Lemma

第8章モーデル–ヴェイユの定理

目安 18〜23 時間定理など 24演習 9 問
ここまでの道

この章の目標

  • 有理数と楕円曲線上の点の高さを定義し、高さの 3 つの基本性質(高さが有界な点の有限性、h(P+P0)≤2h(P)+κ0h(P + P_0) \leq 2h(P) + \kappa_0、h(2P)≥4h(P)−κh(2P) \geq 4h(P) - \kappa)を証明できる
  • 降下定理を証明し、モーデル–ヴェイユの定理を弱モーデル–ヴェイユの定理 [E(Q):2E(Q)]<∞[E(\mathbb{Q}) : 2E(\mathbb{Q})] < \infty に帰着できる
  • 位数 2 の有理点をもつ曲線について、2-同種写像と準同型 α\alpha を用いて弱モーデル–ヴェイユの定理と階数の公式 2r=∣α(E(Q))∣⋅∣αˉ(Eˉ(Q))∣/42^r = \lvert \alpha(E(\mathbb{Q})) \rvert \cdot \lvert \bar{\alpha}(\bar{E}(\mathbb{Q})) \rvert / 4 を証明できる
  • y2=x3−xy^2 = x^3 - x, y2=x3−2xy^2 = x^3 - 2x, y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x, y2=x3−17xy^2 = x^3 - 17x などの階数を手計算で決定し、合同数問題に応用できる
  • セルマー群とテイト–シャファレビッチ群が降下法の限界をどのように測るかを説明できる
  • ネロン–テイトの標準的高さを構成して「h^(P)=0  ⟺  P\hat{h}(P) = 0 \iff P はねじれ点」を証明し、正規化の流儀を区別して数値を比べられる

前提:第2章、第3章、第7章。有限生成アーベル群の基本定理(04 第4章 定理 4.8)を使う。8.7 節では 15 第5章 の pp 進数(ヘンゼルの補題 定理 5.12、平方元の判定 系 5.15)を、注意 8.21 では 15 第3章 の類数の有限性(定理 3.10)とディリクレの単数定理(定理 3.19)を使う。

第7章では、E(Q)E(\mathbb{Q}) のねじれ部分群が有限で、具体的に決定できることを見た。しかし E(Q)E(\mathbb{Q}) そのものは無限群になりうる。たとえば E ⁣:y2=x3−2xE\colon y^2 = x^3 - 2x 上の点 P=(−1,1)P = (-1, 1) の倍数を弦と接線で作ると

2P=(94,−218),3P=(−1169,2392197),4P=(127697056,900271592704)2P = \left(\frac{9}{4}, -\frac{21}{8}\right), \qquad 3P = \left(-\frac{1}{169}, \frac{239}{2197}\right), \qquad 4P = \left(\frac{12769}{7056}, \frac{900271}{592704}\right)

と分母がどんどん大きくなる。2P2P は整数点でないので、第7章のナゲル–ルッツの定理(定理 7.5)により 2P2P はねじれ点でなく、PP は無限位数の点である。

それでも、有限個の点から出発して弦と接線の操作を繰り返せば、すべての有理点が得られる。これがモーデル(1922 年)の定理で、ヴェイユは 1928 年の学位論文(1929 年刊)で数体上の場合(さらに曲線のヤコビ多様体の場合)に拡張した。証明の考え方はフェルマーの無限降下法である。点の算術的な複雑さを高さで測ると、PP を「半分にする」(P=Q+2P′P = Q + 2P' と書いて P′P' に移る)たびに、高さは大まかに言って半分以下に減るので、有限回で高さの小さい有限個の点に行き着く。そのためには剰余群 E(Q)/2E(Q)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) が有限であること(弱モーデル–ヴェイユの定理)が必要で、これが証明の算術的な核心である。

本章では Silverman–Tate (Rational Points on Elliptic Curves) 第 III 章の流れに沿って、高さの性質(8.2–8.3 節)、降下定理(8.4 節)、位数 2 の有理点をもつ曲線での弱モーデル–ヴェイユの定理(8.5 節)を証明する。この証明は階数を計算する方法も与える(8.6 節)。その方法の限界を測るのがセルマー群とテイト–シャファレビッチ群 Ш\text{Ш} である(8.7 節)。最後に、高さを精密にしたネロン–テイトの標準的高さとレギュレーターを導入する(8.8–8.9 節)。これらは第10章の BSD 予想に現れる。

記法. 0 でない有理数の平方全体を Q×2={t2∣t∈Q×}\mathbb{Q}^{\times 2} = \lbrace t^2 \mid t \in \mathbb{Q}^\times \rbrace と書く。剰余群 Q×/Q×2\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times 2} の元は、平方因子をもたない整数(負でもよい)でただ一通りに代表される。以下、この群の元をその代表の整数で書き、Q×/Q×2\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times 2} の中で等しいことを「平方類として等しい」という。たとえば平方類として −25=−1-25 = -1, 68=1768 = 17 である。−1-1 と素数 p1,…,ptp_1, \dots, p_t の類で生成される部分群を ⟨−1,p1,…,pt⟩\langle -1, p_1, \dots, p_t \rangle と書く。素因数分解の一意性により、これは 2t+12^{t+1} 個の元 ±p1ε1⋯ptεt\pm p_1^{\varepsilon_1} \cdots p_t^{\varepsilon_t}(εi∈{0,1}\varepsilon_i \in \lbrace 0, 1 \rbrace)からなる。素数 pp について、pp 進付値を vpv_p と書く(15 第5章)。

8.1 定理の主張と階数

定理 8.1(モーデル–ヴェイユの定理, Mordell–Weil theorem)EE を Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線とすると、E(Q)E(\mathbb{Q}) は有限生成アーベル群である。

有限生成アーベル群の基本定理(04 定理 4.8)により、整数 r≥0r \geq 0 と有限群 E(Q)torsE(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} によって

E(Q)≅Zr⊕E(Q)torsE(\mathbb{Q}) \cong \mathbb{Z}^r \oplus E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}}

と書け、rr は EE から一意に定まる。

定義 8.2(階数, rank)上の rr を EE の Q\mathbb{Q} 上の階数といい、r=rank⁡E(Q)r = \operatorname{rank} E(\mathbb{Q}) と書く。P1,…,Pr∈E(Q)P_1, \dots, P_r \in E(\mathbb{Q}) で、すべての P∈E(Q)P \in E(\mathbb{Q}) が

P=n1P1+⋯+nrPr+T(ni∈Z, T∈E(Q)tors)P = n_1P_1 + \cdots + n_rP_r + T \qquad (n_i \in \mathbb{Z},\ T \in E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}})

とただ一通りに書けるものを、E(Q)E(\mathbb{Q}) の自由部分の基底 (basis) という。

rr は、どの非自明な整数係数の一次結合もねじれ点にならないような点の最大個数でもある。

例 8.3(LMFDB の表と PARI/GP で確認。ラベルは Cremona のもの)

  1. y2=x3−xy^2 = x^3 - x(32a2):E(Q)={O,(0,0),(1,0),(−1,0)}≅(Z/2Z)2E(\mathbb{Q}) = \lbrace O, (0, 0), (1, 0), (-1, 0) \rbrace \cong (\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2 で r=0r = 0。
  2. y2=x3−2xy^2 = x^3 - 2x(256b1):E(Q)E(\mathbb{Q}) は (−1,1)(-1, 1) と位数 2 の点 (0,0)(0, 0) で生成され、E(Q)≅Z⊕Z/2ZE(\mathbb{Q}) \cong \mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}、r=1r = 1。
  3. y2+y=x3−xy^2 + y = x^3 - x(37a1):E(Q)=Z⋅(0,0)≅ZE(\mathbb{Q}) = \mathbb{Z} \cdot (0, 0) \cong \mathbb{Z} で r=1r = 1。
  4. y2=x3−17xy^2 = x^3 - 17x(9248g1):(−1,4)(-1, 4), (−4,2)(-4, 2) が自由部分の基底で、E(Q)≅Z2⊕Z/2ZE(\mathbb{Q}) \cong \mathbb{Z}^2 \oplus \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}、r=2r = 2。

1, 2, 4 の階数は 8.6 節で手計算で求める。ある点の組が基底であること(たとえば (−1,1)(-1, 1) が、ねじれ点の差を除いて別の有理点の mm 倍(m≥2m \geq 2)にならないこと)を示すには高さの具体的な評価が要るので、ここでは LMFDB の表に従う。

証明の準備として、扱いやすい方程式を選ぶ。

命題 8.4(扱いやすいモデル)Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線は、Q\mathbb{Q} 上の許容される変数変換により

y2=f(x)=x3+ax2+bx+c(a,b,c∈Z)(8.1)y^2 = f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c \qquad (a, b, c \in \mathbb{Z}) \tag{8.1}

の形の方程式に移る。ここで ff は重根をもたず、変数変換は群の同型 E(Q)≅E′(Q)E(\mathbb{Q}) \cong E'(\mathbb{Q}) を与える。

証明. 一般のワイエルシュトラス方程式 y2+a1xy+a3y=x3+a2x2+a4x+a6y^2 + a_1xy + a_3y = x^3 + a_2x^2 + a_4x + a_6 で x=u−2x′x = u^{-2}x', y=u−3y′y = u^{-3}y' とおくと係数 aia_i は uiaiu^ia_i に替わる(第1章 命題 1.6)ので、ai∈Za_i \in \mathbb{Z} としてよい。このとき (2y+a1x+a3)2=4x3+b2x2+2b4x+b6(2y + a_1x + a_3)^2 = 4x^3 + b_2x^2 + 2b_4x + b_6(b2=a12+4a2b_2 = a_1^2 + 4a_2, b4=2a4+a1a3b_4 = 2a_4 + a_1a_3, b6=a32+4a6b_6 = a_3^2 + 4a_6)なので、X=4xX = 4x, Y=8y+4a1x+4a3Y = 8y + 4a_1x + 4a_3 とおいて両辺に 16 をかけると

Y2=X3+b2X2+8b4X+16b6Y^2 = X^3 + b_2X^2 + 8b_4X + 16b_6

となる。これは許容される変数変換で、射影平面の線形変換として OO を OO に、直線を直線に移すから、弦と接線で定義された群法則(第2章 定義 2.4・定理 2.10)を保つ。y2=f(x)y^2 = f(x) の判別式 Δ\Delta は ff の判別式の 16 倍なので、第1章 定理 1.12 により、曲線が非特異であることは ff が重根をもたないことと同値である。□\square

以下 8.2–8.4 節では、EE を (8.1) で与えられた曲線とする。短い形 y2=x3+Ax+By^2 = x^3 + Ax + B は a=0a = 0 の場合にあたるが、x2x^2 の項を残しておけば、8.5 節の y2=x3+ax2+bxy^2 = x^3 + ax^2 + bx にそのまま適用できる。証明は次の 4 つの性質と、純粋に群論的な降下定理(定理 8.13)からなる。hh は 8.2 節で定義する点の高さである。

  • (H1) 任意の実数 MM について、h(P)≤Mh(P) \leq M となる P∈E(Q)P \in E(\mathbb{Q}) は有限個(命題 8.9)。
  • (H2) P0∈E(Q)P_0 \in E(\mathbb{Q}) ごとに定数 κ0\kappa_0 があって h(P+P0)≤2h(P)+κ0h(P + P_0) \leq 2h(P) + \kappa_0(命題 8.10)。
  • (H3) 定数 κ\kappa があって h(2P)≥4h(P)−κh(2P) \geq 4h(P) - \kappa(命題 8.12)。
  • (W) [E(Q):2E(Q)]<∞[E(\mathbb{Q}) : 2E(\mathbb{Q})] < \infty(定理 8.15。位数 2 の有理点をもつ場合に定理 8.20 で証明する)。

(H1)–(H3) は (8.1) についての初等的な評価で、(W) が算術的な核心である。

8.2 高さ

22/722/7 と 157/50=3.14157/50 = 3.14 はどちらも π\pi に近いが、書き表すのに必要な桁数が違う。有理数の「算術的な複雑さ」を測るのが高さである。

定義 8.5(有理数の高さ, height)t∈Qt \in \mathbb{Q} を既約分数 t=m/nt = m/n(m,n∈Zm, n \in \mathbb{Z}, n≥1n \geq 1, gcd⁡(m,n)=1\gcd(m, n) = 1)と書くとき

H(t)=max⁡(∣m∣,∣n∣),h(t)=log⁡H(t)H(t) = \max(\lvert m \rvert, \lvert n \rvert), \qquad h(t) = \log H(t)

と定め、H(t)H(t) を tt の高さ、h(t)h(t) を対数高さ (logarithmic height) という。

H(0)=1H(0) = 1(0=0/10 = 0/1)であり、常に H(t)≥1H(t) \geq 1, h(t)≥0h(t) \geq 0。たとえば H(22/7)=22H(22/7) = 22, H(157/50)=157H(157/50) = 157。

補題 8.6 B≥1B \geq 1 とすると、H(t)≤BH(t) \leq B をみたす t∈Qt \in \mathbb{Q} は (2B+1)B(2B + 1)B 個以下である。

証明. t=m/nt = m/n を既約分数で書くと ∣m∣≤B\lvert m \rvert \leq B, 1≤n≤B1 \leq n \leq B で、そのような整数の組 (m,n)(m, n) は (2B+1)B(2B + 1)B 個以下である。□\square

補題 8.7(有理点の座標の分母)EE を (8.1)、P=(x,y)∈E(Q)P = (x, y) \in E(\mathbb{Q}) とする。

  1. 整数 m,n,em, n, e(e≥1e \geq 1, gcd⁡(m,e)=gcd⁡(n,e)=1\gcd(m, e) = \gcd(n, e) = 1)で x=m/e2x = m/e^2, y=n/e3y = n/e^3 となるものがただ一組ある。このとき H(x)=max⁡(∣m∣,e2)H(x) = \max(\lvert m \rvert, e^2)。
  2. K=1+∣a∣+∣b∣+∣c∣K = \sqrt{1 + \lvert a \rvert + \lvert b \rvert + \lvert c \rvert} とおくと ∣n∣≤KH(x)3/2\lvert n \rvert \leq K H(x)^{3/2}。

証明. (1) x=m/Mx = m/M, y=n/Ny = n/N(既約分数、M,N≥1M, N \geq 1)とおく。y2=f(x)y^2 = f(x) に M3N2M^3N^2 をかけると

M3n2=N2m3+N2M (am2+bmM+cM2)M^3n^2 = N^2m^3 + N^2M\,(am^2 + bmM + cM^2)

MM を法として見ると M∣N2m3M \mid N^2m^3 で、gcd⁡(m,M)=1\gcd(m, M) = 1 より M∣N2M \mid N^2。すると右辺第 2 項と左辺は M2M^2 で割り切れるので M2∣N2m3M^2 \mid N^2m^3, M2∣N2M^2 \mid N^2。もう一度同じ議論をして M3∣N2M^3 \mid N^2。逆に、右辺は N2N^2 の倍数なので N2∣M3n2N^2 \mid M^3n^2 で、gcd⁡(n,N)=1\gcd(n, N) = 1 より N2∣M3N^2 \mid M^3。よって N2=M3N^2 = M^3 で、e=N/Me = N/M は e2=Me^2 = M をみたす正の有理数だから整数であり、M=e2M = e^2, N=e3N = e^3。一意性は既約分数表示の一意性から従う。gcd⁡(m,e2)=1\gcd(m, e^2) = 1 なので m/e2m/e^2 は既約分数で、H(x)=max⁡(∣m∣,e2)H(x) = \max(\lvert m \rvert, e^2)。

(2) y2=f(x)y^2 = f(x) に e6e^6 をかけると n2=m3+am2e2+bme4+ce6n^2 = m^3 + am^2e^2 + bme^4 + ce^6。∣m∣≤H(x)\lvert m \rvert \leq H(x), e2≤H(x)e^2 \leq H(x) より n2≤(1+∣a∣+∣b∣+∣c∣)H(x)3n^2 \leq (1 + \lvert a \rvert + \lvert b \rvert + \lvert c \rvert)H(x)^3。□\square

たとえば冒頭の 3P=(−1/169,239/2197)3P = (-1/169, 239/2197) では e=13e = 13 である。

定義 8.8(点の高さ)EE を Q\mathbb{Q} 上のワイエルシュトラス方程式で定義された楕円曲線とする。P∈E(Q)P \in E(\mathbb{Q}) について

H(P)=H(x(P)),h(P)=log⁡H(P)(P≠O),H(O)=1,h(O)=0H(P) = H(x(P)), \quad h(P) = \log H(P) \quad (P \neq O), \qquad H(O) = 1, \quad h(O) = 0

と定め、hh を(xx 座標による)素朴な高さ (naive height) という。

−P-P は PP と同じ xx 座標をもつので h(−P)=h(P)h(-P) = h(P)。高さは方程式の取り方に依存するが、許容される変数変換による違いは有界である(補題 8.34)。

命題 8.9(性質 (H1))任意の実数 MM について、{P∈E(Q)∣h(P)≤M}\lbrace P \in E(\mathbb{Q}) \mid h(P) \leq M \rbrace は有限集合である。

証明. h(P)≤Mh(P) \leq M なら H(x(P))≤exp⁡(M)H(x(P)) \leq \exp(M) なので、補題 8.6 より x(P)x(P) のとりうる値は有限個である。xx を固定すると yy は 2 次方程式の根なので 2 個以下である。OO を加えても有限個である。□\square

この証明は (8.1) の形を使っていないので、命題 8.9 は任意のワイエルシュトラス方程式について成り立つ。

8.3 高さの 2 つの不等式

この節でも EE は (8.1) とする。点に一定の点を加えても高さ HH は高々 2 乗程度にしかならず、2 倍すると HH はほぼ 4 乗になる。どちらも加法公式の分子と分母の次数を数えることから出てくる。

