Lemma数学ロードマップ

20 総合演習(大学院入試・修士レベル) · 第 1 章

微分積分と線形代数

目安 7〜12 時間演習 12 問

この章のねらい

  • 学部 1・2 年の微分積分と線形代数の標準的な論証を、院試の答案として過不足なく書けるようにする
  • 計算の正当化(一様収束の確認、退化した臨界点の処理、最大値の存在など)を書き落とさない

前提:微分積分学、線形代数

目安:★ は 20 分、★★ は 30〜40 分、★★★ は 50 分。

問題 1 ★(ε-δ 論法と一様連続性)

(1) f ⁣:[0,∞)→Rf\colon [0, \infty) \to \mathbb{R} は連続で、有限な極限 L=lim⁡x→∞f(x)L = \lim_{x \to \infty} f(x) が存在するとする。ff は [0,∞)[0, \infty) 上で一様連続であることを示せ。

(2) g(x)=sin⁡(x2)g(x) = \sin(x^2) は [0,∞)[0, \infty) 上で一様連続でないことを示せ。

(3) h(x)=x2sin⁡(1/x)h(x) = x^2 \sin(1/x) は (0,∞)(0, \infty) 上で一様連続であることを示せ。

使う知識:微分積分 第3章(ハイネ–カントールの定理)、微分積分 第4章(平均値の定理)

解答

(1) ε>0\varepsilon > 0 とする。ある M>0M > 0 があって x≥Mx \geq M ならば ∣f(x)−L∣<ε/2\lvert f(x) - L \rvert < \varepsilon/2。ff は有界閉区間 [0,M+1][0, M+1] 上で一様連続(ハイネ–カントールの定理)だから、ある δ1>0\delta_1 > 0 があって x,y∈[0,M+1]x, y \in [0, M+1], ∣x−y∣<δ1\lvert x - y \rvert < \delta_1 ならば ∣f(x)−f(y)∣<ε\lvert f(x) - f(y) \rvert < \varepsilon。δ=min⁡{δ1,1}\delta = \min\lbrace \delta_1, 1 \rbrace とし、x,y≥0x, y \geq 0, ∣x−y∣<δ\lvert x - y \rvert < \delta とする。x,y∈[0,M+1]x, y \in [0, M+1] なら ∣f(x)−f(y)∣<ε\lvert f(x) - f(y) \rvert < \varepsilon。そうでなければ、たとえば x>M+1x > M+1 で y>x−1>My > x - 1 > M となり、∣f(x)−f(y)∣≤∣f(x)−L∣+∣L−f(y)∣<ε\lvert f(x) - f(y) \rvert \leq \lvert f(x) - L \rvert + \lvert L - f(y) \rvert < \varepsilon。よって ff は一様連続である。

(2) xn=(n+12)πx_n = \sqrt{(n + \frac{1}{2})\pi}, yn=nπy_n = \sqrt{n\pi} とおくと xn−yn=π/2xn+yn→0x_n - y_n = \frac{\pi/2}{x_n + y_n} \to 0 だが、∣g(xn)−g(yn)∣=1\lvert g(x_n) - g(y_n) \rvert = 1。一様連続なら ε=1\varepsilon = 1 に対する δ\delta をとると、大きな nn で ∣xn−yn∣<δ\lvert x_n - y_n \rvert < \delta なのに差が 11 となり矛盾する。

(3) h′(x)=2xsin⁡(1/x)−cos⁡(1/x)h'(x) = 2x\sin(1/x) - \cos(1/x) で、∣sin⁡t∣≤∣t∣\lvert \sin t \rvert \leq \lvert t \rvert より ∣2xsin⁡(1/x)∣≤2\lvert 2x\sin(1/x) \rvert \leq 2、よって ∣h′(x)∣≤3\lvert h'(x) \rvert \leq 3。平均値の定理より ∣h(x)−h(y)∣≤3∣x−y∣\lvert h(x) - h(y) \rvert \leq 3\lvert x - y \rvert で、δ=ε/3\delta = \varepsilon/3 とすればよい。

解説・発展
  • (1) の要点は、コンパクトな部分と無限遠に分け、境目をまたぐ 2 点を処理するために [0,M+1][0, M+1] をとって δ≤1\delta \leq 1 とすること。
  • 一様連続でないことは、「∣xn−yn∣→0\lvert x_n - y_n \rvert \to 0 かつ ∣g(xn)−g(yn)∣≥ε0\lvert g(x_n) - g(y_n) \rvert \geq \varepsilon_0 となる点列」を作って示すのが定石。

問題 2 ★★(級数の収束判定)

(1) 実数 pp に対し、∑n=2∞1n(log⁡n)p\displaystyle\sum_{n=2}^{\infty} \frac{1}{n (\log n)^p} が収束するための pp の条件を求めよ。

(2) a>0a > 0 とする。∑n=2∞(−1)nna+(−1)n\displaystyle\sum_{n=2}^{\infty} \frac{(-1)^n}{n^a + (-1)^n} が収束するための aa の条件を求めよ。

(3) べき級数 ∑n=1∞(n!)2(2n)!xn\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} \frac{(n!)^2}{(2n)!} x^n の収束半径 rr を求め、x=±rx = \pm r での収束・発散を判定せよ。

使う知識:微分積分 第2章(比較判定法・交代級数)、微分積分 第5章(積分判定法)、微分積分 第6章(収束半径)

解答

(1) 答:p>1p > 1。 p≤0p \leq 0 なら n≥3n \geq 3 で 1n(log⁡n)p≥1n\frac{1}{n(\log n)^p} \geq \frac{1}{n} となり発散する。p>0p > 0 なら 1x(log⁡x)p\frac{1}{x(\log x)^p} は [3,∞)[3, \infty) で正・連続・単調減少なので、積分判定法により収束は ∫3∞dxx(log⁡x)p=∫log⁡3∞t−p dt<∞\int_3^{\infty} \frac{dx}{x(\log x)^p} = \int_{\log 3}^{\infty} t^{-p}\ dt < \infty と同値で、それは p>1p > 1 と同値である。

