Lemma数学ロードマップ

20 総合演習(大学院入試・修士レベル) · 第 7 章

微分方程式と確率論

目安 6〜10 時間演習 12 問

この章のねらい

  • 常微分方程式の解の存在・一意性・延長・安定性を、定理の仮定を確認しながら論じられるようにする
  • 古典的な偏微分方程式を変数分離・フーリエ級数・エネルギー法・最大値原理で扱えるようにする
  • 確率論の基本計算から大数の法則・中心極限定理・マルチンゲールの応用までを答案として書けるようにする

前提:微分方程式、確率論

目安:★ は 20 分、★★ は 30〜40 分、★★★ は 50 分。

問題 1 ★(解の存在と一意性)

(1) 初期値問題 y′=∣y∣y' = \sqrt{\lvert y \rvert}, y(0)=0y(0) = 0 は R\mathbb{R} 上で無数の解をもつことを示し、一意性定理と矛盾しない理由を述べよ。

(2) y′=y2y' = y^2, y(0)=1y(0) = 1 の最大解とその定義区間を求めよ。

(3) 任意の y0∈Ry_0 \in \mathbb{R} に対し、y′=sin⁡(ty)y' = \sin(ty), y(0)=y0y(0) = y_0 の解は R\mathbb{R} 全体でただ一つ存在することを示せ。

使う知識:微分方程式 第2章(ピカール–リンデレーフの定理・解の延長)

解答

(1) y≡0y \equiv 0 と、各 c≥0c \geq 0 に対する yc(t)=(t−c)24y_c(t) = \frac{(t-c)^2}{4} (t≥c)(t \geq c), yc(t)=0y_c(t) = 0 (t<c)(t < c) はすべて解である(t≥ct \geq c で yc′=t−c2=ycy_c' = \frac{t-c}{2} = \sqrt{y_c}、t=ct = c で左右の微分係数はともに 00)。一意性定理は右辺が yy について局所リプシッツであることを仮定するが、∣y∣\sqrt{\lvert y \rvert} は y=0y = 0 の近傍でリプシッツでない(∣y∣/∣y∣→∞\sqrt{\lvert y \rvert}/\lvert y \rvert \to \infty)。

(2) y≠0y \neq 0 で (−1/y)′=1(-1/y)' = 1 より y=11−ty = \frac{1}{1 - t}。解は t→1−t \to 1^{-} で発散するので、最大解は区間 (−∞,1)(-\infty, 1) 上の y=11−ty = \frac{1}{1-t}。

(3) f(t,y)=sin⁡(ty)f(t,y) = \sin(ty) は C1C^1 級なので局所リプシッツで、局所解がただ一つ存在する。最大解を (α,β)(\alpha, \beta) 上の yy とすると、∣y′∣≤1\lvert y' \rvert \leq 1 より ∣y(t)∣≤∣y0∣+∣t∣\lvert y(t) \rvert \leq \lvert y_0 \rvert + \lvert t \rvert。β<∞\beta < \infty なら yy は [0,β)[0, \beta) で有界になるが、延長定理(最大解は有限時刻で有界にとどまれない)に反する。よって β=∞\beta = \infty、同様に α=−∞\alpha = -\infty。

解説・発展
  • 一意性の破れ((1))と解の爆発((2))は別の現象である。局所リプシッツ性は前者を、線形増大条件 ∣f(t,y)∣≤a(t)+b(t)∣y∣\lvert f(t,y) \rvert \leq a(t) + b(t)\lvert y \rvert は後者を防ぐ。
  • (3) の「有界 ⇒\Rightarrow 延長可能」は院試で頻出の論法。延長定理の正確な形(最大解が有限時刻で終わるなら、解は任意のコンパクト集合から出ていく)を覚えておく。

問題 2 ★★(比較定理と爆発時刻)

初期値問題 y′=t2+y2y' = t^2 + y^2, y(0)=0y(0) = 0 の t≥0t \geq 0 側の最大解を [0,T)[0, T) 上の yy とする。

(1) T>1T > 1 を示せ。

(2) T<1+π2−arctan⁡13T < 1 + \frac{\pi}{2} - \arctan\frac{1}{3} を示せ。

使う知識:微分方程式 第2章(解の延長・比較定理)

解答

y′≥0y' \geq 0 なので yy は単調増加で y≥0y \geq 0。また延長定理より、T<∞T < \infty ならば y(t)→∞y(t) \to \infty (t→T)(t \to T) である。

(1) T≤1T \leq 1 と仮定する。[0,T)[0, T) で y′≤1+y2y' \leq 1 + y^2 より (arctan⁡y)′=y′1+y2≤1(\arctan y)' = \frac{y'}{1 + y^2} \leq 1、よって arctan⁡y(t)≤t≤1\arctan y(t) \leq t \leq 1、y(t)≤tan⁡1y(t) \leq \tan 1。yy は有界となり矛盾。よって T>1T > 1。

(2) t>0t > 0 で y′≥t2>0y' \geq t^2 > 0 なので y>0y > 0、よって y(1)=∫01(t2+y2) dt>∫01t2 dt=13y(1) = \int_0^1 (t^2 + y^2)\ dt > \int_0^1 t^2\ dt = \frac{1}{3}。t∈[1,T)t \in [1, T) では y′≥1+y2y' \geq 1 + y^2 より (arctan⁡y)′≥1(\arctan y)' \geq 1、したがって

t−1≤arctan⁡y(t)−arctan⁡y(1)<π2−arctan⁡y(1)t - 1 \leq \arctan y(t) - \arctan y(1) < \frac{\pi}{2} - \arctan y(1)

