(-)^{\mathrm{ab}}\colon \mathbf{Grp} \to \mathbf{Ab} は包含関手 Ab→Grp\mathbf{Ab} \to \mathbf{Grp} の左随伴である。

例 3.4(離散位相–忘却–密着位相)集合 SS に離散位相・密着位相を入れた空間を D(S)D(S), I(S)I(S) とする。離散空間からの写像と密着空間への写像はすべて連続なので

Hom⁡Top(D(S),X)=Hom⁡Set(S,U(X)),Hom⁡Set(U(X),S)=Hom⁡Top(X,I(S))\operatorname{Hom}_{\mathbf{Top}}(D(S), X) = \operatorname{Hom}_{\mathbf{Set}}(S, U(X)), \qquad \operatorname{Hom}_{\mathbf{Set}}(U(X), S) = \operatorname{Hom}_{\mathbf{Top}}(X, I(S))

すなわち D⊣U⊣ID \dashv U \dashv I である。忘却関手 UU は左随伴と右随伴を両方もつ。

例 3.5(テンソル–Hom 随伴)RR を可換環、MM を RR 加群とする。h ⁣:L⊗RM→Nh\colon L \otimes_R M \to N に l↦(m↦h(l⊗m))l \mapsto (m \mapsto h(l \otimes m)) を対応させると、自然な同型

Hom⁡R(L⊗RM,N)≅Hom⁡R(L,Hom⁡R(M,N))\operatorname{Hom}_R(L \otimes_R M, N) \cong \operatorname{Hom}_R(L, \operatorname{Hom}_R(M, N))

を得る。両辺とも双線形写像 L×M→NL \times M \to N の全体と自然に同一視されるからである。よって −⊗RM⊣Hom⁡R(M,−)- \otimes_R M \dashv \operatorname{Hom}_R(M, -) である。Set\mathbf{Set} での類似は、2 変数の写像を 1 変数ずつに分ける同型 Hom⁡(X×Y,Z)≅Hom⁡(X,ZY)\operatorname{Hom}(X \times Y, Z) \cong \operatorname{Hom}(X, Z^Y)(カリー化)であり、−×Y⊣(−)Y- \times Y \dashv (-)^Y を意味する。Top\mathbf{Top} では、YY が局所コンパクト・ハウスドルフなら、写像空間 C(Y,Z)C(Y, Z) にコンパクト開位相を入れて −×Y⊣C(Y,−)- \times Y \dashv C(Y, -) が成り立つ(証明は省略する)。

例 3.6(ガロア接続)前順序集合を圏とみると、単調写像 f ⁣:P→Qf\colon P \to Q, g ⁣:Q→Pg\colon Q \to P について f⊣gf \dashv g とは

f(x)≤y  ⟺  x≤g(y)(x∈P, y∈Q)f(x) \leq y \iff x \leq g(y) \qquad (x \in P,\ y \in Q)

が成り立つことである(Hom 集合は空か 1 点なので自然性は自動的)。これをガロア接続 (Galois connection) という。

  1. 包含 ι ⁣:(Z,≤)→(R,≤)\iota\colon (\mathbb{Z}, \leq) \to (\mathbb{R}, \leq) について、⌈x⌉≤n  ⟺  x≤n\lceil x \rceil \leq n \iff x \leq n と n≤x  ⟺  n≤⌊x⌋n \leq x \iff n \leq \lfloor x \rfloor より ⌈⋅⌉⊣ι⊣⌊⋅⌋\lceil \cdot \rceil \dashv \iota \dashv \lfloor \cdot \rfloor。
  2. 写像 f ⁣:X→Yf\colon X \to Y について、冪集合の間で f(A)⊂B  ⟺  A⊂f−1(B)f(A) \subset B \iff A \subset f^{-1}(B) なので、像 ⊣\dashv 逆像である。さらに f∀(A)={y∈Y∣f−1(y)⊂A}f_{\forall}(A) = \lbrace y \in Y \mid f^{-1}(y) \subset A \rbrace とおくと f−1(B)⊂A  ⟺  B⊂f∀(A)f^{-1}(B) \subset A \iff B \subset f_{\forall}(A) なので、逆像 ⊣f∀\dashv f_{\forall} である。
  3. 体の拡大 L/KL/K と G=Aut⁡(L/K)G = \operatorname{Aut}(L/K) について、部分群 H≤GH \leq G と中間体 MM に対し、M⊂LHM \subset L^H と H≤Gal⁡(L/M)H \leq \operatorname{Gal}(L/M) はどちらも「HH の元が MM の元をすべて固定する」ことを意味する。よって H↦LHH \mapsto L^H は、部分群の順序集合から中間体の順序集合の双対への関手として、M↦Gal⁡(L/M)M \mapsto \operatorname{Gal}(L/M) の左随伴である。ガロア理論の基本定理(04-algebra 第9章)は、有限次ガロア拡大ではこの随伴が順序集合の同型になることを主張する(3.6 節)。

例 3.7(ストーン–チェックのコンパクト化)コンパクト・ハウスドルフ空間の充満部分圏 CHaus⊂Top\mathbf{CHaus} \subset \mathbf{Top} の包含関手は左随伴 β\beta をもつ。すなわち任意の空間 XX に対し、コンパクト・ハウスドルフ空間 βX\beta X と連続写像 ηX ⁣:X→βX\eta_X\colon X \to \beta X があって、コンパクト・ハウスドルフ空間 KK への任意の連続写像 X→KX \to K はただ一つの連続写像 βX→K\beta X \to K を経由する。XX がチコノフ空間(完全正則ハウスドルフ空間)なら ηX\eta_X は稠密な像への埋め込みである(問題 3.6)。KK として閉区間をとれば、XX 上の有界連続関数と βX\beta X 上の連続関数が 1 対 1 に対応することがわかる。

