この章の目標
- 層のコホモロジーを導来関手として定義し、長完全列を使って計算できる
- チェック・コホモロジーを計算し、アフィン被覆では導来関手のコホモロジーと一致することを使える
- チェック複体を使って Pn 上の O(m) のコホモロジーを計算できる
- オイラー標数・ヒルベルト多項式・セール双対性を使い、平面曲線の種数 (d−1)(d−2)/2 を導ける
前提:第3章、第6章、12-category-homological-algebra 第4章・第5章(導来関手)。09-algebraic-topology 第6章 の特異コホモロジーを知っていると比較ができる。
7.1 動機:局所から大域への障害
層の完全列 0→F′→F→F′′→0 に対し、大域切断の列 0→Γ(F′)→Γ(F)→Γ(F′′) は完全だが、右端は全射とは限らない(例 3.14)。P1 上で「2 点 p,q で指定した値をとる関数」を求める問題がその典型である。そこで長完全列
0→H0(F′)→H0(F)→H0(F′′)→H1(F′)→H1(F)→⋯
を作る群 Hi が欲しい。H1(F′) が 0 なら持ち上げの障害は消える。さらに Hi の次元は多様体の重要な不変量を与える。曲線 C の種数は dimH1(C,OC) であり、∑(−1)idimHi(OX(m)) は第2章のヒルベルト多項式になる。
7.2 導来関手としてのコホモロジー
定理 7.1(主張)位相空間 X 上のアーベル群の層の圏 Ab(X) は十分多くの入射的対象をもつ。環付き空間上の OX 加群の圏も同様である。
証明は Hartshorne 第 III 章命題 2.2, 系 2.3 を参照。これにより次の定義ができる。
定義 7.2(層のコホモロジー, sheaf cohomology)F∈Ab(X) の入射的分解 0→F→I0→I1→⋯ をとり、Hi(X,F)=Hi(Γ(X,I∙)) とおく。すなわち Hi(X,−)=RiΓ(X,−) は大域切断関手の右導来関手である。
導来関手の一般論(12-category-homological-algebra 第5章)から、Hi は分解のとり方によらず、H0=Γ、入射的な層では i>0 で Hi=0、そして短完全列から長完全列が得られる。OX 加群の圏の入射的分解で計算しても同じ群が得られる(Hartshorne 第 III 章命題 2.6)ので、Hi(X,F) は Γ(X,OX) 加群である。
7.3 脆弱層
入射的分解は具体的に計算できないので、コホモロジーが消える扱いやすい層を用意する。
定義 7.3(脆弱層, flasque sheaf)すべての開集合 U について制限 F(X)→F(U) が全射であるとき、F は脆弱であるという。
例 7.4 (1) 既約な空間上の定数層 A は脆弱である:既約空間の空でない開集合は既約、特に連結なので A(U)=A となり、制限は恒等写像である。(2) 摩天楼層は脆弱。(3) G(U)=∏p∈UFp(不連続な切断の層)は脆弱で、F→G, s↦(sp)p は単射である。
命題 7.5 層の完全列 0→F′→FβF′′→0 で F′ が脆弱なら、任意の開集合 U で F(U)→F′′(U) は全射である。さらに F も脆弱なら F′′ も脆弱である。
証明. t∈F′′(U) とする。開集合 V⊂U と s∈F(V) で β(s)=t∣V となる組 (V,s) の全体に、延長による順序を入れる。鎖の上限は貼り合わせで得られるので、ツォルンの補題より極大元 (V,s) がある。V=U と仮定し p∈U∖V をとる。β は茎で全射なので、p の近傍 W⊂U と s′∈F(W) で β(s′)=t∣W となるものがある。V∩W 上 β(s−s′)=0 なので s−s′ はある r∈F′(V∩W) の像であり、脆弱性から r は r~∈F′(W) に延びる。s′+r~ は V∩W 上で s と一致するので、V∪W 上の切断に貼り合わさり、極大性に反する。後半:t∈F′′(V) を F(V) に持ち上げ、脆弱性で F(X) に延ばして β で写せばよい。□
命題 7.6 脆弱層 F について、i>0 で Hi(X,F)=0。
証明. F を入射的な層 I に埋め込み、G=I/F とおく。入射的な層は脆弱であり(Hartshorne 第 III 章補題 2.4)、命題 7.5 より G も脆弱で Γ(I)→Γ(G) は全射である。長完全列 Γ(I)→Γ(G)→H1(F)→H1(I)=0 より H1(F)=0。i≥2 では Hi(F)≅Hi−1(G) なので、脆弱層すべてについての i に関する帰納法で結論を得る。□
