Lemma

第6章局所体上の楕円曲線と還元

目安 11〜15 時間定理など 18演習 9 問
ここまでの道

この章の目標

  • 整なワイエルシュトラス方程式と極小モデルを理解し、v(Δ)v(\Delta), v(c4)v(c_4) による極小性の判定を、剰余体の標数についての仮定とともに正しく使える
  • 還元の型(良い還元・分裂/非分裂の乗法的還元・加法的還元)を Δ\Delta, c4c_4, c6c_6 から判定できる
  • E0(K)/E1(K)≅E~ns(k)E_0(K)/E_1(K) \cong \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) を証明し、E1(K)E_1(K) がねじれ点をもたないための条件を証明できる
  • 形式群の考え方と、E1(K)E_1(K) のフィルトレーションとの関係を説明できる
  • 小平記号・玉河数・導手の表を読み、オッグの公式や PARI/GP の出力で検算できる

前提:第1章、第2章、15 第5章(pp 進数と局所体)。例では第4章の点の数え方(命題 4.1)を使い、6.7 節の最後と問題 6.8 では第3章の定理 3.23 と同種写像、第4章の定理 4.14 を使う。

導手 11 の曲線 y2+y=x3−x2−10x−20y^2 + y = x^3 - x^2 - 10x - 20 の係数を  mod 3\bmod 3 で読めば F3\mathbb{F}_3 上の楕円曲線になり、第4章の方法(命題 4.1)で点を数えられる。ところが  mod 11\bmod 11 で読むと、得られる 3 次曲線は点 (5,5)(5, 5) で自分自身と交わり、もはや楕円曲線ではない。素数ごとに曲線を「還元」して調べるのは整数論の基本的な方法だが、そのためには、方程式をどう選べば還元が意味をもつか、悪い素数ではどんな曲線が現れるか、還元で何が失われるかを知る必要がある。

この問いを扱う自然な場は pp 進体である。Q⊂Qp\mathbb{Q} \subset \mathbb{Q}_p と見れば「pp で何回割り切れるか」は付値の問題になり、ヘンゼルの補題で  mod p\bmod p の点を持ち上げられる。本章では局所体上の楕円曲線の極小モデル、還元の型、還元写像の核 E1(K)E_1(K) の構造を調べる。E1(K)E_1(K) にねじれ点がほとんどないことは、第7章でねじれ部分群を決定する鍵になる。後半では、第10章の L 関数と BSD 予想に現れる小平記号・玉河数・導手を(主張として)紹介する。本章の数値はすべて PARI/GP で確かめてある。

本章の設定. KK は Qp\mathbb{Q}_p の有限次拡大とし(15 第5章 定理 5.19)、RR をその整数環(離散付値環)、π\pi を素元、m=πR\mathfrak{m} = \pi R、k=R/mk = R/\mathfrak{m} を剰余体(位数 q=pfq = p^f の有限体)、vv を v(π)=1v(\pi) = 1 と正規化した付値とする。p=char⁡kp = \operatorname{char} k で、v(p)v(p) は分岐指数である(K=QpK = \mathbb{Q}_p なら v=vpv = v_p, v(p)=1v(p) = 1)。a∈Ra \in R の kk での像を a~\tilde{a} と書く。ヘンゼルの補題(15 第5章 定理 5.12)は Zp\mathbb{Z}_p を RR に、pp を π\pi に置き換えても同じ証明で成り立つ。本章の議論の大部分は、RR が完備離散付値環で剰余体が完全体なら通用する(Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves(以下 AEC)第 VII 章の設定)。

6.1 整なワイエルシュトラス方程式と極小モデル

E/KE/K のワイエルシュトラス方程式は一つではなく、第1章の変数変換 (1.3) x=u2x′+rx = u^2x' + r, y=u3y′+su2x′+ty = u^3y' + su^2x' + t(u∈K×u \in K^\times, r,s,t∈Kr, s, t \in K)で移り合う方程式はすべて同じ曲線を表す。係数を  mod m\bmod \mathfrak{m} で読むには、係数が RR に入り、判別式がなるべく π\pi で割り切れない方程式を選ぶ必要がある。

定義 6.1(整な方程式・極小モデル)E/KE/K のワイエルシュトラス方程式で、係数 a1,a2,a3,a4,a6a_1, a_2, a_3, a_4, a_6 がすべて RR に属するものを整 (integral) であるという。bi,c4,c6,Δb_i, c_4, c_6, \Delta は aia_i の整数係数多項式なので、このとき RR に属し、v(Δ)≥0v(\Delta) \geq 0 である。整な方程式のうち v(Δ)v(\Delta) が最小のものを極小ワイエルシュトラス方程式(極小モデル, minimal Weierstrass equation)という。

命題 6.2(極小モデルの存在と一意性)

  1. どの E/KE/K にも整な方程式があり、したがって極小モデルがある。
  2. 2 つの極小モデルは、u∈R×u \in R^\times, r,s,t∈Rr, s, t \in R である変数変換で移り合う。特に極小モデルの v(Δ)v(\Delta) は EE だけで決まる。

証明. (1) 方程式を一つとり、x=π−2Nx′x = \pi^{-2N}x', y=π−3Ny′y = \pi^{-3N}y'(u=π−Nu = \pi^{-N})と変換すると ai′=πNiaia_i' = \pi^{Ni}a_i となる(第1章 命題 1.6 の変換公式)。NN を大きくとれば ai′∈Ra_i' \in R。整な方程式の v(Δ)v(\Delta) は 00 以上の整数なので最小値がある。

