Lemma数学ロードマップ

16 リー群と表現論 · 第 1 章

有限群の表現

目安 19〜25 時間定理など 17演習 7 問

この章の目標

  • 表現・部分表現・同値・既約性を定義し、置換表現・正則表現・二面体群の表現などの例を扱えるようになる
  • マシュケの定理とシューアの補題を、仮定(体の標数・代数閉性)に注意して証明できる
  • 指標の直交関係と「既約表現の個数=共役類の個数」を証明し、指標を使って表現を分解できる
  • S3\mathfrak{S}_3, S4\mathfrak{S}_4, A4\mathfrak{A}_4, D4D_4, Q8Q_8 の指標表を自分で作り、検算できる
  • 既約表現の次数が群の位数を割ることを、代数的整数を用いて証明できる
  • 誘導表現を構成し、フロベニウスの相互律を使える

前提:代数学 第2章〜第4章(群・共役類・群の作用・交換子群)、線形代数 第5章(固有値と対角化)、線形代数 第9章(テンソル積・双対空間)

群は「対称性」を記述する言葉である。しかし抽象的な群をそのまま調べるのは難しい。表現論 (representation theory) の基本的な発想は、群の元を線形変換として実現し、線形代数の道具(固有値・トレース・直和分解)を群の研究に持ち込むことである。有限群の場合、この発想は驚くほどうまくいく。複素数体上では、すべての表現が既約表現の直和に分解し、既約表現は指標という一つの関数(行列のトレース)で完全に決まり、しかも指標たちは互いに「直交」する。この章ではこの理論を仮定に注意しながら証明し、代表的な群の指標表を実際に計算する。

この章の内容は、コンパクトリー群の表現論(第6章)の雛形でもある。有限群での平均 1∣G∣∑g∈G\frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_{g \in G} をハール測度による積分 ∫Gdg\int_G dg に置き換えると、ほとんどの議論がそのまま通用する。

以下この章を通じて、GG は有限群、表現空間はすべて有限次元とする。

1.1 表現とは何か

動機:巡回群とフーリエ解析

G=Z/nG = \mathbb{Z}/n 上の複素数値関数 ff は、離散フーリエ変換によって

f(a)=∑k=0n−1f^(k) ζka,ζ=e2πi/nf(a) = \sum_{k=0}^{n-1} \widehat{f}(k)\, \zeta^{ka}, \qquad \zeta = e^{2\pi i/n}

と「指数関数」χk(a)=ζka\chi_k(a) = \zeta^{ka} の重ね合わせに分解できる。各 χk\chi_k は準同型 Z/n→C×\mathbb{Z}/n \to \mathbb{C}^\times であり、平行移動 f↦f(⋅−b)f \mapsto f(\cdot - b) に対して定数倍されるだけである。つまりフーリエ展開とは、関数の空間を「平行移動で不変な 1 次元部分空間」に分解することである。非可換群ではこのような 1 次元の分解では足りず、それ以上分解できない高次元の不変部分空間が現れる。これが既約表現である。

定義 1.1(表現, representation)GG を群、KK を体、VV を KK 上の有限次元ベクトル空間とする。群準同型 ρ ⁣:G→GL⁡(V)\rho\colon G \to \operatorname{GL}(V) を GG の VV 上の表現といい、dim⁡V\dim V を表現の次数 (degree) という。

ρ(g)v\rho(g)v を略して gvgv と書き、表現 (ρ,V)(\rho, V) を単に VV と書くことも多い。表現を与えることは、GG の VV への線形な作用を与えることと同じである。基底を選べば ρ\rho は準同型 G→GL⁡n(K)G \to \operatorname{GL}_n(K)(行列表現)になる。また、表現は群環 K[G]K[G] 上の加群と同じものである(∑gagg∈K[G]\sum_g a_g g \in K[G] を ∑gagρ(g)\sum_g a_g \rho(g) として作用させる)。

例 1.2

  1. 自明表現 (trivial representation):V=KV = K, ρ(g)=1\rho(g) = 1。
  2. 符号表現 (sign representation):Sn→{±1}=GL⁡1(K)\mathfrak{S}_n \to \lbrace \pm 1 \rbrace = \operatorname{GL}_1(K), σ↦sgn⁡σ\sigma \mapsto \operatorname{sgn}\sigma。
  3. Z/n\mathbb{Z}/n の 1 次元表現:ζ∈K\zeta \in K を ζn=1\zeta^n = 1 を満たす元として ρ(a)=ζa\rho(a) = \zeta^a。K=CK = \mathbb{C} なら ζ=e2πik/n\zeta = e^{2\pi i k/n} (0≤k≤n−10 \leq k \leq n-1) の nn 通りがある。
  4. 置換表現 (permutation representation):GG が有限集合 XX に作用しているとき、XX で添字づけた基底 {ex}x∈X\lbrace e_x \rbrace_{x \in X} をもつ空間 K[X]K[X] 上に ρ(g)ex=egx\rho(g)e_x = e_{gx} で表現が定まる。Sn\mathfrak{S}_n が {1,…,n}\lbrace 1, \dots, n \rbrace に作用する場合は、置換行列による KnK^n 上の表現である。
  5. 正則表現 (regular representation):GG が左からの積で GG 自身に作用するときの置換表現 K[G]K[G]。次数は ∣G∣\lvert G \rvert である。

例 1.3(二面体群と四元数群)二面体群 (dihedral group) Dn=⟨r,s∣rn=s2=1, srs−1=r−1⟩D_n = \langle r, s \mid r^n = s^2 = 1,\ srs^{-1} = r^{-1} \rangle(位数 2n2n)は正 nn 角形の対称性の群であり、

ρ(r)=(cos⁡(2π/n)−sin⁡(2π/n)sin⁡(2π/n)cos⁡(2π/n)),ρ(s)=(100−1)\rho(r) = \begin{pmatrix} \cos(2\pi/n) & -\sin(2\pi/n) \\ \sin(2\pi/n) & \cos(2\pi/n) \end{pmatrix}, \qquad \rho(s) = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}

によって C2\mathbb{C}^2 上の 2 次元表現が定まる(ρ(s)ρ(r)ρ(s)−1=ρ(r)−1\rho(s)\rho(r)\rho(s)^{-1} = \rho(r)^{-1} を確かめよ)。四元数群 (quaternion group) は Q8={±1,±i,±j,±k}Q_8 = \lbrace \pm 1, \pm i, \pm j, \pm k \rbrace(i2=j2=k2=ijk=−1i^2 = j^2 = k^2 = ijk = -1)であり、

i↦(i00−i),j↦(0−110),k↦(0−i−i0)i \mapsto \begin{pmatrix} i & 0 \\ 0 & -i \end{pmatrix}, \qquad j \mapsto \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}, \qquad k \mapsto \begin{pmatrix} 0 & -i \\ -i & 0 \end{pmatrix}

が 2 次元表現を与える(3 つの行列の 2 乗がすべて −I-I で、第 1 と第 2 の積が第 3 になることを直接計算で確かめよ)。

補足

二面体群の記号は本によって異なる。本教材では位数 2n2n の二面体群を DnD_n と書く(D4D_4 は正方形の対称性の群で位数 8)。位数を添字にして D2nD_{2n} と書く本も多い。

定義 1.4(GG-線形写像, 同値)(ρV,V)(\rho_V, V), (ρW,W)(\rho_W, W) を GG の表現とする。線形写像 f ⁣:V→Wf\colon V \to W がすべての g∈Gg \in G について f∘ρV(g)=ρW(g)∘ff \circ \rho_V(g) = \rho_W(g) \circ f を満たすとき、ff を GG-線形写像(絡作用素, intertwining operator)といい、その全体を Hom⁡G(V,W)\operatorname{Hom}_G(V, W) と書く。全単射な GG-線形写像が存在するとき、VV と WW は同値(同型, equivalent)であるといい、V≅WV \cong W と書く。

行列表現でいえば、同値とは一つの正則行列 PP によって ρW(g)=PρV(g)P−1\rho_W(g) = P\rho_V(g)P^{-1} がすべての gg について同時に成り立つことである。

定義 1.5(部分表現, 既約表現)VV の部分空間 WW がすべての ρ(g)\rho(g) で不変であるとき、WW を部分表現 (subrepresentation) または GG-不変部分空間という。V≠0V \neq 0 であって部分表現が 00 と VV しかないとき、VV は既約 (irreducible) であるという。

1 次元表現は常に既約である。部分表現 W⊂VW \subset V があれば、商空間 V/WV/W にも表現が誘導される。

例 1.6 Sn\mathfrak{S}_n (n≥2n \geq 2) の置換表現 KnK^n において

L=K(1,1,…,1),H={(x1,…,xn)∈Kn∣x1+⋯+xn=0}L = K(1, 1, \dots, 1), \qquad H = \lbrace (x_1, \dots, x_n) \in K^n \mid x_1 + \dots + x_n = 0 \rbrace

はどちらも部分表現である。char⁡K∤n\operatorname{char} K \nmid n ならば (1,…,1)∉H(1, \dots, 1) \notin H なので Kn=L⊕HK^n = L \oplus H と分解する。一方 char⁡K=p\operatorname{char} K = p が nn を割るときは (1,…,1)(1, \dots, 1) の成分の和が n=0n = 0 なので L⊂HL \subset H となり、この分解は成り立たない。char⁡K∤n\operatorname{char} K \nmid n のときの HH を Sn\mathfrak{S}_n の標準表現 (standard representation) という(次数 n−1n-1)。K=CK = \mathbb{C} で HH が既約であることは、n=3,4n = 3, 4 の場合に 1.5 節と 1.8 節で指標を使って確かめる。

1.2 マシュケの定理

表現を理解する基本戦略は「既約表現に分解し、既約表現を分類する」ことである。その第一歩が次の定理である。

定理 1.7(マシュケの定理, Maschke's theorem)GG を有限群、KK を char⁡K∤∣G∣\operatorname{char} K \nmid \lvert G \rvert を満たす体(例えば標数 0 の体)とする。VV を GG の KK 上の表現、W⊂VW \subset V を部分表現とすると、V=W⊕W′V = W \oplus W' となる部分表現 W′W' が存在する。

証明. 線形写像 p ⁣:V→Vp\colon V \to V で p(V)⊂Wp(V) \subset W かつ p∣W=idWp\vert_W = \mathrm{id}_W となるもの(WW への射影)を一つとる(WW の基底を VV の基底に延長すればよい)。仮定より ∣G∣\lvert G \rvert は KK で可逆なので

p∘=1∣G∣∑g∈Gρ(g) p ρ(g)−1p^\circ = \frac{1}{\lvert G \rvert} \sum_{g \in G} \rho(g)\, p\, \rho(g)^{-1}