これが [1,T)[1, T) のすべての tt で成り立つので T≤1+π2−arctan⁡y(1)<1+π2−arctan⁡13T \leq 1 + \frac{\pi}{2} - \arctan y(1) < 1 + \frac{\pi}{2} - \arctan\frac{1}{3}。

解説・発展
  • 解けない方程式の解の振る舞いを、解ける方程式(ここでは y′=1+y2y' = 1 + y^2、解は tan⁡\tan)と比較して調べるのが比較定理の考え方。答案では「(arctan⁡y)′(\arctan y)' を評価して積分する」形で書けば、比較定理を引用せずに済む。
  • 数値計算では T≈2.003T \approx 2.003 で、(2) の上界は約 2.2492.249。区間をさらに分けて比較すれば評価は改善できる。

問題 3 ★★(線形微分方程式系)

(1) 次の AA に対し etAe^{tA} を求めよ。

A=(1−21−1)A = \begin{pmatrix} 1 & -2 \\ 1 & -1 \end{pmatrix}

また、x′=Axx' = Ax のすべての解は周期 2π2\pi の周期関数で、ある正定値二次形式 QQ に対し Q(x(t))Q(x(t)) が一定であることを示せ。

(2) y′′′−3y′′+3y′−y=ety''' - 3y'' + 3y' - y = e^t の一般解を求めよ。

使う知識:微分方程式 第3章(行列の指数関数・定数係数線形方程式)

解答

(1) A2=−IA^2 = -I なので A2k=(−1)kIA^{2k} = (-1)^kI, A2k+1=(−1)kAA^{2k+1} = (-1)^kA で、指数関数の級数を偶数次と奇数次に分けて

etA=(cos⁡t)I+(sin⁡t)A=(cos⁡t+sin⁡t−2sin⁡tsin⁡tcos⁡t−sin⁡t)e^{tA} = (\cos t)I + (\sin t)A = \begin{pmatrix} \cos t + \sin t & -2\sin t \\ \sin t & \cos t - \sin t \end{pmatrix}

解 x(t)=etAx(0)x(t) = e^{tA}x(0) は周期 2π2\pi。Q(x)=x12−2x1x2+2x22=(x1−x2)2+x22Q(x) = x_1^2 - 2x_1x_2 + 2x_2^2 = (x_1 - x_2)^2 + x_2^2(正定値)とおくと、x1′=x1−2x2x_1' = x_1 - 2x_2, x2′=x1−x2x_2' = x_1 - x_2 より

ddtQ=2(x1−x2)(x1′−x2′)+2x2x2′=2(x1−x2)(−x2)+2x2(x1−x2)=0\frac{d}{dt}Q = 2(x_1 - x_2)(x_1' - x_2') + 2x_2x_2' = 2(x_1 - x_2)(-x_2) + 2x_2(x_1 - x_2) = 0

(2) 左辺は (D−1)3y(D - 1)^3y(D=ddtD = \frac{d}{dt})。同次方程式の一般解は (c0+c1t+c2t2)et(c_0 + c_1t + c_2t^2)e^t。(D−1)(tket)=ktk−1et(D-1)(t^ke^t) = kt^{k-1}e^t より (D−1)3(t36et)=et(D-1)^3\left(\frac{t^3}{6}e^t\right) = e^t なので、一般解は

y=(c0+c1t+c2t2+t36)et(c0,c1,c2∈R)y = \left(c_0 + c_1t + c_2t^2 + \frac{t^3}{6}\right)e^t \qquad (c_0, c_1, c_2 \in \mathbb{R})
解説・発展
  • 保存される二次形式は ATP+PA=OA^{T}P + PA = O を満たす正定値対称行列 PP を探せば見つかる(本問では PP の行は (1,−1),(−1,2)(1, -1), (-1, 2))。軌道は楕円で、原点は中心(安定だが漸近安定でない)。
  • (2) の特殊解は、右辺 ete^t が特性根 11(重複度 3)に共鳴するため t3t^3 が掛かる。これは (D−1)3(D-1)^3 が 3 次のジョルダン細胞に対応することの反映である。

問題 4 ★★(平衡点の安定性)

次の系の原点の安定性を判定せよ。

(1) x′=−x+y2x' = -x + y^2, y′=−2y+x2y' = -2y + x^2

(2) x′=−x3+yx' = -x^3 + y, y′=−x−y3y' = -x - y^3

(3) x′=x3+yx' = x^3 + y, y′=−x+y3y' = -x + y^3

使う知識:微分方程式 第4章(線形化安定性・リャプノフ関数)

解答

(1) 原点での線形化行列は diag⁡(−1,−2)\operatorname{diag}(-1, -2) で、固有値の実部がすべて負。線形化安定性定理より漸近安定。

(2) 線形化行列は第 1 行 (0,1)(0, 1)、第 2 行 (−1,0)(-1, 0) で固有値 ±i\pm i となり、線形化では判定できない。V=x2+y2V = x^2 + y^2 とすると V˙=2x(−x3+y)+2y(−x−y3)=−2(x4+y4)\dot{V} = 2x(-x^3 + y) + 2y(-x - y^3) = -2(x^4 + y^4) で、これは原点以外で負。VV は正定値、V˙\dot V は負定値なので、リャプノフの定理より漸近安定。

