Lemma

第12章ガロア群の計算と逆ガロア問題

目安 10〜13 時間定理など 15演習 8 問
ここまでの道

この章の目標

  • 多項式のガロア群を根の置換群として扱い、S4\mathfrak{S}_4・S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群を分類できる
  • デデキントの定理により、 mod p\bmod p での因数分解の形からガロア群の元の型を読み取れる
  • 判定法と還元を組み合わせて、根を書き下せない多項式のガロア群を決定できる
  • チェボタレフの密度定理の主張を理解し、数値実験で確かめられる
  • 有限アーベル群と対称群が Q\mathbb{Q} 上のガロア群として実現できることを証明し、逆ガロア問題の現状を説明できる

前提:第9章(ガロア理論の基本定理、円分体)、第10章(判別式)、第4章(対称群)、第3章(シローの定理)。12.4 節と 12.6 節では 15 第2章 のフロベニウス元と 15 第6章 のチェボタレフの密度定理を参照する。

第9章では、x3−2x^3 - 2 や円分多項式のガロア群を、根を書き下して決定した。では根を書き下せない多項式、たとえば x5−x−1x^5 - x - 1 のガロア群はどう求めればよいだろうか。本章の主役は、整数係数の多項式を素数 pp を法として還元し、Fp\mathbb{F}_p 上の因数分解の形からガロア群の元の型を読み取るデデキントの定理である。有限体上の因数分解は有限回の計算でできるので、これはガロア群を「下から」押さえる強力な道具になる。どの型がどれだけの頻度で現れるかには、チェボタレフの密度定理が答える。

後半では逆に、有限群 GG が与えられたとき、ガロア群が GG と同型になる Q\mathbb{Q} のガロア拡大は存在するかを考える(逆ガロア問題)。有限アーベル群と対称群については肯定的に解けるが、一般の有限群については未解決である。

本章では、多項式 f∈K[x]f \in K[x] のガロア群 Gal⁡(f)\operatorname{Gal}(f) を考えるとき ff は分離的とする(第9章 定義 9.5)。

12.1 置換群としてのガロア群

f∈K[x]f \in K[x] を nn 次の分離的な多項式、α1,…,αn\alpha_1, \dots, \alpha_n をその根とする。σ∈Gal⁡(f)\sigma \in \operatorname{Gal}(f) に σ(αi)=απ(i)\sigma(\alpha_i) = \alpha_{\pi(i)} で定まる π∈Sn\pi \in \mathfrak{S}_n を対応させると単射準同型 Gal⁡(f)→Sn\operatorname{Gal}(f) \to \mathfrak{S}_n が得られる(第9章 注意 9.8)。以下 Gal⁡(f)\operatorname{Gal}(f) をこの像と同一視する。根の番号を αi′=αρ(i)\alpha'_i = \alpha_{\rho(i)}(ρ∈Sn\rho \in \mathfrak{S}_n)とつけかえると σ(αi′)=αρ−1πρ(i)′\sigma(\alpha'_i) = \alpha'_{\rho^{-1}\pi\rho(i)} なので、像は ρ−1Gal⁡(f)ρ\rho^{-1}\operatorname{Gal}(f)\rho に変わる。つまり Gal⁡(f)≤Sn\operatorname{Gal}(f) \leq \mathfrak{S}_n は共役を除いて定まり、各元の型(巡回置換分解の長さの組。第4章 4.5 節)は番号のつけ方によらない。

定義 12.1(推移的部分群)部分群 G≤SnG \leq \mathfrak{S}_n の {1,…,n}\lbrace 1, \dots, n \rbrace への作用が推移的であるとき(第3章 定義 3.4)、GG を推移的部分群 (transitive subgroup) という。

命題 12.2 f∈K[x]f \in K[x] を nn 次の分離的な多項式、G=Gal⁡(f)≤SnG = \operatorname{Gal}(f) \leq \mathfrak{S}_n とする。

  1. ff が既約   ⟺  \iff GG は推移的。このとき nn は ∣G∣\lvert G \rvert を割る。
  2. char⁡K≠2\operatorname{char} K \neq 2 のとき、G⊂AnG \subset \mathfrak{A}_n   ⟺  \iff ff の判別式 D(f)D(f) が KK の元の平方である。

証明. (1) 前半は第9章 注意 9.8、後半は軌道–固定部分群定理(第3章 定理 3.6)による。(2) は第10章 定理 10.25(2) である(δ=∏i<j(αi−αj)\delta = \prod_{i < j}(\alpha_i - \alpha_j) は σ(δ)=sgn⁡(σ)δ\sigma(\delta) = \operatorname{sgn}(\sigma)\delta をみたし、最高次係数を ana_n とすると D(f)=(ann−1δ)2D(f) = (a_n^{n-1}\delta)^2)。□\square

12.2 S4\mathfrak{S}_4 と S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群

命題 12.2 より、既約な 4 次式・5 次式のガロア群は S4\mathfrak{S}_4・S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群である。それらを共役を除いてすべて求める。

補題 12.3 n≥3n \geq 3 ならば、Sn\mathfrak{S}_n の指数 2 の部分群は An\mathfrak{A}_n だけである。

証明. HH を指数 2 の部分群とすると、H⊴SnH \trianglelefteq \mathfrak{S}_n で Sn/H\mathfrak{S}_n/H は位数 2 の群なので、すべての gg について g2∈Hg^2 \in H。長さ 3 の巡回置換 cc は c3=ec^3 = e より c=(c2)2∈Hc = (c^2)^2 \in H。An\mathfrak{A}_n は長さ 3 の巡回置換で生成される(第4章 命題 4.20(3))ので An⊂H\mathfrak{A}_n \subset H で、位数を比べて H=AnH = \mathfrak{A}_n。□\square

S4\mathfrak{S}_4 の部分群として、V={e,(1 2)(3 4),(1 3)(2 4),(1 4)(2 3)}V = \lbrace e, (1\ 2)(3\ 4), (1\ 3)(2\ 4), (1\ 4)(2\ 3) \rbrace(クラインの四元群。第3章 例 3.24(2))、C4=⟨(1 2 3 4)⟩C_4 = \langle (1\ 2\ 3\ 4) \rangle、D4=⟨(1 2 3 4),(2 4)⟩D_4 = \langle (1\ 2\ 3\ 4), (2\ 4) \rangle(位数 8 の二面体群。例 9.13 の x4−2x^4 - 2 のガロア群)を考える。

定理 12.4(S4\mathfrak{S}_4 の推移的部分群)S4\mathfrak{S}_4 の推移的部分群は、共役を除いて S4,A4,D4,C4,V\mathfrak{S}_4, \mathfrak{A}_4, D_4, C_4, V の 5 つであり、これらは互いに共役でない。

証明. VV では 11 が 3 つの非単位元で 2,3,42, 3, 4 に移るので推移的である。(1 2 3 4)2=(1 3)(2 4)(1\ 2\ 3\ 4)^2 = (1\ 3)(2\ 4), (1 2 3 4)(2 4)=(1 2)(3 4)(1\ 2\ 3\ 4)(2\ 4) = (1\ 2)(3\ 4) より V⊂D4V \subset D_4 なので、D4,A4,S4D_4, \mathfrak{A}_4, \mathfrak{S}_4 も推移的で、C4C_4 も推移的である。位数は 4,4,8,12,244, 4, 8, 12, 24 で、位数 4 の 2 つは巡回群と非巡回群なので共役でない。