例 3.8(層の逆像と順像:予告)連続写像 f ⁣:X→Yf\colon X \to Y に対し、XX 上の層 F\mathcal{F} の順像 f∗F(V)=F(f−1(V))f_{\ast}\mathcal{F}(V) = \mathcal{F}(f^{-1}(V)) と、YY 上の層の逆像 f−1f^{-1} が定まり、f−1⊣f∗f^{-1} \dashv f_{\ast}、すなわち Hom⁡(f−1G,F)≅Hom⁡(G,f∗F)\operatorname{Hom}(f^{-1}\mathcal{G}, \mathcal{F}) \cong \operatorname{Hom}(\mathcal{G}, f_{\ast}\mathcal{F}) が成り立つ(14-algebraic-geometry 第3章)。例 3.6 (2) の「逆像 ⊣f∀\dashv f_{\forall}」は、離散空間の場合のその集合版にあたる。

3.3 単位・余単位と三角等式

随伴 F⊣GF \dashv G の全単射 φ\varphi で恒等射を写したもの

ηX=φ(idF(X)) ⁣:X→GF(X),εY=φ−1(idG(Y)) ⁣:FG(Y)→Y\eta_X = \varphi(\mathrm{id}_{F(X)})\colon X \to GF(X), \qquad \varepsilon_Y = \varphi^{-1}(\mathrm{id}_{G(Y)})\colon FG(Y) \to Y

を、随伴の単位 (unit) と余単位 (counit) という。自由群の場合、ηS ⁣:S→UF(S)\eta_S\colon S \to UF(S) は生成元の包含であり、εG ⁣:F(U(G))→G\varepsilon_G\colon F(U(G)) \to G は「GG の元を文字とする語を GG の中で計算する」全射準同型である(その核が GG の関係式を与え、GG の表示が得られる)。テンソル–Hom 随伴では ηL(l)=(m↦l⊗m)\eta_L(l) = (m \mapsto l \otimes m)、εN ⁣:Hom⁡R(M,N)⊗M→N\varepsilon_N\colon \operatorname{Hom}_R(M, N) \otimes M \to N は評価 ξ⊗m↦ξ(m)\xi \otimes m \mapsto \xi(m) である。ガロア接続では η\eta, ε\varepsilon は不等式 x≤g(f(x))x \leq g(f(x)), f(g(y))≤yf(g(y)) \leq y であり、たとえば A⊂f−1(f(A))A \subset f^{-1}(f(A)), f(f−1(B))⊂Bf(f^{-1}(B)) \subset B である。

定理 3.9(単位・余単位による特徴づけ)(1) F⊣GF \dashv G ならば、η ⁣:IdC⇒GF\eta\colon \mathrm{Id}_{\mathcal{C}} \Rightarrow GF, ε ⁣:FG⇒IdD\varepsilon\colon FG \Rightarrow \mathrm{Id}_{\mathcal{D}} は自然変換で、次の三角等式 (triangle identities) を満たす:

εF(X)∘F(ηX)=idF(X),G(εY)∘ηG(Y)=idG(Y)\varepsilon_{F(X)} \circ F(\eta_X) = \mathrm{id}_{F(X)}, \qquad G(\varepsilon_Y) \circ \eta_{G(Y)} = \mathrm{id}_{G(Y)}

また φ(h)=G(h)∘ηX\varphi(h) = G(h) \circ \eta_X, φ−1(k)=εY∘F(k)\varphi^{-1}(k) = \varepsilon_Y \circ F(k) である。

(2) 逆に、関手 F,GF, G と三角等式を満たす自然変換 η,ε\eta, \varepsilon が与えられれば、φ(h)=G(h)∘ηX\varphi(h) = G(h) \circ \eta_X は随伴 F⊣GF \dashv G を定める。

証明. (1) 自然性の式で f=idf = \mathrm{id} とすると φ(g∘h)=G(g)∘φ(h)\varphi(g \circ h) = G(g) \circ \varphi(h)。h=idF(X)h = \mathrm{id}_{F(X)} とおけば、任意の g ⁣:F(X)→Yg\colon F(X) \to Y について φ(g)=G(g)∘ηX\varphi(g) = G(g) \circ \eta_X。同様に φ−1(k∘f)=φ−1(k)∘F(f)\varphi^{-1}(k \circ f) = \varphi^{-1}(k) \circ F(f) で k=idG(Y)k = \mathrm{id}_{G(Y)} とおけば φ−1(f)=εY∘F(f)\varphi^{-1}(f) = \varepsilon_Y \circ F(f)(f ⁣:X→G(Y)f\colon X \to G(Y))。η\eta の自然性:f ⁣:X→X′f\colon X \to X' に対し

GF(f)∘ηX=φ(F(f))=φ(idF(X′)∘F(f))=φ(idF(X′))∘f=ηX′∘fGF(f) \circ \eta_X = \varphi(F(f)) = \varphi(\mathrm{id}_{F(X')} \circ F(f)) = \varphi(\mathrm{id}_{F(X')}) \circ f = \eta_{X'} \circ f

ε\varepsilon の自然性も同様である。三角等式は

idF(X)=φ−1(φ(idF(X)))=φ−1(ηX)=εF(X)∘F(ηX),idG(Y)=φ(εY)=G(εY)∘ηG(Y)\mathrm{id}_{F(X)} = \varphi^{-1}(\varphi(\mathrm{id}_{F(X)})) = \varphi^{-1}(\eta_X) = \varepsilon_{F(X)} \circ F(\eta_X), \qquad \mathrm{id}_{G(Y)} = \varphi(\varepsilon_Y) = G(\varepsilon_Y) \circ \eta_{G(Y)}