(2) 答:a>1/2a > 1/2。 n≥2n \geq 2 で na+(−1)n>0n^a + (-1)^n > 0 であり、通分して確かめられる恒等式

(−1)nna+(−1)n=(−1)nna−cn,cn=1na(na+(−1)n)>0\frac{(-1)^n}{n^a + (-1)^n} = \frac{(-1)^n}{n^a} - c_n, \qquad c_n = \frac{1}{n^a\left(n^a + (-1)^n\right)} > 0

を用いる。∑(−1)nn−a\sum (-1)^n n^{-a} はライプニッツの判定法で収束する。n2acn→1n^{2a}c_n \to 1 だから、極限比較判定法により ∑cn\sum c_n の収束は ∑n−2a\sum n^{-2a} の収束、すなわち a>1/2a > 1/2 と同値である。収束級数と発散級数の和は発散するので、結論を得る。

(3) an=(n!)2(2n)!a_n = \frac{(n!)^2}{(2n)!} とおくと an+1an=(n+1)2(2n+2)(2n+1)→14\frac{a_{n+1}}{a_n} = \frac{(n+1)^2}{(2n+2)(2n+1)} \to \frac{1}{4} より r=4r = 4。x=±4x = \pm 4 では、(2nn)≤∑k(2nk)=4n\binom{2n}{n} \leq \sum_{k} \binom{2n}{k} = 4^n より ∣anxn∣=4n/(2nn)≥1\lvert a_n x^n \rvert = 4^n / \binom{2n}{n} \geq 1 で、一般項が 00 に収束しないから両端とも発散する。

解説・発展
  • (2) は典型的な落とし穴。ライプニッツの判定法には ∣bn∣\lvert b_n \rvert の単調減少が必要だが、ここでは単調でない。漸近展開で見当をつけ、答案では上のような厳密な等式で処理する(展開の剰余項 O(n−3a)O(n^{-3a}) は a≤1/3a \leq 1/3 で絶対収束しない)。

問題 3 ★★(広義積分の収束)

(1) p∈Rp \in \mathbb{R} とする。広義積分 ∫0∞sin⁡xxp dx\displaystyle\int_0^{\infty} \frac{\sin x}{x^p}\ dx が収束するための必要十分条件は 0<p<20 < p < 2 であることを示せ。

(2) ∫0∞sin⁡xx dx=π2\displaystyle\int_0^{\infty} \frac{\sin x}{x}\ dx = \frac{\pi}{2} を用いて、∫0∞1−cos⁡xx2 dx\displaystyle\int_0^{\infty} \frac{1 - \cos x}{x^2}\ dx と ∫0∞sin⁡2xx2 dx\displaystyle\int_0^{\infty} \frac{\sin^2 x}{x^2}\ dx の値を求めよ。

使う知識:微分積分 第5章(広義積分・コーシーの判定条件・部分積分)

解答

(1) ∫01\int_0^1 と ∫1∞\int_1^{\infty} に分ける。0<x≤10 < x \leq 1 では 2πx≤sin⁡x≤x\frac{2}{\pi}x \leq \sin x \leq x だから 2πx1−p≤sin⁡xxp≤x1−p\frac{2}{\pi}x^{1-p} \leq \frac{\sin x}{x^p} \leq x^{1-p}。被積分関数は正なので、∫01\int_0^1 の収束は ∫01x1−p dx<∞\int_0^1 x^{1-p}\ dx < \infty、すなわち p<2p < 2 と同値である。

p>0p > 0 のとき、部分積分により

∫1Xsin⁡xxp dx=cos⁡1−cos⁡XXp−p∫1Xcos⁡xxp+1 dx\int_1^X \frac{\sin x}{x^p}\,dx = \cos 1 - \frac{\cos X}{X^p} - p\int_1^X \frac{\cos x}{x^{p+1}}\,dx

で、cos⁡XXp→0\frac{\cos X}{X^p} \to 0、右辺の積分は ∣cos⁡x∣x−p−1≤x−p−1\lvert \cos x \rvert x^{-p-1} \leq x^{-p-1} より絶対収束するので ∫1∞\int_1^{\infty} は収束する。p≤0p \leq 0 のときは、x≥1x \geq 1 で x−p≥1x^{-p} \geq 1 より ∫2kπ(2k+1)πsin⁡xxp dx≥∫2kπ(2k+1)πsin⁡x dx=2\int_{2k\pi}^{(2k+1)\pi} \frac{\sin x}{x^p}\ dx \geq \int_{2k\pi}^{(2k+1)\pi} \sin x\ dx = 2 (k∈N)(k \in \mathbb{N}) となり、コーシーの判定条件が破れて発散する。以上より、収束 ⇔\Leftrightarrow 0<p<20 < p < 2。

(2) 0<ε<X0 < \varepsilon < X で部分積分すると

∫εX1−cos⁡xx2 dx=1−cos⁡εε−1−cos⁡XX+∫εXsin⁡xx dx\int_{\varepsilon}^{X} \frac{1 - \cos x}{x^2}\,dx = \frac{1 - \cos\varepsilon}{\varepsilon} - \frac{1 - \cos X}{X} + \int_{\varepsilon}^{X} \frac{\sin x}{x}\,dx

0≤1−cos⁡εε≤ε20 \leq \frac{1 - \cos\varepsilon}{\varepsilon} \leq \frac{\varepsilon}{2}, 0≤1−cos⁡XX≤2X0 \leq \frac{1 - \cos X}{X} \leq \frac{2}{X} だから、極限をとって ∫0∞1−cos⁡xx2 dx=π2\int_0^{\infty} \frac{1-\cos x}{x^2}\ dx = \frac{\pi}{2}。さらに sin⁡2x=1−cos⁡2x2\sin^2 x = \frac{1 - \cos 2x}{2} と u=2xu = 2x により ∫0∞sin⁡2xx2 dx=∫0∞1−cos⁡uu2 du=π2\int_0^{\infty} \frac{\sin^2 x}{x^2}\ dx = \int_0^{\infty} \frac{1 - \cos u}{u^2}\ du = \frac{\pi}{2}。