(2) 2 つの極小モデルが (u,r,s,t)(u, r, s, t) で移り合うとする。Δ=u12Δ′\Delta = u^{12}\Delta' と v(Δ)=v(Δ′)v(\Delta) = v(\Delta') から v(u)=0v(u) = 0。単元によるスケーリングは整性を保つので u=1u = 1 としてよい。第1章 命題 1.6 から

b6′=b6+2rb4+r2b2+4r3,b8′=b8+3rb6+3r2b4+r3b2+3r4b_6' = b_6 + 2rb_4 + r^2b_2 + 4r^3, \qquad b_8' = b_8 + 3rb_6 + 3r^2b_4 + r^3b_2 + 3r^4

で、b6′,b8′∈Rb_6', b_8' \in R である。rb6′−b8′rb_6' - b_8' を計算すると

r4−b4r2−(2b6+b6′)r+(b8′−b8)=0r^4 - b_4r^2 - (2b_6 + b_6')r + (b_8' - b_8) = 0

となり、rr は RR 係数のモニック多項式の根である。離散付値環 RR は整閉である(v(r)<0v(r) < 0 なら r4r^4 の項の付値が他の項より真に小さく、和が 00 になりえない)から r∈Rr \in R。次に a2′=a2−sa1+3r−s2a_2' = a_2 - sa_1 + 3r - s^2 より ss は X2+a1X−(a2+3r−a2′)X^2 + a_1X - (a_2 + 3r - a_2') の根なので s∈Rs \in R。最後に a6′=a6+ra4+r2a2+r3−ta3−t2−rta1a_6' = a_6 + ra_4 + r^2a_2 + r^3 - ta_3 - t^2 - rta_1 より tt は X2+(a3+ra1)X−(a6+ra4+r2a2+r3−a6′)X^2 + (a_3 + ra_1)X - (a_6 + ra_4 + r^2a_2 + r^3 - a_6') の根なので t∈Rt \in R。□\square

命題 6.3(極小性の判定)整なワイエルシュトラス方程式について:

  1. v(Δ)<12v(\Delta) < 12、v(c4)<4v(c_4) < 4、v(c6)<6v(c_6) < 6 のいずれかが成り立てば、極小である。これは剰余体の標数によらない。
  2. 剰余体の標数が 2, 3 でない(p≥5p \geq 5)ならば逆も成り立つ。すなわち v(Δ)≥12v(\Delta) \geq 12 かつ v(c4)≥4v(c_4) \geq 4 ならば極小でない。したがって p≥5p \geq 5 では「極小   ⟺  \iff v(Δ)<12v(\Delta) < 12 または v(c4)<4v(c_4) < 4」である。

証明. (1) 極小でないとすると、v(Δ′)<v(Δ)v(\Delta') < v(\Delta) となる整な方程式への変換 (u,r,s,t)(u, r, s, t) がある。v(Δ)=12v(u)+v(Δ′)v(\Delta) = 12v(u) + v(\Delta') より v(u)≥1v(u) \geq 1 で、v(Δ)≥12v(\Delta) \geq 12。さらに c4=u4c4′c_4 = u^4c_4', c6=u6c6′c_6 = u^6c_6' で c4′,c6′∈Rc_4', c_6' \in R だから v(c4)≥4v(c_4) \geq 4, v(c6)≥6v(c_6) \geq 6。対偶をとればよい。

(2) p≥5p \geq 5 なら 2,3∈R×2, 3 \in R^\times である。第1章 命題 1.8(標準形)により、u=1/6u = 1/6, r=−b2/12r = -b_2/12, s=−a1/2s = -a_1/2, t=−(a1r+a3)/2t = -(a_1r + a_3)/2(すべて RR に属し、uu は単元)の変換で、方程式は整な方程式 y2=x3−27c4x−54c6y^2 = x^3 - 27c_4x - 54c_6 に移り、判別式は 612Δ6^{12}\Delta(付値は v(Δ)v(\Delta) のまま)になる。v(c4)≥4v(c_4) \geq 4, v(Δ)≥12v(\Delta) \geq 12 とすると、c62=c43−1728Δc_6^2 = c_4^3 - 1728\Delta と v(1728)=0v(1728) = 0 より v(c6)≥6v(c_6) \geq 6。そこで x=π2x′x = \pi^2x', y=π3y′y = \pi^3y' と変換すると y′2=x′3−(27c4/π4)x′−54c6/π6y'^2 = x'^3 - (27c_4/\pi^4)x' - 54c_6/\pi^6 は整な方程式で、判別式の付値は v(Δ)−12v(\Delta) - 12 に下がる。□\square

例 6.4

  1. 導手 11 の曲線 11a1  ⁣:y2+y=x3−x2−10x−20\colon y^2 + y = x^3 - x^2 - 10x - 20 は Δ=−115\Delta = -11^5, c4=496=24⋅31c_4 = 496 = 2^4 \cdot 31, c6=20008=23⋅41⋅61c_6 = 20008 = 2^3 \cdot 41 \cdot 61 で、すべての pp で vp(Δ)<12v_p(\Delta) < 12 だから、どの pp でも極小である。
  2. 11a1 の標準形 y2=x3−13392x−1080432y^2 = x^3 - 13392x - 1080432 は判別式 −212312115-2^{12}3^{12}11^5, c4′=2834⋅31c_4' = 2^8 3^4 \cdot 31, c6′=2936⋅41⋅61c_6' = 2^9 3^6 \cdot 41 \cdot 61 をもち、p=2,3p = 2, 3 では命題 6.3(1) の条件がどれも成り立たない。実際 x=36x′−12x = 36x' - 12, y=216y′+108y = 216y' + 108(u=6u = 6)で 11a1 に戻るので、2 でも 3 でも極小でない。
  3. y2=x3−625xy^2 = x^3 - 625x は v5(Δ)=12v_5(\Delta) = 12, v5(c4)=v5(30000)=4v_5(c_4) = v_5(30000) = 4 なので 5 で極小でない。実際 x=25x′x = 25x', y=125y′y = 125y' で y′2=x′3−x′y'^2 = x'^3 - x'(Δ=64\Delta = 64)になる。

