Lemma数学ロードマップ

20 総合演習(大学院入試・修士レベル) · 第 2 章

集合と位相

目安 7〜11 時間演習 11 問

この章のねらい

  • 濃度・閉包・連続性・コンパクト性・連結性・完備性について、定義に戻って論証を組み立てる力を養う
  • 反例を自分で作れるようにする(院試の位相の問題の半分は「反例を挙げよ」である)

前提:数学の言葉 第5章、集合と位相

目安:★ は 20 分、★★ は 30〜40 分、★★★ は 50 分。

問題 1 ★(濃度)

(1) 閉区間 [0,1][0,1] から開区間 (0,1)(0,1) への全単射を具体的に構成せよ。

(2) N\mathbb{N} の有限部分集合全体 F\mathcal{F} は可算であり、冪集合 P(N)\mathcal{P}(\mathbb{N}) は非可算であることを示せ。

(3) R\mathbb{R} 上の実数値連続関数全体 C(R)C(\mathbb{R}) の濃度は c=∣R∣\mathfrak{c} = \lvert \mathbb{R} \rvert であることを示せ。∣R∣=2ℵ0\lvert \mathbb{R} \rvert = 2^{\aleph_0} は用いてよい。

使う知識:数学の言葉 第5章(ベルンシュタインの定理・カントールの定理)

解答

(1) a1=0a_1 = 0, a2=1a_2 = 1, ak=1k−1a_k = \frac{1}{k-1} (k≥3)(k \geq 3) とおき、φ(ak)=ak+2\varphi(a_k) = a_{k+2}、それ以外の xx では φ(x)=x\varphi(x) = x と定める。φ\varphi は {ak}k≥1\lbrace a_k \rbrace_{k \geq 1} を {ak}k≥3\lbrace a_k \rbrace_{k \geq 3} に全単射に写し、残りの点を動かさないので、[0,1][0,1] から [0,1]∖{0,1}=(0,1)[0,1] \setminus \lbrace 0, 1 \rbrace = (0,1) への全単射である。

(2) A∈FA \in \mathcal{F} に ∑a∈A2a−1\sum_{a \in A} 2^{a-1} を対応させると、2 進展開の一意性により F\mathcal{F} から Z≥0\mathbb{Z}_{\geq 0} への全単射になる。よって F\mathcal{F} は可算。P(N)\mathcal{P}(\mathbb{N}) については、任意の写像 f ⁣:N→P(N)f\colon \mathbb{N} \to \mathcal{P}(\mathbb{N}) に対し B={n∣n∉f(n)}B = \lbrace n \mid n \notin f(n) \rbrace とおくと、B=f(m)B = f(m) となる mm があれば「m∈B⇔m∉f(m)=Bm \in B \Leftrightarrow m \notin f(m) = B」となり矛盾する。よって全射は存在せず、非可算である。

(3) 連続関数は稠密集合 Q\mathbb{Q} 上の値で決まる(ハウスドルフ空間への 2 つの連続写像が一致する集合は閉集合だから)。よって制限写像 C(R)→RQC(\mathbb{R}) \to \mathbb{R}^{\mathbb{Q}} は単射で、

∣C(R)∣≤∣RQ∣=(2ℵ0)ℵ0=2ℵ0⋅ℵ0=2ℵ0=c\lvert C(\mathbb{R}) \rvert \leq \lvert \mathbb{R}^{\mathbb{Q}} \rvert = (2^{\aleph_0})^{\aleph_0} = 2^{\aleph_0 \cdot \aleph_0} = 2^{\aleph_0} = \mathfrak{c}

一方、定数関数により R→C(R)\mathbb{R} \to C(\mathbb{R}) の単射がある。ベルンシュタインの定理から ∣C(R)∣=c\lvert C(\mathbb{R}) \rvert = \mathfrak{c}。

解説・発展
  • (1) は「可算個の点をずらして空席を作る」ヒルベルトのホテルの論法。連続な全単射は存在しない(連続な単射は単調で、コンパクト集合の像はコンパクト)。
  • 関数全体 RR\mathbb{R}^{\mathbb{R}} の濃度は 2c>c2^{\mathfrak{c}} > \mathfrak{c} なので、「ほとんどすべての関数は不連続」である。同様にボレル集合全体の濃度は c\mathfrak{c}、ルベーグ可測集合全体は(カントール集合の部分集合がすべて可測なので)2c2^{\mathfrak{c}} である(前者の証明は超限帰納法による。ここでは省略)。

問題 2 ★★(閉包・内部の計算)

(1) R2\mathbb{R}^2(ユークリッド位相)の部分集合 A={(x,sin⁡(1/x))∣0<x≤1}A = \lbrace (x, \sin(1/x)) \mid 0 < x \leq 1 \rbrace の閉包と内部を求めよ。

(2) R\mathbb{R} に補有限位相(空集合と、補集合が有限な集合を開集合とする位相)を入れる。Z\mathbb{Z} の閉包と [0,1][0,1] の内部を求めよ。また、相異なる点からなる点列はすべての点に収束することを示せ。

(3) R\mathbb{R} に {[a,b)∣a<b}\lbrace [a,b) \mid a < b \rbrace を開基とする位相(ゾルゲンフライ直線)を入れる。(0,1)(0,1) の閉包、[0,1][0,1] の内部を求め、この空間は連結でないことを示せ。

使う知識:位相 第2章(閉包・内部・開基)