命題 8.10(性質 (H2))P0∈E(Q)P_0 \in E(\mathbb{Q}) とする。a,b,ca, b, c と P0P_0 だけで決まる定数 κ0\kappa_0 があって、すべての P∈E(Q)P \in E(\mathbb{Q}) について

h(P+P0)≤2h(P)+κ0h(P + P_0) \leq 2h(P) + \kappa_0

証明. P0=OP_0 = O なら κ0=0\kappa_0 = 0 でよいので、P0=(x0,y0)≠OP_0 = (x_0, y_0) \neq O とする。3 点 P=O,P0,−P0P = O, P_0, -P_0 については、κ0\kappa_0 をそれらで不等式が成り立つように大きくとればよいので、それ以外の P=(x,y)P = (x, y) を考える。このとき x≠x0x \neq x_0 である(xx 座標が等しい 2 点は互いに ±\pm の関係にある)。P+P0=(ξ,η)P + P_0 = (\xi, \eta) とすると、加法公式(第2章 定理 2.6)により ξ=λ2−a−x−x0\xi = \lambda^2 - a - x - x_0, λ=(y−y0)/(x−x0)\lambda = (y - y_0)/(x - x_0) である。y2=f(x)y^2 = f(x), y02=f(x0)y_0^2 = f(x_0) を代入して展開すると、分子の x3x^3, x03x_0^3, ax2ax^2, ax02ax_0^2 の項が打ち消し合い

ξ=(y−y0)2−(x−x0)2(x+x0+a)(x−x0)2=−2y0 y+x0x2+(x02+2ax0+b) x+(bx0+2c)(x−x0)2\xi = \frac{(y - y_0)^2 - (x - x_0)^2(x + x_0 + a)}{(x - x_0)^2} = \frac{-2y_0\,y + x_0x^2 + (x_0^2 + 2ax_0 + b)\,x + (bx_0 + 2c)}{(x - x_0)^2}

となる。補題 8.7 のように x0=m0/e02x_0 = m_0/e_0^2, y0=n0/e03y_0 = n_0/e_0^3 と書き、分子と分母に e04e_0^4 をかけると、P0P_0 と a,b,ca, b, c だけで決まる整数 A,B,C,D,A′,B′,C′A, B, C, D, A', B', C' によって

ξ=Ay+Bx2+Cx+DA′x2+B′x+C′\xi = \frac{Ay + Bx^2 + Cx + D}{A'x^2 + B'x + C'}

と書ける(たとえば A=−2n0e0A = -2n_0e_0, A′x2+B′x+C′=(e02x−m0)2A'x^2 + B'x + C' = (e_0^2x - m_0)^2)。ここに x=m/e2x = m/e^2, y=n/e3y = n/e^3(補題 8.7)を代入し、分子と分母に e4e^4 をかけると

ξ=Ane+Bm2+Cme2+De4A′m2+B′me2+C′e4\xi = \frac{Ane + Bm^2 + Cme^2 + De^4}{A'm^2 + B'me^2 + C'e^4}

右辺の分子と分母は整数で、分母は e4(e02x−m0)2≠0e^4(e_0^2x - m_0)^2 \neq 0 である。約分しても分子と分母の絶対値は大きくならないので、H(ξ)H(\xi) は分子と分母の絶対値の大きいほう以下である。∣m∣≤H(P)\lvert m \rvert \leq H(P), e2≤H(P)e^2 \leq H(P), ∣n∣≤KH(P)3/2\lvert n \rvert \leq KH(P)^{3/2}(補題 8.7)より ∣Ane∣≤∣A∣KH(P)2\lvert Ane \rvert \leq \lvert A \rvert KH(P)^2, ∣Bm2∣≤∣B∣H(P)2\lvert Bm^2 \rvert \leq \lvert B \rvert H(P)^2 などが成り立ち、

H(P+P0)≤max⁡(∣A∣K+∣B∣+∣C∣+∣D∣, ∣A′∣+∣B′∣+∣C′∣)⋅H(P)2H(P + P_0) \leq \max\bigl(\lvert A \rvert K + \lvert B \rvert + \lvert C \rvert + \lvert D \rvert,\ \lvert A' \rvert + \lvert B' \rvert + \lvert C' \rvert\bigr) \cdot H(P)^2

を得る。対数をとればよい。□\square

2 倍の点の評価には、上からだけでなく下からの評価が要る。分子と分母が大きな公約数をもって約分され、高さが小さくなることがありうるからである。それが起こらないことを保証するのが次の補題である。

補題 8.11(有理関数による高さの変化)g1(X),g2(X)∈Z[X]g_1(X), g_2(X) \in \mathbb{Z}[X] は複素数の共通根をもたず、d=deg⁡g1≥1d = \deg g_1 \geq 1, g2≠0g_2 \neq 0, deg⁡g2≤d\deg g_2 \leq d をみたすとする。既約分数 t=m/nt = m/n(n≥1n \geq 1)に対して Gi(m,n)=ndgi(m/n)G_i(m, n) = n^dg_i(m/n)(i=1,2i = 1, 2)とおく。これは m,nm, n の整数係数の dd 次斉次多項式である。

  1. g1,g2g_1, g_2 だけで決まる整数 R≥1R \geq 1 があって、すべての既約分数 m/nm/n について gcd⁡(G1(m,n),G2(m,n))\gcd(G_1(m, n), G_2(m, n)) は RR を割り切る。
  2. g1,g2g_1, g_2 だけで決まる定数 κ1≥0\kappa_1 \geq 0 があって、g2(t)≠0g_2(t) \neq 0 をみたすすべての t∈Qt \in \mathbb{Q} について
∣h(g1(t)/g2(t))−d h(t)∣≤κ1\bigl\lvert h\bigl(g_1(t)/g_2(t)\bigr) - d\,h(t) \bigr\rvert \leq \kappa_1

証明. (1) Q[X]\mathbb{Q}[X] は単項イデアル整域なので(04 第5章 系 5.31)、イデアル (g1,g2)(g_1, g_2) はある多項式 gg で生成される。gg は g1,g2g_1, g_2 を割るので、deg⁡g≥1\deg g \geq 1 なら gg の複素根が g1,g2g_1, g_2 の共通根になってしまう。よって gg は定数で、u1g1+u2g2=1u_1g_1 + u_2g_2 = 1 となる u1,u2∈Q[X]u_1, u_2 \in \mathbb{Q}[X] がある。整数 s≥1s \geq 1 を su1,su2∈Z[X]su_1, su_2 \in \mathbb{Z}[X] となるようにとり、D=max⁡(deg⁡u1,deg⁡u2)D = \max(\deg u_1, \deg u_2) とする。X=m/nX = m/n を代入して snD+dsn^{D+d} をかけると

(nDsu1(m/n)) G1(m,n)+(nDsu2(m/n)) G2(m,n)=snD+d\bigl(n^D su_1(m/n)\bigr)\,G_1(m, n) + \bigl(n^D su_2(m/n)\bigr)\,G_2(m, n) = sn^{D+d}

で、括弧の中は整数である。よって γ=gcd⁡(G1(m,n),G2(m,n))\gamma = \gcd(G_1(m, n), G_2(m, n))(G1,G2G_1, G_2 が同時に 0 になると m/nm/n が共通根になるので、γ≥1\gamma \geq 1 は定まる)は snD+dsn^{D+d} を割る。g1(X)=a0Xd+a1Xd−1+⋯+adg_1(X) = a_0X^d + a_1X^{d-1} + \cdots + a_d(a0≠0a_0 \neq 0)と書くと G1(m,n)=a0md+a1md−1n+⋯+adndG_1(m, n) = a_0m^d + a_1m^{d-1}n + \cdots + a_dn^d である。k=0,1,…,D+dk = 0, 1, \dots, D + d について γ∣sa0knD+d−k\gamma \mid sa_0^kn^{D+d-k} を帰納法で示す。k=0k = 0 は上で示した。k<D+dk < D + d で成り立つとすると、

sa0knD+d−k−1 G1(m,n)=sa0k+1mdnD+d−k−1+∑i=1dsa0kai md−inD+d−k−1+isa_0^kn^{D+d-k-1}\,G_1(m, n) = sa_0^{k+1}m^dn^{D+d-k-1} + \sum_{i=1}^{d} sa_0^ka_i\,m^{d-i}n^{D+d-k-1+i}

の左辺と右辺の和の各項(sa0knD+d−ksa_0^kn^{D+d-k} の倍数)は γ\gamma で割り切れるので、γ∣sa0k+1mdnD+d−k−1\gamma \mid sa_0^{k+1}m^dn^{D+d-k-1}。一方 γ∣sa0k+1nD+d−k\gamma \mid sa_0^{k+1}n^{D+d-k} でもあるから、gcd⁡(md,n)=1\gcd(m^d, n) = 1 より γ\gamma は sa0k+1nD+d−k−1gcd⁡(md,n)=sa0k+1nD+d−k−1sa_0^{k+1}n^{D+d-k-1}\gcd(m^d, n) = sa_0^{k+1}n^{D+d-k-1} を割る。k=D+dk = D + d として γ∣sa0D+d\gamma \mid sa_0^{D+d} を得るので、R=∣sa0D+d∣R = \lvert sa_0^{D+d} \rvert とおけばよい。

(2) t=m/nt = m/n(既約分数)とすると g1(t)/g2(t)=G1(m,n)/G2(m,n)g_1(t)/g_2(t) = G_1(m, n)/G_2(m, n) で、分母は 0 でない。μ=max⁡(∣m∣,n)=H(t)\mu = \max(\lvert m \rvert, n) = H(t) とおく。

上からの評価:gig_i の係数の絶対値の和の大きいほうを C2C_2 とすると、∣Gi(m,n)∣≤C2μd\lvert G_i(m, n) \rvert \leq C_2\mu^d なので H(g1(t)/g2(t))≤max⁡(∣G1∣,∣G2∣)≤C2H(t)dH(g_1(t)/g_2(t)) \leq \max(\lvert G_1 \rvert, \lvert G_2 \rvert) \leq C_2H(t)^d。

下からの評価:約分して既約分数にすると、分子と分母はちょうど γ\gamma で割られるので、(1) より H(g1(t)/g2(t))=max⁡(∣G1∣,∣G2∣)/γ≥max⁡(∣G1∣,∣G2∣)/RH(g_1(t)/g_2(t)) = \max(\lvert G_1 \rvert, \lvert G_2 \rvert)/\gamma \geq \max(\lvert G_1 \rvert, \lvert G_2 \rvert)/R。ここで、実数 (σ,τ)(\sigma, \tau) の関数 F(σ,τ)=max⁡(∣G1(σ,τ)∣,∣G2(σ,τ)∣)F(\sigma, \tau) = \max(\lvert G_1(\sigma, \tau) \rvert, \lvert G_2(\sigma, \tau) \rvert) を、コンパクト集合 S={(σ,τ)∈R2∣max⁡(∣σ∣,∣τ∣)=1}S = \lbrace (\sigma, \tau) \in \mathbb{R}^2 \mid \max(\lvert \sigma \rvert, \lvert \tau \rvert) = 1 \rbrace 上で考える。FF は連続で、SS 上で 0 にならない。実際、τ≠0\tau \neq 0 なら Gi(σ,τ)=τdgi(σ/τ)G_i(\sigma, \tau) = \tau^dg_i(\sigma/\tau) がともに 0 になることはなく(共通根がない)、τ=0\tau = 0 なら ∣σ∣=1\lvert \sigma \rvert = 1 で G1(σ,0)=a0σd≠0G_1(\sigma, 0) = a_0\sigma^d \neq 0 である。よって FF は SS 上で正の最小値 cc をとり、斉次性から F(m,n)=μdF(m/μ,n/μ)≥cμdF(m, n) = \mu^dF(m/\mu, n/\mu) \geq c\mu^d。したがって H(g1(t)/g2(t))≥(c/R)H(t)dH(g_1(t)/g_2(t)) \geq (c/R)H(t)^d。

以上の対数をとり、κ1=max⁡(log⁡C2,log⁡(R/c),0)\kappa_1 = \max(\log C_2, \log(R/c), 0) とすればよい。□\square

命題 8.12(性質 (H3)) (8.1) の EE について、a,b,ca, b, c だけで決まる定数 κ\kappa があって、すべての P∈E(Q)P \in E(\mathbb{Q}) について

∣h(2P)−4h(P)∣≤κ\lvert h(2P) - 4h(P) \rvert \leq \kappa

が成り立つ。特に h(2P)≥4h(P)−κh(2P) \geq 4h(P) - \kappa。

証明. P=(x,y)P = (x, y), y≠0y \neq 0 とすると、接線の傾きは λ=f′(x)/(2y)\lambda = f'(x)/(2y) で、加法公式から

x(2P)=λ2−a−2x=f′(x)2−4(2x+a)f(x)4f(x)=x4−2bx2−8cx+b2−4ac4x3+4ax2+4bx+4cx(2P) = \lambda^2 - a - 2x = \frac{f'(x)^2 - 4(2x + a)f(x)}{4f(x)} = \frac{x^4 - 2bx^2 - 8cx + b^2 - 4ac}{4x^3 + 4ax^2 + 4bx + 4c}

である(2 つ目の等号は y2=f(x)y^2 = f(x)、3 つ目は展開計算)。g1(X)=X4−2bX2−8cX+b2−4acg_1(X) = X^4 - 2bX^2 - 8cX + b^2 - 4ac, g2(X)=4f(X)g_2(X) = 4f(X) とおく。f(θ)=0f(\theta) = 0 なら g1(θ)=f′(θ)2−4(2θ+a)f(θ)=f′(θ)2≠0g_1(\theta) = f'(\theta)^2 - 4(2\theta + a)f(\theta) = f'(\theta)^2 \neq 0(ff は重根をもたない)なので、g1,g2g_1, g_2 は共通根をもたない。d=4d = 4 として補題 8.11 (2) を使うと、y≠0y \neq 0 の点について ∣h(2P)−4h(P)∣≤κ1\lvert h(2P) - 4h(P) \rvert \leq \kappa_1。残りの 2P=O2P = O となる点(OO と ff の有理根 θ\theta に対する (θ,0)(\theta, 0)、高々 4 個)では h(2P)=0h(2P) = 0 なので、κ=max⁡(κ1,4h(P))\kappa = \max(\kappa_1, 4h(P))(PP はそれらの点を動く)とすればよい。□\square

8.4 降下定理

次の定理は群と関数についての純粋に形式的な主張である。

定理 8.13(降下定理, descent theorem)Γ\Gamma をアーベル群とし、関数 h ⁣:Γ→R≥0h\colon \Gamma \to \mathbb{R}_{\geq 0} が次をみたすとする。

  1. 任意の M∈RM \in \mathbb{R} について {P∈Γ∣h(P)≤M}\lbrace P \in \Gamma \mid h(P) \leq M \rbrace は有限集合である。
  2. 任意の P0∈ΓP_0 \in \Gamma について定数 κ0\kappa_0 があって、すべての P∈ΓP \in \Gamma で h(P+P0)≤2h(P)+κ0h(P + P_0) \leq 2h(P) + \kappa_0。
  3. 定数 κ\kappa があって、すべての P∈ΓP \in \Gamma で h(2P)≥4h(P)−κh(2P) \geq 4h(P) - \kappa。
  4. [Γ:2Γ]<∞[\Gamma : 2\Gamma] < \infty。

このとき Γ\Gamma は有限生成である。より詳しく、Γ/2Γ\Gamma/2\Gamma の代表元 Q1,…,QsQ_1, \dots, Q_s をとり、(2) の P0=−QiP_0 = -Q_i に対する定数の最大値を κ′\kappa' とすると、Q1,…,QsQ_1, \dots, Q_s と、h(R)≤κ+κ′h(R) \leq \kappa + \kappa' をみたす R∈ΓR \in \Gamma 全体(有限個)とが Γ\Gamma を生成する。

証明. P∈ΓP \in \Gamma を任意にとり、R0=PR_0 = P とおく。Rj−1R_{j-1} が決まったら、Rj−1−Qij∈2ΓR_{j-1} - Q_{i_j} \in 2\Gamma となる iji_j をとり、Rj−1=Qij+2RjR_{j-1} = Q_{i_j} + 2R_j となる RjR_j を選ぶ。(3), (2) より

4h(Rj)≤h(2Rj)+κ=h(Rj−1−Qij)+κ≤2h(Rj−1)+κ′+κ4h(R_j) \leq h(2R_j) + \kappa = h(R_{j-1} - Q_{i_j}) + \kappa \leq 2h(R_{j-1}) + \kappa' + \kappa

すなわち h(Rj)≤12h(Rj−1)+14(κ+κ′)h(R_j) \leq \frac{1}{2}h(R_{j-1}) + \frac{1}{4}(\kappa + \kappa') である。したがって h(Rj−1)>κ+κ′h(R_{j-1}) > \kappa + \kappa' ならば、h(Rj−1)≥0h(R_{j-1}) \geq 0 に注意して

h(Rj)<12h(Rj−1)+14h(Rj−1)≤h(Rj−1)h(R_j) < \frac{1}{2}h(R_{j-1}) + \frac{1}{4}h(R_{j-1}) \leq h(R_{j-1})

つまり高さが κ+κ′\kappa + \kappa' を超えている間は h(R0)>h(R1)>⋯h(R_0) > h(R_1) > \cdots と真に減少する。そのあいだの RjR_j は互いに異なり、すべて有限集合 {R∣h(R)≤h(P)}\lbrace R \mid h(R) \leq h(P) \rbrace((1))に属するので、この減少は無限には続かない。よってある m≥0m \geq 0 で h(Rm)≤κ+κ′h(R_m) \leq \kappa + \kappa' となり、

P=Qi1+2Qi2+4Qi3+⋯+2m−1Qim+2mRmP = Q_{i_1} + 2Q_{i_2} + 4Q_{i_3} + \cdots + 2^{m-1}Q_{i_m} + 2^mR_m