が定義できる。(i) 各 ρ(g)\rho(g) は WW を保つので p∘(V)⊂Wp^\circ(V) \subset W。(ii) w∈Ww \in W なら ρ(g)−1w∈W\rho(g)^{-1}w \in W より pρ(g)−1w=ρ(g)−1wp\rho(g)^{-1}w = \rho(g)^{-1}w だから、和の各項は ww を ww に写し、p∘w=wp^\circ w = w となる(ここで ∣G∣\lvert G \rvert 個の ww の和を ∣G∣\lvert G \rvert で割っている)。(iii) h∈Gh \in G に対し、g↦hgg \mapsto hg が GG の全単射であることから

ρ(h)p∘ρ(h)−1=1∣G∣∑g∈Gρ(hg) p ρ(hg)−1=p∘\rho(h) p^\circ \rho(h)^{-1} = \frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_{g \in G} \rho(hg)\, p\, \rho(hg)^{-1} = p^\circ

よって p∘p^\circ は WW への GG-線形な射影であり、W′=ker⁡p∘W' = \ker p^\circ は部分表現で V=W⊕W′V = W \oplus W' となる。□\square

系 1.8(完全可約性, complete reducibility)char⁡K∤∣G∣\operatorname{char} K \nmid \lvert G \rvert ならば、GG の任意の表現 V≠0V \neq 0 は既約表現の直和に分解する。

証明. dim⁡V\dim V に関する帰納法。VV が既約なら終わり。そうでなければ部分表現 0≠W⊊V0 \neq W \subsetneq V があり、定理 1.7 より V=W⊕W′V = W \oplus W' となる。W,W′W, W' は VV より次元が小さいので、帰納法の仮定から既約表現の直和である。□\square

例 1.9(仮定は外せない)pp を素数、G=Z/pG = \mathbb{Z}/p、K=FpK = \mathbb{F}_p とし、

ρ(a)=(1a01)(a∈Z/p)\rho(a) = \begin{pmatrix} 1 & a \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \quad (a \in \mathbb{Z}/p)

とおく(aa は Fp\mathbb{F}_p の元とみなせ、ρ(a)ρ(b)=ρ(a+b)\rho(a)\rho(b) = \rho(a+b) である)。W=Fpe1W = \mathbb{F}_p e_1 は部分表現である。不変な 1 次元部分空間は ρ(1)\rho(1) の固有直線でなければならないが、ρ(1)−I\rho(1) - I の核は Fpe1\mathbb{F}_p e_1 だけなので、不変な直線は WW しかない。したがって WW の補空間となる部分表現は存在しない。同じ形の行列で Z\mathbb{Z} の C2\mathbb{C}^2 上の表現 n↦ρ(n)n \mapsto \rho(n) を考えれば、無限群ではマシュケの定理が成り立たない例になる(有限性の代わりにコンパクト性があればよいことを第6章で見る)。

注意 1.10(ユニタリ化)K=CK = \mathbb{C} のとき、VV の任意のエルミート内積 ⟨⋅,⋅⟩0\langle \cdot, \cdot \rangle_0 から

⟨u,v⟩=1∣G∣∑g∈G⟨gu,gv⟩0\langle u, v \rangle = \frac{1}{\lvert G \rvert} \sum_{g \in G} \langle gu, gv \rangle_0

を作ると、これは正定値で GG-不変(⟨gu,gv⟩=⟨u,v⟩\langle gu, gv \rangle = \langle u, v \rangle)なエルミート内積になる。この内積に関して各 ρ(g)\rho(g) はユニタリであり、部分表現 WW の直交補空間 W⊥W^\perp も GG-不変である。これはマシュケの定理の別証明であり、コンパクト群にそのまま一般化できる形である。

1.3 シューアの補題

定理 1.11(シューアの補題, Schur's lemma)

  1. KK を任意の体、V,WV, W を GG の既約表現、f∈Hom⁡G(V,W)f \in \operatorname{Hom}_G(V, W) とする。このとき f=0f = 0 であるか、ff は同型である。特に End⁡G(V):=Hom⁡G(V,V)\operatorname{End}_G(V) := \operatorname{Hom}_G(V, V) は(可換とは限らない)斜体である。
  2. さらに KK が代数閉体ならば、End⁡G(V)=K⋅idV\operatorname{End}_G(V) = K \cdot \mathrm{id}_V である。

証明. 1. f(gv)=gf(v)f(gv) = gf(v) より、ker⁡f\ker f は VV の、Im⁡f\operatorname{Im} f は WW の部分表現である。f≠0f \neq 0 なら ker⁡f≠V\ker f \neq V なので既約性から ker⁡f=0\ker f = 0、また Im⁡f≠0\operatorname{Im} f \neq 0 なので Im⁡f=W\operatorname{Im} f = W となり、ff は同型である。

  1. f∈End⁡G(V)f \in \operatorname{End}_G(V) とする。KK は代数閉で V≠0V \neq 0 は有限次元だから、ff は固有値 λ∈K\lambda \in K をもつ。f−λidV∈End⁡G(V)f - \lambda \mathrm{id}_V \in \operatorname{End}_G(V) は核が 00 でないので同型でなく、1 より 00 である。□\square

補足

証明では GG が有限であることを使っていない。シューアの補題は任意の群(さらに位相群やリー環)の有限次元表現について成り立ち、以後の章で繰り返し使う。

例 1.12(代数閉性は外せない)G=Z/4G = \mathbb{Z}/4 を R2\mathbb{R}^2 に 90° 回転

J=(0−110)J = \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}

で作用させる。不変な直線は JJ の実固有ベクトルで張られるはずだが、JJ の固有値は ±i\pm i なので、この表現は R\mathbb{R} 上既約である。一方、JJ と可換な実行列は aI+bJaI + bJ (a,b∈Ra, b \in \mathbb{R}) の形のものすべてであり、End⁡G(R2)≅C\operatorname{End}_G(\mathbb{R}^2) \cong \mathbb{C} はスカラー倍だけではない。C\mathbb{C} 上に係数拡大すると C2\mathbb{C}^2 は固有値 ii, −i-i の固有直線に分解し、既約でなくなる。

系 1.13 KK を代数閉体、GG を可換群とする。GG の有限次元既約表現はすべて 1 次元である。

証明. GG が可換なので、各 ρ(h)\rho(h) は GG-線形写像である。シューアの補題より ρ(h)\rho(h) はスカラー倍であり、したがって VV のすべての部分空間が GG-不変である。既約性から dim⁡V=1\dim V = 1。□\square

例 1.14(1 次元表現とアーベル化)1 次元表現 ρ ⁣:G→K×\rho\colon G \to K^\times の像は可換なので、ρ\rho は交換子群 [G,G][G, G] 上で自明であり、アーベル化 Gab=G/[G,G]G^{\mathrm{ab}} = G/[G,G] を経由する(代数学 第4章)。逆に GabG^{\mathrm{ab}} の 1 次元表現は GG の 1 次元表現を与える。K=CK = \mathbb{C} のとき、有限アーベル群 AA の 1 次元表現はちょうど ∣A∣\lvert A \rvert 個ある(AA を巡回群の直積に分解し、例 1.2 の 3 を使う)。例えば:

  • Sn\mathfrak{S}_n (n≥2n \geq 2):[Sn,Sn]=An[\mathfrak{S}_n, \mathfrak{S}_n] = \mathfrak{A}_n なので、1 次元表現は自明表現と符号表現の 2 つ。
  • D4D_4:srs−1r−1=r−2=r2srs^{-1}r^{-1} = r^{-2} = r^2 より r2∈[D4,D4]r^2 \in [D_4, D_4]。D4/⟨r2⟩D_4/\langle r^2 \rangle は位数 4 で可換なので [D4,D4]=⟨r2⟩[D_4, D_4] = \langle r^2 \rangle、1 次元表現は 4 つ。
  • Q8Q_8:iji−1j−1=ij⋅ij=k2=−1iji^{-1}j^{-1} = ij \cdot ij = k^2 = -1 より同様に [Q8,Q8]={±1}[Q_8, Q_8] = \lbrace \pm 1 \rbrace、1 次元表現は 4 つ。
  • A4\mathfrak{A}_4:V4={1,(12)(34),(13)(24),(14)(23)}V_4 = \lbrace 1, (12)(34), (13)(24), (14)(23) \rbrace は正規部分群で A4/V4≅Z/3\mathfrak{A}_4/V_4 \cong \mathbb{Z}/3 だから [A4,A4]⊂V4[\mathfrak{A}_4, \mathfrak{A}_4] \subset V_4。[A4,A4][\mathfrak{A}_4, \mathfrak{A}_4] は自明でない正規部分群だが、V4V_4 の位数 2 の部分群は (123)(123) による共役で互いに移り合い正規でないから、[A4,A4]=V4[\mathfrak{A}_4, \mathfrak{A}_4] = V_4。1 次元表現は 3 つ。

1.4 表現の構成:直和・テンソル積・双対

定義 1.15 V,WV, W を GG の表現とする。

  1. 直和 V⊕WV \oplus W:g(v,w)=(gv,gw)g(v, w) = (gv, gw)。
  2. テンソル積 (tensor product) V⊗WV \otimes W:g(v⊗w)=gv⊗gwg(v \otimes w) = gv \otimes gw。
  3. 双対表現 (dual representation) V∗=Hom⁡K(V,K)V^{\ast} = \operatorname{Hom}_K(V, K):(gφ)(v)=φ(g−1v)(g\varphi)(v) = \varphi(g^{-1}v)。
  4. Hom⁡K(V,W)\operatorname{Hom}_K(V, W):g⋅f=ρW(g)∘f∘ρV(g)−1g \cdot f = \rho_W(g) \circ f \circ \rho_V(g)^{-1}。

双対表現で g−1g^{-1} を使うのは、(gh)φ=g(hφ)(gh)\varphi = g(h\varphi)(左作用)を成り立たせるためであり、そうすると自然なペアリングが不変 (gφ)(gv)=φ(v)(g\varphi)(gv) = \varphi(v) になる。双対基底に関する行列は tρ(g−1){}^t\rho(g^{-1})(t{}^t は転置)である。

一般に表現 UU の不変部分空間 (invariants) を UG={u∈U∣gu=u (∀g∈G)}U^G = \lbrace u \in U \mid gu = u \ (\forall g \in G) \rbrace と書く。定義から直ちに