逆に GG を推移的部分群とすると、軌道–固定部分群定理より 4∣∣G∣4 \mid \lvert G \rvert なので ∣G∣∈{4,8,12,24}\lvert G \rvert \in \lbrace 4, 8, 12, 24 \rbrace。∣G∣=24,12\lvert G \rvert = 24, 12 なら G=S4,A4G = \mathfrak{S}_4, \mathfrak{A}_4(補題 12.3)。∣G∣=8\lvert G \rvert = 8 なら GG はシロー 2 部分群なので D4D_4 と共役である(第3章 定理 3.22)。∣G∣=4\lvert G \rvert = 4 なら、軌道–固定部分群定理より各点の固定部分群は自明で、単位元以外の元は固定点をもたないので、型は (4)(4) か (2,2)(2, 2) である。長さ 4 の巡回置換 σ\sigma を含めば G=⟨σ⟩G = \langle \sigma \rangle で、長さ 4 の巡回置換は互いに共役(第4章 命題 4.20(1))だから GG は C4C_4 と共役。含まなければ GG の 3 つの非単位元は型 (2,2)(2, 2) の 3 つの元に一致し、G=VG = V。□\square

S5\mathfrak{S}_5 では、{1,…,5}\lbrace 1, \dots, 5 \rbrace を Z/5Z\mathbb{Z}/5\mathbb{Z} と同一視し(55 を 00 とみる)、a∈(Z/5Z)×a \in (\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^\times, b∈Z/5Zb \in \mathbb{Z}/5\mathbb{Z} に対し τa,b(i)=ai+b\tau_{a,b}(i) = ai + b とおく。σ=(1 2 3 4 5)=τ1,1\sigma = (1\ 2\ 3\ 4\ 5) = \tau_{1,1}、τ−1,0=(1 4)(2 3)\tau_{-1,0} = (1\ 4)(2\ 3)、τ2,0=(1 2 4 3)\tau_{2,0} = (1\ 2\ 4\ 3) である。

  • C5={τ1,b}=⟨σ⟩C_5 = \lbrace \tau_{1,b} \rbrace = \langle \sigma \rangle(位数 5)
  • D5={τ±1,b}=⟨σ,(1 4)(2 3)⟩D_5 = \lbrace \tau_{\pm 1,b} \rbrace = \langle \sigma, (1\ 4)(2\ 3) \rangle(位数 10。正 5 角形の対称性の群)
  • F20={τa,b}=⟨σ,(1 2 4 3)⟩F_{20} = \lbrace \tau_{a,b} \rbrace = \langle \sigma, (1\ 2\ 4\ 3) \rangle(位数 20。第4章 例 4.7(4) のアフィン群)

定理 12.5(S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群)S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群は、共役を除いて S5,A5,F20,D5,C5\mathfrak{S}_5, \mathfrak{A}_5, F_{20}, D_5, C_5 の 5 つであり、これらは互いに共役でない。

証明. 5 つとも σ\sigma を含むので推移的で、位数 120,60,20,10,5120, 60, 20, 10, 5 が相異なるので互いに共役でない。GG を推移的部分群とすると 5∣∣G∣5 \mid \lvert G \rvert、∣G∣∣120\lvert G \rvert \mid 120 なので、GG のシロー 5 部分群 PP は位数 5 で、S5\mathfrak{S}_5 のシロー 5 部分群でもある。S5\mathfrak{S}_5 の位数 5 の元は長さ 5 の巡回置換 2424 個なので、位数 5 の部分群は 24/4=624/4 = 6 個で、互いに共役であり、その正規化群の位数は 120/6=20120/6 = 20 である(第3章 定理 3.22)。GG を共役で取りかえて P=⟨σ⟩P = \langle \sigma \rangle としてよい。τa,bστa,b−1=τ1,a=σa\tau_{a,b}\sigma\tau_{a,b}^{-1} = \tau_{1,a} = \sigma^a なので F20⊂N(P)F_{20} \subset N(P) で、位数を比べて N(P)=F20N(P) = F_{20}。

(i) P⊴GP \trianglelefteq G のとき:G⊂N(P)=F20G \subset N(P) = F_{20}。τa,b↦a\tau_{a,b} \mapsto a は全射準同型 F20→(Z/5Z)×F_{20} \to (\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^\times で、核は PP である。(Z/5Z)×(\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^\times は 22 で生成される位数 4 の巡回群で、部分群は {1}\lbrace 1 \rbrace, {±1}\lbrace \pm 1 \rbrace, 全体の 3 つなので、対応定理(第2章 定理 2.47)より PP を含む F20F_{20} の部分群は C5,D5,F20C_5, D_5, F_{20} である。

(ii) PP が GG で正規でないとき:n5(G)≠1n_5(G) \neq 1(第3章 系 3.23)、n5(G)≡1(mod5)n_5(G) \equiv 1 \pmod 5、n5(G)∣∣G∣/5n_5(G) \mid \lvert G \rvert/5(2424 の約数)より n5(G)=6n_5(G) = 6。n5(G)n_5(G) は ∣G∣\lvert G \rvert を割るので 30∣∣G∣30 \mid \lvert G \rvert、∣G∣∈{30,60,120}\lvert G \rvert \in \lbrace 30, 60, 120 \rbrace。位数 30 の群では n5=1n_5 = 1(第3章 例 3.28(2))なので ∣G∣≠30\lvert G \rvert \neq 30。補題 12.3 より G=A5G = \mathfrak{A}_5 または S5\mathfrak{S}_5。□\square

以下、型 (2,2,1)(2, 2, 1) を 22⋅12^2 \cdot 1、(1,1,1,1)(1, 1, 1, 1) を 141^4 のように略記する。τa,b\tau_{a,b}(a≠1a \neq 1)は固定点 b/(1−a)b/(1 - a) をただ 1 つもち、残り 4 点を i↦aii \mapsto ai と同じ型で動かすので、型は a=−1a = -1 なら 22⋅12^2 \cdot 1、a=±2a = \pm 2 なら 4⋅14 \cdot 1 である。こうして各群の型ごとの元の個数は次のようになる。

GG 位数 141^4 2⋅122 \cdot 1^2 222^2 3⋅13 \cdot 1 44
VV 4 1 0 3 0 0
C4C_4 4 1 0 1 0 2
D4D_4 8 1 2 3 0 2
A4\mathfrak{A}_4 12 1 0 3 8 0
S4\mathfrak{S}_4 24 1 6 3 8 6
GG 位数 151^5 2⋅132 \cdot 1^3 22⋅12^2 \cdot 1 3⋅123 \cdot 1^2 3⋅23 \cdot 2 4⋅14 \cdot 1 55
C5C_5 5 1 0 0 0 0 0 4
D5D_5 10 1 0 5 0 0 0 4
F20F_{20} 20 1 0 5 0 0 10 4
A5\mathfrak{A}_5 60 1 0 15 20 0 0 24
S5\mathfrak{S}_5 120 1 10 15 20 20 30 24

たとえば、長さ 3 の巡回置換を含む S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群は A5\mathfrak{A}_5 か S5\mathfrak{S}_5 であり、互換を含むものは S5\mathfrak{S}_5 だけである。

12.3 対称群であるための判定法

定理 12.6 n≥2n \geq 2 とする。推移的部分群 G≤SnG \leq \mathfrak{S}_n が長さ n−1n - 1 の巡回置換と互換を含むならば、G=SnG = \mathfrak{S}_n である。

