この章の目標
- 直積・半直積によって小さな群から大きな群を組み立て、逆に群を分解できる
- 有限生成アーベル群の基本定理を使って、与えられた位数のアーベル群を分類できる
- 交換子群と可解群を理解し、可解性が部分群・剰余群・拡大で保たれることを証明できる
- 対称群の巡回置換分解と共役類を理解し、An(n≥5)の単純性を証明できる
- 位数 8 以下の群を分類できる
前提:第2章(正規部分群、準同型定理、自己同型群)、第3章(群の作用、シローの定理、p 群)
整数が素数の積に分解されるように、群も「より小さな群」から組み立てられていると考えられる。最も単純な組み立て方は直積であり、正規部分群が片方だけの場合に一般化したものが半直積である。より一般に、正規部分群 N と剰余群 G/N から G を再構成する問題(拡大の問題)がある。
この観点で最も基本的な「部品」は、それ以上分解できない群、すなわち単純群である。本章では、有限生成アーベル群が巡回群の直積に分解されること(基本定理)、可換群を部品として積み上げられる群(可解群)の性質、そして n≥5 の交代群 An が可換でない単純群であることを学ぶ。最後の事実は、第9章で 5 次方程式に根の公式が存在しないことを示す際の群論的な核心となる。
4.1 直積
定義 4.1(直積)群 G1,…,Gn に対し、直積集合 G1×⋯×Gn に成分ごとの演算 (g1,…,gn)(h1,…,hn)=(g1h1,…,gnhn) を入れた群を、G1,…,Gn の(外部)直積 (direct product) という。可換群の場合は直和 (direct sum) とよび G1⊕⋯⊕Gn と書くこともある。
単位元は (e,…,e)、逆元は (g1−1,…,gn−1) である。(g1,…,gn)k=(g1k,…,gnk) より、各 gi が有限位数なら
ord(g1,…,gn)=lcm(ord(g1),…,ord(gn))
である。
命題 4.2 m,n∈N について、Z/mZ×Z/nZ≅Z/mnZ⟺gcd(m,n)=1。
証明. gcd(m,n)=1 なら (1,1) の位数は lcm(m,n)=mn なので、位数 mn の群が巡回群になる。gcd(m,n)=d>1 なら、どの元の位数も lcm(m,n)=mn/d<mn を割るので巡回群でない。□
これは第1章の中国剰余定理の群論的な言い換えである。たとえば Z/6Z≅Z/2Z×Z/3Z だが、Z/4Z≅Z/2Z×Z/2Z。
直積は、与えられた群を内側から分解するときにも現れる。
定理 4.3(内部直積の判定)群 G の正規部分群 H,K が H∩K={e} かつ HK=G をみたすならば、H×K→G, (h,k)↦hk は同型写像である。このとき G は H と K の内部直積であるという。
証明. まず h∈H, k∈K は可換である。実際、hkh−1k−1=(hkh−1)k−1∈K かつ =h(kh−1k−1)∈H なので、hkh−1k−1∈H∩K={e}。よって (hk)(h′k′)=hh′kk′ となり、写像は準同型である。hk=e なら h=k−1∈H∩K なので h=k=e、よって単射。HK=G より全射。□
帰納法により、G の正規部分群 N1,…,Nk が G=N1N2⋯Nk かつ各 i について Ni∩(N1⋯Ni−1Ni+1⋯Nk)={e} をみたせば、G≅N1×⋯×Nk となることもわかる。
例 4.4
- (Z/15Z)×≅(Z/3Z)××(Z/5Z)×≅Z/2Z×Z/4Z(中国剰余定理と原始根の存在による)。
- D6≅S3×Z/2Z:H=⟨r2,s⟩={e,r2,r4,s,r2s,r4s}≅D3≅S3 は指数 2 なので正規、K=⟨r3⟩=Z(D6)(第2章 問題 2.8)も正規で、r3∈/H より H∩K={e}。∣HK∣=6⋅2=12 なので HK=D6。
- Q8 は {1} でない 2 つの部分群の内部直積にならない。{1} でない部分群はすべて −1 を含む(第2章 例 2.35)ので、交わりが自明にならないからである。
- S3 も ⟨σ⟩ と ⟨τ⟩ の内部直積ではない(⟨τ⟩ が正規でない)。S3 は可換でないので、そもそも可換群 2 つの直積にはなりえない。
4.2 半直積
S3 では、N=⟨σ⟩ は正規、H=⟨τ⟩ は正規でないが、N∩H={e}, NH=S3 が成り立っている。直積との違いは、H の元が N の元と可換でなく、共役によって N を動かす(τστ−1=σ−1)点にある。この「H の N への作用」まで込めれば、G は N と H から復元できる。
定義 4.5(半直積, semidirect product)群 N,H と準同型写像 φ:H→Aut(N), h↦φh に対し、直積集合 N×H に演算
(n,h)(n′,h′)=(nφh(n′),hh′)
を入れたものを N⋊φH と書き、N と H の φ に関する(外部)半直積という。
定理 4.6
- N⋊φH は群であり、N~=N×{e} は正規部分群、H~={e}×H は部分群で、N~∩H~={e}, N~H~=N⋊φH。さらに (e,h)(n,e)(e,h)−1=(φh(n),e) が成り立つ。
