Lemma数学ロードマップ

08 微分方程式 · 第 3 章

線形微分方程式系

目安 9〜12 時間定理など 13演習 8 問

この章の目標

  • 線形系の解空間が nn 次元であることを証明し、基本解行列とロンスキアンを扱える
  • リウヴィルの公式と定数変化法の公式を証明し、非同次方程式を解ける
  • 行列の指数関数とジョルダン標準形を用いて定数係数系を解ける
  • フロケの定理を証明し、周期係数系の安定性を特性乗数で判定できる
  • べき級数とフロベニウスの方法で、ルジャンドル方程式・ベッセル方程式の解を構成できる

前提:第2章、線形代数 第6章

連成振動するばね、電気回路、平衡点の近くでの非線形系の近似(第4章)など、多くの現象は線形方程式で記述される。線形方程式では重ね合わせの原理が成り立つ:2 つの解の和も解である。この性質のおかげで、線形系の理論はほぼ完全に整備されている。解全体はベクトル空間をなし、係数が定数なら解は行列の指数関数で書き表せる。

本章では K=R\mathbb{K} = \mathbb{R} または C\mathbb{C}、JJ を開区間とし、連続な A ⁣:J→M⁡n(K)A\colon J \to \operatorname{M}_n(\mathbb{K}), b ⁣:J→Knb\colon J \to \mathbb{K}^n に対して

(H)x′=A(t)x,(N)x′=A(t)x+b(t)\text{(H)}\quad x' = A(t)x, \qquad\qquad \text{(N)}\quad x' = A(t)x + b(t)

を考える。(H) を同次系、(N) を非同次系という。第2章の系 2.19 により、任意の τ∈J\tau \in J, ξ∈Kn\xi \in \mathbb{K}^n について x(τ)=ξx(\tau) = \xi をみたす解が JJ 全体でただ一つ存在する(Cn\mathbb{C}^n は R2n\mathbb{R}^{2n} とみなす)。

3.1 解空間と基本解行列

定理 3.1 (H) の JJ 上の解全体 VV は K\mathbb{K} 上の nn 次元ベクトル空間であり、各 τ∈J\tau \in J に対し、写像 V→KnV \to \mathbb{K}^n, x↦x(τ)x \mapsto x(\tau) は線形同型である。

証明. 解の一次結合は解なので VV は部分空間であり、x↦x(τ)x \mapsto x(\tau) は線形である。任意の ξ\xi に対し x(τ)=ξx(\tau) = \xi となる解があるので全射、x(τ)=0x(\tau) = 0 の解は零解だけ(一意性)なので単射である。□\square

系 3.2 解 x1,…,xn∈Vx_1, \dots, x_n \in V について、次は同値である。(a) VV の元として一次独立。(b) ある tt でベクトル x1(t),…,xn(t)x_1(t), \dots, x_n(t) が一次独立。(c) すべての tt で一次独立。

VV の基底 x1,…,xnx_1, \dots, x_n を基本解系 (fundamental system of solutions)、これを並べた行列 Φ(t)=(x1(t)⋯xn(t))\Phi(t) = (x_1(t) \cdots x_n(t)) を基本解行列 (fundamental matrix) という。Φ′=AΦ\Phi' = A\Phi かつ Φ(t)\Phi(t) は常に正則であり、(H) の解はすべて x(t)=Φ(t)cx(t) = \Phi(t)c(c∈Knc \in \mathbb{K}^n)と書ける。別の基本解行列は Φ(t)C\Phi(t)C(CC は正則な定数行列)の形である。R(t,s)=Φ(t)Φ(s)−1R(t, s) = \Phi(t)\Phi(s)^{-1} は Φ\Phi の選び方によらず、x(t)=R(t,s)x(s)x(t) = R(t, s)x(s)、R(t,s)R(s,r)=R(t,r)R(t, s)R(s, r) = R(t, r) をみたす。RR を推移行列という。

基本解行列の行列式 W(t)=det⁡Φ(t)W(t) = \det\Phi(t) をロンスキアン (Wronskian) という。

定理 3.3(リウヴィルの公式, Liouville's formula)Φ\Phi を (H) の解を並べた行列とすると、τ,t∈J\tau, t \in J に対し

det⁡Φ(t)=det⁡Φ(τ)exp⁡(∫τttr⁡A(s) ds)\det\Phi(t) = \det\Phi(\tau)\exp\left(\int_\tau^t \operatorname{tr}A(s)\,ds\right)

証明. W=det⁡ΦW = \det\Phi は各行について多重線形なので、積の微分法則(行列式の展開式の各項に適用する)により、W′W' は「第 ii 行だけを微分した行列の行列式」の i=1,…,ni = 1, \dots, n にわたる和である。Φ\Phi の第 kk 行を ϕk\phi_k と書くと、Φ′=AΦ\Phi' = A\Phi より Φ′\Phi' の第 ii 行は ∑kaikϕk\sum_k a_{ik}\phi_k である。第 ii 行をこれで置き換えた行列式は、行列式の交代性により k≠ik \neq i の項が消えて aiiWa_{ii}W になる。よって W′=(tr⁡A)WW' = (\operatorname{tr}A)W で、これは 1 階線形方程式なので主張を得る(定理 1.15)。□\square

特に WW は恒等的に 0 か、決して 0 にならないかのどちらかであり、系 3.2 と整合する。幾何学的には、∣det⁡R(t,s)∣\lvert \det R(t, s) \rvert は解の写像 x(s)↦x(t)x(s) \mapsto x(t) による体積の拡大率である。tr⁡A=0\operatorname{tr}A = 0 なら体積は保たれる。これは第4章のハミルトン系で重要になる。

3.2 非同次系と定数変化法

定理 3.4(定数変化法の公式)Φ\Phi を (H) の基本解行列とする。(N) の x(τ)=ξx(\tau) = \xi をみたす解は

x(t)=Φ(t)Φ(τ)−1ξ+∫τtΦ(t)Φ(s)−1b(s) dsx(t) = \Phi(t)\Phi(\tau)^{-1}\xi + \int_\tau^t \Phi(t)\Phi(s)^{-1}b(s)\,ds

証明. 同次系の一般解 Φ(t)c\Phi(t)c の定数 cc を関数 c(t)c(t) に置き換えて代入すると、x′=AΦc+Φc′x' = A\Phi c + \Phi c' なので Φc′=b\Phi c' = b、すなわち c′=Φ−1bc' = \Phi^{-1}b となる。これを積分したのが右辺である。実際、右辺を微分すると

x′(t)=A(t)Φ(t)Φ(τ)−1ξ+b(t)+∫τtA(t)Φ(t)Φ(s)−1b(s) ds=A(t)x(t)+b(t)x'(t) = A(t)\Phi(t)\Phi(\tau)^{-1}\xi + b(t) + \int_\tau^t A(t)\Phi(t)\Phi(s)^{-1}b(s)\,ds = A(t)x(t) + b(t)