したがって脆弱層による分解でコホモロジーが計算できる。例 7.4(1) と合わせると、既約な空間上の定数層のザリスキー位相でのコホモロジーは i>0 で消える。PC1 は複素位相では球面 S2 で H2(S2;Z)≅Z だが、ザリスキー位相の H2(Z) は 0 である。ザリスキー位相は粗すぎて位相的な情報を捉えられず、これが第9章のエタール・コホモロジーの動機になる。
定理 7.7(グロタンディークの消滅定理、主張)X を n 次元のネーター位相空間とすると、任意の F∈Ab(X) と i>n について Hi(X,F)=0。
7.4 チェック・コホモロジー
定義 7.8(チェック複体, Čech complex)U=(Ui)i∈I を X の開被覆とし、I に整列順序を固定する。Ui0⋯ip=Ui0∩⋯∩Uip とおき、
Cp(U,F)=i0<⋯<ip∏F(Ui0⋯ip),(dα)i0⋯ip+1=k=0∑p+1(−1)kαi0⋯ik⋯ip+1Ui0⋯ip+1
と定める。d2=0 であり、このコホモロジーを Hˇp(U,F) と書く。
層の公理から Hˇ0(U,F)=Γ(X,F) である。
例 7.9(円周)S1 を 2 つの開弧 U0,U1 で覆い、U01 が 2 つの連結成分をもつようにする。定数層 Z について C0=Z2, C1=Z(U01)=Z2, d(a,b)=(b−a,b−a) なので、Hˇ0=Z, Hˇ1=Z2/{(c,c)}≅Z。これは S1 の特異コホモロジー H1(S1;Z)≅Z に一致する。
例 7.10(射影直線)Pk1 を U0=Speck[t], U1=Speck[t−1] で覆うと、O のチェック複体は k[t]×k[t−1]→k[t,t−1], (f,g)↦g−f である。任意のローラン多項式は t の多項式と t−1 の多項式の差に書けるので Hˇ1=0、また Hˇ0=k[t]∩k[t−1]=k。
定理 7.11(主張)X をネーター的な分離的スキーム、U をアフィン開被覆、F を準連接層とする。すべての p で自然な同型 Hˇp(U,F)≅Hp(X,F) がある。
証明は Hartshorne 第 III 章定理 4.5 を参照。分離性によりアフィン開集合の共通部分がアフィンになり(命題 5.16)、次節の消滅定理がすべての Ui0⋯ip に適用できることが要点である。また変換関数の議論(6.3 節)から Pic(X)≅H1(X,OX×) が成り立つ。
7.5 アフィンスキーム上の消滅
定理 7.12(セール、主張)X をアフィンスキーム、F を準連接層とすると、i>0 で Hi(X,F)=0。逆に、ネータースキーム X で、すべての連接なイデアル層 I について H1(X,I)=0 ならば、X はアフィンである(セールの判定法)。
証明は Hartshorne 第 III 章定理 3.5, 3.7 を参照(ネーターの場合)。アフィンスキーム上で「準連接層の全射は大域切断で全射」ということであり、定理 6.5(M↦M の完全性)の裏返しである。
例 7.13(A2∖{0})U=Ak2∖{0} を D(x),D(y) で覆う。U は分離的で D(x)∩D(y)=D(xy) はアフィンなので、定理 7.11 より
H1(U,O)=k[x,y]xy/(k[x,y]x+k[x,y]y)
であり、これは i<0 かつ j<0 の単項式 xiyj で張られる無限次元空間である。H1=0 なので定理 7.12 より U はアフィンでない(問題 4.3 の別証明)。
7.6 Pn 上の O(m) のコホモロジー
定理 7.14 A をネーター環、X=PAn(n≥1)、S=A[x0,…,xn] とする。
(a) H0(X,O(m))=Sm。
(b) 0<i<n ならすべての m で Hi(X,O(m))=0。
(c) Hn(X,O(m)) は、li≤−1(すべての i)かつ ∑li=m を満たすローラン単項式 x0l0⋯xnln を基底とする自由 A 加群である。特に Hn(X,O(−n−1))≅A(基底 x0−1⋯xn−1)で、m>−n−1 なら Hn(X,O(m))=0。
(d) 積から定まる H0(X,O(m))×Hn(X,O(−m−n−1))→Hn(X,O(−n−1))≅A は完全対(各基底が互いの双対基底になる)である。
証明. Ui=D+(xi) はアフィン開被覆で X は分離的なので、定理 7.11 よりチェック複体で計算できる。I={i0<⋯<ip} について O(m)(UI)=(Sxi0⋯xip)m であり、これはローラン単項式 xl(l∈Zn+1, ∑li=m)のうち SxI に属するものを基底とする自由 A 加群である。チェック複体の微分は単項式の係数を足し引きするだけなので、複体は多重次数 l ごとの部分複体 Cl∙ の直和に分かれる。