と書ける。PP は任意だったので主張が従う。□\square

定理 8.14 (8.1) の EE について、E(Q)/2E(Q)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) が有限ならば E(Q)E(\mathbb{Q}) は有限生成である。

証明. Γ=E(Q)\Gamma = E(\mathbb{Q}) と素朴な高さ hh に定理 8.13 を適用する。(1)(2)(3) は命題 8.9, 8.10, 8.12 である。□\square

定理 8.15(弱モーデル–ヴェイユの定理, weak Mordell–Weil theorem)Q\mathbb{Q} 上の任意の楕円曲線 EE について、E(Q)/2E(Q)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) は有限群である。

8.5 節で、EE が位数 2 の有理点をもつ場合に完全な証明を与える(定理 8.20)。一般の場合は注意 8.21 で証明の概略を述べるにとどめる。命題 8.4、定理 8.14、定理 8.15 を合わせると定理 8.1 が従う。したがって本章の議論は、位数 2 の有理点をもつ曲線についてはモーデル–ヴェイユの定理の完全な証明になっている。

補足

定理 8.13 の 2 を任意の整数 m≥2m \geq 2 に、4 を m2m^2 に替えても同じ証明が通る(h(Rj)≤2m2h(Rj−1)+1m2(κ+κ′)h(R_j) \leq \frac{2}{m^2}h(R_{j-1}) + \frac{1}{m^2}(\kappa + \kappa') となる)。数体上の楕円曲線や高次元のアーベル多様体の場合も、証明は「高さ + 弱モーデル–ヴェイユ + 降下」という同じ形をとる。

8.5 2-同種写像と弱モーデル–ヴェイユの定理

EE が位数 2 の有理点をもつとする。(8.1) で ff は有理根 x0x_0 をもつが、ff はモニックな整数係数多項式なので x0∈Zx_0 \in \mathbb{Z} である。xx を x+x0x + x_0 に置き換えて 2 等分点を原点に移すと、方程式は y2=x3+ax2+bxy^2 = x^3 + ax^2 + bx(a,b∈Za, b \in \mathbb{Z})の形になる。そこでこの節と次の節では

E ⁣:y2=x3+ax2+bx,Eˉ ⁣:yˉ2=xˉ3+aˉxˉ2+bˉxˉ,aˉ=−2a,  bˉ=a2−4bE\colon y^2 = x^3 + ax^2 + bx, \qquad \bar{E}\colon \bar{y}^2 = \bar{x}^3 + \bar{a}\bar{x}^2 + \bar{b}\bar{x}, \qquad \bar{a} = -2a,\ \ \bar{b} = a^2 - 4b

とし、a,b∈Za, b \in \mathbb{Z}, b(a2−4b)≠0b(a^2 - 4b) \neq 0 を仮定する。x3+ax2+bxx^3 + ax^2 + bx の判別式は b2(a2−4b)b^2(a^2 - 4b) なので、これは EE が非特異であることと同値である。bˉ(aˉ2−4bˉ)=16b(a2−4b)≠0\bar{b}(\bar{a}^2 - 4\bar{b}) = 16b(a^2 - 4b) \neq 0 より Eˉ\bar{E} も非特異である。T=(0,0)∈ET = (0, 0) \in E, Tˉ=(0,0)∈Eˉ\bar{T} = (0, 0) \in \bar{E} とおき、Γ=E(Q)\Gamma = E(\mathbb{Q}), Γˉ=Eˉ(Q)\bar{\Gamma} = \bar{E}(\mathbb{Q}) と略記する。

第3章の命題 3.26(2-同種写像)で見たように(そこでの E′E' が Eˉ\bar{E} である)、次の式で 2-同種写像 φ ⁣:E→Eˉ\varphi\colon E \to \bar{E} とその双対 φ^ ⁣:Eˉ→E\hat{\varphi}\colon \bar{E} \to E が定まる:

φ(x,y)=(y2x2,y(b−x2)x2),φ^(xˉ,yˉ)=(yˉ24xˉ2,yˉ(bˉ−xˉ2)8xˉ2)\varphi(x, y) = \left(\frac{y^2}{x^2}, \frac{y(b - x^2)}{x^2}\right), \qquad \hat{\varphi}(\bar{x}, \bar{y}) = \left(\frac{\bar{y}^2}{4\bar{x}^2}, \frac{\bar{y}(\bar{b} - \bar{x}^2)}{8\bar{x}^2}\right)

(φ(O)=φ(T)=Oˉ\varphi(O) = \varphi(T) = \bar{O}, φ^(Oˉ)=φ^(Tˉ)=O\hat{\varphi}(\bar{O}) = \hat{\varphi}(\bar{T}) = O)。文献によっては yy 座標の符号を逆にとるが、φ\varphi と φ^\hat{\varphi} をともに −1-1 倍しても以下の議論は変わらない。

命題 8.16(第3章 定理 3.10・命題 3.26)

  1. φ\varphi, φ^\hat{\varphi} は群準同型で、φ(Γ)⊂Γˉ\varphi(\Gamma) \subset \bar{\Gamma}, φ^(Γˉ)⊂Γ\hat{\varphi}(\bar{\Gamma}) \subset \Gamma。
  2. ker⁡φ={O,T}\ker\varphi = \lbrace O, T \rbrace, ker⁡φ^={Oˉ,Tˉ}\ker\hat{\varphi} = \lbrace \bar{O}, \bar{T} \rbrace。
  3. φ^∘φ=[2]\hat{\varphi} \circ \varphi = [2](EE 上), φ∘φ^=[2]\varphi \circ \hat{\varphi} = [2](Eˉ\bar{E} 上)。

(1) の準同型性は第3章 定理 3.10(同種写像は準同型)による。有理点を有理点に移すのは式の係数が有理数だからである。(2)(3) は第3章 命題 3.26 で示されている((3) は直接の計算でも確かめられる)。

Eˉ\bar{E} にもう一度同じ構成をすると aˉˉ=4a\bar{\bar{a}} = 4a, bˉˉ=16b\bar{\bar{b}} = 16b となり、Eˉˉ ⁣:y2=x3+4ax2+16bx\bar{\bar{E}}\colon y^2 = x^3 + 4ax^2 + 16bx は ι(x,y)=(4x,8y)\iota(x, y) = (4x, 8y) によって EE と同型である。Eˉ\bar{E} に対する φ^\hat{\varphi} を φ^Eˉ ⁣:Eˉˉ→Eˉ\hat{\varphi}_{\bar{E}}\colon \bar{\bar{E}} \to \bar{E} と書くと、式に代入して φ^Eˉ∘ι=φ\hat{\varphi}_{\bar{E}} \circ \iota = \varphi がわかる。つまり EE と Eˉ\bar{E} の役割は対称で、(E,φ^)(E, \hat{\varphi}) について示したことは (Eˉ,φ)(\bar{E}, \varphi) についても成り立つ。

φ^(xˉ,yˉ)\hat{\varphi}(\bar{x}, \bar{y}) の xx 座標 (yˉ/2xˉ)2(\bar{y}/2\bar{x})^2 は平方数である。したがって xx 座標が平方数でない点は φ^\hat{\varphi} の像に入らない。これを群の言葉にしたのが次の写像である。

定義 8.17(写像 α\alpha)α ⁣:Γ→Q×/Q×2\alpha\colon \Gamma \to \mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times 2} を

α(O)=1,α(T)=b,α(x,y)=x(x≠0)\alpha(O) = 1, \qquad \alpha(T) = b, \qquad \alpha(x, y) = x \quad (x \neq 0)

(右辺は平方類)で定める。Eˉ\bar{E} についても同様に、αˉ ⁣:Γˉ→Q×/Q×2\bar{\alpha}\colon \bar{\Gamma} \to \mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times 2} を αˉ(Oˉ)=1\bar{\alpha}(\bar{O}) = 1, αˉ(Tˉ)=bˉ=a2−4b\bar{\alpha}(\bar{T}) = \bar{b} = a^2 - 4b, αˉ(xˉ,yˉ)=xˉ\bar{\alpha}(\bar{x}, \bar{y}) = \bar{x}(xˉ≠0\bar{x} \neq 0)で定める。

α(T)=b\alpha(T) = b とする理由:x≠0x \neq 0, y≠0y \neq 0 の点では x(x2+ax+b)=y2x(x^2 + ax + b) = y^2 より xx と x2+ax+bx^2 + ax + b は平方類として等しく、TT では後者の値が bb になる。

命題 8.18

  1. α\alpha は群準同型である。
  2. ker⁡α=φ^(Γˉ)\ker\alpha = \hat{\varphi}(\bar{\Gamma})。
  3. bb の相異なる素因数を p1,…,ptp_1, \dots, p_t とすると α(Γ)⊂⟨−1,p1,…,pt⟩\alpha(\Gamma) \subset \langle -1, p_1, \dots, p_t \rangle。特に [Γ:φ^(Γˉ)]=∣α(Γ)∣≤2t+1[\Gamma : \hat{\varphi}(\bar{\Gamma})] = \lvert \alpha(\Gamma) \rvert \leq 2^{t+1}。

αˉ\bar{\alpha} についても同様で、ker⁡αˉ=φ(Γ)\ker\bar{\alpha} = \varphi(\Gamma), [Γˉ:φ(Γ)]=∣αˉ(Γˉ)∣≤2tˉ+1[\bar{\Gamma} : \varphi(\Gamma)] = \lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert \leq 2^{\bar{t}+1}(tˉ\bar{t} は bˉ\bar{b} の相異なる素因数の個数)。

証明. (1) −(x,y)=(x,−y)-(x, y) = (x, -y), −T=T-T = T より α(−P)=α(P)\alpha(-P) = \alpha(P)。Q×/Q×2\mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times 2} の元の位数は 1 か 2 なので、P1+P2+P3=OP_1 + P_2 + P_3 = O ならば α(P1)α(P2)α(P3)=1\alpha(P_1)\alpha(P_2)\alpha(P_3) = 1 となることを示せば、α(P1+P2)=α(−P3)=α(P3)=α(P1)α(P2)\alpha(P_1 + P_2) = \alpha(-P_3) = \alpha(P_3) = \alpha(P_1)\alpha(P_2) が従う。

PiP_i のどれかが OO なら、残りの 2 点は互いに逆元で α\alpha の値が等しいから積は 1。どれも OO でないとき、P1,P2P_1, P_2 を通る直線(P1=P2P_1 = P_2 なら接線)は EE と 3 点目 −(P1+P2)=P3-(P_1 + P_2) = P_3 で交わり(第2章 定義 2.4・命題 2.5)、P3≠OP_3 \neq O だから垂直でない。その直線を y=λx+νy = \lambda x + \nu とすると、P1,P2,P3P_1, P_2, P_3 の xx 座標 x1,x2,x3x_1, x_2, x_3 は、重複度を込めて

x3+ax2+bx−(λx+ν)2=x3+(a−λ2)x2+(b−2λν)x−ν2x^3 + ax^2 + bx - (\lambda x + \nu)^2 = x^3 + (a - \lambda^2)x^2 + (b - 2\lambda\nu)x - \nu^2

の 3 根である(第2章 定理 2.6 の証明)。よって x1x2x3=ν2x_1x_2x_3 = \nu^2 である。

  • どの PiP_i も TT でなければ、xi≠0x_i \neq 0(x=0x = 0 の点は TT だけ)なので ν≠0\nu \neq 0 で、α(P1)α(P2)α(P3)=x1x2x3=ν2\alpha(P_1)\alpha(P_2)\alpha(P_3) = x_1x_2x_3 = \nu^2 は平方類として 1。
  • どれかが TT のときは、番号を付け替えて P3=TP_3 = T とする(2 つが TT なら残りは −2T=O-2T = O になるので、TT は 1 つだけ)。直線は原点を通るから ν=0\nu = 0 で、上の 3 次式は x(x2+(a−λ2)x+b)x(x^2 + (a - \lambda^2)x + b) となる。b≠0b \neq 0 より 00 は単根なので、x1,x2x_1, x_2 は x2+(a−λ2)x+bx^2 + (a - \lambda^2)x + b の 2 根で、x1x2=bx_1x_2 = b、特に x1,x2≠0x_1, x_2 \neq 0。よって α(P1)α(P2)α(T)=x1x2b=b2\alpha(P_1)\alpha(P_2)\alpha(T) = x_1x_2b = b^2 は平方類として 1。

(2) ⊃\supset:α(φ^(Oˉ))=α(φ^(Tˉ))=α(O)=1\alpha(\hat{\varphi}(\bar{O})) = \alpha(\hat{\varphi}(\bar{T})) = \alpha(O) = 1。Pˉ=(xˉ,yˉ)\bar{P} = (\bar{x}, \bar{y}), xˉ≠0\bar{x} \neq 0 とする。yˉ≠0\bar{y} \neq 0 なら φ^(Pˉ)\hat{\varphi}(\bar{P}) の xx 座標 (yˉ/2xˉ)2(\bar{y}/2\bar{x})^2 は 0 でない平方数なので α(φ^(Pˉ))=1\alpha(\hat{\varphi}(\bar{P})) = 1。yˉ=0\bar{y} = 0 なら φ^(Pˉ)=T\hat{\varphi}(\bar{P}) = T で、xˉ\bar{x} は xˉ2+aˉxˉ+bˉ\bar{x}^2 + \bar{a}\bar{x} + \bar{b} の有理根だから判別式 aˉ2−4bˉ=16b\bar{a}^2 - 4\bar{b} = 16b は平方数、よって α(T)=b=1\alpha(T) = b = 1(平方類)。

⊂\subset:α(P)=1\alpha(P) = 1 とする。P=OP = O なら P=φ^(Oˉ)P = \hat{\varphi}(\bar{O})。P=TP = T なら bb は平方数なので、xˉ2+aˉxˉ+bˉ\bar{x}^2 + \bar{a}\bar{x} + \bar{b} は(判別式 16b16b が平方数だから)有理根 xˉ0\bar{x}_0 をもち、bˉ≠0\bar{b} \neq 0 より xˉ0≠0\bar{x}_0 \neq 0 で、φ^(xˉ0,0)=T\hat{\varphi}(\bar{x}_0, 0) = T。P=(x,y)P = (x, y), x≠0x \neq 0 なら、x=w2x = w^2(w∈Q×w \in \mathbb{Q}^\times)と書ける。

xˉ±=2w2+a±2yw\bar{x}_{\pm} = 2w^2 + a \pm \frac{2y}{w}

とおくと、y2=w2(w4+aw2+b)y^2 = w^2(w^4 + aw^2 + b) を使って xˉ++xˉ−=4w2+2a\bar{x}_+ + \bar{x}_- = 4w^2 + 2a, xˉ+xˉ−=(2w2+a)2−4(w4+aw2+b)=a2−4b\bar{x}_+\bar{x}_- = (2w^2 + a)^2 - 4(w^4 + aw^2 + b) = a^2 - 4b となる。特に xˉ+≠0\bar{x}_+ \neq 0 で、xˉ+\bar{x}_+ は 2 次方程式 xˉ2−(4w2+2a)xˉ+(a2−4b)=0\bar{x}^2 - (4w^2 + 2a)\bar{x} + (a^2 - 4b) = 0 の根である。両辺に xˉ\bar{x} をかけて整理すると xˉ3−2axˉ2+(a2−4b)xˉ=4w2xˉ2\bar{x}^3 - 2a\bar{x}^2 + (a^2 - 4b)\bar{x} = 4w^2\bar{x}^2 なので、Pˉ=(xˉ+,−2wxˉ+)\bar{P} = (\bar{x}_+, -2w\bar{x}_+) は Eˉ\bar{E} の有理点である。φ^(Pˉ)\hat{\varphi}(\bar{P}) の xx 座標は (2wxˉ+)2/(4xˉ+2)=w2=x(2w\bar{x}_+)^2/(4\bar{x}_+^2) = w^2 = x、yy 座標は

−2wxˉ+(bˉ−xˉ+2)8xˉ+2=w4(xˉ+−bˉxˉ+)=w4(xˉ+−xˉ−)=w4⋅4yw=y\frac{-2w\bar{x}_+(\bar{b} - \bar{x}_+^2)}{8\bar{x}_+^2} = \frac{w}{4}\left(\bar{x}_+ - \frac{\bar{b}}{\bar{x}_+}\right) = \frac{w}{4}(\bar{x}_+ - \bar{x}_-) = \frac{w}{4} \cdot \frac{4y}{w} = y

なので、φ^(Pˉ)=P\hat{\varphi}(\bar{P}) = P。

(3) P≠O,TP \neq O, T とし、P=(m/e2,n/e3)P = (m/e^2, n/e^3) と書く(補題 8.7。m≠0m \neq 0)。y2=x(x2+ax+b)y^2 = x(x^2 + ax + b) に e6e^6 をかけると

n2=m (m2+ame2+be4)n^2 = m\,(m^2 + ame^2 + be^4)

mm と m2+ame2+be4m^2 + ame^2 + be^4 の最大公約数は be4be^4 を割り、gcd⁡(m,e)=1\gcd(m, e) = 1 より ee と素なので、bb を割る。pp を bb を割らない素数とすると、pp は 2 つの因子の両方を割ることはなく、積 n2n^2 の vpv_p は偶数なので、vp(m)v_p(m) は偶数である。したがって mm は、±1\pm 1 と p1,…,ptp_1, \dots, p_t のべきの積に平方数をかけたもので、α(P)=m/e2=m∈⟨−1,p1,…,pt⟩\alpha(P) = m/e^2 = m \in \langle -1, p_1, \dots, p_t \rangle。α(T)=b\alpha(T) = b もこの群に属する。最後の主張は (1)(2) と準同型定理 Γ/ker⁡α≅α(Γ)\Gamma/\ker\alpha \cong \alpha(\Gamma) による。