で、x(τ)=ξx(\tau) = \xi。解の一意性より、これが求める解である。□\square

(N) の解全体は「一つの特殊解 +V+ V」というアフィン空間である。公式の積分項は、各時刻 ss に加わった入力 b(s) dsb(s)\ ds が時刻 tt までに R(t,s)R(t, s) で運ばれた結果を重ね合わせたもの、と読める(デュアメルの原理, Duhamel's principle)。

3.3 定数係数系と行列の指数関数

AA が定数行列のとき、行列の指数関数 etA=∑k≥0tkAk/k!e^{tA} = \sum_{k \geq 0} t^kA^k/k!(線形代数 定義 6.16)は ddtetA=AetA\frac{d}{dt}e^{tA} = Ae^{tA}, e0=Ie^{0} = I をみたす(線形代数 命題 6.17)。よって Φ(t)=etA\Phi(t) = e^{tA} は Φ(0)=I\Phi(0) = I の基本解行列であり、R(t,s)=e(t−s)AR(t, s) = e^{(t - s)A} である。定理 3.4 は

x(t)=e(t−τ)Aξ+∫τte(t−s)Ab(s) dsx(t) = e^{(t - \tau)A}\xi + \int_\tau^t e^{(t - s)A}b(s)\,ds

となる。

etAe^{tA} の計算にはジョルダン標準形を使う。A=PJP−1A = PJP^{-1} なら etA=PetJP−1e^{tA} = Pe^{tJ}P^{-1} であり、ジョルダン細胞 J(λ,k)=λI+NJ(\lambda, k) = \lambda I + N については etJ(λ,k)=eλt∑j=0k−1tjj!Nje^{tJ(\lambda, k)} = e^{\lambda t}\sum_{j=0}^{k-1}\frac{t^j}{j!}N^j である。初期値問題を解くだけなら P−1P^{-1} を計算する必要はない。vv が固有値 λ\lambda の一般固有ベクトルで (A−λI)mv=0(A - \lambda I)^m v = 0 なら、λI\lambda I と A−λIA - \lambda I は可換なので

etAv=eλtet(A−λI)v=eλt∑j=0m−1tjj!(A−λI)jve^{tA}v = e^{\lambda t}e^{t(A - \lambda I)}v = e^{\lambda t}\sum_{j=0}^{m-1}\frac{t^j}{j!}(A - \lambda I)^jv

となり、級数は有限和で終わる。初期値 ξ\xi を一般固有ベクトルの和に分解すればよい(一般固有空間分解)。

命題 3.5 x′=Axx' = Ax の任意の解の各成分は、tjeλtt^je^{\lambda t}(λ\lambda は AA の固有値、0≤j<0 \leq j < 固有値 λ\lambda のジョルダン細胞の最大サイズ)の一次結合である。AA が実行列なら、実数値解の各成分は tjeαtcos⁡βtt^je^{\alpha t}\cos\beta t, tjeαtsin⁡βtt^je^{\alpha t}\sin\beta t(α+iβ\alpha + i\beta は固有値)の実一次結合である。

証明. 上の式と一般固有空間分解から前半が従う。後半は、複素解の実部をとればよい(λ‾\overline{\lambda} も固有値で、実解は eλte^{\lambda t} と eλ‾te^{\overline{\lambda}t} の項が共役に現れる)。□\square

例 3.6 次の AA の固有多項式は (λ−2)2(\lambda - 2)^2 で、N=A−2IN = A - 2I は N2=ON^2 = O をみたす:

A=(3−111),N=(1−11−1)A = \begin{pmatrix} 3 & -1 \\ 1 & 1 \end{pmatrix}, \qquad N = \begin{pmatrix} 1 & -1 \\ 1 & -1 \end{pmatrix}

よって

etA=e2t(I+tN)=e2t(1+t−tt1−t)e^{tA} = e^{2t}(I + tN) = e^{2t}\begin{pmatrix} 1 + t & -t \\ t & 1 - t \end{pmatrix}

t=0t = 0 での微分が 2I+N=A2I + N = A になることで検算できる。対角化できないので、解に te2tte^{2t} が現れる。

例 3.7(連成振動)質量 mm の 2 つのおもりがそれぞればね定数 kk のばねで壁につながれ、おもりどうしがばね定数 κ\kappa のばねで結ばれているとする。変位 x=(x1,x2)x = (x_1, x_2) は

x′′=−1m(k+κ−κ−κk+κ)xx'' = -\frac{1}{m}\begin{pmatrix} k + \kappa & -\kappa \\ -\kappa & k + \kappa \end{pmatrix}x

をみたす。対称行列の固有ベクトル (1,1)(1, 1), (1,−1)(1, -1) に対応して、q1=(x1+x2)/2q_1 = (x_1 + x_2)/2, q2=(x1−x2)/2q_2 = (x_1 - x_2)/2 とおくと q1′′=−ω12q1q_1'' = -\omega_1^2q_1, q2′′=−ω22q2q_2'' = -\omega_2^2q_2(ω12=k/m\omega_1^2 = k/m, ω22=(k+2κ)/m\omega_2^2 = (k + 2\kappa)/m)と分離する。これを基準振動 (normal mode) という:同位相の振動(中央のばねは伸び縮みしない)と逆位相の振動である。x1(0)=1x_1(0) = 1, x2(0)=x1′(0)=x2′(0)=0x_2(0) = x_1'(0) = x_2'(0) = 0 なら

x1=cos⁡(ω2−ω1)t2cos⁡(ω1+ω2)t2,x2=sin⁡(ω2−ω1)t2sin⁡(ω1+ω2)t2x_1 = \cos\frac{(\omega_2 - \omega_1)t}{2}\cos\frac{(\omega_1 + \omega_2)t}{2}, \qquad x_2 = \sin\frac{(\omega_2 - \omega_1)t}{2}\sin\frac{(\omega_1 + \omega_2)t}{2}

結合 κ\kappa が弱いと ω2−ω1\omega_2 - \omega_1 は小さく、振動のエネルギーが 2 つのおもりの間をゆっくり行き来する(うなり、例 1.33)。

3.4 nn 階線形方程式

nn 階の方程式 y(n)+an−1(t)y(n−1)+⋯+a0(t)y=g(t)y^{(n)} + a_{n-1}(t)y^{(n-1)} + \cdots + a_0(t)y = g(t) は、x=(y,y′,…,y(n−1))x = (y, y', \dots, y^{(n-1)}) とおくと、最後の行が (−a0,…,−an−1)(-a_0, \dots, -a_{n-1}) で他の行は xi′=xi+1x_i' = x_{i+1} を表す行列(同伴行列, companion matrix)C(t)C(t) による系 x′=C(t)x+g(t)enx' = C(t)x + g(t)e_n と同値である。tr⁡C=−an−1\operatorname{tr}C = -a_{n-1} なので、定理 3.1・3.3 から次を得る。

