この章の目標
- 射影空間と斉次座標を使い、射影多様体をアフィン開集合で覆って調べられる
- 射影閉包・セグレ埋め込み・ヴェロネーゼ埋め込みを計算し、二次曲面上の 2 族の直線を説明できる
- ヒルベルト多項式の存在を証明し、次数と算術種数を計算できる
- ベズーの定理・完備性・グラスマン多様体を例で説明できる
前提:第1章、02-linear-algebra 第9章(外積:2.10 節)
この章でも k は代数閉体とし、S=k[x0,…,xn] とおく。
2.1 動機:無限遠点を付け加える
アフィン平面では交点の個数が安定しない。平行な 2 直線は交わらず、放物線 y=x2 と直線 x=0 は 1 点でしか交わらず、双曲線 xy=1 と x 軸は交わらない。「無限遠点」を付け加えると、平行線は無限遠で交わり、2 次曲線と直線はつねに(重複度込みで)2 点で交わるようになる(ベズーの定理 2.16)。また k=C のとき Cn はコンパクトでないが、射影空間 CPn はコンパクトである。コンパクト性の代数的な類似が完備性(2.9 節)であり、大域的な性質(関数は定数しかない、像は閉じている)の源になる。
2.2 射影空間と射影的零点定理
定義 2.1(射影空間, projective space)kn+1∖{0} を a∼λa(λ∈k×)で割った集合を n 次元射影空間 Pn という。a の類を斉次座標 (homogeneous coordinates) で [a0:⋯:an] と書く。
Ui={ai=0} とおくと Pn=U0∪⋯∪Un であり、Ui→An, [a]↦(a0/ai,…,an/ai)(ai/ai を除く)は全単射である。Pn=U0⊔{x0=0} で、{x0=0}≅Pn−1 を無限遠超平面という。たとえば P1=A1∪{∞}(∞=[0:1])である。
d 次斉次多項式 f は f(λa)=λdf(a) を満たすので、零点集合 V+(f)={[a]∣f(a)=0}⊂Pn が定まる。S=⨁d≥0Sd は次数付き環であり、斉次元で生成されるイデアルを斉次イデアル (homogeneous ideal) という。これは「f∈I の各斉次成分が I に属する」ことと同値である。S+=(x0,…,xn) を無縁イデアル (irrelevant ideal) という。
定義 2.2(射影多様体, projective variety)斉次イデアル I に対し V+(I) を I の斉次元の共通零点とする。この形の集合(射影的代数的集合)を閉集合とする位相を Pn のザリスキー位相という。既約な射影的代数的集合を射影多様体という。X⊂Pn に対し、X 上で 0 になる斉次多項式で生成されるイデアルを I+(X) と書く。
f∈Sd に f(1,x1,…,xn) を対応させる非斉次化と、g∈k[x1,…,xn] に gh=x0deggg(x1/x0,…,xn/x0) を対応させる斉次化により、U0 の閉集合と An の閉集合は U0→An で対応する。よって Ui≅An は同相であり、射影多様体 X は開集合 X∩Ui(アフィン代数的集合)で覆われる。
命題 2.3(射影的零点定理)I⊊S を斉次イデアルとする。
(1) V+(I)=∅⇔I⊃S+。
(2) V+(I)=∅ ならば I+(V+(I))=I。
したがって V+ と I+ は、Pn の空でない射影的代数的集合と、S+ を含まない斉次根基イデアルの間の全単射を与える。
証明. π:An+1∖{0}→Pn を射影とする。I=S は斉次なので定数項をもたず I⊂S+、よってアフィン空間での零点集合は V(I)={0}∪π−1(V+(I))(アフィン錐 (affine cone))である。(1) V+(I)=∅⇔V(I)⊂{0}⇔I=I(V(I))⊃(x0,…,xn)(第1章の零点定理)。(2) 正の次数の斉次多項式が V+(I) 上で 0 であることと V(I) 上で 0 であることは同値なので、零点定理より I+(V+(I)) の斉次生成元は I に属する。逆に I は斉次イデアルで(斉次イデアルの根基は斉次)、その斉次元は V+(I) 上で 0 である。□