αˉ\bar{\alpha} については、Eˉ\bar{E} に (1)–(3) を適用し、φ^Eˉ(Eˉˉ(Q))=φ^Eˉ(ι(Γ))=φ(Γ)\hat{\varphi}_{\bar{E}}(\bar{\bar{E}}(\mathbb{Q})) = \hat{\varphi}_{\bar{E}}(\iota(\Gamma)) = \varphi(\Gamma) を使えばよい。□\square

補題 8.19(指数の計算)A,BA, B をアーベル群、λ ⁣:A→B\lambda\colon A \to B, μ ⁣:B→A\mu\colon B \to A を準同型で、μ∘λ\mu \circ \lambda が AA 上の 2 倍写像であるものとする。[A:μ(B)][A : \mu(B)] と [B:λ(A)][B : \lambda(A)] が有限ならば [A:2A][A : 2A] も有限で

[A:2A]=[A:μ(B)]⋅[B:λ(A)][ker⁡μ:ker⁡μ∩λ(A)][A : 2A] = \frac{[A : \mu(B)] \cdot [B : \lambda(A)]}{[\ker\mu : \ker\mu \cap \lambda(A)]}

特に [A:2A]≤[A:μ(B)]⋅[B:λ(A)][A : 2A] \leq [A : \mu(B)] \cdot [B : \lambda(A)]。

証明. 2A=μ(λ(A))⊂μ(B)⊂A2A = \mu(\lambda(A)) \subset \mu(B) \subset A なので [A:2A]=[A:μ(B)]⋅[μ(B):μ(λ(A))][A : 2A] = [A : \mu(B)] \cdot [\mu(B) : \mu(\lambda(A))]。全射 B→μ(B)/μ(λ(A))B \to \mu(B)/\mu(\lambda(A)), β↦μ(β)\beta \mapsto \mu(\beta) の核は λ(A)+ker⁡μ\lambda(A) + \ker\mu である(μ(β)=μ(λ(a))\mu(\beta) = \mu(\lambda(a))   ⟺  \iff β−λ(a)∈ker⁡μ\beta - \lambda(a) \in \ker\mu)。よって

[μ(B):μ(λ(A))]=[B:λ(A)+ker⁡μ]=[B:λ(A)][λ(A)+ker⁡μ:λ(A)][\mu(B) : \mu(\lambda(A))] = [B : \lambda(A) + \ker\mu] = \frac{[B : \lambda(A)]}{[\lambda(A) + \ker\mu : \lambda(A)]}

で、第 2 同型定理より (λ(A)+ker⁡μ)/λ(A)≅ker⁡μ/(ker⁡μ∩λ(A))(\lambda(A) + \ker\mu)/\lambda(A) \cong \ker\mu/(\ker\mu \cap \lambda(A))。□\square

定理 8.20(弱モーデル–ヴェイユの定理:位数 2 の有理点をもつ場合)E ⁣:y2=x3+ax2+bxE\colon y^2 = x^3 + ax^2 + bx について

[E(Q):2E(Q)]≤∣α(Γ)∣⋅∣αˉ(Γˉ)∣≤2t+tˉ+2[E(\mathbb{Q}) : 2E(\mathbb{Q})] \leq \lvert \alpha(\Gamma) \rvert \cdot \lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert \leq 2^{t + \bar{t} + 2}

(tt, tˉ\bar{t} は bb, bˉ\bar{b} の相異なる素因数の個数)。したがって、位数 2 の有理点をもつ Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線 EE について、E(Q)E(\mathbb{Q}) は有限生成である。

証明. 補題 8.19 を A=ΓA = \Gamma, B=ΓˉB = \bar{\Gamma}, λ=φ\lambda = \varphi, μ=φ^\mu = \hat{\varphi} に適用し(命題 8.16 (3))、命題 8.18 を使う。最後の主張は、この節の冒頭の変数変換と定理 8.14 による(y2=x3+ax2+bxy^2 = x^3 + ax^2 + bx は c=0c = 0 の (8.1) である)。□\square

注意 8.21(一般の場合の弱モーデル–ヴェイユの定理:概略)EE が位数 2 の有理点をもたないとき、すなわち (8.1) の ff が Q\mathbb{Q} 上既約なときの証明の方針を述べる(詳しくは Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves 第 VIII 章)。ff の 3 根 e1,e2,e3e_1, e_2, e_3 を添加した体を KK とすると、位数 2 の点はすべて KK 有理点になり、

E(K)/2E(K)→(K×/K×2)2,(x,y)↦(x−e1, x−e2)E(K)/2E(K) \to (K^\times/K^{\times 2})^2, \qquad (x, y) \mapsto (x - e_1,\ x - e_2)

(位数 2 の点では、α(T)=b\alpha(T) = b と同じように値を修正する)が単射準同型になる。その像は「2Δ2\Delta を割らない素イデアルでの付値がすべて偶数」という条件をみたす類の組全体のなす群に含まれ、この群が有限であることは、KK の類数の有限性(15 第3章 定理 3.10)と単数群の有限生成性(同 定理 3.19)から従う。最後に、P∈E(Q)∩2E(K)P \in E(\mathbb{Q}) \cap 2E(K) に対し 2Q=P2Q = P となる Q∈E(K)Q \in E(K) をとって写像 σ↦σ(Q)−Q\sigma \mapsto \sigma(Q) - Q を考えると、E(Q)/2E(Q)→E(K)/2E(K)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) \to E(K)/2E(K) の核が、Gal⁡(K/Q)\operatorname{Gal}(K/\mathbb{Q}) から E[2]E[2] への写像全体という有限集合に単射で写されることがわかり、E(Q)/2E(Q)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) は有限になる。以上の各段階の証明は本書では省略する。

8.6 階数の公式と計算例

弱モーデル–ヴェイユの定理の証明は、階数を計算する方法も与える。

定理 8.22(階数の公式)E ⁣:y2=x3+ax2+bxE\colon y^2 = x^3 + ax^2 + bx の階数を rr とすると

2r=∣α(E(Q))∣⋅∣αˉ(Eˉ(Q))∣42^r = \frac{\lvert \alpha(E(\mathbb{Q})) \rvert \cdot \lvert \bar{\alpha}(\bar{E}(\mathbb{Q})) \rvert}{4}

証明. 定理 8.20 により Γ≅Zr⊕F\Gamma \cong \mathbb{Z}^r \oplus F(FF は有限アーベル群)と書ける。FF 上の 2 倍写像の核を F[2]F[2] とすると ∣F∣=∣F[2]∣⋅∣2F∣\lvert F \rvert = \lvert F[2] \rvert \cdot \lvert 2F \rvert なので ∣F/2F∣=∣F[2]∣\lvert F/2F \rvert = \lvert F[2] \rvert であり、

[Γ:2Γ]=2r ∣Γ[2]∣,Γ[2]={P∈Γ∣2P=O}[\Gamma : 2\Gamma] = 2^r\,\lvert \Gamma[2] \rvert, \qquad \Gamma[2] = \lbrace P \in \Gamma \mid 2P = O \rbrace

一方、補題 8.19 と命題 8.18 より

[Γ:2Γ]=∣α(Γ)∣⋅∣αˉ(Γˉ)∣[ker⁡φ^:ker⁡φ^∩φ(Γ)][\Gamma : 2\Gamma] = \frac{\lvert \alpha(\Gamma) \rvert \cdot \lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert}{[\ker\hat{\varphi} : \ker\hat{\varphi} \cap \varphi(\Gamma)]}

Γ[2]\Gamma[2] は OO, TT と、x2+ax+bx^2 + ax + b の有理根 xx に対する (x,0)(x, 0) からなる。a2−4b≠0a^2 - 4b \neq 0 なので、a2−4ba^2 - 4b が平方数なら ∣Γ[2]∣=4\lvert \Gamma[2] \rvert = 4、そうでなければ ∣Γ[2]∣=2\lvert \Gamma[2] \rvert = 2。また φ(x,y)=Tˉ\varphi(x, y) = \bar{T} となるのは y=0y = 0, x≠0x \neq 0 のときだから、Tˉ∈φ(Γ)\bar{T} \in \varphi(\Gamma) であることも a2−4ba^2 - 4b が平方数であることと同値で、[ker⁡φ^:ker⁡φ^∩φ(Γ)][\ker\hat{\varphi} : \ker\hat{\varphi} \cap \varphi(\Gamma)] はそのとき 1、そうでないとき 2 である。いずれの場合も ∣Γ[2]∣⋅[ker⁡φ^:ker⁡φ^∩φ(Γ)]=4\lvert \Gamma[2] \rvert \cdot [\ker\hat{\varphi} : \ker\hat{\varphi} \cap \varphi(\Gamma)] = 4 なので、2 つの式を比べて主張を得る。□\square

像 α(Γ)\alpha(\Gamma) を決めるには、次の判定法を使う。局所的な場合(8.7 節)にも使うので、R\mathbb{R} や Qp\mathbb{Q}_p 上でも述べておく。

命題 8.23(像の判定)kk を Q\mathbb{Q}, R\mathbb{R}, Qp\mathbb{Q}_p のいずれかとし、αk ⁣:E(k)→k×/k×2\alpha_k\colon E(k) \to k^\times/k^{\times 2} を定義 8.17 と同じ式で定める(αQ=α\alpha_{\mathbb{Q}} = \alpha)。d∈k×d \in k^\times に対して

Cd ⁣: N2=dM4+aM2e2+bde4(8.2)C_d\colon\ N^2 = dM^4 + aM^2e^2 + \frac{b}{d}e^4 \tag{8.2}

とおく。dd の平方類が αk(E(k))\alpha_k(E(k)) に属するための必要十分条件は、CdC_d が (M,e)≠(0,0)(M, e) \neq (0, 0) となる解 (M,e,N)∈k3(M, e, N) \in k^3 をもつことである。M≠0M \neq 0, e≠0e \neq 0 の解からは、αk\alpha_k の値が dd の点

(dM2e2,dMNe3)∈E(k)\left(\frac{dM^2}{e^2}, \frac{dMN}{e^3}\right) \in E(k)

が得られる。k=Qk = \mathbb{Q} で dd が bb を割る整数のときは、gcd⁡(M,e)=1\gcd(M, e) = 1 をみたす整数解だけを調べればよい。

証明. 上の点が EE 上にあることは、b=d⋅(b/d)b = d \cdot (b/d) を使った計算

(dM2e2)3+a(dM2e2)2+b dM2e2=d2M2e6(dM4+aM2e2+bde4)=(dMNe3)2\left(\frac{dM^2}{e^2}\right)^3 + a\left(\frac{dM^2}{e^2}\right)^2 + b\,\frac{dM^2}{e^2} = \frac{d^2M^2}{e^6}\left(dM^4 + aM^2e^2 + \frac{b}{d}e^4\right) = \left(\frac{dMN}{e^3}\right)^2

からわかる。

(⇐\Leftarrow) e=0e = 0 の解では N2=dM4N^2 = dM^4, M≠0M \neq 0 なので、dd は平方類として 1=αk(O)1 = \alpha_k(O)。M=0M = 0 の解では N2=(b/d)e4N^2 = (b/d)e^4, e≠0e \neq 0 なので b/db/d は平方元で、dd は平方類として b=αk(T)b = \alpha_k(T) に等しい。M,e≠0M, e \neq 0 なら上の点の αk\alpha_k の値は dM2/e2=ddM^2/e^2 = d(平方類)。

(⇒\Rightarrow) αk(P)=d\alpha_k(P) = d(平方類)とする。P=OP = O なら d=s2d = s^2 と書けて (M,e,N)=(1,0,s)(M, e, N) = (1, 0, s) が解。P=TP = T なら b/d=s2b/d = s^2 と書けて (0,1,s)(0, 1, s) が解。P=(x,y)P = (x, y), x≠0x \neq 0 なら x=ds2x = ds^2(s∈k×s \in k^\times)と書け、y2=x(x2+ax+b)y^2 = x(x^2 + ax + b) を d2s2d^2s^2 で割ると

(yds)2=ds4+as2+bd\left(\frac{y}{ds}\right)^2 = ds^4 + as^2 + \frac{b}{d}

なので (M,e,N)=(s,1,y/(ds))(M, e, N) = (s, 1, y/(ds)) が解である。

最後の主張:有理数解 (M,e,N)(M, e, N) があれば、M,eM, e の分母の公倍数 ℓ\ell を使って (ℓM,ℓe,ℓ2N)(\ell M, \ell e, \ell^2N) に替えると M,eM, e は整数になる。d,a,b/dd, a, b/d が整数なので N2N^2 は整数で、平方が整数である有理数は整数だから NN も整数である。さらに g=gcd⁡(M,e)g = \gcd(M, e) とすると g4∣N2g^4 \mid N^2 より g2∣Ng^2 \mid N なので、(M/g,e/g,N/g2)(M/g, e/g, N/g^2) も解である。□\square

命題 8.18 (3) より、α(Γ)\alpha(\Gamma) を決めるには、bb の約数で平方因子をもたない dd(符号を含めて 2t+12^{t+1} 個)について (8.2) の整数解の有無を調べればよい。像は部分群なので、いくつかの dd がわかれば残りは積でわかることも多い。解を見つけるには小さな (M,e)(M, e) を探し、解がないことを示すには R\mathbb{R} での符号や、素数べきを法とする合同式を使う。

例 8.24(y2=x3−xy^2 = x^3 - x:階数 0)a=0a = 0, b=−1b = -1 で、Eˉ ⁣:y2=x3+4x\bar{E}\colon y^2 = x^3 + 4x。

  • α(Γ)⊂⟨−1⟩={±1}\alpha(\Gamma) \subset \langle -1 \rangle = \lbrace \pm 1 \rbrace で、α(T)=−1\alpha(T) = -1 だから α(Γ)={±1}\alpha(\Gamma) = \lbrace \pm 1 \rbrace。
  • bˉ=4\bar{b} = 4 より αˉ(Γˉ)⊂{±1,±2}\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \subset \lbrace \pm 1, \pm 2 \rbrace。d<0d < 0 なら 4/d<04/d < 0 で、(8.2) の右辺 dM4+(4/d)e4dM^4 + (4/d)e^4 は (M,e)≠(0,0)(M, e) \neq (0, 0) で負だから解がない。d=2d = 2 では (M,e,N)=(1,1,2)(M, e, N) = (1, 1, 2) が解で、点 (2,4)∈Eˉ(Q)(2, 4) \in \bar{E}(\mathbb{Q}) が得られる。よって αˉ(Γˉ)={1,2}\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) = \lbrace 1, 2 \rbrace。

定理 8.22 より 2r=2⋅2/4=12^r = 2 \cdot 2/4 = 1、r=0r = 0。したがって E(Q)=E(Q)tors={O,(0,0),(±1,0)}E(\mathbb{Q}) = E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} = \lbrace O, (0, 0), (\pm 1, 0) \rbrace(第7章 例 7.8)。

例 8.25(y2=x3−2xy^2 = x^3 - 2x:階数 1)b=−2b = -2, Eˉ ⁣:y2=x3+8x\bar{E}\colon y^2 = x^3 + 8x。α(T)=−2\alpha(T) = -2, α(−1,1)=−1\alpha(-1, 1) = -1 より α(Γ)=⟨−1,2⟩\alpha(\Gamma) = \langle -1, 2 \rangle(4 元)。αˉ(Γˉ)⊂⟨−1,2⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \subset \langle -1, 2 \rangle で、負の dd は例 8.24 と同じく符号で除かれ、αˉ(Tˉ)=8=2\bar{\alpha}(\bar{T}) = 8 = 2(平方類)。よって αˉ(Γˉ)={1,2}\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) = \lbrace 1, 2 \rbrace、2r=4⋅2/4=22^r = 4 \cdot 2/4 = 2、r=1r = 1。

例 8.26(y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x:階数 1)b=−25b = -25, Eˉ ⁣:y2=x3+100x\bar{E}\colon y^2 = x^3 + 100x。3 つの 2 等分点で α(T)=−25=−1\alpha(T) = -25 = -1, α(5,0)=5\alpha(5, 0) = 5, α(−5,0)=−5\alpha(-5, 0) = -5 なので α(Γ)=⟨−1,5⟩\alpha(\Gamma) = \langle -1, 5 \rangle(4 元)。bˉ=100\bar{b} = 100 より αˉ(Γˉ)⊂⟨−1,2,5⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \subset \langle -1, 2, 5 \rangle で、負の dd は符号で除かれ、αˉ(Tˉ)=100=1\bar{\alpha}(\bar{T}) = 100 = 1。d=5d = 5 では (1,1,5)(1, 1, 5) が解で、点 (5,25)∈Eˉ(Q)(5, 25) \in \bar{E}(\mathbb{Q}) が得られる。d=2d = 2 の方程式 N2=2M4+50e4N^2 = 2M^4 + 50e^4 は自明でない解をもたない。実際、gcd⁡(M,e)=1\gcd(M, e) = 1 の解があったとすると、N=2N1N = 2N_1 と書けて 2N12=M4+25e42N_1^2 = M^4 + 25e^4。右辺が偶数だから M,eM, e はともに奇数で、奇数の 4 乗は 16 を法として 1 だから M4+25e4≡26≡10(mod16)M^4 + 25e^4 \equiv 26 \equiv 10 \pmod{16}。すると N12≡5(mod8)N_1^2 \equiv 5 \pmod 8 となるが、平方数を 8 で割った余りは 0, 1, 4 のどれかなので矛盾する。22 が像に入らないので 1010 も入らない(入れば 10⋅5=50=210 \cdot 5 = 50 = 2 も入る)。よって αˉ(Γˉ)={1,5}\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) = \lbrace 1, 5 \rbrace、2r=4⋅2/4=22^r = 4 \cdot 2/4 = 2、r=1r = 1。ねじれ部分群は {O,(0,0),(±5,0)}\lbrace O, (0, 0), (\pm 5, 0) \rbrace なので(第7章 例 7.12)、たとえば (−4,6)(-4, 6) は無限位数の点である。