命題 3.8 同次方程式(g=0g = 0)の解全体は nn 次元である。解 y1,…,yny_1, \dots, y_n が基底であるための必要十分条件は、ロンスキアン W(t)=det⁡(yj(i−1)(t))i,jW(t) = \det\bigl(y_j^{(i-1)}(t)\bigr)_{i,j} がある(したがってすべての)tt で 0 でないことである。また W(t)=W(τ)exp⁡(−∫τtan−1(s) ds)W(t) = W(\tau)\exp\left(-\int_\tau^t a_{n-1}(s)\ ds\right)(アーベルの公式)。

命題 3.9 y′′+p(t)y′+q(t)y=g(t)y'' + p(t)y' + q(t)y = g(t) について、y1,y2y_1, y_2 を同次方程式の基本解、W=y1y2′−y1′y2W = y_1y_2' - y_1'y_2 とすると

yp(t)=∫τty1(s)y2(t)−y1(t)y2(s)W(s)g(s) dsy_p(t) = \int_\tau^t \frac{y_1(s)y_2(t) - y_1(t)y_2(s)}{W(s)}g(s)\,ds

は yp(τ)=yp′(τ)=0y_p(\tau) = y_p'(\tau) = 0 をみたす特殊解である。

証明. 定理 3.4 を、第 1 行が (y1,y2)(y_1, y_2)、第 2 行が (y1′,y2′)(y_1', y_2') の基本解行列 Φ\Phi、b=(0,g)b = (0, g)、ξ=0\xi = 0 に適用する。Φ(s)−1b(s)=g(s)W(s)(−y2(s),y1(s))\Phi(s)^{-1}b(s) = \frac{g(s)}{W(s)}(-y_2(s), y_1(s)) であり、Φ(t)\Phi(t) を掛けた第 1 成分が被積分関数である。□\square

例 3.10 y′′+y=tan⁡ty'' + y = \tan t(∣t∣<π/2\lvert t \rvert < \pi/2)。y1=cos⁡ty_1 = \cos t, y2=sin⁡ty_2 = \sin t, W=1W = 1 で、核は cos⁡ssin⁡t−cos⁡tsin⁡s=sin⁡(t−s)\cos s\sin t - \cos t\sin s = \sin(t - s)。τ=0\tau = 0 として

yp=∫0tsin⁡(t−s)tan⁡s ds=sin⁡t∫0tsin⁡s ds−cos⁡t∫0tsin⁡2scos⁡sds=sin⁡t−cos⁡tlog⁡(sec⁡t+tan⁡t)y_p = \int_0^t \sin(t - s)\tan s\,ds = \sin t\int_0^t \sin s\,ds - \cos t\int_0^t \frac{\sin^2 s}{\cos s}ds = \sin t - \cos t\log(\sec t + \tan t)

(∫sin⁡2scos⁡sds=log⁡(sec⁡s+tan⁡s)−sin⁡s\int \frac{\sin^2 s}{\cos s}ds = \log(\sec s + \tan s) - \sin s を用いた)。一般解は C1cos⁡t+C2sin⁡t−cos⁡tlog⁡(sec⁡t+tan⁡t)C_1\cos t + C_2\sin t - \cos t\log(\sec t + \tan t) である。

定数係数の場合、D=d/dtD = d/dt、p(λ)=λn+an−1λn−1+⋯+a0p(\lambda) = \lambda^n + a_{n-1}\lambda^{n-1} + \cdots + a_0 として方程式は p(D)y=0p(D)y = 0 と書ける。

命題 3.11 p(λ)=∏i=1r(λ−λi)mip(\lambda) = \prod_{i=1}^r(\lambda - \lambda_i)^{m_i}(λi\lambda_i は相異なる)とすると、tjeλitt^je^{\lambda_it}(1≤i≤r1 \leq i \leq r, 0≤j<mi0 \leq j < m_i)は p(D)y=0p(D)y = 0 の解空間の基底である。

証明. p(D)(eλtg)=eλtp(D+λ)gp(D)(e^{\lambda t}g) = e^{\lambda t}p(D + \lambda)g(命題 1.32 の証明)を λ=λi\lambda = \lambda_i に使う。p(D+λi)p(D + \lambda_i) は DmiD^{m_i} で割り切れるので、j<mij < m_i なら p(D)(tjeλit)=0p(D)(t^je^{\lambda_it}) = 0。個数は ∑mi=n\sum m_i = n なので、一次独立性を示せばよい。多項式 qiq_i により ∑iqi(t)eλit=0\sum_i q_i(t)e^{\lambda_it} = 0 で、すべては 0 でない関係があったとし、0 でない qiq_i の個数が最小のものをとる。q1≠0q_1 \neq 0 として、両辺に e−λ1te^{-\lambda_1t} を掛けて deg⁡q1+1\deg q_1 + 1 回微分すると、第 1 項は消え、i≥2i \geq 2 の項は q~i(t)e(λi−λ1)t\tilde{q}_i(t)e^{(\lambda_i - \lambda_1)t} になる。λi−λ1≠0\lambda_i - \lambda_1 \neq 0 より deg⁡q~i=deg⁡qi\deg\tilde{q}_i = \deg q_i(最高次の係数は (λi−λ1)deg⁡q1+1(\lambda_i - \lambda_1)^{\deg q_1 + 1} 倍される)なので、0 でない項の個数がより少ない非自明な関係が得られ、矛盾する(0 でない項が 1 つだけなら q1eλ1t=0q_1e^{\lambda_1t} = 0 から q1=0q_1 = 0 となり矛盾)。□\square

3.5 周期係数系とフロケの定理

ブランコをこぐ子どもは、振動の周期に合わせて重心を上下させることで振幅を大きくする。このように、係数が周期的に変化することで生じる共鳴をパラメータ共鳴 (parametric resonance) という。本節では A(t+T)=A(t)A(t + T) = A(t) となる周期 T>0T > 0 の連続関数 AA について、(H) を考える。

補題 3.12 正則な C∈M⁡n(C)C \in \operatorname{M}_n(\mathbb{C}) は対数をもつ。すなわち eB=Ce^B = C となる B∈M⁡n(C)B \in \operatorname{M}_n(\mathbb{C}) がある。

証明. ePBP−1=PeBP−1e^{PBP^{-1}} = Pe^BP^{-1} なので、CC はジョルダン標準形としてよく、さらにブロック対角行列の指数関数はブロックごとに計算できるので、C=λ(I+N)C = \lambda(I + N)(λ≠0\lambda \neq 0、NN は冪零、Nk=ON^k = O)の場合を示せばよい。形式的べき級数として exp⁡(∑j≥1(−1)j+1zj/j)=1+z\exp\bigl(\sum_{j \geq 1}(-1)^{j+1}z^j/j\bigr) = 1 + z が成り立つ(∣z∣<1\lvert z \rvert < 1 で exp⁡(log⁡(1+z))=1+z\exp(\log(1 + z)) = 1 + z であり、係数が一致する)。冪零行列 NN を代入すると和はすべて有限で、代入は積を保つので、L=∑j=1k−1(−1)j+1Nj/jL = \sum_{j=1}^{k-1}(-1)^{j+1}N^j/j は eL=I+Ne^L = I + N をみたす。μ\mu を eμ=λe^\mu = \lambda となる複素数とし、B=μI+LB = \mu I + L とおけば、μI\mu I と LL は可換なので eB=eμeL=λ(I+N)=Ce^B = e^\mu e^L = \lambda(I + N) = C。□\square

