Lemma数学ロードマップ

08 微分方程式 · 第 1 章

常微分方程式入門と求積法

目安 9〜12 時間定理など 11演習 6 問

この章の目標

  • 物理・生物の現象から常微分方程式が立てられる仕組みを理解し、解・一般解・初期値問題の意味を説明できる
  • 変数分離形・同次形・1 階線形・ベルヌーイ型・リッカチ型・完全微分形の方程式を求積法で解ける
  • 2 階定数係数線形方程式を特性方程式で解き、共鳴やうなりを解の式から説明できる
  • クレロー型方程式の特異解を求め、解の一意性が崩れる様子を観察できる

前提:微分積分学 第4章、第5章、第7章

ニュートンの運動法則「力は質量と加速度の積に等しい」は、位置の 2 階導関数についての等式である。このように自然法則の多くは、量そのものではなく量の変化率についての法則として述べられる。未知関数とその導関数の関係式を微分方程式と呼ぶ。本章では、四則演算・微分・積分・逆関数をとる操作を有限回用いて解を表す方法、すなわち求積法 (quadrature) で解ける方程式を扱う。そのような方程式は例外的だが、解の振る舞いを完全に見通せる貴重な実例であり、ここで観察する現象(解の爆発、一意性の破れ、共鳴など)を一般的に説明するのが以降の章の理論である。

1.1 微分方程式とは

まず、いくつかの現象を式にしてみる。

  • 放射性崩壊:各原子核が単位時間あたり一定の確率 λ>0\lambda > 0 で崩壊するなら、残っている原子核の数 N(t)N(t) は N′(t)=−λN(t)N'(t) = -\lambda N(t) をみたす。
  • 人口(マルサスのモデル):出生率と死亡率が一定なら、人口 P(t)P(t) の増加率は人口に比例する:P′=rPP' = rP。
  • ロジスティック方程式 (logistic equation):資源が有限な環境では、人口が環境収容力 KK に近づくと増加率が落ちる。最も簡単なモデルは P′=rP(1−P/K)P' = rP(1 - P/K) である(フェルフルスト)。
  • ばねの振動:質量 mm の物体がばね定数 kk のばねにつながれ、抵抗 −cx′-cx' を受けるとき、変位 x(t)x(t) は mx′′=−kx−cx′mx'' = -kx - cx' をみたす。
  • 振り子:長さ ℓ\ell の糸につるした振り子の振れ角 θ(t)\theta(t) は ℓθ′′=−gsin⁡θ\ell\theta'' = -g\sin\theta をみたす(gg は重力加速度)。

定義 1.1(常微分方程式, ordinary differential equation)独立変数 xx、未知関数 y=y(x)y = y(x) とその導関数の関係式

F(x,y,y′,…,y(n))=0F(x, y, y', \dots, y^{(n)}) = 0

を nn 階の常微分方程式という。y(n)=f(x,y,y′,…,y(n−1))y^{(n)} = f(x, y, y', \dots, y^{(n-1)}) の形のものを正規形 (normal form) という。区間 II 上で nn 回微分可能な関数 φ\varphi が、すべての x∈Ix \in I で F(x,φ(x),…,φ(n)(x))=0F(x, \varphi(x), \dots, \varphi^{(n)}(x)) = 0 をみたすとき、φ\varphi を II 上の解 (solution) という。x0∈Ix_0 \in I における値 y(x0),y′(x0),…,y(n−1)(x0)y(x_0), y'(x_0), \dots, y^{(n-1)}(x_0) を指定して解を求める問題を初期値問題 (initial value problem) という。

nn 個の任意定数を含む解の族を一般解 (general solution)、定数に特定の値を与えた解を特殊解 (particular solution) と呼ぶ習慣がある。ただし「一般解」がすべての解を含むとは限らない(例 1.10、1.9 節)。偏導関数を含む偏微分方程式 (partial differential equation) は第7章で扱う。高階の方程式は、x′′=−ω2xx'' = -\omega^2 x を x′=vx' = v, v′=−ω2xv' = -\omega^2 x と書くように、1 階の連立方程式に書き直せる。

命題 1.2 a∈Ca \in \mathbb{C} とする。区間 II 上の微分可能な(複素数値)関数 yy が y′=ayy' = ay をみたすための必要十分条件は、ある定数 CC により y(x)=Ceaxy(x) = Ce^{ax} と書けることである。

証明. y=Ceaxy = Ce^{ax} が解であることは明らか。逆に yy が解なら (e−axy)′=e−ax(y′−ay)=0(e^{-ax}y)' = e^{-ax}(y' - ay) = 0 である。導関数が恒等的に 0 の関数は、実部と虚部それぞれに平均値の定理を適用すると区間上で定数である。よって e−axy=Ce^{-ax}y = C。□\square

この命題は、他に解がないことまで主張している。そこまで示して初めて方程式を解いたといえる。

例 1.3(放射性崩壊と半減期)N′=−λNN' = -\lambda N, N(0)=N0N(0) = N_0 の解は N(t)=N0e−λtN(t) = N_0 e^{-\lambda t} である。量が半分になる時間(半減期)は T=(log⁡2)/λT = (\log 2)/\lambda で、初期量によらない。炭素 14 の半減期は約 5730 年なので、炭素 14 の割合が生きている生物の 1/41/4 である試料は、およそ 2T≈114602T \approx 11460 年前のものと推定できる。

例 1.4(解かずにわかること)ロジスティック方程式 P′=rP(1−P/K)P' = rP(1 - P/K)(r,K>0r, K > 0)を解く前に、右辺の符号を見る。P=0P = 0 と P=KP = K は定数解(平衡点)である。0<P<K0 < P < K では P′>0P' > 0、P>KP > K では P′<0P' < 0 なので、解は KK に向かって動くと予想できる。さらに P′′=r(1−2P/K)P′P'' = r(1 - 2P/K)P' より、0<P<K0 < P < K の解のグラフは P=K/2P = K/2 で変曲する。このような定性的な議論は第4章で体系化される。

1.2 方向場と解曲線

正規形の 1 階方程式 y′=f(x,y)y' = f(x, y) は、平面の各点 (x,y)(x, y) に傾き f(x,y)f(x, y) を割り当てている。各点にその傾きの短い線分を描いたものを方向場 (direction field) という。解のグラフ(解曲線, solution curve)は、各点で方向場に接する曲線である。手で描くには、傾きが一定値 cc となる曲線 f(x,y)=cf(x, y) = c(等傾線, isocline)の上に傾き cc の線分を並べるとよい。

例 1.5 y′=y−xy' = y - x の等傾線は直線 y=x+cy = x + c である。等傾線 y=x+1y = x + 1 の上では方向場の傾きが 1 で直線自身の傾きに等しいので、y=x+1y = x + 1 は解である。この直線より上では y−x>1y - x > 1 なので解は直線から離れて上昇し、下では離れて下降する。実際、一般解は y=x+1+Cexy = x + 1 + Ce^x である(1.5 節)。

