この章の目標
- 付値環・離散付値環を定義し、1 次元ネーター局所整域が離散付値環であるための同値な条件を証明する
- デデキント整域の同値な特徴づけと、イデアルの一意素分解を証明する
- 分数イデアル・可逆イデアル・イデアル類群を扱い、Z[−5] や代数曲線の座標環で計算できる
- 「1 次元ではネーター正規整域 = 正則 = デデキント」であり、これが滑らかなアフィン曲線に対応することを理解する
前提:第3章〜第6章、代数学 第6章(一意分解整域)
Z[−5] では 6=2⋅3=(1+−5)(1−−5) と素因数分解が一意でない。クンマーとデデキントは、数の代わりにイデアルを考えれば分解が一意になることを発見した。本章ではその理由を可換環論の言葉で説明する。鍵は局所化である。Z[−5] を各素イデアルで局所化すると、Z(p) と同じく「素元が 1 つしかない」環(離散付値環)になる。局所的には一意分解できるので、それらを貼り合わせてイデアルの一意分解が得られる。幾何的には、離散付値環は滑らかな曲線上の点の局所環、デデキント整域は滑らかなアフィン曲線の座標環である。
7.1 付値と付値環
定義 7.1(付値環, valuation ring)体 K の部分環 V が、任意の x∈K× について x∈V または x−1∈V をみたすとき、V を K の付値環という。
命題 7.2 付値環 V について、(1) V のイデアルは包含関係について全順序 (2) V は局所環 (3) V は正規である。
証明. (1) イデアル a⊂b とし a∈a∖b をとる。0=b∈b について、b/a∈V なら b=(b/a)a∈a、a/b∈V なら a∈b となり矛盾するので前者。よって b⊂a。(2) (1) より極大イデアルは一つ。(3) x∈K が V 上整で x∈/V なら x−1∈V。xn+a1xn−1+⋯+an=0 に x−(n−1) を掛けると x=−(a1+a2x−1+⋯+anx−(n−1))∈V で矛盾。□
定義 7.3(付値, valuation)全順序加法群 Γ への準同型 v:K×→Γ で v(x+y)≥min(v(x),v(y)) をみたすものを付値という。{x∣v(x)≥0}∪{0} は付値環である。Γ=Z で全射のとき v を離散付値、その付値環を離散付値環 (discrete valuation ring, DVR) という。v(t)=1 となる t を素元(一意化元, uniformizer)という。
離散付値環では、0 でない元は utk(u 単元、k=v(x)≥0)とただ一通りに書け、イデアルは (tk) (k≥0) と 0 に限る。
例 7.4 (1) Q の p 進付値 vp(x=pka/b、p∤ab なら vp(x)=k)の付値環は Z(p)。
(2) K(x) で、a∈K での零点の位数 orda の付値環は K[x](x−a)。v∞(f/g):=degg−degf の付値環は K[1/x](1/x) で、これは「無限遠点」での局所環である。K を含む K(x) の離散付値環は、モニック既約多項式 p による K[x](p) と無限遠点のものに限り、射影直線 P1 の点と対応する(主張のみ)。
(3) K[[x]]、Zp は離散付値環(位数による付値)。
(4)(離散でない付値環)V=⋃n≥1K[[x1/n]] は、x の有理数べきの位数を付値とする値群 Q の付値環である。その極大イデアル m(位数正の元全体)は m=m2 をみたす(位数 q>0 の元は xq/2⋅x−q/2f と書ける)ので、中山の補題より有限生成でなく、V はネーター環でない。
7.2 離散付値環の特徴づけ
定理 7.5 (A,m,k) を 1 次元ネーター局所整域とする。次は同値である。
(a) A は離散付値環
(b) A は正規
(c) m は単項イデアル
(d) A は正則局所環(dimkm/m2=1)
(e) 0 でないイデアルはすべて m のべき
証明. 準備:素イデアルは 0 と m だけなので、0=a=A なら a=m で、ネーター性よりある n で mn⊂a。また mn=0 なので中山の補題より mn+1=mn。
(a)⇒(b):命題 7.2 (3)。