解説・発展
  • 振動する被積分関数の無限遠での収束は比較判定法では扱えない。部分積分かディリクレの判定法を使う。x=0x = 0 の近くで極限比較を使うときは、被積分関数の符号が一定であることに触れる。
  • 同様の議論で、絶対収束の必要十分条件は 1<p<21 < p < 2 とわかる(0<p≤10 < p \leq 1 では ∫kπ(k+1)π∣sin⁡x∣x−p dx≥2((k+1)π)−p\int_{k\pi}^{(k+1)\pi} \lvert \sin x \rvert x^{-p}\ dx \geq 2((k+1)\pi)^{-p} の和が発散し、p≤0p \leq 0 では (1) より収束すらしない)。

問題 4 ★★(一様収束と項別微分)

fn(x)=x1+nx2f_n(x) = \dfrac{x}{1 + n x^2} (x∈R, n∈N)(x \in \mathbb{R},\ n \in \mathbb{N}) とおく。

(1) fnf_n は R\mathbb{R} 上で 00 に一様収束することを示せ。

(2) fn′f_n' の各点極限 gg を求め、fn′f_n' は R\mathbb{R} 上では一様収束しないが、任意の δ>0\delta > 0 に対して {∣x∣≥δ}\lbrace \lvert x \rvert \geq \delta \rbrace 上では一様収束することを示せ。

(3) F(x)=∑n=1∞fn(x)nF(x) = \displaystyle\sum_{n=1}^{\infty} \frac{f_n(x)}{n} は R\mathbb{R} 上の連続関数で、R∖{0}\mathbb{R} \setminus \lbrace 0 \rbrace 上で C1C^1 級だが、x=0x = 0 で微分可能でないことを示せ。

使う知識:微分積分 第6章(M 判定法・項別微分定理)

解答

(1) 相加相乗平均より 1+nx2≥2n∣x∣1 + nx^2 \geq 2\sqrt{n}\lvert x \rvert なので ∣fn(x)∣≤12n\lvert f_n(x) \rvert \leq \frac{1}{2\sqrt{n}}。よって sup⁡x∣fn(x)∣→0\sup_x \lvert f_n(x) \rvert \to 0。

(2) fn′(x)=1−nx2(1+nx2)2f_n'(x) = \frac{1 - nx^2}{(1+nx^2)^2} より g(0)=1g(0) = 1, g(x)=0g(x) = 0 (x≠0)(x \neq 0)。連続関数の一様極限は連続だが gg は 00 で不連続なので、R\mathbb{R} 上では一様収束しない。∣x∣≥δ\lvert x \rvert \geq \delta では ∣fn′(x)∣≤1+nx2(1+nx2)2=11+nx2≤11+nδ2→0\lvert f_n'(x) \rvert \leq \frac{1 + nx^2}{(1+nx^2)^2} = \frac{1}{1 + nx^2} \leq \frac{1}{1 + n\delta^2} \to 0 で、一様収束する。

(3) ∣fn(x)/n∣≤12n3/2\lvert f_n(x)/n \rvert \leq \frac{1}{2n^{3/2}} だから M 判定法により一様収束し、FF は連続である。∣x∣≥δ\lvert x \rvert \geq \delta では (2) より ∣fn′(x)/n∣≤1δ2n2\lvert f_n'(x)/n \rvert \leq \frac{1}{\delta^2 n^2} なので導関数の級数も一様収束し、項別微分定理により FF は (δ,∞)(\delta, \infty) と (−∞,−δ)(-\infty, -\delta) で C1C^1 級。δ\delta は任意なので R∖{0}\mathbb{R} \setminus \lbrace 0 \rbrace で C1C^1 級である。最後に x≠0x \neq 0 で

F(x)−F(0)x=∑n=1∞1n(1+nx2)≥∑n=1N1n(1+nx2)→ x→0 ∑n=1N1n\frac{F(x) - F(0)}{x} = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n(1 + nx^2)} \geq \sum_{n=1}^{N} \frac{1}{n(1 + nx^2)} \xrightarrow{\ x \to 0\ } \sum_{n=1}^{N} \frac{1}{n}

が任意の NN で成り立つので、差分商は +∞+\infty に発散し、FF は 00 で微分可能でない。

解説・発展
  • 項別微分定理の仮定は「導関数の級数が一様収束すること」。元の級数の一様収束だけでは極限の微分可能性は保証されず、本問がその反例になっている(x=0x = 0 で導関数の級数は ∑1/n\sum 1/n)。

問題 5 ★★(2 変数関数の極値)

f(x,y)=x4+y4−4(x−y)2f(x, y) = x^4 + y^4 - 4(x - y)^2 とする。

(1) ff の臨界点をすべて求め、各臨界点で極値をとるかどうか判定せよ。

(2) ff の R2\mathbb{R}^2 上の最小値が存在することを示し、その値を求めよ。

使う知識:微分積分 第7章(ヘッセ行列による極値判定)、位相 第5章(コンパクト集合上の最小値)

解答

(1) fx=4x3−8(x−y)f_x = 4x^3 - 8(x-y), fy=4y3+8(x−y)f_y = 4y^3 + 8(x-y)。和をとると x3+y3=0x^3 + y^3 = 0 より y=−xy = -x、代入して 4x3−16x=04x^3 - 16x = 0。臨界点は (0,0)(0,0), (2,−2)(2,-2), (−2,2)(-2,2)。fxx=12x2−8f_{xx} = 12x^2 - 8, fxy=8f_{xy} = 8, fyy=12y2−8f_{yy} = 12y^2 - 8 である。

  • (±2,∓2)(\pm 2, \mp 2):fxx=fyy=40f_{xx} = f_{yy} = 40, fxxfyy−fxy2=1536>0f_{xx}f_{yy} - f_{xy}^2 = 1536 > 0 で狭義の極小。極小値 f=16+16−64=−32f = 16 + 16 - 64 = -32。
  • (0,0)(0,0):fxxfyy−fxy2=64−64=0f_{xx}f_{yy} - f_{xy}^2 = 64 - 64 = 0 で判定できない。直接調べると、t≠0t \neq 0 で f(t,t)=2t4>0f(t,t) = 2t^4 > 0, 0<∣t∣<220 < \lvert t \rvert < 2\sqrt{2} で f(t,−t)=2t2(t2−8)<0f(t,-t) = 2t^2(t^2 - 8) < 0。f(0,0)=0f(0,0) = 0 だから原点のどの近傍にも f>0f > 0 の点と f<0f < 0 の点があり、極値でない。

