Lemma数学ロードマップ

04 · ステージ 5 学部専門

代数学(群・環・体)

整数と合同式、群、シローの定理、環とイデアル、一意分解、加群の構造定理、体の拡大、ガロア理論

9 章目安 120〜160 時間演習 85 問実験 1

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章の一覧

  1. 1 整数と合同式目安 13〜17 時間 · 演習 10 問
  2. 2 群の基礎目安 19〜25 時間 · 演習 10 問 · 実験 1
  3. 3 群の作用とシローの定理目安 11〜15 時間 · 演習 10 問
  4. 4 群の構造目安 13〜17 時間 · 演習 10 問
  5. 5 環とイデアル目安 12〜16 時間 · 演習 10 問
  6. 6 環における因数分解目安 10〜13 時間 · 演習 9 問
  7. 7 加群と単項イデアル整域上の構造定理目安 11〜14 時間 · 演習 9 問
  8. 8 体の拡大目安 15〜20 時間 · 演習 9 問
  9. 9 ガロア理論目安 17〜22 時間 · 演習 8 問

概要

代数学は「演算をもつ集合」を、その演算の性質だけから調べる分野である。整数の足し算と掛け算、行列の積、図形の対称性の合成、多項式の計算、方程式の根の入れ替え――見かけはまったく違うこれらの対象に、群 (group)・環 (ring)・体 (field)・加群 (module) という共通の枠組みが現れる。共通の枠組みで考えると、一つの対象で得た知見がそのまま他の対象に移り、個別の計算では見えなかった構造が見えてくる。

この科目では、整数論の初歩(合同式・素因数分解)から出発し、群論(ラグランジュの定理・シローの定理・可解群)、環論(イデアル・一意分解整域)、単項イデアル整域上の加群の構造定理を経て、体の拡大とガロア理論に至る。到達点のガロア理論は「5 次以上の方程式には根の公式がない」「角の三等分は定規とコンパスでは不可能」といった古典的な問題に、群の言葉で完全な答えを与える。

代数学は現代数学のほぼすべての分野の共通言語である。可換環論・代数幾何学・代数的整数論は本科目の環論と体論の直接の続きであり、位相幾何学の基本群やホモロジー群、リー群の表現論、暗号や符号の理論も群・環・加群の言葉で書かれている。

学び方の基本方針:抽象的な定義に出会ったら、必ず手元の具体例――対称群 Sn\mathfrak{S}_n、二面体群 DnD_n、行列群 GL⁡n(K)\operatorname{GL}_n(K)、剰余環 Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}、多項式環 K[x]K[x]、ガウス整数環 Z[i]\mathbb{Z}[i]――で確かめること。定理の仮定を一つ外したときの反例を自分で探すことも、理解を深める最良の方法である。

前提知識

到達目標

  • [ ] ユークリッドの互除法・中国剰余定理・オイラーの定理を使って合同式を計算でき、原始根の存在を証明できる
  • [ ] 対称群・二面体群・四元数群・行列群で、部分群・剰余類・正規部分群・準同型を具体的に計算できる
  • [ ] ラグランジュの定理と第 1〜第 3 同型定理を証明し、剰余群を具体的に決定できる
  • [ ] 群の作用の言葉で軌道–固定部分群定理・類等式を使いこなし、シローの定理を証明できる
  • [ ] シローの定理を使って、与えられた位数の群の構造(単純でないこと、巡回群であることなど)を決定できる
  • [ ] 半直積・可解群・交代群の単純性を理解し、位数 8 以下の群を分類できる
  • [ ] 環のイデアル・剰余環・素イデアル・極大イデアルを具体的に計算できる
  • [ ] ユークリッド整域 ⇒ 単項イデアル整域 ⇒ 一意分解整域を証明し、それぞれの逆が成り立たない例を挙げられる
  • [ ] ガウスの補題とアイゼンシュタインの判定法で多項式の既約性を判定できる
  • [ ] 単因子標準形を計算し、有限生成アーベル群の分類と有理標準形・ジョルダン標準形を加群の構造定理から導ける
  • [ ] 最小多項式・拡大次数を計算し、作図問題の不可能性を証明できる
  • [ ] 分解体・正規拡大・分離拡大・有限体の基本定理を証明できる
  • [ ] ガロア理論の基本定理を証明し、具体的な多項式のガロア群と中間体を決定できる
  • [ ] 方程式の冪根による可解性とガロア群の可解性の同値性を説明し、5 次方程式の非可解性の具体例を示せる