解答

(1) 答:A‾=A∪({0}×[−1,1])\overline{A} = A \cup (\lbrace 0 \rbrace \times [-1,1]), A∘=∅A^{\circ} = \emptyset。 (xn,sin⁡(1/xn))∈A(x_n, \sin(1/x_n)) \in A が (x,y)(x,y) に収束するとする。xn∈(0,1]x_n \in (0,1] より x∈[0,1]x \in [0,1]。x>0x > 0 なら sin⁡(1/x)\sin(1/x) の連続性から y=sin⁡(1/x)y = \sin(1/x) で (x,y)∈A(x,y) \in A。x=0x = 0 なら y∈[−1,1]y \in [-1,1]。逆に y∈[−1,1]y \in [-1,1] に対し sin⁡θ=y\sin\theta = y となる θ∈[−π/2,π/2]\theta \in [-\pi/2, \pi/2] をとり xn=1θ+2nπx_n = \frac{1}{\theta + 2n\pi} とすると、xn∈(0,1]x_n \in (0,1], xn→0x_n \to 0 で (xn,y)∈A(x_n, y) \in A だから (0,y)∈A‾(0,y) \in \overline{A}。内部については、AA は関数のグラフなので、どの開円板も含まない(円板は同じ xx 座標の 2 点を含む)。

(2) 閉集合は有限集合と R\mathbb{R} だけである。Z\mathbb{Z} を含む閉集合は R\mathbb{R} のみなので Z‾=R\overline{\mathbb{Z}} = \mathbb{R}。空でない開集合は補集合が有限なので [0,1][0,1] に含まれない。よって [0,1]∘=∅[0,1]^{\circ} = \emptyset。点列 (xn)(x_n) の項が相異なるとし、pp の開近傍 UU をとると、R∖U\mathbb{R} \setminus U は有限なので、それに属する xnx_n は有限個。よって十分大きいすべての nn で xn∈Ux_n \in U となり、xn→px_n \to p。

(3) 11 の近傍 [1,1+ε)[1, 1+\varepsilon) は (0,1)(0,1) と交わらない。00 の近傍 [0,ε)[0, \varepsilon) は交わる。x<0x < 0 では [x,0)[x, 0)、x>1x > 1 では [x,x+1)[x, x+1) が交わらない近傍になる。よって (0,1)‾=[0,1)\overline{(0,1)} = [0,1)。同様に [0,1)[0,1) の各点 xx は [x,1)⊂[0,1][x, 1) \subset [0,1] を近傍にもつが、11 のどの基本近傍 [1,1+ε)[1, 1+\varepsilon) も [0,1][0,1] に含まれないので [0,1]∘=[0,1)[0,1]^{\circ} = [0,1)。最後に [0,1)[0,1) は開集合で、補集合 (−∞,0)∪[1,∞)=⋃a<0[a,0)∪⋃b≥1[1,b)(-\infty, 0) \cup [1,\infty) = \bigcup_{a < 0}[a, 0) \cup \bigcup_{b \geq 1}[1, b) も開集合である。空でも全体でもない開かつ閉集合があるので連結でない。

解説・発展
  • 閉包を答えるときは「⊃\supset」(点列や近傍で実際に近づけること)と「⊂\subset」(それ以外の点に交わらない近傍があること)の両方を示す。片方だけの答案が多い。
  • (2) の補有限位相はハウスドルフでない典型例で、極限が一意でない。(3) のゾルゲンフライ直線は完全不連結で、第一可算・可分だが第二可算でなく、積 Rℓ×Rℓ\mathbb{R}_{\ell} \times \mathbb{R}_{\ell} は正規でない(反例の宝庫)。

問題 3 ★★(連続写像と稠密集合)

X,YX, Y を位相空間、f,g ⁣:X→Yf, g\colon X \to Y を連続写像とする。

(1) YY がハウスドルフならば E={x∈X∣f(x)=g(x)}E = \lbrace x \in X \mid f(x) = g(x) \rbrace は閉集合であることを示せ。

(2) YY がハウスドルフで、ff と gg が稠密な部分集合 DD 上で一致すれば f=gf = g であることを示せ。YY がハウスドルフでないと (2) が成り立たない例を挙げよ。

(3) 連続関数 φ ⁣:R→R\varphi\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} が φ(x+y)=φ(x)+φ(y)\varphi(x+y) = \varphi(x) + \varphi(y) を満たすならば、φ(x)=φ(1)x\varphi(x) = \varphi(1)x であることを示せ。

使う知識:位相 第2章(連続写像)、位相 第4章(ハウスドルフ空間)

解答

(1) X∖EX \setminus E が開集合であることを示す。f(x)≠g(x)f(x) \neq g(x) とすると、YY はハウスドルフなので f(x)∈Uf(x) \in U, g(x)∈Vg(x) \in V, U∩V=∅U \cap V = \emptyset となる開集合 U,VU, V がある。W=f−1(U)∩g−1(V)W = f^{-1}(U) \cap g^{-1}(V) は xx の開近傍で、y∈Wy \in W なら f(y)∈Uf(y) \in U, g(y)∈Vg(y) \in V より f(y)≠g(y)f(y) \neq g(y)。よって W⊂X∖EW \subset X \setminus E。

(2) EE は DD を含む閉集合だから E⊃D‾=XE \supset \overline{D} = X。反例:Y={a,b}Y = \lbrace a, b \rbrace に密着位相(開集合は ∅,Y\emptyset, Y のみ)を入れると、任意の写像 R→Y\mathbb{R} \to Y が連続である。f≡af \equiv a と、Q\mathbb{Q} 上で aa、無理数上で bb をとる gg は稠密な Q\mathbb{Q} 上で一致するが f≠gf \neq g。