証明. 番号をつけかえて、長さ n−1n - 1 の巡回置換は σ=(1 2 ⋯ n−1)\sigma = (1\ 2\ \cdots\ n{-}1) としてよい。GG の互換 (i j)(i\ j) に対し、推移性から g(i)=ng(i) = n となる g∈Gg \in G があり、g(i j)g−1=(n k)g(i\ j)g^{-1} = (n\ k)(k=g(j)≠nk = g(j) \neq n)が GG に属する(第3章 補題 3.12)。σ\sigma は {1,…,n−1}\lbrace 1, \dots, n - 1 \rbrace に推移的に作用するので、σm(n k)σ−m=(n σm(k))\sigma^m(n\ k)\sigma^{-m} = (n\ \sigma^m(k)) により、すべての (l n)(l\ n)(1≤l≤n−11 \leq l \leq n - 1)が GG に属する。a,b≠na, b \neq n について (a b)=(a n)(b n)(a n)(a\ b) = (a\ n)(b\ n)(a\ n) なので GG はすべての互換を含み、互換は Sn\mathfrak{S}_n を生成する(第4章 命題 4.20(2))。□\square

注意 12.7 n=pn = p が素数なら、推移的部分群の位数は pp で割り切れるので、コーシーの定理(第3章 定理 3.19)により長さ pp の巡回置換を含む。よって補題 9.25 から、推移的で互換を含む G≤SpG \leq \mathfrak{S}_p は Sp\mathfrak{S}_p である(定理 9.26 の証明の論法)。

12.4 デデキントの定理

f∈Z[x]f \in \mathbb{Z}[x] の係数を  mod p\bmod p で還元した多項式を f‾∈Fp[x]\overline{f} \in \mathbb{F}_p[x] と書く。

定理 12.8(デデキントの定理, Dedekind's theorem)f∈Z[x]f \in \mathbb{Z}[x] を nn 次のモニックな既約多項式、G=Gal⁡(f)≤SnG = \operatorname{Gal}(f) \leq \mathfrak{S}_n とし、素数 pp は D(f)D(f) を割らないとする。Fp[x]\mathbb{F}_p[x] での既約分解を f‾=g1g2⋯gr\overline{f} = g_1g_2\cdots g_r(gig_i はモニックな既約多項式)、di=deg⁡gid_i = \deg g_i とすると、g1,…,grg_1, \dots, g_r は相異なり、GG は型が (d1,…,dr)(d_1, \dots, d_r) の元を含む。

証明の概略. (1) 判別式は係数の整数係数多項式なので(第10章 命題 10.9(2)。ff はモニックなので f‾\overline{f} も nn 次)、D(f)D(f) を  mod p\bmod p で還元したものは D(f‾)D(\overline{f}) に等しく、00 でない。よって f‾\overline{f} は重根をもたず(命題 10.9(1))、gig_i は相異なる。

(2) L⊂CL \subset \mathbb{C} を ff の分解体、OL\mathcal{O}_L をその整数環、P\mathfrak{P} を pp の上にある OL\mathcal{O}_L の素イデアルとする(15 第2章)。根 αi\alpha_i は OL\mathcal{O}_L に属し、剰余体 κ=OL/P\kappa = \mathcal{O}_L/\mathfrak{P} は標数 pp の有限体で、κ[x]\kappa[x] で f‾=∏i(x−α‾i)\overline{f} = \prod_i (x - \overline{\alpha}_i)(α‾i\overline{\alpha}_i は αi mod P\alpha_i \bmod \mathfrak{P})である。(1) より α‾1,…,α‾n\overline{\alpha}_1, \dots, \overline{\alpha}_n は相異なる。

(3) このとき pp は LL で不分岐であり、すべての y∈OLy \in \mathcal{O}_L について σ(y)≡yp(modP)\sigma(y) \equiv y^p \pmod{\mathfrak{P}} をみたす σ∈G\sigma \in G(フロベニウス元 Frob⁡P\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}})がただ 1 つ存在する(15 第2章 定理 2.23、定義 2.24)。

(4) σ(αi)\sigma(\alpha_i) の還元は (α‾i)p(\overline{\alpha}_i)^p なので、全単射 αi↦α‾i\alpha_i \mapsto \overline{\alpha}_i のもとで、σ\sigma の根への作用は κ\kappa の pp 乗写像 y↦ypy \mapsto y^p の作用と一致する。gig_i の根は β,βp,…,βpdi−1\beta, \beta^p, \dots, \beta^{p^{d_i - 1}} の did_i 個で βpdi=β\beta^{p^{d_i}} = \beta(第9章 例 9.15(2))なので、pp 乗写像は gig_i の根を長さ did_i の巡回置換で動かす。よって σ\sigma の型は (d1,…,dr)(d_1, \dots, d_r) である。

(2)〜(4) は 15 第2章 命題 2.27(そこでは判別式を disc⁡\operatorname{disc} と書く)の証明そのもので、整数環と分解群の理論はそちらに譲った。□\square

pp の上の素イデアルを取りかえるとフロベニウス元は GG の中で共役に変わる(15 第2章 命題 2.25(2))ので、型は pp だけで決まる。デデキントの定理は GG に含まれる元を教えるだけで、GG を上から押さえるには判別式(命題 12.2(2))などの別の情報が要る。

系 12.9 ff を定理 12.8 のとおりとし、n≥2n \geq 2 とする。

  1. ある素数 p∤D(f)p \nmid D(f) について f‾\overline{f} が既約ならば、GG は長さ nn の巡回置換を含む。
  2. GG が長さ nn の巡回置換を含まなければ、ff はすべての素数 pp を法として可約である。

証明. (1) は定理 12.8 そのもの。(2) p∤D(f)p \nmid D(f) なら (1) の対偶による。p∣D(f)p \mid D(f) なら f‾\overline{f} は重根をもつが、Fp\mathbb{F}_p は完全体(第8章 定理 8.39)なので Fp\mathbb{F}_p 上の既約多項式は重根をもたず、f‾\overline{f} は既約でない。□\square

12.5 計算例

例 12.10(x5−x−1x^5 - x - 1 )f=x5−x−1f = x^5 - x - 1 の判別式は 2869=19⋅1512869 = 19 \cdot 151 である。

  •  mod 3\bmod 3:f‾=x5+2x+2\overline{f} = x^5 + 2x + 2 は F3\mathbb{F}_3 に根をもたず(x=0,1,2x = 0, 1, 2 で値はすべて 22)、F3\mathbb{F}_3 上の 2 次の既約多項式 x2+1x^2 + 1, x2+x+2x^2 + x + 2, x2+2x+2x^2 + 2x + 2 のどれでも割り切れないので既約である。よって ff は Q\mathbb{Q} 上既約で(第6章 定理 6.27)、GG は長さ 5 の巡回置換を含む。
  •  mod 2\bmod 2:f‾=x5+x+1=(x2+x+1)(x3+x2+1)\overline{f} = x^5 + x + 1 = (x^2 + x + 1)(x^3 + x^2 + 1) で、どちらの因子も根をもたないので既約。GG は型 (3,2)(3, 2) の元 τ\tau を含み、τ3\tau^3 は互換である。

注意 12.7 より Gal⁡(f)=S5\operatorname{Gal}(f) = \mathfrak{S}_5。f′=5x4−1f' = 5x^4 - 1 で、極大値 f(−5−1/4)≈−0.465f(-5^{-1/4}) \approx -0.465 が負なので ff の実根は 1 つだけであり、複素共役は型 22⋅12^2 \cdot 1 の元である。したがって第9章 定理 9.26 は使えないが、デデキントの定理ならこのように決定できる。型 4⋅14 \cdot 1 は p=23p = 23、2⋅132 \cdot 1^3 は p=163p = 163 で初めて現れ、1 次式の積に分解する最小の素数は p=1973p = 1973 である。

