この章の目標
- 無限次ガロア拡大のガロア群を、有限次ガロア拡大のガロア群の射影極限として表せる
- クルル位相を定義し、ガロア群がコンパクト・ハウスドルフ・完全不連結であることを証明できる
- 射有限群 Z, Zp を扱い、Z≅∏pZp を証明できる
- 閉部分群と中間体の対応(無限次ガロア理論の基本定理)を証明し、閉でない部分群の例を挙げられる
- Gal(Fp/Fp)≅Z と Gal(Q(μp∞)/Q)≅Zp× を証明し、絶対ガロア群の表現(円分指標)を説明できる
前提:第9章(ガロア理論の基本定理、有限体と円分体)、第8章(正規拡大・分離拡大・代数閉包)、03-topology 第5章(チコノフの定理)。13.4 節以降では 15 第5章 の p 進整数環 Zp を、13.8 節では 21 第3章 の楕円曲線の等分点を参照する。
第9章のガロア理論は有限次拡大の理論だったが、整数論に現れる拡大の多くは無限次である。Fp はすべての Fpn を含み、Q(μp∞) は円分体 Q(ζpn) の和集合である。Gal(Q/Q) は Q のすべての有限次ガロア拡大の情報をまとめたもので、現代の整数論の中心的な研究対象である。
無限次拡大では第9章の基本定理はそのままでは成り立たない(13.6 節)。クルルは、ガロア群に自然な位相を入れ、閉部分群に限れば中間体との対応が回復することを示した。本章ではこの位相(クルル位相)と射有限群 Z, Zp を調べ、絶対ガロア群の表現の入口までを扱う。
13.1 無限次ガロア拡大
定義 13.1(ガロア拡大)代数拡大 L/K が正規(第8章 定義 8.32)かつ分離的(第8章 定義 8.35)であるとき、L/K をガロア拡大といい、Gal(L/K):=Aut(L/K) をそのガロア群という。
有限次の場合は定義 9.5 と一致する。
例 13.2
- Fp の代数閉包 Fp(第8章 定理 8.31)は、各 n について pn 元の部分体(xpn−x の根全体)をただ 1 つ含み(第8章 定理 8.41)、それを Fpn と書く。Fp(x)(x∈Fp)は有限体なので Fp=⋃nFpn で、Fpn⊂Fpm⟺n∣m。Fp は完全体(定理 8.39)で Fp は代数閉体なので、Fp/Fp はガロア拡大である。
- 同じ理由で Q/Q(第8章 例 8.30)もガロア拡大である。
- ζpn=e2πi/pn とすると ζpn+1p=ζpn なので、Q(ζpn) の和集合 Q(μp∞) は体で、次の補題より Q 上ガロア拡大である。
補題 13.3 L/K を代数拡大とする。
- L/K がガロア拡大 ⟺ L は K 上の有限次ガロア拡大である中間体の和集合である。
- L/K がガロア拡大なら、L/K の有限次部分拡大(K 上有限次の中間体)は K 上有限次ガロア拡大である中間体に含まれ、任意の中間体 M について L/M はガロア拡大である。
証明. L/K がガロア拡大で x1,…,xr∈L とする。mxi,K は分離的で L で 1 次式の積に分解するので、それらのうち相異なるものの積の分解体 E⊂L は xi を含む有限次ガロア拡大である(定理 9.6)。これで (1) の ⇒ と (2) の前半が従う。(1) の ⇐:x∈L を含む有限次ガロア拡大 E⊂L で mx,K は相異なる 1 次式の積に分解するので、x は分離的で、x を根にもつ既約多項式は L で分解する。(2) の後半:mx,M は mx,K を割るので L で相異なる 1 次式の積に分解する。□
以下、中間体 E で E/K が有限次ガロア拡大であるものを有限次ガロア部分拡大とよぶ。
補題 13.4(自己同型の延長)L/K を正規拡大、M を中間体、τ:M→L を K 準同型とすると、τ は L の K 自己同型に延長される。