(3) 線形化は (2) と同じで判定できない。V=x2+y2V = x^2 + y^2 で V˙=2(x4+y4)≥V2\dot{V} = 2(x^4 + y^4) \geq V^2(x4+y4≥(x2+y2)22x^4 + y^4 \geq \frac{(x^2+y^2)^2}{2})。初期値 p≠0p \neq 0 の解は V≥∣p∣2V \geq \lvert p \rvert^2 を保ち、単位円板内にいる間は V˙≥∣p∣4\dot V \geq \lvert p \rvert^4、よって V(t)≥∣p∣2+∣p∣4tV(t) \geq \lvert p \rvert^2 + \lvert p \rvert^4t となり有限時間で単位円板を出る。∣p∣\lvert p \rvert はいくらでも小さくとれるので不安定。

解説・発展
  • 線形化で判定できるのは、固有値の実部がすべて負(漸近安定)か正のものがある(不安定)場合だけ。実部 00 の固有値があると、(2) と (3) のように非線形項で結論が逆になりうる。
  • (2) では VV の等高線が有界なので、全平面のすべての解が原点に収束する(大域的漸近安定)。

問題 5 ★★(境界値問題)

(1) 固有値問題 −y′′=λy-y'' = \lambda y (0<x<1)(0 < x < 1), y(0)=0y(0) = 0, y′(1)=0y'(1) = 0 の固有値と固有関数をすべて求めよ。

(2) f∈C[0,1]f \in C[0,1] に対し、−u′′=f-u'' = f, u(0)=0u(0) = 0, u′(1)=0u'(1) = 0 の解はただ一つで u(x)=∫01min⁡(x,s)f(s) dsu(x) = \int_0^1\min(x,s)f(s)\ ds と表されることを示せ。

(3) f∈C[0,1]f \in C[0,1] とする。−y′′−π2y=f-y'' - \pi^2y = f, y(0)=y(1)=0y(0) = y(1) = 0 が解をもつための必要十分条件は ∫01f(x)sin⁡πx dx=0\int_0^1 f(x)\sin\pi x\ dx = 0 であることを示せ。

使う知識:微分方程式 第5章(スツルム–リウヴィル問題・グリーン関数・フレドホルムの択一定理)

解答

(1) 固有関数 yy に yy を掛けて積分すると、境界項 [y′y]01=0[y'y]_0^1 = 0 より λ∫01y2=∫01y′2\lambda\int_0^1 y^2 = \int_0^1 y'^2。よって λ≥0\lambda \geq 0 で、λ=0\lambda = 0 なら y′=0y' = 0、y=y(0)=0y = y(0) = 0。λ>0\lambda > 0 なら y(0)=0y(0) = 0 から y=csin⁡λxy = c\sin\sqrt{\lambda}x、y′(1)=cλcos⁡λ=0y'(1) = c\sqrt{\lambda}\cos\sqrt{\lambda} = 0 より λ=(k−12)π\sqrt{\lambda} = (k - \frac{1}{2})\pi。固有値は λk=(k−12)2π2\lambda_k = (k - \frac{1}{2})^2\pi^2、固有関数は sin⁡((k−12)πx)\sin((k - \frac{1}{2})\pi x) (k∈N)(k \in \mathbb{N})。

(2) u(x)=∫0xsf(s) ds+x∫x1f(s) dsu(x) = \int_0^x sf(s)\ ds + x\int_x^1 f(s)\ ds は u′=xf(x)+∫x1f−xf(x)=∫x1fu' = xf(x) + \int_x^1 f - xf(x) = \int_x^1 f, u′′=−fu'' = -f, u(0)=0u(0) = 0, u′(1)=0u'(1) = 0 を満たす。2 つの解の差 ww は −w′′=0-w'' = 0, w(0)=w′(1)=0w(0) = w'(1) = 0 を満たし、(1) より 00 は固有値でないので w=0w = 0。

(3) 必要性:解 yy があれば、部分積分を 2 回行い y(0)=y(1)=0y(0) = y(1) = 0 と sin⁡0=sin⁡π=0\sin 0 = \sin\pi = 0 を使うと

∫01fsin⁡πx dx=∫01y(−(sin⁡πx)′′−π2sin⁡πx)dx=0\int_0^1 f\sin\pi x\,dx = \int_0^1 y\left(-(\sin\pi x)'' - \pi^2\sin\pi x\right)dx = 0

十分性:定数変化法により yp(x)=−1π∫0xsin⁡(π(x−s))f(s) dsy_p(x) = -\frac{1}{\pi}\int_0^x \sin(\pi(x-s))f(s)\ ds は yp′′+π2yp=−fy_p'' + \pi^2y_p = -f, yp(0)=0y_p(0) = 0 を満たし、yp(1)=−1π∫01sin⁡(πs)f(s) ds=0y_p(1) = -\frac{1}{\pi}\int_0^1\sin(\pi s)f(s)\ ds = 0。よって ypy_p は解である(解は yp+csin⁡πxy_p + c\sin\pi x で一意でない)。

解説・発展
  • (3) は「λ=π2\lambda = \pi^2 が固有値のとき、非斉次問題は右辺が固有関数と直交するときに限り解けて、解は固有関数の分だけ不定」というフレドホルムの択一定理の典型例。行列の Ax=bAx = b が b⊥ker⁡ATb \perp \ker A^{T} のとき解けることの無限次元版である。
  • (2) のグリーン関数 min⁡(x,s)\min(x,s) はブラウン運動の共分散 E[BxBs]E[B_xB_s] と一致する。固有値 λk\lambda_k の逆数はこの積分作用素の固有値である。