J={i∣li<0} とおく。xl∈SxI⇔J⊂I なので、Clp は J⊂I, ∣I∣=p+1 となる I ごとに A を並べたものである。
- J=∅ のとき:Cl∙ は頂点 {0,…,n} 上の単体(全単体)の単体的コチェイン複体であり、単体は可縮なので、コホモロジーは次数 0 の A だけである(09-algebraic-topology 第4章)。
- J={0,…,n} のとき:I={0,…,n} だけが現れ、Cl∙ は次数 n の A だけである。
- ∅=J⊊{0,…,n} のとき:I↦I∖J により、Cl∙ は(符号を調整し次数を ∣J∣ ずらすと)頂点集合 V={0,…,n}∖J=∅ 上の単体の、空な面も含めた添加コチェイン複体に一致する。αI で I から J の元を除く項は xl∈/SxI∖{j} なので 0 になることに注意する。単体の添加複体は(錐の構造により)完全なので、Cl∙ は完全である。
以上より H0 はすべての li≥0 の単項式、すなわち Sm で張られ (a)、0<p<n の Hp は 0 で (b)、Hn はすべての li<0 の単項式で張られる (c)。(d) li≥0, ∑li=m と li′≤−1, ∑li′=−m−n−1 について、xl+l′ が Hn(O(−n−1)) で 0 でないのは、すべての li+li′≤−1 かつ和が −n−1、すなわち l′=−l−(1,…,1) のときに限る。よって二つの単項式基底は互いに双対である。□
系 7.15 k を体、X=Pkn とすると、hi=dimkHi として
h0(O(m))=(nm+n) (m≥0),hn(O(m))=(n−m−1) (m≤−n−1)
であり、他は 0 である。オイラー標数 χ(O(m))=∑i(−1)ihi(O(m)) はすべての m∈Z で多項式 (nm+n)=n!(m+1)(m+2)⋯(m+n) に等しい。
証明. hn:ai=−li−1≥0 とおくと ∑ai=−m−n−1 で、その個数は (n−m−1)。m≤−n−1 では (−1)n(n−m−1)=(−1)nn!(−m−1)⋯(−m−n)=n!(m+1)⋯(m+n)。−n−1<m<0 ではすべての hi が 0 で、多項式も m=−1,…,−n で 0 である。□
たとえば P2 では次のようになり、h0(O(m))=h2(O(−m−3)) という対称性が見える(7.9 節)。
| m |
−5 |
−4 |
−3 |
−2 |
−1 |
0 |
1 |
2 |
| h0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
3 |
6 |
| h1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
| h2 |
6 |
3 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
| χ=2(m+1)(m+2) |
6 |
3 |
1 |
0 |
0 |
1 |
3 |
6 |
7.7 セールの有限性定理と消滅定理
定理 7.16(セール、主張)X をネーター環 A 上の射影スキーム、OX(1) を非常に豊富な直線束、F を連接層とする。
(a) すべての i で Hi(X,F) は有限生成 A 加群である。
(b) ある m0 があって、i>0, m≥m0 で Hi(X,F(m))=0。
証明の方針. 閉埋め込み X→PAn で押し出してもコホモロジーは変わらないので X=PAn としてよい。連接層 F は ⨁jO(−qj) の商になり(十分大きい q で F(q) は大域切断で生成される)、核 R も連接である。完全列 0→R→⨁jO(−qj)→F→0 の長完全列と定理 7.14 を使い、i について大きい方からの帰納法で示す(i>n では n+1 個の開集合のチェック複体から Hi=0)。詳しくは Hartshorne 第 III 章定理 5.2 を参照。□
7.8 オイラー標数とヒルベルト多項式
体 k 上の射影スキーム X と連接層 F に対し、定理 7.16 と定理 7.7 から χ(F)=∑i(−1)idimkHi(X,F)(オイラー標数)は有限和で定まる。短完全列 0→F′→F→F′′→0 について、有限次元空間の長完全列の交代和は 0 なので
