この章の目標
- 概収束・確率収束・Lp 収束・分布収束の関係を証明し、反例を挙げられる
- ポルトマントー定理、ヘリーの選出定理とプロホロフの定理(R 上)を証明できる
- 特性関数を計算し、反転公式・一意性定理・レヴィの連続性定理を証明して使える
- 特性関数の滑らかさとモーメントの関係を説明できる
前提:第1章、第2章、06-measure-integration 第4章
3.1 収束の 4 つの型
大数の法則は「Sn/n が定数に近づく」ことを述べた。次章の中心極限定理は「(Sn−nm)/n の分布が正規分布に近づく」ことを述べる。これは確率変数そのものではなく分布の収束であり、確率変数が同じ確率空間上にある必要すらない。この章ではまず収束概念を整理し、分布の収束を調べる強力な道具である特性関数を導入する。
定義 3.1 確率変数 Xn,X について(概収束・確率収束は定義 2.1)
- p>0 とする。E[∣Xn−X∣p]→0 のとき Xn は X に Lp 収束するといい、XnLpX と書く。
- X の分布関数 F のすべての連続点 x で FXn(x)→F(x) となるとき、Xn は X に分布収束 (convergence in distribution) するといい、XndX と書く。
分布収束は分布だけで決まる概念で、Xn と X は別々の確率空間上にあってよい。連続点に限るのは、Xn=1/n が X=0 に「近づく」ことを含めたいからである(FXn(0)=0→1=FX(0))。
定理 3.2(収束の関係)
- Xn→X a.s. ならば XnPX。
- XnLpX ならば XnPX。また 0<p<q のとき Lq 収束すれば Lp 収束する。
- XnPX ならば、部分列 Xnk で Xnk→X a.s. となるものがある。
- XnPX ならば XndX。
- 定数 c について Xndc ならば XnPc。
証明. 1. An={∣Xn−X∣>ε} とおくと limsupnAn⊂{Xn→X} は零集合なので、P(An)≤P(⋃k≥nAk)→P(limsupkAk)=0。
-
マルコフの不等式 P(∣Xn−X∣>ε)≤E[∣Xn−X∣p]/εp。後半はリャプノフの不等式(例 1.20)。
-
P(∣Xnk−X∣>2−k)<2−k となる増加列 nk をとると、ボレル–カンテリの第 1 補題より a.s. で有限個の k を除き ∣Xnk−X∣≤2−k。
-
x を F=FX の連続点、ε>0 とすると
FXn(x)≤F(x+ε)+P(∣Xn−X∣>ε),F(x−ε)≤FXn(x)+P(∣Xn−X∣>ε)
(たとえば Xn≤x かつ ∣Xn−X∣≤ε なら X≤x+ε)。n→∞ として F(x−ε)≤liminfnFXn(x)≤limsupnFXn(x)≤F(x+ε) を得て、ε→0 とすればよい。
- X=c の分布関数は 1[c,∞) で、c±ε は連続点だから、P(∣Xn−c∣>ε)≤FXn(c−ε)+1−FXn(c+ε)→0+1−1=0。□
例 3.3(逆が成り立たない例)
- 確率収束・Lp 収束するが概収束しない:Xn を独立で P(Xn=1)=1/n、P(Xn=0)=1−1/n とする。E[∣Xn∣p]=1/n→0 だが、∑n1/n=∞ かつ ∑n(1−1/n)=∞ なので、第 2 補題より Xn=1 も Xn=0 も a.s. で無限回起こり、Xn は確率 1 で収束しない。
- 概収束するが L1 収束しない:([0,1],λ) 上で Xn=n1(0,1/n)。Xn→0 a.s. だが E[Xn]=1。
- 分布収束するが確率収束しない:X∼N(0,1)、Xn=−X とすると Xn=dX なので XndX だが、P(∣Xn−X∣>ε)=P(∣X∣>ε/2) は 0 に近づかない。
3.2 分布の弱収束とポルトマントー定理