注意

命題 6.3(2) は剰余標数 2, 3 では成り立たない。y2=x3+4xy^2 = x^3 + 4x(32a1)は Δ=−212\Delta = -2^{12}, c4=−26⋅3c_4 = -2^6 \cdot 3, c6=0c_6 = 0 で、p=2p = 2 では v(Δ)≥12v(\Delta) \geq 12, v(c4)≥4v(c_4) \geq 4, v(c6)≥6v(c_6) \geq 6 がすべて成り立つが、2 で極小である(PARI/GP の ellminimalmodel は変換 [1,0,0,0][1, 0, 0, 0] を返す)。y2=x3−81x−243y^2 = x^3 - 81x - 243(324a2)は v3(Δ)=12v_3(\Delta) = 12, v3(c4)=5v_3(c_4) = 5, v3(c6)=8v_3(c_6) = 8 でありながら 3 で極小である(問題 6.9)。剰余標数 2, 3 では、6.6 節のテイトのアルゴリズムで極小性を判定する。

定理 6.5(大域極小モデル, global minimal model)(主張)E/QE/\mathbb{Q} には、すべての素数 pp で同時に極小な整数係数のワイエルシュトラス方程式がある。その判別式 ΔE\Delta_E(極小判別式)は EE で決まり、2 つの大域極小モデルは u=±1u = \pm 1, r,s,t∈Zr, s, t \in \mathbb{Z} の変換で移り合う。

各 pp ごとの極小モデルを、Z\mathbb{Z} が単項イデアル整域であることと中国剰余定理で貼り合わせるのが証明の方針である(AEC VIII.8 節。類数が 1 でない数体では一般には存在しない)。Cremona の表や LMFDB の方程式は、大域極小モデルをさらに a1,a3∈{0,1}a_1, a_3 \in \lbrace 0, 1 \rbrace, a2∈{−1,0,1}a_2 \in \lbrace -1, 0, 1 \rbrace と正規化したものである。

6.2 還元と還元の型

定義 6.6(還元)E/KE/K の極小モデルの係数を  mod m\bmod \mathfrak{m} で読んだ方程式

E~ ⁣:y2+a~1xy+a~3y=x3+a~2x2+a~4x+a~6\tilde{E}\colon y^2 + \tilde{a}_1xy + \tilde{a}_3y = x^3 + \tilde{a}_2x^2 + \tilde{a}_4x + \tilde{a}_6

を EE の還元 (reduction) という。E~\tilde{E} は kk 上の 3 次曲線で、特異点をもつこともある。P∈E(K)⊂P2(K)P \in E(K) \subset \mathbb{P}^2(K) の斉次座標を P=[X:Y:Z]P = [X : Y : Z], X,Y,Z∈RX, Y, Z \in R, min⁡(v(X),v(Y),v(Z))=0\min(v(X), v(Y), v(Z)) = 0 ととって P~=[X~:Y~:Z~]\tilde{P} = [\tilde{X} : \tilde{Y} : \tilde{Z}] とおく。座標は単元倍を除いて一意なので P~\tilde{P} は well-defined で、P~∈E~(k)\tilde{P} \in \tilde{E}(k) である。写像 P↦P~P \mapsto \tilde{P} を還元写像という。E~\tilde{E} の非特異点の集合を E~ns\tilde{E}_{\mathrm{ns}} と書く。

命題 6.2(2) より、極小モデルのとり替えは  mod m\bmod \mathfrak{m} で kk 上の変数変換になる。したがって E~\tilde{E} は kk 上の同型を除いて EE で決まり、還元写像もこの同型と両立する。E~\tilde{E} の不変量は c~4\tilde{c}_4, c~6\tilde{c}_6, Δ~\tilde{\Delta} である。第1章の定理 1.12(非特異性の判定。標数によらない)により、Δ~=0\tilde{\Delta} = 0 のとき E~\tilde{E} の特異点 SS はただ一つで、c~4≠0\tilde{c}_4 \neq 0 なら結節点、c~4=0\tilde{c}_4 = 0 なら尖点であり、O~\tilde{O} はつねに非特異である。SS をガロア群 Gal⁡(k‾/k)\operatorname{Gal}(\overline{k}/k) で動かしたものも特異点なので、一意性から S∈E~(k)S \in \tilde{E}(k) である(kk は完全体)。

定義 6.7(還元の型)E/KE/K は、E~\tilde{E} が非特異なら良い還元 (good reduction)、特異点が結節点なら乗法的還元 (multiplicative reduction)、尖点なら加法的還元 (additive reduction) をもつという。乗法的還元で、結節点での 2 本の接線が kk 上定義されているとき分裂 (split)、そうでないとき非分裂 (non-split) という。良い還元でないとき悪い還元をもつといい、良い還元か乗法的還元のとき半安定 (semistable) であるという。

名前は、第2章の定理 2.19 で見たように E~ns\tilde{E}_{\mathrm{ns}} の群が、尖点なら加法群、分裂結節点なら乗法群と同型になることに由来する。

命題 6.8(還元の型の判定)極小モデルについて

  1. 良い還元   ⟺  \iff v(Δ)=0v(\Delta) = 0
  2. 乗法的還元   ⟺  \iff v(Δ)>0v(\Delta) > 0 かつ v(c4)=0v(c_4) = 0
  3. 加法的還元   ⟺  \iff v(Δ)>0v(\Delta) > 0 かつ v(c4)>0v(c_4) > 0