から従う。

(2) ψ(k)=εY∘F(k)\psi(k) = \varepsilon_Y \circ F(k) とおく。h ⁣:F(X)→Yh\colon F(X) \to Y に対し、ε\varepsilon の自然性と三角等式により

ψ(φ(h))=εY∘FG(h)∘F(ηX)=h∘εF(X)∘F(ηX)=h\psi(\varphi(h)) = \varepsilon_Y \circ FG(h) \circ F(\eta_X) = h \circ \varepsilon_{F(X)} \circ F(\eta_X) = h

同様に k ⁣:X→G(Y)k\colon X \to G(Y) に対し φ(ψ(k))=G(εY)∘GF(k)∘ηX=G(εY)∘ηG(Y)∘k=k\varphi(\psi(k)) = G(\varepsilon_Y) \circ GF(k) \circ \eta_X = G(\varepsilon_Y) \circ \eta_{G(Y)} \circ k = k。よって φ\varphi は全単射である。自然性は、η\eta の自然性から

φ(g∘h∘F(f))=G(g)∘G(h)∘GF(f)∘ηX′=G(g)∘G(h)∘ηX∘f=G(g)∘φ(h)∘f\varphi(g \circ h \circ F(f)) = G(g) \circ G(h) \circ GF(f) \circ \eta_{X'} = G(g) \circ G(h) \circ \eta_X \circ f = G(g) \circ \varphi(h) \circ f

となることによる。□\square

(1) の式 φ(h)=G(h)∘ηX\varphi(h) = G(h) \circ \eta_X は、(F(X),ηX)(F(X), \eta_X) が関手 Hom⁡C(X,G(−)) ⁣:D→Set\operatorname{Hom}_{\mathcal{C}}(X, G(-))\colon \mathcal{D} \to \mathbf{Set} の普遍元(定義 2.7)であることを意味する:XX から G(Y)G(Y) への射はすべて、ηX\eta_X の後に G(h)G(h) を合成したものとしてただ一通りに書ける。これを ηX\eta_X は XX から GG への普遍射 (universal arrow) であるという。逆も成り立つ。

命題 3.10 関手 G ⁣:D→CG\colon \mathcal{D} \to \mathcal{C} について、各 X∈CX \in \mathcal{C} に対し関手 Hom⁡C(X,G(−))\operatorname{Hom}_{\mathcal{C}}(X, G(-)) の普遍元 (F(X),ηX)(F(X), \eta_X) が存在すれば、FF は GG の左随伴となる関手に一意的に拡張される。特に、左随伴は存在すれば自然同型を除いて一意である(右随伴も同様)。

証明. f ⁣:X→X′f\colon X \to X' に対し、ηX′∘f ⁣:X→GF(X′)\eta_{X'} \circ f\colon X \to GF(X') は普遍性によりただ一つの F(f) ⁣:F(X)→F(X′)F(f)\colon F(X) \to F(X') を用いて ηX′∘f=GF(f)∘ηX\eta_{X'} \circ f = GF(f) \circ \eta_X と書ける。F(g∘f)F(g \circ f) と F(g)∘F(f)F(g) \circ F(f) はどちらもこの等式(g∘fg \circ f について)を満たすので一意性から等しく、F(id)=idF(\mathrm{id}) = \mathrm{id} も同様である。こうして FF は関手になり、η\eta は自然変換になる。φ(h)=G(h)∘ηX\varphi(h) = G(h) \circ \eta_X は普遍性により全単射で、定理 3.9 (2) の証明の最後の計算と同じく自然である。一意性は、二つの左随伴 F,F′F, F' に対し F(X)F(X) と F′(X)F'(X) が同じ関手 Hom⁡(X,G(−))\operatorname{Hom}(X, G(-)) を表現することと系 2.8 から従う(同型が XX について自然であることも一意性から従う)。□\square

3.4 右随伴は極限を保つ

定理 3.11 F⊣GF \dashv G, G ⁣:D→CG\colon \mathcal{D} \to \mathcal{C} とする。図式 D ⁣:I→DD\colon I \to \mathcal{D} が極限 (L,(πi))(L, (\pi_i)) をもてば、(G(L),(G(πi)))(G(L), (G(\pi_i))) は G∘DG \circ D の極限である。双対的に、左随伴は余極限を保つ。

証明. (G(πi))(G(\pi_i)) は錐である。(W,(λi ⁣:W→GD(i)))(W, (\lambda_i\colon W \to GD(i))) を G∘DG \circ D 上の錐とし、λi♭=φ−1(λi) ⁣:F(W)→D(i)\lambda_i^{\flat} = \varphi^{-1}(\lambda_i)\colon F(W) \to D(i) とおく。u ⁣:i→ju\colon i \to j に対し、φ−1\varphi^{-1} の自然性から

D(u)∘λi♭=φ−1(GD(u)∘λi)=φ−1(λj)=λj♭D(u) \circ \lambda_i^{\flat} = \varphi^{-1}(GD(u) \circ \lambda_i) = \varphi^{-1}(\lambda_j) = \lambda_j^{\flat}

なので (F(W),(λi♭))(F(W), (\lambda_i^{\flat})) は DD 上の錐であり、πi∘h=λi♭\pi_i \circ h = \lambda_i^{\flat} となる h ⁣:F(W)→Lh\colon F(W) \to L がただ一つある。k=φ(h) ⁣:W→G(L)k = \varphi(h)\colon W \to G(L) は G(πi)∘k=φ(πi∘h)=φ(λi♭)=λiG(\pi_i) \circ k = \varphi(\pi_i \circ h) = \varphi(\lambda_i^{\flat}) = \lambda_i を満たす。逆に k′ ⁣:W→G(L)k'\colon W \to G(L) がすべての ii で G(πi)∘k′=λiG(\pi_i) \circ k' = \lambda_i を満たせば、πi∘φ−1(k′)=φ−1(G(πi)∘k′)=λi♭\pi_i \circ \varphi^{-1}(k') = \varphi^{-1}(G(\pi_i) \circ k') = \lambda_i^{\flat} なので φ−1(k′)=h\varphi^{-1}(k') = h、すなわち k′=kk' = k。□\square