- 逆に、群 G の正規部分群 N と部分群 H が N∩H={e}, NH=G をみたすとき、φh(n)=hnh−1 とおくと N⋊φH→G, (n,h)↦nh は同型写像である。このとき G は N と H の内部半直積であるといい、G=N⋊H と書く。
証明. (1) 結合法則:
((n,h)(n′,h′))(n′′,h′′)(n,h)((n′,h′)(n′′,h′′))=(nφh(n′)φhh′(n′′),hh′h′′),=(nφh(n′φh′(n′′)),hh′h′′)=(nφh(n′)φhφh′(n′′),hh′h′′)
で、φ が準同型なので φhφh′=φhh′ より両者は等しい。単位元は (e,e)、(n,h) の逆元は (φh−1(n−1),h−1) である((n,h)(φh−1(n−1),h−1)=(nφhφh−1(n−1),e)=(e,e)、逆順も同様)。第 2 成分への射影 N⋊φH→H は準同型で、その核が N~ だから N~ は正規。(n,h)=(n,e)(e,h) より N~H~ は全体。最後の式は (e,h)(n,e)=(φh(n),h) と (φh(n),h)(e,h−1)=(φh(n),e) から従う。
(2) φh=ch∣N は N の自己同型で、h↦φh は準同型である。f(n,h)=nh とおくと
f((n,h)(n′,h′))=f(nhn′h−1,hh′)=nhn′h−1hh′=(nh)(n′h′)=f(n,h)f(n′,h′)
で準同型。nh=e なら n=h−1∈N∩H なので単射、NH=G より全射である。□
φ が自明な準同型(すべての h で φh=id)なら、半直積は直積にほかならない。
例 4.7
- 二面体群:φ:Z/2Z→Aut(Z/nZ) を φ1(x)=−x で定めると、Dn≅Z/nZ⋊φZ/2Z。実際 Dn で N=⟨r⟩, H=⟨s⟩ とすると、N⊴Dn(指数 2)、N∩H={e}、NH=Dn で、srs−1=r−1 である。特に S3≅D3≅Z/3Z⋊Z/2Z。
- 対称群:n≥2 なら Sn=An⋊⟨(1 2)⟩(An は指数 2 で正規、(1 2)∈/An)。
- 位数 21 の非可換群:(Z/7Z)× で 2 の位数は 3(23=8≡1)。φ:Z/3Z→Aut(Z/7Z)≅(Z/7Z)× を φ1(x)=2x で定めると、Z/7Z⋊φZ/3Z は位数 21 の非可換群である(φ が自明でないので (0,1)(1,0)(0,1)−1=(2,0)=(1,0))。一般に素数 p<q で p∣q−1 なら、巡回群 (Z/qZ)×(位数 q−1)は位数 p の元をもつので、同様にして位数 pq の非可換群が作れる。第3章 定理 3.25 と合わせると、位数 pq の非可換群が存在するための必要十分条件は p∣q−1 である。
- アフィン群:Z/nZ⋊(Z/nZ)×(φa(x)=ax)は、Z/nZ 上の写像 x↦ax+b(a∈(Z/nZ)×, b∈Z/nZ)全体のなす群と同型である((b,a)↔(x↦ax+b))。位数は nφ(n) で、n=5 なら位数 20 の非可換群を得る。
- 半直積に分解できない例:Z/4Z は位数 2 の部分群を一つしかもたないので、{0} でない 2 つの部分群の交わりは自明にならない。Q8 も同様(例 4.4(3))。
4.3 有限生成アーベル群の基本定理
アーベル群については、直積による分解が完全に記述できる。
定理 4.8(有限生成アーベル群の基本定理, fundamental theorem of finitely generated abelian groups)A を有限生成アーベル群とする。
- (単因子型)A は、r≥0 と d1∣d2∣⋯∣dk をみたす 2 以上の整数 d1,…,dk により
A≅Zr×Z/d1Z×Z/d2Z×⋯×Z/dkZ
と表され、r と d1,…,dk は A から一意に定まる。r を A の階数 (rank)、di を単因子 (invariant factor) という。
2. (準素分解型)A は Zr と素数べき位数の巡回群 Z/peZ の有限個の直積に同型であり、現れる素数べき pe の組(重複を込める)は順序を除いて一意に定まる。
証明は第7章で、単項イデアル整域上の加群の構造定理の特別な場合として与える。(1) と (2) は中国剰余定理(命題 4.2)で互いに移り合う:d=p1e1⋯pses なら Z/dZ≅Z/p1e1Z×⋯×Z/psesZ。
例 4.9(位数 72 のアーベル群)72=23⋅32。準素分解型では、2 の部分は 3 の分割 3,2+1,1+1+1 に対応して Z/8, Z/4×Z/2, (Z/2)3 の 3 通り、3 の部分は 2 の分割に対応して Z/9, (Z/3)2 の 2 通りあるので(ここで Z/m は Z/mZ の略記)、同型類は 3×2=6 個である。単因子型に直すには、各素数の最大べきを掛け合わせて dk とし、残りから同様に dk−1 を作る:
| 準素分解型 |
単因子型 |
| Z/8×Z/9 |