(3) φ(0)=2φ(0)\varphi(0) = 2\varphi(0) より φ(0)=0\varphi(0) = 0、φ(−x)=−φ(x)\varphi(-x) = -\varphi(x)。帰納法で φ(nx)=nφ(x)\varphi(nx) = n\varphi(x) (n∈N)(n \in \mathbb{N})。m∈Zm \in \mathbb{Z}, n∈Nn \in \mathbb{N} に対し nφ(m/n)=φ(m)=mφ(1)n\varphi(m/n) = \varphi(m) = m\varphi(1) だから、φ(q)=qφ(1)\varphi(q) = q\varphi(1) (q∈Q)(q \in \mathbb{Q})。φ\varphi と x↦φ(1)xx \mapsto \varphi(1)x は連続で稠密な Q\mathbb{Q} 上一致するので、(2) より一致する。

解説・発展
  • (1) は「YY がハウスドルフ ⇔\Leftrightarrow 対角集合 ΔY⊂Y×Y\Delta_Y \subset Y \times Y が閉集合」を使って、E=(f,g)−1(ΔY)E = (f, g)^{-1}(\Delta_Y) と見ることもできる。
  • (3) で連続性を外すと、ハメル基底(選択公理)を使って不連続な加法的関数が作れる。そのグラフは R2\mathbb{R}^2 で稠密になる。

問題 4 ★★(積位相と箱位相)

X=RNX = \mathbb{R}^{\mathbb{N}}(実数列全体)とする。積位相は ∏nUn\prod_n U_n(各 UnU_n は開集合で、有限個の nn を除き Un=RU_n = \mathbb{R})を開基とする位相、箱位相は条件なしの ∏nUn\prod_n U_n を開基とする位相である。

(1) 対角写像 Δ ⁣:R→X\Delta\colon \mathbb{R} \to X, Δ(t)=(t,t,t,… )\Delta(t) = (t, t, t, \dots) は積位相に関して連続だが、箱位相に関しては連続でないことを示せ。

(2) d(x,y)=∑n=1∞2−nmin⁡(1,∣xn−yn∣)d(x,y) = \sum_{n=1}^{\infty} 2^{-n}\min(1, \lvert x_n - y_n \rvert) は積位相を定める距離であることを示せ。

(3) 箱位相は第一可算でない(したがって距離化可能でない)ことを示せ。

使う知識:位相 第3章(積位相)、位相 第4章(可算公理)

解答

(1) 積位相は各射影 pnp_n を連続にする最弱の位相なので、Δ\Delta の連続性は各 pn∘Δ=idRp_n \circ \Delta = \mathrm{id}_{\mathbb{R}} の連続性と同値で、成り立つ。箱位相では U=∏n(−1n,1n)U = \prod_n (-\frac{1}{n}, \frac{1}{n}) は開集合だが、Δ−1(U)=⋂n(−1n,1n)={0}\Delta^{-1}(U) = \bigcap_n (-\frac{1}{n}, \frac{1}{n}) = \lbrace 0 \rbrace は開集合でない。

(2) dd が距離であることは各項が擬距離であることと、d(x,y)=0⇒d(x,y) = 0 \Rightarrow 全成分一致からわかる。x∈Xx \in X を固定する。

  • ε>0\varepsilon > 0 に対し 2−N<ε/22^{-N} < \varepsilon/2 となる NN をとると、積位相の基本開集合 V=∏n≤N(xn−ε2,xn+ε2)×∏n>NRV = \prod_{n \leq N}(x_n - \frac{\varepsilon}{2}, x_n + \frac{\varepsilon}{2}) \times \prod_{n > N}\mathbb{R} の点 yy は d(x,y)<∑n≤N2−nε2+∑n>N2−n<ε2+2−N<εd(x,y) < \sum_{n \leq N} 2^{-n}\frac{\varepsilon}{2} + \sum_{n > N}2^{-n} < \frac{\varepsilon}{2} + 2^{-N} < \varepsilon を満たす。よって V⊂Bd(x,ε)V \subset B_d(x, \varepsilon)。
  • 逆に基本開集合 x∈W=∏n≤N(xn−r,xn+r)×∏n>NRx \in W = \prod_{n \leq N}(x_n - r, x_n + r) \times \prod_{n > N}\mathbb{R}(0<r<10 < r < 1 としてよい)に対し、d(x,y)<2−Nrd(x,y) < 2^{-N}r なら n≤Nn \leq N で min⁡(1,∣xn−yn∣)<2n−Nr≤r<1\min(1, \lvert x_n - y_n \rvert) < 2^{n-N}r \leq r < 1 より ∣xn−yn∣<r\lvert x_n - y_n \rvert < r。よって Bd(x,2−Nr)⊂WB_d(x, 2^{-N}r) \subset W。

各点で近傍系が一致するので、dd の定める位相は積位相である。

(3) 00 が可算な基本近傍系 {Uk}\lbrace U_k \rbrace をもつとする。各 UkU_k は ∏n(−ak,n,ak,n)\prod_n (-a_{k,n}, a_{k,n})(ak,n>0a_{k,n} > 0)を含む。V=∏n(−an,n2,an,n2)V = \prod_n (-\frac{a_{n,n}}{2}, \frac{a_{n,n}}{2}) は 00 の開近傍なので、ある kk で Uk⊂VU_k \subset V、とくに (−ak,k,ak,k)⊂(−ak,k2,ak,k2)(-a_{k,k}, a_{k,k}) \subset (-\frac{a_{k,k}}{2}, \frac{a_{k,k}}{2}) となり矛盾(カントールの対角線論法)。距離空間は第一可算なので、箱位相は距離化可能でない。

解説・発展
  • 「積の位相で連続 ⇔\Leftrightarrow 各成分が連続」が成り立つのは積位相だからであり、箱位相では成り立たない。これが積位相を標準とする理由である。
  • 可算個の距離空間の積は距離化可能だが、非可算個の積(例:RR\mathbb{R}^{\mathbb{R}})は第一可算でなく距離化可能でない。

問題 5 ★★(コンパクト性)

ℓ2\ell^2 を 2 乗総和可能な実数列の空間(ノルム ∥x∥=(∑xn2)1/2\lVert x \rVert = (\sum x_n^2)^{1/2})とする。