Hom⁡K(V,W)G=Hom⁡G(V,W)\operatorname{Hom}_K(V, W)^G = \operatorname{Hom}_G(V, W)

である。また φ⊗w↦(v↦φ(v)w)\varphi \otimes w \mapsto (v \mapsto \varphi(v)w) は GG-線形な同型 V∗⊗W≅Hom⁡K(V,W)V^{\ast} \otimes W \cong \operatorname{Hom}_K(V, W) を与える。

1.5 指標

以下、この章の終わりまで K=CK = \mathbb{C} とする。

定義 1.16(指標, character)表現 (ρ,V)(\rho, V) の指標を χV(g)=tr⁡ρ(g)\chi_V(g) = \operatorname{tr}\rho(g) (g∈Gg \in G) で定める。既約表現の指標を既約指標 (irreducible character) という。

命題 1.17 V,WV, W を GG の表現とする。

  1. χV(1)=dim⁡V\chi_V(1) = \dim V。
  2. χV(hgh−1)=χV(g)\chi_V(hgh^{-1}) = \chi_V(g)。すなわち χV\chi_V は類関数 (class function)(各共役類の上で一定の関数)である。
  3. ρ(g)\rho(g) は対角化可能で、固有値は 1 の冪根である。特に χV(g−1)=χV(g)‾\chi_V(g^{-1}) = \overline{\chi_V(g)} かつ ∣χV(g)∣≤dim⁡V\lvert \chi_V(g) \rvert \leq \dim V。
  4. χV⊕W=χV+χW\chi_{V \oplus W} = \chi_V + \chi_W, χV⊗W=χVχW\chi_{V \otimes W} = \chi_V\chi_W, χV∗=χV‾\chi_{V^{\ast}} = \overline{\chi_V}, χHom⁡(V,W)=χV‾χW\chi_{\operatorname{Hom}(V, W)} = \overline{\chi_V}\chi_W。
  5. V≅WV \cong W ならば χV=χW\chi_V = \chi_W。

証明. 1, 2, 5 はトレースの性質 tr⁡(PAP−1)=tr⁡A\operatorname{tr}(PAP^{-1}) = \operatorname{tr}A から従う。3:gg の位数を mm とすると ρ(g)m=I\rho(g)^m = I なので、ρ(g)\rho(g) の最小多項式は重根をもたない多項式 xm−1x^m - 1 を割る。よって ρ(g)\rho(g) は対角化可能で、固有値 ζ1,…,ζd\zeta_1, \dots, \zeta_d は 1 の mm 乗根である。ρ(g−1)\rho(g^{-1}) の固有値は ζi−1=ζi‾\zeta_i^{-1} = \overline{\zeta_i} だから χV(g−1)=χV(g)‾\chi_V(g^{-1}) = \overline{\chi_V(g)}、また ∣ζ1+⋯+ζd∣≤d\lvert \zeta_1 + \dots + \zeta_d \rvert \leq d。4:直和は明らか。ρV(g)\rho_V(g), ρW(g)\rho_W(g) を固有ベクトルの基底 {vi}\lbrace v_i \rbrace, {wj}\lbrace w_j \rbrace(固有値 λi\lambda_i, μj\mu_j)で対角化すると、{vi⊗wj}\lbrace v_i \otimes w_j \rbrace は V⊗WV \otimes W の固有ベクトルの基底で固有値は λiμj\lambda_i\mu_j だから χV⊗W(g)=∑i,jλiμj=χV(g)χW(g)\chi_{V \otimes W}(g) = \sum_{i,j}\lambda_i\mu_j = \chi_V(g)\chi_W(g)。V∗V^{\ast} の行列は tρ(g−1){}^t\rho(g^{-1}) なのでトレースは χV(g−1)=χV(g)‾\chi_V(g^{-1}) = \overline{\chi_V(g)}。最後の式は Hom⁡(V,W)≅V∗⊗W\operatorname{Hom}(V,W) \cong V^{\ast} \otimes W から従う。□\square

類関数全体のなすベクトル空間を C(G)\mathcal{C}(G) と書く。その次元は共役類の個数 hh に等しい。C(G)\mathcal{C}(G) に次のエルミート内積を入れる:

⟨φ,ψ⟩G=1∣G∣∑g∈Gφ(g)ψ(g)‾\langle \varphi, \psi \rangle_G = \frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_{g \in G} \varphi(g)\overline{\psi(g)}

補題 1.18 表現 VV に対し dim⁡VG=1∣G∣∑g∈GχV(g)\dim V^G = \frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_{g \in G}\chi_V(g) である。

証明. e=1∣G∣∑g∈Gρ(g)e = \frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_{g \in G}\rho(g) とおく。g↦hgg \mapsto hg の置き換えにより ρ(h)e=e\rho(h)e = e なので e(V)⊂VGe(V) \subset V^G。また v∈VGv \in V^G なら ev=vev = v。よって e2=ee^2 = e は VGV^G への射影である。射影は固有値 1 の固有空間(像)と固有値 0 の固有空間(核)の直和に対角化されるので、そのトレースは像の次元に等しい。tr⁡e=1∣G∣∑gχV(g)\operatorname{tr} e = \frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_g \chi_V(g) である。□\square

定理 1.19(指標の第一直交関係, orthogonality relations)V,WV, W を GG の表現とすると

⟨χW,χV⟩G=dim⁡Hom⁡G(V,W)\langle \chi_W, \chi_V \rangle_G = \dim \operatorname{Hom}_G(V, W)

である。特に V,WV, W が既約ならば、⟨χW,χV⟩G\langle \chi_W, \chi_V \rangle_G は V≅WV \cong W のとき 1、そうでないとき 0 である。

証明. 補題 1.18 を表現 Hom⁡(V,W)\operatorname{Hom}(V, W) に適用し、命題 1.17 の 4 を使うと

dim⁡Hom⁡G(V,W)=dim⁡Hom⁡(V,W)G=1∣G∣∑g∈GχV(g)‾χW(g)=⟨χW,χV⟩G\dim \operatorname{Hom}_G(V, W) = \dim \operatorname{Hom}(V,W)^G = \frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_{g \in G}\overline{\chi_V(g)}\chi_W(g) = \langle \chi_W, \chi_V \rangle_G

V,WV, W が既約のとき、シューアの補題により、V≇WV \not\cong W なら Hom⁡G(V,W)=0\operatorname{Hom}_G(V, W) = 0 である。V≅WV \cong W なら同型 f0f_0 を一つとると、任意の f∈Hom⁡G(V,W)f \in \operatorname{Hom}_G(V, W) に対し f0−1∘f∈End⁡G(V)=C⋅idVf_0^{-1} \circ f \in \operatorname{End}_G(V) = \mathbb{C} \cdot \mathrm{id}_V なので Hom⁡G(V,W)=Cf0\operatorname{Hom}_G(V,W) = \mathbb{C} f_0 は 1 次元である。□\square

系 1.20 V1,…,VkV_1, \dots, V_k を互いに同値でない既約表現とし、χi=χVi\chi_i = \chi_{V_i} とする。

  1. χ1,…,χk\chi_1, \dots, \chi_k は C(G)\mathcal{C}(G) の正規直交系である。特に k≤hk \leq h であり、GG の既約表現は同値を除いて有限個しかない。
  2. 表現 VV が V≅⨁iVi⊕miV \cong \bigoplus_i V_i^{\oplus m_i} と分解すれば mi=⟨χV,χi⟩Gm_i = \langle \chi_V, \chi_i \rangle_G である。特に重複度 (multiplicity) mim_i は分解の仕方によらない。
  3. ⟨χV,χV⟩G=∑imi2\langle \chi_V, \chi_V \rangle_G = \sum_i m_i^2。したがって、VV が既約であるための必要十分条件は ⟨χV,χV⟩G=1\langle \chi_V, \chi_V \rangle_G = 1 である。
  4. V≅WV \cong W であるための必要十分条件は χV=χW\chi_V = \chi_W である。

証明. 1 は定理 1.19 そのものであり、正規直交系は一次独立だから k≤dim⁡C(G)=hk \leq \dim \mathcal{C}(G) = h。2, 3 は χV=∑imiχi\chi_V = \sum_i m_i\chi_i と正規直交性から従う。4:χV=χW\chi_V = \chi_W なら 2 より重複度がすべて一致するので、完全可約性(系 1.8)から V≅WV \cong W。□\square

例 1.21 S3\mathfrak{S}_3 の置換表現 C3\mathbb{C}^3 の指標は固定点の個数 χ(σ)=∣{i∣σ(i)=i}∣\chi(\sigma) = \lvert \lbrace i \mid \sigma(i) = i \rbrace \rvert であり、単位元・互換・3-巡回置換でそれぞれ 3,1,03, 1, 0 をとる。C3=L⊕H\mathbb{C}^3 = L \oplus H(例 1.6)より、標準表現の指標は χH=(2,0,−1)\chi_H = (2, 0, -1) である。共役類の大きさは順に 1,3,21, 3, 2 なので

⟨χH,χH⟩G=16(1⋅22+3⋅02+2⋅(−1)2)=1\langle \chi_H, \chi_H \rangle_G = \frac{1}{6}\left(1 \cdot 2^2 + 3 \cdot 0^2 + 2 \cdot (-1)^2\right) = 1

となり、HH は既約である。

1.6 正則表現

命題 1.22 正則表現 C[G]\mathbb{C}[G] の指標は χreg(1)=∣G∣\chi_{\mathrm{reg}}(1) = \lvert G \rvert, χreg(g)=0\chi_{\mathrm{reg}}(g) = 0 (g≠1g \neq 1) である。したがって、既約表現の同値類の代表 V1,…,VkV_1, \dots, V_k(di=dim⁡Vid_i = \dim V_i)はそれぞれ正則表現にちょうど did_i 回現れ、

C[G]≅⨁i=1kVi⊕di,∑i=1kdi2=∣G∣,∑i=1kdiχi(g)=0(g≠1)\mathbb{C}[G] \cong \bigoplus_{i=1}^k V_i^{\oplus d_i}, \qquad \sum_{i=1}^k d_i^2 = \lvert G \rvert, \qquad \sum_{i=1}^k d_i \chi_i(g) = 0 \quad (g \neq 1)