Z/72 |
| Z/8×Z/3×Z/3 |
Z/3×Z/24 |
| Z/4×Z/2×Z/9 |
Z/2×Z/36 |
| Z/4×Z/2×Z/3×Z/3 |
Z/6×Z/12 |
| Z/2×Z/2×Z/2×Z/9 |
Z/2×Z/2×Z/18 |
| Z/2×Z/2×Z/2×Z/3×Z/3 |
Z/2×Z/6×Z/6 |
一般に、位数 pn のアーベル群の同型類の個数は n の分割の個数に等しい。
例 4.10(単元群の構造)(Z/16Z)×={1,3,…,15}(位数 8)では、32=9, 34=81≡1 より 3 の位数は 4 であり、72=92=152=1 より位数 2 の元が 3 個以上ある。巡回群の位数 2 の元はたかだか 1 個なので巡回群でなく、Z/2Z×Z/4Z に同型である((Z/2)3 は位数 4 の元をもたない)。
4.4 交換子群と可解群
群が可換からどれだけ離れているかを測るのが交換子群である。
定義 4.11(交換子と交換子群)a,b∈G に対し [a,b]=aba−1b−1 を交換子 (commutator) という。交換子全体で生成される部分群を [G,G] または D(G) と書き、G の交換子群 (commutator subgroup, derived subgroup) という。
[a,b]=e⟺ab=ba であり、[a,b]−1=[b,a] である。
命題 4.12
- [G,G]⊴G であり、G/[G,G] は可換群である。
- N⊴G について、G/N が可換 ⟺[G,G]⊂N。
- f:G→G′ が準同型なら f([G,G])⊂[G′,G′] であり、f が全射なら等号が成り立つ。
証明. (3) f([a,b])=[f(a),f(b)] より、f は交換子を交換子に写し、生成系の像は像の生成系である(命題 2.16)。全射なら G′ の交換子 [f(a),f(b)] はすべて f([G,G]) に属する。(1) cg([a,b])=[cg(a),cg(b)] なので、(3) を f=cg に適用して g[G,G]g−1⊂[G,G]。(2) G/N が可換 ⟺ 任意の a,b について abN=baN⟺a−1b−1ab∈N。すべての交換子(a−1b−1ab=[a−1,b−1] の形で全交換子を尽くす)が N に属することは [G,G]⊂N と同値である。N=[G,G] とすれば (1) の後半が得られる。□
すなわち G/[G,G] は G の「可換化」(abelianization) であり、G から可換群への準同型はすべて G/[G,G] を経由する。
例 4.13
- G が可換 ⟺[G,G]={e}。
- [Sn,Sn]=An(n≥2):Sn/An≅{±1} は可換なので [Sn,Sn]⊂An。n≥3 なら [(1 2),(2 3)]=(1 2)(2 3)(1 2)(2 3)=(1 3 2) で、番号を付け替えれば任意の長さ 3 の巡回置換は交換子である。An は長さ 3 の巡回置換で生成される(命題 4.20)ので等号が成り立つ。n=2 では両辺とも自明。
- [Q8,Q8]={±1}:[i,j]=iji−1j−1=ij(−i)(−j)=(ij)2=k2=−1 であり、Q8/{±1}≅V は可換。
- [A4,A4]=V:A4/V は位数 3 で可換なので ⊂V。[(1 2 3),(1 2 4)]=(1 2)(3 4)(確かめよ)であり、V の他の元も共役で得られるので等号が成り立つ。
定義 4.14(可解群, solvable group)D0(G)=G, Dk+1(G)=[Dk(G),Dk(G)] で定まる列 G=D0(G)⊃D1(G)⊃D2(G)⊃⋯ を G の交換子列(導来列, derived series)という。ある k で Dk(G)={e} となるとき、G を可解群 (solvable group) という。
命題 4.15 G が可解であるための必要十分条件は、部分群の列
G=G0⊃G1⊃⋯⊃Gm={e},Gi+1⊴Gi,Gi/Gi+1 は可換
が存在することである(このような列を可換な剰余群をもつ正規列という)。
証明. 可解なら交換子列そのものがこの条件をみたす(命題 4.12(1))。逆にこのような列があるとする。Gi/Gi+1 が可換なので命題 4.12(2) より [Gi,Gi]⊂Gi+1。帰納法で Di(G)⊂Gi を示す:D0(G)=G0 であり、Di(G)⊂Gi なら Di+1(G)=[Di(G),Di(G)]⊂[Gi,Gi]⊂Gi+1。よって Dm(G)⊂Gm={e}。□
各 Gi+1 は Gi の正規部分群であればよく、G 全体で正規である必要はない。
定理 4.16(可解性の遺伝)
- G が可解なら、その部分群 H も可解である。
- G が可解で N⊴G なら、G/N も可解である。
- N⊴G で N と G/N がともに可解なら、G も可解である。
証明. (1) H⊂G から帰納的に Dk(H)⊂Dk(G) が従う(交換子群の定義による)。Dk(G)={e} なら Dk(H)={e}。