(1) 閉単位球 {∥x∥≤1}\lbrace \lVert x \rVert \leq 1 \rbrace はコンパクトでないことを示せ。

(2) H={x∈ℓ2∣∣xn∣≤1/n (∀n)}H = \lbrace x \in \ell^2 \mid \lvert x_n \rvert \leq 1/n\ (\forall n) \rbrace はコンパクトであることを示せ。

(3) (X,d)(X, d) をコンパクト距離空間、f ⁣:X→Xf\colon X \to X を等長写像(d(f(x),f(y))=d(x,y)d(f(x), f(y)) = d(x,y))とする。ff は全射であることを示せ。コンパクト性を外すと成り立たない例も挙げよ。

使う知識:位相 第5章(点列コンパクト・全有界)、位相 第7章

解答

(1) 標準基底 ene_n は単位球に属し、m≠nm \neq n で ∥em−en∥=2\lVert e_m - e_n \rVert = \sqrt{2} なので、収束する部分列をもたない。距離空間ではコンパクトと点列コンパクトは同値だから、コンパクトでない。

(2) 距離空間では「完備かつ全有界」がコンパクトと同値である。各座標 x↦xnx \mapsto x_n は連続なので HH は閉集合、完備な ℓ2\ell^2 の閉集合として完備。全有界性:ε>0\varepsilon > 0 に対し ∑n>Nn−2<ε2/4\sum_{n > N} n^{-2} < \varepsilon^2/4 となる NN をとる。∏n≤N[−1n,1n]\prod_{n \leq N}[-\frac{1}{n}, \frac{1}{n}] は RN\mathbb{R}^N の有界集合なので、有限個の点 y(1),…,y(m)y^{(1)}, \dots, y^{(m)}(N+1N+1 番目以降を 00 とした ℓ2\ell^2 の元とみる)で ε/2\varepsilon/2-網が作れる。x∈Hx \in H に対し最初の NN 成分が y(i)y^{(i)} と ε/2\varepsilon/2 以内なら

∥x−y(i)∥2<ε24+∑n>N1n2<ε22\lVert x - y^{(i)} \rVert^2 < \frac{\varepsilon^2}{4} + \sum_{n > N}\frac{1}{n^2} < \frac{\varepsilon^2}{2}

よって HH は有限個の ε\varepsilon 球で覆われ、全有界である。

(3) x∉f(X)x \notin f(X) とする。ff は連続なので f(X)f(X) はコンパクト、したがって閉集合で、ε=d(x,f(X))>0\varepsilon = d(x, f(X)) > 0。xk=fk(x)x_k = f^k(x) とおくと、m<nm < n に対し d(xm,xn)=d(x,xn−m)≥εd(x_m, x_n) = d(x, x_{n-m}) \geq \varepsilon(xn−m∈f(X)x_{n-m} \in f(X))。よって (xk)(x_k) はコーシー部分列をもたず、点列コンパクト性に反する。反例:[0,∞)[0,\infty) 上の f(x)=x+1f(x) = x + 1 は等長だが全射でない。

解説・発展
  • (1) は「無限次元ノルム空間の閉単位球はコンパクトでない」(リースの定理)の具体例。(2) は「各座標方向の幅 ana_n が 2 乗総和可能(∑an2<∞\sum a_n^2 < \infty)な直方体 {∣xn∣≤an}\lbrace \lvert x_n \rvert \leq a_n \rbrace」がコンパクトになる例(ヒルベルト立方体)で、コンパクト作用素の像の典型的な形である。幅が 00 に収束するだけでは足りない(an=n−1/2a_n = n^{-1/2} なら非有界)(関数解析 第5章)。
  • (3) の議論は「自分自身と等長な真部分集合をもたない」ことを示しており、同様に、コンパクト距離空間上の距離を縮めない全射は等長写像であることも示せる。

問題 6 ★★(連結性)

(1) GL⁡n(R)\operatorname{GL}_n(\mathbb{R})(Rn2\mathbb{R}^{n^2} の部分空間)は連結でないことを示せ。

(2) GL⁡n(C)\operatorname{GL}_n(\mathbb{C}) は弧状連結であることを示せ。

(3) 問題 2 (1) の A‾\overline{A} は連結だが弧状連結でないことを示せ。

使う知識:位相 第6章(連結・弧状連結・中間値の定理)

解答

(1) det⁡ ⁣:GL⁡n(R)→R∖{0}\det\colon \operatorname{GL}_n(\mathbb{R}) \to \mathbb{R} \setminus \lbrace 0 \rbrace は連続な全射で、値域は連結でない。連結空間の連続像は連結だから、GL⁡n(R)\operatorname{GL}_n(\mathbb{R}) は連結でない。

(2) A,B∈GL⁡n(C)A, B \in \operatorname{GL}_n(\mathbb{C}) に対し p(z)=det⁡((1−z)A+zB)p(z) = \det((1-z)A + zB) は zz の多項式で p(0)=det⁡A≠0p(0) = \det A \neq 0、したがって零点は有限個。有限集合 ZZ を除いた C∖Z\mathbb{C} \setminus Z は弧状連結なので(00 と 11 を結ぶ折れ線を ZZ を避けるようにとれる)、道 c ⁣:[0,1]→C∖Zc\colon [0,1] \to \mathbb{C} \setminus Z, c(0)=0c(0) = 0, c(1)=1c(1) = 1 がある。γ(s)=(1−c(s))A+c(s)B\gamma(s) = (1 - c(s))A + c(s)B は GL⁡n(C)\operatorname{GL}_n(\mathbb{C}) 内で AA と BB を結ぶ。