証明. 中間体 M′⊃M と τ の延長である K 準同型 τ′:M′→L の組全体に延長関係で順序を入れると、鎖には和集合上の写像が上界になるので、ツォルンの補題(00-foundations 第6章 定理 6.7)により極大元 (M′,τ′) がある。α∈L∖M′ があれば、mα,M′τ′ は mα,Kτ′=mα,K を割るので正規性より L に根をもち、補題 8.25 より τ′ は M′(α) に延長されて極大性に反する。よって M′=L。β∈L について、単射 τ′ は mβ,K の L における根の有限集合を自分自身に全単射で写すので、β は像に入る。よって τ′ は自己同型である。□
系 13.5 L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) とする。
- 有限次ガロア部分拡大 E について、制限 G→Gal(E/K), σ↦σ∣E は全射準同型である。
- x∈L の G 軌道は mx,K の根全体である。特に LG=K。
証明. (1) y∈E について σ(y) は my,K の根で、E/K は正規なので E に属する。よって σ∣E∈Gal(E/K) で、全射性は補題 13.4 による。(2) σ(x) は mx,K の根であり、逆に根 y∈L に対し K 準同型 K(x)→L, x↦y(補題 8.25)は補題 13.4 で σ∈G に延長される。x∈/K なら mx,K は分離的で 2 次以上なので、x は G で固定されない。□
13.2 射影極限とガロア群
定義 13.6(射影系・射影極限)I を有向集合(03-topology 第4章 定義 4.19)とする。群 Gi(i∈I)と、i≤j に対する準同型 φij:Gj→Gi で、φii=id、i≤j≤k なら φij∘φjk=φik をみたすものを群の射影系 (inverse system) という。直積の部分群
ilimGi={(gi)i∈i∈I∏Gii≤j ならば φij(gj)=gi}
をその射影極限 (inverse limit) という。環の射影系と射影極限も同様に定める。
例 13.7 還元 Z/pn+1Z→Z/pnZ による射影極限は Zp と同型である(15 第5章 定理 5.9(1))。また N に整除関係(n≤m⟺n∣m)で順序を入れると有向集合で、還元 Z/mZ→Z/nZ(n∣m)は環の射影系をなす。その射影極限 Z=limnZ/nZ を Z の射有限完備化 (profinite completion) という。
定理 13.8 L/K をガロア拡大、E を有限次ガロア部分拡大からなる族で、包含について有向(任意の E,E′∈E に対し E∪E′⊂E′′ となる E′′∈E がある)かつ ⋃E∈EE=L となるものとする。制限写像 Gal(E′/K)→Gal(E/K)(E⊂E′)による射影系について
r:Gal(L/K)→E∈ElimGal(E/K),σ↦(σ∣E)E
は群の同型である。
証明. 系 13.5(1) より σ∣E∈Gal(E/K) で、族は整合的なので r は準同型である。すべての E で σ∣E=id なら、L=⋃E より σ=id で、r は単射。整合的な族 (σE) に対し、x∈E のとき σ(x):=σE(x) とおく。x∈E∩E′ なら E∪E′⊂E′′ をとると σE(x)=σE′′(x)=σE′(x) なので well-defined である。任意の 2 元は共通の E に属するので σ は K 準同型で、(σE−1) から同様に作った写像が逆写像になる。よって σ∈Gal(L/K) で、r(σ)=(σE)。□
E として有限次ガロア部分拡大全体をとってよい(有向性は補題 13.3(2) による)。
13.3 クルル位相
大きな有限次部分拡大の上で一致する 2 つの自己同型を「近い」とみなす位相を入れる。
定義 13.9(クルル位相, Krull topology)L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) とし、有限次部分拡大 E に対し UE=Gal(L/E) とおく。σUE(σ∈G、E は有限次部分拡大)の全体を開基とする G の位相をクルル位相という。
