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20 総合演習(大学院入試・修士レベル) · 第 3 章

代数学

目安 7〜12 時間演習 12 問

この章のねらい

  • 群・環・体の院試典型問題(シローの定理による構造決定、剰余環の同定、既約性判定、ガロア群の計算)を、答案として論理の穴なく書けるようにする
  • 「位数を数える」「準同型定理で剰余環を同定する」「次数を掛け算する」という代数の基本動作を身につける

前提:代数学(群・環・体)

目安:★ は 20 分、★★ は 30〜40 分、★★★ は 50 分。

問題 1 ★(pp 群と類等式)

pp を素数とする。

(1) 位数 pnp^n (n≥1)(n \geq 1) の群 GG の中心 Z(G)Z(G) は自明でないことを示せ。

(2) G/Z(G)G/Z(G) が巡回群ならば GG はアーベル群であることを示し、位数 p2p^2 の群はアーベル群であることを導け。

(3) 位数 p3p^3 の非アーベル群 GG について、∣Z(G)∣=p\lvert Z(G) \rvert = p を示し、共役類の個数を求めよ。

使う知識:代数学 第3章(類等式)

解答

(1) 類等式 ∣G∣=∣Z(G)∣+∑i[G:CG(xi)]\lvert G \rvert = \lvert Z(G) \rvert + \sum_i [G : C_G(x_i)](和は中心に含まれない共役類の代表元)において、各 [G:CG(xi)][G : C_G(x_i)] は ∣G∣\lvert G \rvert の 11 でない約数だから pp の倍数。よって p∣∣Z(G)∣p \mid \lvert Z(G) \rvert で、Z(G)≠{1}Z(G) \neq \lbrace 1 \rbrace。

(2) G/Z(G)=⟨gZ(G)⟩G/Z(G) = \langle gZ(G) \rangle とすると、GG の元は gazg^a z(z∈Z(G)z \in Z(G))の形で、gaz⋅gbw=ga+bzw=gbw⋅gazg^a z \cdot g^b w = g^{a+b}zw = g^b w \cdot g^a z。よって GG はアーベル群。位数 p2p^2 のとき、(1) より ∣Z(G)∣∈{p,p2}\lvert Z(G) \rvert \in \lbrace p, p^2 \rbrace。∣Z(G)∣=p\lvert Z(G) \rvert = p なら G/Z(G)G/Z(G) は位数 pp で巡回群となり、GG がアーベルで Z(G)=GZ(G) = G となって矛盾。よって Z(G)=GZ(G) = G。

(3) (1) より ∣Z(G)∣∈{p,p2}\lvert Z(G) \rvert \in \lbrace p, p^2 \rbrace(GG は非アーベルなので p3p^3 でない)。p2p^2 なら G/Z(G)G/Z(G) が位数 pp で巡回となり (2) に反する。よって ∣Z(G)∣=p\lvert Z(G) \rvert = p。x∉Z(G)x \notin Z(G) なら CG(x)⊃⟨Z(G),x⟩⊋Z(G)C_G(x) \supset \langle Z(G), x \rangle \supsetneq Z(G) かつ CG(x)≠GC_G(x) \neq G なので ∣CG(x)∣=p2\lvert C_G(x) \rvert = p^2、共役類の大きさは pp。中心外の共役類は (p3−p)/p=p2−1(p^3 - p)/p = p^2 - 1 個で、共役類の総数は p+p2−1p + p^2 - 1。

解説・発展
  • p=2p = 2 のとき D4D_4(位数 8 の二面体群)と Q8Q_8(四元数群)の共役類はともに 5=4+2−15 = 4 + 2 - 1 個で、確かに一致する。位数 p3p^3 の非アーベル群は同型を除いてちょうど 2 つある。
  • (2) の「G/Z(G)G/Z(G) は巡回群にならない(自明でない限り)」は群の構造決定で頻繁に使う。

問題 2 ★★(シローの定理:位数 105 の群)

GG を位数 105=3⋅5⋅7105 = 3 \cdot 5 \cdot 7 の群とする。

(1) GG のシロー 5 部分群またはシロー 7 部分群の少なくとも一方は正規部分群であることを示せ。

(2) GG は位数 35 の巡回正規部分群をもち、シロー 5 部分群とシロー 7 部分群はともに正規であることを示せ。

(3) 位数 105 の群は同型を除いてちょうど 2 つあることを示せ。

使う知識:代数学 第3章(シローの定理)、代数学 第4章(半直積)

解答

(1) シローの定理より n7≡1(mod7)n_7 \equiv 1 \pmod 7, n7∣15n_7 \mid 15 から n7∈{1,15}n_7 \in \lbrace 1, 15 \rbrace、同様に n5∈{1,21}n_5 \in \lbrace 1, 21 \rbrace。n7=15n_7 = 15 かつ n5=21n_5 = 21 とすると、位数 7 の元が 15⋅6=9015 \cdot 6 = 90 個、位数 5 の元が 21⋅4=8421 \cdot 4 = 84 個となり、合計が 105105 を超えて矛盾。

(2) (1) より P5P_5, P7P_7(シロー部分群)の一方は正規なので、H=P5P7H = P_5 P_7 は位数 35 の部分群である。GG の G/HG/H(3 個の剰余類)への左乗法作用から準同型 ρ ⁣:G→S3\rho\colon G \to \mathfrak{S}_3 を得る。K=ker⁡ρ⊂HK = \ker\rho \subset H で、[G:K][G:K] は ∣S3∣=6\lvert \mathfrak{S}_3 \rvert = 6 と 105105 の公約数なので 33 の約数、かつ [G:K]≥[G:H]=3[G:K] \geq [G:H] = 3。よって K=HK = H で H⊴GH \trianglelefteq G。位数 35 の群では n5∣7n_5 \mid 7, n5≡1(mod5)n_5 \equiv 1 \pmod 5 より n5=1n_5 = 1、同様に n7=1n_7 = 1 なので H≅Z/5Z×Z/7Z≅Z/35ZH \cong \mathbb{Z}/5\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/7\mathbb{Z} \cong \mathbb{Z}/35\mathbb{Z}。GG の任意のシロー 5 部分群 PP は、G/HG/H の位数 3 と互いに素なので HH に含まれ、HH の位数 5 の部分群は一つだから n5(G)=1n_5(G) = 1。n7(G)=1n_7(G) = 1 も同様。