χ(F)=χ(F′)+χ(F′′)
が成り立つ(加法性)。
定理 7.17(主張)X⊂Pkn を閉部分スキームとし、斉次イデアル I で定義されているとする。m↦χ(OX(m)) は多項式で、第2章のヒルベルト多項式 PS/I に一致する。したがって X の算術種数は pa(X)=(−1)dimX(χ(OX)−1) である。
理由は、十分大きい m で Hi(OX(m))=0(i>0、定理 7.16)かつ H0(OX(m))=(S/I)m となるからである(Hartshorne 第 III 章演習 5.2 と第 II 章演習 5.9)。コホモロジーを使うと、ヒルベルト多項式の値をすべての m、特に m=0 で解釈できる。
例 7.18(平面曲線の種数)C=V+(F)⊂Pk2 を d 次曲線とする。C のイデアル層は F⋅O(−d)≅O(−d) なので、完全列
0→OP2(−d) F OP2→OC→0
がある。系 7.15 より P2 上で H1(O(j))=0(すべての j)、H0(O(−d))=0、H2(O)=0 なので、長完全列は
0→k→H0(OC)→0,0→H1(OC)→H2(OP2(−d))→0
に分かれる。よって H0(OC)=k(C は連結)で
dimkH1(C,OC)=h2(OP2(−d))=(2d−1)=2(d−1)(d−2)
である。直線・円錐曲線では 0、3 次曲線では 1、4 次曲線では 3。χ(OC)=1−2(d−1)(d−2) は例 2.13(2) のヒルベルト多項式 dm+1−2(d−1)(d−2) の m=0 での値と一致する。C が非特異なら、この数が第8章の種数 g である。
例 7.19 ねじれ 3 次曲線はヒルベルト多項式 3m+1(例 2.13(3))より χ(OC)=1、pa=0 で、C≅P1 と整合する。
7.9 セール双対性
定理 7.20(セール双対性, Serre duality、主張)X を代数閉体 k 上の n 次元非特異射影多様体、ωX を標準層とする。
(a) Hn(X,ωX)≅k。
(b) 有限階数の局所自由層 E について、自然な対 Hi(X,E)×Hn−i(X,E∨⊗ωX)→Hn(X,ωX)≅k は完全対であり、Hi(X,E)≅Hn−i(X,E∨⊗ωX)∗。
証明は Hartshorne 第 III 章 7 節を参照。X=Pn では ω=O(−n−1)(命題 6.25)で、E=O(m), i=0 の場合が定理 7.14(d) そのものである。上の表の対称性 h0(O(m))=h2(O(−m−3)) もこれで説明される。これは向き付けられた閉多様体のポアンカレ双対性(09-algebraic-topology 第7章)の類似である。
曲線 C(n=1)では E=OC として h1(OC)=h0(ωC):算術種数は、大域的な正則 1 形式の空間の次元(幾何種数)に等しい。非特異な平面曲線では ωC≅OC(d−3)(6.9 節)であり、問題 7.6 で h0(OC(d−3))=2(d−1)(d−2) を直接確かめる。
まとめ
- 層のコホモロジーは大域切断関手の右導来関手で、短完全列から長完全列を与える。H1 は局所から大域への持ち上げの障害を測る。
- 脆弱層はコホモロジーが消える。既約空間上の定数層は脆弱なので、ザリスキー位相は位相的な情報を捉えない。
- 分離的スキームの準連接層のコホモロジーはアフィン被覆のチェック複体で計算できる。アフィンスキーム上では高次のコホモロジーが消える(セール)。
- Pn 上の O(m) のコホモロジーは H0 と Hn だけに現れ、ローラン単項式で具体的に書ける。χ(O(m))=(nm+n)。
- オイラー標数は加法的で、χ(OX(m)) はヒルベルト多項式。平面曲線では h1(OC)=(d−1)(d−2)/2。
- セール双対性 Hi(E)≅Hn−i(E∨⊗ω)∗ はポアンカレ双対性の類似で、曲線では h1(O)=h0(ω)。
演習問題
問題 7.1 ★ S1 を 3 つの開弧 U0,U1,U2 で、各 Ui∩Uj(i=j)が連結で U0∩U1∩U2=∅ となるように覆う。Z のチェック・コホモロジーを計算し、例 7.9 と一致することを確かめよ。
解答
C0=Z3, C1=Z3(添字 01,02,12)、C2=0 で、d(a0,a1,a2)=(a1−a0,a2−a0,a2−a1)。核は定数 (c,c,c) なので Hˇ0=Z。像は {(u,v,w)∣w=v−u} で、準同型 (u,v,w)↦u−v+w は全射で核がちょうど像に等しいので、Hˇ1=C1/imd≅Z。被覆によらず同じ答えが得られる。