乗法的還元のとき、特異点を (0,0)(0, 0) に移した極小モデル(a3,a4,a6∈ma_3, a_4, a_6 \in \mathfrak{m})をとると、分裂   ⟺  \iff T2+a~1T−a~2T^2 + \tilde{a}_1T - \tilde{a}_2 が k[T]k[T] で 1 次式の積に分解する。p≠2p \neq 2 ならば、分裂   ⟺  \iff −c~6-\tilde{c}_6 が kk の平方元である。

証明. 前半は、第1章 定理 1.12 を E~\tilde{E} に適用したものである。

後半。特異点 S=(α,β)∈E~(k)S = (\alpha, \beta) \in \tilde{E}(k) の座標を RR の元 r,tr, t に持ち上げて変換 (1,r,0,t)(1, r, 0, t) を行う。u=1u = 1 なので Δ,c4,c6\Delta, c_4, c_6 も極小性も変わらず、還元では SS が (0,0)(0, 0) に移る。(0,0)(0, 0) が特異点であることは a~6=a~4=a~3=0\tilde{a}_6 = \tilde{a}_4 = \tilde{a}_3 = 0 を意味し、E~\tilde{E} は y2+a~1xy−a~2x2=x3y^2 + \tilde{a}_1xy - \tilde{a}_2x^2 = x^3 となる。接線は 2 次の部分 y2+a~1xy−a~2x2=(y−α′x)(y−β′x)y^2 + \tilde{a}_1xy - \tilde{a}_2x^2 = (y - \alpha'x)(y - \beta'x) の因子で、α′,β′\alpha', \beta' は T2+a~1T−a~2T^2 + \tilde{a}_1T - \tilde{a}_2 の根だから、分裂   ⟺  \iff α′,β′∈k\alpha', \beta' \in k   ⟺  \iff この 2 次式が分解する。このとき b~2=a~12+4a~2\tilde{b}_2 = \tilde{a}_1^2 + 4\tilde{a}_2 はこの 2 次式の判別式で、b~4=b~6=0\tilde{b}_4 = \tilde{b}_6 = 0 だから c~4=b~22\tilde{c}_4 = \tilde{b}_2^2, c~6=−b~23\tilde{c}_6 = -\tilde{b}_2^3 であり、結節点なので b~2≠0\tilde{b}_2 \neq 0。p≠2p \neq 2 なら、分解する   ⟺  \iff b~2\tilde{b}_2 が平方元   ⟺  \iff −c~6=b~2⋅b~22-\tilde{c}_6 = \tilde{b}_2 \cdot \tilde{b}_2^2 が平方元。c6c_6 は (1,r,0,t)(1, r, 0, t) で変わらず、極小モデルのとり替えで単元の 6 乗倍になるだけなので、条件はモデルによらない。□\square

注意

還元の型は極小モデルで判定する。y2=x3−625xy^2 = x^3 - 625x をそのまま  mod 5\bmod 5 で読むと y2=x3y^2 = x^3(尖点)になるが、例 6.4(3) のとおりこの曲線は y2=x3−xy^2 = x^3 - x と同型で、5 で良い還元をもつ。

例 6.9

  1. 11a1, p=11p = 11. v(Δ)=5v(\Delta) = 5, c4=496≡1(mod11)c_4 = 496 \equiv 1 \pmod{11} なので乗法的。−c6=−20008≡1-c_6 = -20008 \equiv 1 は平方元なので分裂である。実際 E~\tilde{E} の特異点は (5,5)(5, 5) で、X=x−5X = x - 5, Y=y−5Y = y - 5 とおくと 2 次の部分は Y2−14X2≡Y2−3X2=(Y−5X)(Y+5X)Y^2 - 14X^2 \equiv Y^2 - 3X^2 = (Y - 5X)(Y + 5X)(52≡35^2 \equiv 3)であり、接線は F11\mathbb{F}_{11} 上定義されている。
  2. 37a1  ⁣:y2+y=x3−x\colon y^2 + y = x^3 - x, p=37p = 37. Δ=37\Delta = 37, c4=48≢0c_4 = 48 \not\equiv 0 なので乗法的。−c6=216≡31-c_6 = 216 \equiv 31 は 3118≡−1(mod37)31^{18} \equiv -1 \pmod{37} より平方元でないので非分裂である(特異点は (5,18)(5, 18))。
  3. y2=x3−xy^2 = x^3 - x, p=2p = 2. v2(Δ)=6<12v_2(\Delta) = 6 < 12 で極小、v2(c4)=v2(48)=4>0v_2(c_4) = v_2(48) = 4 > 0 なので加法的。 mod 2\bmod 2 では y2=x(x+1)2y^2 = x(x + 1)^2 で、(1,0)(1, 0) が尖点である。奇素数では良い還元をもつ。
  4. y2=x3+17y^2 = x^3 + 17. Δ=−2433172\Delta = -2^4 3^3 17^2, c4=0c_4 = 0 なので、p=2,3,17p = 2, 3, 17 で加法的(いずれも極小)、それ以外では良い還元である。

6.3 E0(K)E_0(K) と E1(K)E_1(K)

特異点に還元される点があると E~(k)\tilde{E}(k) 全体には群の構造がないので、非特異点に還元される点に制限する。

定義 6.10 極小モデルについて

E0(K)={P∈E(K)∣P~∈E~ns(k)},E1(K)={P∈E(K)∣P~=O~}E_0(K) = \lbrace P \in E(K) \mid \tilde{P} \in \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) \rbrace, \qquad E_1(K) = \lbrace P \in E(K) \mid \tilde{P} = \tilde{O} \rbrace