(3) QQ をシロー 3 部分群とすると H∩Q=1H \cap Q = 1, HQ=GHQ = G で、G≅H⋊φQG \cong H \rtimes_{\varphi} Q(φ ⁣:Q→Aut⁡(H)\varphi\colon Q \to \operatorname{Aut}(H))。Aut⁡(H)≅(Z/5Z)××(Z/7Z)×≅Z/4Z×Z/6Z\operatorname{Aut}(H) \cong (\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^{\times} \times (\mathbb{Z}/7\mathbb{Z})^{\times} \cong \mathbb{Z}/4\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/6\mathbb{Z} で、位数 3 の元は第 2 成分の 2,4∈(Z/7Z)×2, 4 \in (\mathbb{Z}/7\mathbb{Z})^{\times} のみ。

  • φ\varphi が自明なら G≅Z/35Z×Z/3Z≅Z/105ZG \cong \mathbb{Z}/35\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/3\mathbb{Z} \cong \mathbb{Z}/105\mathbb{Z}。
  • φ\varphi が非自明なら、QQ の生成元 yy が P7P_7 に x↦x2x \mapsto x^2 または x↦x4x \mapsto x^4 で作用し、P5P_5 には自明に作用する。yy を y−1=y2y^{-1} = y^2 に取り替えると 2 つの場合は入れ替わるので、G≅Z/5Z×(Z/7Z⋊Z/3Z)G \cong \mathbb{Z}/5\mathbb{Z} \times (\mathbb{Z}/7\mathbb{Z} \rtimes \mathbb{Z}/3\mathbb{Z})(非アーベル)に一意に定まる。

したがって同型類はちょうど 2 つである。

解説・発展
  • (1) の「元の個数を数えて矛盾を導く」論法はシローの定理の応用の定番。(2) の議論は「位数の最小素因数を指数とする部分群は正規」という一般的事実の証明そのものである。
  • 半直積の同型判定では「作用の像が同じ部分群になれば同型」が目安になる(厳密には Aut⁡(Q)\operatorname{Aut}(Q) と Aut⁡(H)\operatorname{Aut}(H) の作用で移り合うこと)。

問題 3 ★★(有限体上の一般線形群)

pp を素数とし、G=GL⁡2(Fp)G = \operatorname{GL}_2(\mathbb{F}_p) とする。

(1) ∣G∣\lvert G \rvert と ∣SL⁡2(Fp)∣\lvert \operatorname{SL}_2(\mathbb{F}_p) \rvert を求め、G/SL⁡2(Fp)≅Fp×G/\operatorname{SL}_2(\mathbb{F}_p) \cong \mathbb{F}_p^{\times} を示せ。

(2) GG のシロー pp 部分群の個数 npn_p を求めよ。

(3) PGL⁡2(F3)=GL⁡2(F3)/{スカラー行列}\operatorname{PGL}_2(\mathbb{F}_3) = \operatorname{GL}_2(\mathbb{F}_3)/\lbrace \text{スカラー行列} \rbrace は S4\mathfrak{S}_4 と同型であることを示せ。

使う知識:代数学 第2章(準同型定理)、代数学 第3章

解答

(1) 正則行列の第 1 列は 00 以外の p2−1p^2 - 1 通り、第 2 列は第 1 列の倍数以外の p2−pp^2 - p 通りなので ∣G∣=(p2−1)(p2−p)\lvert G \rvert = (p^2 - 1)(p^2 - p)。det⁡ ⁣:G→Fp×\det\colon G \to \mathbb{F}_p^{\times} は全射準同型(diag⁡(a,1)\operatorname{diag}(a, 1) を考えよ)で核は SL⁡2(Fp)\operatorname{SL}_2(\mathbb{F}_p)。準同型定理より G/SL⁡2≅Fp×G/\operatorname{SL}_2 \cong \mathbb{F}_p^{\times}、∣SL⁡2(Fp)∣=p(p2−1)\lvert \operatorname{SL}_2(\mathbb{F}_p) \rvert = p(p^2-1)。

(2) ∣G∣=p(p−1)2(p+1)\lvert G \rvert = p(p-1)^2(p+1) なのでシロー pp 部分群の位数は pp。位数 pp の元 AA は Ap=IA^p = I から固有値が 11 のみで、2 次なので (A−I)2=O(A - I)^2 = O。逆に N=A−I≠ON = A - I \neq O, N2=ON^2 = O なら Ap=I+pN=IA^p = I + pN = I。N2=ON^2 = O となる NN は tr⁡N=det⁡N=0\operatorname{tr} N = \det N = 0、すなわち第 1 行 (a,b)(a, b)、第 2 行 (c,−a)(c, -a) で a2+bc=0a^2 + bc = 0 の行列で、その個数は a=0a = 0 の 2p−12p - 1 個と a≠0a \neq 0 の (p−1)2(p-1)^2 個の和 p2p^2。よって位数 pp の元は p2−1p^2 - 1 個。相異なるシロー pp 部分群は単位元のみを共有し、それぞれ p−1p - 1 個の位数 pp の元を含むので、np=p2−1p−1=p+1n_p = \frac{p^2-1}{p-1} = p + 1。

(3) ∣PGL⁡2(F3)∣=48/2=24\lvert \operatorname{PGL}_2(\mathbb{F}_3) \rvert = 48/2 = 24。GG は F32\mathbb{F}_3^2 の 1 次元部分空間 4 個(⟨e1⟩,⟨e2⟩,⟨e1+e2⟩,⟨e1−e2⟩\langle e_1 \rangle, \langle e_2 \rangle, \langle e_1 + e_2 \rangle, \langle e_1 - e_2 \rangle)に作用し、準同型 G→S4G \to \mathfrak{S}_4 を与える。すべての直線を保つ行列は、e1,e2,e1+e2e_1, e_2, e_1 + e_2 がすべて固有ベクトルなのでスカラー行列。よって PGL⁡2(F3)→S4\operatorname{PGL}_2(\mathbb{F}_3) \to \mathfrak{S}_4 は単射で、位数が等しいので同型である。