注意 1.6 y′=x2+y2y' = x^2 + y^2 は求積法では解けないことがリウヴィルによって示されている(1841 年)。それでも解の振る舞いは調べられる。y(0)=0y(0) = 0 の解は増加するので y(1)≥0y(1) \geq 0 であり、x≥1x \geq 1 では (arctan⁡y)′=y′/(1+y2)≥1(\arctan y)' = y'/(1 + y^2) \geq 1 より arctan⁡y(x)≥x−1\arctan y(x) \geq x - 1。arctan⁡\arctan の値は π/2\pi/2 を超えないので、解は x=1+π/2x = 1 + \pi/2 より手前で +∞+\infty に発散する。このような比較の議論の土台は第2章で与える。

1.3 変数分離形

定理 1.7(変数分離形, separable equation)ff を区間 II 上の連続関数、gg を区間 JJ 上の連続関数とし、方程式

y′=f(x)g(y)y' = f(x)g(y)

を考える。

  1. g(c)=0g(c) = 0 となる c∈Jc \in J があれば、定数関数 y≡cy \equiv c は解である。
  2. J0⊂JJ_0 \subset J を gg が 0 にならない区間、GG を J0J_0 上での 1/g1/g の原始関数、FF を ff の原始関数とする。部分区間 I1⊂II_1 \subset I 上の微分可能な関数 y ⁣:I1→J0y\colon I_1 \to J_0 が解であるための必要十分条件は、ある定数 CC があって G(y(x))=F(x)+CG(y(x)) = F(x) + C が I1I_1 上で成り立つことである。

証明. 1 は明らか。2:合成関数の微分により ddxG(y(x))=y′(x)/g(y(x))\frac{d}{dx}G(y(x)) = y'(x)/g(y(x)) である。したがって yy が解であることは ddx(G(y(x))−F(x))=0\frac{d}{dx}\bigl(G(y(x)) - F(x)\bigr) = 0 と同値であり、I1I_1 は区間なので、これは G(y(x))−F(x)G(y(x)) - F(x) が定数であることと同値である。□\square

J0J_0 上で gg は符号を変えない(中間値の定理)ので GG は狭義単調であり、解は y=G−1(F(x)+C)y = G^{-1}(F(x) + C) と陽に書ける。形式的には dy/g(y)=f(x) dxdy/g(y) = f(x)\ dx と「変数を分離して」両辺を積分する計算であり、定理 1.7 はその正当化である。

注意 1.8 定理 1.7 は、gg の零点を通る解については何も述べていない。gg が連続なだけだと、解が gg の零点に到達して定数解に乗り移ることが起こりうる(例 1.11)。gg が C1C^1 級なら、g(y(x0))≠0g(y(x_0)) \neq 0 である解が gg の零点に達することはない。これは第2章の一意性定理から従う。

例 1.9(ロジスティック方程式の解)P′=rP(1−P/K)P' = rP(1 - P/K), P(0)=P0>0P(0) = P_0 > 0 を解く。P0≠KP_0 \neq K として部分分数分解 KP(K−P)=1P+1K−P\frac{K}{P(K - P)} = \frac{1}{P} + \frac{1}{K - P} を用いると、log⁡P∣K−P∣=rt+C\log\frac{P}{\lvert K - P \rvert} = rt + C を得る。これを PP について解いて初期条件を入れると

P(t)=K1+(KP0−1)e−rtP(t) = \frac{K}{1 + \left(\frac{K}{P_0} - 1\right)e^{-rt}}

となる(P0=KP_0 = K の定数解もこの式に含まれる)。A=K/P0−1A = K/P_0 - 1 とおくと P′=KAre−rt(1+Ae−rt)2=rP(1−P/K)P' = \frac{KAre^{-rt}}{(1 + Ae^{-rt})^2} = rP(1 - P/K) と検算できる。P0>0P_0 > 0 なら A>−1A > -1 なので分母は t≥0t \geq 0 で正であり、解は t≥0t \geq 0 全体で存在して t→∞t \to \infty で KK に収束する。0<P0<K/20 < P_0 < K/2 のとき、グラフは S 字型(シグモイド曲線)を描く。

例 1.10(解の爆発)y′=y2y' = y^2, y(0)=1y(0) = 1 を解くと、−1/y=x+C-1/y = x + C より y=1/(1−x)y = 1/(1 - x) である。右辺 y2y^2 はいたるところ滑らかなのに、解は x→1x \to 1 で無限大に発散し、区間 (−∞,1)(-\infty, 1) でしか存在しない。これを解の爆発 (blow-up) という。また、一般解 y=1/(C−x)y = 1/(C - x) は定数解 y≡0y \equiv 0 を含まない(形式的には C→∞C \to \infty の極限)。

例 1.11(トリチェリの法則と一意性の破れ)底に小さな穴のあいた円筒形の水槽の水位を h(t)h(t) とすると、穴から流れ出る水の速さは 2gh\sqrt{2gh} に比例する(トリチェリの法則)ので、h′=−khh' = -k\sqrt{h}(k>0k > 0 は定数)が成り立つ。h>0h > 0 の範囲で変数分離すると 2h=−kt+C2\sqrt{h} = -kt + C であり、h(0)=h0>0h(0) = h_0 > 0 の解は

h(t)={(h0−kt2)2(0≤t≤t1)0(t≥t1),t1=2h0kh(t) = \begin{cases} \left(\sqrt{h_0} - \dfrac{kt}{2}\right)^2 & (0 \leq t \leq t_1) \\ 0 & (t \geq t_1) \end{cases}, \qquad t_1 = \frac{2\sqrt{h_0}}{k}

となる(t=t1t = t_1 で左右の微分係数はともに 0 で、C1C^1 級)。逆に、時刻 TT に水槽が空でも、いつ空になったかはわからない。任意の s≤Ts \leq T について、t≤st \leq s で h=k24(s−t)2h = \frac{k^2}{4}(s - t)^2、t≥st \geq s で h=0h = 0 とおいた関数はどれも h(T)=0h(T) = 0 をみたす解だからである。初期値問題の解が一意でない原因は、h\sqrt{h} が h=0h = 0 でリプシッツ連続でないことにある(第2章)。

1.4 同次形

命題 1.12(同次形, homogeneous equation)ff を連続関数とする。方程式 y′=f(y/x)y' = f(y/x) は、x≠0x \neq 0 の範囲で u=y/xu = y/x とおくと、変数分離形 xu′=f(u)−uxu' = f(u) - u に帰着する。

証明. y=xuy = xu を微分すると y′=u+xu′y' = u + xu'。これを y′=f(u)y' = f(u) に代入すればよい。□\square