ρ∈σUE∩τUE′ なら ρUEE′=σUE∩τUE′(EE′ は合成体)なので、これは開基である。補題 13.3(2) より、E が有限次ガロア部分拡大の場合の σUE だけでも開基になり、このとき UE は制限 G→Gal(E/K) の核なので指数 [E:K] の正規部分群である(系 13.5(1))。(σUE)(τUE)=στUE、(σUE)−1=σ−1UE より G は位相群である。L/K が有限次なら UL={1} が開なので、クルル位相は離散位相である。
命題 13.10
- G の開部分群は閉部分群である。部分群 H が開であるための必要十分条件は、ある有限次部分拡大 E について UE⊂H となることである。
- 任意の中間体 M について、Gal(L/M) は G の閉部分群である。
証明. (1) 開部分群の補集合はその剰余類(開集合)の和集合なので開。H が開なら 1 の基本近傍 UE を含み、逆に UE⊂H なら H=⋃h∈HhUE は開。(2) Gal(L/M)=⋂x∈MUK(x) で、各 UK(x) は開部分群なので閉である。□
定理 13.11 L/K をガロア拡大、E を定理 13.8 の族とし、各 Gal(E/K) に離散位相、P=∏E∈EGal(E/K) に積位相(03-topology 第3章 定義 3.9)を入れる。
- r(定理 13.8)は、クルル位相を入れた G=Gal(L/K) から P の閉部分集合 limGal(E/K) への同相写像である。
- G はコンパクトかつハウスドルフであり、完全不連結(連結成分がすべて 1 点)である。
証明. 有限次部分拡大 K(x1,…,xr) は、各 xi を含む Ei∈E と有向性により、ある E∈E に含まれるので、σUE(E∈E)も開基をなす。
(1) P の準開基の元 {(gE)∣gE0=a} の逆像 {σ∣σ∣E0=a} は空か UE0 の剰余類なので、r は連続。開基の元 σUE(E∈E)の像は r(G)∩{(gF)∣gE=σ∣E} で r(G) の開集合なので、r は像への同相写像である。r(G)=limGal(E/K) は、E⊂E′ ごとの集合 {(gF)∣gE′∣E=gE} の共通部分で、この集合の補集合は a∣E=b となる組 (a,b) にわたる {gE′=a, gE=b} の和集合なので開である。よって r(G) は閉集合。
(2) 有限離散空間はコンパクトなので、チコノフの定理(03 第5章 定理 5.24)より P はコンパクトで、閉部分集合 r(G) もコンパクト(同 定理 5.5)。σ=τ なら σ(x)=τ(x) となる x∈E∈E をとると、σUE と τUE は交わらない開集合なので G はハウスドルフ。さらに σUE は開かつ閉(補集合は他の剰余類の和集合)なので、σ,τ を含む部分集合は σUE とその補集合で分かれて連結でない。よって連結成分は 1 点である(03-topology 第6章 例 6.19(2))。□
13.4 射有限群
定義 13.12(射有限群, profinite group)有限群の射影系の射影極限に、各有限群を離散空間とした直積の部分空間の位相を入れた位相群を射有限群という。射有限環も同様に定める。
クルル位相を入れたガロア群は射有限群であり(定理 13.11)、同じ証明で、射有限群はコンパクト・ハウスドルフ・完全不連結である(逆も成り立つことが知られている)。
例 13.13(Zp)x↦(xmodpn)n は環同型 Zp≅limZ/pnZ を与える(15 第5章 定理 5.9(1))。p 進位相での 0 の基本近傍 pnZp は射影極限の位相での 0 の基本近傍 {x∣xmodpn=0} と一致するので、これは同相でもあり、Zp は射有限環である。射影極限の環の単元は各成分が単元である整合的な族なので、Zp×≅lim(Z/pnZ)× も射有限群である。
定理 13.14 次は環の同型かつ同相写像である(右辺はすべての素数 p にわたる積で、積位相を入れる)。
Φ:Z→p∏Zp,(xn)n↦((xpk)k)p