が成り立つ。

証明. gex=egxge_x = e_{gx} であり gx=x  ⟺  g=1gx = x \iff g = 1 なので、g≠1g \neq 1 に対応する置換行列の対角成分はすべて 0 である。重複度は ⟨χreg,χi⟩G=1∣G∣∣G∣χi(1)‾=di\langle \chi_{\mathrm{reg}}, \chi_i \rangle_G = \frac{1}{\lvert G \rvert}\lvert G \rvert\overline{\chi_i(1)} = d_i(系 1.20)。これよりすべての既約表現が正則表現に現れる。残りの 2 式は χreg=∑idiχi\chi_{\mathrm{reg}} = \sum_i d_i \chi_i を g=1g = 1 と g≠1g \neq 1 で評価したものである。□\square

例えば S3\mathfrak{S}_3 では、自明表現・符号表現・標準表現について 12+12+22=61^2 + 1^2 + 2^2 = 6 なので、既約表現はこの 3 つで尽きている。

1.7 既約表現の個数と第二直交関係

定理 1.23 既約指標は類関数の空間 C(G)\mathcal{C}(G) の正規直交基底をなす。特に、既約表現の同値類の個数は共役類の個数 hh に等しい。

証明. 既約指標が正規直交系であることは示したので、C(G)\mathcal{C}(G) を張ることを示せばよい。f∈C(G)f \in \mathcal{C}(G) がすべての既約指標と直交するとする。表現 (ρ,V)(\rho, V) に対し ρf=∑g∈Gf(g)ρ(g)\rho_f = \sum_{g \in G} f(g)\rho(g) とおく。ff は類関数なので

ρ(h)ρfρ(h)−1=∑g∈Gf(g)ρ(hgh−1)=∑g∈Gf(h−1gh)ρ(g)=ρf\rho(h)\rho_f\rho(h)^{-1} = \sum_{g \in G} f(g)\rho(hgh^{-1}) = \sum_{g \in G} f(h^{-1}gh)\rho(g) = \rho_f

となり、ρf∈End⁡G(V)\rho_f \in \operatorname{End}_G(V)。VV が既約で dim⁡V=d\dim V = d ならシューアの補題より ρf=λ⋅idV\rho_f = \lambda \cdot \mathrm{id}_V であり、トレースをとると

λd=∑g∈Gf(g)χV(g)=∣G∣⟨f,χV‾⟩G=∣G∣⟨f,χV∗⟩G\lambda d = \sum_{g \in G} f(g)\chi_V(g) = \lvert G \rvert \langle f, \overline{\chi_V} \rangle_G = \lvert G \rvert \langle f, \chi_{V^{\ast}} \rangle_G

V∗V^{\ast} も既約である(⟨χV‾,χV‾⟩G=⟨χV,χV⟩G=1\langle \overline{\chi_V}, \overline{\chi_V} \rangle_G = \langle \chi_V, \chi_V \rangle_G = 1)から、仮定より右辺は 0 で、ρf=0\rho_f = 0。完全可約性より任意の表現で ρf=0\rho_f = 0 となる。これを正則表現に適用すると 0=ρf(e1)=∑gf(g)eg0 = \rho_f(e_1) = \sum_g f(g)e_g なので f=0f = 0。□\square

定理 1.24(第二直交関係)χ1,…,χh\chi_1, \dots, \chi_h を既約指標の全体とする。g,g′∈Gg, g' \in G に対し

∑i=1hχi(g)χi(g′)‾={∣CG(g)∣(g と g′ が共役)0(それ以外)\sum_{i=1}^h \chi_i(g)\overline{\chi_i(g')} = \begin{cases} \lvert C_G(g) \rvert & (g \text{ と } g' \text{ が共役}) \\ 0 & (\text{それ以外}) \end{cases}

が成り立つ。ここで CG(g)C_G(g) は gg の中心化群である。

証明. 共役類を C1,…,ChC_1, \dots, C_h、代表元を gj∈Cjg_j \in C_j とし、h×hh \times h 行列 UU を Uij=∣Cj∣/∣G∣ χi(gj)U_{ij} = \sqrt{\lvert C_j \rvert/\lvert G \rvert}\ \chi_i(g_j) で定める。第一直交関係は ∑jUijUkj‾=⟨χi,χk⟩G=δik\sum_j U_{ij}\overline{U_{kj}} = \langle \chi_i, \chi_k \rangle_G = \delta_{ik}、すなわち UU∗=IUU^{\ast} = I を意味する。UU は正方行列なので U∗U=IU^{\ast}U = I でもあり、∑iUij‾Uil=δjl\sum_i \overline{U_{ij}}U_{il} = \delta_{jl}。これを書き直すと ∑iχi(gl)χi(gj)‾=δjl∣G∣/∣Cj∣\sum_i \chi_i(g_l)\overline{\chi_i(g_j)} = \delta_{jl}\lvert G \rvert/\lvert C_j \rvert であり、軌道と安定化群の関係 ∣G∣/∣Cj∣=∣CG(gj)∣\lvert G \rvert/\lvert C_j \rvert = \lvert C_G(g_j) \rvert(代数学 第3章)より主張を得る。□\square

ヒント

指標表は、行(既約指標)が重み ∣Cj∣/∣G∣\lvert C_j \rvert/\lvert G \rvert つきで正規直交し、列が重み 1/∣CG(gj)∣1/\lvert C_G(g_j) \rvert つきで正規直交する正方行列である。表を作ったら、必ず行と列の両方の直交関係で検算すること。

1.8 指標表の計算例

指標表は次の手順で作ることが多い。(1) 共役類とその大きさを求める。(2) アーベル化から 1 次元指標を求める(例 1.14)。(3) 置換表現、既知の表現とのテンソル積、商群の表現、誘導表現(1.10 節)から既約表現を探し、⟨χ,χ⟩=1\langle \chi, \chi \rangle = 1 で既約性を判定する。(4) ∑di2=∣G∣\sum d_i^2 = \lvert G \rvert で残りの次数を決め、直交関係で空欄を埋める。

例 1.25(S3\mathfrak{S}_3)共役類は巡回置換型で決まる。既約表現は自明・符号・標準(例 1.21)であり、指標表は次のとおり。

代表元 11 (12)(12) (123)(123)
類の大きさ 11 33 22
χtriv\chi_{\mathrm{triv}} 11 11 11
χsgn\chi_{\mathrm{sgn}} 11 −1-1 11
χstd\chi_{\mathrm{std}} 22 00 −1-1

検算:⟨χsgn,χstd⟩=16(2+0−2)=0\langle \chi_{\mathrm{sgn}}, \chi_{\mathrm{std}} \rangle = \frac{1}{6}(2 + 0 - 2) = 0。列 (12)(12) について 12+(−1)2+02=2=∣CG((12))∣1^2 + (-1)^2 + 0^2 = 2 = \lvert C_G((12)) \rvert、列 (123)(123) について 1+1+1=3=∣CG((123))∣1 + 1 + 1 = 3 = \lvert C_G((123)) \rvert。

例 1.26(D4D_4)rsr−1=r2sr s r^{-1} = r^2 s と r(sr)r−1=sr3r(sr)r^{-1} = sr^3 より、共役類は {1}\lbrace 1 \rbrace, {r2}\lbrace r^2 \rbrace, {r,r3}\lbrace r, r^3 \rbrace, {s,sr2}\lbrace s, sr^2 \rbrace, {sr,sr3}\lbrace sr, sr^3 \rbrace の 5 つである。1 次元指標は D4ab≅(Z/2)2D_4^{\mathrm{ab}} \cong (\mathbb{Z}/2)^2 から 4 つ得られ、χ(r),χ(s)∈{±1}\chi(r), \chi(s) \in \lbrace \pm 1 \rbrace を自由に選べる(χ(r2)=1\chi(r^2) = 1, χ(sr)=χ(s)χ(r)\chi(sr) = \chi(s)\chi(r))。4⋅12+d2=84 \cdot 1^2 + d^2 = 8 より残りは 2 次元で、例 1.3 の表現(n=4n = 4)がそれである。ρ(r)\rho(r) は 90° 回転(トレース 0)、ρ(r2)=−I\rho(r^2) = -I、ρ(s)\rho(s), ρ(sr)\rho(sr) は鏡映(トレース 0)なので:

代表元 11 r2r^2 rr ss srsr
類の大きさ 11 11 22 22 22
χ1\chi_1 11 11 11 11 11
χ2\chi_2 11 11 11 −1-1 −1-1
χ3\chi_3 11 11 −1-1 11 −1-1
χ4\chi_4 11 11 −1-1 −1-1 11
χ5\chi_5 22 −2-2 00 00 00

検算:⟨χ5,χ5⟩=18(4+4)=1\langle \chi_5, \chi_5 \rangle = \frac{1}{8}(4 + 4) = 1 で既約。列 r2r^2 について 1+1+1+1+4=8=∣CG(r2)∣1 + 1 + 1 + 1 + 4 = 8 = \lvert C_G(r^2) \rvert(r2r^2 は中心元)。

例 1.27(Q8Q_8)jij−1=−ijij^{-1} = -i などから、共役類は {1}\lbrace 1 \rbrace, {−1}\lbrace -1 \rbrace, {±i}\lbrace \pm i \rbrace, {±j}\lbrace \pm j \rbrace, {±k}\lbrace \pm k \rbrace の 5 つ。1 次元指標は χ(i),χ(j)∈{±1}\chi(i), \chi(j) \in \lbrace \pm 1 \rbrace で決まり(χ(−1)=1\chi(-1) = 1, χ(k)=χ(i)χ(j)\chi(k) = \chi(i)\chi(j))、残りは例 1.3 の 2 次元表現(±1↦±I\pm 1 \mapsto \pm I、他はトレース 0)である。

代表元 11 −1-1 ii jj kk
類の大きさ 11 11 22 22 22
χ1\chi_1 11 11 11 11 11
χ2\chi_2 11 11 11 −1-1 −1-1
χ3\chi_3 11 11 −1-1 11 −1-1
χ4\chi_4 11 11 −1-1 −1-1 11
χ5\chi_5 22 −2-2 00 00 00

注意

指標表は群を決定しない。D4D_4 と Q8Q_8 は同型でない(位数 2 の元は D4D_4 では r2,s,sr,sr2,sr3r^2, s, sr, sr^2, sr^3 の 5 個、Q8Q_8 では −1-1 の 1 個)が、共役類を適切に対応させると指標表は完全に一致する。違いは、例えば 1∣G∣∑gχ5(g2)\frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_g \chi_5(g^2) に現れる(問題 1.5)。