分布関数の収束を、確率測度の言葉で言い換える。
定義 3.5(弱収束, weak convergence)Rd 上の確率測度 μn,μ について、すべての有界連続関数 f∈Cb(Rd) で ∫f dμn→∫f dμ となるとき、μn は μ に弱収束するといい、μn⇒μ と書く。
これは 06-measure-integration 第8章 定義 8.11 の弱収束と同じものである。定理 1.12 により ∫f dμX=E[f(X)] なので、確率変数の言葉では「すべての f∈Cb で E[f(Xn)]→E[f(X)]」となる。
定理 3.6(ポルトマントー定理, portmanteau theorem)R 上の確率測度 μn,μ と、それらの分布関数 Fn,F について、次は同値である。
- F のすべての連続点 x で Fn(x)→F(x)。
- μn⇒μ。
- すべての閉集合 C について limsupnμn(C)≤μ(C)。
- すべての開集合 G について liminfnμn(G)≥μ(G)。
- μ(∂A)=0 を満たすすべてのボレル集合 A について μn(A)→μ(A)。
証明. 2 ⇒ 3:閉集合 C に対し fk(x)=max{0,1−k d(x,C)} とおくと、fk∈Cb、1C≤fk で、C が閉なので fk↓1C。よって limsupnμn(C)≤limn∫fk dμn=∫fk dμ で、k→∞ とすれば優収束定理より右辺は μ(C) に収束する。
3 ⇔ 4:補集合をとればよい。
3, 4 ⇒ 5:A∘⊂A⊂A より
μ(A∘)≤nliminfμn(A∘)≤nliminfμn(A)≤nlimsupμn(A)≤nlimsupμn(A)≤μ(A)
μ(∂A)=0 なら両端は μ(A) に等しい。
5 ⇒ 1:x が F の連続点なら μ(∂(−∞,x])=μ({x})=0。
1 ⇒ 2:f∈Cb、M=sup∣f∣、ε>0 とする。F の不連続点は高々可算(問題 1.1)なので連続点は稠密であり、F の連続点 a<b で F(a)<ε、1−F(b)<ε となるものがとれる。f は [a,b] 上一様連続なので、連続点 a=t0<t1<⋯<tr=b を細かくとって、x∈(tj−1,tj] のとき ∣f(x)−f(tj)∣<ε とできる。g=∑jf(tj)1(tj−1,tj] とおくと、1 より ∫g dμn=∑jf(tj)(Fn(tj)−Fn(tj−1))→∫g dμ。また
∫f dμn−∫g dμn≤ε+M(Fn(a)+1−Fn(b))→ε+M(F(a)+1−F(b))<ε+2Mε
であり、μ についても同じ評価が成り立つ。よって limsupn∣∫f dμn−∫f dμ∣≤2ε(1+2M)。□
したがって XndX と μXn⇒μX は同値である。2〜5 の同値性は一般の距離空間上の確率測度についても成り立ち、Rd 値の確率ベクトルの分布収束は 2 で定義する。
系 3.7(連続写像定理)XndX で g:R→R が連続ならば、g(Xn)dg(X)。
証明. f∈Cb なら f∘g∈Cb なので E[f(g(Xn))]→E[f(g(X))]。□
分布収束は分布についての主張だが、次の定理により概収束の問題に帰着できることが多い。
定理 3.8(スコロホッドの表現定理, Skorokhod representation theorem)R 上の確率測度について μn⇒μ ならば、ある確率空間上の確率変数 Yn∼μn、Y∼μ で Yn→Y a.s. となるものが存在する。
ここでは主張のみ述べる。R 上では、((0,1),λ) 上で分位点関数 Yn=Fn−1、Y=F−1(定理 1.7 の証明)をとればよく、F−1 の連続点(可算個を除くすべての u)で Fn−1(u)→F−1(u) となることを示せばよい(Durrett の教科書を参照)。一般の可分完備距離空間でも成り立つ。