問題 7.2 ★ Pk1 の O(m) について、定理 7.14 の証明を n=1 で具体的に書き下し、h0(O(m))=m+1(m≥0)、h1(O(m))=−m−1(m≤−2)を確かめよ。
解答
チェック複体は (Sx0)m×(Sx1)m→(Sx0x1)m, (f,g)↦g−f。(Sx0x1)m の基底は x0ax1b(a+b=m, a,b∈Z)で、(Sx0)m は b≥0 のもの、(Sx1)m は a≥0 のもので張られる。核(両方に属するもの)は a,b≥0 の単項式で張られ、m≥0 なら m+1 個。余核は a<0 かつ b<0 の単項式で張られ、a+b=m となる組は a=−1,…,m+1 の −m−1 個(m≤−2)。特に H1(O(−2)) は x0−1x1−1 で張られる 1 次元空間である。
問題 7.3 ★★ Pk1 の 2 点 p=[0:1], q=[1:0] について、2 点で 0 になる関数のイデアル層が O(−2) に同型であることを示し、例 3.14(2) の列 0→O(−2)→O→ip∗k⊕iq∗k→0 の長完全列を書き下せ。
解答
{p,q}=V+(x0x1) で、イデアル層は x0x1⋅O(−2)⊂O、すなわち乗法 x0x1:O(−2)→O の像であり、これは単射なので O(−2) に同型である(U0 上では O(−2) の生成元 x0−2 の像は x1/x0 で、これは U0 に含まれる唯一の点 q で 0 になる関数のイデアルを生成する。U1 上でも同様)。長完全列は
0→H0(O(−2))=0→H0(O)=k→k2→H1(O(−2))=k→H1(O)=0
で、次元の交代和 0−1+2−1+0=0 と整合する。k→k2 の余核(2 点で異なる値を指定する問題の障害)が、ちょうど H1(O(−2))≅k に写る。
問題 7.4 ★★ Pk3 の 2 つの二次式 Q1,Q2 で定義される非特異な完全交叉曲線 C について、コシュル分解 0→O(−4)→O(−2)⊕2→O→OC→0(主張として認める)を使って χ(OC)=0 を示し、H0(OC)=k から種数が 1 であることを結論せよ。
解答
長い完全列を短完全列に分けて加法性を使うと、χ(OC)=χ(O)−2χ(O(−2))+χ(O(−4))。系 7.15 で n=3 として χ(O(m))=6(m+1)(m+2)(m+3) より χ(O)=1, χ(O(−2))=6(−1)⋅0⋅1=0, χ(O(−4))=6(−3)(−2)(−1)=−1。よって χ(OC)=1−0−1=0。χ(OC)=h0−h1=1−h1 なので h1(OC)=1、すなわち C は種数 1 の曲線(楕円曲線)である。第8章で見るように、楕円曲線は次数 4 の直線束で P3 に埋め込まれ、その像がこの形になる。
問題 7.5 ★★ 例 7.13 と同様に、Ak3∖{0} を D(x),D(y),D(z) で覆って H1(O)=0、H2(O)=0 を示せ。これからアフィンでないことを結論せよ。
解答
定理 7.14 の証明と同じ多重次数の議論を S=k[x,y,z] と被覆 D(x),D(y),D(z) に適用する(違いは次数の条件 ∑li=m がないことだけ)。l∈Z3 について J={i∣li<0} とすると、J=∅ は H0 に、J={0,1,2} は H2 に寄与し、その他は完全である。よって H0=k[x,y,z]、H1=0、H2 は xaybzc(a,b,c<0)で張られる無限次元空間である。H2=0 なので定理 7.12 よりアフィンでない(H1=0 なのでイデアル層 O だけではセールの判定法の仮定は破れないことに注意)。
問題 7.6 ★★★ C⊂Pk2 を d 次の非特異曲線とする。h0(OC(d−3))=2(d−1)(d−2), h1(OC(d−3))=1 を示し、ωC≅OC(d−3) とセール双対性に整合することを確かめよ(d≥1)。
解答
例 7.18 の完全列を O(d−3) でひねると 0→O(−3)→O(d−3)→OC(d−3)→0。系 7.15 より P2 上で h0(O(−3))=h1(O(−3))=0, h2(O(−3))=1、また d−3≥−2 なので h1(O(d−3))=h2(O(d−3))=0。長完全列から
H0(OC(d−3))≅H0(O(d−3)),H1(OC(d−3))≅H2(O(−3))≅k
で、h0(O(d−3))=(2d−1)(d≥3。d=1,2 では両辺 0)。セール双対性と ωC≅OC(d−3) から h0(ωC)=h1(OC)=g, h1(ωC)=h0(OC)=1 となるはずで、例 7.18 と一致する。