例 12.11(すべての素数を法として可約な既約多項式)x4+1=Φ8x^4 + 1 = \Phi_8 は既約で(定理 9.17)、ガロア群は (Z/8Z)×(\mathbb{Z}/8\mathbb{Z})^\times と同型で、すべての元の位数が 2 以下である。σa ⁣:ζ8k↦ζ8ak\sigma_a\colon \zeta_8^k \mapsto \zeta_8^{ak} は a≠1a \neq 1 なら 4 根すべてを動かすので型 222^2 で、G=VG = V である。長さ 4 の巡回置換を含まないので、系 12.9(2) より x4+1x^4 + 1 はすべての素数を法として可約である。より詳しく、奇素数 pp のフロベニウス元は σp\sigma_p なので(15 第2章 定理 2.29)、p≡1(mod8)p \equiv 1 \pmod 8 なら 1 次式 4 つ、それ以外なら 2 次式 2 つに分解する。第6章 定理 6.27 の後の注意で述べた事実の、ガロア理論による証明である(初等的な証明は第8章 問題 8.7)。

例 12.12(x5−5x+12x^5 - 5x + 12 )f=x5−5x+12f = x^5 - 5x + 12 は  mod 7\bmod 7 で既約なので Q\mathbb{Q} 上既約である。D(f)=21256=80002D(f) = 2^{12}5^6 = 8000^2 は平方数なので G⊂A5G \subset \mathfrak{A}_5(命題 12.2(2))。表より A5\mathfrak{A}_5 に含まれる推移的部分群は C5,D5,A5C_5, D_5, \mathfrak{A}_5 である(F20F_{20} は奇置換である長さ 4 の巡回置換を含む)。f′=5x4−5f' = 5x^4 - 5 で極小値 f(1)=8>0f(1) = 8 > 0 なので実根は 1 つだけで、複素共役は型 22⋅12^2 \cdot 1 の元だから G≠C5G \neq C_5。

D5D_5 と A5\mathfrak{A}_5 を区別するには、GG を上から押さえる必要がある。実根を α\alpha とすると、Q(α)\mathbb{Q}(\alpha) 上で

f(x)=(x−α)(x2−14(α4+α3+α2−3α−4)x−14(α4+α3+α2+5α−8))×(x2+14(α4+α3+α2+α−4)x−12(α3+α+2))\begin{aligned} f(x) = (x - \alpha) &\Bigl(x^2 - \tfrac{1}{4}(\alpha^4 + \alpha^3 + \alpha^2 - 3\alpha - 4)x - \tfrac{1}{4}(\alpha^4 + \alpha^3 + \alpha^2 + 5\alpha - 8)\Bigr) \\ &\times \Bigl(x^2 + \tfrac{1}{4}(\alpha^4 + \alpha^3 + \alpha^2 + \alpha - 4)x - \tfrac{1}{2}(\alpha^3 + \alpha + 2)\Bigr) \end{aligned}

と分解する(PARI/GP の nffactor で求めた。展開して α5=5α−12\alpha^5 = 5\alpha - 12 で次数を下げれば確かめられる)。G=A5G = \mathfrak{A}_5 なら、α\alpha の固定部分群 Gal⁡(L/Q(α))\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}(\alpha)) は A4\mathfrak{A}_4 と同型で残り 4 根に推移的に作用するから、f/(x−α)f/(x - \alpha) は Q(α)\mathbb{Q}(\alpha) 上既約なはずである(第9章 注意 9.8 を Q(α)\mathbb{Q}(\alpha) 上で使う)。これは上の分解に反するので G=D5G = D_5 である。D5D_5 は可解群なので、方程式 x5−5x+12=0x^5 - 5x + 12 = 0 は冪根で解ける(定理 9.24)。

以上の例と次節の例のガロア群は、PARI/GP の polgalois でも確かめた。

12.6 チェボタレフの密度定理

各型がどれだけの割合の素数で現れるかを記述するのが次の定理である。

定理 12.13(チェボタレフの密度定理, Chebotarev density theorem)f∈Z[x]f \in \mathbb{Z}[x] をモニックな既約多項式、G=Gal⁡(f)G = \operatorname{Gal}(f)、CC を GG の共役類とする。p∤D(f)p \nmid D(f) で、pp の上の素イデアルのフロベニウス元が CC に属するような素数 pp の集合は、ディリクレ密度 ∣C∣/∣G∣\lvert C \rvert/\lvert G \rvert をもつ。

これは 15 第6章 定理 6.25 を ff の分解体に適用したもので(ディリクレ密度の定義も同章)、証明は本書では扱わない。自然密度についても成り立つことが知られている。

系 12.14 ff と GG を定理 12.13 のとおりとし、λ\lambda を n=deg⁡fn = \deg f の分割とする。p∤D(f)p \nmid D(f) で f‾\overline{f} の分解の型が λ\lambda となる素数 pp の集合の密度は、GG の型 λ\lambda の元の個数を ∣G∣\lvert G \rvert で割ったものに等しい。特に、GG に現れる型はどれも無数の素数で現れ、GG に現れない型は(p∤D(f)p \nmid D(f) では)現れない。

証明. 型 λ\lambda の元全体は GG の共役で保たれるので GG の共役類のいくつかの和集合であり、定理 12.8 の証明よりフロベニウス元の型は f‾\overline{f} の分解の型に等しい。各共役類について定理 12.13 を適用して足せばよい。□\square

特に系 12.9(2) の逆も成り立つ。GG が長さ nn の巡回置換を含めば f‾\overline{f} が既約になる pp が無数にあるので、既約なのにすべての素数を法として可約になることは、GG が長さ nn の巡回置換を含まないことと同値である。4 次式では G=VG = V または A4\mathfrak{A}_4 の場合である。

例 12.15(数値実験)f=x5−x−1f = x^5 - x - 1(G=S5G = \mathfrak{S}_5)について、p∤2869p \nmid 2869 となる素数を分解の型で分類すると次のようになる(PARI/GP の factormod で計算し、sympy でも確かめた)。

型 S5\mathfrak{S}_5 の元の個数 予想される割合 p<104p < 10^4(1227 個) p<106p < 10^6(78496 個)
151^5 1 0.00830.0083 6(0.0049) 650(0.0083)
2⋅132 \cdot 1^3 10 0.08330.0833 108(0.0880) 6505(0.0829)
22⋅12^2 \cdot 1 15 0.12500.1250 151(0.1231) 9742(0.1241)
3⋅123 \cdot 1^2 20 0.16670.1667 201(0.1638) 13040(0.1661)
3⋅23 \cdot 2 20 0.16670.1667 211(0.1720) 13040(0.1661)
4⋅14 \cdot 1 30 0.25000.2500 296(0.2412) 19755(0.2517)
55 24 0.20000.2000 254(0.2070) 15764(0.2008)