(2) 自然な射影 π:G→G/N は全射なので、命題 4.12(3) を繰り返し使うと π(Dk(G))=Dk(G/N)。Dk(G)={e} なら Dk(G/N) は自明。
(3) Dk(G/N)={e}, Dl(N)={e} とする。(2) の証明より π(Dk(G))=Dk(G/N) は自明なので Dk(G)⊂N。すると (1) の証明と同様に Dk+j(G)=Dj(Dk(G))⊂Dj(N) で、j=l とすれば Dk+l(G)={e}。□
例 4.17
- アーベル群は可解。S3⊃A3⊃{e}(剰余群は Z/2, Z/3)より S3 は可解。Dn⊃⟨r⟩⊃{e} より Dn は可解。
- S4⊃A4⊃V⊃{e}(剰余群は Z/2, Z/3, V)より S4 は可解。
- p 群は可解:位数についての帰納法。G={e} なら Z(G)={e}(第3章 定理 3.16)で、Z(G) は可換、G/Z(G) は位数のより小さい p 群なので可解。定理 4.16(3) より G は可解。
- 位数 pq(p,q は素数)の群は可解:シロー部分群の一つが正規であり(第3章 定理 3.25。p=q なら位数 p2 で可換)、それと剰余群はいずれも素数位数の巡回群である。
補足
可解群については次の深い定理が知られている(証明は本教材の範囲を超える)。バーンサイドの定理:位数が paqb(p,q は素数)の群は可解である。ファイト–トンプソンの定理:奇数位数の群は可解である。
4.5 対称群と交代群
巡回置換分解
定理 4.18(巡回置換分解)任意の σ∈Sn は、互いに素な(共通の文字を含まない)巡回置換の積として表され、その表し方は積の順序と長さ 1 の巡回置換を除いて一意的である。
証明. 巡回群 ⟨σ⟩ を {1,…,n} に作用させ、軌道分解を考える。a を含む軌道 O について、σk(a)=a となる最小の k≥1 をとると、a,σ(a),…,σk−1(a) は相異なり(σi(a)=σj(a), 0≤i<j<k なら σj−i(a)=a で k の最小性に反する)、σm(a) は m を k で割った余りで決まるので、O={a,σ(a),…,σk−1(a)} である。σ の O 上での動きは巡回置換 cO=(a σ(a) ⋯ σk−1(a)) と一致する。軌道は互いに交わらないので、大きさ 2 以上の軌道 O にわたる cO は互いに素で、σ=∏OcO である(互いに素な巡回置換は可換なので積の順序によらない)。
一意性:σ=c1⋯cr を互いに素な長さ 2 以上の巡回置換への分解とすると、各 ci が動かす文字の集合は ⟨σ⟩ の軌道(大きさ 2 以上)であり、その上で ci は σ と一致する。よって ci は σ から決まる。□
互いに素な巡回置換の長さを(長さ 1 も含めて)大きい順に並べた n の分割を σ の型 (cycle type) という。互いに素な巡回置換は可換なので、σ の位数は巡回置換の長さの最小公倍数である。
例 4.19 σ∈S8 を 1↦4, 2↦6, 3↦3, 4↦7, 5↦8, 6↦2, 7↦1, 8↦5 とすると、1→4→7→1, 2→6→2, 5→8→5 より σ=(1 4 7)(2 6)(5 8)、型は (3,2,2,1)、位数は lcm(3,2,2)=6 である。
共役類
命題 4.20
- σ,σ′∈Sn が共役 ⟺ σ と σ′ の型が等しい。特に Sn の共役類の個数は n の分割の個数に等しい。
- (a1 a2 ⋯ ak)=(a1 ak)(a1 ak−1)⋯(a1 a2)。特に Sn は互換で生成され、長さ k の巡回置換の符号は (−1)k−1 である。
- n≥3 なら An は長さ 3 の巡回置換で生成される。
証明. (1) (⇒) は第3章 補題 3.12 を各巡回置換に適用すればよい。(⇐) σ,σ′ を長さ 1 も含めて互いに素な巡回置換の積に書き、長さの等しいものどうしを上下にそろえて並べる:
σ=(a1 ⋯ ak)(b1 ⋯ bl)⋯,σ′=(a1′ ⋯ ak′)(b1′ ⋯ bl′)⋯
各文字はちょうど 1 回ずつ現れるので、τ(ai)=ai′, τ(bj)=bj′, … で τ∈Sn が定まり、補題 3.12 より τστ−1=σ′。
(2) 右辺を右から順に施すと、a1↦a2、ai↦a1↦ai+1(2≤i<k)、ak↦a1 となり左辺に一致する(ai は (a1 ai) で初めて動き、その後の互換 (a1 ai+1) で ai+1 に移る)。定理 4.18 と合わせて、任意の置換は互換の積である。符号は準同型で互換の符号は −1 だから(線形代数 第4章)、sgn(a1 ⋯ ak)=(−1)k−1。
(3) 偶置換は偶数個の互換の積なので、互換 2 つの積が長さ 3 の巡回置換の積であることを示せばよい。相異なる a,b,c,d について
(a b)(a c)=(a c b),(a b)(c d)=(a b)(b c)⋅(b c)(c d)=(a b c)(b c d)
であり、(a b)(a b)=e である。□
型が 1m12m2⋯nmn(長さ k の巡回置換が mk 個)の置換の個数は
∏kkmkmk!n!