解説・発展
  • (2) の p+1p + 1 は射影直線 P1(Fp)\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_p) の点の個数に等しい。実際、各シロー pp 部分群はただ一つの直線を固定し、この対応が全単射になる。上三角単数行列の群 UU の正規化群はボレル部分群(上三角行列全体)で、np=[G:B]=p+1n_p = [G : B] = p + 1 とも計算できる。

問題 4 ★★(有限生成アーベル群)

(1) 位数 72 のアーベル群を同型を除いてすべて挙げよ(単因子型で答えよ)。

(2) N⊂Z3N \subset \mathbb{Z}^3 を (2,4,6)(2, 4, 6), (6,6,12)(6, 6, 12) で生成される部分群とする。Z3/N\mathbb{Z}^3/N の構造を決定せよ。

(3) (Z/15Z)×(\mathbb{Z}/15\mathbb{Z})^{\times}, (Z/16Z)×(\mathbb{Z}/16\mathbb{Z})^{\times}, (Z/24Z)×(\mathbb{Z}/24\mathbb{Z})^{\times} のうち同型なものの組を決定せよ。

使う知識:代数学 第7章(単因子論・構造定理)、代数学 第1章(中国剰余定理)

解答

(1) 72=23⋅3272 = 2^3 \cdot 3^2。2 部分は 33 の分割 (3),(2,1),(1,1,1)(3), (2,1), (1,1,1)、3 部分は 22 の分割 (2),(1,1)(2), (1,1) に対応し、全部で 3×2=63 \times 2 = 6 個:

Z/72,Z/2×Z/36,Z/2×Z/2×Z/18,Z/3×Z/24,Z/6×Z/12,Z/2×Z/6×Z/6\mathbb{Z}/72, \quad \mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/36, \quad \mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/18, \quad \mathbb{Z}/3 \times \mathbb{Z}/24, \quad \mathbb{Z}/6 \times \mathbb{Z}/12, \quad \mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/6 \times \mathbb{Z}/6

(Z/n\mathbb{Z}/n は Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} の略。)

(2) 生成元を行とする行列に行・列の基本変形(Z\mathbb{Z} 上可逆)を施す:

(2466612)→(2460−6−6)→(2000−6−6)→(200060)\begin{pmatrix} 2 & 4 & 6 \\ 6 & 6 & 12 \end{pmatrix} \to \begin{pmatrix} 2 & 4 & 6 \\ 0 & -6 & -6 \end{pmatrix} \to \begin{pmatrix} 2 & 0 & 0 \\ 0 & -6 & -6 \end{pmatrix} \to \begin{pmatrix} 2 & 0 & 0 \\ 0 & 6 & 0 \end{pmatrix}

(第 2 行 −3×-3\times 第 1 行、第 2・3 列から第 1 列の 22 倍・33 倍を引く、第 3 列から第 2 列を引き符号を変える。)よって Z3/N≅Z/2Z×Z/6Z×Z\mathbb{Z}^3/N \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/6\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}。

(3) 中国剰余定理より (Z/15)×≅(Z/3)××(Z/5)×≅Z/2×Z/4(\mathbb{Z}/15)^{\times} \cong (\mathbb{Z}/3)^{\times} \times (\mathbb{Z}/5)^{\times} \cong \mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/4。(Z/16)×(\mathbb{Z}/16)^{\times} は位数 8 で、33 の位数は 4(32=93^2 = 9, 34=81≡13^4 = 81 \equiv 1)、位数 2 の元は 7,9,157, 9, 15 の 3 個なので巡回群でも (Z/2)3(\mathbb{Z}/2)^3 でもなく、Z/2×Z/4\mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/4。(Z/24)×={1,5,7,11,13,17,19,23}(\mathbb{Z}/24)^{\times} = \lbrace 1,5,7,11,13,17,19,23 \rbrace はすべての元の 2 乗が 11 なので (Z/2)3(\mathbb{Z}/2)^3。よって同型なのは前 2 つだけである。

解説・発展
  • (2) の単因子 d1=2d_1 = 2 は成分の最大公約数、d1d2=12d_1d_2 = 12 は 2×22 \times 2 小行列式 −12,−12,12-12, -12, 12 の最大公約数として検算できる。
  • 有限アーベル群の同型判定は「各 dd について ∣{x∣dx=0}∣\lvert \lbrace x \mid dx = 0 \rbrace \rvert を比べる」のが確実。位数 8 のアーベル群 Z/8\mathbb{Z}/8, Z/2×Z/4\mathbb{Z}/2 \times \mathbb{Z}/4, (Z/2)3(\mathbb{Z}/2)^3 は位数 2 の元の個数(1 個・3 個・7 個)で区別でき、(3) の 3 つの群ではそれが順に 3 個・3 個・7 個である。

問題 5 ★★(Z[x]\mathbb{Z}[x] の剰余環)

(1) Z[x]/(3,x2+1)\mathbb{Z}[x]/(3, x^2+1) は位数 9 の体であることを示せ。

(2) Z[x]/(5,x2+1)\mathbb{Z}[x]/(5, x^2+1) はどのような環か。(5,x2+1)(5, x^2+1) は素イデアルか。

(3) (2x−1)(2x - 1) は Z[x]\mathbb{Z}[x] の素イデアルだが極大イデアルでないことを示せ。

(4) (10,x2+1)(10, x^2+1) を含む Z[x]\mathbb{Z}[x] の素イデアルをすべて求めよ。

使う知識:代数学 第5章(剰余環・準同型定理・素イデアルと極大イデアル)、代数学 第6章(ガウスの補題)