ほかの群についても p<104p < 10^4(判別式を割る素数を除く)で比べると、予想(左)と実測(右)はよく合う。現れない型の列は省いた。

ff GG 151^5 22⋅12^2 \cdot 1 3⋅123 \cdot 1^2 4⋅14 \cdot 1 55
x5−5x+12x^5 - 5x + 12 D5D_5 0.1 / 0.095 0.5 / 0.509 0 / 0 0 / 0 0.4 / 0.396
x5−2x^5 - 2 F20F_{20} 0.05 / 0.049 0.25 / 0.247 0 / 0 0.5 / 0.504 0.2 / 0.200
x5+20x+16x^5 + 20x + 16 A5\mathfrak{A}_5 0.017 / 0.013 0.25 / 0.254 0.333 / 0.355 0 / 0 0.4 / 0.377

x4+1x^4 + 1 では、p<104p < 10^4 の奇素数 1228 個のうち 4 つの 1 次式に分解するもの(p≡1(mod8)p \equiv 1 \pmod 8)が 295 個(予想 1/41/4)、2 次式 2 つに分解するものが 933 個(予想 3/43/4)である。

12.7 逆ガロア問題

逆ガロア問題 (inverse Galois problem):任意の有限群 GG に対し、Gal⁡(L/Q)≅G\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) \cong G となるガロア拡大 L/QL/\mathbb{Q} は存在するか。

基礎体を Q\mathbb{Q} に固定することが本質的である。基礎体を自由に選んでよいなら、答えはつねに肯定的である:ケイリーの定理(第3章 定理 3.8)で G≤SnG \leq \mathfrak{S}_n とみなし、Sn\mathfrak{S}_n を有理関数体 L=Q(t1,…,tn)L = \mathbb{Q}(t_1, \dots, t_n) に変数の置換で作用させれば、アルティンの定理(定理 9.4)より Gal⁡(L/LG)=G\operatorname{Gal}(L/L^G) = G である。

有限アーベル群

円分体のガロア群 (Z/mZ)×(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^\times の商として実現する。そのために p≡1(modn)p \equiv 1 \pmod n となる素数を初等的に作る。

補題 12.16 n∈Nn \in \mathbb{N}, a∈Za \in \mathbb{Z} とし、素数 pp は p∤np \nmid n かつ p∣Φn(a)p \mid \Phi_n(a) をみたすとする。このとき法 pp での aa の位数はちょうど nn であり、特に p≡1(modn)p \equiv 1 \pmod n。

証明. Φn∣xn−1\Phi_n \mid x^n - 1 なので an≡1(modp)a^n \equiv 1 \pmod p で、p∤ap \nmid a。aa の位数 dd は nn を割る(第1章 命題 1.40)。d<nd < n とすると、ad−1=∏e∣dΦe(a)a^d - 1 = \prod_{e \mid d}\Phi_e(a) より、ある e∣de \mid d(e≠ne \neq n)で p∣Φe(a)p \mid \Phi_e(a)。xn−1=∏e′∣nΦe′(x)x^n - 1 = \prod_{e' \mid n}\Phi_{e'}(x) は相異なる因子 Φn\Phi_n と Φe\Phi_e を含み、Fp\mathbb{F}_p でどちらも a‾\overline{a} を根にもつので、a‾\overline{a} は xn−1x^n - 1 の重根になる。しかし p∤np \nmid n より xn−1x^n - 1 と nxn−1nx^{n-1} は共通根をもたず、xn−1x^n - 1 は Fp\mathbb{F}_p 上重根をもたない(第8章 命題 8.36)。矛盾。よって d=nd = n で、フェルマーの小定理(第1章 系 1.35)と命題 1.40 から n∣p−1n \mid p - 1。□\square

定理 12.17 任意の n∈Nn \in \mathbb{N} について、p≡1(modn)p \equiv 1 \pmod n となる素数 pp は無数に存在する。

証明. n=1n = 1 なら明らかなので n≥2n \geq 2 とする。このとき Φn(0)=1\Phi_n(0) = 1 である(xn−1=∏d∣nΦd(x)x^n - 1 = \prod_{d \mid n}\Phi_d(x) に x=0x = 0 を代入し、Φ1(0)=−1\Phi_1(0) = -1 と nn についての帰納法を使う)。p≡1(modn)p \equiv 1 \pmod n となる素数が p1,…,pkp_1, \dots, p_k だけだとする(k=0k = 0 も許す)。Φn\Phi_n はモニックで次数 φ(n)≥1\varphi(n) \geq 1 なので、t∈Nt \in \mathbb{N} を大きくとれば a=tnp1⋯pka = tnp_1\cdots p_k について Φn(a)>1\Phi_n(a) > 1。Φn(a)≡Φn(0)=1(moda)\Phi_n(a) \equiv \Phi_n(0) = 1 \pmod a なので、Φn(a)\Phi_n(a) の素因数 pp は aa を割らず、したがって p∤np \nmid n かつ p≠pip \neq p_i。補題 12.16 より p≡1(modn)p \equiv 1 \pmod n となり、矛盾する。□\square

これはディリクレの算術級数定理(15 第6章 定理 6.18)の特別な場合だが、LL 関数を使わずに示せた。

定理 12.18(アーベル群の実現)任意の有限アーベル群 AA に対し、Gal⁡(K/Q)≅A\operatorname{Gal}(K/\mathbb{Q}) \cong A となるガロア拡大 K/QK/\mathbb{Q} が存在する。KK はある円分体 Q(ζm)\mathbb{Q}(\zeta_m) の部分体としてとれる。

証明. A={0}A = \lbrace 0 \rbrace なら K=QK = \mathbb{Q} とすればよい。有限生成アーベル群の基本定理(第4章 定理 4.8)により A≅Z/n1Z×⋯×Z/nrZA \cong \mathbb{Z}/n_1\mathbb{Z} \times \cdots \times \mathbb{Z}/n_r\mathbb{Z}(ni≥2n_i \geq 2)と書ける。定理 12.17 により、相異なる素数 p1,…,prp_1, \dots, p_r で pi≡1(modni)p_i \equiv 1 \pmod{n_i} となるものがとれる。m=p1⋯prm = p_1\cdots p_r とおくと、中国剰余定理(第1章 定理 1.28)により

Gal⁡(Q(ζm)/Q)≅(Z/mZ)×≅(Z/p1Z)××⋯×(Z/prZ)×\operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_m)/\mathbb{Q}) \cong (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^\times \cong (\mathbb{Z}/p_1\mathbb{Z})^\times \times \cdots \times (\mathbb{Z}/p_r\mathbb{Z})^\times

で(定理 9.18)、各 (Z/piZ)×(\mathbb{Z}/p_i\mathbb{Z})^\times は位数 pi−1p_i - 1 の巡回群である(第1章 定理 1.44)。ni∣pi−1n_i \mid p_i - 1 なので全射準同型 (Z/piZ)×→Z/niZ(\mathbb{Z}/p_i\mathbb{Z})^\times \to \mathbb{Z}/n_i\mathbb{Z} があり、それらを並べて全射準同型 ψ ⁣:Gal⁡(Q(ζm)/Q)→A\psi\colon \operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_m)/\mathbb{Q}) \to A を得る。H=Ker⁡ψH = \operatorname{Ker}\psi は可換群の部分群なので正規であり、K=Q(ζm)HK = \mathbb{Q}(\zeta_m)^H は Q\mathbb{Q} 上ガロア拡大で Gal⁡(K/Q)≅Gal⁡(Q(ζm)/Q)/H≅A\operatorname{Gal}(K/\mathbb{Q}) \cong \operatorname{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_m)/\mathbb{Q})/H \cong A(定理 9.9(4))。□\square