証明. (xpk)k∈limkZ/pkZ=Zp なので Φ は環準同型で、各成分が射影の制限なので連続である。n=∏ppep とすると、中国剰余定理(第1章 定理 1.28)により xn は xpep(p∣n)で決まるので、Φ は単射である。逆に (yp)p(yp=(yp,k)k)に対し、xn∈Z/nZ を xn≡yp,ep(modpep)(p∣n)で定めると、n∣m なら xmmodn も同じ合同式をみたすので (xn)∈Z で、Φ((xn))=(yp)。よって Φ は全単射。Z はコンパクトで、∏pZp はハウスドルフ(異なる 2 点は座標の一つで分離できる)なので、Φ は同相写像である(03 第5章 定理 5.10)。□
特に Z×≅∏pZp× である。
命題 13.15 ι:Z→Z, a↦(amodn)n は単射環準同型で、像は稠密だが Z 全体ではない。
証明. a=0 なら n>∣a∣ で amodn=0 なので単射。空でない開基の元 {x∣xni=ai (1≤i≤k)} の元 x と N=lcm(n1,…,nk) をとり、a∈Z を xN の代表元とすると、amodni=xni=ai なので ι(a) はこの集合に属し、像は稠密である。∏pZp の元 e(e2=1、p=2 では ep=0)が Φ(ι(a)) なら、Z⊂Z2, Z⊂Z3 で a=1 かつ a=0 となり矛盾する。□
13.5 無限次ガロア理論の基本定理
定理 13.16(無限次ガロア理論の基本定理)L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) にクルル位相を入れる。
- 写像 H↦LH と M↦Gal(L/M) は、G の閉部分群全体と L/K の中間体全体の間の、互いに逆で包含関係を逆転する全単射である。
- 任意の部分群 H について Gal(L/LH)=H(H の閉包)である。
- 中間体 M について、M/K が有限次 ⟺ Gal(L/M) が開部分群。このとき [G:Gal(L/M)]=[M:K]。
- σ∈G について σGal(L/M)σ−1=Gal(L/σ(M))。M/K がガロア拡大 ⟺ Gal(L/M)⊴G であり、このとき制限 σ↦σ∣M は位相群の同型 G/Gal(L/M)≅Gal(M/K) を誘導する(左辺は商位相、右辺はクルル位相)。
証明. (a) 中間体 M について LGal(L/M)=M:補題 13.3(2) より L/M はガロア拡大なので、系 13.5(2) を L/M に適用すればよい。
(b) (2) の証明。Gal(L/LH) は閉(命題 13.10(2))で H を含むので H を含む。逆に σ∈Gal(L/LH) と基本近傍 σUE(E は有限次ガロア部分拡大)をとる。HE={h∣E∣h∈H} とおくと EHE=E∩LH は σ∣E で固定されるので、定理 9.9(1) より σ∣E∈HE。すなわち h∣E=σ∣E となる h∈H∩σUE がある。よって σ∈H。
(1) は (a)、(b) と命題 13.10(2) から従う。
(3) M/K が有限次なら Gal(L/M)=UM は開。逆に開なら UE⊂Gal(L/M) となる有限次の E があり(命題 13.10(1))、(a) より M=LGal(L/M)⊂LUE=E。M⊂E となる有限次ガロア部分拡大 E をとると、全射 G→Gal(E/K)(系 13.5(1))による Gal(E/M) の逆像が Gal(L/M) なので、[G:Gal(L/M)]=[Gal(E/K):Gal(E/M)]=[M:K](定理 9.9(2))。
(4) 前半は定理 9.9(3) と同様に確かめられる。M/K がガロア拡大なら、x∈M について σ(x) は mx,K の根で M に属するので、すべての σ で σ(M)⊂M、したがって σ(M)=M。逆にすべての σ で σ(M)=M なら、系 13.5(2) より mx,K(x∈M)の根はすべて M に属し、M/K は正規かつ分離的である。(1) より σ(M)=M⟺Gal(L/σ(M))=Gal(L/M) なので同値性が従う。このとき制限 G→Gal(M/K) は全射準同型(補題 13.4)で核は Gal(L/M)、基本開集合 ρGal(M/F)(F⊂M は有限次)の逆像は UF の剰余類なので連続である。誘導される全単射 G/Gal(L/M)→Gal(M/K) は連続で(03-topology 第3章 定理 3.16)、左辺はコンパクト(03 第5章 定理 5.6)、右辺はハウスドルフ(定理 13.11)なので同相写像である(同 定理 5.10)。□