解答

(1) Z[x]/(3,x2+1)≅F3[x]/(x2+1)\mathbb{Z}[x]/(3, x^2+1) \cong \mathbb{F}_3[x]/(x^2+1)。x2+1x^2 + 1 は F3\mathbb{F}_3 に根をもたない(0,1,20, 1, 2 で値 1,2,21, 2, 2)2 次式なので既約で、剰余環は位数 32=93^2 = 9 の体。

(2) F5\mathbb{F}_5 で x2+1=(x−2)(x+2)x^2 + 1 = (x-2)(x+2)、x−2x - 2 と x+2x + 2 は互いに素なので、中国剰余定理より Z[x]/(5,x2+1)≅F5[x]/(x−2)×F5[x]/(x+2)≅F5×F5\mathbb{Z}[x]/(5, x^2+1) \cong \mathbb{F}_5[x]/(x-2) \times \mathbb{F}_5[x]/(x+2) \cong \mathbb{F}_5 \times \mathbb{F}_5。零因子をもつので整域でなく、(5,x2+1)(5, x^2+1) は素イデアルでない。

(3) φ ⁣:Z[x]→Q\varphi\colon \mathbb{Z}[x] \to \mathbb{Q}, g↦g(12)g \mapsto g(\frac{1}{2}) の像は Z[12]\mathbb{Z}[\frac{1}{2}]。g(12)=0g(\frac{1}{2}) = 0 なら Q[x]\mathbb{Q}[x] で g=(2x−1)hg = (2x-1)h と書け、2x−12x - 1 は原始多項式なのでガウスの補題より h∈Z[x]h \in \mathbb{Z}[x]。よって ker⁡φ=(2x−1)\ker\varphi = (2x - 1) で、Z[x]/(2x−1)≅Z[12]\mathbb{Z}[x]/(2x-1) \cong \mathbb{Z}[\frac{1}{2}]。これは整域だが体でない(33 の逆元 13\frac{1}{3} を含まない)ので、(2x−1)(2x-1) は素イデアルだが極大でない。

(4) 素イデアル P⊃(10,x2+1)\mathfrak{P} \supset (10, x^2+1) は 22 または 55 を含む(両方含むと 1∈P1 \in \mathfrak{P})。2∈P2 \in \mathfrak{P} なら P/(2)\mathfrak{P}/(2) は F2[x]\mathbb{F}_2[x] の素イデアルで x2+1=(x+1)2x^2 + 1 = (x+1)^2 を含むので x+1x + 1 を含み、(2,x+1)(2, x+1) は極大だから P=(2,x+1)\mathfrak{P} = (2, x+1)。5∈P5 \in \mathfrak{P} なら同様に x−2x - 2 か x+2x + 2 を含む。答えは (2,x+1)(2, x+1), (5,x−2)(5, x-2), (5,x+2)(5, x+2) の 3 つ(すべて極大イデアル)。

解説・発展
  • 剰余環 Z[x]/(p,f)\mathbb{Z}[x]/(p, f) は「まず pp で割って Fp[x]/(fˉ)\mathbb{F}_p[x]/(\bar{f})、次に fˉ\bar{f} を因数分解」と 2 段階で見るのが定石。これは素数 pp の Z[i]\mathbb{Z}[i] での分解(p=3p = 3 は素元のまま、p=5=(2+i)(2−i)p = 5 = (2+i)(2-i) は分解)そのものである。
  • Z[x]\mathbb{Z}[x] の極大イデアルはすべて (p,f)(p, f)(fˉ\bar{f} は Fp\mathbb{F}_p 上既約)の形で、Z[x]\mathbb{Z}[x] はクルル次元 2 の環である。

問題 6 ★★(Z[−5]\mathbb{Z}[\sqrt{-5}] のイデアル)

R=Z[−5]R = \mathbb{Z}[\sqrt{-5}], N(a+b−5)=a2+5b2N(a + b\sqrt{-5}) = a^2 + 5b^2 とし、p=(2,1+−5)\mathfrak{p} = (2, 1 + \sqrt{-5}) とする。

(1) R/p≅F2R/\mathfrak{p} \cong \mathbb{F}_2 を示し、p\mathfrak{p} は極大イデアルであることを示せ。

(2) p\mathfrak{p} は単項イデアルでないが、p2=(2)\mathfrak{p}^2 = (2) であることを示せ。

(3) 6=2⋅3=(1+−5)(1−−5)6 = 2 \cdot 3 = (1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5}) を用いて、RR は一意分解整域でないことを示せ。

使う知識:代数学 第6章(既約元・素元・一意分解整域)、代数的整数論 第2章

解答

(1) R≅Z[x]/(x2+5)R \cong \mathbb{Z}[x]/(x^2+5) だから R/p≅Z[x]/(2,1+x,x2+5)≅F2[x]/(x+1,x2+1)R/\mathfrak{p} \cong \mathbb{Z}[x]/(2, 1+x, x^2+5) \cong \mathbb{F}_2[x]/(x+1, x^2+1)。F2\mathbb{F}_2 で x2+1=(x+1)2x^2 + 1 = (x+1)^2 なので、これは F2[x]/(x+1)≅F2\mathbb{F}_2[x]/(x+1) \cong \mathbb{F}_2。体なので p\mathfrak{p} は極大。

(2) p=(α)\mathfrak{p} = (\alpha) とすると α∣2\alpha \mid 2, α∣1+−5\alpha \mid 1 + \sqrt{-5} より N(α)N(\alpha) は N(2)=4N(2) = 4 と N(1+−5)=6N(1+\sqrt{-5}) = 6 の公約数で、N(α)∈{1,2}N(\alpha) \in \lbrace 1, 2 \rbrace。a2+5b2=2a^2 + 5b^2 = 2 は解がなく、N(α)=1N(\alpha) = 1 なら α\alpha は単元で p=R\mathfrak{p} = R となり (1) に反する。よって単項でない。また

p2=(4, 2+2−5, (1+−5)2)=(4, 2+2−5, −4+2−5)\mathfrak{p}^2 = (4,\ 2 + 2\sqrt{-5},\ (1+\sqrt{-5})^2) = (4,\ 2 + 2\sqrt{-5},\ -4 + 2\sqrt{-5})