問題 6 ★★(フーリエ級数)

(1) f(x)=∣sin⁡x∣f(x) = \lvert \sin x \rvert の [−π,π][-\pi,\pi] 上のフーリエ級数が 2π−4π∑n=1∞cos⁡2nx4n2−1\frac{2}{\pi} - \frac{4}{\pi}\sum_{n=1}^{\infty}\frac{\cos 2nx}{4n^2-1} であり、ff に一様収束することを示せ。

(2) ∑n=1∞14n2−1\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{4n^2-1} と ∑n=1∞(−1)n4n2−1\sum_{n=1}^{\infty}\frac{(-1)^n}{4n^2-1} を求めよ。

(3) ∑n=1∞1(4n2−1)2\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(4n^2-1)^2} を求めよ。

使う知識:微分方程式 第6章(フーリエ係数・一様収束・パーセヴァルの等式)

解答

(1) ff は偶関数なので bn=0b_n = 0。a0=2π∫0πsin⁡x dx=4πa_0 = \frac{2}{\pi}\int_0^\pi\sin x\ dx = \frac{4}{\pi}、n≥1n \geq 1 で

an=2π∫0πsin⁡xcos⁡nx dx=1π∫0π(sin⁡(n+1)x−sin⁡(n−1)x) dx=1π(1−(−1)n+1n+1−1−(−1)n−1n−1)a_n = \frac{2}{\pi}\int_0^\pi \sin x\cos nx\,dx = \frac{1}{\pi}\int_0^\pi(\sin(n+1)x - \sin(n-1)x)\,dx = \frac{1}{\pi}\left(\frac{1 - (-1)^{n+1}}{n+1} - \frac{1 - (-1)^{n-1}}{n-1}\right)

(n=1n = 1 では第 2 項を 00 とする)。nn が奇数なら an=0a_n = 0、n=2mn = 2m なら a2m=2π(12m+1−12m−1)=−4π(4m2−1)a_{2m} = \frac{2}{\pi}\left(\frac{1}{2m+1} - \frac{1}{2m-1}\right) = -\frac{4}{\pi(4m^2-1)}。係数は O(m−2)O(m^{-2}) なので M 判定法により級数は一様収束し、その和 gg は連続で ff と同じフーリエ係数をもつ。三角関数系の完全性(または連続関数のフーリエ係数の一意性)から g=fg = f。

(2) x=0x = 0 を代入して 0=2π−4π∑14n2−10 = \frac{2}{\pi} - \frac{4}{\pi}\sum\frac{1}{4n^2-1}、よって ∑14n2−1=12\sum\frac{1}{4n^2-1} = \frac{1}{2}。x=π2x = \frac{\pi}{2} で cos⁡nπ=(−1)n\cos n\pi = (-1)^n より 1=2π−4π∑(−1)n4n2−11 = \frac{2}{\pi} - \frac{4}{\pi}\sum\frac{(-1)^n}{4n^2-1}、よって ∑(−1)n4n2−1=12−π4\sum\frac{(-1)^n}{4n^2-1} = \frac{1}{2} - \frac{\pi}{4}。

(3) パーセヴァルの等式 1π∫−ππf2 dx=a022+∑an2\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f^2\ dx = \frac{a_0^2}{2} + \sum a_n^2 に代入すると 1=8π2+16π2∑1(4n2−1)21 = \frac{8}{\pi^2} + \frac{16}{\pi^2}\sum\frac{1}{(4n^2-1)^2}。よって ∑n=1∞1(4n2−1)2=π2−816\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(4n^2-1)^2} = \frac{\pi^2 - 8}{16}。

解説・発展
  • (2) の第 1 式は 14n2−1=12(12n−1−12n+1)\frac{1}{4n^2-1} = \frac{1}{2}\left(\frac{1}{2n-1} - \frac{1}{2n+1}\right) の望遠鏡和でも得られ、検算になる。
  • 各点での値を代入するには、その点でフーリエ級数が ff に収束することの根拠(一様収束、またはディリクレの定理)が必要。不連続点では左右の極限の平均に収束する。

問題 7 ★★(熱方程式)

ut=uxxu_t = u_{xx} (0<x<π, t>0)(0 < x < \pi,\ t > 0), u(0,t)=u(π,t)=0u(0,t) = u(\pi,t) = 0, u(x,0)=x(π−x)u(x,0) = x(\pi - x) を考える。

(1) 変数分離により解を級数で求めよ。

(2) (1) の級数は [0,π]×[0,∞)[0,\pi] \times [0,\infty) で連続、t>0t > 0 で C∞C^{\infty} 級の関数を定め、方程式と境界条件・初期条件を満たすことを示せ。

(3) 解は(十分滑らかな解の範囲で)一意であることを、E(t)=∫0πu2 dxE(t) = \int_0^\pi u^2\ dx を用いて示せ。

(4) t→∞t \to \infty で etu(x,t)→8πsin⁡xe^tu(x,t) \to \frac{8}{\pi}\sin x(xx について一様)を示せ。