である(n 個の文字を並べて括弧を入れる n! 通りのうち、各巡回置換の開始位置の選び方 k 通りと、同じ長さの巡回置換の並べ方 mk! 通りの分だけ重複する)。S5 では
| 型 |
15 |
2⋅13 |
22⋅1 |
3⋅12 |
3⋅2 |
4⋅1 |
5 |
| 個数 |
1 |
10 |
15 |
20 |
20 |
30 |
24 |
| 符号 |
+ |
− |
+ |
+ |
− |
− |
+ |
で、合計 120。偶置換は 1+15+20+24=60 個である。
交代群の単純性
An の共役類は Sn の共役類と少し異なる。σ∈An の An での中心化群は CAn(σ)=CSn(σ)∩An であり、CSn(σ) が奇置換を含めば [CSn(σ):CAn(σ)]=2、含まなければ CAn(σ)=CSn(σ) である。軌道–固定部分群定理から、前者の場合 σ の Sn での共役類はそのまま An の共役類であり、後者の場合は同じ大きさの 2 つの An 共役類に分裂する。
例 4.21(A5 の類等式)A5 の元の型は 15, 22⋅1, 3⋅12, 5 である。(1 2)(3 4) の中心化群は奇置換 (1 2) を含み、(1 2 3) の中心化群は奇置換 (4 5) を含むので、これらの類は分裂しない。(1 2 3 4 5) の S5 での中心化群は位数 120/24=5 で ⟨(1 2 3 4 5)⟩ に一致し、奇置換を含まないので、24 個の長さ 5 の巡回置換は 12 個ずつの 2 つの類に分裂する。よって
60=1+15+20+12+12
正規部分群は共役類の和集合で {e} を含み、位数は 60 の約数である。1 に 15,20,12,12 のいくつかを加えた和で 60 の約数になるのは 1 と 60 だけであることが直接確かめられる(たとえば 1+15=16, 1+20=21, 1+12=13, 1+12+12=25, 1+15+20=36, 1+20+12+12=45 などはいずれも 60 を割らない)。したがって A5 は単純群である。
一般の n≥5 についても An は単純である。
定理 4.22(交代群の単純性)n≥5 ならば An は単純群である。
証明. 段階 1:n≥5 なら、長さ 3 の巡回置換はすべて An で共役である。実際、長さ 3 の巡回置換 c,c′ に対し命題 4.20(1) より σcσ−1=c′ となる σ∈Sn がある。σ が奇置換なら、c が動かさない 2 文字 d,e(n≥5 なので存在する)をとり σ′=σ(d e) とすると、(d e) は c と可換なので σ′cσ′−1=σcσ−1=c′ で、σ′ は偶置換である。
段階 2:N⊴An, N={e} とすると、N は長さ 3 の巡回置換を含む。これが示されれば、段階 1 より N は長さ 3 の巡回置換をすべて含み、命題 4.20(3) より N=An となって定理が従う。
σ∈N, σ=e をとり、互いに素な巡回置換の積に分解する。長さ 3 の巡回置換 ρ∈An に対し、N の正規性から ρσρ−1∈N、よって [ρ,σ]=ρσρ−1σ−1∈N である。補題 3.12 より σρ−1σ−1=(σρσ−1)−1 は ρ の文字を σ で写した巡回置換の逆なので、[ρ,σ] は具体的に計算できる。以下、a1,a2,… は相異なる文字とする。
(a) σ が長さ 4 以上の巡回置換 (a1 a2 a3 a4 ⋯) を含む場合:ρ=(a1 a2 a3) とすると
[ρ,σ]=(a1 a2 a3)(a2 a3 a4)−1=(a1 a2 a3)(a4 a3 a2)=(a1 a2 a4)∈N
(b) σ が長さ 3 の巡回置換を 2 個以上含む場合:σ=(a1 a2 a3)(a4 a5 a6)⋯ とし、ρ=(a1 a2 a4) とすると
[ρ,σ]=(a1 a2 a4)(a2 a3 a5)−1=(a1 a2 a4)(a5 a3 a2)=(a1 a2 a5 a3 a4)∈N
となり、(a) に帰着する。
(c) σ が長さ 3 の巡回置換をちょうど 1 個含み、他はすべて互換(または長さ 1)の場合:σ=(a1 a2 a3)τ(τ は互いに素な互換の積で (a1 a2 a3) と可換)とすると、σ2=(a1 a2 a3)2τ2=(a1 a3 a2)∈N。
(d) σ が互いに素な互換の積の場合:σ は偶置換なので互換は 2 個以上あり、σ=(a1 a2)(a3 a4)⋯ と書ける。ρ=(a1 a2 a3) とすると
π:=[ρ,σ]=(a1 a2 a3)(a2 a1 a4)−1=(a1 a2 a3)(a4 a1 a2)=(a1 a3)(a2 a4)∈N
n≥5 なので第 5 の文字 a5 がとれる。ξ=(a1 a3 a5) とすると、π は a1↔a3 を入れ替え a5 を固定するので
[ξ,π]=(a1 a3 a5)(a3 a1 a5)−1=(a1 a3 a5)(a5 a1 a3)=(a1 a5 a3)∈N
以上の (a)〜(d) で σ=e のすべての場合が尽くされ、いずれの場合も N は長さ 3 の巡回置換を含む。□