(b)⇒(c):0=a∈m に対し mn⊂(a), mn−1⊂(a) となる n≥1 をとり、b∈mn−1∖(a)、x=a/b∈K=FracA とおく。x−1=b/a∈/A なので、正規性より x−1 は A 上整でない。一方 bm⊂mn⊂(a) より x−1m⊂A。x−1m⊂m なら、m は有限生成 A 加群で忠実な A[x−1] 加群なので、命題 4.2 より x−1 は整となり矛盾。よって x−1m=A、すなわち m=xA で x∈A。
(c)⇔(d):(c) なら m/m2 は 1 元で張られ、m=m2 より次元 1。逆は系 1.23。
(c)⇒(a),(e):m=(t) とする。クルルの交叉定理(定理 6.7)より ⋂kmk=0 なので、0=y∈A は y∈mk∖mk+1 となる k をもち、y=utk、u∈/m は単元。k は y から一意に決まるので v(utk):=k とおき、v(y/z)=v(y)−v(z) で K× に延ばせば離散付値で、その付値環は A。0=a は v の最小値 k をとる元を含み、a=(tk)=mk。
(e)⇒(c):t∈m∖m2 をとると (t)=mr、t∈/m2 より r=1。□
例 7.6 (1) 尖点の局所環 A=K[t2,t3](t2,t3) では (a)〜(e) がすべて成り立たない:正規でなく(例 4.8 (4))、m は 2 元生成(例 1.25)で、イデアル (t2) は m2⊊(t2)⊊m をみたし m のべきでない。実際、局所化する前の K[t2,t3] では m, (t2), m2 はそれぞれ単項式 t2,t3,t4,…、t2,t4,t5,…、t4,t5,… で張られ、どれも m2 を含むので、局所化しても包含関係は変わらない(A/m2 はすでに局所環)。
(2) Z[−5] の p=(2,1+−5) での局所化は、素元 1+−5 の離散付値環である(問題 5.5)。
(3) 仮定は外せない:例 7.4 (4) の V は 1 次元正規局所整域だがネーターでなく、離散付値環でない。K[x,y](x,y) は正規なネーター局所整域だが 2 次元で、m は単項でない。
幾何的には、曲線上の点が滑らか ⇔ 局所環が正規 ⇔ 局所環が離散付値環であり、滑らかな点では関数の「零点の位数」が付値として定まる。
7.3 デデキント整域と分数イデアル
定義 7.7(デデキント整域, Dedekind domain)1 次元のネーター正規整域をデデキント整域という(体を含める流儀もある)。
Z、K[x] などの体でない単項イデアル整域、Z[−5](例 4.8 (1)、系 4.16)はデデキント整域である。
定義 7.8 A を整域、K=FracA とする。K の A 部分加群 a で、ある 0=d∈A により da⊂A となるものを分数イデアル (fractional ideal) という。(A:a):={x∈K∣xa⊂A} とおき、a(A:a)=A となるとき a は可逆 (invertible) であるといい、a−1:=(A:a) と書く。
補題 7.9 A を整域とする。
(1) 可逆な分数イデアルは有限生成である。
(2) 有限生成な分数イデアル a と積閉集合 S について S−1(A:a)=(S−1A:S−1a)。したがって a が可逆 ⟺ すべての極大イデアル m で am が可逆。
(3) 局所整域では、可逆 ⟺ 0 でない単項(aA, a∈K×)。
証明. (1) 1=∑i=1naibi(ai∈a, bi∈a−1)なら、x∈a は x=∑(xbi)ai、xbi∈A なので a=(a1,…,an)。
(2) a=(a1,…,an) なら (A:a)=⋂iai−1A で、局所化は有限個の共通部分と可換(系 2.8)。後半:aa−1⊂A が等号であることは局所的に判定でき(命題 2.13)、(aa−1)m=am(am)−1。可逆なら (1) より有限生成なので前半が使える。
(3) 1=∑aibi のある項 u=aibi は極大イデアルに属さず単元なので、x∈a は x=(xbi)u−1ai となり a=aiA。逆に (aA)(a−1A)=A。□
定理 7.10 A を 1 次元ネーター整域とする。次は同値である。
(a) A はデデキント整域(正規)
(b) すべての非零素イデアル p で Ap は離散付値環
(c) 0 でない分数イデアルはすべて可逆