使う知識:微分方程式 第7章(変数分離・エネルギー法)、微分方程式 第6章

解答

(1) u=X(x)T(t)u = X(x)T(t) とおくと X′′=−λXX'' = -\lambda X, X(0)=X(π)=0X(0) = X(\pi) = 0 より X=sin⁡nxX = \sin nx, λ=n2\lambda = n^2、T=e−n2tT = e^{-n^2t}。初期値を正弦級数に展開すると(第5章 問題 7 の計算)x(π−x)=∑n odd8πn3sin⁡nxx(\pi - x) = \sum_{n\ \text{odd}}\frac{8}{\pi n^3}\sin nx なので

u(x,t)=∑n odd8πn3e−n2tsin⁡nxu(x,t) = \sum_{n\ \text{odd}}\frac{8}{\pi n^3}e^{-n^2t}\sin nx

(2) 各項は 8πn3\frac{8}{\pi n^3} 以下なので M 判定法により [0,π]×[0,∞)[0,\pi] \times [0,\infty) で一様収束し、uu は連続。t=0t = 0 では x(π−x)x(\pi - x) の正弦級数で、一様収束するので和は x(π−x)x(\pi-x) に等しい。t≥t0>0t \geq t_0 > 0 では、∂tj∂xk\partial_t^j\partial_x^k を項別にとった級数の各項は Cn2j+ke−n2t0Cn^{2j+k}e^{-n^2t_0} 以下で総和有限なので一様収束し、uu は C∞C^\infty 級で項別微分できる。各項が方程式と境界条件を満たすので uu も満たす。

(3) 2 つの解の差 ww は同じ方程式と、境界値 00・初期値 00 を満たす。E(t)=∫0πw2dxE(t) = \int_0^\pi w^2dx とすると、部分積分と境界条件より E′(t)=2∫0πwwxx dx=−2∫0πwx2 dx≤0E'(t) = 2\int_0^\pi ww_{xx}\ dx = -2\int_0^\pi w_x^2\ dx \leq 0。E≥0E \geq 0, E(0)=0E(0) = 0 なので E≡0E \equiv 0、w≡0w \equiv 0。

(4) etu−8πsin⁡x=∑n≥3 odd8πn3e−(n2−1)tsin⁡nxe^tu - \frac{8}{\pi}\sin x = \sum_{n \geq 3\ \text{odd}}\frac{8}{\pi n^3}e^{-(n^2-1)t}\sin nx の絶対値は e−8t∑n8πn3→0e^{-8t}\sum_n\frac{8}{\pi n^3} \to 0。

解説・発展
  • 熱方程式の解は t>0t > 0 で瞬時に滑らかになる(高周波成分が e−n2te^{-n^2t} で急速に減衰する)。(2) の論証はこの平滑化効果の証明そのものである。
  • 最大値原理を使うと 0≤u≤max⁡u(⋅,0)=π240 \leq u \leq \max u(\cdot,0) = \frac{\pi^2}{4} もわかる。一意性はエネルギー法でも最大値原理でも示せる。

問題 8 ★★(波動方程式とラプラス方程式)

(1) φ∈C2(R)\varphi \in C^2(\mathbb{R}), ψ∈C1(R)\psi \in C^1(\mathbb{R}) とする。utt=c2uxxu_{tt} = c^2u_{xx} (c>0)(c > 0), u(x,0)=φ(x)u(x,0) = \varphi(x), ut(x,0)=ψ(x)u_t(x,0) = \psi(x) の C2C^2 級の解はダランベールの公式

u(x,t)=φ(x+ct)+φ(x−ct)2+12c∫x−ctx+ctψ(s) dsu(x,t) = \frac{\varphi(x+ct) + \varphi(x-ct)}{2} + \frac{1}{2c}\int_{x-ct}^{x+ct}\psi(s)\,ds

で与えられ、ただ一つであることを示せ。

(2) [0,L][0,L] 上で u(0,t)=u(L,t)=0u(0,t) = u(L,t) = 0 を満たす波動方程式の解について、エネルギー 12∫0L(ut2+c2ux2) dx\frac{1}{2}\int_0^L(u_t^2 + c^2u_x^2)\ dx は時間によらないことを示せ。

(3) 単位円板で調和で、境界 x=cos⁡θx = \cos\theta, y=sin⁡θy = \sin\theta で cos⁡3θ\cos^3\theta に等しい関数を求め、それがただ一つであることを示せ。

使う知識:微分方程式 第7章(ダランベールの公式・エネルギー保存・最大値原理)

解答

(1) ξ=x+ct\xi = x + ct, η=x−ct\eta = x - ct とし u(x,t)=w(ξ,η)u(x,t) = w(\xi,\eta) とおくと、utt−c2uxx=−4c2wξηu_{tt} - c^2u_{xx} = -4c^2w_{\xi\eta}。よって wξη=0w_{\xi\eta} = 0 で、w=F(ξ)+G(η)w = F(\xi) + G(\eta)(F,G∈C2F, G \in C^2)。初期条件から F(x)+G(x)=φ(x)F(x) + G(x) = \varphi(x), c(F′(x)−G′(x))=ψ(x)c(F'(x) - G'(x)) = \psi(x)。後者を積分して F−G=1c∫0xψ+kF - G = \frac{1}{c}\int_0^x\psi + k。連立して F=φ2+12c∫0xψ+k2F = \frac{\varphi}{2} + \frac{1}{2c}\int_0^x\psi + \frac{k}{2}, G=φ2−12c∫0xψ−k2G = \frac{\varphi}{2} - \frac{1}{2c}\int_0^x\psi - \frac{k}{2} となり、u=F(x+ct)+G(x−ct)u = F(x+ct) + G(x-ct) は公式に一致する。導出はどの解にも適用できるので、解は一意である。