定理 3.13(フロケの定理, Floquet's theorem)AA が周期 TT の連続関数なら、(H) の任意の基本解行列 Φ\Phi は

Φ(t)=P(t)etB\Phi(t) = P(t)e^{tB}

と表せる。ここで B∈M⁡n(C)B \in \operatorname{M}_n(\mathbb{C}) は定数行列、PP は周期 TT をもつ C1C^1 級の正則行列値関数である。

証明. Ψ(t)=Φ(t+T)\Psi(t) = \Phi(t + T) とおくと、AA の周期性より Ψ′=A(t+T)Ψ=A(t)Ψ\Psi' = A(t + T)\Psi = A(t)\Psi なので Ψ\Psi も基本解行列であり、Φ(t+T)=Φ(t)C\Phi(t + T) = \Phi(t)C となる正則な定数行列 CC(=Φ(0)−1Φ(T)= \Phi(0)^{-1}\Phi(T))がある。補題 3.12 により eTB=Ce^{TB} = C となる BB をとり、P(t)=Φ(t)e−tBP(t) = \Phi(t)e^{-tB} とおくと

P(t+T)=Φ(t)Ce−TBe−tB=Φ(t)e−tB=P(t)P(t + T) = \Phi(t)Ce^{-TB}e^{-tB} = \Phi(t)e^{-tB} = P(t)

PP は正則な行列の積なので正則で、C1C^1 級である。□\square

x=P(t)yx = P(t)y と変数変換すると、P′=AP−PBP' = AP - PB より x′=Axx' = Ax は定数係数系 y′=Byy' = By に変わる(問題 3.4)。周期係数系は、周期的な座標変換を除けば定数係数系である。

Φ(0)=I\Phi(0) = I と正規化した基本解行列について M=Φ(T)M = \Phi(T) をモノドロミー行列 (monodromy matrix)、その固有値を特性乗数 (Floquet multiplier) という。別の基本解行列 ΦC\Phi C から作った C−1Φ(0)−1Φ(T)CC^{-1}\Phi(0)^{-1}\Phi(T)C は MM と相似なので、特性乗数は基本解行列の選び方によらない。

命題 3.14 ρ1,…,ρn\rho_1, \dots, \rho_n を特性乗数とする。

  1. ρ\rho が特性乗数であるための必要十分条件は、x(t+T)=ρx(t)x(t + T) = \rho x(t) をみたす非自明な解 xx が存在することである。
  2. ρ1ρ2⋯ρn=exp⁡(∫0Ttr⁡A(t) dt)\rho_1\rho_2\cdots\rho_n = \exp\left(\int_0^T \operatorname{tr}A(t)\ dt\right)。
  3. すべての解が t→∞t \to \infty で 0 に収束するための必要十分条件は、すべての ∣ρi∣<1\lvert \rho_i \rvert < 1 である。すべての解が t≥0t \geq 0 で有界であるための必要十分条件は、すべての ∣ρi∣≤1\lvert \rho_i \rvert \leq 1 で、∣ρi∣=1\lvert \rho_i \rvert = 1 の特性乗数に対する MM のジョルダン細胞がすべてサイズ 1 であることである。

証明. Φ(0)=I\Phi(0) = I とする。定理 3.13 の証明より Φ(t+T)=Φ(t)M\Phi(t + T) = \Phi(t)M、帰納的に Φ(t+kT)=Φ(t)Mk\Phi(t + kT) = \Phi(t)M^k。

  1. Mv=ρvMv = \rho v(v≠0v \neq 0)なら x=Φ(t)vx = \Phi(t)v は x(t+T)=Φ(t)Mv=ρx(t)x(t + T) = \Phi(t)Mv = \rho x(t)。逆に解 x=Φ(t)vx = \Phi(t)v がこの性質をもてば、t=0t = 0 とおいて Mv=ρvMv = \rho v。
  2. det⁡M=det⁡Φ(T)\det M = \det\Phi(T) にリウヴィルの公式(定理 3.3)を適用する。
  3. t=s+kTt = s + kT(0≤s<T0 \leq s < T, k∈Z≥0k \in \mathbb{Z}_{\geq 0})と書くと x(t)=Φ(s)Mkcx(t) = \Phi(s)M^kc である。Φ(s)\Phi(s) と Φ(s)−1\Phi(s)^{-1} は [0,T][0, T] 上で有界なので、すべての解が有界(0 に収束)であることは、MkM^k が有界(OO に収束)であることと同値である。MM のジョルダン細胞 J(ρ,m)J(\rho, m) の kk 乗の成分は (kj)ρk−j\binom{k}{j}\rho^{k - j}(0≤j<m0 \leq j < m)なので、これは主張の条件と同値である。□\square

例 3.15 スカラーの方程式 x′=a(t)xx' = a(t)x(aa は周期 TT)では x=x(0)exp⁡∫0tax = x(0)\exp\int_0^t a、特性乗数は ρ=exp⁡∫0Ta\rho = \exp\int_0^T a である。aˉ=1T∫0Ta\bar{a} = \frac{1}{T}\int_0^T a とおくと x(t)=x(0)eaˉtP(t)x(t) = x(0)e^{\bar{a}t}P(t)、P(t)=exp⁡∫0t(a−aˉ)P(t) = \exp\int_0^t(a - \bar{a}) は周期 TT をもち、フロケの定理の形になっている。

例 3.16(ヒル方程式)y′′+q(t)y=0y'' + q(t)y = 0(qq は周期 TT の連続関数)をヒル方程式 (Hill's equation) という。天体力学(月の運動)や結晶中の電子の量子力学に現れる。1 階系にすると tr⁡A=0\operatorname{tr}A = 0 なので、命題 3.14 の 2 より ρ1ρ2=1\rho_1\rho_2 = 1 である。y1(0)=1,y1′(0)=0y_1(0) = 1, y_1'(0) = 0 と y2(0)=0,y2′(0)=1y_2(0) = 0, y_2'(0) = 1 をみたす解をとると、MM は第 1 行 (y1(T),y2(T))(y_1(T), y_2(T))、第 2 行 (y1′(T),y2′(T))(y_1'(T), y_2'(T)) の行列で、特性乗数は ρ2−Δρ+1=0\rho^2 - \Delta\rho + 1 = 0、Δ=y1(T)+y2′(T)\Delta = y_1(T) + y_2'(T) の根である。したがって(問題 3.5)