(3) AA は連結な (0,1](0,1] の連続像なので連結、A⊂A‾⊂A‾A \subset \overline{A} \subset \overline{A} より A‾\overline{A} も連結。弧状連結でないことを示す。γ=(γ1,γ2) ⁣:[0,1]→A‾\gamma = (\gamma_1, \gamma_2)\colon [0,1] \to \overline{A} を γ(0)=(0,0)\gamma(0) = (0,0), γ(1)=(1/π,0)\gamma(1) = (1/\pi, 0) となる道とし、t0=sup⁡{t∣γ1(t)=0}t_0 = \sup\lbrace t \mid \gamma_1(t) = 0 \rbrace とおく。連続性より γ1(t0)=0\gamma_1(t_0) = 0、t>t0t > t_0 で γ1(t)>0\gamma_1(t) > 0。γ2\gamma_2 の t0t_0 での連続性から、ある δ∈(0,1−t0]\delta \in (0, 1 - t_0] で t∈[t0,t0+δ]t \in [t_0, t_0 + \delta] なら ∣γ2(t)−γ2(t0)∣<12\lvert \gamma_2(t) - \gamma_2(t_0) \rvert < \frac{1}{2}。中間値の定理より γ1([t0,t0+δ])⊃[0,c]\gamma_1([t_0, t_0+\delta]) \supset [0, c](c=γ1(t0+δ)>0c = \gamma_1(t_0 + \delta) > 0)。(0,c](0, c] 内に sin⁡(1/x′)=1\sin(1/x') = 1, sin⁡(1/x′′)=−1\sin(1/x'') = -1 となる x′,x′′x', x'' があり、γ(t′)=(x′,1)\gamma(t') = (x', 1), γ(t′′)=(x′′,−1)\gamma(t'') = (x'', -1) となる t′,t′′∈(t0,t0+δ]t', t'' \in (t_0, t_0+\delta] がある。すると 2=∣γ2(t′)−γ2(t′′)∣<12 = \lvert \gamma_2(t') - \gamma_2(t'') \rvert < 1 となり矛盾。

解説・発展
  • (1) の 2 つの連結成分は det⁡>0\det > 0 と det⁡<0\det < 0 で、それぞれ弧状連結である(証明には行列の基本変形や極分解を使う)。O(n)O(n) も同様に 2 成分、SO(n)SO(n) は弧状連結。
  • (3) の A‾\overline{A} は「位相幾何学者の正弦曲線」と呼ばれる。弧状連結 ⇒\Rightarrow 連結は常に成り立つが逆は偽、ただし局所弧状連結な空間では同値である。

問題 7 ★★(商空間)

(1) [0,1][0,1] で 0∼10 \sim 1 とした商空間は S1S^1 と同相であることを示せ。

(2) R\mathbb{R} において x∼y⇔x−y∈Qx \sim y \Leftrightarrow x - y \in \mathbb{Q} と定める。商空間 R/∼\mathbb{R}/{\sim} の位相は密着位相であることを示せ。

(3) X=R×{0,1}X = \mathbb{R} \times \lbrace 0, 1 \rbrace において x≠0x \neq 0 のとき (x,0)∼(x,1)(x,0) \sim (x,1) とする(2 つの原点をもつ直線)。商空間 X/∼X/{\sim} の各点は R\mathbb{R} と同相な開近傍をもつが、X/∼X/{\sim} はハウスドルフでないことを示せ。

使う知識:位相 第3章(商位相)、位相 第5章(コンパクトからハウスドルフへの連続全単射)

解答

(1) e(t)=e2πite(t) = e^{2\pi i t} は [0,1]→S1[0,1] \to S^1 の連続全射で、e(s)=e(t)⇔s∼te(s) = e(t) \Leftrightarrow s \sim t。よって商空間から S1S^1 への連続全単射 eˉ\bar{e} が誘導される。商空間はコンパクト空間 [0,1][0,1] の連続像なのでコンパクト、S1S^1 はハウスドルフ。コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続全単射は閉写像(閉集合 →\to コンパクト →\to コンパクト →\to 閉集合)なので同相写像である。

(2) π ⁣:R→R/∼\pi\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R}/{\sim} を射影、UU を空でない開集合とする。V=π−1(U)V = \pi^{-1}(U) は空でない開集合で V+Q=VV + \mathbb{Q} = V を満たす。任意の x∈Rx \in \mathbb{R} に対し V−xV - x は空でない開集合なので有理数 qq を含み、x+q∈Vx + q \in V、よって x∈V−q=Vx \in V - q = V。したがって V=RV = \mathbb{R}, U=R/∼U = \mathbb{R}/{\sim} となり、開集合は ∅\emptyset と全体のみである。

(3) 射影を π\pi、0i=π(0,i)0_i = \pi(0, i) とする。開集合 W⊂XW \subset X に対し π−1(π(W))\pi^{-1}(\pi(W)) は WW と、WW の点 (x,i)(x, i)(x≠0x \neq 0)を (x,1−i)(x, 1-i) に移した集合の和で、開集合である。よって π\pi は開写像。π\pi は各 R×{i}\mathbb{R} \times \lbrace i \rbrace 上で単射な連続開写像だから、π(R×{i})\pi(\mathbb{R} \times \lbrace i \rbrace) は R\mathbb{R} と同相な開集合で、どの点もそのどちらかに含まれる。一方、000_0, 010_1 の開近傍 U0,U1U_0, U_1 は、ある ε>0\varepsilon > 0 で π((−ε,ε)×{0})\pi((-\varepsilon, \varepsilon) \times \lbrace 0 \rbrace), π((−ε,ε)×{1})\pi((-\varepsilon, \varepsilon) \times \lbrace 1 \rbrace) を含み、両者は π(ε/2,0)=π(ε/2,1)\pi(\varepsilon/2, 0) = \pi(\varepsilon/2, 1) を共有する。よって 000_0 と 010_1 は分離できない。