(2) E′(t)=∫0L(ututt+c2uxuxt) dx=∫0Lut(utt−c2uxx) dx+c2[uxut]0L=0E'(t) = \int_0^L(u_tu_{tt} + c^2u_xu_{xt})\ dx = \int_0^Lu_t(u_{tt} - c^2u_{xx})\ dx + c^2[u_xu_t]_0^L = 0(境界で u=0u = 0 なので ut=0u_t = 0)。

(3) cos⁡3θ=34cos⁡θ+14cos⁡3θ\cos^3\theta = \frac{3}{4}\cos\theta + \frac{1}{4}\cos 3\theta で、rcos⁡θ=xr\cos\theta = x, r3cos⁡3θ=Re⁡(x+iy)3=x3−3xy2r^3\cos 3\theta = \operatorname{Re}(x+iy)^3 = x^3 - 3xy^2 は調和多項式。よって

u(x,y)=34x+14(x3−3xy2)u(x,y) = \frac{3}{4}x + \frac{1}{4}(x^3 - 3xy^2)

は条件を満たす。2 つの解の差は円板で調和、境界で 00 なので、最大値原理と最小値原理から恒等的に 00。

解説・発展
  • 波動方程式の解は初期値の滑らかさを改善しない(特異性は特性線 x±ct=x \pm ct = 一定に沿って伝わる)。熱方程式との対比が重要である。依存領域は [x−ct,x+ct][x - ct, x + ct] で、有限の伝播速度をもつ。
  • (3) の一般形はポアソン積分公式 u(reiθ)=12π∫02π1−r21−2rcos⁡(θ−ϕ)+r2g(ϕ) dϕu(re^{i\theta}) = \frac{1}{2\pi}\int_0^{2\pi}\frac{1 - r^2}{1 - 2r\cos(\theta - \phi) + r^2}g(\phi)\ d\phi。原点での値 u(0)=0u(0) = 0 は境界値の平均(平均値の性質)に一致する。

問題 9 ★(確率の基本計算)

(1) X,YX, Y は独立で、ともに母数 λ>0\lambda > 0 の指数分布に従う。P(X<Y)P(X < Y)、min⁡(X,Y)\min(X,Y) の分布、E[max⁡(X,Y)]E[\max(X,Y)] を求めよ。

(2) (1) の X,YX, Y について、U=XX+YU = \frac{X}{X+Y} は区間 (0,1)(0,1) 上の一様分布に従い、S=X+YS = X + Y と独立であることを示せ。

(3) nn 種類のクーポンが等確率で 1 枚ずつ出るとき、全種類がそろうまでの回数 TT の期待値を求めよ。

使う知識:確率論 第1章(独立性・密度の変数変換・期待値)

解答

(1) 対称性と P(X=Y)=0P(X = Y) = 0 より P(X<Y)=12P(X < Y) = \frac{1}{2}。P(min⁡(X,Y)>t)=P(X>t)P(Y>t)=e−2λtP(\min(X,Y) > t) = P(X > t)P(Y > t) = e^{-2\lambda t} なので min⁡(X,Y)\min(X,Y) は母数 2λ2\lambda の指数分布。max⁡+min⁡=X+Y\max + \min = X + Y より E[max⁡(X,Y)]=2λ−12λ=32λE[\max(X,Y)] = \frac{2}{\lambda} - \frac{1}{2\lambda} = \frac{3}{2\lambda}。

(2) (X,Y)(X,Y) の密度は λ2e−λ(x+y)\lambda^2e^{-\lambda(x+y)} (x,y>0)(x, y > 0)。(x,y)=(us,(1−u)s)(x,y) = (us, (1-u)s) は (0,1)×(0,∞)(0,1) \times (0,\infty) から (0,∞)2(0,\infty)^2 への C1C^1 級全単射で、ヤコビアンは ∂(x,y)∂(u,s)=s(1−u)−u(−s)=s\frac{\partial(x,y)}{\partial(u,s)} = s(1-u) - u(-s) = s。よって (U,S)(U,S) の密度は 1(0,1)(u)⋅λ2se−λs\mathbf{1}_{(0,1)}(u)\cdot\lambda^2se^{-\lambda s} で、uu の関数と ss の関数の積。したがって UU と SS は独立で、UU は一様分布(SS はガンマ分布)。

(3) k−1k - 1 種類そろった後、新しい種類が出るまでの回数 TkT_k は成功確率 n−k+1n\frac{n-k+1}{n} の幾何分布に従い、E[Tk]=nn−k+1E[T_k] = \frac{n}{n-k+1}。T=∑k=1nTkT = \sum_{k=1}^{n}T_k より E[T]=n∑j=1n1jE[T] = n\sum_{j=1}^{n}\frac{1}{j}(≈nlog⁡n\approx n\log n)。

解説・発展
  • (1) の min⁡\min の分布は「独立な指数時計のうち最初に鳴る時刻」で、待ち行列やマルコフ過程の基本。(2) は、ポアソン過程で 2 回目の到着時刻を条件としたとき 1 回目の到着時刻が一様分布になることと同じ事実である。
  • (3) は期待値の線形性だけで計算でき、TkT_k の独立性は不要(分散の計算には独立性を使う)。

問題 10 ★★(収束の型とボレル–カンテリの補題)