  • ∣Δ∣<2\lvert \Delta \rvert < 2 なら ρ=e±iθ\rho = e^{\pm i\theta} は相異なる単位複素数で、すべての解は有界(安定)。
  • ∣Δ∣>2\lvert \Delta \rvert > 2 なら ∣ρ1∣>1\lvert \rho_1 \rvert > 1 となる実数の特性乗数があり、非有界な解が存在する(不安定、パラメータ共鳴)。
  • ∣Δ∣=2\lvert \Delta \rvert = 2 なら ρ=1\rho = 1 または −1-1 で、周期 TT または 2T2T の解が存在する。

q≡ω2q \equiv \omega^2(定数)なら y1=cos⁡ωty_1 = \cos\omega t, y2=sin⁡(ωt)/ωy_2 = \sin(\omega t)/\omega で Δ=2cos⁡ωT\Delta = 2\cos\omega T である。

例 3.17(マシュー方程式)y′′+(a−2qcos⁡2t)y=0y'' + (a - 2q\cos 2t)y = 0 をマシュー方程式 (Mathieu equation) という(周期 π\pi)。支点が鉛直方向に Acos⁡ΩtA\cos\Omega t で振動する振り子の方程式 θ′′+1ℓ(g−AΩ2cos⁡Ωt)sin⁡θ=0\theta'' + \frac{1}{\ell}(g - A\Omega^2\cos\Omega t)\sin\theta = 0 を θ=0\theta = 0 の近くで線形化し、時間を s=Ωt/2s = \Omega t/2 と変換すると、a=4g/(ℓΩ2)a = 4g/(\ell\Omega^2), q=2A/ℓq = 2A/\ell のマシュー方程式になる。q=0q = 0 では Δ=2cos⁡(aπ)\Delta = 2\cos(\sqrt{a}\pi) なので、∣Δ∣=2\lvert \Delta \rvert = 2 となるのは a=n2a = n^2(n∈Z≥0n \in \mathbb{Z}_{\geq 0})のときである。q≠0q \neq 0 が小さいとき、a=n2a = n^2(n∈Nn \in \mathbb{N})の各点から不安定領域が「舌」の形に伸び、たとえば a=1a = 1 の近くでは qq の 2 次以上を無視しておよそ 1−q<a<1+q1 - q < a < 1 + q が不安定領域になることが知られている(主張のみ)。a=1a = 1 は Ω=2g/ℓ\Omega = 2\sqrt{g/\ell}、すなわち支点を固有振動数の 2 倍で揺らすときに対応し、ブランコをこぐ仕組みと同じである。

注意

各時刻の A(t)A(t) の固有値の実部がすべて負でも、x′=A(t)xx' = A(t)x の解が 0 に収束するとは限らない。周期 π\pi の行列

A(t)=(−1+32cos⁡2t1−32cos⁡tsin⁡t−1−32sin⁡tcos⁡t−1+32sin⁡2t)A(t) = \begin{pmatrix} -1 + \frac{3}{2}\cos^2 t & 1 - \frac{3}{2}\cos t\sin t \\ -1 - \frac{3}{2}\sin t\cos t & -1 + \frac{3}{2}\sin^2 t \end{pmatrix}

の固有値は常に (−1±i7)/4(-1 \pm i\sqrt{7})/4 だが、x(t)=et/2(−cos⁡t,sin⁡t)x(t) = e^{t/2}(-\cos t, \sin t) は解であり非有界である(問題 3.4)。安定性は特性乗数で判定しなければならない。

3.6 べき級数解と確定特異点

ルジャンドル方程式やベッセル方程式のように、係数が多項式の方程式でも求積法では解けないことが多い。そこで解をべき級数で表す。

定理 3.18(主張と概略)nn 階線形方程式の係数 aj(t)a_j(t) が ∣t−t0∣<r\lvert t - t_0 \rvert < r で収束するべき級数で表されるなら、すべての解は ∣t−t0∣<r\lvert t - t_0 \rvert < r で収束するべき級数で表される。

証明の方針. 解を ∑ck(t−t0)k\sum c_k(t - t_0)^k とおいて代入すると、ckc_k についての漸化式が得られ、c0,…,cn−1c_0, \dots, c_{n-1} から残りが決まる。係数の級数を優級数 ∑Mρ−k(t−t0)k\sum M\rho^{-k}(t - t_0)^k(ρ<r\rho < r)で抑え、対応する漸化式の解と比較して収束を示す(優級数の方法)。複素関数論を用いれば、複素領域での正則な解の存在として示すこともできる。□\square

例 3.19(ルジャンドル方程式)(1−t2)y′′−2ty′+ν(ν+1)y=0(1 - t^2)y'' - 2ty' + \nu(\nu + 1)y = 0 は、軸対称なポテンシャルを球座標で変数分離すると現れる。y=∑aktky = \sum a_kt^k を代入して tkt^k の係数を比べると

(k+2)(k+1)ak+2=(k(k−1)+2k−ν(ν+1))ak=(k−ν)(k+ν+1)ak(k + 2)(k + 1)a_{k+2} = \bigl(k(k - 1) + 2k - \nu(\nu + 1)\bigr)a_k = (k - \nu)(k + \nu + 1)a_k

係数を 1−t21 - t^2 で割ると特異点は t=±1t = \pm 1 なので、定理 3.18 より級数は ∣t∣<1\lvert t \rvert < 1 で収束する。ν=n∈Z≥0\nu = n \in \mathbb{Z}_{\geq 0} なら、aka_k の偶数番目か奇数番目の一方が k=nk = n の先で 0 になり、多項式解が得られる。Pn(1)=1P_n(1) = 1 と正規化したものがルジャンドル多項式で、P0=1P_0 = 1, P1=tP_1 = t, P2=12(3t2−1)P_2 = \frac{1}{2}(3t^2 - 1), P3=12(5t3−3t)P_3 = \frac{1}{2}(5t^3 - 3t) である(線形代数 例 7.12 の直交多項式と一致する。第5章参照)。

係数が特異点をもつ場合にも、特異性が穏やかなら同様の方法が使える。y′′+P(t)y′+Q(t)y=0y'' + P(t)y' + Q(t)y = 0 で、tP(t)=p(t)tP(t) = p(t) と t2Q(t)=q(t)t^2Q(t) = q(t) が t=0t = 0 で解析的であるとき、t=0t = 0 を確定特異点 (regular singular point) という。方程式は t2y′′+tp(t)y′+q(t)y=0t^2y'' + tp(t)y' + q(t)y = 0 と書ける。p,qp, q が定数 p0,q0p_0, q_0 の場合(オイラーの方程式)は、tρt^\rho を代入すると (ρ(ρ−1)+p0ρ+q0)tρ=0\bigl(\rho(\rho - 1) + p_0\rho + q_0\bigr)t^\rho = 0 となるので、この 2 次方程式の根 ρ\rho に対して tρt^\rho が解になる。

定理 3.20(フロベニウスの方法, Frobenius method;主張と概略)p,qp, q は ∣t∣<r\lvert t \rvert < r で収束するべき級数 p=∑pktkp = \sum p_kt^k, q=∑qktkq = \sum q_kt^k とし、決定方程式 (indicial equation) F(ρ)=ρ(ρ−1)+p0ρ+q0=0F(\rho) = \rho(\rho - 1) + p_0\rho + q_0 = 0 の根を ρ1,ρ2\rho_1, \rho_2(Re⁡ρ1≥Re⁡ρ2\operatorname{Re}\rho_1 \geq \operatorname{Re}\rho_2)とする。0<t<r0 < t < r で次が成り立つ。