(2) r2=x2+y2r^2 = x^2 + y^2 とおくと、x4+y4≥r42x^4 + y^4 \geq \frac{r^4}{2} と 4(x−y)2≤8r24(x-y)^2 \leq 8r^2 より f≥r42−8r2=r22(r2−16)f \geq \frac{r^4}{2} - 8r^2 = \frac{r^2}{2}(r^2 - 16) で、r≥4r \geq 4 なら f≥0f \geq 0(r=4r = 4 では f(22,−22)=0f(2\sqrt2, -2\sqrt2) = 0 のように等号も起こる)。コンパクトな K={r≤4}K = \lbrace r \leq 4 \rbrace 上で ff は最小値をとり、それは f(2,−2)=−32f(2,-2) = -32 以下である。KK の境界上では f≥0>−32f \geq 0 > -32 なので最小点は内部にあり臨界点である。臨界点での値 0,−320, -32 を比べ、さらに KK の外で f≥0f \geq 0 であることから、最小値は −32-32((±2,∓2)(\pm 2, \mp 2) でとる)。

解説・発展
  • 判別式が 00 のときは「判定不能」で終わらせず、本問のように方向を選んで値を比べる。(1,1)(1,1) 方向(ヘッセ行列の核)では 4 次の項が効いて正、(1,−1)(1,-1) 方向では 2 次の項が効いて負になる。
  • 「極小値だから最小値」は誤り。2 変数では「臨界点がただ一つで極小」でも最小とは限らない:x2+y2(1−x)3x^2 + y^2(1-x)^3 は臨界点が原点だけで狭義の極小だが、f(4,y)=16−27y2f(4,y) = 16 - 27y^2 は下に有界でない。

問題 6 ★★(条件付き極値)

M={(x,y,z)∈R3∣x2+y2+z2=1, x+y+z=0}M = \lbrace (x,y,z) \in \mathbb{R}^3 \mid x^2 + y^2 + z^2 = 1,\ x + y + z = 0 \rbrace とする。

(1) g=x2+y2+z2−1g = x^2 + y^2 + z^2 - 1, h=x+y+zh = x + y + z とおく。MM の各点で ∇g\nabla g, ∇h\nabla h が 1 次独立であることを示せ。

(2) f(x,y,z)=xyzf(x,y,z) = xyz の MM 上の最大値・最小値と、それをとる点を求めよ。

使う知識:微分積分 第8章(ラグランジュの未定乗数法)

解答

(1) ∇g=2(x,y,z)\nabla g = 2(x,y,z) と ∇h=(1,1,1)\nabla h = (1,1,1) が 1 次従属なら (x,y,z)=c(1,1,1)(x,y,z) = c(1,1,1) で、x+y+z=3c=0x + y + z = 3c = 0 より (x,y,z)=0(x,y,z) = 0 となり x2+y2+z2=1x^2 + y^2 + z^2 = 1 に反する。

(2) MM はコンパクトで空でなく ff は連続なので、最大値・最小値が存在する。(1) により、それをとる点ではある λ,μ\lambda, \mu で

yz=2λx+μ,zx=2λy+μ,xy=2λz+μyz = 2\lambda x + \mu, \qquad zx = 2\lambda y + \mu, \qquad xy = 2\lambda z + \mu

が成り立つ。第 1 式と第 2 式の差から (x−y)(z+2λ)=0(x - y)(z + 2\lambda) = 0、同様に (y−z)(x+2λ)=0(y - z)(x + 2\lambda) = 0, (z−x)(y+2λ)=0(z - x)(y + 2\lambda) = 0。x,y,zx, y, z が相異なると x=y=z=−2λx = y = z = -2\lambda となり矛盾するので、2 つは等しい。x=yx = y としてよく、z=−2xz = -2x, 6x2=16x^2 = 1。候補点は (x,x,−2x)(x, x, -2x)(x=±16x = \pm\frac{1}{\sqrt{6}})とその座標の置換で、f=−2x3=∓136f = -2x^3 = \mp\frac{1}{3\sqrt{6}}。よって

  • 最大値 618\frac{\sqrt{6}}{18}:(−16,−16,26)\left(-\frac{1}{\sqrt6}, -\frac{1}{\sqrt6}, \frac{2}{\sqrt6}\right) とその置換の 3 点
  • 最小値 −618-\frac{\sqrt{6}}{18}:(16,16,−26)\left(\frac{1}{\sqrt6}, \frac{1}{\sqrt6}, -\frac{2}{\sqrt6}\right) とその置換の 3 点
解説・発展
  • 未定乗数法は極値点の必要条件しか与えない。答案では (i) 階数条件、(ii) コンパクト性による最大・最小の存在、(iii) 候補点の値の比較、の 3 点を書く。x−yx - y で割って x=yx = y の場合を落とす誤りが多い。
  • 別解:MM 上では x,y,zx, y, z は t3−12t−xyz=0t^3 - \frac{1}{2}t - xyz = 0 の 3 実解なので、3 次関数の極大値 ≥0≥\geq 0 \geq 極小値の条件から ∣xyz∣≤136\lvert xyz \rvert \leq \frac{1}{3\sqrt6} が出る。

問題 7 ★★(重積分の変数変換とガウス積分)

(1) D={(x,y)∣x>0, 1≤xy≤2, x≤y≤3x}D = \lbrace (x,y) \mid x > 0,\ 1 \leq xy \leq 2,\ x \leq y \leq 3x \rbrace に対し ∬D(x2+y2) dx dy\displaystyle\iint_D (x^2 + y^2)\ dx\ dy を求めよ。