章立て

  1. 第1章 整数と合同式 ユークリッドの互除法、素因数分解の一意性、Z/nZ\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}、中国剰余定理、オイラーの定理、原始根、平方剰余の相互法則、RSA 暗号。後の章で抽象化される概念の原型がすべてここにある。
  2. 第2章 群の基礎 群の定義と基本例、部分群、巡回群の分類、剰余類とラグランジュの定理、正規部分群と剰余群、準同型定理、自己同型群。
  3. 第3章 群の作用とシローの定理 群の作用、軌道–固定部分群定理、類等式と pp 群、コーシーの定理、シローの定理とその応用、バーンサイドの補題による数え上げ。
  4. 第4章 群の構造 直積と半直積、有限生成アーベル群の基本定理(主張)、交換子群と可解群、対称群と交代群の単純性、組成列、位数 8 以下の群の分類。
  5. 第5章 環とイデアル 環・整域・体、イデアルと剰余環、環の準同型定理、素イデアルと極大イデアル、中国剰余定理、分数体、多項式環、標数と素体。
  6. 第6章 環における因数分解 既約元と素元、ユークリッド整域・単項イデアル整域・一意分解整域、ガウスの補題、既約性判定法、ガウス整数とフェルマーの二平方和定理。
  7. 第7章 加群と単項イデアル整域上の構造定理 加群・自由加群・完全列、単因子標準形、単項イデアル整域上の有限生成加群の構造定理、有限生成アーベル群の基本定理、有理標準形とジョルダン標準形。
  8. 第8章 体の拡大 拡大次数、最小多項式、代数拡大、作図問題、分解体、代数閉包、正規拡大・分離拡大、有限体、原始元定理。
  9. 第9章 ガロア理論 ガロア拡大、アルティンの定理、ガロア理論の基本定理、ガロア群の計算例、円分体、クンマー理論、方程式の可解性、正 17 角形、代数学の基本定理。

学習時間の目安と進め方

  • 1 章あたり 10〜15 時間(本文の精読 6〜8 時間、演習 4〜7 時間)、全体で 100〜130 時間程度を想定している。大学の講義なら学部 2〜3 年の通年 2 科目分(群論・環論で半期、加群と体論・ガロア理論で半期)に相当する。
  • 章の依存関係はおおよそ次のとおりである。
    • 第1章 → 第2章 → 第3章 → 第4章(群論の流れ)
    • 第1章・第2章 → 第5章 → 第6章 → 第7章(環と加群の流れ。第7章の応用で第4章の主張を証明する)
    • 第5章・第6章 → 第8章 → 第9章(体論の流れ。第9章の可解性の議論では第3章・第4章の群論を使う)
  • 群論を一通り学んだら、すぐに環論に進んでよい。第3章のシローの定理の応用や第4章の群の分類は、第9章に入る前に戻って復習すると効果的である。
  • 定義を読んだら 例を 3 つ、反例を 1 つ 自分で挙げる習慣をつけること。群表を実際に書く、剰余環の元を全部書き出す、といった手を動かす作業が抽象的な理論の理解を支える。
  • 演習問題は ★ をすべて解いてから ★★ に進むとよい。★★ には大学院入試の基本レベルの問題が含まれる。

参考文献

  • 雪江明彦『代数学1 群論入門』『代数学2 環と体とガロア理論』(日本評論社) 本科目の内容をほぼ網羅する現代的な教科書。例と演習が豊富で、証明が丁寧。群論と環論・体論の両方で主教科書として薦められる。
  • 桂利行『代数学 I 群と環』『代数学 II 環上の加群』『代数学 III 体とガロア理論』(東京大学出版会) 簡潔で見通しのよい講義録風の 3 冊。第 II 巻は第7章(加群の構造定理)の参考書として特に有用。
  • 堀田良之『代数入門―群と加群―』(裳華房) 群と加群を中心に、線形代数とのつながりを意識して書かれた名著。第7章の単因子論の参考になる。
  • 藤崎源二郎『体とガロア理論』(岩波書店) 体論とガロア理論に特化した詳しい本。第8章・第9章の発展的な内容(無限次拡大・超越拡大など)を学ぶのに適する。
  • 松坂和夫『代数系入門』(岩波書店) 整数から群・環・体・ガロア理論まで、初学者向けに非常に丁寧に書かれた定番の入門書。独習の最初の一冊に向く。
  • M. Artin, Algebra (Pearson) 行列群・対称性・幾何的な例を重視した教科書。具体例から抽象概念を導く書き方は本科目の方針に近い。
  • D. S. Dummit, R. M. Foote, Abstract Algebra (Wiley) 群・環・加群・体・ガロア理論を網羅した大部の標準的教科書。例と演習問題が非常に多く、辞書的にも使える。
  • S. Lang, Algebra (Springer) 大学院レベルの標準的な参考書。本科目を終えたあと、より一般的な設定(無限ガロア理論・テンソル積など)で学び直すのに適する。

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