とおく。これらは極小モデルのとり方によらない。

E1(K)E_1(K) は「OO に pp 進的に近い点」の集合で、極小でない整な方程式に対しても同じ式で定義できる(6.4 節ではそれも使う)。

補題 6.11 整なワイエルシュトラス方程式で与えられた EE の点 P=(x,y)∈E(K)P = (x, y) \in E(K) について、v(x)<0v(x) < 0 と v(y)<0v(y) < 0 は同値であり、このとき v(x)=−2nv(x) = -2n, v(y)=−3nv(y) = -3n となる整数 n≥1n \geq 1 がある。x,y∈Rx, y \in R なら P~=(x~,y~)\tilde{P} = (\tilde{x}, \tilde{y}) で、そうでなければ P~=O~\tilde{P} = \tilde{O} である。特に

E1(K)={(x,y)∈E(K)∣v(x)<0}∪{O}E_1(K) = \lbrace (x, y) \in E(K) \mid v(x) < 0 \rbrace \cup \lbrace O \rbrace

証明. 方程式を y2+a1xy+a3y=x3+a2x2+a4x+a6y^2 + a_1xy + a_3y = x^3 + a_2x^2 + a_4x + a_6 とする。v(x)<0v(x) < 0 なら右辺の付値は 3v(x)3v(x) である(15 第5章 命題 5.7(1))。もし v(y)≥0v(y) \geq 0 なら左辺の付値は v(x)v(x) 以上で 3v(x)3v(x) より大きく、矛盾する。逆に v(x)≥0v(x) \geq 0, v(y)<0v(y) < 0 なら左辺の付値は 2v(y)<02v(y) < 0 で、右辺は 00 以上なので矛盾する。v(x),v(y)<0v(x), v(y) < 0 とする。v(y)≥v(x)v(y) \geq v(x) なら左辺の各項の付値は v(x)+v(y)≥2v(x)>3v(x)v(x) + v(y) \geq 2v(x) > 3v(x) 以上で矛盾するから v(y)<v(x)v(y) < v(x) で、左辺の付値は 2v(y)2v(y)。よって 2v(y)=3v(x)2v(y) = 3v(x)、すなわち v(x)=−2nv(x) = -2n, v(y)=−3nv(y) = -3n(n≥1n \geq 1)。x,y∈Rx, y \in R なら [x:y:1][x : y : 1] が正規化された座標である。そうでなければ P=[x/y:1:1/y]P = [x/y : 1 : 1/y] で v(x/y)=n>0v(x/y) = n > 0, v(1/y)=3n>0v(1/y) = 3n > 0 だから P~=[0:1:0]\tilde{P} = [0 : 1 : 0]。□\square

補題 6.12(交点の還元)整なワイエルシュトラス方程式で与えられた EE と KK 上の直線 LL が、P1,P2,P3∈E(K)P_1, P_2, P_3 \in E(K) で(重複度をこめて)交わるとする。L ⁣:αX+βY+γZ=0L\colon \alpha X + \beta Y + \gamma Z = 0 を α,β,γ∈R\alpha, \beta, \gamma \in R, min⁡(v(α),v(β),v(γ))=0\min(v(\alpha), v(\beta), v(\gamma)) = 0 と正規化して  mod m\bmod \mathfrak{m} で読んだ直線を L~\tilde{L} とすると、L~\tilde{L} は E~\tilde{E} と P~1,P~2,P~3\tilde{P}_1, \tilde{P}_2, \tilde{P}_3 で(重複度をこめて)交わる。

証明. 係数のどれかは単元で、それが γ\gamma の場合を示す(他も同様)。γ=1\gamma = 1 とすると LL の点は [s:t:−αs−βt][s : t : -\alpha s - \beta t] と表され、s,t∈Rs, t \in R, min⁡(v(s),v(t))=0\min(v(s), v(t)) = 0 ととれば座標は正規化されていて、還元は [s~:t~:−α~s~−β~t~]∈L~[\tilde{s} : \tilde{t} : -\tilde{\alpha}\tilde{s} - \tilde{\beta}\tilde{t}] \in \tilde{L} である。ワイエルシュトラス方程式の斉次 3 次式を FF とし、G(s,t)=F(s,t,−αs−βt)∈R[s,t]G(s, t) = F(s, t, -\alpha s - \beta t) \in R[s, t] とおくと、LL と EE の交点は重複度をこめて GG の根である。PiP_i に対応する根を正規化して (si:ti)(s_i : t_i) とすると、G=cHG = cH, H=∏i=13(tis−sit)H = \prod_{i=1}^{3}(t_is - s_it), c∈K×c \in K^\times と書ける。G~\tilde{G} は F~\tilde{F} を L~\tilde{L} に制限したもので、第1章 補題 1.11(ワイエルシュトラス方程式の曲線は直線を含まない)より 00 でないから、GG のある係数は単元である。一方 H~=∏(t~is−s~it)≠0\tilde{H} = \prod(\tilde{t}_is - \tilde{s}_it) \neq 0 なので HH のある係数も単元である。v(c)<0v(c) < 0 なら GG に付値が負の係数が現れ、v(c)>0v(c) > 0 なら GG の係数がすべて m\mathfrak{m} に入るので、c∈R×c \in R^\times。よって G~=c~H~\tilde{G} = \tilde{c}\tilde{H} で、G~\tilde{G} の根は重複度をこめて P~i\tilde{P}_i に対応する (s~i:t~i)(\tilde{s}_i : \tilde{t}_i) である。□\square

定理 6.13 E0(K)E_0(K) は E(K)E(K) の部分群で、還元写像 E0(K)→E~ns(k)E_0(K) \to \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) は全射準同型、その核は E1(K)E_1(K) である。したがって

E0(K)/E1(K)≅E~ns(k)E_0(K)/E_1(K) \cong \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k)

ここで E~ns(k)\tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) には第2章の弦と接線による群法則(2.7 節)が入っていて(良い還元なら楕円曲線の群そのもの)、直線と重複度をこめて交わる 3 点 Q1,Q2,Q3∈E~ns(k)Q_1, Q_2, Q_3 \in \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) について Q1+Q2+Q3=O~Q_1 + Q_2 + Q_3 = \tilde{O} である。