(2) ∬R2e−(x2+xy+y2) dx dy\displaystyle\iint_{\mathbb{R}^2} e^{-(x^2 + xy + y^2)}\ dx\ dy を求めよ。∫−∞∞e−t2 dt=π\int_{-\infty}^{\infty} e^{-t^2}\ dt = \sqrt{\pi} は用いてよい。

使う知識:微分積分 第9章(変数変換公式・広義重積分)、線形代数 第7章(直交対角化)

解答

(1) u=xyu = xy, v=y/xv = y/x とおく。(x,y)↦(u,v)(x,y) \mapsto (u,v) は第 1 象限からそれ自身への C1C^1 級全単射(逆は x=u/vx = \sqrt{u/v}, y=uvy = \sqrt{uv})で、

∂(u,v)∂(x,y)=det⁡(yx−y/x21/x)=2yx=2v\frac{\partial(u,v)}{\partial(x,y)} = \det\begin{pmatrix} y & x \\ -y/x^2 & 1/x \end{pmatrix} = \frac{2y}{x} = 2v

だから dx dy=du dv2vdx\ dy = \frac{du\ dv}{2v}。DD は [1,2]×[1,3][1,2] \times [1,3] に写り、x2+y2=u(v+v−1)x^2 + y^2 = u(v + v^{-1}) なので

∬D(x2+y2) dx dy=12∫12u du∫13(1+1v2)dv=12⋅32⋅83=2\iint_D (x^2+y^2)\,dx\,dy = \frac{1}{2}\int_1^2 u\,du \int_1^3 \left(1 + \frac{1}{v^2}\right)dv = \frac{1}{2}\cdot\frac{3}{2}\cdot\frac{8}{3} = 2

(2) 被積分関数は正で連続なので、広義積分は近似増加列のとり方によらず定まり、変数変換とトネリの定理が使える。直交変換 u=x+y2u = \frac{x+y}{\sqrt2}, v=x−y2v = \frac{x-y}{\sqrt2}(ヤコビアンの絶対値 11)により x2+xy+y2=32u2+12v2x^2 + xy + y^2 = \frac{3}{2}u^2 + \frac{1}{2}v^2 だから

∬R2e−(x2+xy+y2) dx dy=∫−∞∞e−32u2 du∫−∞∞e−12v2 dv=2π32π=2π3\iint_{\mathbb{R}^2} e^{-(x^2+xy+y^2)}\,dx\,dy = \int_{-\infty}^{\infty} e^{-\frac{3}{2}u^2}\,du \int_{-\infty}^{\infty} e^{-\frac{1}{2}v^2}\,dv = \sqrt{\frac{2\pi}{3}}\sqrt{2\pi} = \frac{2\pi}{\sqrt{3}}
解説・発展
  • (1) の要点は、境界の式をそのまま新しい変数に選ぶこと。答案には (i) 単射性、(ii) ヤコビアンの絶対値、(iii) 領域の対応を書く。
  • 一般に nn 次正定値実対称行列 AA に対し ∫Rne−⟨Ax,x⟩dx=πn/2/det⁡A\int_{\mathbb{R}^n} e^{-\langle Ax,x\rangle}dx = \pi^{n/2}/\sqrt{\det A}。多次元正規分布の正規化定数の計算そのものである。

問題 8 ★★(ジョルダン標準形と行列の冪・指数関数)

A=(2101−101−100100011)A = \begin{pmatrix} 2 & 1 & 0 & 1 \\ -1 & 0 & 1 & -1 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 1 \end{pmatrix}

(1) AA の固有多項式と最小多項式を求めよ。

(2) AA のジョルダン標準形 JJ と、P−1AP=JP^{-1}AP = J となる正則行列 PP を一組求めよ。

(3) AnA^n (n∈N)(n \in \mathbb{N}) と etAe^{tA} を求めよ。また X2=AX^2 = A を満たす実行列 XX を一つ求めよ。

使う知識:線形代数 第6章(ジョルダン標準形・ジョルダン鎖・行列の指数関数)

解答

(1) AA は左下 2×22 \times 2 ブロックが 00 のブロック上三角行列で、左上と右下の対角ブロックの固有多項式はともに (λ−1)2(\lambda-1)^2 である(左上は λ(λ−2)+1\lambda(\lambda - 2) + 1)。よって固有多項式は (λ−1)4(\lambda - 1)^4。N=A−IN = A - I とおくと

N=(1101−1−11−100000010),N2=(002000−2000000000),N3=ON = \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 & 1 \\ -1 & -1 & 1 & -1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \end{pmatrix}, \qquad N^2 = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & -2 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}, \qquad N^3 = O

N2≠ON^2 \neq O だから最小多項式は (λ−1)3(\lambda - 1)^3。

(2) rank⁡N=2\operatorname{rank} N = 2, rank⁡N2=1\operatorname{rank} N^2 = 1, rank⁡N3=0\operatorname{rank} N^3 = 0。細胞の個数は 4−2=24 - 2 = 2、サイズ 22 以上は 2−1=12 - 1 = 1 個、サイズ 33 以上は 1−0=11 - 0 = 1 個なので、サイズは 33 と 11。N2e3≠0N^2e_3 \neq 0 より p3=e3p_3 = e_3, p2=Np3=(0,1,0,1)Tp_2 = Np_3 = (0,1,0,1)^{T}, p1=Np2=(2,−2,0,0)Tp_1 = Np_2 = (2,-2,0,0)^{T} とし、ker⁡N={x3=0, x1+x2+x4=0}\ker N = \lbrace x_3 = 0,\ x_1 + x_2 + x_4 = 0 \rbrace から p1p_1 と独立な p4=(1,0,0,−1)Tp_4 = (1,0,0,-1)^{T} をとる。det⁡P=−4≠0\det P = -4 \neq 0 で

P=(2001−21000010010−1),J=P−1AP=(1100011000100001)P = \begin{pmatrix} 2 & 0 & 0 & 1 \\ -2 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 1 & 0 & -1 \end{pmatrix}, \qquad J = P^{-1}AP = \begin{pmatrix} 1 & 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}