2.3 アフィン開被覆と射影閉包
アフィン多様体 Y⊂An=U0 の Pn における閉包 Y を射影閉包 (projective closure) という。I+(Y) は {fh∣f∈I(Y)} で生成される(Hartshorne 第 I 章演習 2.9)。
例 2.4(円錐曲線の無限遠点)P2 の座標を [x:y:z] とし、z=0 を無限遠直線とする。
- 放物線 y=x2 の射影閉包は yz=x2 で、無限遠点は z=0⇒x=0 より [0:1:0] の 1 点(放物線は無限遠直線に接する)。
- 双曲線 xy=1 の射影閉包は xy=z2 で、無限遠点は [1:0:0], [0:1:0] の 2 点(漸近線の方向)。
- 円 x2+y2=1 の射影閉包は x2+y2=z2 で、無限遠点は [1:±i:0](円点)。
3 つの射影閉包は座標の一次変換で互いに移り合う(xy=z2 は x=u+iv, y=u−iv で u2+v2=z2 になる)。楕円・放物線・双曲線の区別は、無限遠直線との位置関係の違いにすぎない。
例 2.5(生成元の斉次化では足りない)ねじれ 3 次曲線 C=V(y−x2,z−x3)⊂A3 の射影閉包は、[w:x:y:z] を座標として [1:t:t2:t3]=[t−3:t−2:t−1:1] より無限遠点 [0:0:0:1] を 1 つ加えたものである。しかし生成元の斉次化 wy−x2, w2z−x3 の零点集合は、w=0 のとき x=0 だけを要求するので、直線 {w=x=0} 全体を含んでしまう。正しくは
C=V+(wy−x2, wz−xy, xz−y2)
であり、生成元は次の行列の 2 次小行列式である([s3:s2t:st2:t3] を代入すると確かに 0)。
(wxxyyz)
2.4 準射影多様体とその射
定義 2.6(多様体と射)射影多様体の開部分集合を準射影多様体 (quasi-projective variety) といい、この章では単に多様体という(アフィン多様体は U0⊂Pn を通じて多様体である)。多様体 X の開集合 U 上の関数 φ:U→k が正則であるとは、各点の近傍で、同じ次数の斉次多項式 g,h(h は 0 にならない)を使って φ=g/h と書けることをいう。多様体の間の連続写像 φ:X→Y は、Y の任意の開集合 V 上の正則関数 f について f∘φ が φ−1(V) 上正則になるとき射という。
注意 1.22 より、アフィン多様体の間ではこれは第1章の射と一致する。同じ次数の斉次多項式 f0,…,fm が X 上で共通零点をもたなければ、[f0:⋯:fm]:X→Pm は射である。実際 X∩{fj=0} 上でこれは Uj≅Am への写像 (fi/fj)i であり、成分は正則関数である。
例 2.7 ν:P1→C=V+(xz−y2)⊂P2, [s:t]↦[s2:st:t2] は同型である。逆写像は [x:y:z]↦[x:y](x=0 または y=0 で定義)と [x:y:z]↦[y:z](y=0 または z=0)を貼り合わせたもので、xz=y2 から両者は共通部分で一致する。点 [1:0:0] では前者しか、[0:0:1] では後者しか使えない。射影多様体の射は、一つの式では書けず局所的な式の貼り合わせになるのが普通である。
命題 2.8 n≥1 のとき O(Pn)=k。
証明. φ∈O(Pn) とする。U0≅An 上 φ は x1/x0,…,xn/x0 の多項式なので、φ=F0/x0d0(F0 は d0 次斉次で x0∤F0)と書ける。同様に U1 上 φ=F1/x1d1(x1∤F1)。U0∩U1 上で一致するので、S の分数体の中で F0x1d1=F1x0d0。S は一意分解整域で x0∤F0x1d1 だから d0=0、すなわち φ∣U0 は定数 c である。φ−c は稠密な開集合 U0 上で 0 なので、Pn 上で 0 である。□