の生成元はすべて 22 の倍数なので p2⊂(2)\mathfrak{p}^2 \subset (2)。逆に (2+2−5)−(−4+2−5)=6(2 + 2\sqrt{-5}) - (-4 + 2\sqrt{-5}) = 6 と 44 から 2=6−4∈p22 = 6 - 4 \in \mathfrak{p}^2。よって p2=(2)\mathfrak{p}^2 = (2)。

(3) 単元は N=1N = 1 の元 ±1\pm 1 のみ。2=βγ2 = \beta\gamma が非単元の積なら N(β)=2N(\beta) = 2 となり不可能なので 22 は既約。同様に 33(N=9N = 9, 因子のノルムが 33 になり不可能)、1±−51 \pm \sqrt{-5}(N=6N = 6, 因子のノルムが 22 か 33 になり不可能)も既約。ノルムが異なるので 22 は 1±−51 \pm \sqrt{-5} の同伴でない。よって 66 は本質的に異なる 2 通りの既約分解をもち、RR は UFD でない。

解説・発展
  • 元の分解は一意でないが、イデアルの分解は一意である:(6)=p2qq′(6) = \mathfrak{p}^2\mathfrak{q}\mathfrak{q}'(q=(3,1+−5)\mathfrak{q} = (3, 1 + \sqrt{-5}), q′=(3,1−−5)\mathfrak{q}' = (3, 1 - \sqrt{-5}))。RR はデデキント環で、類数は 2 である(第8章で類数計算を扱う)。
  • 「ノルムで考える」のが二次体の整数環の問題の基本。ノルムの乗法性 N(αβ)=N(α)N(β)N(\alpha\beta) = N(\alpha)N(\beta) を明記すること。

問題 7 ★★(多項式の既約性判定)

(1) x4+1x^4 + 1 は Q\mathbb{Q} 上既約であることを示せ。

(2) x4+1x^4 + 1 はすべての素数 pp について Fp\mathbb{F}_p 上可約であることを示せ。

(3) f(x)=x4+6x3−3x+5f(x) = x^4 + 6x^3 - 3x + 5 は Q\mathbb{Q} 上既約であることを示せ。

使う知識:代数学 第6章(アイゼンシュタインの判定法・ガウスの補題)、代数学 第8章(有限体)

解答

(1) x↦x+1x \mapsto x + 1 で既約性は保たれ、(x+1)4+1=x4+4x3+6x2+4x+2(x+1)^4 + 1 = x^4 + 4x^3 + 6x^2 + 4x + 2 は素数 22 に関するアイゼンシュタイン多項式なので既約。

(2) p=2p = 2 では x4+1=(x+1)4x^4 + 1 = (x+1)^4。pp が奇素数なら p2≡1(mod8)p^2 \equiv 1 \pmod 8 なので、巡回群 Fp2×\mathbb{F}_{p^2}^{\times}(位数 p2−1p^2 - 1)は位数 8 の元 ζ\zeta を含む。ζ4=−1\zeta^4 = -1 より ζ\zeta は x4+1x^4 + 1 の根で、[Fp(ζ):Fp]≤2[\mathbb{F}_p(\zeta) : \mathbb{F}_p] \leq 2 だから ζ\zeta の Fp\mathbb{F}_p 上の最小多項式は 2 次以下であり、x4+1x^4 + 1 の真の因子になる。

(3) ff はモニックな整数係数多項式なので、Q\mathbb{Q} 上可約ならガウスの補題によりモニックな g,h∈Z[x]g, h \in \mathbb{Z}[x](次数 ≥1\geq 1)で f=ghf = gh と書ける。22 で還元すると fˉ=x4+x+1=gˉhˉ\bar{f} = x^4 + x + 1 = \bar{g}\bar{h} で次数は保たれる。しかし x4+x+1x^4 + x + 1 は F2\mathbb{F}_2 上既約である:根をもたず(0,10, 1 で値 11)、F2\mathbb{F}_2 上の既約 2 次式は x2+x+1x^2 + x + 1 のみで (x2+x+1)2=x4+x2+1≠fˉ(x^2+x+1)^2 = x^4 + x^2 + 1 \neq \bar{f}。矛盾。

解説・発展
  • (2) は「還元して既約なら元も既約」の逆が成り立たない典型例で、(3) の方法が万能でないことを示す。本質は Gal⁡(Q(ζ8)/Q)≅(Z/2)2\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_8)/\mathbb{Q}) \cong (\mathbb{Z}/2)^2 が巡回群でないことにある。
  • 還元による判定では「最高次係数が pp で割れない」ことが必要。モニックでない場合は注意する。

問題 8 ★(体の拡大次数)

(1) [Q(2,3):Q]=4[\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3}) : \mathbb{Q}] = 4 を示し、α=2+3\alpha = \sqrt{2} + \sqrt{3} について Q(α)=Q(2,3)\mathbb{Q}(\alpha) = \mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3}) と α\alpha の最小多項式を求めよ。

(2) β=23\beta = \sqrt[3]{2} とする。11+β\frac{1}{1 + \beta} を a+bβ+cβ2a + b\beta + c\beta^2(a,b,c∈Qa, b, c \in \mathbb{Q})の形で表せ。

(3) cos⁡20∘\cos 20^{\circ} の Q\mathbb{Q} 上の次数を求め、定規とコンパスで 60∘60^{\circ} を 3 等分できないことを示せ(作図可能数の次数は 2 の冪であることは用いてよい)。

使う知識:代数学 第8章(拡大次数の乗法性・最小多項式・作図問題)