同じ論法で、右随伴はモノ射を保つ:f ⁣:Y→Y′f\colon Y \to Y' がモノ射で G(f)∘a=G(f)∘bG(f) \circ a = G(f) \circ b なら、f∘φ−1(a)=φ−1(G(f)∘a)=f∘φ−1(b)f \circ \varphi^{-1}(a) = \varphi^{-1}(G(f) \circ a) = f \circ \varphi^{-1}(b) より φ−1(a)=φ−1(b)\varphi^{-1}(a) = \varphi^{-1}(b)、よって a=ba = b。

例 3.12(定理 3.11 の使い方)

  1. 忘却関手 Grp,R-Mod,Top→Set\mathbf{Grp}, R\text{-}\mathbf{Mod}, \mathbf{Top} \to \mathbf{Set} は右随伴なので極限を保つ。第2章で見た「極限は下部集合で計算される」ことの理由はこれである。U ⁣:Top→SetU\colon \mathbf{Top} \to \mathbf{Set} は左随伴でもある(例 3.4)ので余極限も保つが、Grp→Set\mathbf{Grp} \to \mathbf{Set} は余積を保たない。
  2. 左随伴である自由関手は余積を保つ:F(S⊔T)≅F(S)∗F(T)F(S \sqcup T) \cong F(S) \ast F(T)(自由群の自由積は自由群)、R(S⊔T)≅R(S)⊕R(T)R^{(S \sqcup T)} \cong R^{(S)} \oplus R^{(T)}。
  3. −⊗RM- \otimes_R M は左随伴なので余極限を保つ:(⨁iLi)⊗M≅⨁i(Li⊗M)(\bigoplus_i L_i) \otimes M \cong \bigoplus_i (L_i \otimes M) であり、余核も保つ(第4章の右完全性)。Hom⁡R(M,−)\operatorname{Hom}_R(M, -) は右随伴なので直積と核を保つ(左完全性)。
  4. (随伴が存在しないことの証明)離散位相の関手 D ⁣:Set→TopD\colon \mathbf{Set} \to \mathbf{Top} は左随伴をもたない。もてば DD は積を保つはずだが、∏n∈ND({0,1})\prod_{n \in \mathbb{N}} D(\lbrace 0, 1 \rbrace) は積位相で離散でない(1 点は開集合でない)。アーベル化 Grp→Ab\mathbf{Grp} \to \mathbf{Ab} も左随伴をもたない。単射 A3→S3\mathfrak{A}_3 \to \mathfrak{S}_3 はアーベル化で Z/3→Z/2\mathbb{Z}/3 \to \mathbb{Z}/2(零写像)になり、モノ射を保たないからである。同様に −⊗ZZ/2- \otimes_{\mathbb{Z}} \mathbb{Z}/2 は、モノ射 Z→2Z\mathbb{Z} \xrightarrow{2} \mathbb{Z} を零写像 Z/2→Z/2\mathbb{Z}/2 \to \mathbb{Z}/2 に写すので左随伴をもたない。

3.5 随伴関手定理

定理 3.11 の逆、すなわち「極限を保つ関手は右随伴か」は、集合の大きさについての条件をつければ成り立つ。

定理 3.13(フレイドの随伴関手定理, 主張のみ)D\mathcal{D} を局所的に小さい完備な圏とし、G ⁣:D→CG\colon \mathcal{D} \to \mathcal{C} は小さい極限を保つとする。さらに次の解集合条件 (solution set condition) を仮定する:各 X∈CX \in \mathcal{C} に対し、対象の集合 {Ys}s∈SX\lbrace Y_s \rbrace_{s \in S_X} があって、任意の f ⁣:X→G(Y)f\colon X \to G(Y) がある ss と fs ⁣:X→G(Ys)f_s\colon X \to G(Y_s), g ⁣:Ys→Yg\colon Y_s \to Y により f=G(g)∘fsf = G(g) \circ f_s と分解する。このとき GG は左随伴をもつ。

証明は Mac Lane の第 V 章、Riehl の第 4 章を参照。証明の要点は、解集合から作った大きな積の中で普遍射を等化子として切り出すことにある。たとえば U ⁣:Grp→SetU\colon \mathbf{Grp} \to \mathbf{Set} では、集合 XX から群 GG への写像は、XX の像で生成される部分群(濃度は max⁡(∣X∣,ℵ0)\max(\lvert X \rvert, \aleph_0) 以下)を経由するので、そのような群の同型類の代表の全体が解集合になる。こうして自由群の存在が、語を使った構成なしに示される。同様の濃度の評価(コンパクト・ハウスドルフ空間の稠密部分集合の濃度が κ\kappa なら空間の濃度は 22κ2^{2^{\kappa}} 以下)からストーン–チェックのコンパクト化の存在も従う。解集合条件は省けない。完備ブール代数の圏から Set\mathbf{Set} への忘却関手は極限を保つが、可算無限個の元で生成される自由完備ブール代数が存在しないので、左随伴をもたない。

3.6 圏同値と随伴

命題 3.14 F ⁣:C→DF\colon \mathcal{C} \to \mathcal{D} が準逆 GG をもつ圏同値ならば、F⊣GF \dashv G かつ G⊣FG \dashv F である。