X1,X2,…X_1, X_2, \dots は独立で、母数 1 の指数分布に従うとする。

(1) lim sup⁡n→∞Xnlog⁡n=1\limsup_{n \to \infty}\frac{X_n}{\log n} = 1 a.s. を示せ。

(2) Xnlog⁡n\frac{X_n}{\log n} は 00 に確率収束するが、概収束しないことを示せ。

(3) 分布収束するが確率収束しない確率変数列の例を挙げよ。

使う知識:確率論 第2章(ボレル–カンテリの補題)、確率論 第3章(分布収束)

解答

(1) c>0c > 0 に対し P(Xn>clog⁡n)=n−cP(X_n > c\log n) = n^{-c}。c>1c > 1 なら ∑n−c<∞\sum n^{-c} < \infty で、第 1 ボレル–カンテリの補題より a.s. に有限個の nn を除き Xn≤clog⁡nX_n \leq c\log n、よって lim sup⁡Xnlog⁡n≤c\limsup \frac{X_n}{\log n} \leq c。c=1+1mc = 1 + \frac{1}{m} (m∈N)(m \in \mathbb{N}) として可算個の確率 1 の事象の共通部分をとれば lim sup⁡≤1\limsup \leq 1 a.s.。c=1c = 1 では ∑1n=∞\sum \frac{1}{n} = \infty で事象は独立なので、第 2 ボレル–カンテリの補題より Xn>log⁡nX_n > \log n が無限回起こり、lim sup⁡≥1\limsup \geq 1 a.s.。

(2) ε>0\varepsilon > 0 に対し P(Xnlog⁡n>ε)=n−ε→0P\left(\frac{X_n}{\log n} > \varepsilon\right) = n^{-\varepsilon} \to 0 なので確率収束する。しかし (1) より a.s. に lim sup⁡=1≠0\limsup = 1 \neq 0 で、概収束しない。

(3) X∼N(0,1)X \sim N(0,1) とし Xn=−XX_n = -X とおく。XnX_n の分布は XX と同じなので Xn→XX_n \to X は分布収束だが、P(∣Xn−X∣>ε)=P(2∣X∣>ε)P(\lvert X_n - X \rvert > \varepsilon) = P(2\lvert X \rvert > \varepsilon) は nn によらない正の定数で、確率収束しない。

解説・発展
  • 第 2 ボレル–カンテリの補題には独立性が必要。第 1 は独立性なしで使える。答案ではどちらを使ったか、独立性をどこで使ったかを明記する。
  • 「概収束 ⇒\Rightarrow 確率収束 ⇒\Rightarrow 分布収束」で、逆はいずれも一般に成り立たない。ただし極限が定数なら分布収束と確率収束は同値である。

問題 11 ★★(大数の法則と中心極限定理の応用)

(1) lim⁡n→∞∫[0,1]nx12+⋯+xn2x1+⋯+xn dx1⋯dxn\displaystyle\lim_{n \to \infty}\int_{[0,1]^n}\frac{x_1^2 + \cdots + x_n^2}{x_1 + \cdots + x_n}\ dx_1\cdots dx_n を求めよ。

(2) lim⁡n→∞e−n∑k=0nnkk!\displaystyle\lim_{n \to \infty}e^{-n}\sum_{k=0}^{n}\frac{n^k}{k!} を求めよ。

(3) 公平な硬貨を 1000010000 回投げるとき、表が 51005100 回以上出る確率を中心極限定理で近似せよ(Φ(2)≈0.9772\Phi(2) \approx 0.9772 を用いよ。Φ\Phi は標準正規分布の分布関数)。

使う知識:確率論 第2章(大数の強法則)、確率論 第4章(中心極限定理)

解答

(1) U1,U2,…U_1, U_2, \dots を独立な [0,1][0,1] 上の一様分布とすると、積分は E[∑i≤nUi2∑i≤nUi]E\left[\frac{\sum_{i \leq n}U_i^2}{\sum_{i \leq n}U_i}\right] に等しい。大数の強法則より 1n∑Ui2→E[U2]=13\frac{1}{n}\sum U_i^2 \to E[U^2] = \frac{1}{3}, 1n∑Ui→E[U]=12\frac{1}{n}\sum U_i \to E[U] = \frac{1}{2} a.s. なので、比は a.s. に 23\frac{2}{3} に収束する。Ui2≤UiU_i^2 \leq U_i より比は [0,1][0,1] に値をとるので、有界収束定理より極限は 23\frac{2}{3}。

(2) SnS_n を独立な母数 1 のポアソン分布 nn 個の和とすると SnS_n は母数 nn のポアソン分布で、与式は P(Sn≤n)=P(Sn−nn≤0)P(S_n \leq n) = P\left(\frac{S_n - n}{\sqrt{n}} \leq 0\right)。平均 1・分散 1 なので中心極限定理より、これは Φ(0)=12\Phi(0) = \frac{1}{2} に収束する。

(3) 表の回数 SS は平均 50005000、標準偏差 10000⋅14=50\sqrt{10000 \cdot \frac{1}{4}} = 50。P(S≥5100)=P(S−500050≥2)≈1−Φ(2)≈0.023P(S \geq 5100) = P\left(\frac{S - 5000}{50} \geq 2\right) \approx 1 - \Phi(2) \approx 0.023。

解説・発展
  • (1) のように「高次元の積分の極限」を確率変数の平均の極限と読み替えるのは典型的な手法。高次元の立方体の体積はほとんど「平均的な点」の近くに集中する(測度の集中)。
  • (2) の収束は遅く、誤差は O(n−1/2)O(n^{-1/2})(ベリー–エシーンの定理)。(3) で連続補正をすると 1−Φ(1.99)≈0.02331 - \Phi(1.99) \approx 0.0233 となる。