解答

(1) 3∉Q(2)\sqrt{3} \notin \mathbb{Q}(\sqrt{2}):3=a+b2\sqrt{3} = a + b\sqrt{2} なら 3=a2+2b2+2ab23 = a^2 + 2b^2 + 2ab\sqrt{2} で ab=0ab = 0、b=0b = 0 なら a2=3a^2 = 3、a=0a = 0 なら 2b2=32b^2 = 3 でいずれも有理数解がない。よって次数は 2⋅2=42 \cdot 2 = 4。α3=112+93\alpha^3 = 11\sqrt{2} + 9\sqrt{3} より 2=α3−9α2∈Q(α)\sqrt{2} = \frac{\alpha^3 - 9\alpha}{2} \in \mathbb{Q}(\alpha), 3=α−2∈Q(α)\sqrt{3} = \alpha - \sqrt{2} \in \mathbb{Q}(\alpha) なので Q(α)=Q(2,3)\mathbb{Q}(\alpha) = \mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3})。α2=5+26\alpha^2 = 5 + 2\sqrt{6} から (α2−5)2=24(\alpha^2 - 5)^2 = 24、すなわち α4−10α2+1=0\alpha^4 - 10\alpha^2 + 1 = 0。次数 4 なのでこれが最小多項式。

(2) β3=2\beta^3 = 2 より (1+β)(1−β+β2)=1+β3=3(1 + \beta)(1 - \beta + \beta^2) = 1 + \beta^3 = 3。よって 11+β=13−13β+13β2\frac{1}{1+\beta} = \frac{1}{3} - \frac{1}{3}\beta + \frac{1}{3}\beta^2。

(3) cos⁡3θ=4cos⁡3θ−3cos⁡θ\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta に θ=20∘\theta = 20^{\circ} を代入し、u=2cos⁡20∘u = 2\cos 20^{\circ} とおくと u3−3u−1=0u^3 - 3u - 1 = 0。有理根の候補 ±1\pm 1 は根でない(値 −3,1-3, 1)ので、3 次式 x3−3x−1x^3 - 3x - 1 は Q\mathbb{Q} 上既約で、[Q(cos⁡20∘):Q]=3[\mathbb{Q}(\cos 20^{\circ}) : \mathbb{Q}] = 3。60∘60^{\circ} が 3 等分できれば cos⁡20∘\cos 20^{\circ} は作図可能数となり次数が 2 の冪でなければならないが、3 は 2 の冪でない。

解説・発展
  • 拡大次数の問題では、次数の乗法性 [L:K]=[L:M][M:K][L:K] = [L:M][M:K] と「次数が約数関係にない元は含まれない」(例:23∉Q(24)\sqrt[3]{2} \notin \mathbb{Q}(\sqrt[4]{2}))が基本道具である。

問題 9 ★★(ガロア群の計算)

(1) f(x)=x4−4x2+2f(x) = x^4 - 4x^2 + 2 の Q\mathbb{Q} 上の最小分解体 LL とガロア群 Gal⁡(L/Q)\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) を求め、中間体をすべて求めよ。

(2) g(x)=x3−3x+1g(x) = x^3 - 3x + 1 の根は 2cos⁡2π9,2cos⁡4π9,2cos⁡8π92\cos\frac{2\pi}{9}, 2\cos\frac{4\pi}{9}, 2\cos\frac{8\pi}{9} であることを示し、gg のガロア群を求めよ。

使う知識:代数学 第9章(ガロア対応・計算例)

解答

(1) ff は 22 に関するアイゼンシュタイン多項式なので既約。根は ±α,±β\pm\alpha, \pm\beta(α=2+2\alpha = \sqrt{2 + \sqrt{2}}, β=2−2\beta = \sqrt{2 - \sqrt{2}})で、αβ=4−2=2=α2−2∈Q(α)\alpha\beta = \sqrt{4 - 2} = \sqrt{2} = \alpha^2 - 2 \in \mathbb{Q}(\alpha)。よって β=2/α∈Q(α)\beta = \sqrt{2}/\alpha \in \mathbb{Q}(\alpha) で L=Q(α)L = \mathbb{Q}(\alpha)、[L:Q]=4[L:\mathbb{Q}] = 4。α↦β\alpha \mapsto \beta となる σ∈Gal⁡(L/Q)\sigma \in \operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) をとると σ(2)=σ(α2−2)=β2−2=−2\sigma(\sqrt{2}) = \sigma(\alpha^2 - 2) = \beta^2 - 2 = -\sqrt{2} なので σ(β)=σ(2/α)=−2/β=−α\sigma(\beta) = \sigma(\sqrt{2}/\alpha) = -\sqrt{2}/\beta = -\alpha。よって σ ⁣:α↦β↦−α↦−β↦α\sigma\colon \alpha \mapsto \beta \mapsto -\alpha \mapsto -\beta \mapsto \alpha は位数 4 で、Gal⁡(L/Q)=⟨σ⟩≅Z/4Z\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) = \langle \sigma \rangle \cong \mathbb{Z}/4\mathbb{Z}。真の部分群は ⟨σ2⟩\langle \sigma^2 \rangle のみで、σ2(2)=2\sigma^2(\sqrt{2}) = \sqrt{2} だから、自明でない中間体は Q(2)\mathbb{Q}(\sqrt{2}) だけである。

(2) x=2cos⁡θx = 2\cos\theta とおくと x3−3x=2cos⁡3θx^3 - 3x = 2\cos 3\theta。θ=2π9,4π9,8π9\theta = \frac{2\pi}{9}, \frac{4\pi}{9}, \frac{8\pi}{9} で cos⁡3θ=−12\cos 3\theta = -\frac{1}{2} なので g(x)=2cos⁡3θ+1=0g(x) = 2\cos 3\theta + 1 = 0。3 つの値は相異なるので、これがすべての根である。gg は有理根 ±1\pm 1 をもたないので既約。α=2cos⁡2π9\alpha = 2\cos\frac{2\pi}{9} とすると α2−2=2cos⁡4π9\alpha^2 - 2 = 2\cos\frac{4\pi}{9}, (α2−2)2−2=2cos⁡8π9(\alpha^2 - 2)^2 - 2 = 2\cos\frac{8\pi}{9} で、すべての根が Q(α)\mathbb{Q}(\alpha) に属する。最小分解体は次数 3 の Q(α)\mathbb{Q}(\alpha) で、ガロア群は位数 3 の群 Z/3Z\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}(α↦α2−2\alpha \mapsto \alpha^2 - 2 が生成)。判別式 −4(−3)3−27⋅12=81=92-4(-3)^3 - 27 \cdot 1^2 = 81 = 9^2 が平方数であることとも整合する。