各場合の置換の積は、右の因子から順に文字を追えば確かめられる。たとえば (a) で右の (a4 a3 a2) を先に施すと、a1↦a1↦a2、a2↦a4↦a4、a4↦a3↦a1、a3↦a2↦a3 となる。
注意
n=4 では定理は成り立たない:V={e,(1 2)(3 4),(1 3)(2 4),(1 4)(2 3)} は A4 の正規部分群である(S4 の型 22 の共役類に単位元を加えたもの)。段階 2 の (d) で第 5 の文字が必要だったのはこのためである。A3≅Z/3Z は可換な単純群である。
系 4.23 n≥5 ならば Sn は可解でない。
証明. n≥5 なら An は可換でない((1 2 3)(2 3 4)=(2 3 4)(1 2 3):左辺は 1↦2、右辺は 1↦3)。[An,An] は An の正規部分群で、An が可換でないので {e} でない。単純性より [An,An]=An となり、交換子列は An で止まって {e} に達しない。よって An は可解でなく、定理 4.16(1) よりそれを含む Sn も可解でない。□
この系は、第9章で一般の 5 次方程式が冪根で解けないことを示す際の群論的な核心である。
4.6 組成列とジョルダン–ヘルダーの定理
定義 4.24(組成列, composition series)群 G の部分群の列
G=G0⊋G1⊋⋯⊋Gm={e},Gi+1⊴Gi
で、各剰余群 Gi/Gi+1 が単純群であるものを組成列といい、Gi/Gi+1 を組成因子 (composition factor)、m を組成列の長さという。
対応定理より、N⊴G について「G/N が単純 ⟺ N は G の真の正規部分群のうち極大」である。有限群 G={e} は極大な真の正規部分群 G1 をもつ(真の正規部分群は有限個しかない)ので、G1 に同じことを繰り返せば、有限群は必ず組成列をもつ。
定理 4.25(ジョルダン–ヘルダーの定理, Jordan–Hölder theorem)有限群 G の 2 つの組成列の長さは等しく、組成因子は(重複を込め、順序を除いて)同型を除き一致する。
証明は第 2・第 3 同型定理を用いた帰納法によるが、本書では省略する(参考文献の雪江『代数学1 群論入門』などを参照)。
例 4.26
- Z/12Z⊃⟨2⟩⊃⟨4⟩⊃{0} の組成因子は Z/2,Z/2,Z/3。別の組成列 Z/12Z⊃⟨3⟩⊃⟨6⟩⊃{0} の組成因子は Z/3,Z/2,Z/2 で、順序を除いて一致する。これは 12=2⋅2⋅3 という素因数分解の一意性の類似である(問題 4.10)。
- S4⊃A4⊃V⊃⟨(1 2)(3 4)⟩⊃{e} の組成因子は Z/2,Z/3,Z/2,Z/2。
- n≥5 なら Sn⊃An⊃{e} が組成列で、組成因子は Z/2 と An。
- 組成因子は群を決めない:Z/4Z と V の組成因子はどちらも Z/2,Z/2、Z/6Z と S3 の組成因子はどちらも Z/2,Z/3 である。「部品」から群を組み立てる方法(拡大)は一通りではない。
命題 4.27 有限群 G が可解であるための必要十分条件は、G の(ある、したがってすべての)組成列の組成因子がすべて素数位数の巡回群であることである。
証明. (⇐) 組成列そのものが可換な剰余群をもつ正規列なので、命題 4.15 より可解。(⇒) G が可解なら、組成列の各 Gi は可解(定理 4.16(1))で、Gi/Gi+1 も可解(同 (2))である。可解な単純群 S は可換である:[S,S] は S の正規部分群で、[S,S]=S なら交換子列が S で止まって可解性に反するので [S,S]={e}。可換な単純群は {e} 以外に真部分群をもたないので、e でない元の生成する巡回群に一致し、コーシーの定理(または定理 2.23)から素数位数の巡回群である。□
4.7 位数 8 以下の群の分類
これまでの道具を総動員して、小さな群をすべて決定する。
定理 4.28 位数 8 以下の群は、同型を除いて次のとおりである。
| 位数 |
群 |
個数 |
| 1 |
{e} |
1 |
| 2, 3, 5, 7 |
Z/pZ |
各 1 |
| 4 |
Z/4Z, Z/2Z×Z/2Z |
2 |
| 6 |
Z/6Z, S3 |
2 |
| 8 |
Z/8Z, Z/4Z×Z/2Z, (Z/2Z)3, D4, Q8 |
5 |
表の群どうしは互いに同型でない。
証明. 素数位数は第2章 系 2.30(2)、位数 4 は第3章 系 3.17、位数 6 は第3章 例 3.20 による。
位数 8 の可換群は、基本定理(3 の分割は 3,2+1,1+1+1)により最初の 3 つのどれかに同型であり、それらは位数 8, 4, 2 の元の有無で区別される。
G を位数 8 の非可換群とする。位数 8 の元があれば巡回群なので、元の位数は 1, 2, 4 のいずれかである。すべての元が x2=e をみたせば G は可換になる(第2章 問題 2.3)ので、位数 4 の元 a がある。N=⟨a⟩ は指数 2 なので正規である。b∈/N をとると G=N⊔bN、G=⟨a,b⟩。bab−1∈N は位数 4 なので a か a−1 であり、bab−1=a なら G は可換になるので bab−1=a−1。G/N は位数 2 なので b2∈N。b2 は b と可換なので、b2=ak とすると ak=bakb−1=a−k、すなわち a2k=e で b2∈{e,a2}。