2.5 セグレ埋め込みとヴェロネーゼ埋め込み
例 2.9(ヴェロネーゼ埋め込み, Veronese embedding)d 次単項式 xα(∣α∣=d)全体 N+1=(nn+d) 個を並べた νd:Pn→PN は、像の上への同型で、像は閉集合である(主張)。n=1, d=2 は例 2.7 の円錐曲線、n=1, d=3 は [s3:s2t:st2:t3] で、例 2.5 の射影的なねじれ 3 次曲線である。PN の超平面 ∑cαzα=0 の νd による引き戻しは Pn の d 次超曲面 ∑cαxα=0 である。この「d 次超曲面を超平面に変える」技法は何度も使われる。
命題 2.10(セグレ埋め込み, Segre embedding)N=(m+1)(n+1)−1 とし、PN の座標を zij(0≤i≤m, 0≤j≤n)とする。
σ:Pm×Pn→PN,([a],[b])↦[aibj]
は well-defined な単射であり、像は V+(zijzkl−zilzkj) に等しい。
証明. (aibj) は行列 abT=0 で、a,b のスカラー倍で全体がスカラー倍されるので well-defined。abT の階数は 1 で、その 0 でない列は a のスカラー倍、0 でない行は b のスカラー倍なので [a],[b] が復元でき、単射である。0 でない (m+1)×(n+1) 行列 Z が階数 1 であることは、2 次小行列式 zijzkl−zilzkj がすべて 0 であることと同値で、階数 1 の行列は abT の形に書ける。よって像はこの閉集合に一致する。□
像を Pm×Pn と同一視して射影多様体とみなす。第1章の例 1.5 と同じく、この位相は積位相ではない。
2.6 二次曲面上の直線
例 2.11(二次曲面, quadric surface)P1×P1 のセグレ像は、x=a0b0, y=a0b1, z=a1b0, w=a1b1 とおいて
Q=V+(xw−yz)⊂P3
である。Q は 2 つの直線族をもつ:La=σ({a}×P1) と Mb=σ(P1×{b})(いずれも P3 の直線)。σ の単射性から
- a=a′ なら La∩La′=∅、b=b′ なら Mb∩Mb′=∅
- La∩Mb={σ(a,b)} はちょうど 1 点
- Q の各点を通る直線は各族からちょうど 1 本
実数の図形では、一葉双曲面 x2+y2−z2=1 が 2 通りの直線族で織られている(線織面)ことに対応する。標数 =2 なら、非特異な二次曲面は座標変換で x02+x12+x22+x32=0 に移り、u=x0+ix1, v=x0−ix1, s=x2+ix3, t=x2−ix3 とおくと uv+st=0、すなわち Q の形になる。よって非特異な二次曲面はすべて P1×P1 に同型で、2 つの直線族をもつ。一方、二次錐 xy=z2(P3 内、w は自由)の直線は頂点を通る 1 族しかない。
2.7 ヒルベルト多項式と次数
定義 2.12(ヒルベルト関数, Hilbert function)射影的代数的集合 X⊂Pn に対し、S(X)=S/I+(X) を斉次座標環といい、hX(m)=dimkS(X)m をヒルベルト関数という。一般に次数付き S 加群 M に対し hM(m)=dimkMm とおく。
例 2.13 (1) hPn(m)=dimSm=(nm+n)。
(2) d 次の既約な超曲面 X=V+(f) では、完全列 0→S(−d)fS→S/(f)→0(S(−d)m=Sm−d)より、m≥d で
hX(m)=(nm+n)−(nm−d+n)
特に平面曲線(n=2)では hX(m)=dm+1−2(d−1)(d−2)。