たとえば Z/5Z\mathbb{Z}/5\mathbb{Z} は Q(ζ11+ζ11−1)\mathbb{Q}(\zeta_{11} + \zeta_{11}^{-1}) として(問題 12.5)、Z/2Z×Z/4Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z} \times \mathbb{Z}/4\mathbb{Z} は Q(ζ15)\mathbb{Q}(\zeta_{15}) として(第4章 例 4.4(1))実現される。逆に Q\mathbb{Q} の有限次アーベル拡大はすべて円分体の部分体である(クロネッカー–ウェーバーの定理。15 第4章 定理 4.14)。

対称群

定理 12.19(対称群の実現)任意の n∈Nn \in \mathbb{N} に対し、Gal⁡(f)=Sn\operatorname{Gal}(f) = \mathfrak{S}_n となる nn 次のモニックな多項式 f∈Z[x]f \in \mathbb{Z}[x] が存在する。

証明. デデキントの定理(定理 12.8)は認める。n≤2n \leq 2 は xx, x2−2x^2 - 2 でよいので n≥3n \geq 3 とする。Fp\mathbb{F}_p 上には各次数の既約多項式が存在する(Fpd×\mathbb{F}_{p^d}^\times の生成元の最小多項式。第8章 定理 8.40, 8.41)。それを使って次のモニックな多項式をとる。

  • f2∈F2[x]f_2 \in \mathbb{F}_2[x]:nn 次の既約多項式。
  • f3∈F3[x]f_3 \in \mathbb{F}_3[x]:x⋅h3x \cdot h_3(h3h_3 は n−1n - 1 次の既約多項式)。
  • f5∈F5[x]f_5 \in \mathbb{F}_5[x]:g⋅h5g \cdot h_5。ここで gg は 2 次の既約多項式、h5h_5 は n−2n - 2 が奇数なら n−2n - 2 次の既約多項式、偶数なら x⋅kx \cdot k(kk は n−3n - 3 次の既約多項式で、n=4n = 4 なら k=x+1k = x + 1)とする。

どれも相異なる既約多項式の積なので重根をもたない。各係数ごとに中国剰余定理(第1章 定理 1.28)を使い、f≡fp(modp)f \equiv f_p \pmod p(p=2,3,5p = 2, 3, 5)となるモニックな nn 次式 f∈Z[x]f \in \mathbb{Z}[x] をとる。

f‾=f2\overline{f} = f_2 は F2\mathbb{F}_2 上既約なので ff は Q\mathbb{Q} 上既約で(第6章 定理 6.27)、G=Gal⁡(f)G = \operatorname{Gal}(f) は推移的である。p=2,3,5p = 2, 3, 5 では f‾\overline{f} が重根をもたないので D(f‾)≠0D(\overline{f}) \neq 0、すなわち p∤D(f)p \nmid D(f) である(定理 12.8 の証明 (1))。デデキントの定理より、GG は p=3p = 3 から型 (n−1,1)(n - 1, 1) の元、すなわち長さ n−1n - 1 の巡回置換を含み、p=5p = 5 から型 (2,d1,…,ds)(2, d_1, \dots, d_s)(djd_j はすべて奇数)の元 τ\tau を含む。m=d1d2⋯dsm = d_1d_2\cdots d_s は奇数なので τm\tau^m は互換である。定理 12.6 より G=SnG = \mathfrak{S}_n。□\square

例 12.20(n=5n = 5)f2=x5+x2+1f_2 = x^5 + x^2 + 1、f3=x(x4+x+2)=x5+x2+2xf_3 = x(x^4 + x + 2) = x^5 + x^2 + 2x、f5=(x2+2)(x3+x+1)=x5+3x3+x2+2x+2f_5 = (x^2 + 2)(x^3 + x + 1) = x^5 + 3x^3 + x^2 + 2x + 2 とする(因子の既約性は根の有無と 2 次因子の有無を調べて確かめられる)。各係数を中国剰余定理で −15-15 から 1414 の範囲にとると

f=x5−12x3+x2+2x−3f = x^5 - 12x^3 + x^2 + 2x - 3

を得る(たとえば定数項 −3-3 は ≡1(mod2)\equiv 1 \pmod 2, ≡0(mod3)\equiv 0 \pmod 3, ≡2(mod5)\equiv 2 \pmod 5)。D(f)=−204140143=−1873⋅108991D(f) = -204140143 = -1873 \cdot 108991 は 2,3,52, 3, 5 で割り切れず、 mod 2,3,5\bmod 2, 3, 5 の分解の型は (5)(5), (4,1)(4, 1), (3,2)(3, 2) である。定理 12.19 の証明より Gal⁡(f)=S5\operatorname{Gal}(f) = \mathfrak{S}_5 で、polgalois の結果とも一致する。

ヒルベルトの既約性定理と未解決の問題

定理 12.21(ヒルベルトの既約性定理, Hilbert's irreducibility theorem)F(t,x)∈Q[t,x]F(t, x) \in \mathbb{Q}[t, x] が Q(t)[x]\mathbb{Q}(t)[x] の元として既約かつ分離的で、Q(t)\mathbb{Q}(t) 上のガロア群が GG であるとする。このとき、F(t0,x)∈Q[x]F(t_0, x) \in \mathbb{Q}[x] が既約で Gal⁡(F(t0,x))≅G\operatorname{Gal}(F(t_0, x)) \cong G となる t0∈Zt_0 \in \mathbb{Z} が無数に存在する。変数 tt が複数の場合も同様である。

証明は本書では扱わない。一般 nn 次多項式のガロア群は Sn\mathfrak{S}_n なので(定理 9.28)、係数に整数を代入して定理 12.19 の別証明が得られる。ヒルベルトは 1892 年にこの定理を証明し、Sn\mathfrak{S}_n と An\mathfrak{A}_n が Q\mathbb{Q} 上のガロア群として現れることを示した。係数の絶対値が HH 以下のモニックな nn 次整数係数多項式のうちガロア群が Sn\mathfrak{S}_n のものの割合は、H→∞H \to \infty で 11 に近づくことも知られている(ファン・デル・ヴェルデン, 1936 年)。さらに、ガロア群が Sn\mathfrak{S}_n でないものの個数は O(Hn−1)O(H^{n-1}) である(ファン・デル・ヴェルデンの予想。バルガヴァ (M. Bhargava) が証明し、2025 年に出版された)。定数項が 00 のものはすべて可約なので、この評価はこれ以上よくならない。また定理 12.21 から、GG が Q(t)\mathbb{Q}(t) 上のガロア群として実現できれば、Q\mathbb{Q} 上でも実現できる。

定理 12.22(シャファレヴィッチ, Shafarevich)任意の有限可解群は、Q\mathbb{Q} のあるガロア拡大のガロア群と同型である。

証明は類体論を用いる長いもので(1954 年。元の証明の素数 22 に関わる部分の誤りは、のちに修正された)、本書では扱わない。

補足

逆ガロア問題は、一般の有限群については未解決である。上の群のほか、Q(t)\mathbb{Q}(t) 上で実現してヒルベルトの既約性定理を使う剛性法 (rigidity method) とその発展により、モンスター群を含む多くの有限単純群が Q\mathbb{Q} 上で実現されてきた。26 個の散在型単純群のうち 25 個は主に 1980 年代に実現された。長く最後の 1 つとして残っていたマシュー群 M23M_{23} についても、2026 年に Huang, Jackson, Lee, Poonen, Pries, Zhang が、Q(t)\mathbb{Q}(t) 上の実現を経て具体的な 23 次多項式を与え、Q\mathbb{Q} 上のガロア群として実現したと発表した(査読前のプレプリント)。一方、リー型の有限単純群には Q\mathbb{Q} 上の実現が知られていないものが無数に残っている(以上は本書執筆時点の状況である)。なお C(t)\mathbb{C}(t) 上では、リーマンの存在定理によりすべての有限群がガロア群として現れる。第13章の言葉では、逆ガロア問題は「Q\mathbb{Q} の絶対ガロア群の連続な有限商(開正規部分群による商)としてどんな群が現れるか」という問題である。