- b2=e の場合:G={aibj∣0≤i<4,0≤j<2} で、積は関係式 a4=b2=e, bab−1=a−1 から aibj⋅ai′bj′=ai+(−1)ji′bj+j′ と決まる。D4 の r,s も同じ関係式をみたすので、aibj↦risj は同型写像である。
- b2=a2 の場合:Q8 で a=i, b=j とおくと i4=1, j2=−1=i2, jij−1=−i=i−1 が同じ関係式をみたす。G={aibj} の積はこの関係式(b2=a2 を使って b2 を消去)で決まるので、aibj↦iijj が同型写像を与える。
D4≅Q8 は第2章 問題 2.1 で示した。□
補足
位数 12 の群は 5 個(Z/12Z, Z/2Z×Z/6Z, A4, D6, および半直積 Z/3Z⋊Z/4Z)、位数 16 の群は 14 個あることが知られている。位数が素数べきの指数が大きくなると群の個数は急激に増える。
まとめ
- 内部直積の判定:H,K⊴G, H∩K={e}, HK=G なら G≅H×K。Z/m×Z/n≅Z/mn⟺gcd(m,n)=1。
- 半直積 N⋊φH は、H が N に自己同型で作用する状況を記述する。Dn≅Z/n⋊Z/2、Sn=An⋊Z/2、位数 pq の非可換群(p∣q−1)。
- 有限生成アーベル群は Zr×Z/d1×⋯×Z/dk(d1∣⋯∣dk)と一意に分解される(証明は第7章)。
- 交換子群 [G,G] は「G/N が可換」となる最小の正規部分群 N。可解群とは交換子列が {e} に達する群で、部分群・剰余群・拡大で閉じている。p 群、S4 以下の対称群は可解。
- 置換は互いに素な巡回置換の積に一意に分解され、Sn の共役類は型(n の分割)で分類される。An は長さ 3 の巡回置換で生成される。
- n≥5 なら An は単純群であり、したがって Sn は可解でない。A5 の単純性は類等式 60=1+15+20+12+12 からも見える。
- 組成因子は組成列によらない(ジョルダン–ヘルダー)。有限群が可解 ⟺ 組成因子がすべて素数位数の巡回群。
- 位数 8 以下の群:位数 4 は 2 個、6 は 2 個、8 は 5 個(可換 3 個と D4, Q8)。
演習問題
問題 4.1 ★ (Z/21Z)× を単因子型と準素分解型で表せ。
解答
中国剰余定理より (Z/21Z)×≅(Z/3Z)××(Z/7Z)× で、原始根の存在より右辺は Z/2Z×Z/6Z に同型。これが単因子型(2∣6)であり、準素分解型は Z/2Z×Z/2Z×Z/3Z。
検算:位数 φ(21)=12。x2≡1(mod21) の解は x≡±1(mod3), x≡±1(mod7) の組合せで 4 個(1,8,13,20)あり、巡回群でないことと合う。
問題 4.2 ★ σ∈S9 を 1↦3, 2↦5, 3↦4, 4↦1, 5↦9, 6↦2, 7↦8, 8↦7, 9↦6 で定める。σ の巡回置換分解・位数・符号と、S9 における σ の共役類の元の個数を求めよ。
解答
1→3→4→1, 2→5→9→6→2, 7→8→7 より σ=(1 3 4)(2 5 9 6)(7 8)。位数は lcm(3,4,2)=12。符号は (−1)2(−1)3(−1)1=1 で偶置換。
共役類は型 4⋅3⋅2 の置換全体で、その個数は 4⋅3⋅29!=24362880=15120。
問題 4.3 ★★ n≥3 とする。[Dn,Dn]=⟨r2⟩ を示し、Dn の可換化 Dn/[Dn,Dn] を n の偶奇に応じて求めよ。
解答
[r,s]=rsr−1s−1=r(sr−1s−1)=r⋅r=r2 なので ⟨r2⟩⊂[Dn,Dn]。⟨r2⟩ は ⟨r⟩ の部分群として s による共役(r2↦r−2)でも r による共役でも保たれるので正規であり、Dn/⟨r2⟩ は r,s で生成され s r s−1=r−1=r(r2=e)より可換。命題 4.12(2) より [Dn,Dn]⊂⟨r2⟩。
n が奇数なら ⟨r2⟩=⟨r⟩ で、Dn/[Dn,Dn]≅Z/2Z。n が偶数なら ⟨r2⟩ は位数 n/2 で、Dn/[Dn,Dn] は位数 4 で r2=s2=e なので Z/2Z×Z/2Z に同型。
問題 4.4 ★★ n≥5 のとき、Sn の正規部分群は {e}, An, Sn だけであることを示せ。
解答
N⊴Sn とすると N∩An⊴An なので、定理 4.22 より N∩An は {e} か An。後者なら An⊂N で、指数 2 より N=An または Sn。
前者なら、N→Sn/An の核 N∩An が自明なので ∣N∣≤2。N={e,τ} とすると、正規性より gτg−1=τ(すべての g)で τ∈Z(Sn)。しかし Z(Sn)={e}(n≥3)である:τ=e なら τ(a)=b=a となる a があり、c=a,b をとると (b c)τ(b c)−1 は a を c に写すので τ と異なる。よって N={e}。