証明. 自然同型 ε ⁣:FG⇒Id\varepsilon\colon FG \Rightarrow \mathrm{Id} をとる。FF は忠実充満なので(定理 1.35)、次の二つの全単射の合成

Hom⁡D(F(X),Y)→ εY−1∘− Hom⁡D(F(X),FG(Y))← F Hom⁡C(X,G(Y))\operatorname{Hom}_{\mathcal{D}}(F(X), Y) \xrightarrow{\ \varepsilon_Y^{-1} \circ -\ } \operatorname{Hom}_{\mathcal{D}}(F(X), FG(Y)) \xleftarrow{\ F\ } \operatorname{Hom}_{\mathcal{C}}(X, G(Y))

が全単射 Hom⁡(F(X),Y)≅Hom⁡(X,G(Y))\operatorname{Hom}(F(X), Y) \cong \operatorname{Hom}(X, G(Y)) を与える。XX についての自然性は F(k∘f)=F(k)∘F(f)F(k \circ f) = F(k) \circ F(f) から、YY についての自然性は ε−1\varepsilon^{-1} の自然性 εY′−1∘g=FG(g)∘εY−1\varepsilon_{Y'}^{-1} \circ g = FG(g) \circ \varepsilon_Y^{-1} と F(G(g)∘k)=FG(g)∘F(k)F(G(g) \circ k) = FG(g) \circ F(k) から従う。GG も FF を準逆とする圏同値なので、役割を入れ替えて G⊣FG \dashv F を得る。□\square

逆に、随伴からは圏同値が切り出せる。

命題 3.15 F⊣GF \dashv G とし、ηX\eta_X が同型となる XX のなす C\mathcal{C} の充満部分圏を C0\mathcal{C}_0、εY\varepsilon_Y が同型となる YY のなす D\mathcal{D} の充満部分圏を D0\mathcal{D}_0 とする。このとき FF, GG は圏同値 C0≃D0\mathcal{C}_0 \simeq \mathcal{D}_0 に制限される。

証明. X∈C0X \in \mathcal{C}_0 なら、三角等式 εF(X)∘F(ηX)=id\varepsilon_{F(X)} \circ F(\eta_X) = \mathrm{id} で F(ηX)F(\eta_X) が同型なので εF(X)\varepsilon_{F(X)} も同型、すなわち F(X)∈D0F(X) \in \mathcal{D}_0。同様に G(εY)∘ηG(Y)=idG(\varepsilon_Y) \circ \eta_{G(Y)} = \mathrm{id} から G(D0)⊂C0G(\mathcal{D}_0) \subset \mathcal{C}_0。η\eta, ε\varepsilon を制限すれば、C0\mathcal{C}_0, D0\mathcal{D}_0 上の自然同型 Id≅GF\mathrm{Id} \cong GF, FG≅IdFG \cong \mathrm{Id} が得られる。□\square

ガロア接続(例 3.6 (3))に適用すると、η\eta が同型である部分群とは H=Gal⁡(L/LH)H = \operatorname{Gal}(L/L^H) となる「閉じた」部分群、ε\varepsilon が同型である中間体とは M=LGal⁡(L/M)M = L^{\operatorname{Gal}(L/M)} となる中間体であり、両者が 1 対 1 に対応する。有限次ガロア拡大ではすべての部分群と中間体が閉じている、というのがガロア理論の基本定理の内容である。また GG が忠実充満であることと ε\varepsilon が同型であることは同値であり(問題 3.3)、このとき D\mathcal{D} は C\mathcal{C} の反射的部分圏 (reflective subcategory) であるという。Ab⊂Grp\mathbf{Ab} \subset \mathbf{Grp} と CHaus⊂Top\mathbf{CHaus} \subset \mathbf{Top} がその例である。

3.7 モナド

随伴 F⊣GF \dashv G から C\mathcal{C} 上の関手 T=GFT = GF が得られる。自由群の場合、T(S)=UF(S)T(S) = UF(S) は SS 上の語の集合であり、「語を並べた語を一つの語にまとめる」操作 TT⇒TTT \Rightarrow T をもつ。この構造を取り出したものがモナドである。

定義 3.16(モナド, monad)圏 C\mathcal{C} 上のモナドとは、関手 T ⁣:C→CT\colon \mathcal{C} \to \mathcal{C} と自然変換 μ ⁣:TT⇒T\mu\colon TT \Rightarrow T, η ⁣:Id⇒T\eta\colon \mathrm{Id} \Rightarrow T の組で、

μ∘Tμ=μ∘μT,μ∘Tη=μ∘ηT=idT\mu \circ T\mu = \mu \circ \mu T, \qquad \mu \circ T\eta = \mu \circ \eta T = \mathrm{id}_T

を満たすものである(モノイドの結合律と単位律の類似)。

命題 3.17 F⊣GF \dashv G の単位・余単位を η,ε\eta, \varepsilon とすると、(GF,GεF,η)(GF, G\varepsilon F, \eta) はモナドである。

証明. μX=G(εF(X))\mu_X = G(\varepsilon_{F(X)}) とおく。ε\varepsilon の自然性を射 εF(X)\varepsilon_{F(X)} に適用すると εF(X)∘FG(εF(X))=εF(X)∘εFGF(X)\varepsilon_{F(X)} \circ FG(\varepsilon_{F(X)}) = \varepsilon_{F(X)} \circ \varepsilon_{FGF(X)} であり、これに GG を施したものが μ∘Tμ=μ∘μT\mu \circ T\mu = \mu \circ \mu T である。単位律は三角等式に GG を施した G(εF(X))∘GF(ηX)=idG(\varepsilon_{F(X)}) \circ GF(\eta_X) = \mathrm{id} と、第 2 の三角等式で Y=F(X)Y = F(X) としたものである。□\square