ここでの「同次」は右辺が拡大 (x,y)↦(sx,sy)(x, y) \mapsto (sx, sy) で不変なことを指し、「同次線形」の同次とは意味が異なる。

例 1.13(対数らせん)y′=x+yx−yy' = \frac{x + y}{x - y} を解く。u=y/xu = y/x とおくと

xu′=1+u1−u−u=1+u21−u,よって∫1−u1+u2 du=∫dxxxu' = \frac{1 + u}{1 - u} - u = \frac{1 + u^2}{1 - u}, \qquad \text{よって} \quad \int \frac{1 - u}{1 + u^2}\,du = \int \frac{dx}{x}

左辺は arctan⁡u−12log⁡(1+u2)\arctan u - \frac{1}{2}\log(1 + u^2) なので arctan⁡yx=log⁡x2+y2+C\arctan\frac{y}{x} = \log\sqrt{x^2 + y^2} + C。極座標 x=rcos⁡θx = r\cos\theta, y=rsin⁡θy = r\sin\theta では θ=log⁡r+C\theta = \log r + C、すなわち r=C′eθr = C'e^{\theta} という対数らせんになる。dr/dθ=rdr/d\theta = r なので、解曲線は動径方向と常に 45∘45^\circ の角をなす。

注意 1.14 y′=f(ax+by+cαx+βy+γ)y' = f\left(\frac{ax + by + c}{\alpha x + \beta y + \gamma}\right)(aβ−bα≠0a\beta - b\alpha \neq 0)は、2 直線 ax+by+c=0ax + by + c = 0, αx+βy+γ=0\alpha x + \beta y + \gamma = 0 の交点を原点に移す平行移動で同次形になる。

1.5 1 階線形方程式

y′+p(x)y=q(x)y' + p(x)y = q(x) の形の方程式を 1 階線形方程式 (first order linear equation) という。q≡0q \equiv 0 のとき同次 (homogeneous)、そうでないとき非同次 (inhomogeneous) という。

定理 1.15 p,qp, q を区間 II 上の連続関数、x0∈Ix_0 \in I、y0∈Ry_0 \in \mathbb{R} とし、P(x)=∫x0xp(s) dsP(x) = \int_{x_0}^x p(s)\ ds とおく。初期値問題 y′+p(x)y=q(x)y' + p(x)y = q(x), y(x0)=y0y(x_0) = y_0 は II 全体で定義された解をただ一つもち、それは

y(x)=e−P(x)(y0+∫x0xeP(s)q(s) ds)y(x) = e^{-P(x)}\left(y_0 + \int_{x_0}^x e^{P(s)}q(s)\,ds\right)

で与えられる。

証明. μ(x)=eP(x)\mu(x) = e^{P(x)} を掛けると、P′=pP' = p より (μy)′=μ(y′+py)(\mu y)' = \mu(y' + py) である。したがって、II の部分区間上の微分可能な関数 yy が方程式をみたすことは (μy)′=μq(\mu y)' = \mu q と同値であり、初期条件と合わせると μ(x)y(x)−y0=∫x0xμq ds\mu(x)y(x) - y_0 = \int_{x_0}^x \mu q\ ds と同値である。右辺は II 全体で定義されているので、解は II 全体で存在し、上の式に限られる。□\square

μ\mu を積分因子 (integrating factor) という。線形方程式の解は係数が連続な区間全体で存在し、例 1.10 のような爆発は起こらない。非同次方程式の一般解は「一つの特殊解」と「同次方程式の一般解 Ce−P(x)Ce^{-P(x)}」の和である。

同じ公式は、同次方程式の解 Ce−P(x)Ce^{-P(x)} の定数を関数に置き換えた y=C(x)e−P(x)y = C(x)e^{-P(x)} を代入しても導ける。y′+py=C′(x)e−P(x)y' + py = C'(x)e^{-P(x)} なので、C′=qePC' = qe^{P} を積分すればよい。この方法を定数変化法 (variation of constants) といい、第3章で連立系に一般化する。

例 1.16 y′+y=sin⁡xy' + y = \sin x。積分因子 exe^x を掛けると (exy)′=exsin⁡x(e^x y)' = e^x\sin x。部分積分を 2 回行うと ∫exsin⁡x dx=12ex(sin⁡x−cos⁡x)\int e^x\sin x\ dx = \frac{1}{2}e^x(\sin x - \cos x) なので

y=sin⁡x−cos⁡x2+Ce−x=12sin⁡(x−π4)+Ce−xy = \frac{\sin x - \cos x}{2} + Ce^{-x} = \frac{1}{\sqrt{2}}\sin\left(x - \frac{\pi}{4}\right) + Ce^{-x}

項 Ce−xCe^{-x} は時間とともに消える(過渡解)。十分時間がたつと、解は初期値によらず、外力 sin⁡x\sin x から位相が π/4\pi/4 遅れ振幅が 1/21/\sqrt{2} の振動(定常解)に近づく。

例 1.17(ニュートンの冷却法則)物体の温度 T(t)T(t) は周囲の温度 T0T_0 との差に比例する速さで変化する:T′=−k(T−T0)T' = -k(T - T_0)。室温 2020 度で 9090 度のコーヒーが 1010 分後に 6060 度になったとする。解は T=20+70e−ktT = 20 + 70e^{-kt} で、70e−10k=4070e^{-10k} = 40 より k=110log⁡74≈0.0560k = \frac{1}{10}\log\frac{7}{4} \approx 0.0560(毎分)。3030 度になるのは 70e−kt=1070e^{-kt} = 10、すなわち t=(log⁡7)/k=10log⁡7/log⁡(7/4)≈34.8t = (\log 7)/k = 10\log 7/\log(7/4) \approx 34.8 分後である。

1.6 ベルヌーイ型とリッカチ型

非線形でも、変数変換で線形方程式に帰着できるものがある。

命題 1.18(ベルヌーイ型, Bernoulli equation)α≠0,1\alpha \neq 0, 1 とする。方程式 y′+p(x)y=q(x)yαy' + p(x)y = q(x)y^\alpha の正の解 yy に対し、z=y1−αz = y^{1 - \alpha} は線形方程式 z′+(1−α)p(x)z=(1−α)q(x)z' + (1 - \alpha)p(x)z = (1 - \alpha)q(x) をみたし、逆も成り立つ。

証明. z′=(1−α)y−αy′=(1−α)y−α(qyα−py)=(1−α)(q−pz)z' = (1 - \alpha)y^{-\alpha}y' = (1 - \alpha)y^{-\alpha}(qy^\alpha - py) = (1 - \alpha)(q - pz)。逆は y=z1/(1−α)y = z^{1/(1 - \alpha)} として同じ計算を逆にたどればよい。□\square