(Ap1=p1Ap_1 = p_1, Ap2=p1+p2Ap_2 = p_1 + p_2, Ap3=p2+p3Ap_3 = p_2 + p_3, Ap4=p4Ap_4 = p_4 による。)

(3) II と NN は可換で N3=ON^3 = O だから

An=I+nN+(n2)N2=(n+1nn(n−1)n−n1−nn(2−n)−n001000n1),etA=et(I+tN+t22N2)A^n = I + nN + \binom{n}{2}N^2 = \begin{pmatrix} n+1 & n & n(n-1) & n \\ -n & 1-n & n(2-n) & -n \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & n & 1 \end{pmatrix}, \qquad e^{tA} = e^{t}\left(I + tN + \frac{t^2}{2}N^2\right)

また X=I+12N−18N2X = I + \frac{1}{2}N - \frac{1}{8}N^2 とおくと、X2=I+N+(14−14)N2=AX^2 = I + N + \left(\frac{1}{4} - \frac{1}{4}\right)N^2 = A。

解説・発展
  • 4 次で固有値が 1 つ、dim⁡ker⁡N=2\dim\ker N = 2 のとき、細胞のサイズは (3,1)(3,1) と (2,2)(2,2) の 2 通りがあり得る。固有空間の次元だけでは決まらないので rank⁡N2\operatorname{rank} N^2 を必ず計算する。
  • PP は最長の鎖の「頭」(N2p≠0N^2 p \neq 0 となる pp)から作るのが確実。固有ベクトルから逆向きに Np=vNp = v を解くと、解が存在しない vv を選ぶ危険がある。
  • XX は (1+s)1/2(1+s)^{1/2} の展開を s=Ns = N で打ち切ったもの。etAe^{tA} は x′=Axx' = Ax の基本解行列である(微分方程式 第3章)。

問題 9 ★★(行列の関数方程式)

(1) XY−YX=InXY - YX = I_n を満たす X,Y∈M⁡n(C)X, Y \in \operatorname{M}_n(\mathbb{C}) は存在しないことを示せ。

(2) X2=−I2X^2 = -I_2 を満たす実 2 次正方行列 XX をすべて求めよ。

(3) 実 2 次正方行列 XX で、X2=DX^2 = D, D=diag⁡(−1,−4)D = \operatorname{diag}(-1, -4) を満たすものは存在しないことを示せ。

(4) 実 2 次正方行列 XX で、次を満たすものは存在しないことを示せ。

eX=A,A=(−110−1)e^{X} = A, \qquad A = \begin{pmatrix} -1 & 1 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}

使う知識:線形代数 第5章(トレース・ケーリー–ハミルトンの定理)、線形代数 第6章(行列の指数関数)

解答

(1) tr⁡(XY−YX)=0≠n=tr⁡In\operatorname{tr}(XY - YX) = 0 \neq n = \operatorname{tr} I_n。

(2) ケーリー–ハミルトンの定理 X2−(tr⁡X)X+(det⁡X)I=OX^2 - (\operatorname{tr}X)X + (\det X)I = O に X2=−IX^2 = -I を代入すると (tr⁡X)X=(det⁡X−1)I(\operatorname{tr}X)X = (\det X - 1)I。tr⁡X≠0\operatorname{tr}X \neq 0 なら X=cIX = cI(cc は実数)で c2=−1c^2 = -1 となり矛盾。よって tr⁡X=0\operatorname{tr}X = 0, det⁡X=1\det X = 1 で、逆にこのとき X2=−IX^2 = -I。答えは、a2+bc=−1a^2 + bc = -1 を満たす実数 a,b,ca, b, c を用いて第 1 行 (a,b)(a, b)、第 2 行 (c,−a)(c, -a) と書ける行列の全体である。

(3) X2=DX^2 = D なら XD=X3=DXXD = X^3 = DX。成分で xijdj=dixijx_{ij}d_j = d_ix_{ij} で d1≠d2d_1 \neq d_2 だから x12=x21=0x_{12} = x_{21} = 0。すると x112=−1x_{11}^2 = -1 となり実数では不可能。

(4) XX の固有値を μ1,μ2\mu_1, \mu_2 とする。複素行列として上三角化すれば、eXe^X の固有値は eμ1,eμ2e^{\mu_1}, e^{\mu_2} とわかる。eX=Ae^X = A なら eμ1=eμ2=−1e^{\mu_1} = e^{\mu_2} = -1。μi\mu_i が実数なら eμi>0e^{\mu_i} > 0 で矛盾。そうでなければ μ2=μ1‾≠μ1\mu_2 = \overline{\mu_1} \neq \mu_1 なので XX は複素行列として対角化可能で、X=Rdiag⁡(μ1,μ2)R−1X = R\operatorname{diag}(\mu_1,\mu_2)R^{-1} から eX=R(−I)R−1=−I≠Ae^X = R(-I)R^{-1} = -I \neq A となり矛盾。

解説・発展
  • (2) と (3) の対比が要点。−I-I は回転の 2 乗として実の平方根をもつが、相異なる負の固有値をもつ行列は、可換性から平方根が対角行列に限られ、実の平方根をもたない。
  • (4) は複素行列なら解がある(正則な複素行列は常に複素の対数をもつ)。実の対数がないのは、負の固有値のジョルダン細胞が対になっていないためである。
  • (1) は標数 00 が本質的。標数 pp では Fp[x]/(xp)\mathbb{F}_p[x]/(x^p) 上の微分 DD と xx 倍 MM が DM−MD=IDM - MD = I を満たす。

問題 10 ★★(正定値性と二次形式)

(1) 二次形式 Q(x,y,z)=2xy+2yz+2zxQ(x,y,z) = 2xy + 2yz + 2zx を直交変換で標準形に直し、符号(正・負の固有値の個数)を求めよ。

(2) 次の AaA_a が正定値となる実数 aa の範囲を求めよ。

Aa=(1a0a21013)A_a = \begin{pmatrix} 1 & a & 0 \\ a & 2 & 1 \\ 0 & 1 & 3 \end{pmatrix}