例 8.27(y2=x3−17xy^2 = x^3 - 17x:階数 2)b=−17b = -17, Eˉ ⁣:y2=x3+68x\bar{E}\colon y^2 = x^3 + 68x。α(T)=−17\alpha(T) = -17 に加えて、d=−1d = -1 の方程式 N2=−M4+17e4N^2 = -M^4 + 17e^4 の解 (1,1,4)(1, 1, 4) から点 (−1,−4)(-1, -4) が得られるので、α(Γ)=⟨−1,17⟩\alpha(\Gamma) = \langle -1, 17 \rangle(4 元)。bˉ=68=22⋅17\bar{b} = 68 = 2^2 \cdot 17 で αˉ(Γˉ)⊂⟨−1,2,17⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \subset \langle -1, 2, 17 \rangle、負の dd は符号で除かれる。αˉ(Tˉ)=68=17\bar{\alpha}(\bar{T}) = 68 = 17 で、d=2d = 2 の方程式 N2=2M4+34e4N^2 = 2M^4 + 34e^4 の解 (1,1,6)(1, 1, 6) から点 (2,12)∈Eˉ(Q)(2, 12) \in \bar{E}(\mathbb{Q}) が得られる。よって αˉ(Γˉ)=⟨2,17⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) = \langle 2, 17 \rangle(4 元)、2r=4⋅4/4=42^r = 4 \cdot 4/4 = 4、r=2r = 2。この例では、符号による除外のほかには、解がないことを示すべき方程式は残らなかった。

手計算の結果を PARI/GP(バージョン 2.15.4)の計算と照合しておく。 ellrank の欄は返り値の最初の 2 成分(階数の下界と上界)である。

曲線 ラベル ∣α(Γ)∣\lvert \alpha(\Gamma) \rvert ∣αˉ(Γˉ)∣\lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert rr(手計算) ellrank ellanalyticrank elltors
y2=x3−xy^2 = x^3 - x 32a2 2 2 0 0, 0 0 (Z/2Z)2(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2
y2=x3−2xy^2 = x^3 - 2x 256b1 4 2 1 1, 1 1 Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}
y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x 800a1 4 2 1 1, 1 1 (Z/2Z)2(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2
y2=x3−17xy^2 = x^3 - 17x 9248g1 4 4 2 2, 2 2 Z/2Z\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}

たとえば最後の行は ellrank(ellinit([0,0,0,-17,0])) で得られる( ellinit の係数の順序は [a1,a2,a3,a4,a6][a_1, a_2, a_3, a_4, a_6])。

合同数問題への応用

3 辺が有理数の直角三角形の面積になる正の整数を合同数 (congruent number) という。平方因子をもたない正の整数 nn について En ⁣:y2=x3−n2xE_n\colon y^2 = x^3 - n^2x とおく。第1章の例 1.1(合同数と 3 次曲線)で見たように、nn が合同数であることと、EnE_n が y≠0y \neq 0 の有理点をもつことは同値である。

命題 8.28 nn が合同数であることと、rank⁡En(Q)≥1\operatorname{rank} E_n(\mathbb{Q}) \geq 1 であることは同値である。

証明. En(Q)tors={O,(0,0),(±n,0)}E_n(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} = \lbrace O, (0, 0), (\pm n, 0) \rbrace である(第7章 例 7.12・問題 7.10。Koblitz, Introduction to Elliptic Curves and Modular Forms 第 I 章も参照)。これらは OO と y=0y = 0 の 3 点なので、「y≠0y \neq 0 の有理点がある」ことと「無限位数の点がある」こと、すなわち r≥1r \geq 1 は同値である。第1章の対応(例 1.1・問題 1.3)と合わせればよい。□\square

n=1n = 1 では例 8.24 より r=0r = 0 なので、1 は合同数でない(フェルマーの定理)。n=5n = 5 では例 8.26 より r=1r = 1 で、5 は合同数である。面積 5 の三角形 (3/2,20/3,41/6)(3/2, 20/3, 41/6) は、例 1.1 の対応で点 (−4,6)(-4, 6) から得られ((x2−25)/y=−3/2(x^2 - 25)/y = -3/2, 10x/y=−20/310x/y = -20/3, (x2+25)/y=41/6(x^2 + 25)/y = 41/6)、問題 8.7 のように点 2⋅(−4,6)2 \cdot (-4, 6) の xx 座標からも得られる。n=3n = 3 が合同数でないことは問題 8.5 で示す。合同数であるための必要条件を与え、BSD 予想を仮定すれば十分条件にもなるタネルの定理は、第10章(定理 10.13)で扱う。

8.7 セルマー群とテイト–シャファレビッチ群

例 8.24–8.26 で dd が像に入らないことを示すのに使ったのは、R\mathbb{R} での符号と、2 のべきを法とする合同式(Q2\mathbb{Q}_2 での可解性)だった。方程式 (8.2) が R\mathbb{R} や Qp\mathbb{Q}_p で解をもたなければ、Q\mathbb{Q} でも解をもたない。この局所的な判定をすべての素数と ∞\infty について行って残る dd の集まりが、セルマー群である。以下、pp は素数または ∞\infty を表し、Q∞=R\mathbb{Q}_\infty = \mathbb{R} とする。命題 8.18 (1) の証明は体の演算しか使っていないので、命題 8.23 の αp=αQp ⁣:E(Qp)→Qp×/Qp×2\alpha_p = \alpha_{\mathbb{Q}_p}\colon E(\mathbb{Q}_p) \to \mathbb{Q}_p^\times/\mathbb{Q}_p^{\times 2} も準同型である。

定義 8.29(セルマー群, Selmer group)

Sel⁡(φ^)(Eˉ/Q)={d∈Q×/Q×2∣すべての p≤∞ について、d の Qp×/Qp×2 での類が αp(E(Qp)) に属する}\operatorname{Sel}^{(\hat{\varphi})}(\bar{E}/\mathbb{Q}) = \lbrace d \in \mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times 2} \mid \text{すべての } p \leq \infty \text{ について、} d \text{ の } \mathbb{Q}_p^\times/\mathbb{Q}_p^{\times 2} \text{ での類が } \alpha_p(E(\mathbb{Q}_p)) \text{ に属する} \rbrace

を(同種写像 φ^ ⁣:Eˉ→E\hat{\varphi}\colon \bar{E} \to E に関する)セルマー群という。αˉp\bar{\alpha}_p を使って同様に Sel⁡(φ)(E/Q)\operatorname{Sel}^{(\varphi)}(E/\mathbb{Q}) を定める。

命題 8.30

  1. α(Γ)⊂Sel⁡(φ^)(Eˉ/Q)⊂⟨−1,p1,…,pt⟩\alpha(\Gamma) \subset \operatorname{Sel}^{(\hat{\varphi})}(\bar{E}/\mathbb{Q}) \subset \langle -1, p_1, \dots, p_t \rangle(pip_i は bb の相異なる素因数)。
  2. bb の約数で平方因子をもたない dd について、d∈Sel⁡(φ^)(Eˉ/Q)d \in \operatorname{Sel}^{(\hat{\varphi})}(\bar{E}/\mathbb{Q}) であることと、(8.2) の CdC_d が R\mathbb{R} とすべての Qp\mathbb{Q}_p で (M,e)≠(0,0)(M, e) \neq (0, 0) となる解をもつことは同値である。
  3. 2r≤∣Sel⁡(φ^)(Eˉ/Q)∣⋅∣Sel⁡(φ)(E/Q)∣/42^r \leq \lvert \operatorname{Sel}^{(\hat{\varphi})}(\bar{E}/\mathbb{Q}) \rvert \cdot \lvert \operatorname{Sel}^{(\varphi)}(E/\mathbb{Q}) \rvert / 4。

証明. (1) P∈ΓP \in \Gamma について、α(P)\alpha(P) の Qp\mathbb{Q}_p での類は αp(P)\alpha_p(P) だから、最初の包含は明らか。2 つ目の包含のためには、p∤bp \nmid b のとき αp(E(Qp))\alpha_p(E(\mathbb{Q}_p)) の元の vpv_p が偶数であることを示せばよい。αp(T)=b\alpha_p(T) = b は vp(b)=0v_p(b) = 0。P=(x,y)P = (x, y), x≠0x \neq 0 とする。vp(x)<0v_p(x) < 0 なら vp(x3+ax2+bx)=3vp(x)v_p(x^3 + ax^2 + bx) = 3v_p(x) で、これが 2vp(y)2v_p(y) に等しいから vp(x)v_p(x) は偶数。vp(x)>0v_p(x) > 0 なら vp(x2+ax+b)=vp(b)=0v_p(x^2 + ax + b) = v_p(b) = 0 なので vp(x)=2vp(y)v_p(x) = 2v_p(y) は偶数。vp(x)=0v_p(x) = 0 なら明らか。(2) は命題 8.23 を各 Qp\mathbb{Q}_p で使えばよい。(3) は (1) と定理 8.22 による。□\square

さらに、p∤2b(a2−4b)p \nmid 2b(a^2 - 4b) の素数 pp での条件は、(1) の群の元について自動的にみたされることが知られている(CdC_d の pp を法とする還元が有限体上の種数 1 の非特異曲線になり、それが有理点をもつことと、ヘンゼルの補題による)。したがってセルマー群は、∞\infty と 2b(a2−4b)2b(a^2 - 4b) の素因数という有限個の pp を調べれば計算できる。これに対して α(Γ)\alpha(\Gamma) を決めるには、CdC_d の有理点を見つけるか、ないことを証明しなければならない。両者の差を測るのがテイト–シャファレビッチ群である。その正確な定義にはガロア・コホモロジーが要るので、主張だけをまとめておく。

定理 8.31(主張:ガロア・コホモロジーによる定式化)G=Gal⁡(Q‾/Q)G = \operatorname{Gal}(\overline{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q}) とし、離散 GG 加群 MM について H1(Q,M)H^1(\mathbb{Q}, M) を、連続な 1-コサイクル ξ ⁣:G→M\xi\colon G \to M(ξ(στ)=ξ(σ)+σξ(τ)\xi(\sigma\tau) = \xi(\sigma) + \sigma\xi(\tau))全体を 1-コバウンダリ(σ↦σm−m\sigma \mapsto \sigma m - m)で割った群とする。Qp\mathbb{Q}_p についても同様に H1(Qp,M)H^1(\mathbb{Q}_p, M) を定め、H1(Q,E)=H1(Q,E(Q‾))H^1(\mathbb{Q}, E) = H^1(\mathbb{Q}, E(\overline{\mathbb{Q}})) などと略記する。

  1. Q\mathbb{Q} 上定義された同種写像 λ ⁣:E1→E2\lambda\colon E_1 \to E_2 について、完全列 0→E1[λ]→E1(Q‾)→E2(Q‾)→00 \to E_1[\lambda] \to E_1(\overline{\mathbb{Q}}) \to E_2(\overline{\mathbb{Q}}) \to 0 から完全列
0→E2(Q)/λ(E1(Q))→ δ H1(Q,E1[λ])→H1(Q,E1)[λ]→00 \to E_2(\mathbb{Q})/\lambda(E_1(\mathbb{Q})) \xrightarrow{\ \delta\ } H^1(\mathbb{Q}, E_1[\lambda]) \to H^1(\mathbb{Q}, E_1)[\lambda] \to 0

が得られる。ここで δ(Q)\delta(Q) は、λ(Q′)=Q\lambda(Q') = Q となる Q′∈E1(Q‾)Q' \in E_1(\overline{\mathbb{Q}}) をとったときの σ↦σ(Q′)−Q′\sigma \mapsto \sigma(Q') - Q' の類である。各 Qp\mathbb{Q}_p でも同様である。 2. セルマー群とテイト–シャファレビッチ群 (Tate–Shafarevich group) を

Sel⁡(λ)(E1/Q)=ker⁡(H1(Q,E1[λ])→∏p≤∞H1(Qp,E1))\operatorname{Sel}^{(\lambda)}(E_1/\mathbb{Q}) = \ker\Bigl(H^1(\mathbb{Q}, E_1[\lambda]) \to \prod_{p \leq \infty} H^1(\mathbb{Q}_p, E_1)\Bigr)
Ш(E1/Q)=ker⁡(H1(Q,E1)→∏p≤∞H1(Qp,E1))\text{Ш}(E_1/\mathbb{Q}) = \ker\Bigl(H^1(\mathbb{Q}, E_1) \to \prod_{p \leq \infty} H^1(\mathbb{Q}_p, E_1)\Bigr)

で定めると、Sel⁡(λ)(E1/Q)\operatorname{Sel}^{(\lambda)}(E_1/\mathbb{Q}) は有限群で、次の完全列が成り立つ:

0→E2(Q)/λ(E1(Q))→Sel⁡(λ)(E1/Q)→Ш(E1/Q)[λ]→00 \to E_2(\mathbb{Q})/\lambda(E_1(\mathbb{Q})) \to \operatorname{Sel}^{(\lambda)}(E_1/\mathbb{Q}) \to \text{Ш}(E_1/\mathbb{Q})[\lambda] \to 0

特に λ=[m]\lambda = [m] のとき 0→E(Q)/mE(Q)→Sel⁡(m)(E/Q)→Ш(E/Q)[m]→00 \to E(\mathbb{Q})/mE(\mathbb{Q}) \to \operatorname{Sel}^{(m)}(E/\mathbb{Q}) \to \text{Ш}(E/\mathbb{Q})[m] \to 0。 3. λ=φ^ ⁣:Eˉ→E\lambda = \hat{\varphi}\colon \bar{E} \to E のとき、Eˉ[φ^]={Oˉ,Tˉ}≅Z/2Z\bar{E}[\hat{\varphi}] = \lbrace \bar{O}, \bar{T} \rbrace \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}(GG は自明に作用する)で、クンマー理論により H1(Q,Eˉ[φ^])≅Q×/Q×2H^1(\mathbb{Q}, \bar{E}[\hat{\varphi}]) \cong \mathbb{Q}^\times/\mathbb{Q}^{\times 2} となる。この同一視で δ\delta は α\alpha に一致し、(2) のセルマー群は定義 8.29 のものに一致する。λ=φ\lambda = \varphi と αˉ\bar{\alpha} についても同様である。

証明は Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves 第 X 章を参照。H1(Q,E)H^1(\mathbb{Q}, E) の元は、EE の主等質空間 (principal homogeneous space)、すなわち Q‾\overline{\mathbb{Q}} 上で EE と同型になる Q\mathbb{Q} 上の種数 1 の曲線 CC で EE が単純推移的に作用するもの、の同型類と対応し、C(Q)≠∅C(\mathbb{Q}) \neq \emptyset であることと対応する元が 0 であることが同値になる(主張)。したがって Ш(E/Q)\text{Ш}(E/\mathbb{Q}) の 0 でない元は、R\mathbb{R} とすべての Qp\mathbb{Q}_p で点をもつのに Q\mathbb{Q} では点をもたない曲線、つまり局所大域原理 (local-global principle) が成り立たない曲線を表す。(8.2) の CdC_d は Eˉ\bar{E} の主等質空間(のアフィン・モデル)であり、d∈Sel⁡(φ^)(Eˉ/Q)d \in \operatorname{Sel}^{(\hat{\varphi})}(\bar{E}/\mathbb{Q}) かつ d∉α(Γ)d \notin \alpha(\Gamma) となる dd が、この現象の例になる。完全列から

∣Sel⁡(φ^)(Eˉ/Q)∣⋅∣Sel⁡(φ)(E/Q)∣4=2r⋅∣Ш(Eˉ/Q)[φ^]∣⋅∣Ш(E/Q)[φ]∣\frac{\lvert \operatorname{Sel}^{(\hat{\varphi})}(\bar{E}/\mathbb{Q}) \rvert \cdot \lvert \operatorname{Sel}^{(\varphi)}(E/\mathbb{Q}) \rvert}{4} = 2^r \cdot \lvert \text{Ш}(\bar{E}/\mathbb{Q})[\hat{\varphi}] \rvert \cdot \lvert \text{Ш}(E/\mathbb{Q})[\varphi] \rvert

であり、命題 8.30 (3) の上界が階数に一致するのは、右辺の 2 つの Ш\text{Ш} の部分群が自明なときに限る。

予想 8.32(テイト–シャファレビッチ予想)Ш(E/Q)\text{Ш}(E/\mathbb{Q}) は有限群である。

これは一般には未解決だが、解析的階数(第10章 命題 10.8)が 0 または 1 の曲線では、グロス–ザギエとコリヴァギンの結果(とモジュラー性定理)により、階数が解析的階数に等しく Ш\text{Ш} が有限であることが証明されている(第10章 定理 10.12)。また、Ш\text{Ш} が有限ならその位数は平方数である(カッセルス)。

例 8.33(局所大域原理の破れ:リンド–ライヒャルトの曲線)E ⁣:y2=x3+17xE\colon y^2 = x^3 + 17x(18496k1)、Eˉ ⁣:y2=x3−68x\bar{E}\colon y^2 = x^3 - 68x とする。a=0a = 0, b=17>0b = 17 > 0 なので負の dd は R\mathbb{R} で解をもたず、Sel⁡(φ^)(Eˉ/Q)=α(Γ)={1,17}\operatorname{Sel}^{(\hat{\varphi})}(\bar{E}/\mathbb{Q}) = \alpha(\Gamma) = \lbrace 1, 17 \rbrace(α(T)=17\alpha(T) = 17)。bˉ=−68\bar{b} = -68 なので αˉ(Γˉ)⊂⟨−1,2,17⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \subset \langle -1, 2, 17 \rangle(8 元)で、αˉ(Tˉ)=−68=−17\bar{\alpha}(\bar{T}) = -68 = -17(平方類)。この 8 個の dd すべてについて、方程式 N2=dM4−(68/d)e4N^2 = dM^4 - (68/d)e^4 は R\mathbb{R} とすべての Qp\mathbb{Q}_p で自明でない解をもつ(∞\infty, 2, 17 では具体的な解が見つかり(問題 8.8 参照)、それ以外の pp では上で述べた一般論による)。したがって ∣Sel⁡(φ)(E/Q)∣=8\lvert \operatorname{Sel}^{(\varphi)}(E/\mathbb{Q}) \rvert = 8 で、命題 8.30 (3) は 2r≤2⋅8/4=42^r \leq 2 \cdot 8/4 = 4、つまり r≤2r \leq 2 しか与えない。しかし実際には r=0r = 0 である(PARI/GP の ellrank は下界・上界としてともに 0 を返す)。よって αˉ(Γˉ)={1,−17}\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) = \lbrace 1, -17 \rbrace で、Ш(E/Q)[φ]≅(Z/2Z)2\text{Ш}(E/\mathbb{Q})[\varphi] \cong (\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2 である。たとえば d=2d = 2 の方程式 N2=2M4−34e4N^2 = 2M^4 - 34e^4 は、NN が偶数であることに注意して N=2N′N = 2N', x=e/Mx = e/M, y=N′/M2y = N'/M^2 とおくと