α\alpha が整数なら負の解にも同じ変換が使える。α>0\alpha > 0 なら y≡0y \equiv 0 も解である。

例 1.19 ロジスティック方程式 P′−rP=−(r/K)P2P' - rP = -(r/K)P^2 は α=2\alpha = 2 のベルヌーイ型である。z=1/Pz = 1/P とおくと z′+rz=r/Kz' + rz = r/K となり、z=1/K+Ce−rtz = 1/K + Ce^{-rt}。これは例 1.9 の解と一致する。

命題 1.20(リッカチ型, Riccati equation)a,b,ca, b, c を連続関数とし、y1y_1 を y′=a(x)y2+b(x)y+c(x)y' = a(x)y^2 + b(x)y + c(x) の一つの解とする。vv が 0 にならない区間で、y=y1+1/vy = y_1 + 1/v がこの方程式の解であるための必要十分条件は、vv が線形方程式 v′=−(2a(x)y1+b(x))v−a(x)v' = -(2a(x)y_1 + b(x))v - a(x) をみたすことである。

証明. y′=y1′−v′/v2y' = y_1' - v'/v^2 であり、y1y_1 が解であることを使うと

ay2+by+c=(ay12+by1+c)+2ay1+bv+av2=y1′+2ay1+bv+av2ay^2 + by + c = (ay_1^2 + by_1 + c) + \frac{2ay_1 + b}{v} + \frac{a}{v^2} = y_1' + \frac{2ay_1 + b}{v} + \frac{a}{v^2}

よって y′=ay2+by+cy' = ay^2 + by + c は −v′/v2=(2ay1+b)/v+a/v2-v'/v^2 = (2ay_1 + b)/v + a/v^2、すなわち v′=−(2ay1+b)v−av' = -(2ay_1 + b)v - a と同値である。□\square

例 1.21 y′=y2−2/x2y' = y^2 - 2/x^2(x>0x > 0)。y=c/xy = c/x を代入すると −c=c2−2-c = c^2 - 2 なので c=1,−2c = 1, -2 が得られ、y1=1/xy_1 = 1/x は解である。命題 1.20 より v′=−2xv−1v' = -\frac{2}{x}v - 1。積分因子 x2x^2 を掛けて (x2v)′=−x2(x^2v)' = -x^2、よって v=Cx2−x3v = \frac{C}{x^2} - \frac{x}{3} で

y=1x+3x23C−x3y = \frac{1}{x} + \frac{3x^2}{3C - x^3}

C=0C = 0 とするともう一つの解 y=−2/xy = -2/x が現れ、C→∞C \to \infty の極限が y1=1/xy_1 = 1/x である。

注意 1.22 リッカチ方程式 y′=y2+c(x)y' = y^2 + c(x) は、y=−u′/uy = -u'/u とおくと 2 階線形方程式 u′′+c(x)u=0u'' + c(x)u = 0 と同値になる(y′=−u′′/u+y2y' = -u''/u + y^2 による)。yy の爆発は uu の零点に対応し、零点の分布は第5章のスツルムの比較定理で調べられる。

1.7 完全微分形と積分因子

方程式 P(x,y)+Q(x,y)y′=0P(x, y) + Q(x, y)y' = 0 を、対称な形で P dx+Q dy=0P\ dx + Q\ dy = 0 とも書く。

定義 1.23(完全微分形, exact equation)開集合 D⊂R2D \subset \mathbb{R}^2 上で、C1C^1 級関数 FF が Fx=PF_x = P, Fy=QF_y = Q をみたすとき、P dx+Q dy=0P\ dx + Q\ dy = 0 は完全微分形であるという。

このとき解 y(x)y(x) に沿って ddxF(x,y(x))=P+Qy′=0\frac{d}{dx}F(x, y(x)) = P + Qy' = 0 なので、F(x,y(x))F(x, y(x)) は一定である。FF のように解に沿って一定な関数を第一積分 (first integral) という。逆に Q≠0Q \neq 0 となる点の近くでは、陰関数定理(微分積分学 第8章)により等高線 F=CF = C は解のグラフになる。

定理 1.24 DD を開長方形 (a1,b1)×(a2,b2)(a_1, b_1) \times (a_2, b_2) とし、P,Q,Py,QxP, Q, P_y, Q_x は DD 上で連続とする。P dx+Q dy=0P\ dx + Q\ dy = 0 が完全微分形であるための必要十分条件は、DD 上で Py=QxP_y = Q_x が成り立つことである。

証明. 必要性:Fxy=PyF_{xy} = P_y と Fyx=QxF_{yx} = Q_x はともに連続なので、偏微分の順序交換(シュワルツの定理)により Py=Fxy=Fyx=QxP_y = F_{xy} = F_{yx} = Q_x。

十分性:(x0,y0)∈D(x_0, y_0) \in D を固定し

F(x,y)=∫x0xP(s,y0) ds+∫y0yQ(x,t) dtF(x, y) = \int_{x_0}^x P(s, y_0)\,ds + \int_{y_0}^y Q(x, t)\,dt

とおく(長方形なので積分路は DD に含まれる)。微分積分学の基本定理より Fy=QF_y = Q。また QxQ_x は連続なので積分記号下で微分でき、

Fx(x,y)=P(x,y0)+∫y0yQx(x,t) dt=P(x,y0)+∫y0yPy(x,t) dt=P(x,y)F_x(x, y) = P(x, y_0) + \int_{y_0}^y Q_x(x, t)\,dt = P(x, y_0) + \int_{y_0}^y P_y(x, t)\,dt = P(x, y)

Fx=PF_x = P, Fy=QF_y = Q は連続なので FF は C1C^1 級である。□\square

例 1.25 (2xy+1) dx+(x2+3y2) dy=0(2xy + 1)\ dx + (x^2 + 3y^2)\ dy = 0 は Py=2x=QxP_y = 2x = Q_x なので完全微分形である。Fx=2xy+1F_x = 2xy + 1 から F=x2y+x+φ(y)F = x^2y + x + \varphi(y)、Fy=x2+φ′(y)=x2+3y2F_y = x^2 + \varphi'(y) = x^2 + 3y^2 から φ=y3\varphi = y^3。解は x2y+x+y3=Cx^2y + x + y^3 = C で与えられる。

注意 1.26 定理 1.24 は領域の形に依存する。D=R2∖{0}D = \mathbb{R}^2 \setminus \lbrace 0 \rbrace 上の −y dx+x dyx2+y2=0\frac{-y\ dx + x\ dy}{x^2 + y^2} = 0 は Py=QxP_y = Q_x をみたすが、DD 全体での FF は存在しない。局所的には FF は偏角 θ\theta だが、原点のまわりを一周すると 2π2\pi ずれる。この現象はド・ラーム・コホモロジー(多様体 第7章)で体系的に扱われる。

完全微分形でない方程式も、0 にならない関数 μ\mu を掛けて μP dx+μQ dy=0\mu P\ dx + \mu Q\ dy = 0 が完全微分形になれば解ける。このような μ\mu を積分因子という。