3.3 タイトネスとヘリーの選出定理
コンパクト性の議論(有界列は収束部分列をもつ)を確率測度の列に対して行いたい。しかし μn=δn(点 n の単位質量)は、どの部分列も確率測度に弱収束しない。分布関数は各点で Fn(x)→0 に収束するが、極限は分布関数ではない。質量が無限遠に逃げるのである。
定理 3.9(ヘリーの選出定理, Helly's selection theorem)分布関数の列 Fn に対し、部分列 Fnk と、単調非減少・右連続で 0≤G≤1 を満たす関数 G が存在して、G のすべての連続点 x で Fnk(x)→G(x) となる。
証明. 有理数を q1,q2,… と並べる。(Fn(q1))n は [0,1] の有界列なので収束部分列をもつ。そのさらに部分列で q2 での値が収束するものをとり、以下これを繰り返して対角線論法を用いれば、部分列 nk ですべての q∈Q について Fnk(q)→H(q) となるものが得られる。H は Q 上単調非減少である。
G(x)=inf{H(q)∣q∈Q, q>x}
とおくと G は単調非減少で 0≤G≤1。右連続性:x と ε>0 に対し H(q)<G(x)+ε となる有理数 q>x があり、x<y<q なら G(y)≤H(q)<G(x)+ε。
x を G の連続点とし、ε>0 とする。有理数 r1<r2<x<s を G(x)−ε<G(r1)、G(s)<G(x)+ε となるようにとる。G の定義と H の単調性から H(r2)≥G(r1) かつ H(s)≤G(s) である。Fnk(r2)≤Fnk(x)≤Fnk(s) で k→∞ とすると
G(x)−ε<G(r1)≤H(r2)≤kliminfFnk(x)≤klimsupFnk(x)≤H(s)≤G(s)<G(x)+ε□
極限 G が分布関数になる(G(−∞)=0、G(∞)=1)ためには、質量が逃げないことが必要である。
定義 3.10(タイト, tight)R 上の確率測度の族 {μλ} がタイトであるとは、任意の ε>0 に対し M>0 があって supλμλ(R∖[−M,M])<ε となることをいう。
定理 3.11(プロホロフの定理, Prokhorov's theorem, R の場合)R 上の確率測度の列 {μn} について、次は同値である。
- {μn} はタイトである。
- 任意の部分列が、ある確率測度に弱収束する部分列をもつ。
証明. 1 ⇒ 2:部分列にヘリーの選出定理を適用して Fnk→G(G の連続点で)とする。ε>0 に対しタイト性の M をとり、M′>M を ±M′ がともに G の連続点となるようにとる。G(M′)=limkFnk(M′)≥1−ε、G(−M′)≤ε なので、G(∞)=1、G(−∞)=0 であり、G は分布関数である(定理 1.7)。ポルトマントー定理より μnk は G の定める確率測度に弱収束する。
2 ⇒ 1:タイトでないとすると、ε>0 と部分列 nk で μnk(R∖[−k,k])≥ε となるものがある。仮定よりさらに部分列が確率測度 μ に弱収束する。閉集合 R∖(−M,M) にポルトマントー定理を適用すると、k≥M なら μnk(R∖(−M,M))≥ε だから μ(R∖(−M,M))≥ε。これがすべての M で成り立つことは μ(R)=1 に矛盾する。□
特に、弱収束する列はタイトである(2 が自明に成り立つ)。
系 3.12 {μn} がタイトで、弱収束する部分列の極限がすべて同じ確率測度 μ ならば、μn⇒μ。
証明. そうでなければ、f∈Cb、ε>0、部分列 nk で ∣∫f dμnk−∫f dμ∣≥ε となるものがある。定理 3.11 よりさらに部分列が弱収束し、仮定よりその極限は μ なので矛盾する。□
3.4 特性関数