解説・発展
  • 商空間の同相を示すには (1) の「コンパクトからハウスドルフへの連続全単射」が最も便利。連続な右逆写像をもつ連続全射は商写像である、という事実もよく使う(例:(x,y)↦x2+y2(x,y) \mapsto x^2 + y^2 から R2/∼≅[0,∞)\mathbb{R}^2/{\sim} \cong [0,\infty))。
  • (3) は「局所ユークリッドだがハウスドルフでない」空間の例で、多様体の定義にハウスドルフ性を課す理由である。

問題 8 ★★(完備性)

(1) C[0,1]C[0,1] に L1L^1 ノルム ∥f∥1=∫01∣f(x)∣ dx\lVert f \rVert_1 = \int_0^1 \lvert f(x) \rvert\ dx を入れた空間は完備でないことを示せ。

(2) ρ(x,y)=∣arctan⁡x−arctan⁡y∣\rho(x,y) = \lvert \arctan x - \arctan y \rvert は R\mathbb{R} 上の通常の位相を定める距離だが、完備でないことを示せ。

(3) 積分方程式 f(x)=x+13∫01xtsin⁡(f(t)) dtf(x) = x + \frac{1}{3}\int_0^1 xt\sin(f(t))\ dt は C[0,1]C[0,1] にただ一つの解をもつことを示せ。

使う知識:位相 第7章(完備性・縮小写像の原理)

解答

(1) n≥2n \geq 2 に対し fnf_n を、[0,12][0, \frac{1}{2}] で 00、[12,12+1n][\frac{1}{2}, \frac{1}{2} + \frac{1}{n}] で 00 から 11 へ 1 次関数、それ以降 11 とする。m≥n≥2m \geq n \geq 2 なら fnf_n と fmf_m は [12,12+1n][\frac{1}{2}, \frac{1}{2} + \frac{1}{n}] の外で一致し、差は 11 以下なので ∥fn−fm∥1≤1n\lVert f_n - f_m \rVert_1 \leq \frac{1}{n}。よってコーシー列。連続関数 ff に L1L^1 収束したとすると、∫01/2∣f∣≤∥f−fn∥1→0\int_0^{1/2}\lvert f \rvert \leq \lVert f - f_n \rVert_1 \to 0 より [0,12][0, \frac{1}{2}] で f=0f = 0。任意の δ>0\delta > 0 について、n>1/δn > 1/\delta で [12+δ,1][\frac{1}{2} + \delta, 1] 上 fn=1f_n = 1 だから、同様に (12,1](\frac{1}{2}, 1] 上で f=1f = 1。これは ff の 12\frac{1}{2} での連続性に反する。

(2) arctan⁡\arctan は単射なので ρ\rho は距離で、arctan⁡ ⁣:R→(−π2,π2)\arctan\colon \mathbb{R} \to (-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}) は同相写像だから ρ\rho の位相は通常の位相と一致する。xn=nx_n = n は arctan⁡n→π2\arctan n \to \frac{\pi}{2} より ρ\rho に関してコーシー列だが、ρ\rho で収束すれば通常の位相でも収束するはずで、それは不可能。

(3) (Tf)(x)=x+13∫01xtsin⁡(f(t)) dt(Tf)(x) = x + \frac{1}{3}\int_0^1 xt\sin(f(t))\ dt は C[0,1]C[0,1] をそれ自身に写す。∣sin⁡a−sin⁡b∣≤∣a−b∣\lvert \sin a - \sin b \rvert \leq \lvert a - b \rvert より

∣(Tf)(x)−(Tg)(x)∣≤13∫01xt∣f(t)−g(t)∣ dt≤16∥f−g∥∞\lvert (Tf)(x) - (Tg)(x) \rvert \leq \frac{1}{3}\int_0^1 xt\lvert f(t) - g(t) \rvert\,dt \leq \frac{1}{6}\lVert f - g \rVert_{\infty}

(C[0,1],∥⋅∥∞)(C[0,1], \lVert \cdot \rVert_\infty) は完備なので、縮小写像の原理により TT はただ一つの不動点をもつ。

解説・発展
  • (2) は「完備性は位相的性質でない」ことを示す((−π2,π2)(-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}) と R\mathbb{R} は同相)。ただし「完備な距離を入れられる」ことは位相的性質で、それはポーランド空間の理論につながる。
  • (3) の解は TfTf の形から f(x)=cxf(x) = cx で、cc は c=1+13∫01tsin⁡(ct) dtc = 1 + \frac{1}{3}\int_0^1 t\sin(ct)\ dt の一意解である。縮小写像の原理は、反復 fk+1=Tfkf_{k+1} = Tf_k による近似の誤差評価 ∥fk−f∥≤(1/6)k1−1/6∥f1−f0∥\lVert f_k - f \rVert \leq \frac{(1/6)^k}{1 - 1/6}\lVert f_1 - f_0 \rVert も与える。

問題 9 ★★★(ベールの範疇定理の応用)

完備距離空間(および完備距離空間の開部分集合)は、可算個の疎な閉集合の和で表せない(ベールの範疇定理)。これを用いて次を示せ。

(1) Q\mathbb{Q} は R\mathbb{R} の GδG_\delta 集合(可算個の開集合の共通部分)でない。

(2) 有理数でちょうど連続、無理数で不連続となる関数 f ⁣:R→Rf\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} は存在しない。

(3) f ⁣:(0,∞)→Rf\colon (0, \infty) \to \mathbb{R} は連続で、すべての x>0x > 0 に対して lim⁡n→∞f(nx)=0\lim_{n \to \infty} f(nx) = 0 とする。このとき lim⁡x→∞f(x)=0\lim_{x \to \infty} f(x) = 0 であることを示せ。