命題 1.27 (Py−Qx)/Q(P_y - Q_x)/Q が xx だけの関数 h(x)h(x) なら、μ(x)=e∫h(x) dx\mu(x) = e^{\int h(x)\ dx} は積分因子である。同様に (Qx−Py)/P(Q_x - P_y)/P が yy だけの関数 k(y)k(y) なら、μ(y)=e∫k(y) dy\mu(y) = e^{\int k(y)\ dy} は積分因子である。

証明. 前半:μ′=hμ\mu' = h\mu より (μQ)x=μ′Q+μQx=μ(hQ+Qx)=μPy=(μP)y(\mu Q)_x = \mu'Q + \mu Q_x = \mu(hQ + Q_x) = \mu P_y = (\mu P)_y。後半も同様。□\square

例 1.28 (3xy+y2) dx+(x2+xy) dy=0(3xy + y^2)\ dx + (x^2 + xy)\ dy = 0 では Py−Qx=(3x+2y)−(2x+y)=x+yP_y - Q_x = (3x + 2y) - (2x + y) = x + y で、(Py−Qx)/Q=x+yx(x+y)=1x(P_y - Q_x)/Q = \frac{x + y}{x(x + y)} = \frac{1}{x} なので μ=x\mu = x が積分因子である。(3x2y+xy2) dx+(x3+x2y) dy=0(3x^2y + xy^2)\ dx + (x^3 + x^2y)\ dy = 0 は完全微分形で、F=x3y+12x2y2F = x^3y + \frac{1}{2}x^2y^2。解は x3y+12x2y2=Cx^3y + \frac{1}{2}x^2y^2 = C。なお 1 階線形方程式 y′+py=qy' + py = q は (py−q) dx+dy=0(py - q)\ dx + dy = 0 と書け、(Py−Qx)/Q=p(P_y - Q_x)/Q = p なので命題 1.27 の積分因子は e∫pe^{\int p} となり、定理 1.15 の μ\mu と一致する。

例 1.29(エネルギー積分)x′′=−V′(x)x'' = -V'(x)(ポテンシャル VV の中の運動)に x′x' を掛けると ddt(12x′2+V(x))=0\frac{d}{dt}\left(\frac{1}{2}x'^2 + V(x)\right) = 0 となる。つまりエネルギー E=12x′2+V(x)E = \frac{1}{2}x'^2 + V(x) は第一積分である。これを使うと x′=±2(E−V(x))x' = \pm\sqrt{2(E - V(x))} という 1 階の変数分離形に落とせる(降階)。振り子の周期の計算(問題 1.6)はこの方法による。

1.8 2 階定数係数線形方程式

a,ba, b を実定数とし、y′′+ay′+by=f(x)y'' + ay' + by = f(x) を考える。D=d/dxD = d/dx と書き、p(λ)=λ2+aλ+bp(\lambda) = \lambda^2 + a\lambda + b を特性多項式 (characteristic polynomial)、p(λ)=0p(\lambda) = 0 を特性方程式という。方程式は p(D)y=fp(D)y = f と書け、p(D)eλx=p(λ)eλxp(D)e^{\lambda x} = p(\lambda)e^{\lambda x} が成り立つ。

定理 1.30 λ1,λ2\lambda_1, \lambda_2 を pp の(複素)根とする。y′′+ay′+by=0y'' + ay' + by = 0 の R\mathbb{R} 上の複素数値解は、次の形のものに限る(C1,C2C_1, C_2 は複素定数)。

  1. λ1≠λ2\lambda_1 \neq \lambda_2 のとき y=C1eλ1x+C2eλ2xy = C_1e^{\lambda_1 x} + C_2e^{\lambda_2 x}。
  2. λ1=λ2=λ\lambda_1 = \lambda_2 = \lambda のとき y=(C1+C2x)eλxy = (C_1 + C_2x)e^{\lambda x}。

実数値解は、1 で λ1,λ2\lambda_1, \lambda_2 が実数なら C1,C2C_1, C_2 を実数としたもの、λ1,2=α±iβ\lambda_{1,2} = \alpha \pm i\beta(β≠0\beta \neq 0)なら y=eαx(C1cos⁡βx+C2sin⁡βx)y = e^{\alpha x}(C_1\cos\beta x + C_2\sin\beta x)(C1,C2C_1, C_2 は実数)であり、2 では C1,C2C_1, C_2 を実数としたものである。

証明. λ1+λ2=−a\lambda_1 + \lambda_2 = -a, λ1λ2=b\lambda_1\lambda_2 = b より (D−λ1)(D−λ2)y=y′′−(λ1+λ2)y′+λ1λ2y=p(D)y(D - \lambda_1)(D - \lambda_2)y = y'' - (\lambda_1 + \lambda_2)y' + \lambda_1\lambda_2 y = p(D)y。yy を解とし z=y′−λ2yz = y' - \lambda_2 y とおくと z′−λ1z=0z' - \lambda_1 z = 0 なので、命題 1.2 より z=Aeλ1xz = Ae^{\lambda_1 x}。すると (e−λ2xy)′=e−λ2x(y′−λ2y)=Ae(λ1−λ2)x(e^{-\lambda_2 x}y)' = e^{-\lambda_2 x}(y' - \lambda_2 y) = Ae^{(\lambda_1 - \lambda_2)x} である。λ1≠λ2\lambda_1 \neq \lambda_2 なら積分して e−λ2xy=Aλ1−λ2e(λ1−λ2)x+Be^{-\lambda_2 x}y = \frac{A}{\lambda_1 - \lambda_2}e^{(\lambda_1 - \lambda_2)x} + B、λ1=λ2\lambda_1 = \lambda_2 なら e−λxy=Ax+Be^{-\lambda x}y = Ax + B となり、いずれも主張の形である。逆にこれらが解であることは代入して確かめられる。

実数値解について:λ1,2=α±iβ\lambda_{1,2} = \alpha \pm i\beta なら eλ1,2x=eαx(cos⁡βx±isin⁡βx)e^{\lambda_{1,2}x} = e^{\alpha x}(\cos\beta x \pm i\sin\beta x) なので、複素数値解全体は C1eαxcos⁡βx+C2eαxsin⁡βxC_1e^{\alpha x}\cos\beta x + C_2e^{\alpha x}\sin\beta x(Cj∈CC_j \in \mathbb{C})とも書ける。これが実数値になるのは C1,C2C_1, C_2 が実数のときに限る(x=0x = 0 と x=π/(2β)x = \pi/(2\beta) での値を見よ)。実根の場合も同様である。□\square

解全体は 2 次元のベクトル空間をなし、解は (y(0),y′(0))(y(0), y'(0)) で決まる。これは第3章で一般の線形系について証明される事実の特別な場合である。