(3) 射影的なねじれ 3 次曲線 C:斉次多項式 F が C 上で 0 ⇔ F(s3,s2t,st2,t3)=0 なので、S(C)m≅k[s,t]3m であり h(m)=3m+1。
定理 2.14(ヒルベルト)M を有限生成の次数付き S 加群とする。多項式 PM∈Q[t] がただ一つ存在して、十分大きいすべての m で hM(m)=PM(m) となる。PM をヒルベルト多項式 (Hilbert polynomial) という。
証明. 一意性は、多項式が無限個の点での値で決まることから明らか。存在を変数の個数 n+1 についての帰納法で示す(変数 0 個、すなわち S=k のとき、M は有限次元なので大きい m で hM(m)=0)。次数付き加群の完全列
0→K→M(−1)xnM→M/xnM→0
(K は xn 倍の核、M(−1)m=Mm−1)において、K と M/xnM は有限生成(S はネーター環)で xn で消えるので、k[x0,…,xn−1] 上の有限生成次数付き加群である。帰納法の仮定から、大きい m で
hM(m)−hM(m−1)=hM/xnM(m)−hK(m)
は多項式になる。差分が多項式に一致する関数は、それ自身多項式に一致する(二項係数 (it) を基底にとると (it)−(it−1)=(i−1t−1) から和分できる)。□
定理 2.15(主張)X⊂Pn を r 次元の射影的代数的集合とする。PX=PS(X) は r 次で、最高次係数は d/r!(d は正の整数)の形である。d=degX を X の次数 (degree)、pa(X)=(−1)r(PX(0)−1) を算術種数 (arithmetic genus) という。
degX は、一般の位置にある n−r 次元の線形部分空間と X との交点の個数に等しい。例:d 次超曲面の次数は d(例 2.13(2) の最高次の項は (n−1)!dmn−1)、ねじれ 3 次曲線は P=3m+1 より次数 3・算術種数 0、平面曲線は pa=2(d−1)(d−2)。最後の式は、第7章・第8章で証明する平面曲線の種数公式の最初の現れである。
2.8 ベズーの定理
定理 2.16(ベズーの定理, Bézout's theorem、主張)C=V+(f), D=V+(g)⊂P2 を共通成分をもたない d 次・e 次の曲線とする。p∈C∩D で OP2,p を p での局所環、f,g を p を含むアフィン座標で非斉次化したものとし、交点数 (intersection multiplicity) を ip(C,D)=dimkOP2,p/(f,g) と定めると
p∈C∩D∑ip(C,D)=de
証明は Fulton, Algebraic Curves 第 5 章や Hartshorne 第 I 章 7 節を参照。特に C∩D=∅ で、交点は高々 de 個である。
例 2.17 (1) 平行な 2 直線は無限遠で 1 点で交わる。(2) 放物線 yz=x2 と接線 y=0:交点は [0:0:1] だけで、z=1 の座標で i=dimk[x,y](x,y)/(y−x2,y)=dimk[x]/(x2)=2=1⋅2。(3) 2 つの円 x2+y2=z2 と x2+y2=2xz(中心 (1,0)、半径 1):差をとると z(2x−z)=0。z=0 から円点 [1:±i:0]、z=2x から [1:±3:2] の計 4 点で、2⋅2=4 と合う。円どうしが実平面で 2 点しか交わらないのは、残りの 2 点がすべての円が通る円点にあるからである。
2.9 完備性
定理 2.18(射影多様体の完備性、主張)X を射影多様体、Y を多様体とすると、射影 X×Y→Y は閉写像である。特に射影多様体の射による像は閉集合である。
証明は Hartshorne 第 II 章 4 節(固有射として)を参照。スキームの言葉での扱いは第5章で述べる。X=A1 では成り立たない:A1×A1→A1 による閉集合 V(xy−1) の像は A1∖{0} で、閉でない。