まとめ

  • 分離的な nn 次式のガロア群は Sn\mathfrak{S}_n の部分群として共役を除いて定まる。既約   ⟺  \iff 推移的。判別式が平方   ⟺  \iff An\mathfrak{A}_n に含まれる(標数 ≠2\neq 2)。
  • S4\mathfrak{S}_4 の推移的部分群は S4,A4,D4,C4,V\mathfrak{S}_4, \mathfrak{A}_4, D_4, C_4, V、S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群は S5,A5,F20,D5,C5\mathfrak{S}_5, \mathfrak{A}_5, F_{20}, D_5, C_5(共役を除く)。
  • 推移的で長さ n−1n - 1 の巡回置換と互換を含めば Sn\mathfrak{S}_n。
  • デデキントの定理:p∤D(f)p \nmid D(f) なら、f mod pf \bmod p の既約因子の次数の組を型とする元(フロベニウス元)がガロア群にある。
  • ガロア群が長さ nn の巡回置換を含まない既約多項式(x4+1x^4 + 1 など)は、すべての素数を法として可約である。
  • チェボタレフの密度定理:分解の型が λ\lambda となる素数の密度は、ガロア群の中の型 λ\lambda の元の割合に等しい。
  • x5−x−1x^5 - x - 1 は S5\mathfrak{S}_5、x5−5x+12x^5 - 5x + 12 は D5D_5、x5−2x^5 - 2 は F20F_{20}、x5+20x+16x^5 + 20x + 16 は A5\mathfrak{A}_5。
  • p≡1(modn)p \equiv 1 \pmod n となる素数は無数にあり(Φn(a)\Phi_n(a) の素因数)、すべての有限アーベル群は円分体の部分体のガロア群になる。
  •  mod 2,3,5\bmod 2, 3, 5 の分解の型を中国剰余定理で指定すれば、ガロア群が Sn\mathfrak{S}_n の多項式が作れる。
  • 可解群は Q\mathbb{Q} 上で実現できる(シャファレヴィッチ)が、逆ガロア問題は一般には未解決である。

演習問題

問題 12.1 ★ x4−10x2+1x^4 - 10x^2 + 1 は Q\mathbb{Q} 上既約だが、すべての素数 pp を法として可約であることを示せ。

解答

これは 2+3\sqrt{2} + \sqrt{3} の最小多項式で既約であり(第8章 例 8.15)、根は ±2±3\pm\sqrt{2} \pm \sqrt{3}、分解体は Q(2,3)\mathbb{Q}(\sqrt{2}, \sqrt{3}) である。ガロア群の単位元以外の元は 2\sqrt{2} と 3\sqrt{3} の少なくとも一方の符号を変えるので、4 根すべてを動かし、位数 2 だから型は 222^2 である(例 9.11)。よって G=VG = V は長さ 4 の巡回置換を含まず、系 12.9(2) より ff はすべての素数を法として可約である( mod 2\bmod 2 では (x+1)4(x + 1)^4、 mod 3\bmod 3 では (x2+1)2(x^2 + 1)^2)。

問題 12.2 ★ 任意の有限群 GG に対し、ある代数体 KK(Q\mathbb{Q} の有限次拡大)とガロア拡大 L/KL/K で Gal⁡(L/K)≅G\operatorname{Gal}(L/K) \cong G となるものが存在することを示せ。

解答

ケイリーの定理により GG を Sn\mathfrak{S}_n の部分群とみなす。定理 12.19 により Gal⁡(L/Q)=Sn\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}) = \mathfrak{S}_n となるガロア拡大 L/QL/\mathbb{Q} がある。K=LGK = L^G とおくと KK は Q\mathbb{Q} の有限次拡大で、ガロア理論の基本定理(定理 9.9(1))より Gal⁡(L/K)=G\operatorname{Gal}(L/K) = G。

問題 12.3 ★★ f=x5+20x+16f = x^5 + 20x + 16 のガロア群は A5\mathfrak{A}_5 であることを示せ。D(f)=21656D(f) = 2^{16}5^6 と、 mod 3\bmod 3 で既約、 mod 7\bmod 7 で (x+2)(x+3)(x3+2x2+5x+5)(x + 2)(x + 3)(x^3 + 2x^2 + 5x + 5) と分解することは使ってよい。

解答

 mod 3\bmod 3 で既約なので ff は既約で、GG は S5\mathfrak{S}_5 の推移的部分群である。D(f)=(28⋅53)2D(f) = (2^8 \cdot 5^3)^2 は平方数なので G⊂A5G \subset \mathfrak{A}_5(命題 12.2(2))。7∤D(f)7 \nmid D(f) で、 mod 7\bmod 7 の分解の型は 3⋅123 \cdot 1^2 なので、GG は長さ 3 の巡回置換を含む(定理 12.8)。定理 12.5 の表で長さ 3 の巡回置換を含む推移的部分群は A5\mathfrak{A}_5 と S5\mathfrak{S}_5 だけなので、G=A5G = \mathfrak{A}_5。

問題 12.4 ★★ x5−2x^5 - 2 のガロア群は F20F_{20} であることを示せ。

解答

θ=25\theta = \sqrt[5]{2}, ζ=ζ5\zeta = \zeta_5 とすると根は αk=ζkθ\alpha_k = \zeta^k\theta(k∈Z/5Zk \in \mathbb{Z}/5\mathbb{Z})で、分解体は L=Q(θ,ζ)L = \mathbb{Q}(\theta, \zeta)。[Q(θ):Q]=5[\mathbb{Q}(\theta) : \mathbb{Q}] = 5(アイゼンシュタイン)と [Q(ζ):Q]=4[\mathbb{Q}(\zeta) : \mathbb{Q}] = 4 はともに [L:Q][L : \mathbb{Q}] を割り、[L:Q]≤5⋅4[L : \mathbb{Q}] \leq 5 \cdot 4 なので [L:Q]=20[L : \mathbb{Q}] = 20。σ∈G\sigma \in G は σ(θ)=ζbθ\sigma(\theta) = \zeta^b\theta, σ(ζ)=ζa\sigma(\zeta) = \zeta^a(a∈(Z/5Z)×a \in (\mathbb{Z}/5\mathbb{Z})^\times, b∈Z/5Zb \in \mathbb{Z}/5\mathbb{Z})で決まり、σ(αk)=ζak+bθ=αak+b\sigma(\alpha_k) = \zeta^{ak + b}\theta = \alpha_{ak + b}。よって根の添字の置換として G⊂{τa,b}=F20G \subset \lbrace \tau_{a,b} \rbrace = F_{20} で、位数が 20 なので等号が成り立つ。

問題 12.5 ★★ θ=ζ11+ζ11−1=2cos⁡(2π/11)\theta = \zeta_{11} + \zeta_{11}^{-1} = 2\cos(2\pi/11) の最小多項式が x5+x4−4x3−3x2+3x+1x^5 + x^4 - 4x^3 - 3x^2 + 3x + 1 であることを示し、そのガロア群が Z/5Z\mathbb{Z}/5\mathbb{Z} であることを示せ。