独立な確率変数の和の分布は畳み込みで与えられ(例 1.27)、n 回の畳み込みを直接扱うのは難しい。フーリエ変換は畳み込みを積に変える。これが特性関数を使う理由である。
定義 3.13(特性関数, characteristic function)確率変数 X(分布 μ)の特性関数を
φX(t)=E[eitX]=∫Reitx μ(dx)(t∈R)
で定める。Rd 値の確率ベクトルについては φX(t)=E[ei⟨t,X⟩](t∈Rd)とする。
∣eitX∣=1 なので、特性関数はどんな分布に対しても定義される(モーメント母関数 E[etX] は存在しないことがある)。φX は分布 μ のフーリエ変換である(18-pde 第2章 の f^(ξ)=∫e−ixξf(x) dx とは指数の符号が逆で、X が密度 f をもてば φX(t)=f^(−t) である)。
命題 3.14 特性関数 φ=φX について次が成り立つ。
- φ(0)=1、∣φ(t)∣≤1、φ(−t)=φ(t)。
- φ は R 上一様連続である。
- φaX+b(t)=eibtφX(at)。
- X と Y が独立ならば φX+Y=φXφY。
証明. 1 と 3 は定義から明らか。2:∣φ(t+h)−φ(t)∣≤E[∣eihX−1∣] であり、右辺は t によらず、優収束定理より h→0 で 0 に収束する。4:eitX と eitY は独立な有界複素確率変数なので、実部・虚部に分けて定理 1.25 を使えば E[eitXeitY]=E[eitX]E[eitY]。□
例 3.15(特性関数の計算)
- B(n,p):(1−p+peit)n(Be(p) の特性関数 1−p+peit の n 乗)。
- Po(λ):∑ke−λk!λkeitk=exp(λ(eit−1))。
- U(−a,a):2a1∫−aaeitx dx=atsinat(t=0)。
- Exp(λ):∫0∞λe−λxeitx dx=λ−itλ。
- N(0,1):e−t2/2。実際 φ(t)=2π1∫eitxe−x2/2 dx は積分記号下で微分でき(優関数 ∣x∣e−x2/2、06-measure-integration 第3章 定理 3.25)、部分積分すると
φ′(t)=2π1∫ixeitxe−x2/2 dx=2πi∫eitx(−e−x2/2)′ dx=−tφ(t)
φ(0)=1 と合わせて φ(t)=e−t2/2。命題 3.14 の 3 より N(m,σ2) の特性関数は eimt−σ2t2/2 である。
特性関数から分布を復元する公式が次の反転公式である。以下 S(u)=∫0uvsinv dv とおく。S は奇関数で有界であり、ディリクレ積分により u→∞ で S(u)→π/2 となる(05-complex-analysis 第5章)。
定理 3.16(反転公式, inversion formula)μ を R 上の確率測度、φ をその特性関数とする。a<b について
T→∞lim2π1∫−TTite−ita−e−itbφ(t) dt=μ((a,b))+21μ({a})+21μ({b})
証明. ite−ita−e−itb=∫abe−ity dy≤b−a なので、[−T,T]×R 上でフビニの定理が使え、左辺の積分は
IT=∫R(2π1∫−TTiteit(x−a)−eit(x−b) dt)μ(dx)
に等しい。内側の被積分関数の実部 tsint(x−a)−sint(x−b) は t の偶関数、虚部 −tcost(x−a)−cost(x−b) は有界な奇関数なので、内側の積分は
π1(S(T(x−a))−S(T(x−b)))
となる。これは T,x について有界で、T→∞ のとき x<a または x>b なら 0、x=a または x=b なら 1/2、a<x<b なら 1 に収束する。有界収束定理より結論を得る。□
系 3.17(一意性定理)特性関数が等しい確率測度は等しい。