例 1.28(A4\mathfrak{A}_4)S4\mathfrak{S}_4 における (123)(123) の中心化群は ⟨(123)⟩\langle (123) \rangle で A4\mathfrak{A}_4 に含まれるから、A4\mathfrak{A}_4 での中心化群も位数 3 で、共役類の大きさは 12/3=412/3 = 4。したがって 8 個の 3-巡回置換は大きさ 4 の 2 つの類に分かれる。(123)(123) と (132)(132) は別の類に属する:x(123)x−1=(x(1) x(2) x(3))x(123)x^{-1} = (x(1)\ x(2)\ x(3)) が (132)(132) になる xx は (23)(23), (13)(13), (12)(12) に {1,2,3}\lbrace 1,2,3 \rbrace 上で一致し、いずれも奇置換だからである。共役類は {1}\lbrace 1 \rbrace, V4∖{1}V_4 \setminus \lbrace 1 \rbrace(大きさ 3), (123)(123) の類, (132)(132) の類の 4 つ。1 次元指標は A4→A4/V4≅Z/3\mathfrak{A}_4 \to \mathfrak{A}_4/V_4 \cong \mathbb{Z}/3 から 3 つ得られる(ω=e2πi/3\omega = e^{2\pi i/3})。3+d2=123 + d^2 = 12 より残りは 3 次元で、S4\mathfrak{S}_4 の標準表現(固定点の個数 −1-1)を制限したものの指標 (3,−1,0,0)(3, -1, 0, 0) は ⟨χ,χ⟩=112(9+3⋅1)=1\langle \chi, \chi \rangle = \frac{1}{12}(9 + 3 \cdot 1) = 1 を満たすので既約である。

代表元 11 (12)(34)(12)(34) (123)(123) (132)(132)
類の大きさ 11 33 44 44
χ1\chi_1 11 11 11 11
χ2\chi_2 11 11 ω\omega ω2\omega^2
χ3\chi_3 11 11 ω2\omega^2 ω\omega
χ4\chi_4 33 −1-1 00 00

検算:⟨χ2,χ1⟩=112(1+3+4ω+4ω2)=0\langle \chi_2, \chi_1 \rangle = \frac{1}{12}(1 + 3 + 4\omega + 4\omega^2) = 0(1+ω+ω2=01 + \omega + \omega^2 = 0)。列 (123)(123) について 1+∣ω∣2+∣ω2∣2+0=3=∣CG((123))∣1 + \lvert \omega \rvert^2 + \lvert \omega^2 \rvert^2 + 0 = 3 = \lvert C_G((123)) \rvert、列 (12)(34)(12)(34) について 1+1+1+1=4=∣V4∣1 + 1 + 1 + 1 = 4 = \lvert V_4 \rvert。

例 1.29(S4\mathfrak{S}_4)共役類は巡回置換型 11, (12)(12), (12)(34)(12)(34), (123)(123), (1234)(1234) で、大きさは 1,6,3,8,61, 6, 3, 8, 6 である。既約表現は次の 5 つ。

  • 自明表現と符号表現。
  • WW:S4\mathfrak{S}_4 は {1,2,3,4}\lbrace 1,2,3,4 \rbrace を 2 つずつの組に分ける 3 通りの分け方 {12∣34,13∣24,14∣23}\lbrace 12 \vert 34, 13 \vert 24, 14 \vert 23 \rbrace に作用し、全射 S4→S3\mathfrak{S}_4 \to \mathfrak{S}_3(核は V4V_4)を与える。これと S3\mathfrak{S}_3 の標準表現の合成が WW である。全射と合成しても不変部分空間は変わらないので WW は既約。(12)(12) と (1234)(1234) は互換に、(12)(34)(12)(34) は単位元に、(123)(123) は 3-巡回置換に写る。
  • 標準表現 VV:指標は「固定点の個数 −1-1」。
  • V′=V⊗sgn⁡V' = V \otimes \operatorname{sgn}:指標は χVχsgn\chi_V \chi_{\mathrm{sgn}}。
代表元 11 (12)(12) (12)(34)(12)(34) (123)(123) (1234)(1234)
類の大きさ 11 66 33 88 66
χtriv\chi_{\mathrm{triv}} 11 11 11 11 11
χsgn\chi_{\mathrm{sgn}} 11 −1-1 11 11 −1-1
χW\chi_W 22 00 22 −1-1 00
χV\chi_V 33 11 −1-1 00 −1-1
χV′\chi_{V'} 33 −1-1 −1-1 00 11

検算:⟨χV,χV⟩=124(9+6+3+0+6)=1\langle \chi_V, \chi_V \rangle = \frac{1}{24}(9 + 6 + 3 + 0 + 6) = 1, ⟨χW,χW⟩=124(4+0+12+8+0)=1\langle \chi_W, \chi_W \rangle = \frac{1}{24}(4 + 0 + 12 + 8 + 0) = 1, ⟨χV,χV′⟩=124(9−6+3+0−6)=0\langle \chi_V, \chi_{V'} \rangle = \frac{1}{24}(9 - 6 + 3 + 0 - 6) = 0。次数について 1+1+4+9+9=241 + 1 + 4 + 9 + 9 = 24。列の直交関係:列 (12)(12) は 1+1+0+1+1=4=24/61 + 1 + 0 + 1 + 1 = 4 = 24/6、列 (12)(34)(12)(34) は 1+1+4+1+1=8=24/31 + 1 + 4 + 1 + 1 = 8 = 24/3、列 (123)(123) は 1+1+1=3=24/81 + 1 + 1 = 3 = 24/8、列 (12)(12) と列 (1234)(1234) の内積は 1+1+0−1−1=01 + 1 + 0 - 1 - 1 = 0。

S4\mathfrak{S}_4 は立方体の回転群と同型である(4 本の対角線への作用)。回転群の R3\mathbb{R}^3 への自然な作用の指標は、回転角 θ\theta の回転のトレース 1+2cos⁡θ1 + 2\cos\theta から計算でき、面の中心を通る軸の周りの 90° 回転((1234)(1234) 型)で 11、180° 回転((12)(34)(12)(34) 型)で −1-1、対角線の周りの 120° 回転((123)(123) 型)で 00、辺の中点を通る軸の周りの 180° 回転((12)(12) 型)で −1-1 となる。これは χV′\chi_{V'} に一致する。

例 1.30(テンソル積の分解)S4\mathfrak{S}_4 の V⊗VV \otimes V の指標は χV2=(9,1,1,0,1)\chi_V^2 = (9, 1, 1, 0, 1) である。重複度を計算すると

⟨χV2,χtriv⟩=124(9+6+3+0+6)=1,⟨χV2,χsgn⟩=124(9−6+3+0−6)=0,⟨χV2,χW⟩=124(18+0+6+0+0)=1,⟨χV2,χV⟩=124(27+6−3+0−6)=1,⟨χV2,χV′⟩=124(27−6−3+0+6)=1\begin{aligned} \langle \chi_V^2, \chi_{\mathrm{triv}} \rangle &= \tfrac{1}{24}(9 + 6 + 3 + 0 + 6) = 1, & \langle \chi_V^2, \chi_{\mathrm{sgn}} \rangle &= \tfrac{1}{24}(9 - 6 + 3 + 0 - 6) = 0, \\ \langle \chi_V^2, \chi_W \rangle &= \tfrac{1}{24}(18 + 0 + 6 + 0 + 0) = 1, & \langle \chi_V^2, \chi_V \rangle &= \tfrac{1}{24}(27 + 6 - 3 + 0 - 6) = 1, \\ \langle \chi_V^2, \chi_{V'} \rangle &= \tfrac{1}{24}(27 - 6 - 3 + 0 + 6) = 1 \end{aligned}

なので V⊗V≅1⊕W⊕V⊕V′V \otimes V \cong \mathbf{1} \oplus W \oplus V \oplus V'(1\mathbf{1} は自明表現)である。次数は 1+2+3+3=91 + 2 + 3 + 3 = 9 で合っている。

1.9 既約表現の次数は位数を割る

S4\mathfrak{S}_4 の既約表現の次数 1,1,2,3,31, 1, 2, 3, 3 はどれも 24 を割る。これは偶然ではない。証明には整数性の議論を使う。

定義 1.31(代数的整数, algebraic integer)複素数 α\alpha が整数係数のモニック多項式の根であるとき、α\alpha を代数的整数という。

1 の冪根は xm−1x^m - 1 の根なので代数的整数である。代数的整数について詳しくは代数的整数論 第1章、可換環論 第4章を参照。ここでは必要な事実だけを証明する。

補題 1.32 α∈C\alpha \in \mathbb{C} について次は同値である。

  1. α\alpha は代数的整数である。
  2. C\mathbb{C} の有限生成な加法部分群 M≠0M \neq 0 で αM⊂M\alpha M \subset M となるものが存在する。

特に、代数的整数の和と積は代数的整数であり、有理数である代数的整数は整数である。

証明. 1 ⇒ 2:αn+an−1αn−1+⋯+a0=0\alpha^n + a_{n-1}\alpha^{n-1} + \dots + a_0 = 0 (ai∈Za_i \in \mathbb{Z}) なら M=Z+Zα+⋯+Zαn−1M = \mathbb{Z} + \mathbb{Z}\alpha + \dots + \mathbb{Z}\alpha^{n-1} とすればよい。2 ⇒ 1:MM の生成元を m1,…,mnm_1, \dots, m_n とすると αmi=∑jaijmj\alpha m_i = \sum_j a_{ij}m_j (aij∈Za_{ij} \in \mathbb{Z}) と書ける。A=(aij)A = (a_{ij}), m=t(m1,…,mn)≠0\boldsymbol{m} = {}^t(m_1, \dots, m_n) \neq 0 とすると (αI−A)m=0(\alpha I - A)\boldsymbol{m} = 0 なので det⁡(αI−A)=0\det(\alpha I - A) = 0 であり、これは α\alpha についての整数係数モニック多項式である。

α,β\alpha, \beta が代数的整数で、それぞれ次数 nn, n′n' のモニック多項式の根なら、M=∑0≤i<n, 0≤j<n′ZαiβjM = \sum_{0 \leq i < n,\ 0 \leq j < n'} \mathbb{Z}\alpha^i\beta^j は有限生成で、α+β\alpha + \beta 倍でも αβ\alpha\beta 倍でも保たれる。最後に、既約分数 p/qp/q がモニック多項式 xn+⋯+a0x^n + \dots + a_0 の根なら、qnq^n を掛けて pn=−q(an−1pn−1+⋯+a0qn−1)p^n = -q(a_{n-1}p^{n-1} + \dots + a_0q^{n-1}) となるので qq は pnp^n を割り、q=±1q = \pm 1 である。□\square