例 1.31(減衰振動)mx′′+cx′+kx=0mx'' + cx' + kx = 0 を x′′+2γx′+ω02x=0x'' + 2\gamma x' + \omega_0^2 x = 0(2γ=c/m2\gamma = c/m, ω02=k/m\omega_0^2 = k/m, γ>0\gamma > 0)と書くと、特性根は −γ±γ2−ω02-\gamma \pm \sqrt{\gamma^2 - \omega_0^2} である。

  • γ<ω0\gamma < \omega_0(減衰振動):ωd=ω02−γ2\omega_d = \sqrt{\omega_0^2 - \gamma^2} として x=Ae−γtcos⁡(ωdt−ϕ)x = Ae^{-\gamma t}\cos(\omega_d t - \phi)。振動しながら指数的に減衰する。
  • γ=ω0\gamma = \omega_0(臨界減衰):x=(C1+C2t)e−γtx = (C_1 + C_2t)e^{-\gamma t}。
  • γ>ω0\gamma > \omega_0(過減衰):2 つの負の実根による指数関数の和で、振動せずに減衰する。

非同次方程式 p(D)y=fp(D)y = f の解全体は、一つの特殊解に同次方程式の一般解を加えたものである(差が同次方程式の解になるため)。外力が指数関数型のときは、特殊解を次のように見つけられる。

命題 1.32(指数関数型の外力)μ∈C\mu \in \mathbb{C} とする。p(D)y=eμxp(D)y = e^{\mu x} は次の特殊解をもつ。

  1. p(μ)≠0p(\mu) \neq 0 なら yp=eμxp(μ)y_p = \dfrac{e^{\mu x}}{p(\mu)}。
  2. μ\mu が pp の単根なら yp=xeμxp′(μ)y_p = \dfrac{xe^{\mu x}}{p'(\mu)}。
  3. μ\mu が pp の重根なら yp=x2eμx2y_p = \dfrac{x^2e^{\mu x}}{2}。

証明. D(eμxg)=eμx(D+μ)gD(e^{\mu x}g) = e^{\mu x}(D + \mu)g を繰り返し用いると p(D)(eμxg)=eμxp(D+μ)gp(D)(e^{\mu x}g) = e^{\mu x}p(D + \mu)g であり、pp は最高次係数 1 の 2 次式なので p(D+μ)=D2+p′(μ)D+p(μ)p(D + \mu) = D^2 + p'(\mu)D + p(\mu) である。1 では g=1/p(μ)g = 1/p(\mu)、2 では p(μ)=0p(\mu) = 0 のもとで g=x/p′(μ)g = x/p'(\mu)、3 では p(μ)=p′(μ)=0p(\mu) = p'(\mu) = 0 のもとで g=x2/2g = x^2/2 とおけば、いずれも p(D+μ)g=1p(D + \mu)g = 1 となる。□\square

外力が cos⁡Ωx\cos\Omega x のときは、a,ba, b が実数なので、p(D)y=eiΩxp(D)y = e^{i\Omega x} の解の実部をとればよい。

例 1.33(共鳴とうなり)減衰のないばねに周期的な外力が働く場合 x′′+ω2x=Fcos⁡Ωtx'' + \omega^2 x = F\cos\Omega t(ω,Ω>0\omega, \Omega > 0)を考える。

Ω≠ω\Omega \neq \omega のとき、命題 1.32 の 1 より特殊解は xp=Fcos⁡Ωtω2−Ω2x_p = \frac{F\cos\Omega t}{\omega^2 - \Omega^2} である。x(0)=x′(0)=0x(0) = x'(0) = 0 の解は

x(t)=Fω2−Ω2(cos⁡Ωt−cos⁡ωt)=2Fω2−Ω2sin⁡(ω−Ω)t2 sin⁡(ω+Ω)t2x(t) = \frac{F}{\omega^2 - \Omega^2}(\cos\Omega t - \cos\omega t) = \frac{2F}{\omega^2 - \Omega^2}\sin\frac{(\omega - \Omega)t}{2}\,\sin\frac{(\omega + \Omega)t}{2}

となる。Ω\Omega が ω\omega に近いと、速い振動 sin⁡(ω+Ω)t2\sin\frac{(\omega + \Omega)t}{2} の振幅がゆっくり周期的に変化する。これがうなり (beat) である。

Ω=ω\Omega = \omega のとき、iωi\omega は p(λ)=λ2+ω2p(\lambda) = \lambda^2 + \omega^2 の単根で p′(iω)=2iωp'(i\omega) = 2i\omega なので、命題 1.32 の 2 より teiωt2iω\frac{te^{i\omega t}}{2i\omega} が eiωte^{i\omega t} に対する特殊解であり、その実部をとって

xp(t)=F2ω tsin⁡ωtx_p(t) = \frac{F}{2\omega}\,t\sin\omega t

を得る。振幅が時間に比例して増大し続ける。これが共鳴 (resonance) である。うなりの解で Ω→ω\Omega \to \omega とした極限もこの解になる。

例 1.34(減衰がある場合の共鳴曲線)x′′+2γx′+ω02x=Fcos⁡Ωtx'' + 2\gamma x' + \omega_0^2 x = F\cos\Omega t(γ>0\gamma > 0)では p(iΩ)=ω02−Ω2+2iγΩ≠0p(i\Omega) = \omega_0^2 - \Omega^2 + 2i\gamma\Omega \neq 0 なので、特殊解 xp=Re⁡(FeiΩt/p(iΩ))x_p = \operatorname{Re}(Fe^{i\Omega t}/p(i\Omega)) は振幅 A(Ω)=F/∣p(iΩ)∣=F/(ω02−Ω2)2+4γ2Ω2A(\Omega) = F/\lvert p(i\Omega) \rvert = F/\sqrt{(\omega_0^2 - \Omega^2)^2 + 4\gamma^2\Omega^2} の振動である。同次方程式の解は例 1.31 よりすべて減衰するので、どの解も最終的にこの定常振動に近づく。振幅 A(Ω)A(\Omega) は Ω\Omega が ω0\omega_0 に近いところで大きくなり、そのピークは減衰 γ\gamma が小さいほど鋭く高い(γ→0\gamma \to 0 で発散する)。ラジオの同調回路はこの性質を利用して特定の周波数を選び出す。

1.9 クレロー型方程式と特異解

y′y' について解かれていない方程式 F(x,y,y′)=0F(x, y, y') = 0 では、新しい現象が起こる。gg を C2C^2 級関数として、クレロー型方程式 (Clairaut's equation)

y=xy′+g(y′)y = xy' + g(y')