使う知識:位相 第7章(ベールの範疇定理)、関数解析 第3章

解答

(1) Q=⋂kOk\mathbb{Q} = \bigcap_k O_k(OkO_k は開集合)とすると、各 Ok⊃QO_k \supset \mathbb{Q} は稠密開集合なので Fk=R∖OkF_k = \mathbb{R} \setminus O_k は疎な閉集合。すると R=⋃kFk∪⋃q∈Q{q}\mathbb{R} = \bigcup_k F_k \cup \bigcup_{q \in \mathbb{Q}}\lbrace q \rbrace は可算個の疎な閉集合の和となり、ベールの定理に反する。

(2) ff の点 xx での振動 ω(x)=inf⁡δ>0sup⁡{∣f(y)−f(z)∣∣y,z∈(x−δ,x+δ)}\omega(x) = \inf_{\delta > 0}\sup\lbrace \lvert f(y) - f(z) \rvert \mid y, z \in (x-\delta, x+\delta) \rbrace を考えると、ff が xx で連続 ⇔\Leftrightarrow ω(x)=0\omega(x) = 0。Ok={x∣ω(x)<1/k}O_k = \lbrace x \mid \omega(x) < 1/k \rbrace は開集合である(ω(x)<1/k\omega(x) < 1/k なら、ある δ\delta で区間 (x−δ,x+δ)(x-\delta, x+\delta) 上の振れ幅が 1/k1/k 未満で、その区間の各点でも ω<1/k\omega < 1/k)。よって連続点の集合 ⋂kOk\bigcap_k O_k は GδG_\delta 集合であり、(1) よりそれが Q\mathbb{Q} になることはない。

(3) ε>0\varepsilon > 0 を固定し、EN={x>0∣∣f(nx)∣≤ε (∀n≥N)}E_N = \lbrace x > 0 \mid \lvert f(nx) \rvert \leq \varepsilon\ (\forall n \geq N) \rbrace とおく。ff の連続性から ENE_N は (0,∞)(0,\infty) の閉集合で、仮定から ⋃NEN=(0,∞)\bigcup_N E_N = (0, \infty)。(0,∞)(0,\infty) は完備距離空間 R\mathbb{R} の開集合なので、ベールの定理により、ある ENE_N が開区間 (α,β)(\alpha, \beta)(0<α<β0 < \alpha < \beta)を含む。すると n≥Nn \geq N, y∈(nα,nβ)y \in (n\alpha, n\beta) で ∣f(y)∣≤ε\lvert f(y) \rvert \leq \varepsilon。n>αβ−αn > \frac{\alpha}{\beta - \alpha} なら (n+1)α<nβ(n+1)\alpha < n\beta で隣り合う区間が重なるので、n0=max⁡{N,⌊αβ−α⌋+1}n_0 = \max\lbrace N, \lfloor \frac{\alpha}{\beta-\alpha} \rfloor + 1 \rbrace として ⋃n≥n0(nα,nβ)=(n0α,∞)\bigcup_{n \geq n_0}(n\alpha, n\beta) = (n_0\alpha, \infty)。よって x>n0αx > n_0\alpha で ∣f(x)∣≤ε\lvert f(x) \rvert \leq \varepsilon。

解説・発展
  • (2) と対照的に、トメ関数(x=p/qx = p/q 既約で f(x)=1/qf(x) = 1/q、無理数で 00)は無理数でちょうど連続である。無理数全体は GδG_\delta 集合なので矛盾しない。
  • (3) で連続性を外すと反例がある(f=1Sf = \mathbf{1}_{S}、S={ek∣k∈N}S = \lbrace e^{k} \mid k \in \mathbb{N} \rbrace。ej=nxe^{j} = nx, ek=mxe^{k} = mx (j≠k)(j \neq k) なら ek−j=m/ne^{k-j} = m/n が有理数となり矛盾するので、各点列 {nx}n∈N\lbrace nx \rbrace_{n \in \mathbb{N}} は SS と高々 1 点でしか交わらず f(nx)→0f(nx) \to 0 だが、f(ek)=1f(e^k) = 1)。ベールの定理を使う院試問題では、「どの集合を閉集合の可算和として書くか」の選択が鍵になる。

問題 10 ★★(位相不変量による非同相の証明)

(1) (0,1)(0,1), [0,1)[0,1), [0,1][0,1] はどの 2 つも同相でないことを示せ。

(2) n≥2n \geq 2 のとき R\mathbb{R} と Rn\mathbb{R}^n は同相でないことを示せ。

(3) Q\mathbb{Q} と Z\mathbb{Z}(R\mathbb{R} の部分空間)は同相でないことを示せ。

(4) 3 本の線分を 1 点で貼り合わせた Y 字形の空間 YY と [0,1][0,1] は同相でないことを示せ。

使う知識:位相 第5章、位相 第6章

解答

(1) [0,1][0,1] はコンパクトだが、(0,1)(0,1), [0,1)[0,1) はコンパクトでない([0,1)[0,1) の開被覆 {[0,1−1n)}\lbrace [0, 1 - \frac{1}{n}) \rbrace は有限部分被覆をもたない)。h ⁣:[0,1)→(0,1)h\colon [0,1) \to (0,1) を同相写像とすると、hh は [0,1)∖{0}[0,1) \setminus \lbrace 0 \rbrace と (0,1)∖{h(0)}(0,1) \setminus \lbrace h(0) \rbrace の同相を誘導する。前者は区間で連結、後者は 2 つの開区間の和で連結でない。矛盾。

(2) 同相 h ⁣:R→Rnh\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R}^n があれば、R∖{0}≅Rn∖{h(0)}\mathbb{R} \setminus \lbrace 0 \rbrace \cong \mathbb{R}^n \setminus \lbrace h(0) \rbrace。左辺は連結でないが、右辺は n≥2n \geq 2 で弧状連結(2 点を、除いた点を通らない折れ線で結べる)なので連結。矛盾。