  1. y1=tρ1∑k≥0aktky_1 = t^{\rho_1}\sum_{k \geq 0}a_kt^k(a0=1a_0 = 1、級数は ∣t∣<r\lvert t \rvert < r で収束)の形の解がある。
  2. ρ1−ρ2∉Z\rho_1 - \rho_2 \notin \mathbb{Z} なら、y2=tρ2∑k≥0bktky_2 = t^{\rho_2}\sum_{k \geq 0}b_kt^k(b0=1b_0 = 1)の形の解があり、y1,y2y_1, y_2 は基本解系をなす。
  3. ρ1−ρ2∈Z≥0\rho_1 - \rho_2 \in \mathbb{Z}_{\geq 0} なら、第 2 の解は y2=cy1log⁡t+tρ2∑k≥0bktky_2 = cy_1\log t + t^{\rho_2}\sum_{k \geq 0}b_kt^k の形にとれる(ρ1=ρ2\rho_1 = \rho_2 なら c≠0c \neq 0)。

証明の方針. y=tρ∑aktky = t^\rho\sum a_kt^k を代入して tρ+kt^{\rho + k} の係数を比べると

F(ρ+k)ak=−∑j=0k−1((ρ+j)pk−j+qk−j)aj(k≥1)F(\rho + k)a_k = -\sum_{j=0}^{k-1}\bigl((\rho + j)p_{k - j} + q_{k - j}\bigr)a_j \qquad (k \geq 1)

を得る。ρ=ρ1\rho = \rho_1 なら、k≥1k \geq 1 で F(ρ1+k)≠0F(\rho_1 + k) \neq 0(ρ1+k\rho_1 + k が根なら ρ2=ρ1+k\rho_2 = \rho_1 + k となり Re⁡ρ1≥Re⁡ρ2\operatorname{Re}\rho_1 \geq \operatorname{Re}\rho_2 に反する)なので aka_k が順に決まる。収束は定理 3.18 と同様に優級数で示す。2 では ρ2+k\rho_2 + k も根にならないので同様。3 では y2=y1∫Wy12dty_2 = y_1\int \frac{W}{y_1^2}dt(アーベルの公式、問題 3.2)を計算すると対数項が現れる。□\square

例 3.21(ベッセル方程式)t2y′′+ty′+(t2−ν2)y=0t^2y'' + ty' + (t^2 - \nu^2)y = 0(ν≥0\nu \geq 0)は、円形の膜(太鼓)の振動や円柱内の熱伝導を極座標で変数分離すると現れる。p=1p = 1, q=t2−ν2q = t^2 - \nu^2 なので決定方程式は ρ2−ν2=0\rho^2 - \nu^2 = 0、ρ=±ν\rho = \pm\nu。ρ=ν\rho = \nu の漸化式は k(k+2ν)ak=−ak−2k(k + 2\nu)a_k = -a_{k-2}(a−1=0a_{-1} = 0)で、奇数番目は 0、a2m=−a2m−2/(4m(m+ν))a_{2m} = -a_{2m-2}/\bigl(4m(m + \nu)\bigr)。a0=1/(2νΓ(ν+1))a_0 = 1/\bigl(2^\nu\Gamma(\nu + 1)\bigr) と正規化するとベッセル関数

Jν(t)=∑m=0∞(−1)mm! Γ(m+ν+1)(t2)2m+νJ_\nu(t) = \sum_{m=0}^\infty \frac{(-1)^m}{m!\ \Gamma(m + \nu + 1)}\left(\frac{t}{2}\right)^{2m + \nu}

を得る(すべての t>0t > 0 で収束)。ν∉Z\nu \notin \mathbb{Z} なら J−νJ_{-\nu} が第 2 の解である。たとえば ν=1/2\nu = 1/2 では ρ1−ρ2=1∈Z\rho_1 - \rho_2 = 1 \in \mathbb{Z} だが対数項は現れず(定理 3.20 の 3 で c=0c = 0 の場合)、J1/2(t)=2/(πt)sin⁡tJ_{1/2}(t) = \sqrt{2/(\pi t)}\sin t, J−1/2(t)=2/(πt)cos⁡tJ_{-1/2}(t) = \sqrt{2/(\pi t)}\cos t となる。ν=n∈Z≥0\nu = n \in \mathbb{Z}_{\geq 0} では J−n=(−1)nJnJ_{-n} = (-1)^nJ_n となり、第 2 の解は対数項を含む(第 2 種ベッセル関数)。

まとめ

  • 線形同次系の解全体は nn 次元ベクトル空間で、x↦x(τ)x \mapsto x(\tau) により Kn\mathbb{K}^n と同型である。基本解行列 Φ\Phi により解は Φ(t)c\Phi(t)c と書ける。
  • リウヴィルの公式 det⁡Φ(t)=det⁡Φ(τ)exp⁡∫τttr⁡A\det\Phi(t) = \det\Phi(\tau)\exp\int_\tau^t\operatorname{tr}A により、ロンスキアンは恒等的に 0 か決して 0 にならない。
  • 非同次系の解は定数変化法の公式 x=Φ(t)Φ(τ)−1ξ+∫τtΦ(t)Φ(s)−1b(s) dsx = \Phi(t)\Phi(\tau)^{-1}\xi + \int_\tau^t\Phi(t)\Phi(s)^{-1}b(s)\ ds で与えられる。
  • 定数係数系の基本解行列は etAe^{tA} で、ジョルダン標準形により解は tjeλtt^je^{\lambda t} の一次結合になる。
  • nn 階線形方程式は同伴行列の系と同値で、定数係数なら特性根 λi\lambda_i(重複度 mim_i)に対する tjeλitt^je^{\lambda_it}(j<mij < m_i)が基底になる。
  • フロケの定理:周期係数系の基本解行列は P(t)etBP(t)e^{tB}(PP は周期的)と書け、安定性はモノドロミー行列の固有値(特性乗数)で決まる。各時刻の A(t)A(t) の固有値では決まらない。
  • 解析的な係数の方程式はべき級数解をもち、確定特異点ではフロベニウスの方法で tρ∑aktkt^\rho\sum a_kt^k の形の解が得られる。ルジャンドル多項式とベッセル関数はその代表例である。

演習問題

問題 3.1 ★ 次の AA に対し etAe^{tA} を求め、x′=Axx' = Ax, x(0)=(1,0)x(0) = (1, 0) を解け。

A=(01−2−3)A = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -2 & -3 \end{pmatrix}
解答