証明. (i) O~\tilde{O} は非特異なので O∈E0(K)O \in E_0(K)。−(x,y)=(x,−y−a1x−a3)-(x, y) = (x, -y - a_1x - a_3) と還元は可換で、(x,y)↦(x,−y−a~1x−a~3)(x, y) \mapsto (x, -y - \tilde{a}_1x - \tilde{a}_3) は E~\tilde{E} の自己同型なので唯一の特異点を自分に移す。よって P∈E0(K)P \in E_0(K) なら −P∈E0(K)-P \in E_0(K) で、−P~=−P~\widetilde{-P} = -\tilde{P}。

(ii) P1,P2∈E0(K)P_1, P_2 \in E_0(K) とし、LL を P1,P2P_1, P_2 を通る直線(P1=P2P_1 = P_2 なら接線)、P3P_3 を第 3 の交点とする(P1+P2+P3=OP_1 + P_2 + P_3 = O)。補題 6.12 より L~\tilde{L} は E~\tilde{E} と P~1,P~2,P~3\tilde{P}_1, \tilde{P}_2, \tilde{P}_3 で交わる。特異点 SS を通る直線は SS で重複度 2 以上で交わる(直線を S+λQS + \lambda Q と表すと、F~\tilde{F} とその偏微分が SS で 00 なので F~(S+λQ)\tilde{F}(S + \lambda Q) は λ2\lambda^2 で割り切れる)。もし P~3=S\tilde{P}_3 = S なら、P~1,P~2≠S\tilde{P}_1, \tilde{P}_2 \neq S だから交点の列に SS は 1 回しか現れず矛盾する。よって P3∈E0(K)P_3 \in E_0(K) で、(i) より P1+P2=−P3∈E0(K)P_1 + P_2 = -P_3 \in E_0(K)。さらに P~1+P~2+P~3=O~\tilde{P}_1 + \tilde{P}_2 + \tilde{P}_3 = \tilde{O} だから P1+P2~=−P~3=P~1+P~2\widetilde{P_1 + P_2} = -\tilde{P}_3 = \tilde{P}_1 + \tilde{P}_2。

(iii) 核が E1(K)E_1(K) であることは定義である。

(iv) 全射性。アフィンの点 (α,β)∈E~ns(k)(\alpha, \beta) \in \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) をとり、f(x,y)=y2+a1xy+a3y−x3−a2x2−a4x−a6f(x, y) = y^2 + a_1xy + a_3y - x^3 - a_2x^2 - a_4x - a_6 とおく。非特異なので f~y(α,β)≠0\tilde{f}_y(\alpha, \beta) \neq 0 または f~x(α,β)≠0\tilde{f}_x(\alpha, \beta) \neq 0。前者なら、α\alpha の持ち上げ x0∈Rx_0 \in R をとり g(y)=f(x0,y)g(y) = f(x_0, y) とおくと g~(β)=0\tilde{g}(\beta) = 0, g~′(β)≠0\tilde{g}'(\beta) \neq 0 なので、ヘンゼルの補題により g(y0)=0g(y_0) = 0, y~0=β\tilde{y}_0 = \beta となる y0∈Ry_0 \in R がある。(x0,y0)(x_0, y_0) が求める点である。後者なら xx と yy の役割を入れ替える。□\square

系 6.14 q=∣k∣q = \lvert k \rvert とすると

[E0(K):E1(K)]=∣E~ns(k)∣={∣E~(k)∣(良い還元)q−1(分裂乗法的還元)q+1(非分裂乗法的還元)q(加法的還元)[E_0(K) : E_1(K)] = \lvert \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) \rvert = \begin{cases} \lvert \tilde{E}(k) \rvert & (\text{良い還元}) \\ q - 1 & (\text{分裂乗法的還元}) \\ q + 1 & (\text{非分裂乗法的還元}) \\ q & (\text{加法的還元}) \end{cases}

証明. 第2章の群の構造(定理 2.19・注意 2.20)からもわかるが、直接数える。悪い還元のとき、特異点 SS を通る kk 上の直線は q+1q + 1 本あり、各直線は SS で重複度 2 以上で交わるので、残りの交点は 1 個で kk 有理点である。F~(S+λQ)=λ2q2(Q)+λ3c(Q)\tilde{F}(S + \lambda Q) = \lambda^2q_2(Q) + \lambda^3c(Q)(q2q_2 は 2 次の部分)と書けるので、重複度が 3 になるのはその直線が SS での接線であるときに限る。接線でない直線の残りの交点は非特異点で、逆に非特異点 QQ は直線 SQSQ の上にある。よって ∣E~ns(k)∣=q+1−(k 上定義された接線の数)\lvert \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) \rvert = q + 1 - (k \text{ 上定義された接線の数}) で、接線の数は分裂なら 2、非分裂なら 0、尖点なら 1 である。□\square