証明. (a)⇔(b):正規性は局所的(系 4.10)で、非零素イデアルは極大、Ap は 1 次元ネーター局所整域なので定理 7.5。(b)⇒(c):分数イデアル a=0 は da⊂A よりネーター性で有限生成。am は離散付値環の非零分数イデアルなので tkAm (k∈Z) の形で可逆。補題 7.9 (2) より a は可逆。(c)⇒(b):Ap のイデアルは A のイデアル b により bAp と書け、b が可逆なので bAp も可逆、補題 7.9 (3) より単項。特に pAp は単項で、定理 7.5 より離散付値環。□
定理 7.11(イデアルの一意素分解)デデキント整域 A の 0 でないイデアル a は、相異なる非零素イデアル pi と ei≥1 により a=p1e1⋯prer と書け、この表示は順序を除き一意的である。
証明. 存在:最短準素分解 a=⋂iqi(定理 3.22)をとる。pi=qi は非零素イデアルなので極大で相異なり、qi+qj⊃pi+pj=A より qi たちはどの 2 つも互いに素、よって ⋂qi=∏qi(代数学 第5章 定理 5.23)。qiApi は離散付値環の非零真イデアルなので pieiApi に等しく、A に引き戻すと、qi と piei はともに pi 準素(命題 3.18 (2))なので補題 3.20 (3) より引き戻しで変わらず、qi=piei。一意性:a=∏piei を p で局所化すると、p=pi なら aAp=peiAp、それ以外なら Ap。よって ei は aApi の離散付値で決まる。□
aAp=pvp(a)Ap で定まる vp(a) を用いると、分数イデアル全体は非零素イデアルを基底とする自由アーベル群 ⨁pZ と同型であり、「a⊂b⟺ すべての p で vp(a)≥vp(b)」(含むことは割ること)が成り立つ。逆に、非零イデアルがすべて素イデアルの積に書ける整域はデデキントであることも知られている(主張のみ)。
7.4 イデアル類群
定義 7.12(イデアル類群, ideal class group)デデキント整域 A の非零分数イデアルの群を、単項分数イデアル aA (a∈K×) の部分群で割った群を Cl(A) と書く。
命題 7.13 デデキント整域 A について、A が単項イデアル整域 ⟺ A が一意分解整域 ⟺ Cl(A)=0。
証明. 1 つ目の ⇒ は 代数学 第6章、単項イデアル整域 ⟺Cl(A)=0 は定義による。一意分解整域なら、非零素イデアル p は、その非零元の素因子である素元 π を含み、(π) は非零素イデアルで極大なので p=(π)。定理 7.11 よりすべてのイデアルが単項になる。□
例 7.14(Z[−5])p2=(2,1+−5)、p3=(3,1+−5)、p3′=(3,1−−5) とおく(例 1.35 のファイバーの点)。
- p22=(4,2+2−5,−4+2−5)∋6,4 より 2∈p22、生成元はすべて 2 の倍数なので p22=(2)。
- p3p3′=(9,3∓3−5,6)∋3 で、p3p3′=(3)。
- p2p3=(6,2+2−5,3+3−5,−4+2−5)∋1+−5 で、生成元はすべて 1+−5 の倍数(6=(1+−5)(1−−5))なので p2p3=(1+−5)。同様に p2p3′=(1−−5)。
したがって 2 通りの分解 6=2⋅3=(1+−5)(1−−5) は、イデアルとしてはどちらも (6)=p22p3p3′ の組み替えにすぎない。p2 は単項でない:p2=(α) なら (α2)=(2) でノルム N(a+b−5)=a2+5b2 の乗法性から N(α)2=N(2)=4、a2+5b2=2 となるが解はない。p22 は単項なので [p2] は Cl の位数 2 の元である。実は Cl(Z[−5])≅Z/2 であり、その証明はミンコフスキーの評価による(代数的整数論 第3章)。
例 7.15(アフィン曲線)K を代数閉体、f∈K[x,y] を既約で、曲線 f=0 が特異点をもたないとする。A=K[x,y]/(f) は 1 次元ネーター整域で、各極大イデアルでの局所化は正則(問題 5.6)なので定理 7.5 より離散付値環、定理 7.10 よりデデキント整域である。