固有値は −1,−2-1, -2。2 つの固有値が相異なる 2×22 \times 2 行列では etA=eλ1tA−λ2Iλ1−λ2+eλ2tA−λ1Iλ2−λ1e^{tA} = e^{\lambda_1t}\frac{A - \lambda_2I}{\lambda_1 - \lambda_2} + e^{\lambda_2t}\frac{A - \lambda_1I}{\lambda_2 - \lambda_1}(両辺に固有ベクトルを掛けて確かめられる)なので

etA=e−t(21−2−1)−e−2t(11−2−2)=(2e−t−e−2te−t−e−2t−2e−t+2e−2t−e−t+2e−2t)e^{tA} = e^{-t}\begin{pmatrix} 2 & 1 \\ -2 & -1 \end{pmatrix} - e^{-2t}\begin{pmatrix} 1 & 1 \\ -2 & -2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2e^{-t} - e^{-2t} & e^{-t} - e^{-2t} \\ -2e^{-t} + 2e^{-2t} & -e^{-t} + 2e^{-2t} \end{pmatrix}

t=0t = 0 で II、微分すると AA になることで検算できる。解はその第 1 列 x=(2e−t−e−2t, −2e−t+2e−2t)x = (2e^{-t} - e^{-2t},\ -2e^{-t} + 2e^{-2t})。

問題 3.2 ★(階数低下法)y′′+p(t)y′+q(t)y=0y'' + p(t)y' + q(t)y = 0 の解 y1y_1(y1≠0y_1 \neq 0)が一つわかっているとき、y2=y1∫Wy12dty_2 = y_1\int \frac{W}{y_1^2}dt(W=e−∫p dtW = e^{-\int p\ dt})が第 2 の解であることをアーベルの公式から導け。これを用いて、y1=ty_1 = t を解にもつ t2y′′−t(t+2)y′+(t+2)y=0t^2y'' - t(t + 2)y' + (t + 2)y = 0(t>0t > 0)の一般解を求めよ。

解答

y1y_1 と一次独立な解 y~2\tilde{y}_2 をとると、アーベルの公式よりロンスキアンは y1y~2′−y1′y~2=cWy_1\tilde{y}_2' - y_1'\tilde{y}_2 = cW(c≠0c \neq 0 は定数)と書ける。(y~2/y1)′=cW/y12(\tilde{y}_2/y_1)' = cW/y_1^2 を積分すると y~2=c y1∫Wy12dt+c′y1\tilde{y}_2 = c\ y_1\int \frac{W}{y_1^2}dt + c'y_1 なので、y2=(y~2−c′y1)/cy_2 = (\tilde{y}_2 - c'y_1)/c は解であり、y1y_1 と一次独立である。例では p=−(t+2)/tp = -(t + 2)/t なので e−∫p=et+2log⁡t=t2ete^{-\int p} = e^{t + 2\log t} = t^2e^t、y2=t∫t2ett2dt=tety_2 = t\int \frac{t^2e^t}{t^2}dt = te^t。一般解は C1t+C2tetC_1t + C_2te^t(代入して検算できる)。

問題 3.3 ★★ 命題 3.9 を用いて y′′+y=cos⁡ty'' + y = \cos t, y(0)=y′(0)=0y(0) = y'(0) = 0 を解け。

解答

核は sin⁡(t−s)\sin(t - s) なので y=∫0tsin⁡(t−s)cos⁡s ds=12∫0t(sin⁡t+sin⁡(t−2s))ds=12tsin⁡t+14[cos⁡(t−2s)]0t=12tsin⁡ty = \int_0^t \sin(t - s)\cos s\ ds = \frac{1}{2}\int_0^t\bigl(\sin t + \sin(t - 2s)\bigr)ds = \frac{1}{2}t\sin t + \frac{1}{4}\bigl[\cos(t - 2s)\bigr]_0^t = \frac{1}{2}t\sin t。共鳴(例 1.33)の解が再び得られる。

問題 3.4 ★★ (1) 定理 3.13 の PP について、x=P(t)yx = P(t)y とおくと x′=A(t)xx' = A(t)x が y′=Byy' = By に変わることを示せ。(2) 3.5 節の WARNING の行列 A(t)A(t) について、固有値が (−1±i7)/4(-1 \pm i\sqrt{7})/4 であること、x1=et/2(−cos⁡t,sin⁡t)x_1 = e^{t/2}(-\cos t, \sin t) と x2=e−t(sin⁡t,cos⁡t)x_2 = e^{-t}(\sin t, \cos t) が解であることを確かめ、特性乗数を求めてリウヴィルの公式と整合することを確かめよ。

解答

(1) P=Φe−tBP = \Phi e^{-tB} より P′=AΦe−tB−Φe−tBB=AP−PBP' = A\Phi e^{-tB} - \Phi e^{-tB}B = AP - PB。x′=P′y+Py′=APy−PBy+Py′x' = P'y + Py' = APy - PBy + Py' で、これが Ax=APyAx = APy に等しいことは Py′=PByPy' = PBy、すなわち y′=Byy' = By と同値。

(2) c=cos⁡tc = \cos t, s=sin⁡ts = \sin t とする。tr⁡A=−2+32=−12\operatorname{tr}A = -2 + \frac{3}{2} = -\frac{1}{2}、det⁡A=(−1+32c2)(−1+32s2)+(1−32cs)(1+32cs)=(−12+94c2s2)+(1−94c2s2)=12\det A = (-1 + \frac{3}{2}c^2)(-1 + \frac{3}{2}s^2) + (1 - \frac{3}{2}cs)(1 + \frac{3}{2}cs) = (-\frac{1}{2} + \frac{9}{4}c^2s^2) + (1 - \frac{9}{4}c^2s^2) = \frac{1}{2}。固有方程式 λ2+12λ+12=0\lambda^2 + \frac{1}{2}\lambda + \frac{1}{2} = 0 より λ=(−1±i7)/4\lambda = (-1 \pm i\sqrt{7})/4。x1x_1 について Ax1Ax_1 の第 1 成分は et/2((−1+32c2)(−c)+(1−32cs)s)=et/2(c+s−32c)=et/2(s−12c)e^{t/2}\bigl((-1 + \frac{3}{2}c^2)(-c) + (1 - \frac{3}{2}cs)s\bigr) = e^{t/2}(c + s - \frac{3}{2}c) = e^{t/2}(s - \frac{1}{2}c) で、x1′x_1' の第 1 成分 et/2(−12c+s)e^{t/2}(-\frac{1}{2}c + s) に等しい。第 2 成分も同様で、x2x_2 も同様に確かめられる。x1(t+π)=−eπ/2x1(t)x_1(t + \pi) = -e^{\pi/2}x_1(t), x2(t+π)=−e−πx2(t)x_2(t + \pi) = -e^{-\pi}x_2(t) なので、命題 3.14 の 1 より特性乗数は −eπ/2-e^{\pi/2}, −e−π-e^{-\pi}。積は e−π/2=exp⁡∫0π(−12)dte^{-\pi/2} = \exp\int_0^\pi(-\frac{1}{2})dt で、命題 3.14 の 2 と整合する。∣−eπ/2∣>1\lvert -e^{\pi/2} \rvert > 1 なので不安定である。