例 6.15

  1. 11a1, p=11p = 11(分裂). ∣E~ns(F11)∣=10\lvert \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(\mathbb{F}_{11}) \rvert = 10。E(Q)E(\mathbb{Q}) の 4 つのねじれ点 (5,5)(5, 5), (5,−6)(5, -6), (16,60)(16, 60), (16,−61)(16, -61)(第7章 定理 7.13 の後の表)は、 mod 11\bmod 11 ですべて特異点 (5,5)(5, 5) に還元される。よって P=(5,5)P = (5, 5) について P,2P,3P,4P∉E0(Q11)P, 2P, 3P, 4P \notin E_0(\mathbb{Q}_{11}), 5P=O5P = O で、PP の像は E(Q11)/E0(Q11)E(\mathbb{Q}_{11})/E_0(\mathbb{Q}_{11}) の位数 5 の元である。
  2. 11a3  ⁣:y2+y=x3−x2\colon y^2 + y = x^3 - x^2, p=11p = 11(分裂、問題 6.2). ねじれ点 (0,0),(0,−1),(1,0),(1,−1)(0, 0), (0, -1), (1, 0), (1, -1) は非特異点 (0,0),(0,10),(1,0),(1,10)(0, 0), (0, 10), (1, 0), (1, 10) に還元され、O~\tilde{O} と合わせて位数 10 の群 E~ns(F11)\tilde{E}_{\mathrm{ns}}(\mathbb{F}_{11}) の位数 5 の部分群をなす。
  3. y2=x3−xy^2 = x^3 - x, p=2p = 2(加法的). E~ns(F2)={O~,(0,0)}\tilde{E}_{\mathrm{ns}}(\mathbb{F}_2) = \lbrace \tilde{O}, (0, 0) \rbrace。(0,0)∈E0(Q2)(0, 0) \in E_0(\mathbb{Q}_2) だが、(±1,0)(\pm 1, 0) は尖点 (1,0)(1, 0) に還元されるので E0(Q2)E_0(\mathbb{Q}_2) に入らない。

6.4 E1(K)E_1(K) のフィルトレーションとねじれ点

この節では、極小とは限らない整なワイエルシュトラス方程式を一つ固定し、E1(K)E_1(K) を OO の近くでさらに細かく分ける。

定義 6.16 n≥1n \geq 1 に対して

En(K)={(x,y)∈E(K)∣v(x)≤−2n}∪{O}E_n(K) = \lbrace (x, y) \in E(K) \mid v(x) \leq -2n \rbrace \cup \lbrace O \rbrace

とおく。P=(x,y)∈E1(K)P = (x, y) \in E_1(K) に対して z(P)=−x/yz(P) = -x/y, w(P)=−1/yw(P) = -1/y とおき、z(O)=w(O)=0z(O) = w(O) = 0 と定める。

補題 6.11 より、P∈En(K)∖En+1(K)P \in E_n(K) \setminus E_{n+1}(K)   ⟺  \iff v(z(P))=nv(z(P)) = n で、このとき v(w(P))=3nv(w(P)) = 3n である。x=z/wx = z/w, y=−1/wy = -1/w をワイエルシュトラス方程式に代入して w3w^3 を掛けると

w=z3+a1zw+a2z2w+a3w2+a4zw2+a6w3=:f(z,w)(6.1)w = z^3 + a_1zw + a_2z^2w + a_3w^2 + a_4zw^2 + a_6w^3 =: f(z, w) \tag{6.1}

を得る。(z,w)=(−X/Y,−Z/Y)(z, w) = (-X/Y, -Z/Y) は射影平面の Y≠0Y \neq 0 の部分のアフィン座標で、OO はこの座標で (0,0)(0, 0) という普通の点になり、E1(K)E_1(K) の点はすべてこの座標の範囲にある。

命題 6.17 n≥1n \geq 1 とする。

  1. En(K)E_n(K) は E(K)E(K) の部分群である。
  2. P1,P2∈En(K)P_1, P_2 \in E_n(K) ならば z(P1+P2)≡z(P1)+z(P2)(modm2n)z(P_1 + P_2) \equiv z(P_1) + z(P_2) \pmod{\mathfrak{m}^{2n}}。さらに a1=0a_1 = 0 ならこの合同式は  mod m3n\bmod \mathfrak{m}^{3n} で成り立つ。

証明. Pi=(zi,wi)P_i = (z_i, w_i)(i=1,2i = 1, 2。Pi=OP_i = O でもよい)とすると v(zi)≥nv(z_i) \geq n, v(wi)≥3nv(w_i) \geq 3n である。

直線. (6.1) の 2 式を引いて各項を z2w2−z1w1=(z2−z1)w2+z1(w2−w1)z_2w_2 - z_1w_1 = (z_2 - z_1)w_2 + z_1(w_2 - w_1) のように分けると、恒等式 (w2−w1)(1−B)=(z2−z1)A(w_2 - w_1)(1 - B) = (z_2 - z_1)A を得る。ここで

A=z12+z1z2+z22+a1w2+a2(z1+z2)w2+a4w22,B=a1z1+a2z12+a3(w1+w2)+a4z1(w1+w2)+a6(w12+w1w2+w22)\begin{aligned} A &= z_1^2 + z_1z_2 + z_2^2 + a_1w_2 + a_2(z_1 + z_2)w_2 + a_4w_2^2, \\ B &= a_1z_1 + a_2z_1^2 + a_3(w_1 + w_2) + a_4z_1(w_1 + w_2) + a_6(w_1^2 + w_1w_2 + w_2^2) \end{aligned}

である。v(A)≥2nv(A) \geq 2n, v(B)≥n≥1v(B) \geq n \geq 1 なので 1−B1 - B は単元で、特に z1=z2z_1 = z_2 なら w1=w2w_1 = w_2(E1(K)E_1(K) の点は zz で決まる)。λ=A/(1−B)\lambda = A/(1 - B), ν=w1−λz1\nu = w_1 - \lambda z_1 とおくと v(λ)≥2nv(\lambda) \geq 2n, v(ν)≥3nv(\nu) \geq 3n で、直線 w=λz+νw = \lambda z + \nu は P1≠P2P_1 \neq P_2 なら P1,P2P_1, P_2 を通る直線、P1=P2P_1 = P_2 なら接線である(このとき A,BA, B は fz,fwf_z, f_w の値で、(6.1) の接線の傾きは fz/(1−fw)f_z/(1 - f_w))。