- C[x,y]/(x2+y2−1)≅C[u,u−1](u=x+iy)は単項イデアル整域で、Cl=0。
- 実数上の円 A=R[x,y]/(x2+y2−1) もデデキント整域である(証明は省略)が、m=(x−1,y) は m2=(x−1) をみたす非単項イデアルで(問題 7.7)、Cl(A)≅Z/2 であることが知られている。
- 楕円曲線 C[x,y]/(y2−x3+x) の類群は、楕円曲線の点のなす群と同型な非可算群になる(主張のみ)。
- 尖点 K[x,y]/(y2−x3) はデデキントでない:m は局所的に単項でないので可逆でなく、イデアル (t2) は素イデアルの積に書けない(例 7.6 (1))。
幾何的には、分数イデアル ∏pnp は曲線上の点の形式的な和(因子)∑nPP、単項分数イデアルは有理関数の零点と極の因子であり、Cl(A) は SpecA 上の直線束の同型類の群 Pic に一致する(代数幾何学 第6章)。Z[−5] の類群も「数論的曲線上の直線束」とみなせる。
7.5 有限次拡大での整閉包
定理 7.16(主張と証明の概略)A をデデキント整域、K=FracA、L を K の有限次拡大、B を A の L における整閉包とすると、B はデデキント整域である。
証明の概略. B は L で整閉(系 4.3 (3) の推移律)で FracB=L、整拡大なので dimB=1(系 4.16)。難しいのはネーター性である。L/K が分離的なら、B に含まれる L/K の基底 e1,…,en をとり、非退化なトレース形式 TrL/K(xy) に関する双対基底 ei∨ を考える。b∈B について Tr(bei) は整かつ K の元なので A に属し、b=∑iTr(bei)ei∨∈∑iAei∨。よって B は有限生成 A 加群の部分加群で、有限生成、ネーター。非分離の場合もクルル–秋月の定理により成り立つ(主張のみ)。□
これにより、代数体の整数環(代数的整数論 第1章)や、曲線の座標環の正規化はデデキント整域になる。まとめると、1 次元ネーター整域について、正規 ⇔ 各局所環が正則(離散付値環)⇔ 分数イデアルが可逆 ⇔ デデキントであり、1 次元では「正規化 = 特異点解消」である。2 次元以上では正規でも特異点がありうる(錐 xy=z2、第8章)。
まとめ
- 付値環は局所・正規で、イデアルが全順序。離散付値環のイデアルは素元のべき。
- 1 次元ネーター局所整域では、離散付値環 ⇔ 正規 ⇔ m 単項 ⇔ 正則 ⇔ イデアルが m のべき。ネーター性・次元 1 は外せない。
- デデキント整域 = 1 次元ネーター正規整域 ⇔ 局所的に離散付値環 ⇔ 分数イデアルが可逆。イデアルは素イデアルの積に一意的に分解する(準素分解と局所化による)。
- イデアル類群は単項イデアル整域からのずれを測る。Z[−5] では p2 が位数 2 の類を与え、6 の 2 通りの分解を説明する。
- デデキント整域の有限次拡大での整閉包はデデキント。幾何的には滑らかなアフィン曲線で、類群は Pic。
演習問題
問題 7.1 ★ Q の元 x=12/5 について v2(x),v3(x),v5(x) を求めよ。K(x) の元 φ=(x2−1)/x3 について ord0,ord1,v∞ を求め、零点と極の位数の総和を計算せよ。
解答
12/5=22⋅3⋅5−1 より v2=2, v3=1, v5=−1。φ は ord0=−3(3 位の極)、ord1=ord−1=1、v∞=3−2=1、その他の点では 0。総和は −3+1+1+1=0(標数 2 では x2−1=(x−1)2 なので ord1=2 となり、総和はやはり −3+2+1=0)。射影直線 P1 上の有理関数の零点と極の位数の和は 0 である(代数幾何学 第8章)。
問題 7.2 ★ Z[−5] で (7) と (3+−5) を素イデアルの積に分解し、p7=(7,3+−5) の類が [p2] に等しいことを示せ。
解答
x2+5≡(x−3)(x+3)(mod7) より (7)=p7p7′、p7′=(7,3−−5)(積は 49, 7(3±−5), (3+−5)(3−−5)=14 で生成され、7=49−3⋅14 を含み、生成元はすべて 7 の倍数)。次に 3+−5=2+(1+−5)∈p2∩p7=p2p7 なので (3+−5)=p2p7c と書け、共役をとると (3−−5)=p2p7′cˉ(pˉ2=p2)。積は (14)=p22p7p7′ なので、一意分解より ccˉ=A、c=A。よって (3+−5)=p2p7。よって [p7]=[p2]−1=[p2](位数 2)。p7 自身も単項でない(a2+5b2=7 は解なし)。