証明. 二つの確率測度 μ,ν の原子(正の質量をもつ点)は高々可算個である。a,b がどちらの原子でもなければ、反転公式より μ((a,b])=ν((a,b])。そのような a→−∞ をとれば、原子でない b で分布関数が一致し、右連続性からすべての b で一致する。定理 1.7 より μ=ν。□
定理 3.18(密度の反転公式)∫R∣φ(t)∣ dt<∞ ならば、μ は有界連続な密度
f(x)=2π1∫Re−itxφ(t) dt
をもつ。
証明. 反転公式の被積分関数は (b−a)∣φ(t)∣ で抑えられるので、左辺は R 上の積分になり、その絶対値は 2πb−a∫∣φ∣ 以下である。b↓a とすれば μ({a})=0、すなわち μ は原子をもたない。すると反転公式とフビニの定理から μ((a,b))=2π1∫(∫abe−itx dx)φ(t) dt=∫abf(x) dx。優収束定理より f は連続で、∣f∣≤2π1∫∣φ∣。すべての区間上の積分が非負の実数なので f は非負実数値であり、区間上で一致する二つの測度は等しいから μ(dx)=f(x) dx。□
例 3.19(コーシー分布の特性関数)密度 21e−∣x∣ の分布(ラプラス分布)の特性関数は 21(1−it1+1+it1)=1+t21 で、可積分である。定理 3.18 より 21e−∣x∣=2π1∫e−itx1+t21 dt、すなわち
∫Re−itxπ(1+t2)1 dt=e−∣x∣
よってコーシー分布の特性関数は e−∣t∣ である。これは t=0 で微分できず、平均が存在しないことに対応する(定理 3.24 参照)。
3.5 レヴィの連続性定理
特性関数の各点収束が分布収束と同値であることを示す。これが中心極限定理の証明の骨格になる。
補題 3.20 確率測度 μ と特性関数 φ、u>0 について
μ({x∣∣x∣≥2/u})≤u1∫−uu(1−φ(t)) dt
証明. u1∫−uu(1−eitx) dt=2−ux2sinux(x=0 では 0)である。フビニの定理より右辺は ∫2(1−uxsinux)μ(dx) に等しい。被積分関数は非負で、∣ux∣≥2 では uxsinux≤21 より 1 以上である。□
定理 3.21(レヴィの連続性定理, Lévy's continuity theorem)μn を確率測度、φn をその特性関数とする。
- μn⇒μ ならば、すべての t で φn(t)→φμ(t)。
- すべての t で φn(t) がある関数 φ(t) に収束し、φ が t=0 で連続ならば、φ はある確率測度 μ の特性関数で μn⇒μ。
証明. 1. costx と sintx は x の有界連続関数である。
- まずタイト性を示す。φ(0)=limφn(0)=1 で φ は 0 で連続だから、ε>0 に対し u>0 を u1∫−uu∣1−φ(t)∣ dt<ε となるようにとれる。∣1−φn∣≤2 なので有界収束定理より u1∫−uu(1−φn)→u1∫−uu(1−φ)。補題 3.20 より、ある N 以降のすべての n で μn({∣x∣≥2/u})<2ε。有限個の n<N についても M を大きくとれば μn({∣x∣>M})<2ε とできるので、{μn} はタイトである。定理 3.11 より任意の部分列はさらに部分列が確率測度 ν に弱収束し、1 より φν=limφn=φ。一意性定理より ν は部分列によらないので、系 3.12 より μn 全体がこの ν=:μ に弱収束する。□
例 3.22(連続性の仮定は外せない)μn=N(0,n) とすると φn(t)=e−nt2/2 は t=0 で 0、t=0 で 1 に収束する。極限は 0 で不連続で、実際 μn は弱収束しない(質量が ±∞ に逃げる)。
3.6 モーメントとの関係
特性関数の t=0 の近くでの滑らかさは、分布の裾の軽さ(モーメントの存在)に対応する。次の補題は次章でも使う。