2y2=1−17x42y^2 = 1 - 17x^4

に移る(M=0M = 0 の自明でない解はない)。これがリンド–ライヒャルトの曲線で、R\mathbb{R} とすべての Qp\mathbb{Q}_p で点をもつが Q\mathbb{Q} では点をもたない(リンド、ライヒャルトによる。主張)。BSD 予想の公式(第10章 予想 10.9)から予想される ∣Ш(E/Q)∣\lvert \text{Ш}(E/\mathbb{Q}) \rvert は 4 である(PARI/GP の lfun と ellbsd で数値的に確かめられる)。

もう一つの古典的な例は、セルマーの 3 次曲線

3x3+4y3+5z3=03x^3 + 4y^3 + 5z^3 = 0

である。これは R\mathbb{R} とすべての Qp\mathbb{Q}_p で自明でない解をもつが、Q\mathbb{Q} では自明な解 (0,0,0)(0, 0, 0) しかもたない(セルマー。主張)。この曲線は楕円曲線 x3+y3+60z3=0x^3 + y^3 + 60z^3 = 0 の主等質空間で、その Ш\text{Ш} の位数 3 の元を表す。2 次形式ではハッセ–ミンコフスキーの定理(15 第5章 定理 5.26)により局所大域原理が成り立つが、種数 1 の曲線では一般に成り立たない。

補足

実際の階数の計算では、セルマー群による上界と、有理点の探索による下界とを比べる。両者が一致しないときは、CdC_d に対してさらに降下を行う(4-降下など)か、L 関数の解析的な情報を使う。Ш\text{Ш} が有限ならこの手続きは原理的に必ず終わるが、どの楕円曲線についても階数を無条件に求められるアルゴリズムは知られていない。

8.8 ネロン–テイトの標準的高さ

命題 8.12 によれば h(2P)h(2P) は 4h(P)4h(P) と有界な差しかない。テイトは、この「ほぼ 2 次」の関数を極限によって正確に 2 次の関数に直した。まず、高さが方程式の取り方にほとんどよらないことを確かめる。

補題 8.34(モデルの取り替え)Q\mathbb{Q} 上の 2 つのワイエルシュトラス方程式 EE, E′E' が許容される変数変換 x=u2x′+rx = u^2x' + r, y=u3y′+su2x′+ty = u^3y' + su^2x' + t(u∈Q×u \in \mathbb{Q}^\times, r,s,t∈Qr, s, t \in \mathbb{Q})で移り合うとし、P∈E(Q)P \in E(\mathbb{Q}) に対応する E′E' の点を P′P' とする。定数 CC があって、すべての PP について ∣hE(P)−hE′(P′)∣≤C\lvert h_E(P) - h_{E'}(P') \rvert \leq C。また、任意のワイエルシュトラス方程式について、定数 κ\kappa があってすべての PP で ∣h(2P)−4h(P)∣≤κ\lvert h(2P) - 4h(P) \rvert \leq \kappa。

証明. x′=(x−r)/u2x' = (x - r)/u^2 である。rr と u2u^2 の分母の公倍数 β\beta をとり、g1(X)=βX−βrg_1(X) = \beta X - \beta r, g2(X)=βu2g_2(X) = \beta u^2(0 でない整数の定数)とおくと、x′=g1(x)/g2(x)x' = g_1(x)/g_2(x) で、補題 8.11 (2) が d=1d = 1 で使える。P=OP = O では両辺とも 0。後半は、命題 8.4 で EE を (8.1) の形の E′E' に移し、前半と命題 8.12 を組み合わせればよい(∣hE(2P)−4hE(P)∣≤C+κE′+4C\lvert h_E(2P) - 4h_E(P) \rvert \leq C + \kappa_{E'} + 4C)。□\square

定理 8.35(ネロン–テイトの高さの存在:テイトの方法)EE を Q\mathbb{Q} 上のワイエルシュトラス方程式で与え、κ\kappa をすべての Q∈E(Q)Q \in E(\mathbb{Q}) について ∣h(2Q)−4h(Q)∣≤κ\lvert h(2Q) - 4h(Q) \rvert \leq \kappa となる定数とする(補題 8.34)。P∈E(Q)P \in E(\mathbb{Q}) について極限

h^(P)=lim⁡n→∞h(2nP)4n\hat{h}(P) = \lim_{n \to \infty} \frac{h(2^nP)}{4^n}

が存在し、次が成り立つ。

  1. ∣h^(P)−h(P)∣≤κ/3\lvert \hat{h}(P) - h(P) \rvert \leq \kappa/3。
  2. h^(2P)=4h^(P)\hat{h}(2P) = 4\hat{h}(P), h^(−P)=h^(P)\hat{h}(-P) = \hat{h}(P), h^(P)≥0\hat{h}(P) \geq 0。
  3. h^\hat{h} は、h^−h\hat{h} - h が有界で h^(2P)=4h^(P)\hat{h}(2P) = 4\hat{h}(P) をみたすただ一つの関数である。特に h^\hat{h} はワイエルシュトラス方程式の取り方によらない。
  4. h^(P)=0  ⟺  P\hat{h}(P) = 0 \iff P はねじれ点。

h^\hat{h} を EE のネロン–テイトの高さ(標準的高さ, canonical height)という。

証明. n>m≥0n > m \geq 0 とすると、Q=2kPQ = 2^kP に仮定を使って

∣h(2nP)4n−h(2mP)4m∣≤∑k=mn−1∣h(2k+1P)4k+1−h(2kP)4k∣=∑k=mn−1∣h(2⋅2kP)−4h(2kP)∣4k+1≤∑k=mn−1κ4k+1<κ3⋅4m\left\lvert \frac{h(2^nP)}{4^n} - \frac{h(2^mP)}{4^m} \right\rvert \leq \sum_{k=m}^{n-1} \left\lvert \frac{h(2^{k+1}P)}{4^{k+1}} - \frac{h(2^kP)}{4^k} \right\rvert = \sum_{k=m}^{n-1} \frac{\lvert h(2 \cdot 2^kP) - 4h(2^kP) \rvert}{4^{k+1}} \leq \sum_{k=m}^{n-1} \frac{\kappa}{4^{k+1}} < \frac{\kappa}{3 \cdot 4^m}

よって h(2nP)/4nh(2^nP)/4^n はコーシー列で収束する。m=0m = 0 として n→∞n \to \infty とすれば (1) を得る。(2) の第 1 式は h^(2P)=lim⁡4⋅h(2n+1P)/4n+1\hat{h}(2P) = \lim 4 \cdot h(2^{n+1}P)/4^{n+1} から、第 2 式は h(−Q)=h(Q)h(-Q) = h(Q) から、第 3 式は h≥0h \geq 0 から従う。

(3) gg も同じ性質をもつとし、∣g−h^∣≤B\lvert g - \hat{h} \rvert \leq B とする。g−h^g - \hat{h} も (g−h^)(2P)=4(g−h^)(P)(g - \hat{h})(2P) = 4(g - \hat{h})(P) をみたすので、∣g(P)−h^(P)∣=∣(g−h^)(2nP)∣/4n≤B/4n\lvert g(P) - \hat{h}(P) \rvert = \lvert (g - \hat{h})(2^nP) \rvert/4^n \leq B/4^n がすべての nn で成り立ち、g=h^g = \hat{h}。別の方程式 E′E' から作った h^′\hat{h}' は、(1) と補題 8.34 により h^′−hE=(h^′−hE′)+(hE′−hE)\hat{h}' - h_E = (\hat{h}' - h_{E'}) + (h_{E'} - h_E) が有界なので、h^′=h^\hat{h}' = \hat{h}。

(4) PP がねじれ点なら {2nP∣n≥0}\lbrace 2^nP \mid n \geq 0 \rbrace は有限集合なので h(2nP)h(2^nP) は有界で、h^(P)=0\hat{h}(P) = 0。逆に h^(P)=0\hat{h}(P) = 0 なら、(1)(2) よりすべての nn で

h(2nP)≤h^(2nP)+κ3=4nh^(P)+κ3=κ3h(2^nP) \leq \hat{h}(2^nP) + \frac{\kappa}{3} = 4^n\hat{h}(P) + \frac{\kappa}{3} = \frac{\kappa}{3}

命題 8.9(任意のワイエルシュトラス方程式で成り立つ)より h≤κ/3h \leq \kappa/3 の点は有限個なので、2nP=2mP2^nP = 2^mP となる n>mn > m があり、(2n−2m)P=O(2^n - 2^m)P = O。□\square

h^\hat{h} がさらに良い性質をもつことは、次の定理で保証される。

定理 8.36(主張)h^\hat{h} は E(Q)E(\mathbb{Q}) 上の 2 次形式である。すなわち

  1. (平行四辺形の法則)すべての P,QP, Q について h^(P+Q)+h^(P−Q)=2h^(P)+2h^(Q)\hat{h}(P + Q) + \hat{h}(P - Q) = 2\hat{h}(P) + 2\hat{h}(Q)。
  2. ⟨P,Q⟩=12(h^(P+Q)−h^(P)−h^(Q))\langle P, Q \rangle = \frac{1}{2}\bigl(\hat{h}(P + Q) - \hat{h}(P) - \hat{h}(Q)\bigr) は対称な双線形形式で、⟨P,P⟩=h^(P)\langle P, P \rangle = \hat{h}(P)。特に h^(mP)=m2h^(P)\hat{h}(mP) = m^2\hat{h}(P)(m∈Zm \in \mathbb{Z})。
  3. h^\hat{h} は E(Q)⊗R≅RrE(\mathbb{Q}) \otimes \mathbb{R} \cong \mathbb{R}^r 上の正定値 2 次形式に延長される。

証明の鍵は、素朴な高さについての評価 h(P+Q)+h(P−Q)=2h(P)+2h(Q)+O(1)h(P + Q) + h(P - Q) = 2h(P) + 2h(Q) + O(1) で、x(P+Q)+x(P−Q)x(P + Q) + x(P - Q) と x(P+Q)x(P−Q)x(P + Q)x(P - Q) を x(P)x(P), x(Q)x(Q) の有理式で表して補題 8.11 と同様の評価をすることで示される。(3) は (1)(2)、定理 8.35 (4)、命題 8.9 から格子についての議論で従う。証明は Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves 第 VIII 章を参照。(2) と定理 8.35 (1) から h(mP)=m2h^(P)+O(1)h(mP) = m^2\hat{h}(P) + O(1) なので、h^(P)=lim⁡m→∞h(mP)/m2\hat{h}(P) = \lim_{m \to \infty} h(mP)/m^2 でもある。

注意

正規化に注意. 本章の h^\hat{h} は、xx 座標の対数高さ h(P)=log⁡H(x(P))h(P) = \log H(x(P)) から、係数 12\frac{1}{2} をつけずに作ったものである。この正規化は PARI/GP の ellheight(E, P)(バージョン 2.15.4 で確認)と LMFDB の表示に一致し、37a1 の P=(0,0)P = (0, 0) では h^(P)=0.0511114082…\hat{h}(P) = 0.0511114082\ldots となる(例 8.37)。ペアリングも、PARI/GP の ellheight(E, P, Q) と LMFDB は本章と同じく 12\frac{1}{2} をつけて定義していて、⟨P,P⟩=h^(P)\langle P, P \rangle = \hat{h}(P) である。一方、h^\hat{h} そのものに 12\frac{1}{2} をかけて定義する文献もあり(Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves など)、その場合 h^\hat{h} の値は本章の半分になる。そのような文献ではペアリングの 12\frac{1}{2} も省かれていることがあり、レギュレーターが本章の値と一致するかどうかはペアリングの定義で決まる。数値を比べるときは、h^\hat{h} とペアリングの両方の正規化を必ず確かめること。

例 8.37(37a1 での数値)E ⁣:y2+y=x3−xE\colon y^2 + y = x^3 - x, P=(0,0)P = (0, 0) とする。2nP2^nP の xx 座標は

x(2P)=1,x(4P)=2,x(8P)=2125,x(16P)=4801064225x(2P) = 1, \quad x(4P) = 2, \quad x(8P) = \frac{21}{25}, \quad x(16P) = \frac{480106}{4225}

と急速に複雑になり(x(32P)x(32P) の分子は 23 桁)、h(2nP)/4nh(2^nP)/4^n は次のように h^(P)\hat{h}(P) に近づく(PARI/GP で計算)。

nn 2 3 4 6 8 10 極限
h(2nP)/4nh(2^nP)/4^n 0.0433217 0.0502949 0.0511006 0.0511014 0.0511106 0.05111140815 0.05111140824
H(2nP)H(2^nP) の桁数 1 2 6 91 1455 23276

素朴な高さ h(2nP)h(2^nP) は 4n4^n に比例して増え、h^(P)\hat{h}(P) はその比例定数を測っている。この方法で h^(P)\hat{h}(P) を数桁求めるには巨大な整数を扱う必要があるので、実際の計算(PARI/GP など)では、h^\hat{h} を各素数と ∞\infty での局所的な高さの和に分解して計算する(Silverman, Advanced Topics in the Arithmetic of Elliptic Curves を参照)。

8.9 レギュレーター、数体上の場合、階数の記録

定義 8.38(レギュレーター, regulator)P1,…,PrP_1, \dots, P_r を E(Q)E(\mathbb{Q}) の自由部分の基底とするとき

Reg⁡(E)=det⁡(⟨Pi,Pj⟩)1≤i,j≤r\operatorname{Reg}(E) = \det\bigl(\langle P_i, P_j \rangle\bigr)_{1 \leq i, j \leq r}

を EE のレギュレーターという(r=0r = 0 なら Reg⁡(E)=1\operatorname{Reg}(E) = 1)。

Reg⁡(E)\operatorname{Reg}(E) は基底の取り方によらない。実際、別の基底は U∈GL⁡r(Z)U \in \operatorname{GL}_r(\mathbb{Z}) による一次変換とねじれ点の加算で得られ、前者で行列式は (det⁡U)2=1(\det U)^2 = 1 倍になり、後者では値が変わらない(ねじれ点 TT の位数を nn とすると n⟨T,Q⟩=⟨nT,Q⟩=0n\langle T, Q \rangle = \langle nT, Q \rangle = 0 なので ⟨T,Q⟩=0\langle T, Q \rangle = 0)。定理 8.36 (3) より Reg⁡(E)>0\operatorname{Reg}(E) > 0 であり、Reg⁡(E)\operatorname{Reg}(E) は、⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangle を内積とする E(Q)⊗RE(\mathbb{Q}) \otimes \mathbb{R} の中での格子 E(Q)/E(Q)torsE(\mathbb{Q})/E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} の基本領域の体積の 2 乗である。また定理 8.36 (3) より、点 Q1,…,QkQ_1, \dots, Q_k がねじれを法として一次独立であることは、行列 (⟨Qi,Qj⟩)(\langle Q_i, Q_j \rangle) が正則であることと同値である。

例 8.39

  1. 37a1:Reg⁡(E)=⟨P,P⟩=h^(0,0)=0.0511114082…\operatorname{Reg}(E) = \langle P, P \rangle = \hat{h}(0, 0) = 0.0511114082\ldots。この曲線はねじれ部分群が自明で玉河数の積が 1 なので、BSD 予想の公式(第10章 予想 10.9)は L′(E,1)=ΩEReg⁡(E)∣Ш(E/Q)∣L'(E, 1) = \Omega_E \operatorname{Reg}(E) \lvert \text{Ш}(E/\mathbb{Q}) \rvert となる。ここで ΩE=∫E(R)∣ω∣\Omega_E = \int_{E(\mathbb{R})} \lvert \omega \rvert であり、37a1 では Δ=37>0\Delta = 37 > 0 なので E(R)E(\mathbb{R}) は 2 つの連結成分をもち、ΩE\Omega_E は実周期 ω1=2.9934586462…\omega_1 = 2.9934586462\ldots の 2 倍になる(第10章 10.4 節)。数値は L′(E,1)=0.3059997738…L'(E, 1) = 0.3059997738\ldots, ΩE=5.9869172925…\Omega_E = 5.9869172925\ldots で、L′(E,1)/(ΩEReg⁡(E))=1.0000…L'(E, 1)/(\Omega_E \operatorname{Reg}(E)) = 1.0000\ldots となり、∣Ш∣=1\lvert \text{Ш} \rvert = 1 と整合する(PARI/GP の ellanalyticrank, ellbsd で計算)。
  2. 9248g1(y2=x3−17xy^2 = x^3 - 17x):P1=(−1,4)P_1 = (-1, 4), P2=(−4,2)P_2 = (-4, 2) について
(⟨P1,P1⟩⟨P1,P2⟩⟨P2,P1⟩⟨P2,P2⟩)=(1.17218309870.44769738830.44769738831.7550260162),Reg⁡(E)=1.8567788824…\begin{pmatrix} \langle P_1, P_1 \rangle & \langle P_1, P_2 \rangle \\ \langle P_2, P_1 \rangle & \langle P_2, P_2 \rangle \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1.1721830987 & 0.4476973883 \\ 0.4476973883 & 1.7550260162 \end{pmatrix}, \qquad \operatorname{Reg}(E) = 1.8567788824\ldots