問題 7.3 ★★ A=Z[−3]、m=(2,1+−3) とする。m は可逆でなく、(2) は素イデアルの積に書けないことを示せ。
解答
問題 5.5 より m2=2m。m が可逆なら両辺に m−1 を掛けて m=(2) となるが、1+−3∈/(2) なので矛盾。2 を含む素イデアルは m だけ(A/(2)≅F2[x]/((x+1)2))なので、(2) が素イデアルの積なら mk の形。指数(Z 加群としての指数)は [A:m]=2、[A:(2)]=4、[A:m2]=[A:2m]=2⋅4=8 なので m2⊊(2)⊊m で、(2) は m のべきでない。A は正規でない(例 4.8 (2))のでデデキントでない。
問題 7.4 ★★ K[x,y](x,y) は付値環でないことを示せ。また、付値環 V の有限生成イデアルは単項であることを示せ。
解答
x/y も y/x も K[x,y](x,y) に属さない(属せば x∈(y) あるいは y∈(x) となり、K[x,y](x,y) で x,y は一次独立な m/m2 の元なので矛盾)。後半:(a1,…,an) について、イデアル (ai) は全順序(命題 7.2 (1))なので最大のもの (aj) が他を含み、(a1,…,an)=(aj)。特にネーターな付値環は単項イデアル整域である。
問題 7.5 ★★ デデキント整域の任意のイデアルは 2 元で生成されることを示せ(「1 つ半の生成元」)。
解答
a=0 とし 0=a∈a をとる。(a)=∏i=1rpiei、a=∏pifi (0≤fi≤ei)(含むことは割ること)。pifi=pifi+1 なので bi∈pifi∖pifi+1 がとれ、中国剰余定理で b≡bi(modpifi+1) となる b をとる。各 i で b∈pifi なので b∈⋂ipifi=a であり、vpi(b)=fi である。局所的に見ると、vpi((a,b))=min(ei,fi)=fi、それ以外の p では vp(a)=0 より 0。よって (a,b)=a。
問題 7.6 ★★ 素イデアルが有限個しかないデデキント整域は単項イデアル整域であることを示せ。これから、デデキント整域 A の有限個の素イデアルの外 S=A∖(p1∪⋯∪pn) による局所化は単項イデアル整域であることを導け。
解答
非零素イデアルを p1,…,pn とする。中国剰余定理で πi∈pi∖pi2 かつ πi≡1(modpj) (j=i) となる πi をとると、vpi(πi)=1、他で 0 なので (πi)=pi。定理 7.11 よりすべてのイデアルは単項。後半:S−1A はデデキント整域(正規性・ネーター性・次元は局所化で保たれる、S−1A が体でなければ)で、その非零素イデアルは piS−1A に限る(定理 2.17 と素イデアル回避)。
問題 7.7 ★★★ A=R[x,y]/(x2+y2−1)、m=(x−1,y) とする。m2=(x−1) を示し、m が単項でないことを示せ。
解答
(詳しいヒント)y2=−(x−1)(x+1) より m2=((x−1)2,(x−1)y,y2)⊂(x−1)。逆に (x−1)2+y2=2−2x より x−1=−21((x−1)2+y2)∈m2。
非単項性:AC=A⊗RC=C[x,y]/(x2+y2−1) で u=x+iy とおくと u−1=x−iy、AC=C[u,u−1] で、その単元は cuk (c∈C×,k∈Z)。x−1=(u−1)2/(2u)、y=(u−1)(u+1)/(2iu) より mAC=(u−1)。m=(f) (f∈A) なら f=cuk(u−1)。係数の複素共役 σ は AC の環自己同型で x,y を固定し σ(u)=u−1、σ(f)=f。σ(f)=cˉu−k(u−1−1)=−cˉu−k−1(u−1) と比べて cu2k+1=−cˉ となり、2k+1=0 が必要で矛盾。幾何的には、実の円上には点 (1,0) にだけ 1 位の零点をもつ実多項式関数がない。