系 2.19 射影多様体 X について O(X)=k。特に射影多様体からアフィン多様体への射は定数写像である。
証明. φ∈O(X) は射 X→A1⊂P1 を定め、定理 2.18 より像は P1 の既約な閉集合で ∞ を含まない。P1 の真の閉集合は有限集合なので、像は 1 点である。後半は座標関数に適用すればよい。□
2.10 グラスマン多様体
例 2.20(グラスマン多様体, Grassmannian)kn の r 次元部分空間全体を Gr(r,n) とする(Gr(1,n)=Pn−1)。W の基底 w1,…,wr に対し [w1∧⋯∧wr]∈P(⋀rkn) を対応させる。基底を変えると外積は行列式倍されるだけなので well-defined で、これをプリュッカー埋め込み (Plücker embedding) という。座標は wi を並べた r×n 行列の r 次小行列式 pI(I は r 元部分集合)である。pI=0 となる W は、列 I を単位行列にする行基本変形でただ一つの行列 (Er∣A)(列を並べ替えて)で表されるので、この開集合は Ar(n−r) と同一視できる。よって dimGr(r,n)=r(n−r) である(像が閉集合であることは主張として認める)。
Gr(2,4) は P3 の直線全体であり、プリュッカー座標 pij(1≤i<j≤4)について、標数 =2 なら ω∈⋀2k4 が分解可能 ⇔ω∧ω=0 であることから(ω∧ω は下の式の 2 倍。一般の標数でも結論は同じ)、Gr(2,4) は P5 の二次超曲面
p12p34−p13p24+p14p23=0
(クラインの二次曲面)である。与えられた直線と交わる直線の全体はその超平面切断になり、「一般の位置にある 4 本の直線すべてと交わる直線はちょうど 2 本ある」という古典的な数え上げは、4 次元の二次超曲面(次数 2)と 4 枚の超平面の交わりの点の個数として理解できる(シューベルト・カルキュラス)。
まとめ
- 射影空間 Pn はアフィン空間 Ui≅An で覆われ、射影多様体はアフィン多様体を貼り合わせたものとみなせる。
- 射影的零点定理:空でない射影的代数的集合 ↔ S+ を含まない斉次根基イデアル。
- 射影閉包は I(Y) の全元の斉次化で定まる(生成元だけでは足りない)。
- セグレ埋め込みで積 Pm×Pn が、ヴェロネーゼ埋め込みで d 次超曲面が超平面切断として扱える。非特異な二次曲面は P1×P1 で 2 族の直線をもつ。
- ヒルベルト多項式は存在し、次元・次数・算術種数を与える。平面曲線の算術種数は (d−1)(d−2)/2。
- ベズーの定理:交点数の和 =de。完備性:射影多様体の像は閉で、大域的な正則関数は定数だけである。
演習問題
問題 2.1 ★ アフィン曲線 y=x3 の射影閉包の無限遠点を求め、そこが特異点であることを示せ。
解答
射影閉包は yz2=x3。z=0 とすると x=0 なので無限遠点は [0:1:0] だけである。y=1 のアフィン座標 (x,z) では曲線は z2=x3 となり、これは原点に尖点をもつ(例 1.33(1))。よって [0:1:0] は特異点である。アフィン部分が非特異でも、射影閉包は無限遠で特異になりうる。
問題 2.2 ★ 非特異二次曲面 Q⊂P3 のヒルベルト多項式を二通りに計算し、degQ=2, pa(Q)=0 を確かめよ。
解答
例 2.13(2) で n=3, d=2 とすると
hQ(m)=(3m+3)−(3m+1)=6(m+1)((m+3)(m+2)−m(m−1))=(m+1)2
一方 Q=σ(P1×P1) の m 次斉次式は、(a,b) について双次数 (m,m) の多項式 ∑c a0ia1m−ib0jb1m−j に対応し、その空間の次元は (m+1)2 で一致する。P(m)=m2+2m+1 の最高次係数は 1=2/2! なので degQ=2、pa=(−1)2(P(0)−1)=0。