(3) A,BA, B を nn 次の正定値実対称行列とする。ABAB の固有値はすべて正の実数であることを示せ。

使う知識:線形代数 第8章(シルベスターの判定法・慣性法則)、線形代数 第7章

解答

(1) 表現行列は S=E−IS = E - I(EE は全成分 11 の 3 次行列)。EE の固有値は 3,0,03, 0, 0 なので SS の固有値は 2,−1,−12, -1, -1。正規直交固有ベクトル u1=13(1,1,1)Tu_1 = \frac{1}{\sqrt3}(1,1,1)^{T}, u2=12(1,−1,0)Tu_2 = \frac{1}{\sqrt2}(1,-1,0)^{T}, u3=16(1,1,−2)Tu_3 = \frac{1}{\sqrt6}(1,1,-2)^{T} を並べた直交行列で (x,y,z)T=(u1 u2 u3)(X,Y,Z)T(x,y,z)^{T} = (u_1\ u_2\ u_3)(X,Y,Z)^{T} とすると Q=2X2−Y2−Z2Q = 2X^2 - Y^2 - Z^2。符号は(正 1 個, 負 2 個)。

(2) シルベスターの判定法より、首座小行列式 11, 2−a22 - a^2, det⁡Aa=5−3a2\det A_a = 5 - 3a^2 がすべて正であることが必要十分。よって ∣a∣<5/3=153\lvert a \rvert < \sqrt{5/3} = \frac{\sqrt{15}}{3}。

(3) ABv=λvABv = \lambda v(v∈Cn∖{0}v \in \mathbb{C}^n \setminus \lbrace 0 \rbrace)とし w=Bvw = Bv とおくと、w≠0w \neq 0 で Aw=λvAw = \lambda v。A,BA, B は実対称だから w‾TAw=λ w‾Tv=λ v‾TBv\overline{w}^{T}Aw = \lambda\ \overline{w}^{T}v = \lambda\ \overline{v}^{T}Bv。正定値実対称行列 CC は z‾TCz>0\overline{z}^{T}Cz > 0 (z≠0)(z \neq 0) を満たす(z=a+ibz = a + ib なら aTCa+bTCba^{T}Ca + b^{T}Cb に等しい)ので、λ=w‾TAw/v‾TBv>0\lambda = \overline{w}^{T}Aw / \overline{v}^{T}Bv > 0。

解説・発展
  • 半正定値の判定は「すべての主小行列式 ≥0\geq 0」で、首座小行列式だけでは足りない(diag⁡(0,−1)\operatorname{diag}(0,-1) が反例)。
  • (3) の別解:AB=A1/2(A1/2BA1/2)A−1/2AB = A^{1/2}(A^{1/2}BA^{1/2})A^{-1/2} は正定値対称行列と相似。ABAB 自体は対称とは限らない。

問題 11 ★★(固有値の評価)

A=(aij)∈M⁡n(C)A = (a_{ij}) \in \operatorname{M}_n(\mathbb{C}) に対し Ri=∑j≠i∣aij∣R_i = \sum_{j \neq i}\lvert a_{ij} \rvert とおく。

(1)(ゲルシュゴリンの定理)AA の任意の固有値 λ\lambda は、ある ii について ∣λ−aii∣≤Ri\lvert \lambda - a_{ii} \rvert \leq R_i を満たすことを示せ。

(2) すべての ii で ∣aii∣>Ri\lvert a_{ii} \rvert > R_i ならば AA は正則であることを示せ。

(3) TnT_n を対角成分が 22、その上下の成分が −1-1、他が 00 の nn 次三重対角行列とする。TnT_n の固有値はすべて (0,4)(0,4) に含まれることを示し、2−2cos⁡kπn+12 - 2\cos\frac{k\pi}{n+1} (1≤k≤n)(1 \leq k \leq n) が固有値であることを確かめよ。

使う知識:線形代数 第7章(スペクトル定理)、線形代数 第8章

解答

(1) Ax=λxAx = \lambda x, x≠0x \neq 0 とし、∣xi∣=max⁡j∣xj∣\lvert x_i \rvert = \max_j \lvert x_j \rvert となる ii をとる。第 ii 成分から (λ−aii)xi=∑j≠iaijxj(\lambda - a_{ii})x_i = \sum_{j \neq i} a_{ij}x_j で、両辺の絶対値を ∣xi∣>0\lvert x_i \rvert > 0 で割って ∣λ−aii∣≤∑j≠i∣aij∣∣xj∣∣xi∣≤Ri\lvert \lambda - a_{ii} \rvert \leq \sum_{j \neq i}\lvert a_{ij} \rvert \frac{\lvert x_j \rvert}{\lvert x_i \rvert} \leq R_i。

(2) 00 が固有値なら (1) より ∣aii∣≤Ri\lvert a_{ii} \rvert \leq R_i となる ii があり、仮定に反する。

(3) TnT_n は実対称なので固有値は実数で、(1) より ∣λ−2∣≤2\lvert \lambda - 2 \rvert \leq 2、つまり [0,4][0,4] に含まれる。端点を除くため、展開して確かめられる恒等式

xTTnx=x12+∑i=1n−1(xi−xi+1)2+xn2,xT(4I−Tn)x=x12+∑i=1n−1(xi+xi+1)2+xn2x^{T}T_nx = x_1^2 + \sum_{i=1}^{n-1}(x_i - x_{i+1})^2 + x_n^2, \qquad x^{T}(4I - T_n)x = x_1^2 + \sum_{i=1}^{n-1}(x_i + x_{i+1})^2 + x_n^2

を使う。前者が 00 なら x1=0x_1 = 0 かつ x1=⋯=xnx_1 = \cdots = x_n で x=0x = 0、後者も同様。よって TnT_n, 4I−Tn4I - T_n は正定値で、固有値は (0,4)(0,4) にある。次に θ=kπn+1\theta = \frac{k\pi}{n+1}, vj=sin⁡(jθ)v_j = \sin(j\theta) (0≤j≤n+1)(0 \leq j \leq n+1) とすると v0=vn+1=0v_0 = v_{n+1} = 0 で、1≤j≤n1 \leq j \leq n に対し (Tnv)j=2vj−vj−1−vj+1=(2−2cos⁡θ)vj(T_nv)_j = 2v_j - v_{j-1} - v_{j+1} = (2 - 2\cos\theta)v_j。v1=sin⁡θ≠0v_1 = \sin\theta \neq 0 なので 2−2cos⁡θ2 - 2\cos\theta は固有値である。k=1,…,nk = 1, \dots, n で相異なるから、これが固有値のすべてである。