注意
閉でない部分群 H は、閉包 H=H と同じ固定体をもつ((2) より LH=LGal(L/LH)=LH)ので、部分群全体と中間体全体は 1 対 1 に対応しない。有限次拡大では位相が離散なのですべての部分群が閉であり、定理 13.16 は定理 9.9 に一致する。
13.6 有限体の代数閉包
定理 13.17 フロベニウス写像 Fr(x)=xp は Gal(Fp/Fp) の元であり、Fr を 1 に写す位相群の同型 Gal(Fp/Fp)≅Z が存在する。
証明. Fr は単射な環準同型(第5章 命題 5.36)で、Fp を固定し、各有限集合 Fpn を全単射で写すので、Fp の自己同型である。E={Fpn}n は有限次ガロア部分拡大からなり(定理 9.14)、包含による順序は N の整除による順序と一致する(例 13.2)。定理 9.14 より Gal(Fpn/Fp) は Frn=Fr∣Fpn で生成される位数 n の巡回群で、ψn(Frnk)=kmodn は同型 Gal(Fpn/Fp)≅Z/nZ である。n∣m なら Frm∣Fpn=Frn なので、ψn は制限と還元 Z/mZ→Z/nZ と両立する。よって定理 13.8 と 13.11 から
Gal(Fp/Fp)≅nlimGal(Fpn/Fp)≅nlimZ/nZ=Z
(いずれも同型かつ同相)を得る。Fr は (1modn)n=ι(1) に写る。□
命題 13.18(閉でない部分群)G=Gal(Fp/Fp) の部分群 ⟨Fr⟩ は Z と同型で、閉部分群でない。その固定体は Fp であり、閉包は G である。
証明. 定理 13.17 の同型で ⟨Fr⟩ は ι(Z) に対応するので、命題 13.15 より Z と同型で、稠密だが G 全体ではない。閉包が G なので閉でない。固定体は {x∣xp=x}=Fp(第8章 定理 8.41)である。□
たとえば命題 13.15 の証明の e に対応する自己同型 σ は、Fp2 上では Fr、Fp3j 上では恒等写像で、σ=Frk ならすべての j で 3j∣k より k=0 となって矛盾するから、σ∈/⟨Fr⟩ である。
13.7 円分拡大と Zp×
a∈Zp と ζ∈μpn(1 の pn 乗根全体)について、ζa:=ζamodpn と定める。
定理 13.19 G=Gal(Q(μp∞)/Q) の各元 σ に対し、すべての n と ζ∈μpn について σ(ζ)=ζχ(σ) となる χ(σ)∈Zp× がただ 1 つ存在し、χ:G→Zp× は位相群の同型である。
証明. E={Q(ζpn)}n は和集合が Q(μp∞) の増大列で、σ(ζpn)=ζpnχn(σ) で定まる χn:Gal(Q(ζpn)/Q)→(Z/pnZ)× は同型である(定理 9.18)。σ(ζpn+1)=ζpn+1a なら σ(ζpn)=σ(ζpn+1)p=ζpna なので、χn は制限と還元 (Z/pn+1Z)×→(Z/pnZ)× と両立する。定理 13.8、13.11 と例 13.13 より
G≅nlimGal(Q(ζpn)/Q)≅nlim(Z/pnZ)×≅Zp×
(同型かつ同相)で、この合成が χ である。μpn の元は ζpn のべきなので σ(ζ)=ζχ(σ) が成り立ち、一意性は χ(σ)modpn が σ(ζpn) で決まることによる。□
同様に Q(μ∞)=⋃nQ(ζn) について Gal(Q(μ∞)/Q)≅limn(Z/nZ)×=Z× である。クロネッカー–ウェーバーの定理(15 第4章 定理 4.14。主張のみ)によれば Q の有限次アーベル拡大はある Q(ζm) に含まれるので、有限次アーベル拡大すべての合成体 Qab⊂Q は Q(μ∞) に一致し、Gal(Qab/Q)≅Z× である(類体論。15 第7章)。