(3) Z\mathbb{Z} の各点は孤立点({m}=Z∩(m−12,m+12)\lbrace m \rbrace = \mathbb{Z} \cap (m - \frac{1}{2}, m + \frac{1}{2}) は開集合)だが、Q\mathbb{Q} には孤立点がない(どの開区間も無限個の有理数を含む)。孤立点の存在は同相で保たれる。

(4) YY の中心 cc を除くと 3 つの連結成分に分かれる。[0,1][0,1] から 1 点を除いた空間の連結成分は高々 2 つである。同相 h ⁣:Y→[0,1]h\colon Y \to [0,1] があれば Y∖{c}≅[0,1]∖{h(c)}Y \setminus \lbrace c \rbrace \cong [0,1] \setminus \lbrace h(c) \rbrace で、連結成分の個数が一致しなければならず矛盾。

解説・発展
  • 「1 点(または有限個の点)を除いたときの連結成分の個数」は次元が低い空間の区別に有効だが、R2\mathbb{R}^2 と R3\mathbb{R}^3 の区別には使えない。その区別には基本群・ホモロジー群が必要になる(第6章)。
  • 意外な事実として、Q\mathbb{Q} と Q×Q\mathbb{Q} \times \mathbb{Q} は同相である(孤立点をもたない可算距離空間はすべて Q\mathbb{Q} と同相、シェルピンスキーの定理。証明は省略)。

問題 11 ★★★(アスコリ–アルツェラの定理)

C[0,1]C[0,1] に一様ノルム ∥f∥∞=max⁡∣f∣\lVert f \rVert_{\infty} = \max \lvert f \rvert を入れる。

(1) K={f∈C[0,1]∣f(0)=0, ∣f(x)−f(y)∣≤∣x−y∣ (∀x,y)}K = \lbrace f \in C[0,1] \mid f(0) = 0,\ \lvert f(x) - f(y) \rvert \leq \lvert x - y \rvert\ (\forall x, y) \rbrace はコンパクトであることを示せ。

(2) Φ(f)=∫01(f(x)2−f(x)) dx\Phi(f) = \int_0^1 (f(x)^2 - f(x))\ dx は KK 上で最小値をとることを示し、最小値と最小点を求めよ。

(3) C[0,1]C[0,1] の閉単位球はコンパクトでないことを、fn(x)=xnf_n(x) = x^n を用いて示せ。

使う知識:位相 第5章(アスコリ–アルツェラの定理)、位相 第7章(完備性)

解答

(1) KK は同程度連続(δ=ε\delta = \varepsilon が全員に共通に使える)かつ一様有界(∣f(x)∣=∣f(x)−f(0)∣≤x≤1\lvert f(x) \rvert = \lvert f(x) - f(0) \rvert \leq x \leq 1)。また定義の条件は各点での等式・不等式なので一様収束で保たれ、KK は閉集合。アスコリ–アルツェラの定理により KK はコンパクトである。

(2) ∣Φ(f)−Φ(g)∣≤∫01∣f−g∣∣f+g−1∣ dx≤3∥f−g∥∞\lvert \Phi(f) - \Phi(g) \rvert \leq \int_0^1 \lvert f - g \rvert \lvert f + g - 1 \rvert\ dx \leq 3\lVert f - g \rVert_\infty(KK 上で ∣f∣,∣g∣≤1\lvert f \rvert, \lvert g \rvert \leq 1)なので Φ\Phi は KK 上連続で、(1) より最小値をとる。値を求める。f∈Kf \in K なら ∣f(x)∣≤x\lvert f(x) \rvert \leq x。ψ(s)=s2−s\psi(s) = s^2 - s は s≤12s \leq \frac{1}{2} で減少し ψ≥−14\psi \geq -\frac{1}{4} だから、

f(x)2−f(x)≥{x2−x(0≤x≤12)−14(12<x≤1)f(x)^2 - f(x) \geq \begin{cases} x^2 - x & (0 \leq x \leq \tfrac{1}{2}) \\ -\tfrac{1}{4} & (\tfrac{1}{2} < x \leq 1) \end{cases}

で、等号は f∗(x)=min⁡{x,12}f_{\ast}(x) = \min\lbrace x, \frac{1}{2} \rbrace で成り立つ。f∗∈Kf_{\ast} \in K なので最小値は

Φ(f∗)=∫01/2(x2−x) dx−18=124−18−18=−524\Phi(f_{\ast}) = \int_0^{1/2}(x^2 - x)\,dx - \frac{1}{8} = \frac{1}{24} - \frac{1}{8} - \frac{1}{8} = -\frac{5}{24}

最小点は f∗f_{\ast} のみである(等号条件が各点で決まり、連続関数どうしなので)。

(3) ∥fn∥∞=1\lVert f_n \rVert_{\infty} = 1。部分列が gg に一様収束すれば各点収束もするので、g(x)=0g(x) = 0 (x<1)(x < 1), g(1)=1g(1) = 1 となり、gg は連続でない。一様収束極限は連続なので矛盾。よって (fn)(f_n) は一様収束する部分列をもたず、閉単位球は点列コンパクトでない。

解説・発展
  • アスコリ–アルツェラの定理は「C(X)C(X)(XX コンパクト)の部分集合が相対コンパクト ⇔\Leftrightarrow 一様有界かつ同程度連続」。変分問題での最小元の存在証明(直接法)の原型であり、常微分方程式のペアノの存在定理の証明にも使われる(微分方程式 第2章)。
  • (3) の fnf_n は同程度連続でない(x=1x = 1 の近くで傾きが nn)。

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