例 3.18(リスト・モナド)自由モノイドの随伴 Set⇄Mon\mathbf{Set} \rightleftarrows \mathbf{Mon} から得られるモナドは、T(X)=⨆n≥0XnT(X) = \bigsqcup_{n \geq 0} X^n(XX の元の有限列の集合)、ηX(x)=(x)\eta_X(x) = (x)(長さ 1 の列)、μX\mu_X は列の列をつなげて一つの列にする写像(例:((x1,x2),(),(x3))↦(x1,x2,x3)((x_1, x_2), (), (x_3)) \mapsto (x_1, x_2, x_3))である。関数型プログラミングで「リスト・モナド」と呼ばれるものはこれである。

定義 3.19(TT 代数)モナド (T,μ,η)(T, \mu, \eta) の代数とは、対象 AA と射 a ⁣:T(A)→Aa\colon T(A) \to A の組で、a∘ηA=idAa \circ \eta_A = \mathrm{id}_A, a∘T(a)=a∘μAa \circ T(a) = a \circ \mu_A を満たすものである。TT 代数の射 (A,a)→(B,b)(A, a) \to (B, b) は f∘a=b∘T(f)f \circ a = b \circ T(f) を満たす f ⁣:A→Bf\colon A \to B とする。TT 代数の圏を CT\mathcal{C}^T と書く(アイレンベルグ–ムーア圏)。

リスト・モナドの代数は、ちょうどモノイドである(問題 3.5):aa は「有限列の積をとる」写像 a(x1,…,xn)=x1⋯xna(x_1, \dots, x_n) = x_1 \cdots x_n にほかならない。同様に、自由群のモナドの代数は群、自由 RR 加群のモナドの代数は RR 加群である。一般に随伴 F⊣GF \dashv G があると比較関手 D→CT\mathcal{D} \to \mathcal{C}^T, Y↦(G(Y),G(εY))Y \mapsto (G(Y), G(\varepsilon_Y)) が定まり、これが圏同値のとき GG はモナド的 (monadic) であるという。Grp\mathbf{Grp}, R-ModR\text{-}\mathbf{Mod}, Ring\mathbf{Ring} から Set\mathbf{Set} への忘却関手はモナド的である(ベックの定理による。証明は Mac Lane の第 VI 章を参照)。一方 U ⁣:Top→SetU\colon \mathbf{Top} \to \mathbf{Set} では、D⊣UD \dashv U のモナドは UD=IdUD = \mathrm{Id} で、その代数は集合にすぎないから、比較関手 Top→Set\mathbf{Top} \to \mathbf{Set} は圏同値でない。位相は「代数的な構造」ではないのである。モナドは「代数的構造とは何か」に対する圏論の答えだといえる。

3.8 カン拡張

関手 J ⁣:C→C′J\colon \mathcal{C} \to \mathcal{C}' と F ⁣:C→EF\colon \mathcal{C} \to \mathcal{E} に対し、FF を JJ に沿って C′\mathcal{C}' 上へ「もっともよく」延長したいとする。関手 L ⁣:C′→EL\colon \mathcal{C}' \to \mathcal{E} と自然変換 α ⁣:F⇒L∘J\alpha\colon F \Rightarrow L \circ J の組で、任意の H ⁣:C′→EH\colon \mathcal{C}' \to \mathcal{E} について

Nat⁡(L,H)→ ≅ Nat⁡(F,H∘J),β↦(βJ)∘α\operatorname{Nat}(L, H) \xrightarrow{\ \cong\ } \operatorname{Nat}(F, H \circ J), \qquad \beta \mapsto (\beta J) \circ \alpha

が全単射になるものを、FF の JJ に沿った左カン拡張 (left Kan extension) といい Lan⁡JF\operatorname{Lan}_J F と書く。すべての FF について存在すれば、Lan⁡J\operatorname{Lan}_J は制限関手 J∗=−∘JJ^{\ast} = - \circ J の左随伴である。双対的に右カン拡張 Ran⁡J\operatorname{Ran}_J は J∗J^{\ast} の右随伴である。以下は主張のみ述べる。

  • C\mathcal{C} が小さく E\mathcal{E} が余完備なら、Lan⁡JF\operatorname{Lan}_J F は存在し、各 c′∈C′c' \in \mathcal{C}' での値は射 J(c)→c′J(c) \to c' の全体を添字とする F(c)F(c) の余極限で与えられる。
  • JJ が 1 対象 1 射の圏への関手 C→1\mathcal{C} \to \mathbf{1} のとき、Lan⁡JF\operatorname{Lan}_J F は colim⁡F\operatorname{colim} F、Ran⁡JF\operatorname{Ran}_J F は lim⁡F\lim F である。
  • 部分群 H≤GH \leq G の包含 i ⁣:BH→BGi\colon \mathbf{B}H \to \mathbf{B}G について、表現の制限 i∗i^{\ast} の左カン拡張は誘導表現 V↦K[G]⊗K[H]VV \mapsto K[G] \otimes_{K[H]} V、右カン拡張は余誘導表現 V↦Hom⁡K[H](K[G],V)V \mapsto \operatorname{Hom}_{K[H]}(K[G], V) である。随伴 Hom⁡G(Ind⁡V,W)≅Hom⁡H(V,Res⁡W)\operatorname{Hom}_G(\operatorname{Ind} V, W) \cong \operatorname{Hom}_H(V, \operatorname{Res} W) がフロベニウスの相互律である(16-lie-groups-representations 第1章)。