例 13.20(円分 Zp 拡大)p を奇素数とすると Zp×=μp−1×(1+pZp)、1+pZp≅Zp である(15 第5章 定理 5.14)。有限部分群 Δ=χ−1(μp−1) は閉かつ正規(G は可換)なので、Q∞=Q(μp∞)Δ は Q 上ガロア拡大で Gal(Q∞/Q)≅Zp×/μp−1≅Zp(定理 13.16(4))。Zp の閉部分群は {0} と pnZp だけなので(問題 13.5)、Q∞ 以外の中間体は、各 n≥0 についてただ 1 つの pn 次の体 Qn である。p=3 では χ(c)=−1(c は複素共役)より Δ={1,c}、Q∞=Q(μ3∞)∩R で、Q1=Q(ζ9+ζ9−1) は x3−3x+1 の根で生成される(問題 9.3)。この Q∞/Q を円分 Zp 拡大 (cyclotomic Zp-extension) といい、岩澤理論の出発点となる。p=2 でも定理 13.19 はそのまま成り立つが、Z2× の構造が異なり、Z2×={±1}×(1+4Z2)、1+4Z2≅Z2 である(15 第5章 定理 5.14(3))。そこで Δ=χ−1({±1})={1,c} とすると、同様に Q∞=Q(μ2∞)∩R は円分 Z2 拡大で、Q1=Q(ζ8+ζ8−1)=Q(2) である。
13.8 絶対ガロア群とその表現
代数閉包 K の中で K 上分離的な元の全体 Ksep を K の分離閉包 (separable closure) という(分離的な元 α,β の相異なる最小多項式の積の分解体は分離拡大なので(定理 9.6)、Ksep は体である)。Ksep/K はガロア拡大で、K が完全体なら Ksep=K。
定義 13.21(絶対ガロア群, absolute Galois group)GK=Gal(Ksep/K) を K の絶対ガロア群という。
GFp≅Z(定理 13.17)、GR=Gal(C/R)≅Z/2Z(定理 9.31)、GC=1 である。GQ は非常に複雑な群で、定理 13.16(3)(4) により、開正規部分群 U による商 GQ/U が Q の有限次ガロア拡大のガロア群全体を与える。第12章の逆ガロア問題は、どんな有限群が GQ の連続な商になるかという問題であり、クロネッカー–ウェーバーの定理は GQ の最大の可換な連続商が Z× であることを述べている。GQ は主にその表現を通して調べられる。
定義 13.22(ガロア表現, Galois representation)A を位相環(Zℓ, Qℓ, C, 有限体など)とする。連続な準同型 ρ:GK→GLn(A) を GK の n 次元のガロア表現という。
命題 13.23(円分指標, cyclotomic character)ℓ を charK と異なる素数とし、μℓn⊂Ksep を 1 の ℓn 乗根全体とする。各 σ∈GK に対し、すべての n と ζ∈μℓn について σ(ζ)=ζχℓ(σ) となる χℓ(σ)∈Zℓ× がただ 1 つ存在し、χℓ:GK→Zℓ×=GL1(Zℓ) は連続な準同型である。これを K の ℓ 進円分指標という。
証明. ℓ=charK より xℓn−1 は分離的なので、μℓn⊂Ksep は位数 ℓn の巡回群である(第8章 定理 8.40)。σ はその自己同型を引き起こすので σ(ζ)=ζan(an∈(Z/ℓnZ)×)と書け(第2章 命題 2.51)、定理 13.19 の証明と同様に (an) は整合的である。χℓ(σ)=(an)n とおけばよい。1+ℓnZℓ の逆像は開部分群 Gal(Ksep/K(μℓn)) なので連続である。□
K=Q では、χℓ は Gal(Q(μℓ∞)/Q) を経由し、定理 13.19 より全射である。素数 p=ℓ は各 Q(ζℓn) で不分岐で、そのフロベニウス元 ζ↦ζp(15 第2章 定理 2.29)は制限について両立するので、Gal(Q(μℓ∞)/Q) の元 Frobp が定まり(定理 13.8)、χℓ(Frobp)=p である。K=Fp では χℓ(Fr)=p である。