問題 2.3 ★★ 3 次曲線 E=V+(y2z−x3+xz2)⊂P2 と直線 y=0, z=0 の交点と交点数をそれぞれ求め、ベズーの定理を確かめよ(標数 =2)。
解答
y=0:x3−xz2=x(x−z)(x+z)=0 より交点は [0:0:1], [1:0:1], [−1:0:1] の 3 点。どれも z=1 の座標で O/(y,x(x−1)(x+1)) が 1 次元なので交点数 1、合計 3。
z=0:x3=0 より交点は [0:1:0] だけ。y=1 の座標 (x,z) で曲線は z−x3+xz2=0 なので
Op/(z−x3+xz2,z)≅k[x](x)/(x3)
は 3 次元で、交点数は 3。合計はどちらも 3⋅1=3 である。無限遠直線は [0:1:0] で E と 3 重に接する(変曲点)。
問題 2.4 ★★ X={p1,…,pr}⊂Pn を相異なる r 点とする。m≥r−1 で hX(m)=r となることを示し、PX=r を結論せよ。
解答
pi の代表元 vi をとり、評価写像 ev:Sm→kr, F↦(F(v1),…,F(vr)) を考える。核は I+(X)m なので hX(m)=rankev。各 j=i について pj を通り pi を通らない超平面 ℓij をとり、Fi=∏j=iℓij⋅xcm−r+1(xc は pi で 0 でない座標)とおくと、Fi は m 次で Fi(vj)=0(j=i), Fi(vi)=0。よって ev は全射で hX(m)=r。したがって PX=r(0 次元、次数 r)である。
問題 2.5 ★★ 2×4 行列の行を a,b とし pij=aibj−ajbi とおく。(1) プリュッカー関係式 p12p34−p13p24+p14p23=0 を確かめよ。(2) p12=0 の部分が A4 と同一視できることを示せ。
解答
(1) ω=a∧b=∑i<jpijei∧ej について ω∧ω=(a∧b)∧(a∧b)=0 であり、一方 ei∧ej∧ek∧el を e1∧e2∧e3∧e4 で表すと ω∧ω=2(p12p34−p13p24+p14p23)e1∧e2∧e3∧e4。標数 =2 ならこれで示された(一般の標数では両辺を ai,bj の多項式として展開すると、整数係数の恒等式として 0 になることが確かめられる)。
(2) p12=0 なら左の 2×2 小行列が可逆なので、行基本変形(部分空間を変えない)で行列はただ一つの形
(1001cedf)
になる。逆にこの形の行列は p12=1 の部分空間を定める。よってこの開集合は (c,d,e,f)∈A4 と一対一に対応し、dimGr(2,4)=4 である。
問題 2.6 ★★★ (1) P2 の任意の 2 曲線 V+(f), V+(g)(f,g は正の次数の斉次多項式)は交わることを、次元論を使って示せ。(2) P1×P1≅P2 を示せ。
解答
(1) A3 で V(f,g) を考える。(f,g)⊂S+ なので (f,g) を含む極小素イデアル p が存在し、クルルの標高定理(2 元で生成されるイデアルの極小素イデアルの高さは 2 以下、13-commutative-algebra 第5章)と定理 1.26(2) より dimV(p)≥3−2=1。斉次イデアルの極小素イデアルは斉次なので、原点を含む錐 V(p) は 1 次元以上であり、原点以外の点 v を含む。[v]∈V+(f)∩V+(g) である。
(2) P1×P1 の La, La′(a=a′)は交わらない 1 次元の既約閉集合である(例 2.11)。同型 P1×P1≅P2 があれば、これらは P2 の交わらない 1 次元の既約閉集合に写る。P2 の 1 次元既約閉集合 Y は、I+(Y) が S=k[x,y,z] の高さ 1 の斉次素イデアルで、一意分解整域では高さ 1 の素イデアルは単項(既約元で生成)なので Y=V+(f) の形である。これは (1) に反する。