(PARI/GP の ellheightmatrix で計算。LMFDB の値と一致する)。

数体上の場合

定理 8.40(主張:数体上のモーデル–ヴェイユの定理)KK を代数体、EE を KK 上の楕円曲線とすると、E(K)E(K) は有限生成アーベル群である。

証明の形は Q\mathbb{Q} の場合と同じである。KK のすべての絶対値を使って KK の元の高さを定めると、(H1)–(H3) の類似が成り立ち、弱モーデル–ヴェイユの定理は注意 8.21 の議論を KK 上で行えば得られる(類数の有限性と単数定理が鍵になる。Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves 第 VIII 章)。ねじれ部分群については第7章のメレルの定理(定理 7.20)を参照。

例 8.41(体を大きくすると階数は増えうる)E ⁣:y2=x3−xE\colon y^2 = x^3 - x は Q\mathbb{Q} 上で階数 0 だが(例 8.24)、K=Q(5)K = \mathbb{Q}(\sqrt{5}) 上では点 P=(−4/5,65/25)P = (-4/5, 6\sqrt{5}/25) をもつ。(x,y)↦(5x,55y)(x, y) \mapsto (5x, 5\sqrt{5}y) は KK 上の同型 E→E5 ⁣:Y2=X3−25XE \to E_5\colon Y^2 = X^3 - 25X で(125(x3−x)=(5x)3−25⋅5x125(x^3 - x) = (5x)^3 - 25 \cdot 5x)、PP を例 8.26 の無限位数の点 (−4,6)(-4, 6) に移すので、PP は E(K)E(K) の無限位数の点である。一般に E(Q(d))E(\mathbb{Q}(\sqrt{d})) の階数は、EE と二次ツイスト dy2=x3+ax2+bx+cdy^2 = x^3 + ax^2 + bx + c の Q\mathbb{Q} 上の階数の和に等しい(主張)。

階数の大きな曲線

Q\mathbb{Q} 上の楕円曲線の階数が有界かどうかは未解決である。階数の大きい曲線の例としては、2006 年にエルキースが階数が少なくとも 28 の楕円曲線を見つけ、2024 年にはエルキースとクラグスブランが階数が少なくとも 29 の楕円曲線を見つけている。「少なくとも」と書くのは、28 個(29 個)の独立な有理点が見つかって下界は確定しているが(独立性は高さの行列の正則性で確かめられる)、上界と一致させて階数そのものを無条件に決定するのは難しいからである(一般化リーマン予想を仮定すれば、それぞれの階数はちょうど 28, 29 であることが示されている)。

まとめ

  • 高さ h(P)=log⁡H(x(P))h(P) = \log H(x(P)) は (H1) 有界な高さの点の有限性、(H2) h(P+P0)≤2h(P)+κ0h(P + P_0) \leq 2h(P) + \kappa_0、(H3) h(2P)≥4h(P)−κh(2P) \geq 4h(P) - \kappa をみたす(y2=x3+ax2+bx+cy^2 = x^3 + ax^2 + bx + c で証明)。(H3) の鍵は補題 8.11 である。
  • 降下定理:(H1)–(H3) と [Γ:2Γ]<∞[\Gamma : 2\Gamma] < \infty から Γ\Gamma は有限生成である。
  • 位数 2 の有理点をもつ E ⁣:y2=x3+ax2+bxE\colon y^2 = x^3 + ax^2 + bx では、2-同種写像と準同型 α\alpha(α(x,y)=x\alpha(x, y) = x, α(T)=b\alpha(T) = b)により [Γ:φ^(Γˉ)]=∣α(Γ)∣≤2t+1[\Gamma : \hat{\varphi}(\bar{\Gamma})] = \lvert \alpha(\Gamma) \rvert \leq 2^{t+1} となり、弱モーデル–ヴェイユの定理が従う。
  • 階数の公式 2r=∣α(Γ)∣⋅∣αˉ(Γˉ)∣/42^r = \lvert \alpha(\Gamma) \rvert \cdot \lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert / 4。bb の約数 dd について、d∈α(Γ)d \in \alpha(\Gamma) は N2=dM4+aM2e2+(b/d)e4N^2 = dM^4 + aM^2e^2 + (b/d)e^4 の自明でない整数解の存在と同値である。
  • y2=x3−xy^2 = x^3 - x は r=0r = 0、y2=x3−2xy^2 = x^3 - 2x, y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x は r=1r = 1、y2=x3−17xy^2 = x^3 - 17x は r=2r = 2。nn が合同数   ⟺  rank⁡En(Q)≥1\iff \operatorname{rank} E_n(\mathbb{Q}) \geq 1。
  • セルマー群は局所的な可解性で決まる有限群で、0→E2(Q)/λ(E1(Q))→Sel⁡(λ)(E1/Q)→Ш(E1/Q)[λ]→00 \to E_2(\mathbb{Q})/\lambda(E_1(\mathbb{Q})) \to \operatorname{Sel}^{(\lambda)}(E_1/\mathbb{Q}) \to \text{Ш}(E_1/\mathbb{Q})[\lambda] \to 0 は完全。Ш\text{Ш} は局所大域原理の破れを測る。
  • ネロン–テイトの高さ h^(P)=lim⁡h(2nP)/4n\hat{h}(P) = \lim h(2^nP)/4^n は存在し、h−h^h - \hat{h} は有界、h^(P)=0  ⟺  P\hat{h}(P) = 0 \iff P はねじれ点。h^\hat{h} は 2 次形式で(主張)、レギュレーター Reg⁡(E)\operatorname{Reg}(E) を定める。
  • 本章の h^\hat{h}(12\frac{1}{2} なし)は PARI/GP の ellheight と LMFDB に一致する(37a1 の (0,0)(0, 0) で 0.0511114082…0.0511114082\ldots)。

演習問題

問題 8.1 ★ (1) t∈Q×t \in \mathbb{Q}^\times, k∈Nk \in \mathbb{N} について h(1/t)=h(t)h(1/t) = h(t), h(tk)=kh(t)h(t^k) = kh(t) を示せ。(2) t∈Qt \in \mathbb{Q}, c∈Zc \in \mathbb{Z} について h(t+c)≤h(t)+log⁡(1+∣c∣)h(t + c) \leq h(t) + \log(1 + \lvert c \rvert) を示せ。(3) H(t)≤2H(t) \leq 2 をみたす t∈Qt \in \mathbb{Q} をすべて求めよ。

解答

t=m/nt = m/n を既約分数とする。

(1) 1/t=n/m1/t = n/m は、分子と分母の符号を調整すれば既約分数で、分子と分母の絶対値の組は {∣m∣,n}\lbrace \lvert m \rvert, n \rbrace のままなので H(1/t)=H(t)H(1/t) = H(t)。gcd⁡(mk,nk)=1\gcd(m^k, n^k) = 1 より tk=mk/nkt^k = m^k/n^k も既約分数で、H(tk)=max⁡(∣m∣k,nk)=H(t)kH(t^k) = \max(\lvert m \rvert^k, n^k) = H(t)^k。

(2) t+c=(m+cn)/nt + c = (m + cn)/n で、gcd⁡(m+cn,n)=gcd⁡(m,n)=1\gcd(m + cn, n) = \gcd(m, n) = 1 だからこれも既約分数である。H(t+c)=max⁡(∣m+cn∣,n)≤∣m∣+∣c∣n≤(1+∣c∣)H(t)H(t + c) = \max(\lvert m + cn \rvert, n) \leq \lvert m \rvert + \lvert c \rvert n \leq (1 + \lvert c \rvert)H(t)。

(3) ∣m∣≤2\lvert m \rvert \leq 2, 1≤n≤21 \leq n \leq 2, gcd⁡(m,n)=1\gcd(m, n) = 1 より、0,±1,±2,±120, \pm 1, \pm 2, \pm \frac{1}{2} の 7 個。

問題 8.2 ★ E ⁣:y2=x3+ax2+bxE\colon y^2 = x^3 + ax^2 + bx とし、0 でない整数 kk の相異なる素因数の個数を ω(k)\omega(k) と書く。(1) r≤ω(b)+ω(a2−4b)r \leq \omega(b) + \omega(a^2 - 4b) を示せ。(2) a=0a = 0 のときは r≤ω(b)+ω(2b)−1r \leq \omega(b) + \omega(2b) - 1 であることを示せ。(3) 例 8.24–8.27 の曲線について、(2) の上界と実際の階数を比べよ。

解答

(1) 命題 8.18 (3) より ∣α(Γ)∣≤2ω(b)+1\lvert \alpha(\Gamma) \rvert \leq 2^{\omega(b) + 1}, ∣αˉ(Γˉ)∣≤2ω(a2−4b)+1\lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert \leq 2^{\omega(a^2 - 4b) + 1}。定理 8.22 より 2r≤2ω(b)+ω(a2−4b)+2/42^r \leq 2^{\omega(b) + \omega(a^2 - 4b) + 2}/4。

(2) a=0a = 0 なら bˉ=−4b\bar{b} = -4b で ω(bˉ)=ω(2b)\omega(\bar{b}) = \omega(2b)。bb と bˉ\bar{b} の一方は正である。b>0b > 0 とすると、d<0d < 0 に対して b/d<0b/d < 0 で、dM4+(b/d)e4dM^4 + (b/d)e^4 は (M,e)≠(0,0)(M, e) \neq (0, 0) で負になる。命題 8.23 より負の類は α(Γ)\alpha(\Gamma) に属さないので、∣α(Γ)∣≤2ω(b)\lvert \alpha(\Gamma) \rvert \leq 2^{\omega(b)}。bˉ>0\bar{b} > 0 なら同様に ∣αˉ(Γˉ)∣≤2ω(2b)\lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert \leq 2^{\omega(2b)}。いずれにしても ∣α(Γ)∣⋅∣αˉ(Γˉ)∣≤2ω(b)+ω(2b)+1\lvert \alpha(\Gamma) \rvert \cdot \lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert \leq 2^{\omega(b) + \omega(2b) + 1} なので 2r≤2ω(b)+ω(2b)−12^r \leq 2^{\omega(b) + \omega(2b) - 1}。

(3) b=−1,−2,−25,−17b = -1, -2, -25, -17 について、(2) の上界はそれぞれ 0+1−1=00 + 1 - 1 = 0, 1+1−1=11 + 1 - 1 = 1, 1+2−1=21 + 2 - 1 = 2, 1+2−1=21 + 2 - 1 = 2 で、実際の階数は 0,1,1,20, 1, 1, 2。y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x 以外では上界が階数に一致する。

問題 8.3 ★ 定理 8.36 (1) の平行四辺形の法則を認める。(1) すべての m∈Zm \in \mathbb{Z} について h^(mP)=m2h^(P)\hat{h}(mP) = m^2\hat{h}(P) であることを、平行四辺形の法則だけから示せ。(2) T∈E(Q)T \in E(\mathbb{Q}) がねじれ点ならば h^(P+T)=h^(P)\hat{h}(P + T) = \hat{h}(P) であることを示せ。(3) E ⁣:y2=x3−2xE\colon y^2 = x^3 - 2x で (−1,1)+(0,0)=(2,2)(-1, 1) + (0, 0) = (2, 2) を確かめ、2 点の h^\hat{h} が等しいことを説明せよ(LMFDB は (2,2)(2, 2) を生成元として挙げ、その高さを 0.6087090319…0.6087090319\ldots としている)。

解答

(1) h^(O)=0\hat{h}(O) = 0 である(h(2nO)=0h(2^nO) = 0)。m≥1m \geq 1 について、平行四辺形の法則を mPmP と PP に使うと h^((m+1)P)=2h^(mP)+2h^(P)−h^((m−1)P)\hat{h}((m + 1)P) = 2\hat{h}(mP) + 2\hat{h}(P) - \hat{h}((m - 1)P)。h^(kP)=k2h^(P)\hat{h}(kP) = k^2\hat{h}(P) が k=m−1,mk = m - 1, m で成り立てば、h^((m+1)P)=(2m2+2−(m−1)2)h^(P)=(m+1)2h^(P)\hat{h}((m + 1)P) = (2m^2 + 2 - (m - 1)^2)\hat{h}(P) = (m + 1)^2\hat{h}(P)。k=0,1k = 0, 1 では明らかなので、帰納法で m≥0m \geq 0 について成り立つ。m<0m < 0 は h^(−Q)=h^(Q)\hat{h}(-Q) = \hat{h}(Q)(定理 8.35 (2))による。

(2) nT=OnT = O(n≥1n \geq 1)とすると、(1) より n2h^(P+T)=h^(nP+nT)=h^(nP)=n2h^(P)n^2\hat{h}(P + T) = \hat{h}(nP + nT) = \hat{h}(nP) = n^2\hat{h}(P)。

(3) (0,0)(0, 0) と (−1,1)(-1, 1) を通る直線 y=−xy = -x を y2=x3−2xy^2 = x^3 - 2x に代入すると x(x2−x−2)=x(x−2)(x+1)=0x(x^2 - x - 2) = x(x - 2)(x + 1) = 0 で、3 点目は (2,−2)(2, -2)。よって (0,0)+(−1,1)=−(2,−2)=(2,2)(0, 0) + (-1, 1) = -(2, -2) = (2, 2)。(0,0)(0, 0) は位数 2 のねじれ点なので、(2) より h^(2,2)=h^(−1,1)\hat{h}(2, 2) = \hat{h}(-1, 1)。PARI/GP でも ellheight はどちらにも 0.6087090319…0.6087090319\ldots を返す。

問題 8.4 ★★ (1) E ⁣:y2=x3+xE\colon y^2 = x^3 + x の階数が 0 であることを示し、E(Q)={O,(0,0)}E(\mathbb{Q}) = \lbrace O, (0, 0) \rbrace を結論せよ。(2) (1) を用いて、X4+Y4=Z2X^4 + Y^4 = Z^2 は XYZ≠0XYZ \neq 0 となる整数解をもたないことを示せ(特に X4+Y4=Z4X^4 + Y^4 = Z^4 も自明でない解をもたない)。

解答

(1) a=0a = 0, b=1b = 1。α(Γ)⊂{±1}\alpha(\Gamma) \subset \lbrace \pm 1 \rbrace で、d=−1d = -1 の方程式 N2=−M4−e4N^2 = -M^4 - e^4 は自明でない解をもたないので、α(Γ)={1}\alpha(\Gamma) = \lbrace 1 \rbrace(α(T)=b=1\alpha(T) = b = 1)。Eˉ ⁣:y2=x3−4x\bar{E}\colon y^2 = x^3 - 4x では αˉ(Tˉ)=−4=−1\bar{\alpha}(\bar{T}) = -4 = -1, αˉ(2,0)=2\bar{\alpha}(2, 0) = 2, αˉ(−2,0)=−2\bar{\alpha}(-2, 0) = -2 なので、αˉ(Γˉ)=⟨−1,2⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) = \langle -1, 2 \rangle(4 元)。定理 8.22 より 2r=1⋅4/4=12^r = 1 \cdot 4/4 = 1、r=0r = 0。よって E(Q)E(\mathbb{Q}) はねじれ部分群に等しい。第7章のナゲル–ルッツの定理(定理 7.5)より、OO 以外のねじれ点 (x,y)(x, y) は整数点で、y=0y = 0 または y2∣Dy^2 \mid D をみたす(第7章の DD は、この曲線では −4b3=−4-4b^3 = -4)。y=0y = 0 なら x3+x=x(x2+1)=0x^3 + x = x(x^2 + 1) = 0 より x=0x = 0。x3+x=y2∈{1,4}x^3 + x = y^2 \in \lbrace 1, 4 \rbrace となる整数 xx は、x3+xx^3 + x が …,−10,−2,0,2,10,30,…\dots, -10, -2, 0, 2, 10, 30, \dots と単調に動くので存在しない。よって E(Q)={O,(0,0)}E(\mathbb{Q}) = \lbrace O, (0, 0) \rbrace。

(2) X4+Y4=Z2X^4 + Y^4 = Z^2, XYZ≠0XYZ \neq 0 とする。x=X2/Y2x = X^2/Y^2, y=XZ/Y3y = XZ/Y^3 とおくと

x3+x=X6Y6+X2Y2=X2(X4+Y4)Y6=X2Z2Y6=y2x^3 + x = \frac{X^6}{Y^6} + \frac{X^2}{Y^2} = \frac{X^2(X^4 + Y^4)}{Y^6} = \frac{X^2Z^2}{Y^6} = y^2

なので (x,y)∈E(Q)(x, y) \in E(\mathbb{Q}) で x≠0x \neq 0。これは (1) に反する。X4+Y4=Z4X^4 + Y^4 = Z^4 の自明でない解は X4+Y4=(Z2)2X^4 + Y^4 = (Z^2)^2 の解を与えるので、それも存在しない。

問題 8.5 ★★ E3 ⁣:y2=x3−9xE_3\colon y^2 = x^3 - 9x の階数が 0 であることを示し、3 が合同数でないことを結論せよ(E3(Q)tors={O,(0,0),(±3,0)}E_3(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} = \lbrace O, (0, 0), (\pm 3, 0) \rbrace は認めてよい)。