テイト加群 (Tate module) Tℓ(μ)=limnμℓn(推移写像は ζ↦ζℓ)は Zℓ と同型な Zℓ 加群で、GK は χℓ 倍で作用する。楕円曲線 E/K の等分点では 2 次元の表現が得られる。ℓ=charK なら E[ℓn]≅(Z/ℓnZ)2 で(21 第3章 定理 3.23)、その点の座標は Ksep に属する。ℓ 倍写像による射影極限 Tℓ(E)=limnE[ℓn] は階数 2 の自由 Zℓ 加群である。GK は点の座標に作用して E[ℓn] の自己同型を引き起こし、その核は有限次拡大 K(E[ℓn])(E[ℓn] の点の座標で生成される体)に対応する開部分群なので、連続な表現
ρE,ℓ:GK→Aut(Tℓ(E))≅GL2(Zℓ)
を得る。ヴェイユ対により detρE,ℓ=χℓ である。K=Q で E が p=ℓ で良い還元をもつなら、p は各 Q(E[ℓn]) で不分岐であり(このことを ρE,ℓ は p で不分岐であるという)、p の上の素イデアルのフロベニウス元を n について両立するようにとったもの(15 第2章 命題 2.25(3))を Frobp とすると、ρE,ℓ(Frobp) の固有多項式は x2−apx+p(ap=p+1−∣E~(Fp)∣)である。Frobp は共役を除いて定まり、固有多項式はそのとり方によらない(以上は主張のみ)。たとえば導手 11 の曲線 y2+y=x3−x2−10x−20 と ℓ=2 では、∣E~(F2)∣=5, a2=−2 より固有多項式は x2+2x+2 である(ellap で確認)。この視点はラングランズ・プログラム(15 第7章 7.8 節)へとつながっている。
まとめ
- 正規かつ分離的な代数拡大がガロア拡大で、ガロア群は射影極限 limGal(E/K)(E は有限次ガロア部分拡大)と同型である。
- クルル位相は Gal(L/E)(E は有限次)の剰余類を開基とする位相で、ガロア群はコンパクト・ハウスドルフ・完全不連結な射有限群になる(チコノフの定理)。
- Zp=limZ/pnZ、Z=limZ/nZ≅∏pZp。Z は Z で稠密だが閉でない。
- 基本定理:閉部分群と中間体が 1 対 1 に対応し、開部分群は有限次の中間体に、閉正規部分群はガロアな中間体に対応する。Gal(L/LH)=H。
- Gal(Fp/Fp)≅Z(Fr↦1)。⟨Fr⟩≅Z は閉でなく、固定体は Fp である。
- Gal(Q(μp∞)/Q)≅Zp×、Gal(Qab/Q)≅Z×(クロネッカー–ウェーバー)。
- 絶対ガロア群の表現の例に、円分指標 χℓ:GK→Zℓ× と楕円曲線のテイト加群による ρE,ℓ:GK→GL2(Zℓ) がある。
演習問題
問題 13.1 ★ L/K をガロア拡大とする。{1} がクルル位相で開集合であるための必要十分条件は、L/K が有限次であることを示せ。
解答
有限次なら UL={1} は開。逆に {1} が開なら、命題 13.10(1) よりある有限次部分拡大 E で UE=Gal(L/E)={1}。定理 13.16 の証明 (a) より L=LGal(L/E)=E なので、L/K は有限次である。
問題 13.2 ★ Z は整域でないが、加法群としてねじれをもたない(n∈N, nx=0 なら x=0)ことを示せ。
解答
定理 13.14 により ∏pZp で考える。命題 13.15 の証明の元 e について e=0,1 で e(1−e)=0 なので、整域でない。nx=0 なら各成分で nxp=0 であり、Zp は整域(Qp の部分環)で n=0 なので xp=0。
問題 13.3 ★ Gal(Fp/Fp)≅Z の開部分群は nZ(n∈N)で尽くされ、その固定体は Fpn であることを示せ。
解答
定理 13.16(1)(3) と例 13.2 より、開部分群は Gal(Fp/Fpn)(n∈N)で尽くされ、これは定理 13.17 の同型で {x∈Z∣xn=0} に対応する(xn∈Z/nZ は x の成分)。これが nZ に等しいことを示す(⊃ は明らか)。xn=0 とし、定理 13.14 の Φ で Φ(x)=(zq)q(zq∈Zq)とおく。q∣n なら zqmodqvq(n)=xqvq(n)=xnmodqvq(n)=0 より zq∈qvq(n)Zq で、n=qvq(n)uq(uq∈Zq×)である。q∤n なら n∈Zq× である。よって各 q で wq=zq/n∈Zq が定まり、y=Φ−1((wq)q) とおけば x=ny。