極限・随伴・表現の誘導がすべてカン拡張として書けることから、マクレーンは「すべての概念はカン拡張である」と述べた。

まとめ

  • 随伴 F⊣GF \dashv G は自然な全単射 Hom⁡(F(X),Y)≅Hom⁡(X,G(Y))\operatorname{Hom}(F(X), Y) \cong \operatorname{Hom}(X, G(Y)) である。自由–忘却、アーベル化、離散–忘却–密着、テンソル–Hom、ガロア接続、ストーン–チェック、層の f−1⊣f∗f^{-1} \dashv f_{\ast} が例である。
  • 随伴は単位 η\eta・余単位 ε\varepsilon と三角等式で特徴づけられ、ηX\eta_X は普遍射である。随伴は存在すれば一意である。
  • 右随伴は極限(とモノ射)を、左随伴は余極限を保つ。これは随伴が存在しないことの証明に使える。
  • 随伴関手定理:完備な圏からの極限を保つ関手は、解集合条件のもとで右随伴である。
  • 圏同値は随伴であり、随伴は η\eta, ε\varepsilon が同型となる部分で圏同値に制限される(ガロア対応)。
  • 随伴からモナドが得られ、その代数は(群・加群・モノイドなど)代数的構造を記述する。
  • カン拡張は関手の最良の延長であり、極限や誘導表現を統一的に表す。

演習問題

問題 3.1 ★ 例 3.6 (1) の随伴 ι⊣⌊⋅⌋\iota \dashv \lfloor \cdot \rfloor と定理 3.11 を用いて、⌊min⁡(x,y)⌋=min⁡(⌊x⌋,⌊y⌋)\lfloor \min(x, y) \rfloor = \min(\lfloor x \rfloor, \lfloor y \rfloor) を示せ。また ⌊⋅⌋ ⁣:R→Z\lfloor \cdot \rfloor\colon \mathbb{R} \to \mathbb{Z} は右随伴をもたないことを示せ。

解答

前順序集合を圏とみると、2 元の積は下限(ここでは min⁡\min)、余積は上限である。⌊⋅⌋\lfloor \cdot \rfloor は右随伴なので積を保ち、⌊min⁡(x,y)⌋=min⁡(⌊x⌋,⌊y⌋)\lfloor \min(x, y) \rfloor = \min(\lfloor x \rfloor, \lfloor y \rfloor)。⌊⋅⌋\lfloor \cdot \rfloor が右随伴をもてば、左随伴として上限を保つはずである。しかし R\mathbb{R} で sup⁡n(1−1/n)=1\sup_n (1 - 1/n) = 1 なのに、sup⁡n⌊1−1/n⌋=0≠1=⌊1⌋\sup_n \lfloor 1 - 1/n \rfloor = 0 \neq 1 = \lfloor 1 \rfloor。(直接には、⌊x⌋≤0  ⟺  x<1\lfloor x \rfloor \leq 0 \iff x < 1 で、{x∣x<1}\lbrace x \mid x < 1 \rbrace に最大元がないので r(0)r(0) がとれない。)

問題 3.2 ★★ (1) 忘却関手 U ⁣:Ring→SetU\colon \mathbf{Ring} \to \mathbf{Set} は左随伴をもつが右随伴をもたないことを示せ。(2) 空でない集合 YY について、−⊔Y ⁣:Set→Set- \sqcup Y\colon \mathbf{Set} \to \mathbf{Set} は左随伴も右随伴ももたないことを示せ。

解答

(1) 非可換な多項式環 Z⟨xs∣s∈S⟩\mathbb{Z}\langle x_s \mid s \in S \rangle への環準同型は変数の行き先で決まり、行き先は任意なので、S↦Z⟨xs⟩S \mapsto \mathbb{Z}\langle x_s \rangle が左随伴である。右随伴をもてば UU は余極限、特に始対象を保つが、Ring\mathbf{Ring} の始対象 Z\mathbb{Z} の下部集合は空集合(Set\mathbf{Set} の始対象)でない。

(2) 右随伴をもてば始対象を保つが、∅⊔Y=Y≠∅\emptyset \sqcup Y = Y \neq \emptyset。左随伴をもてば終対象を保つが、{∗}⊔Y\lbrace \ast \rbrace \sqcup Y は 2 元以上をもつので終対象でない。

問題 3.3 ★★ F⊣GF \dashv G とする。GG が忠実充満であることと、余単位 ε\varepsilon が自然同型であることは同値であることを示せ。

解答

合成 Hom⁡(Y,Y′)→GHom⁡(G(Y),G(Y′))→φ−1Hom⁡(FG(Y),Y′)\operatorname{Hom}(Y, Y') \xrightarrow{G} \operatorname{Hom}(G(Y), G(Y')) \xrightarrow{\varphi^{-1}} \operatorname{Hom}(FG(Y), Y') は、定理 3.9 と ε\varepsilon の自然性により g↦εY′∘FG(g)=g∘εYg \mapsto \varepsilon_{Y'} \circ FG(g) = g \circ \varepsilon_Y である。φ−1\varphi^{-1} は全単射なので、GG が忠実充満   ⟺  \iff すべての Y′Y' で −∘εY ⁣:Hom⁡(Y,Y′)→Hom⁡(FG(Y),Y′)- \circ \varepsilon_Y\colon \operatorname{Hom}(Y, Y') \to \operatorname{Hom}(FG(Y), Y') が全単射   ⟺  \iff 自然変換 Hom⁡(Y,−)⇒Hom⁡(FG(Y),−)\operatorname{Hom}(Y, -) \Rightarrow \operatorname{Hom}(FG(Y), -) が同型。米田埋め込みは同型を反映するので、最後の条件は εY\varepsilon_Y が同型であることと同値である。