解説・発展
  • Q\mathbb{Q} 上既約な 4 次多項式 x4+ax2+bx^4 + ax^2 + b のガロア群は、bb が平方数なら V4V_4、b(a2−4b)b(a^2 - 4b) が平方数なら Z/4\mathbb{Z}/4、どちらでもなければ D4D_4 である(既約性から a2−4ba^2 - 4b は平方数でない)。(1) は a2−4b=8a^2 - 4b = 8, b(a2−4b)=2⋅8=16b(a^2-4b) = 2 \cdot 8 = 16 が平方数の場合で巡回群になる。α=2cos⁡π8\alpha = 2\cos\frac{\pi}{8} なので、LL は円分体 Q(ζ16)\mathbb{Q}(\zeta_{16}) の最大実部分体である。
  • (2) は円分体 Q(ζ9)\mathbb{Q}(\zeta_9) の最大実部分体。既約 3 次式のガロア群は判別式が平方数なら A3\mathfrak{A}_3、そうでなければ S3\mathfrak{S}_3 である(根 α1,α2,α3\alpha_1, \alpha_2, \alpha_3 の差積 δ=∏i<j(αi−αj)\delta = \prod_{i < j}(\alpha_i - \alpha_j) は δ2\delta^2 が判別式で、奇置換で符号を変えるので、G⊂A3⇔δ∈QG \subset \mathfrak{A}_3 \Leftrightarrow \delta \in \mathbb{Q})。

問題 10 ★★★(ガロア群が S5\mathfrak{S}_5 となる多項式)

f(x)=x5−10x+5f(x) = x^5 - 10x + 5 とし、LL を ff の Q\mathbb{Q} 上の最小分解体、G=Gal⁡(L/Q)G = \operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) とする。

(1) ff は Q\mathbb{Q} 上既約で、ちょうど 3 個の実根をもつことを示せ。

(2) G≅S5G \cong \mathfrak{S}_5 を示せ。

(3) 方程式 f(x)=0f(x) = 0 は代数的に解けない(根を四則とべき根で表せない)ことを説明せよ。

使う知識:代数学 第9章(ガロア群の置換表現・可解性)、代数学 第3章(コーシーの定理)

解答

(1) 素数 55 に関するアイゼンシュタイン多項式なので既約。f′(x)=5x4−10f'(x) = 5x^4 - 10 の実根は ±c\pm c(c=21/4c = 2^{1/4})で、c5=2cc^5 = 2c より

f(−c)=8c+5>0,f(c)=−8c+5<0(c>1)f(-c) = 8c + 5 > 0, \qquad f(c) = -8c + 5 < 0 \quad (c > 1)

ff は (−∞,−c](-\infty, -c] で増加(−∞-\infty から正へ)、[−c,c][-c, c] で減少(正から負へ)、[c,∞)[c, \infty) で増加(負から +∞+\infty へ)するので、実根はちょうど 3 個。

(2) GG は 5 個の根の置換として忠実に作用し、G≤S5G \leq \mathfrak{S}_5 とみなせる。根 θ\theta について [Q(θ):Q]=5[\mathbb{Q}(\theta):\mathbb{Q}] = 5 は [L:Q]=∣G∣[L:\mathbb{Q}] = \lvert G \rvert を割るので、コーシーの定理により GG は位数 5 の元、すなわち 5 巡回置換 σ\sigma を含む。複素共役は LL を保ち、2 つの虚根を交換し 3 つの実根を固定するので、互換 τ\tau が GG に属する。τ=(a b)\tau = (a\ b) とし、σk(a)=b\sigma^k(a) = b となる kk をとると、σk\sigma^k も 5 巡回置換(5 は素数)なので、根の番号を付け替えて σk=(1 2 3 4 5)\sigma^k = (1\ 2\ 3\ 4\ 5), τ=(1 2)\tau = (1\ 2) としてよい。σkiτσ−ki=(i+1  i+2)\sigma^{ki}\tau\sigma^{-ki} = (i+1\ \ i+2) により隣接互換がすべて GG に属し、それらは S5\mathfrak{S}_5 を生成する。よって G=S5G = \mathfrak{S}_5。

(3) 方程式が代数的に解けることと、ガロア群が可解群であることは同値である(ガロアの定理)。S5\mathfrak{S}_5 は単純群 A5\mathfrak{A}_5 を正規部分群にもち、可解でない。よって代数的に解けない。

解説・発展
  • 一般に「pp 次既約多項式(pp 素数)が実根をちょうど p−2p - 2 個もてば、ガロア群は Sp\mathfrak{S}_p」が成り立つ(証明は同じ)。
  • 実根の個数の議論で、極値の符号の計算を省略する答案は減点される。c5=2cc^5 = 2c のように値を簡単にしてから符号を判定するとよい。

問題 11 ★★(有限体)

(1) F2\mathbb{F}_2 上のモニックな既約 4 次多項式の個数を求め、すべて挙げよ。

(2) K=F2[x]/(x4+x+1)K = \mathbb{F}_2[x]/(x^4 + x + 1) において、xx の類 ξ\xi は乗法群 K×K^{\times} の生成元であることを示せ。一方、F2[x]/(x4+x3+x2+x+1)\mathbb{F}_2[x]/(x^4 + x^3 + x^2 + x + 1) における xx の類の乗法的位数を求めよ。

(3) F212\mathbb{F}_{2^{12}} の部分体の個数と、F16\mathbb{F}_{16} の元 γ\gamma で F2(γ)=F16\mathbb{F}_2(\gamma) = \mathbb{F}_{16} となるものの個数を求めよ。

使う知識:代数学 第8章(有限体の存在と一意性・部分体)