を考える。

命題 1.35

  1. 任意の定数 CC に対し、直線 y=Cx+g(C)y = Cx + g(C) は解である。
  2. 区間上の C2C^2 級の解 yy は y′′(x)(x+g′(y′(x)))=0y''(x)\bigl(x + g'(y'(x))\bigr) = 0 をみたす。
  3. g′′≠0g'' \neq 0 となる区間で、pp をパラメータとする曲線 x=−g′(p)x = -g'(p), y=g(p)−pg′(p)y = g(p) - pg'(p) は解のグラフである。

証明. 1 は代入すればよい。2:方程式を微分すると y′=y′+xy′′+g′(y′)y′′y' = y' + xy'' + g'(y')y''。3:dx/dp=−g′′(p)≠0dx/dp = -g''(p) \neq 0 なので、この曲線は xx の関数のグラフであり、dy/dp=g′(p)−g′(p)−pg′′(p)=−pg′′(p)dy/dp = g'(p) - g'(p) - pg''(p) = -pg''(p) より dy/dx=pdy/dx = p。よって xy′+g(y′)=−pg′(p)+g(p)=yxy' + g(y') = -pg'(p) + g(p) = y。□\square

3 の曲線は、直線族 y=Cx+g(C)y = Cx + g(C) の包絡線 (envelope) である。2 より、滑らかな解は各部分で直線か包絡線のどちらかになる。

例 1.36 y=xy′+(y′)2y = xy' + (y')^2 の直線解は y=Cx+C2y = Cx + C^2、包絡線は x=−2px = -2p, y=−p2y = -p^2、すなわち放物線 y=−x2/4y = -x^2/4 である(y′=−x/2y' = -x/2 を代入して検算できる)。直線 y=Cx+C2y = Cx + C^2 は x=−2Cx = -2C で放物線に接する。

点 (x,y)(x, y) を通る直線解は C2+Cx−y=0C^2 + Cx - y = 0 の実根の数だけあり、放物線より下(x2+4y<0x^2 + 4y < 0)には解が通らない。放物線に沿って進み、任意の点でその点の接線に乗り換えた関数は、つなぎ目で傾きが一致するので C1C^1 級の解になる。したがって放物線上の各点を通る解は無数にある。y′y' について解くと y′=−x±x2+4y2y' = \frac{-x \pm \sqrt{x^2 + 4y}}{2} であり、右辺の平方根は x2+4y=0x^2 + 4y = 0 の上でリプシッツ連続でない(第2章)。

定義 1.37(特異解, singular solution)解 y=φ(x)y = \varphi(x) のグラフの各点で、それと接する別の解が通るとき、φ\varphi を特異解という。

特異解は一般解の定数をどう選んでも得られない。候補は F(x,y,p)=0F(x, y, p) = 0 と Fp(x,y,p)=0F_p(x, y, p) = 0 から pp を消去した曲線(pp 判別式)の中にある(クレロー型では命題 1.35 の 3 の曲線)。ただし、それが解かどうかは代入して確かめる必要がある。

まとめ

  • 微分方程式は変化率についての法則を式にしたものである。解を「すべて」求めて初めて方程式を解いたといえる。
  • 変数分離形は ∫dy/g(y)=∫f(x) dx\int dy/g(y) = \int f(x)\ dx で解ける。ただし gg の零点では解の一意性が崩れうる(トリチェリの法則)。
  • 1 階線形方程式は積分因子で解け、解は係数が連続な区間全体で存在する。非線形方程式では解が爆発しうる。ベルヌーイ型・リッカチ型は線形方程式に帰着する。
  • Py=QxP_y = Q_x なら(長方形領域上で)P dx+Q dy=0P\ dx + Q\ dy = 0 は完全微分形で、第一積分 FF により解は F=CF = C と書ける。積分因子で完全微分形にできる場合がある。
  • 2 階定数係数線形方程式は特性方程式の根で解ける。外力の周波数が固有振動数に一致すると共鳴が起こり、近いとうなりが生じる。
  • クレロー型方程式の直線族の包絡線は特異解であり、その上の各点で解の一意性が崩れる。

演習問題

問題 1.1 ★ 次の初期値問題を解き、解が存在する最大の区間を求めよ。(1) y′=1+y2y' = 1 + y^2, y(0)=0y(0) = 0 (2) y′=xy2y' = xy^2, y(0)=1y(0) = 1

解答

(1) 変数分離して arctan⁡y=x+C\arctan y = x + C、y(0)=0y(0) = 0 より C=0C = 0 で y=tan⁡xy = \tan x。区間 (−π/2,π/2)(-\pi/2, \pi/2) の両端で ±∞\pm\infty に発散するので、最大の区間は (−π/2,π/2)(-\pi/2, \pi/2) である。

(2) y>0y > 0 の範囲で −1/y=x2/2+C-1/y = x^2/2 + C、y(0)=1y(0) = 1 より C=−1C = -1 で y=22−x2y = \frac{2}{2 - x^2}。x→±2x \to \pm\sqrt{2} で発散するので、最大の区間は (−2,2)(-\sqrt{2}, \sqrt{2}) である。検算:y′=4x(2−x2)2=xy2y' = \frac{4x}{(2 - x^2)^2} = xy^2。

問題 1.2 ★ y′+y=y3y' + y = y^3 のすべての解を求めよ。

解答

y≡0y \equiv 0 は解である。y≠0y \neq 0 の範囲で α=3\alpha = 3 のベルヌーイ型として z=y−2z = y^{-2} とおくと z′−2z=−2z' - 2z = -2、よって z=1+Ce2xz = 1 + Ce^{2x} で、y=±(1+Ce2x)−1/2y = \pm(1 + Ce^{2x})^{-1/2}(1+Ce2x>01 + Ce^{2x} > 0 となる区間で)。y≡±1y \equiv \pm 1 は C=0C = 0 の場合である。(代入して検算せよ。)右辺 y3−yy^3 - y は C1C^1 級なので、第2章の一意性定理により、一度 0 でない値をとる解は 0 にならず、これですべてである。

問題 1.3 ★★ y′′−3y′+2y=exy'' - 3y' + 2y = e^x, y(0)=y′(0)=0y(0) = y'(0) = 0 を解け。

解答

p(λ)=λ2−3λ+2=(λ−1)(λ−2)p(\lambda) = \lambda^2 - 3\lambda + 2 = (\lambda - 1)(\lambda - 2) で、μ=1\mu = 1 は単根、p′(1)=−1p'(1) = -1。命題 1.32 より特殊解は yp=−xexy_p = -xe^x(検算:yp′=−(1+x)exy_p' = -(1 + x)e^x, yp′′=−(2+x)exy_p'' = -(2 + x)e^x で、yp′′−3yp′+2yp=(−2−x+3+3x−2x)ex=exy_p'' - 3y_p' + 2y_p = (-2 - x + 3 + 3x - 2x)e^x = e^x)。一般解 y=C1ex+C2e2x−xexy = C_1e^x + C_2e^{2x} - xe^x に初期条件を入れると C1+C2=0C_1 + C_2 = 0, C1+2C2−1=0C_1 + 2C_2 - 1 = 0 なので C2=1C_2 = 1, C1=−1C_1 = -1。よって y=e2x−ex−xexy = e^{2x} - e^x - xe^x。