問題 13.4 ★ 複素共役 c(の Q への制限)について χℓ(c)=−1 を示せ。また χℓ:GQ→Zℓ× の核の固定体を求めよ。
解答
∣ζ∣=1 なので c(ζ)=ζ=ζ−1 で、χℓ(c)=−1。χℓ は Gal(Q(μℓ∞)/Q) を経由し、そこで単射(定理 13.19)なので、Kerχℓ=Gal(Q/Q(μℓ∞)) で、固定体は Q(μℓ∞)(定理 13.16(1))。
問題 13.5 ★★ Zp(加法群)の閉部分群は {0} と pnZp(n≥0)だけであることを示せ。
解答
H={0} を閉部分群とし、H の元の p 進付値の最小値 n をとって h=pnu∈H(u∈Zp×)とする。H⊂pnZp である。Z は Zp で稠密(15 第5章 命題 5.8(3))で y↦yh は連続なので、Zh⊂H の閉包 Zph=pnZp は閉集合 H に含まれる。よって H=pnZp。
問題 13.6 ★★ 素数 ℓ に対し F=⋃kFpℓk とおく。Gal(F/Fp)≅Zℓ と、Gal(Fp/F) が、定理 13.17 と定理 13.14 の同型 Gal(Fp/Fp)≅Z≅∏qZq で閉部分群 {(zq)q∣zℓ=0} に対応することを示せ。
解答
F は有限次ガロア拡大の増大列の和集合なので、ガロア拡大である(補題 13.3)。定理 13.17 の証明と同様に Gal(F/Fp)≅limkZ/ℓkZ=Zℓ。Gal(Fp/F)=⋂kGal(Fp/Fpℓk) は問題 13.3 より ⋂kℓkZ に対応する。∏qZq では ℓ は q=ℓ の成分で単元だから、ℓkZ は {(zq)q∣zℓ∈ℓkZℓ} に対応し、⋂kℓkZℓ={0} より共通部分は {(zq)q∣zℓ=0} である。
問題 13.7 ★★ L=Q(p∣p は素数) とする。相異なる素数 p1,…,pk について [Q(p1,…,pk):Q]=2k となることは認める。Gal(L/Q)≅∏pZ/2Z を示し、有限個の成分を除いて 0 である元全体のなす部分群 H は閉でなく、その固定体は Q であることを示せ。
解答
素数の有限集合 S に対し ES=Q(p∣p∈S) は ∏p∈S(x2−p) の分解体で、σ∈Gal(ES/Q) は符号 σ(p)=(−1)εpp で決まる。符号の組は 2∣S∣=[ES:Q] 通りなのですべて実現され、Gal(ES/Q)≅(Z/2Z)S で、制限は座標の射影に対応する。定理 13.8、13.11 より Gal(L/Q)≅limS(Z/2Z)S=∏pZ/2Z。基本開集合 {x∣x∣S=a} は S の外の成分を 0 とした H の元を含むので H は稠密で、すべての成分が 1 の元は H に属さないので H は閉でない。定理 13.16(2) より LH=LH=Q。
問題 13.8 ★★★ 無限次ガロア拡大 L/K のガロア群 Gal(L/K) は非可算集合であることを示せ。
解答
有限次ガロア部分拡大の真の増大列 E1⊊E2⊊⋯ を作る(x∈L∖Ek をとり、Ek(x) を含む有限次ガロア部分拡大を Ek+1 とする。補題 13.3(2))。E∞=⋃kEk はガロア拡大で、制限 Gal(L/K)→Gal(E∞/K)≅limkGal(Ek/K) は全射(補題 13.4、定理 13.8)なので、右辺が非可算であることを示せばよい。制限 Gal(Ek+1/K)→Gal(Ek/K) は全射で、各元の逆像は [Ek+1:Ek]≥2 個ある。各段で逆像の元を 2 つずつ選ぶと、{0,1}N から射影極限への単射が作れる(異なる 0-1 列は、初めて異なる段で異なる元を選ぶ)。{0,1}N は R と対等なので非可算である(00-foundations 第5章 定理 5.18、定理 5.25)。