補題 3.23 x∈R、n∈Z≥0 について
eix−k=0∑nk!(ix)k≤min{(n+1)!∣x∣n+1,n!2∣x∣n}
証明. 左辺の絶対値の中を Rn(x) とおく。Rn(0)=0、Rn′=iRn−1(n≥1)なので Rn(x)=i∫0xRn−1(s) ds。R0(x)=eix−1=i∫0xeis ds より ∣R0(x)∣≤min{∣x∣,2}。n−1 で成り立つとすると
∣Rn(x)∣≤∫0∣x∣min{n!sn,(n−1)!2sn−1}ds≤min{(n+1)!∣x∣n+1,n!2∣x∣n}□
定理 3.24 E[∣X∣n]<∞ ならば φ=φX は Cn 級で、k≤n について φ(k)(t)=E[(iX)keitX]、特に φ(k)(0)=ikE[Xk] である。さらに t→0 のとき
φ(t)=k=0∑nk!(it)kE[Xk]+o(∣t∣n)
証明. ∣∂tkeitx∣=∣x∣k は k≤n で μX-可積分なので、積分記号下の微分を繰り返してよく、導関数の連続性は優収束定理から従う。展開については補題 3.23 より
φ(t)−k=0∑nk!(it)kE[Xk]≤∣t∣nE[min{(n+1)!∣t∣∣X∣n+1,n!2∣X∣n}]
であり、右辺の期待値は 2∣X∣n/n! を優関数とする優収束定理により t→0 で 0 に収束する。□
特に E[X]=0、E[X2]=σ2 なら φ(t)=1−2σ2t2+o(t2) であり、これが次章の中心極限定理の出発点である。
まとめ
- 概収束 ⇒ 確率収束 ⇒ 分布収束、Lp 収束 ⇒ 確率収束。確率収束すれば概収束する部分列がある。逆はいずれも成り立たない。
- 分布収束は確率測度の弱収束(有界連続関数の積分の収束)と同値で、閉集合・開集合・境界が零集合の集合による特徴づけがある(ポルトマントー定理)。
- ヘリーの選出定理により分布関数の列は部分列が収束するが、極限が確率分布になるにはタイト性(質量が無限遠に逃げない)が必要十分である(プロホロフの定理)。
- 特性関数 φX(t)=E[eitX] は常に存在し、独立な和を積に変える。反転公式により分布を一意に定める。
- レヴィの連続性定理:特性関数が各点収束し極限が 0 で連続ならば分布収束する。
- E[∣X∣n]<∞ なら φ は Cn 級で、t=0 での展開の係数がモーメントを与える。
演習問題
問題 3.1 ★ 特性関数を用いて、独立な X∼Po(λ)、Y∼Po(μ) の和が Po(λ+μ) に従うことを示せ。
解答
命題 3.14 と例 3.15 より φX+Y(t)=eλ(eit−1)eμ(eit−1)=e(λ+μ)(eit−1) で、これは Po(λ+μ) の特性関数である。一意性定理より結論を得る。
問題 3.2 ★ Xn を {1/n,2/n,…,n/n} 上の一様分布に従う確率変数とする。XndU(U∼U(0,1))を示せ。また A=Q について P(Xn∈A)→P(U∈A) であることを確かめ、ポルトマントー定理の 5 と矛盾しない理由を述べよ。
解答
x∈[0,1] で FXn(x)=⌊nx⌋/n→x、x<0 で 0、x>1 で 1 なので、すべての点で U の分布関数に収束する。P(Xn∈Q)=1、P(U∈Q)=0 である。∂Q=R で P(U∈∂Q)=1=0 なので、5 の仮定を満たさない。
問題 3.3 ★★(スルツキーの定理)XndX、Yndc(定数)ならば Xn+YndX+c を示せ。
解答
定理 3.2 の 5 より YnPc。f∈Cb、ε>0 とする。(Xn) の分布は弱収束するのでタイトであり、supnP(∣Xn∣>M)<ε となる M がある。f は [−M−∣c∣−1,M+∣c∣+1] 上一様連続なので、0<δ≤1 を ∣x−y∣≤δ ならそこで ∣f(x)−f(y)∣<ε となるようにとる。∣Xn∣≤M かつ ∣Yn−c∣≤δ の上では ∣f(Xn+Yn)−f(Xn+c)∣<ε なので