問題 4.5 ★★ p を奇素数とする。Fp=Z/pZ 上の写像 x↦ax+b(a∈Fp×, b∈Fp)全体が合成で群 Aff(Fp) をなし、Aff(Fp)≅Fp⋊Fp× であることを示せ。さらに、この群が可解で、中心が自明であることを示せ。
解答
fa,b(x)=ax+b とおくと fa,b∘fa′,b′(x)=aa′x+ab′+b、すなわち fa,bfa′,b′=faa′,b+ab′。これは半直積 Fp⋊φFp×(φa(y)=ay)の積 (b,a)(b′,a′)=(b+ab′,aa′) と一致するので、(b,a)↦fa,b が同型を与える(fa,b は a,b から一意に決まる)。
平行移動全体 T={f1,b}≅Fp は正規部分群(半直積の N~)で、剰余群は Fp×。どちらも可換なので可解。
中心:fa,b が f1,1 と可換なら fa,b+a=fa,b+1 より a=1。f1,b が f2,0 と可換なら(p は奇数なので 2∈Fp× で 2=1)f2,b=f2,2b より b=0。よって中心は {f1,0}={id}。
問題 4.6 ★★ p を素数とし、G を位数 p3 の非可換群とする。∣Z(G)∣=p かつ G/Z(G)≅Z/pZ×Z/pZ、[G,G]=Z(G) を示せ。
解答
第3章 定理 3.16 より Z(G)={e}。G は非可換なので Z(G)=G。∣Z(G)∣=p2 なら G/Z(G) は位数 p で巡回群となり、第2章 問題 2.5 より G は可換で矛盾。よって ∣Z(G)∣=p。G/Z(G) は位数 p2 で、巡回群なら同様に矛盾するので、第3章 系 3.17 より Z/pZ×Z/pZ に同型。
G/Z(G) は可換なので [G,G]⊂Z(G)。G は非可換なので [G,G]={e}、∣Z(G)∣=p より [G,G]=Z(G)。(D4, Q8 で Z=[G,G]={e,r2}, {±1} となることと合う。)
問題 4.7 ★★ n≥2 のとき、Sn=⟨(1 2),(1 2 ⋯ n)⟩ を示せ。
解答
c=(1 2 ⋯ n) とおく。補題 3.12 より ck(1 2)c−k=(1+k 2+k)(k+1≤n−1)なので、隣接互換 (i i+1)(1≤i≤n−1)はすべて生成される部分群 H に属する。i<j のとき
(i j)=(j−1 j)(i j−1)(j−1 j)
(補題 3.12:(j−1 j) による共役は j−1 と j を入れ替える)なので、j−i についての帰納法ですべての互換が H に属する。命題 4.20(2) より互換は Sn を生成するので H=Sn。
問題 4.8 ★★ A5 は指数 2, 3, 4 の部分群をもたないことを示せ。
解答
H≤A5, [A5:H]=k∈{2,3,4} とする。剰余類 A5/H への作用から準同型 ρ:A5→Sk が得られ、その核は H に含まれる正規部分群(第3章 命題 3.9)なので A5 全体ではない。A5 の単純性より核は {e} で、ρ は単射。しかし 60>24≥∣Sk∣ なので矛盾。
(同様に、A5 の真部分群の指数は 5 以上である。指数 5 の部分群としては A4 がある。)
問題 4.9 ★★★ K を体とする。乗法群 K× の有限部分群 A は巡回群であることを、有限生成アーベル群の基本定理を用いて示せ。
解答
A≅Z/d1Z×⋯×Z/dkZ(d1∣⋯∣dk, di≥2)と表す。各成分の元の位数は dk を割るので、すべての a∈A について adk=1。すなわち A の ∣A∣=d1⋯dk 個の元はすべて多項式 xdk−1 の根である。体上の d 次多項式の根は高々 d 個である(第1章 定理 1.43 と同じ論法。一般の体での証明は第5章)から、d1⋯dk≤dk、すなわち k=1(A={1} の場合は k=0)で、A は巡回群である。
特に有限体の乗法群は巡回群である(第8章で基本定理を使わない証明を与える)。
問題 4.10 ★★ Z/nZ(n≥2)の組成因子は、n=p1p2⋯pm(素数の積、重複を許す)と素因数分解したときの Z/p1Z,…,Z/pmZ であることを示せ。また、ジョルダン–ヘルダーの定理から素因数分解の一意性が従うことを説明せよ。
解答
巡回群の部分群・剰余群は巡回群であり、巡回群が単純 ⟺ 素数位数(定理 2.23 による)。よって組成列 Z/nZ=G0⊋G1⊋⋯⊋Gm={0} の各組成因子は素数位数 qi の巡回群で、ラグランジュの定理より n=q1q2⋯qm。逆に n=p1⋯pm と分解されていれば、Gi=⟨p1⋯pi⟩(位数 n/(p1⋯pi))とおくと Gi/Gi+1 は位数 pi+1 の巡回群で、組成因子が Z/p1,…,Z/pm の組成列が得られる。
n が 2 通りに素数の積 p1⋯pm=p1′⋯pm′′ と表されたとすると、上の構成で 2 つの組成列が得られ、ジョルダン–ヘルダーの定理より組成因子は順序を除いて一致する。Z/p≅Z/p′ ⟺p=p′ だから、m=m′ で pi と pi′ は並べ替えを除いて一致する。