特に、指標の値 χ(g)\chi(g)(1 の冪根の和)はすべて代数的整数である。

補題 1.33 VV を既約表現、χ\chi をその指標、d=dim⁡Vd = \dim V とする。共役類 CC と gC∈Cg_C \in C に対し、ω(C)=∣C∣χ(gC)/d\omega(C) = \lvert C \rvert\chi(g_C)/d は代数的整数である。

証明. zC=∑g∈Cρ(g)z_C = \sum_{g \in C}\rho(g) とおく。共役 g↦hgh−1g \mapsto hgh^{-1} は CC の全単射なので ρ(h)zCρ(h)−1=zC\rho(h)z_C\rho(h)^{-1} = z_C であり、シューアの補題より zCz_C はスカラー倍 λC⋅idV\lambda_C \cdot \mathrm{id}_V である。トレースをとると λCd=∣C∣χ(gC)\lambda_C d = \lvert C \rvert\chi(g_C) なので λC=ω(C)\lambda_C = \omega(C)。次に、共役類 C,C′C, C' に対し

zCzC′=∑x∈C, y∈C′ρ(xy)=∑C′′aC′′zC′′z_C z_{C'} = \sum_{x \in C,\ y \in C'} \rho(xy) = \sum_{C''} a_{C''} z_{C''}

と書ける。ここで aC′′a_{C''} は g′′∈C′′g'' \in C'' を一つ固定したときの {(x,y)∈C×C′∣xy=g′′}\lbrace (x, y) \in C \times C' \mid xy = g'' \rbrace の元の個数であり、(x,y)↦(kxk−1,kyk−1)(x, y) \mapsto (kxk^{-1}, kyk^{-1}) が全単射を与えるので g′′g'' の選び方によらない。よって ω(C)ω(C′)=∑C′′aC′′ω(C′′)\omega(C)\omega(C') = \sum_{C''} a_{C''}\omega(C'') (aC′′∈Z≥0a_{C''} \in \mathbb{Z}_{\geq 0})。M=∑C′′Zω(C′′)M = \sum_{C''}\mathbb{Z}\omega(C'') は有限生成で、ω({1})=1\omega(\lbrace 1 \rbrace) = 1 を含むので 00 でなく、ω(C)M⊂M\omega(C)M \subset M を満たす。補題 1.32 より ω(C)\omega(C) は代数的整数である。□\square

定理 1.34 既約表現の次数は群の位数を割る。

証明. 既約指標 χ\chi、次数 dd について ⟨χ,χ⟩G=1\langle \chi, \chi \rangle_G = 1 を共役類ごとにまとめると

∣G∣=∑g∈Gχ(g)χ(g)‾=∑C∣C∣χ(gC)χ(gC)‾,よって∣G∣d=∑Cω(C)χ(gC)‾\lvert G \rvert = \sum_{g \in G}\chi(g)\overline{\chi(g)} = \sum_{C} \lvert C \rvert\chi(g_C)\overline{\chi(g_C)}, \qquad \text{よって} \quad \frac{\lvert G \rvert}{d} = \sum_{C} \omega(C)\overline{\chi(g_C)}

右辺の各項は代数的整数の積(χ(gC)‾=χ(gC−1)\overline{\chi(g_C)} = \chi(g_C^{-1}) も代数的整数)なので、∣G∣/d\lvert G \rvert/d は代数的整数であり、有理数でもあるから整数である。□\square

例 1.35(位数 p2p^2 の群は可換)pp を素数、∣G∣=p2\lvert G \rvert = p^2 とする。既約表現の次数は 1,p,p21, p, p^2 のいずれかで、∑di2=p2\sum d_i^2 = p^2 かつ自明表現が d=1d = 1 を与えるから、d=pd = p や d=p2d = p^2 は現れない。よって既約表現はすべて 1 次元で、その個数 p2p^2 は ∣Gab∣\lvert G^{\mathrm{ab}} \rvert に等しい(例 1.14)。したがって [G,G]=1[G, G] = 1、すなわち GG は可換である。

補足

より強く、既約表現の次数は [G:Z(G)][G : Z(G)] を割る(さらに可換正規部分群 AA について [G:A][G : A] を割る:伊藤の定理)。証明は例えば I. M. Isaacs, Character Theory of Finite Groups を参照。

1.10 誘導表現とフロベニウスの相互律

部分群 H≤GH \leq G の表現から GG の表現を作る方法があると、指標表の計算が格段に楽になる。置換表現 C[G/H]\mathbb{C}[G/H] は、HH の自明表現からこの方法で作られる典型例である。

定義 1.36(誘導表現, induced representation)H≤GH \leq G, (σ,W)(\sigma, W) を HH の表現とする。

Ind⁡HGW={f ⁣:G→W∣f(xh)=σ(h)−1f(x) (∀x∈G, h∈H)}\operatorname{Ind}_H^G W = \lbrace f\colon G \to W \mid f(xh) = \sigma(h)^{-1}f(x) \ (\forall x \in G,\ h \in H) \rbrace

に (g⋅f)(x)=f(g−1x)(g \cdot f)(x) = f(g^{-1}x) で GG を作用させたものを誘導表現という。

(g⋅f)(xh)=f(g−1xh)=σ(h)−1f(g−1x)(g \cdot f)(xh) = f(g^{-1}xh) = \sigma(h)^{-1}f(g^{-1}x) なので g⋅fg \cdot f は再び条件を満たし、これは GG の表現である。ff は左剰余類の代表系 x1,…,xrx_1, \dots, x_r(r=[G:H]r = [G : H])での値で決まり、その値は任意にとれるから dim⁡Ind⁡HGW=[G:H]dim⁡W\dim \operatorname{Ind}_H^G W = [G : H]\dim W である。GG の表現 VV を HH に制限したものを Res⁡HGV\operatorname{Res}_H^G V と書く。

命題 1.37(誘導指標の公式)

χInd⁡W(g)=∑xH∈G/H, x−1gx∈HχW(x−1gx)=1∣H∣∑x∈G, x−1gx∈HχW(x−1gx)\chi_{\operatorname{Ind}W}(g) = \sum_{xH \in G/H,\ x^{-1}gx \in H} \chi_W(x^{-1}gx) = \frac{1}{\lvert H \rvert}\sum_{x \in G,\ x^{-1}gx \in H} \chi_W(x^{-1}gx)

証明. 剰余類 xHxH 上に台をもつ ff の全体を WxHW_{xH} とすると、Ind⁡W=⨁xH∈G/HWxH\operatorname{Ind}W = \bigoplus_{xH \in G/H} W_{xH} であり、gg は WxHW_{xH} を WgxHW_{gxH} に写す。トレースに寄与するのは gxH=xHgxH = xH、すなわち x−1gx∈Hx^{-1}gx \in H となる剰余類だけである。そのような xHxH について、f↦f(x)f \mapsto f(x) は同型 WxH≅WW_{xH} \cong W を与え、

(g⋅f)(x)=f(g−1x)=f(x⋅x−1g−1x)=σ(x−1g−1x)−1f(x)=σ(x−1gx)f(x)(g \cdot f)(x) = f(g^{-1}x) = f\bigl(x \cdot x^{-1}g^{-1}x\bigr) = \sigma(x^{-1}g^{-1}x)^{-1}f(x) = \sigma(x^{-1}gx)f(x)

なので、gg の WxHW_{xH} 上の作用は σ(x−1gx)\sigma(x^{-1}gx) に対応し、トレースは χW(x−1gx)\chi_W(x^{-1}gx) である(代表元 xx を xhxh に替えても HH 内で共役になるだけで値は変わらない)。第 2 の等式は、各剰余類が ∣H∣\lvert H \rvert 個の xx からなることによる。□\square

定理 1.38(フロベニウスの相互律, Frobenius reciprocity)H≤GH \leq G、WW を HH の表現、VV を GG の表現とすると、線形同型

Hom⁡G(V,Ind⁡HGW)≅Hom⁡H(Res⁡HGV,W),Φ↦(v↦Φ(v)(1))\operatorname{Hom}_G(V, \operatorname{Ind}_H^G W) \cong \operatorname{Hom}_H(\operatorname{Res}_H^G V, W), \qquad \Phi \mapsto \bigl(v \mapsto \Phi(v)(1)\bigr)

がある。特に ⟨χV,χInd⁡W⟩G=⟨χRes⁡V,χW⟩H\langle \chi_V, \chi_{\operatorname{Ind}W} \rangle_G = \langle \chi_{\operatorname{Res}V}, \chi_W \rangle_H および ⟨χInd⁡W,χV⟩G=⟨χW,χRes⁡V⟩H\langle \chi_{\operatorname{Ind}W}, \chi_V \rangle_G = \langle \chi_W, \chi_{\operatorname{Res}V} \rangle_H が成り立つ。

証明. Φ\Phi を GG-線形とし、φ(v)=Φ(v)(1)\varphi(v) = \Phi(v)(1) とおく。h∈Hh \in H について、Φ(v)\Phi(v) が誘導表現の条件を満たすことから Φ(v)(h−1)=σ(h)Φ(v)(1)\Phi(v)(h^{-1}) = \sigma(h)\Phi(v)(1) であり、

φ(hv)=Φ(hv)(1)=(h⋅Φ(v))(1)=Φ(v)(h−1)=σ(h)φ(v)\varphi(hv) = \Phi(hv)(1) = \bigl(h \cdot \Phi(v)\bigr)(1) = \Phi(v)(h^{-1}) = \sigma(h)\varphi(v)

なので φ\varphi は HH-線形である。逆に HH-線形な φ\varphi に対し Φ(v)(x)=φ(x−1v)\Phi(v)(x) = \varphi(x^{-1}v) と定める。Φ(v)(xh)=φ(h−1x−1v)=σ(h)−1φ(x−1v)\Phi(v)(xh) = \varphi(h^{-1}x^{-1}v) = \sigma(h)^{-1}\varphi(x^{-1}v) より Φ(v)∈Ind⁡W\Phi(v) \in \operatorname{Ind}W、また Φ(gv)(x)=φ(x−1gv)=Φ(v)(g−1x)=(g⋅Φ(v))(x)\Phi(gv)(x) = \varphi(x^{-1}gv) = \Phi(v)(g^{-1}x) = (g \cdot \Phi(v))(x) より Φ\Phi は GG-線形である。Φ(v)(1)=φ(v)\Phi(v)(1) = \varphi(v) であり、逆に GG-線形な Φ\Phi から作った φ\varphi について φ(x−1v)=Φ(x−1v)(1)=(x−1⋅Φ(v))(1)=Φ(v)(x)\varphi(x^{-1}v) = \Phi(x^{-1}v)(1) = (x^{-1} \cdot \Phi(v))(1) = \Phi(v)(x) だから、2 つの対応は互いに逆である。指標の等式は、両辺の次元を定理 1.19 で書き直せば得られる(2 つ目は 1 つ目の複素共役であり、値は整数なので等しい)。□\square