問題 3.5 ★★ 例 3.16 のヒル方程式について、∣Δ∣<2\lvert \Delta \rvert < 2 ならすべての解が有界、∣Δ∣>2\lvert \Delta \rvert > 2 なら非有界な解が存在することを、命題 3.14 を用いて示せ。

解答

特性乗数は ρ2−Δρ+1=0\rho^2 - \Delta\rho + 1 = 0 の根で、Δ\Delta は実数である。∣Δ∣<2\lvert \Delta \rvert < 2 なら判別式 Δ2−4<0\Delta^2 - 4 < 0 で、根は互いに共役な非実数、積が 1 なので ∣ρ∣=1\lvert \rho \rvert = 1 かつ相異なる。相異なる固有値をもつ MM は対角化可能なので、命題 3.14 の 3 よりすべての解は有界。∣Δ∣>2\lvert \Delta \rvert > 2 なら根は相異なる実数で積が 1 なので、一方の絶対値は 1 より大きく、命題 3.14 の 1 の解 x(t+kT)=ρkx(t)x(t + kT) = \rho^kx(t) は非有界である。

問題 3.6 ★★ 2ty′′+y′+y=02ty'' + y' + y = 0(t>0t > 0)の t=0t = 0 は確定特異点であることを確かめ、フロベニウスの方法で基本解系を求めよ。

解答

t/2t/2 を掛けると t2y′′+12ty′+t2y=0t^2y'' + \frac{1}{2}ty' + \frac{t}{2}y = 0 で、p=12p = \frac{1}{2}, q=t2q = \frac{t}{2}。決定方程式 ρ(ρ−1)+12ρ=0\rho(\rho - 1) + \frac{1}{2}\rho = 0 の根は ρ=0,12\rho = 0, \frac{1}{2}(差は整数でない)。漸化式は F(ρ+k)ak=−12ak−1F(\rho + k)a_k = -\frac{1}{2}a_{k-1}。ρ=0\rho = 0:F(k)=k(2k−1)/2F(k) = k(2k - 1)/2 より ak=−ak−1/(k(2k−1))a_k = -a_{k-1}/\bigl(k(2k - 1)\bigr)、ak=(−1)k2k/(2k)!a_k = (-1)^k2^k/(2k)! で y1=∑(−1)k(2t)k(2k)!=cos⁡2ty_1 = \sum \frac{(-1)^k(2t)^k}{(2k)!} = \cos\sqrt{2t}。ρ=12\rho = \frac{1}{2}:F(k+12)=k(k+12)F(k + \frac{1}{2}) = k(k + \frac{1}{2}) より ak=−ak−1/(k(2k+1))a_k = -a_{k-1}/\bigl(k(2k + 1)\bigr)、ak=(−1)k2k/(2k+1)!a_k = (-1)^k2^k/(2k + 1)! で y2=t∑(−1)k(2t)k(2k+1)!=sin⁡2t2y_2 = \sqrt{t}\sum \frac{(-1)^k(2t)^k}{(2k + 1)!} = \frac{\sin\sqrt{2t}}{\sqrt{2}}。u=2tu = \sqrt{2t} とおいて y1=cos⁡uy_1 = \cos u を代入すると 2ty1′′=−cos⁡u+sin⁡uu2ty_1'' = -\cos u + \frac{\sin u}{u}, y1′=−sin⁡uuy_1' = -\frac{\sin u}{u} で、方程式をみたすことが確かめられる。

問題 3.7 ★★ (1) 例 3.19 の漸化式から P3P_3 を求めよ。(2) ddt(tνJν(t))=tνJν−1(t)\frac{d}{dt}\bigl(t^\nu J_\nu(t)\bigr) = t^\nu J_{\nu - 1}(t) を示せ(ν>0\nu > 0)。

解答

(1) ν=3\nu = 3, a0=0a_0 = 0, a1=1a_1 = 1 とすると a3=(1−3)(1+4)3⋅2a1=−53a_3 = \frac{(1 - 3)(1 + 4)}{3 \cdot 2}a_1 = -\frac{5}{3}、a5=0a_5 = 0。t−53t3t - \frac{5}{3}t^3 を t=1t = 1 で 1 になるよう −32-\frac{3}{2} 倍して P3=12(5t3−3t)P_3 = \frac{1}{2}(5t^3 - 3t)。

(2) tνJν=∑m(−1)mt2m+2νm! Γ(m+ν+1)22m+νt^\nu J_\nu = \sum_m \frac{(-1)^m t^{2m + 2\nu}}{m!\ \Gamma(m + \nu + 1)2^{2m + \nu}} を項別微分し(収束半径は無限大)、Γ(m+ν+1)=(m+ν)Γ(m+ν)\Gamma(m + \nu + 1) = (m + \nu)\Gamma(m + \nu) を使うと ∑m(−1)m2(m+ν)t2m+2ν−1m! (m+ν)Γ(m+ν)22m+ν=tν∑m(−1)mm! Γ(m+ν)(t2)2m+ν−1=tνJν−1(t)\sum_m \frac{(-1)^m 2(m + \nu)t^{2m + 2\nu - 1}}{m!\ (m + \nu)\Gamma(m + \nu)2^{2m + \nu}} = t^\nu\sum_m \frac{(-1)^m}{m!\ \Gamma(m + \nu)}\left(\frac{t}{2}\right)^{2m + \nu - 1} = t^\nu J_{\nu - 1}(t)。

問題 3.8 ★★★ A0A_0 を定数行列とし、x′=A0xx' = A_0x のすべての解が t≥0t \geq 0 で有界であるとする。連続な A(t)A(t)(t≥0t \geq 0)が ∫0∞∥A(t)−A0∥ dt<∞\int_0^\infty \lVert A(t) - A_0 \rVert\ dt < \infty をみたすなら、x′=A(t)xx' = A(t)x のすべての解も t≥0t \geq 0 で有界であることを示せ。

解答

etA0e^{tA_0} の各列は x′=A0xx' = A_0x の解なので、仮定より ∥etA0∥≤K\lVert e^{tA_0} \rVert \leq K(t≥0t \geq 0)となる KK がある。x′=A0x+(A(t)−A0)xx' = A_0x + (A(t) - A_0)x に定数変化法の公式を適用すると x(t)=etA0x(0)+∫0te(t−s)A0(A(s)−A0)x(s) dsx(t) = e^{tA_0}x(0) + \int_0^t e^{(t - s)A_0}(A(s) - A_0)x(s)\ ds なので

∥x(t)∥≤K∥x(0)∥+∫0tK∥A(s)−A0∥∥x(s)∥ ds\lVert x(t) \rVert \leq K\lVert x(0) \rVert + \int_0^t K\lVert A(s) - A_0 \rVert\lVert x(s) \rVert\,ds

グロンウォールの不等式(定理 2.10)より ∥x(t)∥≤K∥x(0)∥exp⁡(K∫0∞∥A(s)−A0∥ ds)\lVert x(t) \rVert \leq K\lVert x(0) \rVert\exp\left(K\int_0^\infty\lVert A(s) - A_0 \rVert\ ds\right) で、有界である。

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