問題 1.4 ★★ リッカチ方程式 y′=y2−xy+1y' = y^2 - xy + 1 が y=xy = x を解にもつことを確かめ、一般解を求めよ。

解答

y=xy = x なら y′=1=x2−x2+1y' = 1 = x^2 - x^2 + 1。命題 1.20 で a=1a = 1, b=−xb = -x, y1=xy_1 = x とすると v′=−(2x−x)v−1=−xv−1v' = -(2x - x)v - 1 = -xv - 1。積分因子 ex2/2e^{x^2/2} を掛けて (ex2/2v)′=−ex2/2(e^{x^2/2}v)' = -e^{x^2/2}、よって v=e−x2/2(C−∫0xes2/2 ds)v = e^{-x^2/2}\left(C - \int_0^x e^{s^2/2}\ ds\right) で

y=x+ex2/2C−∫0xes2/2 dsy = x + \frac{e^{x^2/2}}{C - \int_0^x e^{s^2/2}\,ds}

(および y=xy = x)。検算:I(x)=∫0xes2/2dsI(x) = \int_0^x e^{s^2/2}ds, w=ex2/2/(C−I)w = e^{x^2/2}/(C - I) とおくと w′=xw+w2w' = xw + w^2 で、(x+w)′=1+xw+w2=(x+w)2−x(x+w)+1(x + w)' = 1 + xw + w^2 = (x + w)^2 - x(x + w) + 1。

問題 1.5 ★★ クレロー型方程式 y=xy′−ey′y = xy' - e^{y'} の一般解と特異解を求めよ。

解答

g(p)=−epg(p) = -e^p。直線解は y=Cx−eCy = Cx - e^C。g′′(p)=−ep≠0g''(p) = -e^p \neq 0 なので、命題 1.35 の 3 より x=−g′(p)=epx = -g'(p) = e^p, y=g(p)−pg′(p)=−ep+pepy = g(p) - pg'(p) = -e^p + pe^p。p=log⁡xp = \log x を代入して y=xlog⁡x−xy = x\log x - x(x>0x > 0)。検算:y′=log⁡xy' = \log x、xy′−ey′=xlog⁡x−x=yxy' - e^{y'} = x\log x - x = y。直線 y=Cx−eCy = Cx - e^C は x=eCx = e^C でこの曲線に接する。

問題 1.6 ★★★(振り子の周期)振り子の方程式 θ′′=−gℓsin⁡θ\theta'' = -\frac{g}{\ell}\sin\theta の解で、θ(0)=θ0\theta(0) = \theta_0(0<θ0<π0 < \theta_0 < \pi), θ′(0)=0\theta'(0) = 0 をみたすものは周期的に振動する。その周期 TT が

T=4ℓg∫0π/2dϕ1−k2sin⁡2ϕ,k=sin⁡θ02T = 4\sqrt{\frac{\ell}{g}}\int_0^{\pi/2}\frac{d\phi}{\sqrt{1 - k^2\sin^2\phi}}, \qquad k = \sin\frac{\theta_0}{2}

で与えられることを、例 1.29 のエネルギー積分を用いて示せ。また θ0→0\theta_0 \to 0 で T→2πℓ/gT \to 2\pi\sqrt{\ell/g} となり、TT は θ0\theta_0 について単調増加であることを示せ(解が周期的であることは認めてよい)。

解答

エネルギー積分より 12θ′2−gℓcos⁡θ=−gℓcos⁡θ0\frac{1}{2}\theta'^2 - \frac{g}{\ell}\cos\theta = -\frac{g}{\ell}\cos\theta_0、すなわち θ′2=2gℓ(cos⁡θ−cos⁡θ0)\theta'^2 = \frac{2g}{\ell}(\cos\theta - \cos\theta_0)。対称性から、θ\theta が 00 から θ0\theta_0 まで動く時間が周期の 1/41/4 であり、その間 θ′>0\theta' > 0 として

T4=ℓ2g∫0θ0dθcos⁡θ−cos⁡θ0\frac{T}{4} = \sqrt{\frac{\ell}{2g}}\int_0^{\theta_0}\frac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta - \cos\theta_0}}

cos⁡θ=1−2sin⁡2(θ/2)\cos\theta = 1 - 2\sin^2(\theta/2) より cos⁡θ−cos⁡θ0=2(k2−sin⁡2(θ/2))\cos\theta - \cos\theta_0 = 2(k^2 - \sin^2(\theta/2))。sin⁡(θ/2)=ksin⁡ϕ\sin(\theta/2) = k\sin\phi(0≤ϕ≤π/20 \leq \phi \leq \pi/2)と置換すると、12cos⁡(θ/2) dθ=kcos⁡ϕ dϕ\frac{1}{2}\cos(\theta/2)\ d\theta = k\cos\phi\ d\phi より dθ=2kcos⁡ϕ dϕ1−k2sin⁡2ϕd\theta = \frac{2k\cos\phi\ d\phi}{\sqrt{1 - k^2\sin^2\phi}}、また cos⁡θ−cos⁡θ0=2 kcos⁡ϕ\sqrt{\cos\theta - \cos\theta_0} = \sqrt{2}\ k\cos\phi。よって

T4=ℓ2g∫0π/22 dϕ1−k2sin⁡2ϕ=ℓg∫0π/2dϕ1−k2sin⁡2ϕ\frac{T}{4} = \sqrt{\frac{\ell}{2g}}\int_0^{\pi/2}\frac{\sqrt{2}\,d\phi}{\sqrt{1 - k^2\sin^2\phi}} = \sqrt{\frac{\ell}{g}}\int_0^{\pi/2}\frac{d\phi}{\sqrt{1 - k^2\sin^2\phi}}

(置換後の被積分関数は有界なので、もとの広義積分は収束する。)θ0→0\theta_0 \to 0 なら被積分関数は一様に 1 に収束するので T→4ℓ/g⋅π2=2πℓ/gT \to 4\sqrt{\ell/g}\cdot\frac{\pi}{2} = 2\pi\sqrt{\ell/g}。k=sin⁡(θ0/2)k = \sin(\theta_0/2) は θ0∈(0,π)\theta_0 \in (0, \pi) について増加し、被積分関数は各 ϕ∈(0,π/2]\phi \in (0, \pi/2] で kk について狭義増加なので、TT は θ0\theta_0 について単調増加である。振り子の等時性は近似的にしか成り立たない。

この章を読み終えたら

「読了」にすると学習記録とロードマップに反映されます。演習の自己採点もお忘れなく。

この章の誤りを報告GitHub で見る