例 1.39(置換表現)HH の自明表現から誘導すると、Ind⁡HG1\operatorname{Ind}_H^G \mathbf{1} は G/HG/H 上の関数の空間であり、G/HG/H 上の置換表現 C[G/H]\mathbb{C}[G/H] と同型である。命題 1.37 より、その指標は gg が固定する剰余類の個数である。フロベニウスの相互律から、既約表現 VV が C[G/H]\mathbb{C}[G/H] に現れる重複度は ⟨χRes⁡V,1⟩H=dim⁡VH\langle \chi_{\operatorname{Res}V}, 1 \rangle_H = \dim V^H に等しい。H={1}H = \lbrace 1 \rbrace とすれば正則表現が得られ、命題 1.22 が再び導かれる。

例 1.40 (1) G=S3G = \mathfrak{S}_3, H=A3=⟨(123)⟩≅Z/3H = \mathfrak{A}_3 = \langle (123) \rangle \cong \mathbb{Z}/3, WW を (123)↦ω(123) \mapsto \omega で定まる 1 次元表現とする。剰余類の代表を 1,(12)1, (12) とし、(12)(123)(12)−1=(213)=(132)(12)(123)(12)^{-1} = (213) = (132) に注意すると、命題 1.37 より

χInd⁡W(1)=2,χInd⁡W((12))=0,χInd⁡W((123))=ω+ω2=−1\chi_{\operatorname{Ind}W}(1) = 2, \qquad \chi_{\operatorname{Ind}W}((12)) = 0, \qquad \chi_{\operatorname{Ind}W}((123)) = \omega + \omega^2 = -1

となり、Ind⁡W\operatorname{Ind}W は標準表現に一致する。フロベニウスの相互律で検算すると、標準表現の A3\mathfrak{A}_3 への制限の指標は (2,−1,−1)(2, -1, -1) で、これは WW と W∗W^{\ast} の直和の指標 (1,ω,ω2)+(1,ω2,ω)(1, \omega, \omega^2) + (1, \omega^2, \omega) に等しいから、⟨χRes⁡V,χW⟩=1\langle \chi_{\operatorname{Res}V}, \chi_W \rangle = 1 である。

(2) G=D4G = D_4, H=⟨r⟩≅Z/4H = \langle r \rangle \cong \mathbb{Z}/4, WW を r↦ir \mapsto i で定まる表現とする。代表を 1,s1, s とすると s−1rs=r−1s^{-1}rs = r^{-1} なので χInd⁡W(r)=i+(−i)=0\chi_{\operatorname{Ind}W}(r) = i + (-i) = 0、χInd⁡W(r2)=−1+(−1)=−2\chi_{\operatorname{Ind}W}(r^2) = -1 + (-1) = -2、ss と srsr の共役は HH に入らないので値は 0。これは χ5\chi_5 であり、2 次元既約表現は誘導表現として得られる。

1.11 バーンサイドの定理

指標理論の最初の大きな応用は、純粋に群論的な次の定理であった。

定理 1.41(バーンサイドの paqbp^aq^b 定理, Burnside's theorem)p,qp, q を素数、a,b≥0a, b \geq 0 を整数とする。位数 paqbp^aq^b の群は可解群である。

証明は本書では扱わない(主張のみ)。鍵は「共役類の大きさが素数冪 pkp^k (k≥1k \geq 1) であるような元が存在すれば、GG は単純群でない」という補題であり、その証明に補題 1.33 の整数性 ∣C∣χ(g)/χ(1)∈Z‾\lvert C \rvert\chi(g)/\chi(1) \in \overline{\mathbb{Z}} と、1 の冪根の平均についての考察を用いる。詳しくは Isaacs の前掲書の第3章を参照。群論だけによる証明は、定理の発表(1904 年)から長い間知られなかった。

まとめ

  • 有限群の表現は、char⁡K∤∣G∣\operatorname{char} K \nmid \lvert G \rvert なら完全可約(マシュケ)。標数が位数を割る場合や無限群では成り立たない。
  • 既約表現の間の GG-線形写像は 0 か同型であり、代数閉体上では既約表現の自己準同型はスカラーだけ(シューア)。
  • 複素数体上、指標 χV=tr⁡ρ\chi_V = \operatorname{tr}\rho は類関数で、⟨χW,χV⟩G=dim⁡Hom⁡G(V,W)\langle \chi_W, \chi_V \rangle_G = \dim \operatorname{Hom}_G(V, W)。既約指標は類関数の空間の正規直交基底をなす。
  • 表現は指標で決まり、重複度は内積で計算できる。既約性の判定は ⟨χ,χ⟩=1\langle \chi, \chi \rangle = 1。
  • 正則表現にはすべての既約表現が次数と同じ回数現れ、∑di2=∣G∣\sum d_i^2 = \lvert G \rvert。既約表現の個数は共役類の個数に等しい。
  • 指標表は行・列の両方で直交する。D4D_4 と Q8Q_8 のように、同型でない群が同じ指標表をもつことがある。
  • 既約表現の次数は ∣G∣\lvert G \rvert を割る(代数的整数の議論)。
  • 誘導表現はフロベニウスの相互律 Hom⁡G(V,Ind⁡W)≅Hom⁡H(Res⁡V,W)\operatorname{Hom}_G(V, \operatorname{Ind}W) \cong \operatorname{Hom}_H(\operatorname{Res}V, W) をもち、指標は命題 1.37 で計算できる。

演習問題

問題 1.1 ★ G=Z/2×Z/2G = \mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/2 の指標表を書き、行と列の直交関係を確かめよ。また Z/n\mathbb{Z}/n の既約指標 χk(a)=ζka\chi_k(a) = \zeta^{ka} (ζ=e2πi/n\zeta = e^{2\pi i/n}) について ⟨χk,χl⟩=δkl\langle \chi_k, \chi_l \rangle = \delta_{kl} を直接確かめよ。

解答

G={(0,0),(1,0),(0,1),(1,1)}G = \lbrace (0,0), (1,0), (0,1), (1,1) \rbrace は可換なので共役類は 4 つ、既約指標は 1 次元で 4 つある。χε1,ε2(a,b)=ε1aε2b\chi_{\varepsilon_1, \varepsilon_2}(a, b) = \varepsilon_1^a\varepsilon_2^b (εi=±1\varepsilon_i = \pm 1) である。

代表元 (0,0)(0,0) (1,0)(1,0) (0,1)(0,1) (1,1)(1,1)
χ+,+\chi_{+,+} 11 11 11 11
χ−,+\chi_{-,+} 11 −1-1 11 −1-1
χ+,−\chi_{+,-} 11 11 −1-1 −1-1
χ−,−\chi_{-,-} 11 −1-1 −1-1 11

どの 2 行も 4 つの成分のうちちょうど 2 つで符号が一致するので内積は 14(2−2)=0\frac{1}{4}(2 - 2) = 0。列についても同様で、各列の絶対値の 2 乗和は 4=∣CG(g)∣4 = \lvert C_G(g) \rvert である。Z/n\mathbb{Z}/n については ⟨χk,χl⟩=1n∑a=0n−1ζ(k−l)a\langle \chi_k, \chi_l \rangle = \frac{1}{n}\sum_{a=0}^{n-1}\zeta^{(k-l)a} で、k=lk = l なら 1、k≠lk \neq l なら ζk−l≠1\zeta^{k-l} \neq 1 に対する等比数列の和 1n⋅ζ(k−l)n−1ζk−l−1=0\frac{1}{n} \cdot \frac{\zeta^{(k-l)n} - 1}{\zeta^{k-l} - 1} = 0 である。

問題 1.2 ★ S3\mathfrak{S}_3 の標準表現 VV について、V⊗VV \otimes V と V⊗sgn⁡V \otimes \operatorname{sgn} を既約表現の直和に分解せよ。

解答

χV2=(4,0,1)\chi_V^2 = (4, 0, 1)(類 1,(12),(123)1, (12), (123) の順)。類の大きさ 1,3,21, 3, 2 を使うと

⟨χV2,χtriv⟩=16(4+0+2)=1,⟨χV2,χsgn⟩=16(4−0+2)=1,⟨χV2,χV⟩=16(8+0−2)=1\langle \chi_V^2, \chi_{\mathrm{triv}} \rangle = \tfrac{1}{6}(4 + 0 + 2) = 1, \quad \langle \chi_V^2, \chi_{\mathrm{sgn}} \rangle = \tfrac{1}{6}(4 - 0 + 2) = 1, \quad \langle \chi_V^2, \chi_V \rangle = \tfrac{1}{6}(8 + 0 - 2) = 1

なので V⊗V≅1⊕sgn⁡⊕VV \otimes V \cong \mathbf{1} \oplus \operatorname{sgn} \oplus V(次数 1+1+2=41 + 1 + 2 = 4)。また χVχsgn=(2,0,−1)=χV\chi_V\chi_{\mathrm{sgn}} = (2, 0, -1) = \chi_V なので V⊗sgn⁡≅VV \otimes \operatorname{sgn} \cong V(系 1.20 の 4)。

問題 1.3 ★★ 表現 VV の対称積 Sym⁡2V\operatorname{Sym}^2 V と外積 Λ2V\Lambda^2 V の指標は χSym⁡2(g)=12(χ(g)2+χ(g2))\chi_{\operatorname{Sym}^2}(g) = \frac{1}{2}(\chi(g)^2 + \chi(g^2)), χΛ2(g)=12(χ(g)2−χ(g2))\chi_{\Lambda^2}(g) = \frac{1}{2}(\chi(g)^2 - \chi(g^2)) で与えられる(ρ(g)\rho(g) を対角化して固有値で確かめよ)。S4\mathfrak{S}_4 の標準表現 VV について Sym⁡2V\operatorname{Sym}^2 V と Λ2V\Lambda^2 V を分解し、例 1.30 と整合することを確かめよ。