解説・発展
  • ゲルシュゴリンの定理は「絶対値最大の成分に注目する」だけで証明でき、院試で頻出する。確率行列の固有値が ∣λ∣≤1\lvert \lambda \rvert \leq 1 を満たすことも同じ議論で示せる。
  • TnT_n は −d2dx2-\frac{d^2}{dx^2} の差分近似で、その固有値はディリクレ境界条件の固有値問題(微分方程式 第5章)の離散版である。

問題 12 ★★★(線形写像の空間の次元:可換子とシルベスター方程式)

(1) A∈M⁡m(C)A \in \operatorname{M}_m(\mathbb{C}), B∈M⁡n(C)B \in \operatorname{M}_n(\mathbb{C}) は共通の固有値をもたないとする。Φ(X)=AX−XB\Phi(X) = AX - XB で定まる線形写像 Φ ⁣:M⁡m×n(C)→M⁡m×n(C)\Phi\colon \operatorname{M}_{m \times n}(\mathbb{C}) \to \operatorname{M}_{m \times n}(\mathbb{C}) は全単射であることを示せ。

(2) C(A)={X∈M⁡n(C)∣AX=XA}C(A) = \lbrace X \in \operatorname{M}_n(\mathbb{C}) \mid AX = XA \rbrace とおく。AA が対角化可能で、相異なる固有値の重複度が m1,…,mkm_1, \dots, m_k のとき dim⁡C(A)=∑imi2\dim C(A) = \sum_i m_i^2 を示せ。

(3) NN を nn 次のべき零ジョルダン細胞(Ne1=0Ne_1 = 0, Nej=ej−1Ne_j = e_{j-1})とする。C(N)={p(N)∣p∈C[t]}C(N) = \lbrace p(N) \mid p \in \mathbb{C}[t] \rbrace で dim⁡C(N)=n\dim C(N) = n であることを示せ。これを用いて、次数 nn 以下の実係数多項式の空間 VV 上で微分 DD と可換な線形変換全体の次元を求めよ。

使う知識:線形代数 第5章(ケーリー–ハミルトンの定理)、線形代数 第6章

解答

(1) 有限次元なので単射を示せばよい。AX=XBAX = XB なら任意の多項式 pp で p(A)X=Xp(B)p(A)X = Xp(B)。p=χBp = \chi_B(BB の固有多項式)とすると、ケーリー–ハミルトンの定理より χB(A)X=O\chi_B(A)X = O。BB の固有値を νj\nu_j とすると χB(A)=∏j(A−νjI)\chi_B(A) = \prod_j (A - \nu_jI) で、各 νj\nu_j は AA の固有値でないから各因子は正則。よって X=OX = O。

(2) A=PDP−1A = PDP^{-1}, D=diag⁡(μ1Im1,…,μkImk)D = \operatorname{diag}(\mu_1I_{m_1}, \dots, \mu_kI_{m_k})(μi\mu_i は相異なる)とすると、X↦P−1XPX \mapsto P^{-1}XP は C(A)≅C(D)C(A) \cong C(D) を与える。XX を同じ区分けでブロック XijX_{ij} に分けると、DX−XDDX - XD の (i,j)(i,j) ブロックは (μi−μj)Xij(\mu_i - \mu_j)X_{ij}。よって C(D)C(D) はブロック対角行列の全体で、dim⁡C(A)=∑mi2\dim C(A) = \sum m_i^2。

(3) p(N)∈C(N)p(N) \in C(N) は明らか。XN=NXXN = NX とする。ej=Nn−jene_j = N^{n-j}e_n なので、Xen=∑jcjej=p(N)enXe_n = \sum_j c_je_j = p(N)e_n(p(t)=∑jcjtn−jp(t) = \sum_j c_jt^{n-j})と書ける。すると Xej=XNn−jen=Nn−jp(N)en=p(N)ejXe_j = XN^{n-j}e_n = N^{n-j}p(N)e_n = p(N)e_j で X=p(N)X = p(N)。Nken=en−kN^ke_n = e_{n-k} (0≤k<n)(0 \leq k < n) は相異なる基底ベクトルなので I,N,…,Nn−1I, N, \dots, N^{n-1} は 1 次独立、Nn=ON^n = O より dim⁡C(N)=n\dim C(N) = n。

VV の基底 ej=xj−1/(j−1)!e_j = x^{j-1}/(j-1)! (1≤j≤n+1)(1 \leq j \leq n+1) に関して De1=0De_1 = 0, Dej=ej−1De_j = e_{j-1} なので、DD は n+1n+1 次のべき零ジョルダン細胞で表される。上の C(N)C(N) の議論は係数体によらず(R\mathbb{R} 上でも)そのまま成り立つので、求める次元は n+1n+1 である(DD と可換な線形変換は DD の多項式 ∑k=0nakDk\sum_{k=0}^{n} a_kD^k に限る)。

解説・発展
  • (1) の別証明:Φ=LA−RB\Phi = L_A - R_B(左・右からの積)の固有値は λi−νj≠0\lambda_i - \nu_j \neq 0の形になる(λi\lambda_i, νj\nu_j は AA, BB の固有値)。
  • 一般に dim⁡C(A)=∑λ∑i,jmin⁡(pi(λ),pj(λ))≥n\dim C(A) = \sum_\lambda \sum_{i,j} \min(p_i^{(\lambda)}, p_j^{(\lambda)}) \geq n(pi(λ)p_i^{(\lambda)} は固有値 λ\lambda のジョルダン細胞のサイズ)。問題 8 の AA では 3+1+1+1=63 + 1 + 1 + 1 = 6。等号は最小多項式と固有多項式が一致するときで、そのとき C(A)=C[A]C(A) = \mathbb{C}[A]。

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