解答

ζ=ζ11\zeta = \zeta_{11}, θk=ζk+ζ−k\theta_k = \zeta^k + \zeta^{-k} とおくと、θθk−1=θk+θk−2\theta\theta_{k-1} = \theta_k + \theta_{k-2}(θ0=2\theta_0 = 2)から θ2=θ2−2\theta_2 = \theta^2 - 2, θ3=θ3−3θ\theta_3 = \theta^3 - 3\theta, θ4=θ4−4θ2+2\theta_4 = \theta^4 - 4\theta^2 + 2, θ5=θ5−5θ3+5θ\theta_5 = \theta^5 - 5\theta^3 + 5\theta。1+ζ+⋯+ζ10=01 + \zeta + \cdots + \zeta^{10} = 0 より 1+θ1+⋯+θ5=01 + \theta_1 + \cdots + \theta_5 = 0 で、代入すると θ5+θ4−4θ3−3θ2+3θ+1=0\theta^5 + \theta^4 - 4\theta^3 - 3\theta^2 + 3\theta + 1 = 0。θ\theta の (Z/11Z)×(\mathbb{Z}/11\mathbb{Z})^\times による軌道は相異なる 5 つの実数 θ1,…,θ5\theta_1, \dots, \theta_5 なので(注意 9.10)[Q(θ):Q]=5[\mathbb{Q}(\theta) : \mathbb{Q}] = 5 で、上の 5 次式が最小多項式である。Q(θ)\mathbb{Q}(\theta) は {σ±1}\lbrace \sigma_{\pm 1} \rbrace の固定体で、(Z/11Z)×(\mathbb{Z}/11\mathbb{Z})^\times は可換だからガロア拡大であり、ガロア群は (Z/11Z)×/{±1}≅Z/5Z(\mathbb{Z}/11\mathbb{Z})^\times/\lbrace \pm 1 \rbrace \cong \mathbb{Z}/5\mathbb{Z}。

問題 12.6 ★★ 定理 12.19 の方法で、ガロア群が S6\mathfrak{S}_6 となる 6 次のモニックな整数係数多項式を 1 つ作れ。

解答

たとえば f2=x6+x+1f_2 = x^6 + x + 1(F2\mathbb{F}_2 上既約)、f3=x(x5+2x+1)f_3 = x(x^5 + 2x + 1)(x5+2x+1x^5 + 2x + 1 は F3\mathbb{F}_3 上既約)、f5=x(x2+2)(x3+x+1)f_5 = x(x^2 + 2)(x^3 + x + 1) とする。既約性は、根をもたないことと、より低い次数の既約多項式(F2\mathbb{F}_2 上の 2 次・3 次の 3 つ、F3\mathbb{F}_3 上の 2 次の 3 つ)で割り切れないことから確かめられる。係数ごとに中国剰余定理を使うと

f=x6−12x4+6x3+2x2+7x+15f = x^6 - 12x^4 + 6x^3 + 2x^2 + 7x + 15

を得る。 mod 2\bmod 2 で既約なので ff は既約、 mod 3\bmod 3 の型 (5,1)(5, 1) から長さ 5 の巡回置換、 mod 5\bmod 5 の型 (3,2,1)(3, 2, 1) の元の 3 乗から互換が得られ、定理 12.6 より Gal⁡(f)=S6\operatorname{Gal}(f) = \mathfrak{S}_6(D(f)=−7⋅19⋅49019879639D(f) = -7 \cdot 19 \cdot 49019879639。polgalois でも S6\mathfrak{S}_6)。

問題 12.7 ★★ (1) p≡2(mod3)p \equiv 2 \pmod 3 なら x3−2x^3 - 2 は  mod p\bmod p で根をもつことを示せ。(2) チェボタレフの密度定理を使って、x3−2x^3 - 2 が  mod p\bmod p で根をもつような素数 pp の密度が 2/32/3 であることを示せ。

解答

(1) p=2p = 2 なら x3−2≡x3x^3 - 2 \equiv x^3 は根 00 をもつ。p≠2p \neq 2 なら 2∈Fp×2 \in \mathbb{F}_p^\times である。gcd⁡(3,p−1)=1\gcd(3, p - 1) = 1 なので 3u+(p−1)v=13u + (p - 1)v = 1 となる整数 u,vu, v があり、y↦y3y \mapsto y^3 は Fp×\mathbb{F}_p^\times 上で y↦yuy \mapsto y^u を逆写像にもつ全単射なので(y3u=y1−(p−1)v=yy^{3u} = y^{1 - (p-1)v} = y)、22 は 3 乗数である。

(2) G=Gal⁡(x3−2)=S3G = \operatorname{Gal}(x^3 - 2) = \mathfrak{S}_3(例 9.12)、D(x3−2)=−108D(x^3 - 2) = -108。p∤6p \nmid 6 について、 mod p\bmod p で根をもつ   ⟺  \iff 分解の型に 1 が現れる   ⟺  \iff フロベニウス元が固定点をもつ。固定点をもつ元は単位元 1 個と互換 3 個なので、系 12.14 より密度は 4/6=2/34/6 = 2/3(5≤p<1065 \leq p < 10^6 では 78496 個中 52297 個)。

問題 12.8 ★★★ f∈Z[x]f \in \mathbb{Z}[x] を 2 次以上のモニックな既約多項式とする。 (1) ff が  mod p\bmod p で根をもつ素数 pp は無数にあることを、LL 関数もチェボタレフの密度定理も使わずに示せ(シューア)。 (2) ff が  mod p\bmod p で根をもたない素数 pp も無数にあることを、バーンサイドの補題(第3章 定理 3.29)とチェボタレフの密度定理を使って示せ。

解答

(1) c=f(0)c = f(0) とする。ff は 2 次以上で既約なので c≠0c \neq 0。根をもつ素数(ある f(a)f(a) を割る素数)が p1,…,pkp_1, \dots, p_k だけとし、P=p1⋯pkP = p_1 \cdots p_k とおく。f(x)=c+xh(x)f(x) = c + xh(x)(h∈Z[x]h \in \mathbb{Z}[x])と書くと f(cPt)=c⋅u(t)f(cPt) = c \cdot u(t)、u(t)=1+Pt⋅h(cPt)u(t) = 1 + Pt \cdot h(cPt) で、uu は定数でない整数係数多項式なので、u(t)=±1u(t) = \pm 1 となる tt は有限個しかなく、∣u(t)∣>1\lvert u(t) \rvert > 1 となる t∈Zt \in \mathbb{Z} がとれる。u(t)u(t) の素因数 qq は f(cPt)f(cPt) を割り、u(t)≡1(modpi)u(t) \equiv 1 \pmod{p_i} より q≠piq \neq p_i。矛盾。

(2) G=Gal⁡(f)G = \operatorname{Gal}(f) は n≥2n \geq 2 個の根に推移的に作用するので、バーンサイドの補題より固定点の個数の平均は軌道の個数 11 に等しい。単位元の固定点は n≥2n \geq 2 個なので、固定点をもたない元 gg が存在する。チェボタレフの密度定理より、フロベニウス元が gg の共役類に属する素数 p∤D(f)p \nmid D(f) は正の密度で(したがって無数に)存在し、そのような pp では分解の型に 1 が現れないので、ff は  mod p\bmod p で根をもたない。

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