∣E[f(Xn+Yn)]−E[f(Xn+c)]∣≤ε+2sup∣f∣(ε+P(∣Yn−c∣>δ))
系 3.7 より E[f(Xn+c)]→E[f(X+c)] なので、limsupn∣E[f(Xn+Yn)]−E[f(X+c)]∣≤ε(1+2sup∣f∣)。同様にして YnXndcX も示せる。
問題 3.4 ★★ X1,X2,… をコーシー分布に従う i.i.d. とする。Sn/n もコーシー分布に従うことを示し、大数の法則との関係を述べよ。
解答
例 3.19 より φSn/n(t)=φ(t/n)n=(e−∣t∣/n)n=e−∣t∣ なので、一意性定理より Sn/n はコーシー分布に従う。標本平均の分布は n によらず、どの定数にも確率収束しない。E[∣X1∣]=∞ なので大数の法則の仮定を満たさず、注意 2.8 と整合する。
問題 3.5 ★★ Xn∼N(mn,σn2)(σn≥0、N(m,0)=δm)とする。Xn がある確率変数に分布収束するための必要十分条件は mn→m、σn→σ(有限)となることであり、極限は N(m,σ2) であることを示せ。
解答
十分性:φn(t)=eimnt−σn2t2/2→eimt−σ2t2/2 は連続なので、レヴィの連続性定理と一意性定理による。必要性:φn→φ(極限の特性関数)とすると ∣φn(t)∣=e−σn2t2/2→∣φ(t)∣。φ は連続で φ(0)=1 なので、小さい t=0 で ∣φ(t)∣>0 となり、σn2→−2log∣φ(t)∣/t2=:σ2<∞。次に分布がタイトなので supnP(∣Xn∣>M)<1/4 となる M がある。∣mn∣>M なら P(∣Xn∣>M)≥P(Xn が mn と同じ側)≥1/2 となるので ∣mn∣≤M。mn の二つの集積点 m,m′ について eimt=eim′t(すべての t)となるから m=m′ で、mn は収束する。
問題 3.6 ★★ φ が特性関数ならば ∣φ∣2 と Reφ も特性関数であることを示せ。
解答
X の独立なコピー X′ をとると(定理 1.33)、φX−X′(t)=φ(t)φ(−t)=φ(t)φ(t)=∣φ(t)∣2。また X と独立で P(ε=±1)=1/2 となる ε をとると、φεX(t)=21(φ(t)+φ(−t))=Reφ(t)。
問題 3.7 ★★ XnPX であるための必要十分条件は、任意の部分列がさらに X に概収束する部分列をもつことであることを示せ。これを用いて、g が連続なら g(Xn)Pg(X) となることを示せ。
解答
必要性は定理 3.2 の 3 を部分列に適用すればよい。十分性:確率収束しないとすると、ε,δ>0 と部分列 nk で P(∣Xnk−X∣>ε)≥δ となるものがある。仮定からそのさらに部分列が概収束し、したがって確率収束するので矛盾。後半:任意の部分列に対し、X に概収束するさらに部分列をとれば、g の連続性からそれに沿って g(Xn)→g(X) a.s.。前半より g(Xn)Pg(X)。
問題 3.8 ★★★ 特性関数 φ が t=0 で 2 回微分可能ならば E[X2]<∞ であり、φ′′(0)=−E[X2] であることを示せ。
解答
φ は 0 の近くで微分可能で φ′ が 0 で微分可能なので、テイラーの定理(ペアノ剰余)より h2φ(h)+φ(−h)−2→φ′′(0)(h→0)。一方
h2φ(h)+φ(−h)−2=−E[h22−2coshX]=−E[h24sin2(hX/2)]
で、被積分関数は非負で h→0 のとき X2 に収束する。ファトゥの補題より E[X2]≤liminfh→0E[h24sin2(hX/2)]=−φ′′(0)<∞。すると定理 3.24 より φ′′(0)=−E[X2]。