解答

固有値を λ1,…,λd\lambda_1, \dots, \lambda_d とすると、Sym⁡2V\operatorname{Sym}^2 V の固有値は λiλj\lambda_i\lambda_j (i≤ji \leq j)、Λ2V\Lambda^2 V の固有値は λiλj\lambda_i\lambda_j (i<ji < j) である。∑i<jλiλj=12((∑λi)2−∑λi2)\sum_{i < j}\lambda_i\lambda_j = \frac{1}{2}((\sum\lambda_i)^2 - \sum\lambda_i^2) と ∑λi2=χ(g2)\sum \lambda_i^2 = \chi(g^2) から公式が従う。

類 1,(12),(12)(34),(123),(1234)1, (12), (12)(34), (123), (1234) の元の 2 乗はそれぞれ 1,1,1,(132),(13)(24)1, 1, 1, (132), (13)(24) なので、χV(g2)=(3,3,3,0,−1)\chi_V(g^2) = (3, 3, 3, 0, -1)。χV2=(9,1,1,0,1)\chi_V^2 = (9, 1, 1, 0, 1) と合わせて

χSym⁡2V=(6,2,2,0,0),χΛ2V=(3,−1,−1,0,1)\chi_{\operatorname{Sym}^2 V} = (6, 2, 2, 0, 0), \qquad \chi_{\Lambda^2 V} = (3, -1, -1, 0, 1)

後者は χV′\chi_{V'} に等しいので Λ2V≅V′\Lambda^2 V \cong V'。前者は χtriv+χW+χV=(1+2+3,1+0+1,1+2−1,1−1+0,1+0−1)=(6,2,2,0,0)\chi_{\mathrm{triv}} + \chi_W + \chi_V = (1 + 2 + 3, 1 + 0 + 1, 1 + 2 - 1, 1 - 1 + 0, 1 + 0 - 1) = (6, 2, 2, 0, 0) なので Sym⁡2V≅1⊕W⊕V\operatorname{Sym}^2 V \cong \mathbf{1} \oplus W \oplus V。V⊗V=Sym⁡2V⊕Λ2VV \otimes V = \operatorname{Sym}^2 V \oplus \Lambda^2 V なので、例 1.30 の 1⊕W⊕V⊕V′\mathbf{1} \oplus W \oplus V \oplus V' と一致する。

問題 1.4 ★★ H=S3⊂S4H = \mathfrak{S}_3 \subset \mathfrak{S}_4(4 を固定する置換)とする。Ind⁡HS4sgn⁡\operatorname{Ind}_H^{\mathfrak{S}_4}\operatorname{sgn} を、(a) フロベニウスの相互律、(b) 命題 1.37 の指標公式、の 2 通りで分解せよ。

解答

(a) S4\mathfrak{S}_4 の既約指標を HH に制限すると(類 1,(12),(123)1, (12), (123) の順)、χtriv↦(1,1,1)\chi_{\mathrm{triv}} \mapsto (1,1,1), χsgn↦(1,−1,1)\chi_{\mathrm{sgn}} \mapsto (1,-1,1), χW↦(2,0,−1)\chi_W \mapsto (2, 0, -1), χV↦(3,1,0)\chi_V \mapsto (3, 1, 0), χV′↦(3,−1,0)\chi_{V'} \mapsto (3, -1, 0)。これらと sgn⁡H=(1,−1,1)\operatorname{sgn}_H = (1, -1, 1) の内積(類の大きさ 1,3,21, 3, 2)は順に 16(1−3+2)=0\frac{1}{6}(1 - 3 + 2) = 0, 16(1+3+2)=1\frac{1}{6}(1 + 3 + 2) = 1, 16(2+0−2)=0\frac{1}{6}(2 + 0 - 2) = 0, 16(3−3+0)=0\frac{1}{6}(3 - 3 + 0) = 0, 16(3+3+0)=1\frac{1}{6}(3 + 3 + 0) = 1。よって Ind⁡sgn⁡≅sgn⁡⊕V′\operatorname{Ind}\operatorname{sgn} \cong \operatorname{sgn} \oplus V'(次数 1+3=4=[S4:S3]1 + 3 = 4 = [\mathfrak{S}_4 : \mathfrak{S}_3])。

(b) 剰余類 xS3x\mathfrak{S}_3 は x(4)x(4) で区別され、x−1gx∈S3x^{-1}gx \in \mathfrak{S}_3 は gg が x(4)x(4) を固定することと同値。x−1gxx^{-1}gx の符号は gg の符号に等しいので χInd⁡(g)=sgn⁡(g)⋅(g の固定点の個数)\chi_{\operatorname{Ind}}(g) = \operatorname{sgn}(g) \cdot (g \text{ の固定点の個数})、すなわち (4,−2,0,1,0)(4, -2, 0, 1, 0)。一方 χsgn+χV′=(1+3,−1−1,1−1,1+0,−1+1)=(4,−2,0,1,0)\chi_{\mathrm{sgn}} + \chi_{V'} = (1 + 3, -1 - 1, 1 - 1, 1 + 0, -1 + 1) = (4, -2, 0, 1, 0) で一致する。

問題 1.5 ★★ (a) D4D_4 と Q8Q_8 が同型でないことを示せ。(b) 2 次元既約指標 χ5\chi_5 について ν(χ5)=1∣G∣∑g∈Gχ5(g2)\nu(\chi_5) = \frac{1}{\lvert G \rvert}\sum_{g \in G}\chi_5(g^2) を G=D4G = D_4 と G=Q8G = Q_8 のそれぞれで計算せよ。(ν\nu はフロベニウス–シューア指標と呼ばれ、既約指標 χ\chi について、χ\chi が実数値でないとき 0、χ\chi が R\mathbb{R} 上で実現できるとき 1、実数値だが R\mathbb{R} 上で実現できないとき −1-1 であることが知られている。)

解答

(a) 位数 2 の元の個数は同型不変量である。D4D_4 では r2r^2 と 4 つの鏡映 s,sr,sr2,sr3s, sr, sr^2, sr^3 の 5 個、Q8Q_8 では −1-1 だけの 1 個なので、同型でない。

(b) D4D_4:g2g^2 は g=1,r2g = 1, r^2 と 4 つの鏡映で 11、g=r,r3g = r, r^3 で r2r^2。よって ∑gχ5(g2)=6⋅2+2⋅(−2)=8\sum_g \chi_5(g^2) = 6 \cdot 2 + 2 \cdot (-2) = 8、ν=1\nu = 1(実際、正方形の対称性として実行列で実現されている)。Q8Q_8:g=±1g = \pm 1 で g2=1g^2 = 1、他の 6 元で g2=−1g^2 = -1。よって ∑gχ5(g2)=2⋅2+6⋅(−2)=−8\sum_g \chi_5(g^2) = 2 \cdot 2 + 6 \cdot (-2) = -8、ν=−1\nu = -1。Q8Q_8 の 2 次元表現は実数値の指標をもつが、実行列では実現できない(四元数体 H\mathbb{H} 上の表現に由来する)。

問題 1.6 ★★ pp を素数、GG を位数 p3p^3 の非可換群とする。GG の既約表現の次数と個数を決定し、GG の共役類の個数が p2+p−1p^2 + p - 1 であることを示せ。p=2p = 2 のとき D4D_4, Q8Q_8 の指標表と整合することを確かめよ。

解答

pp-群の中心 Z(G)Z(G) は自明でない(類等式)。∣Z(G)∣=p2\lvert Z(G) \rvert = p^2 なら G/Z(G)G/Z(G) は位数 pp の巡回群になり GG は可換となって矛盾、∣Z(G)∣=p3\lvert Z(G) \rvert = p^3 も非可換性に反する。よって ∣Z(G)∣=p\lvert Z(G) \rvert = p。G/Z(G)G/Z(G) は位数 p2p^2 で可換(例 1.35)なので [G,G]⊂Z(G)[G, G] \subset Z(G)、非可換性から [G,G]≠1[G, G] \neq 1 なので [G,G]=Z(G)[G, G] = Z(G) で、∣Gab∣=p2\lvert G^{\mathrm{ab}} \rvert = p^2。よって 1 次元表現はちょうど p2p^2 個。残りの既約表現の次数 d>1d > 1 は p3p^3 の約数で、d2≤p3−p2<p4d^2 \leq p^3 - p^2 < p^4 だから d=pd = p。その個数 mm は p2+mp2=p3p^2 + mp^2 = p^3 より m=p−1m = p - 1。既約表現の総数 p2+p−1p^2 + p - 1 が共役類の個数に等しい(定理 1.23)。p=2p = 2 では 1 次元が 4 個、2 次元が 1 個、共役類が 5 個で、例 1.26, 1.27 と一致する。

問題 1.7 ★★★ 実数値をとる既約指標の個数は、C−1=CC^{-1} = C を満たす共役類 CC(実共役類)の個数に等しいことを示せ。これを用いて、Sn\mathfrak{S}_n の既約指標はすべて実数値であること、A4\mathfrak{A}_4 の実数値の既約指標は 2 個であることを確かめよ。

解答

指標表を h×hh \times h 行列 X=(χi(gj))X = (\chi_i(g_j)) とする。既約指標の複素共役 χi‾=χVi∗\overline{\chi_i} = \chi_{V_i^{\ast}} は再び既約指標なので、複素共役は行の置換を引き起こす:X‾=PX\overline{X} = PX(PP は置換行列)。一方 χ(g)‾=χ(g−1)\overline{\chi(g)} = \chi(g^{-1}) なので、複素共役は列の置換 C↦C−1C \mapsto C^{-1} でもある:X‾=XQ\overline{X} = XQ(QQ は置換行列)。第二直交関係より XX の列は直交して 0 でないので XX は正則であり、P=XQX−1P = XQX^{-1}。トレースをとると tr⁡P=tr⁡Q\operatorname{tr}P = \operatorname{tr}Q。tr⁡P\operatorname{tr}P は χi‾=χi\overline{\chi_i} = \chi_i となる ii の個数(実数値の既約指標の個数)、tr⁡Q\operatorname{tr}Q は C−1=CC^{-1} = C となる類の個数である。

Sn\mathfrak{S}_n では σ\sigma と σ−1\sigma^{-1} の巡回置換型が同じなので、すべての類が実であり、すべての既約指標が実数値である。A4\mathfrak{A}_4 では (123)−1=(132)(123)^{-1} = (132) は別の類に属する(例 1.28)ので、実共役類は {1}\lbrace 1 \rbrace と V4∖{1}V_4 \setminus \lbrace 1 \rbrace の 2 つであり、実際に実数値の既約指標は χ1\chi_1, χ4\chi_4 の 2 つである。

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