問題 3.4 ★★ 米田の補題とテンソル–Hom 随伴を用いて、d=gcd⁡(m,n)d = \gcd(m, n) のとき Z/m⊗ZZ/n≅Z/d\mathbb{Z}/m \otimes_{\mathbb{Z}} \mathbb{Z}/n \cong \mathbb{Z}/d を示せ。

解答

問題 2.1 (1) の Hom⁡(Z/k,A)≅A[k]\operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/k, A) \cong A[k] を使うと、AA について自然に

Hom⁡(Z/m⊗Z/n,A)≅Hom⁡(Z/m,Hom⁡(Z/n,A))≅Hom⁡(Z/m,A[n])≅{a∈A∣ma=na=0}\operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/m \otimes \mathbb{Z}/n, A) \cong \operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/m, \operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/n, A)) \cong \operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/m, A[n]) \cong \lbrace a \in A \mid ma = na = 0 \rbrace

である。d=um+vnd = um + vn と書けるので、ma=na=0  ⟺  da=0ma = na = 0 \iff da = 0 であり、右辺は A[d]≅Hom⁡(Z/d,A)A[d] \cong \operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/d, A) に等しい。よって Hom⁡(Z/m⊗Z/n,−)≅Hom⁡(Z/d,−)\operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/m \otimes \mathbb{Z}/n, -) \cong \operatorname{Hom}(\mathbb{Z}/d, -) であり、米田埋め込みにより Z/m⊗Z/n≅Z/d\mathbb{Z}/m \otimes \mathbb{Z}/n \cong \mathbb{Z}/d。元を使った計算は一切不要である。

問題 3.5 ★★ リスト・モナド(例 3.18)の代数の圏がモノイドの圏と同値(実は同型)であることを示せ。

解答

代数 (A,a)(A, a) に対し x⋅y=a((x,y))x \cdot y = a((x, y)), e=a(())e = a(()) とおく。単位律 a∘η=ida \circ \eta = \mathrm{id} は a((x))=xa((x)) = x を意味する。結合律 a∘T(a)=a∘μa \circ T(a) = a \circ \mu を列の列 ((x,y),(z))((x, y), (z)) と ((x),(y,z))((x), (y, z)) に適用すると

a((x⋅y,z))=a((x,y,z))=a((x,y⋅z))a((x \cdot y, z)) = a((x, y, z)) = a((x, y \cdot z))

なので (x⋅y)⋅z=x⋅(y⋅z)(x \cdot y) \cdot z = x \cdot (y \cdot z)。((),(x))(( ), (x)) に適用すると e⋅x=a((x))=xe \cdot x = a((x)) = x、同様に x⋅e=xx \cdot e = x。よってモノイドである。逆にモノイドに対し a((x1,…,xn))=x1⋯xna((x_1, \dots, x_n)) = x_1 \cdots x_n(空列は ee)とおけば、一般結合律により二つの公理が成り立つ。この二つの対応は互いに逆であり(aa は長さ 2 と 0 の列での値から、上の式 a((x1,…,xn))=a((a(x1,…,xn−1),xn))a((x_1, \dots, x_n)) = a((a(x_1, \dots, x_{n-1}), x_n)) により帰納的に決まる)、代数の射の条件 f∘a=a∘T(f)f \circ a = a \circ T(f) はモノイド準同型の条件 f(x1⋯xn)=f(x1)⋯f(xn)f(x_1 \cdots x_n) = f(x_1) \cdots f(x_n) と一致する。

問題 3.6 ★★★ チコノフ空間 XX について、F=C(X,[0,1])\mathcal{F} = C(X, [0, 1]) とし、e ⁣:X→[0,1]Fe\colon X \to [0, 1]^{\mathcal{F}}, e(x)=(f(x))f∈Fe(x) = (f(x))_{f \in \mathcal{F}} とおく。βX=e(X)‾\beta X = \overline{e(X)} が例 3.7 の普遍性をもつことを示せ。

解答

(i) βX\beta X はチコノフの定理によりコンパクト・ハウスドルフである。(ii) ee は埋め込み:点は関数で分離されるので単射、各成分が連続なので連続。開集合 U∋xU \ni x に対し f(x)=1f(x) = 1, f(X∖U)=0f(X \setminus U) = 0 となる f∈Ff \in \mathcal{F} をとると、e(X)∩{z∣zf>0}e(X) \cap \lbrace z \mid z_f > 0 \rbrace は e(x)e(x) を含み e(U)e(U) に含まれる e(X)e(X) の開集合なので、ee は像への開写像である。(iii) g∈Fg \in \mathcal{F} は射影 pgp_g の βX\beta X への制限で延長される(pg∘e=gp_g \circ e = g)。(iv) KK がコンパクト・ハウスドルフなら KK は正規、したがってチコノフなので、(ii) と同様に埋め込み eK ⁣:K→[0,1]C(K,[0,1])e_K\colon K \to [0, 1]^{C(K, [0, 1])} があり、像はコンパクトなので閉である。連続写像 g ⁣:X→Kg\colon X \to K に対し、各 ϕ∈C(K,[0,1])\phi \in C(K, [0, 1]) について ϕ∘g∈F\phi \circ g \in \mathcal{F} の延長を成分とする連続写像 G ⁣:βX→[0,1]C(K,[0,1])G\colon \beta X \to [0, 1]^{C(K, [0, 1])} を作ると G∘e=eK∘gG \circ e = e_K \circ g であり、G(βX)⊂G(e(X))‾⊂eK(K)G(\beta X) \subset \overline{G(e(X))} \subset e_K(K)。よって g~=eK−1∘G\tilde{g} = e_K^{-1} \circ G が求める延長である。(v) 延長の一意性は、e(X)e(X) が稠密で KK がハウスドルフであることから従う(2 つの連続写像が一致する集合は閉集合)。

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