解答

(1) x16−xx^{16} - x は F2\mathbb{F}_2 上の次数が 44 の約数(1,2,41, 2, 4)のモニック既約多項式すべての積である。1 次は x,x+1x, x+1 の 2 個、2 次は x2+x+1x^2 + x + 1 の 1 個なので、4 次の個数を N4N_4 とすると 16=2⋅1+1⋅2+4N416 = 2 \cdot 1 + 1 \cdot 2 + 4N_4、N4=3N_4 = 3。根をもたず (x2+x+1)2=x4+x2+1(x^2+x+1)^2 = x^4 + x^2 + 1 と異なるものを探すと

x4+x+1,x4+x3+1,x4+x3+x2+x+1x^4 + x + 1, \qquad x^4 + x^3 + 1, \qquad x^4 + x^3 + x^2 + x + 1

(2) ∣K×∣=15\lvert K^{\times} \rvert = 15 なので ξ\xi の位数は 1,3,5,151, 3, 5, 15 のいずれか。1,ξ,ξ2,ξ31, \xi, \xi^2, \xi^3 は基底なので ξ3≠1\xi^3 \neq 1、ξ5=ξ⋅ξ4=ξ(ξ+1)=ξ2+ξ≠1\xi^5 = \xi \cdot \xi^4 = \xi(\xi + 1) = \xi^2 + \xi \neq 1。よって位数 15 で生成元である。後者では xx の類 η\eta が (η−1)(η4+η3+η2+η+1)=0(\eta - 1)(\eta^4 + \eta^3 + \eta^2 + \eta + 1) = 0 より η5=1\eta^5 = 1、η≠1\eta \neq 1 なので位数は 5。

(3) F212\mathbb{F}_{2^{12}} の部分体は 1212 の約数 dd ごとに F2d\mathbb{F}_{2^d} がちょうど一つあるので 6 個。γ∈F16\gamma \in \mathbb{F}_{16} が真部分体 F4\mathbb{F}_4 に属さないことが条件(F2⊂F4\mathbb{F}_2 \subset \mathbb{F}_4)なので、個数は 16−4=16 - 4 = 12(=3×4= 3 \times 4 で、(1) の 3 個の多項式の根の総数と一致する)。

解説・発展
  • 一般に Fq\mathbb{F}_q 上のモニック既約 nn 次多項式の個数は 1n∑d∣nμ(d)qn/d\frac{1}{n}\sum_{d \mid n}\mu(d)q^{n/d}(メビウスの反転公式)。n=4n = 4, q=2q = 2 で 16−44=3\frac{16 - 4}{4} = 3。
  • (2) の前者のように根が乗法群の生成元になる既約多項式を原始多項式という。F16×\mathbb{F}_{16}^{\times} の生成元は φ(15)=8\varphi(15) = 8 個で、原始多項式は 8/4=28/4 = 2 個(x4+x+1x^4 + x + 1 と x4+x3+1x^4 + x^3 + 1)ある。

問題 12 ★★★(ガウス整数と二平方和定理)

Z[i]\mathbb{Z}[i] をガウス整数環、N(a+bi)=a2+b2N(a + bi) = a^2 + b^2 とする。

(1) Z[i]\mathbb{Z}[i] は NN に関してユークリッド整域であることを示せ。

(2) 素数 p≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4 に対し、n2≡−1(modp)n^2 \equiv -1 \pmod p となる整数 nn が存在することを示せ。

(3) 素数 p≡1(mod4)p \equiv 1 \pmod 4 は 2 つの平方数の和で表されることを示せ。また p≡3(mod4)p \equiv 3 \pmod 4 ならば表されないことを示せ。

使う知識:代数学 第6章(ユークリッド整域・PID・既約元と素元)、代数学 第1章(原始根)

解答

(1) α,β∈Z[i]\alpha, \beta \in \mathbb{Z}[i], β≠0\beta \neq 0 とする。α/β=x+yi∈Q(i)\alpha/\beta = x + yi \in \mathbb{Q}(i) に対し、∣x−m∣≤12\lvert x - m \rvert \leq \frac{1}{2}, ∣y−n∣≤12\lvert y - n \rvert \leq \frac{1}{2} となる整数 m,nm, n をとり κ=m+ni\kappa = m + ni とおく。ρ=α−κβ\rho = \alpha - \kappa\beta とすると N(ρ)=N(β) ∣α/β−κ∣2≤N(β)(14+14)<N(β)N(\rho) = N(\beta)\ \lvert \alpha/\beta - \kappa \rvert^2 \leq N(\beta)\left(\frac{1}{4} + \frac{1}{4}\right) < N(\beta)。

(2) Fp×\mathbb{F}_p^{\times} は位数 p−1p - 1 の巡回群で 4∣p−14 \mid p - 1 なので位数 4 の元 nn がある。n2n^2 は位数 2 の元で、巡回群の位数 2 の元は −1-1 のみだから n2≡−1n^2 \equiv -1。

(3) p∣n2+1=(n+i)(n−i)p \mid n^2 + 1 = (n + i)(n - i) だが、n±ip∉Z[i]\frac{n \pm i}{p} \notin \mathbb{Z}[i] なので p∤n±ip \nmid n \pm i。よって pp は Z[i]\mathbb{Z}[i] の素元でない。(1) より Z[i]\mathbb{Z}[i] は PID、したがって UFD で、既約元と素元は一致するから、pp は既約でない:p=αβp = \alpha\beta(α,β\alpha, \beta は非単元)。N(α)N(β)=p2N(\alpha)N(\beta) = p^2 かつ非単元のノルムは 11 でないので N(α)=pN(\alpha) = p、α=a+bi\alpha = a + bi として p=a2+b2p = a^2 + b^2。逆に平方数は 4 を法として 00 か 11 なので、a2+b2≢3(mod4)a^2 + b^2 \not\equiv 3 \pmod 4。

解説・発展
  • (3) は Z[i]\mathbb{Z}[i] における素数の分解法則そのもの:2=−i(1+i)22 = -i(1+i)^2(分岐)、p≡1p \equiv 1 は 2 つの共役な素元の積に分解、p≡3p \equiv 3 は素元のまま(惰性)。一般の二次体でも同じ現象が平方剰余の相互法則で記述される(代数的整数論 第4章)。

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