解答

b=−9b = -9。α(Γ)⊂⟨−1,3⟩\alpha(\Gamma) \subset \langle -1, 3 \rangle で、α(T)=−9=−1\alpha(T) = -9 = -1, α(3,0)=3\alpha(3, 0) = 3, α(−3,0)=−3\alpha(-3, 0) = -3 より α(Γ)=⟨−1,3⟩\alpha(\Gamma) = \langle -1, 3 \rangle(4 元)。Eˉ ⁣:y2=x3+36x\bar{E}\colon y^2 = x^3 + 36x で bˉ=36\bar{b} = 36、αˉ(Γˉ)⊂⟨−1,2,3⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \subset \langle -1, 2, 3 \rangle。負の dd は符号で除かれ、αˉ(Tˉ)=36=1\bar{\alpha}(\bar{T}) = 36 = 1。残りの d=2,3,6d = 2, 3, 6 の方程式が gcd⁡(M,e)=1\gcd(M, e) = 1 の解をもたないことを示す。

  • d=3d = 3:N2=3M4+12e4N^2 = 3M^4 + 12e^4 より 3∣N3 \mid N、N=3N′N = 3N' として 3N′2=M4+4e43N'^2 = M^4 + 4e^4。M,eM, e の一方だけが 3 の倍数なら右辺は 3 を法として 11、どちらも 3 の倍数でなければ 1+4≡21 + 4 \equiv 2 で、いずれも 0 にならず矛盾。
  • d=2d = 2:N2=2M4+18e4N^2 = 2M^4 + 18e^4 より N=2N′N = 2N' として 2N′2=M4+9e42N'^2 = M^4 + 9e^4。右辺が偶数なので M,eM, e はともに奇数で、M4+9e4≡10(mod16)M^4 + 9e^4 \equiv 10 \pmod{16}。すると N′2≡5(mod8)N'^2 \equiv 5 \pmod 8 となり矛盾。
  • d=6d = 6:N2=6M4+6e4N^2 = 6M^4 + 6e^4 より 6∣N6 \mid N、N=6N′N = 6N' として 6N′2=M4+e46N'^2 = M^4 + e^4。M,eM, e は同時に 3 の倍数ではないので、右辺は 3 を法として 11 または 22 で、矛盾。

よって αˉ(Γˉ)={1}\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) = \lbrace 1 \rbrace、2r=4⋅1/4=12^r = 4 \cdot 1/4 = 1、r=0r = 0。命題 8.28 より 3 は合同数でない(E3(Q)=E3(Q)torsE_3(\mathbb{Q}) = E_3(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} は y≠0y \neq 0 の点を含まない)。PARI/GP でも、この曲線(288d1)について ellrank は下界・上界 0 を返す。

問題 8.6 ★★ pp を p≡7p \equiv 7 または p≡11(mod16)p \equiv 11 \pmod{16} をみたす素数とする。E ⁣:y2=x3+pxE\colon y^2 = x^3 + px の階数が 0 であることを示せ。

解答

a=0a = 0, b=p>0b = p > 0 なので負の dd は符号で除かれ、α(Γ)={1,p}\alpha(\Gamma) = \lbrace 1, p \rbrace(α(T)=p\alpha(T) = p)。Eˉ ⁣:y2=x3−4px\bar{E}\colon y^2 = x^3 - 4px で αˉ(Γˉ)⊂⟨−1,2,p⟩\bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \subset \langle -1, 2, p \rangle、αˉ(Tˉ)=−4p=−p\bar{\alpha}(\bar{T}) = -4p = -p。d=−1,2,−2d = -1, 2, -2 が像に入らないことを示せば、像は {1,−p}\lbrace 1, -p \rbrace に限る(たとえば pp が入れば p⋅(−p)=−1p \cdot (-p) = -1 も入る。±2p\pm 2p も同様)。以下 gcd⁡(M,e)=1\gcd(M, e) = 1 とし、4p≡12(mod16)4p \equiv 12 \pmod{16} と、奇数の 4 乗は 16 を法として 1 であることを使う。

  • d=−1d = -1:N2=−M4+4pe4N^2 = -M^4 + 4pe^4。MM が奇数で ee が奇数なら右辺 ≡−1+12=11(mod16)\equiv -1 + 12 = 11 \pmod{16}、ee が偶数なら ≡−1(mod16)\equiv -1 \pmod{16} で、どちらも 8 を法として 3 または 7 なので平方数でない。MM が偶数なら ee は奇数で右辺 ≡12(mod16)\equiv 12 \pmod{16} となり、N=2N′N = 2N' として N′2≡3(mod4)N'^2 \equiv 3 \pmod 4 となって矛盾。
  • d=2d = 2:N2=2M4−2pe4N^2 = 2M^4 - 2pe^4 より N=2N′N = 2N' として 2N′2=M4−pe42N'^2 = M^4 - pe^4。右辺が偶数なので M,eM, e はともに奇数で、M4−pe4≡1−p(mod16)M^4 - pe^4 \equiv 1 - p \pmod{16} は p≡7p \equiv 7 なら 1010、p≡11p \equiv 11 なら 66。すると N′2≡5N'^2 \equiv 5 または 3(mod8)3 \pmod 8 で矛盾。
  • d=−2d = -2: 同様に 2N′2=−M4+pe4≡p−1(mod16)2N'^2 = -M^4 + pe^4 \equiv p - 1 \pmod{16} は 66 または 1010 で、N′2≡3N'^2 \equiv 3 または 5(mod8)5 \pmod 8 となり矛盾。

よって ∣αˉ(Γˉ)∣=2\lvert \bar{\alpha}(\bar{\Gamma}) \rvert = 2 で、2r=2⋅2/4=12^r = 2 \cdot 2/4 = 1、r=0r = 0。(PARI/GP で、2000 未満のこの形の素数 79 個すべてについて ellrank の上界が 0 であることを確かめた。)

問題 8.7 ★★ E5 ⁣:y2=x3−25xE_5\colon y^2 = x^3 - 25x の点 P=(−4,6)P = (-4, 6) について、(1) 命題 8.12 の証明にある 2 倍公式を使って x(2P)x(2P) を求めよ。(2) x(2P)x(2P), x(2P)−5x(2P) - 5, x(2P)+5x(2P) + 5 がいずれも有理数の平方であることを確かめ、それらの平方根 s,u,w>0s, u, w > 0 から、辺が w−uw - u, w+uw + u, 2s2s の直角三角形を作って、その面積が 5 であることを示せ。(3) (2) で x(2P)x(2P), x(2P)∓5x(2P) \mp 5 が平方数になるのは偶然でないことを、写像 α\alpha を使って説明せよ。

解答

(1) a=c=0a = c = 0, b=−25b = -25 の 2 倍公式は x(2P)=(x2+25)2/(4(x3−25x))x(2P) = (x^2 + 25)^2/(4(x^3 - 25x))。x=−4x = -4 で x3−25x=36x^3 - 25x = 36 なので x(2P)=412/144=1681/144x(2P) = 41^2/144 = 1681/144。

(2) 1681/144=(41/12)21681/144 = (41/12)^2, 1681/144−5=961/144=(31/12)21681/144 - 5 = 961/144 = (31/12)^2, 1681/144+5=2401/144=(49/12)21681/144 + 5 = 2401/144 = (49/12)^2。s=41/12s = 41/12, u=31/12u = 31/12, w=49/12w = 49/12 とすると、辺は w−u=3/2w - u = 3/2, w+u=20/3w + u = 20/3, 2s=41/62s = 41/6 で、(w−u)2+(w+u)2=2(u2+w2)=4s2(w - u)^2 + (w + u)^2 = 2(u^2 + w^2) = 4s^2 より直角三角形であり、面積は (w−u)(w+u)/2=(w2−u2)/2=10/2=5(w - u)(w + u)/2 = (w^2 - u^2)/2 = 10/2 = 5。これは第1章の 1.1 節で挙げた三角形 (3/2,20/3,41/6)(3/2, 20/3, 41/6) である。

(3) α(2P)=α(P)2=1\alpha(2P) = \alpha(P)^2 = 1 なので x(2P)x(2P) は平方数である(2P2P は 2 等分点でないので x(2P)≠0x(2P) \neq 0)。2 等分点 (5,0)(5, 0) を原点に移す変数変換 x′=x−5x' = x - 5 で E5E_5 は y2=x′3+15x′2+50x′y^2 = x'^3 + 15x'^2 + 50x' となり、これについての α\alpha も準同型だから x(2P)−5x(2P) - 5 も平方数である。(−5,0)(-5, 0) を原点に移せば x(2P)+5x(2P) + 5 についても同様。このように 2E5(Q)2E_5(\mathbb{Q}) の OO 以外の点からは必ず三角形が得られる。

問題 8.8 ★★ (1) 方程式 N2=2M4−34e4N^2 = 2M^4 - 34e^4 の (M,e)≠(0,0)(M, e) \neq (0, 0) となる有理数解と、曲線 2y2=1−17x42y^2 = 1 - 17x^4 の有理点とが対応することを示せ。(2) N2=2M4−34e4N^2 = 2M^4 - 34e^4 が R\mathbb{R}, Q17\mathbb{Q}_{17}, Q2\mathbb{Q}_2 で (M,e)≠(0,0)(M, e) \neq (0, 0) となる解をもつことを示せ(ヒント:Q2\mathbb{Q}_2 では (M,e)=(11,1)(M, e) = (11, 1))。

解答

(1) 解 (M,e,N)(M, e, N) があれば N2=2(M4−17e4)N^2 = 2(M^4 - 17e^4)。M=0M = 0 なら N2=−34e4N^2 = -34e^4 で e=0e = 0 となってしまうので M≠0M \neq 0。x=e/Mx = e/M, y=N/(2M2)y = N/(2M^2) とおくと、両辺を 4M44M^4 で割って 2y2=(M4−17e4)/M4=1−17x42y^2 = (M^4 - 17e^4)/M^4 = 1 - 17x^4。逆に 2y2=1−17x42y^2 = 1 - 17x^4 の有理点からは (M,e,N)=(1,x,2y)(M, e, N) = (1, x, 2y) が解になる。

(2) R\mathbb{R}:(M,e)=(1,0)(M, e) = (1, 0) で N2=2N^2 = 2、N=2N = \sqrt{2}。Q17\mathbb{Q}_{17}: 同じく N2=2N^2 = 2 で、62=36≡2(mod17)6^2 = 36 \equiv 2 \pmod{17} なので 2 は F17\mathbb{F}_{17} の平方元であり、 15 第5章 系 5.15 (1) より Q17\mathbb{Q}_{17} の平方元である。Q2\mathbb{Q}_2:(M,e)=(11,1)(M, e) = (11, 1) で N2=2⋅14641−34=29248=26⋅457N^2 = 2 \cdot 14641 - 34 = 29248 = 2^6 \cdot 457。457=8⋅57+1≡1(mod8)457 = 8 \cdot 57 + 1 \equiv 1 \pmod 8 なので、15 第5章 系 5.15 (2) より 457 は Z2\mathbb{Z}_2 の平方元で、N=8457∈Q2N = 8\sqrt{457} \in \mathbb{Q}_2。

(17 と 2 以外の素数 pp でも解があることは、8.7 節で述べた一般論による。こうして d=2d = 2 は例 8.33 の Sel⁡(φ)(E/Q)\operatorname{Sel}^{(\varphi)}(E/\mathbb{Q}) に属するが、リンド–ライヒャルトの定理により Q\mathbb{Q} では解がない。4 次の方程式なので、2 次形式についてのハッセ–ミンコフスキーの定理とは矛盾しない。)

問題 8.9 ★★★ E ⁣:y2=x3−17xE\colon y^2 = x^3 - 17x, P1=(−1,4)P_1 = (-1, 4), P2=(−4,2)P_2 = (-4, 2) とする(例 8.27)。E(Q)tors={O,T}E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} = \lbrace O, T \rbrace(T=(0,0)T = (0, 0))は認めてよい。(1) α\alpha を使って、ε1P1+ε2P2+ε3T∈2E(Q)\varepsilon_1P_1 + \varepsilon_2P_2 + \varepsilon_3T \in 2E(\mathbb{Q})(εi∈{0,1}\varepsilon_i \in \lbrace 0, 1 \rbrace)となりうるのは (ε1,ε2,ε3)=(0,0,0),(1,1,0)(\varepsilon_1, \varepsilon_2, \varepsilon_3) = (0, 0, 0), (1, 1, 0) に限ることを示せ。(2) P1+P2=(49/9,−224/27)P_1 + P_2 = (49/9, -224/27) を確かめ、φ^(Qˉ)=P1+P2\hat{\varphi}(\bar{Q}) = P_1 + P_2 となる Qˉ∈Eˉ(Q)\bar{Q} \in \bar{E}(\mathbb{Q}) を命題 8.18 (2) の証明の方法で求めよ。さらに αˉ\bar{\alpha} を使って P1+P2∉2E(Q)P_1 + P_2 \notin 2E(\mathbb{Q}) を示せ。(3) P1,P2P_1, P_2 はねじれを法として一次独立である(m1P1+m2P2∈E(Q)torsm_1P_1 + m_2P_2 \in E(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} なら m1=m2=0m_1 = m_2 = 0)ことを示せ。

解答

(1) α\alpha は 2E(Q)2E(\mathbb{Q}) 上で 1 である。α(P1)=−1\alpha(P_1) = -1, α(P2)=−4=−1\alpha(P_2) = -4 = -1, α(T)=−17\alpha(T) = -17 なので α(ε1P1+ε2P2+ε3T)=(−1)ε1+ε2(−17)ε3\alpha(\varepsilon_1P_1 + \varepsilon_2P_2 + \varepsilon_3T) = (-1)^{\varepsilon_1 + \varepsilon_2}(-17)^{\varepsilon_3}。これが平方類として 1 になるのは ε3=0\varepsilon_3 = 0 かつ ε1=ε2\varepsilon_1 = \varepsilon_2 のときに限る。

(2) P1,P2P_1, P_2 を通る直線の傾きは λ=(2−4)/(−4+1)=2/3\lambda = (2 - 4)/(-4 + 1) = 2/3 で、x3=λ2−x1−x2=4/9+5=49/9x_3 = \lambda^2 - x_1 - x_2 = 4/9 + 5 = 49/9, y3=−(λ(x3−x1)+y1)=−(23⋅589+4)=−22427y_3 = -(\lambda(x_3 - x_1) + y_1) = -(\frac{2}{3} \cdot \frac{58}{9} + 4) = -\frac{224}{27}。x3=(7/3)2x_3 = (7/3)^2 なので w=7/3w = 7/3 とおくと

xˉ+=2w2+a+2y3w=989−44827⋅37=989−649=349\bar{x}_+ = 2w^2 + a + \frac{2y_3}{w} = \frac{98}{9} - \frac{448}{27} \cdot \frac{3}{7} = \frac{98}{9} - \frac{64}{9} = \frac{34}{9}

で、Qˉ=(xˉ+,−2wxˉ+)=(34/9,−476/27)\bar{Q} = (\bar{x}_+, -2w\bar{x}_+) = (34/9, -476/27)。実際 (34/9)3+68⋅34/9=226576/729=(476/27)2(34/9)^3 + 68 \cdot 34/9 = 226576/729 = (476/27)^2 で、bˉ−xˉ+2=68−1156/81=4352/81\bar{b} - \bar{x}_+^2 = 68 - 1156/81 = 4352/81 より φ^(Qˉ)\hat{\varphi}(\bar{Q}) の yy 座標は (−476/27)⋅(4352/81)/(8⋅1156/81)=(−476/27)⋅(8/17)=−224/27(-476/27) \cdot (4352/81)/(8 \cdot 1156/81) = (-476/27) \cdot (8/17) = -224/27、xx 座標は (476/27)2/(4(34/9)2)=49/9(476/27)^2/(4(34/9)^2) = 49/9 となる。

P1+P2=2RP_1 + P_2 = 2R(R∈E(Q)R \in E(\mathbb{Q}))とすると 2R=φ^(φ(R))2R = \hat{\varphi}(\varphi(R)) なので、Qˉ−φ(R)∈ker⁡φ^={Oˉ,Tˉ}\bar{Q} - \varphi(R) \in \ker\hat{\varphi} = \lbrace \bar{O}, \bar{T} \rbrace。αˉ(φ(R))=1\bar{\alpha}(\varphi(R)) = 1(ker⁡αˉ=φ(Γ)\ker\bar{\alpha} = \varphi(\Gamma))と αˉ(Tˉ)=68=17\bar{\alpha}(\bar{T}) = 68 = 17 より αˉ(Qˉ)∈{1,17}\bar{\alpha}(\bar{Q}) \in \lbrace 1, 17 \rbrace となるはずだが、αˉ(Qˉ)=34/9=34\bar{\alpha}(\bar{Q}) = 34/9 = 34 であり、平方類として 1 とも 17 とも異なる。よって P1+P2∉2E(Q)P_1 + P_2 \notin 2E(\mathbb{Q})。

(3) (1)(2) より、P1,P2,TP_1, P_2, T の E(Q)/2E(Q)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) での像は F2\mathbb{F}_2 上一次独立である。(m1,m2)≠(0,0)(m_1, m_2) \neq (0, 0) で m1P1+m2P2∈{O,T}m_1P_1 + m_2P_2 \in \lbrace O, T \rbrace となるものがあったとし、∣m1∣+∣m2∣\lvert m_1 \rvert + \lvert m_2 \rvert が最小のものをとる。m1P1+m2P2+kT=Om_1P_1 + m_2P_2 + kT = O(k∈{0,1}k \in \lbrace 0, 1 \rbrace)を E(Q)/2E(Q)E(\mathbb{Q})/2E(\mathbb{Q}) で見ると、一次独立性から m1,m2,km_1, m_2, k はすべて偶数で、k=0k = 0。すると 2(m12P1+m22P2)=O2(\frac{m_1}{2}P_1 + \frac{m_2}{2}P_2) = O だから m12P1+m22P2∈E(Q)[2]={O,T}\frac{m_1}{2}P_1 + \frac{m_2}{2}P_2 \in E(\mathbb{Q})[2] = \lbrace O, T \rbrace となり、最小性に反する。(例 8.39 の高さの行列が正則であることも、この独立性を数値的に裏づけている。)

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