問題 12 ★★★(マルチンゲール)

(1)(ギャンブラーの破産問題)Sn=a+∑k=1nξkS_n = a + \sum_{k=1}^{n}\xi_k(ξk\xi_k は独立で P(ξk=±1)=12P(\xi_k = \pm 1) = \frac{1}{2}, 0<a<N0 < a < N は整数)とし、τ=min⁡{n∣Sn∈{0,N}}\tau = \min\lbrace n \mid S_n \in \lbrace 0, N \rbrace \rbrace とする。E[τ]<∞E[\tau] < \infty を示し、P(Sτ=N)=aNP(S_\tau = N) = \frac{a}{N}、E[τ]=a(N−a)E[\tau] = a(N - a) を示せ。

(2)(ポリアの壺)赤玉 1 個と白玉 1 個の入った壺から玉を 1 個取り出し、それと同じ色の玉を 1 個加えて 2 個とも戻す操作を繰り返す。nn 回後の赤玉の割合 MnM_n はマルチンゲールであり、a.s. に収束し、その極限は [0,1][0,1] 上の一様分布に従うことを示せ。

使う知識:確率論 第5章(任意抽出定理・マルチンゲール収束定理)

解答

(1) どの状態からでも +1+1 が NN 回続けば終わるので P(τ>kN)≤(1−2−N)kP(\tau > kN) \leq (1 - 2^{-N})^k、E[τ]=∑m≥0P(τ>m)≤N∑k(1−2−N)k<∞E[\tau] = \sum_{m \geq 0}P(\tau > m) \leq N\sum_k(1 - 2^{-N})^k < \infty。SnS_n はマルチンゲールで ∣Sn∧τ∣≤N\lvert S_{n \wedge \tau} \rvert \leq N なので、任意抽出定理より E[Sn∧τ]=aE[S_{n \wedge \tau}] = a。n→∞n \to \infty で有界収束定理より E[Sτ]=aE[S_\tau] = a、すなわち N⋅P(Sτ=N)=aN \cdot P(S_\tau = N) = a。次に Sn2−nS_n^2 - n もマルチンゲール(E[Sn+12−Sn2∣Fn]=1E[S_{n+1}^2 - S_n^2 \mid \mathcal{F}_n] = 1)なので E[Sn∧τ2]=a2+E[n∧τ]E[S_{n \wedge \tau}^2] = a^2 + E[n \wedge \tau]。n→∞n \to \infty で左辺は有界収束定理により E[Sτ2]=N2⋅aN=aNE[S_\tau^2] = N^2\cdot\frac{a}{N} = aN、右辺は単調収束定理により a2+E[τ]a^2 + E[\tau]。よって E[τ]=aN−a2=a(N−a)E[\tau] = aN - a^2 = a(N - a)。

(2) nn 回後の玉は n+2n + 2 個で、赤玉の数を RnR_n とすると Mn=Rnn+2M_n = \frac{R_n}{n+2}。E[Rn+1∣Fn]=Rn+MnE[R_{n+1} \mid \mathcal{F}_n] = R_n + M_n より

E[Mn+1∣Fn]=Rn+Rnn+2n+3=Rnn+2=MnE[M_{n+1} \mid \mathcal{F}_n] = \frac{R_n + \frac{R_n}{n+2}}{n+3} = \frac{R_n}{n+2} = M_n

0≤Mn≤10 \leq M_n \leq 1 なのでマルチンゲール収束定理により a.s. に収束する。赤 kk 回・白 n−kn-k 回の特定の順序の確率は、分子が k! (n−k)!k!\ (n-k)!、分母が 2⋅3⋯(n+1)=(n+1)!2 \cdot 3 \cdots (n+1) = (n+1)! なので、P(Rn=k+1)=(nk)k!(n−k)!(n+1)!=1n+1P(R_n = k+1) = \binom{n}{k}\frac{k!(n-k)!}{(n+1)!} = \frac{1}{n+1} (0≤k≤n)(0 \leq k \leq n)。MnM_n は {1n+2,…,n+1n+2}\lbrace \frac{1}{n+2}, \dots, \frac{n+1}{n+2} \rbrace 上の一様分布で、[0,1][0,1] 上の一様分布に分布収束する。概収束は分布収束を導くので、極限は一様分布に従う。

解説・発展
  • 任意抽出定理の適用では、(i) 停止時刻が有界、(ii) 停止過程が有界で τ<∞\tau < \infty a.s.、(iii) E[τ]<∞E[\tau] < \infty かつ増分が有界、のどれかを確認する。「E[Sτ]=E[S0]E[S_\tau] = E[S_0]」だけを書く答案は減点される(上界 NN をなくし、11 から出発して 00 に到達した時刻で止めると、τ<∞\tau < \infty a.s. だが E[Sτ]=0≠1E[S_\tau] = 0 \neq 1)。
  • 非対称なら(P(ξ=1)=p≠12P(\xi = 1) = p \neq \frac{1}{2})(q/p)Sn(q/p)^{S_n} がマルチンゲールで、P(Sτ=N)=1−(q/p)a1−(q/p)NP(S_\tau = N) = \frac{1 - (q/p)^a}{1 - (q/p)^N}(q=1−pq = 1 - p)。

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