第 3 の交点. w=λz+νw = \lambda z + \nu を (6.1) に代入した f(z,λz+ν)−(λz+ν)f(z, \lambda z + \nu) - (\lambda z + \nu) は zz の 3 次式で、z3z^3 と z2z^2 の係数は

C3=1+a2λ+a4λ2+a6λ3,C2=a1λ+a2ν+a3λ2+2a4λν+3a6λ2νC_3 = 1 + a_2\lambda + a_4\lambda^2 + a_6\lambda^3, \qquad C_2 = a_1\lambda + a_2\nu + a_3\lambda^2 + 2a_4\lambda\nu + 3a_6\lambda^2\nu

である。C3C_3 は単元なので、直線と EE の 3 つの交点はすべてこの座標の範囲にあり(Y=0Y = 0 上の点 [1:0:λ][1 : 0 : \lambda] は EE に乗らない)、その zz 座標 z1,z2,z3z_1, z_2, z_3 は重複度をこめてこの 3 次式の根である。よって z1+z2+z3=−C2/C3z_1 + z_2 + z_3 = -C_2/C_3 で、v(C2)≥2nv(C_2) \geq 2n(a1=0a_1 = 0 なら 3n3n 以上)だから、z3≡−z1−z2(modm2n)z_3 \equiv -z_1 - z_2 \pmod{\mathfrak{m}^{2n}}(a1=0a_1 = 0 なら  mod m3n\bmod \mathfrak{m}^{3n})。特に v(z3)≥nv(z_3) \geq n, v(w3)=v(λz3+ν)≥3nv(w_3) = v(\lambda z_3 + \nu) \geq 3n。w3=0w_3 = 0 なら (6.1) から z3=0z_3 = 0 で P3=OP_3 = O、そうでなければ v(y(P3))=−v(w3)≤−3nv(y(P_3)) = -v(w_3) \leq -3n なので補題 6.11 より v(x(P3))≤−2nv(x(P_3)) \leq -2n。いずれにせよ P3∈En(K)P_3 \in E_n(K)。

結論. x(−P)=x(P)x(-P) = x(P) なので En(K)E_n(K) は逆元で閉じ、P1+P2=−P3∈En(K)P_1 + P_2 = -P_3 \in E_n(K)。−(x,y)=(x,−y−a1x−a3)-(x, y) = (x, -y - a_1x - a_3) を z,wz, w で書くと z(−P)=−z/(1−a1z−a3w)z(-P) = -z/(1 - a_1z - a_3w) で、v(a1z32)≥2nv(a_1z_3^2) \geq 2n, v(a3z3w3)≥4nv(a_3z_3w_3) \geq 4n だから z(−P3)≡−z3(modm2n)z(-P_3) \equiv -z_3 \pmod{\mathfrak{m}^{2n}}(a1=0a_1 = 0 なら  mod m4n\bmod \mathfrak{m}^{4n})。合わせて z(P1+P2)=z(−P3)≡z1+z2z(P_1 + P_2) = z(-P_3) \equiv z_1 + z_2 を得る。□\square

系 6.18 n≥1n \geq 1 について、P↦z(P) mod mn+1P \mapsto z(P) \bmod \mathfrak{m}^{n+1} は単射準同型 En(K)/En+1(K)→mn/mn+1E_n(K)/E_{n+1}(K) \to \mathfrak{m}^n/\mathfrak{m}^{n+1} を与える。mn/mn+1\mathfrak{m}^n/\mathfrak{m}^{n+1} は加法群として kk と同型(πna↦a~\pi^na \mapsto \tilde{a})なので、En(K)/En+1(K)E_n(K)/E_{n+1}(K) は kk の部分群と同型である。

証明. m2n⊂mn+1\mathfrak{m}^{2n} \subset \mathfrak{m}^{n+1} なので命題 6.17(2) から準同型で、核は v(z(P))≥n+1v(z(P)) \geq n + 1 となる点、すなわち En+1(K)E_{n+1}(K) である。□\square

実際にはこの単射は同型である(問題 6.4)。

定理 6.19(E1(K)E_1(K) のねじれ点)E/KE/K を整なワイエルシュトラス方程式で与え、p=char⁡kp = \operatorname{char} k とする。

  1. m≥2m \geq 2 が pp で割り切れなければ、E1(K)E_1(K) に位数 mm の点はない。すなわち E1(K)E_1(K) のねじれ点の位数は pp のべきである。
  2. v(p)=1v(p) = 1 かつ a1=0a_1 = 0 ならば、E1(K)E_1(K) は OO 以外のねじれ点をもたない。
  3. p≥3p \geq 3 かつ v(p)=1v(p) = 1(たとえば K=QpK = \mathbb{Q}_p, p≥3p \geq 3)ならば、どんな整なワイエルシュトラス方程式についても E1(K)E_1(K) は OO 以外のねじれ点をもたない。

証明. (1) P∈En(K)∖En+1(K)P \in E_n(K) \setminus E_{n+1}(K) が位数 mm(p∤mp \nmid m)をもつとする。系 6.18 の準同型を θ\theta とすると θ(P)≠0\theta(P) \neq 0 で mθ(P)=θ(mP)=0m\theta(P) = \theta(mP) = 0。ところが mn/mn+1\mathfrak{m}^n/\mathfrak{m}^{n+1} は kk 上のベクトル空間で、mm は kk で 00 でないから mm 倍は単射であり、矛盾する。

(2) (1) より、位数 pp の点がないことを示せばよい(位数 pep^e の点 PP があれば pe−1Pp^{e-1}P は位数 pp)。P∈En(K)∖En+1(K)P \in E_n(K) \setminus E_{n+1}(K) が位数 pp をもつとすると、命題 6.17(2) を繰り返し使って z(jP)≡jz(P)(modm3n)z(jP) \equiv jz(P) \pmod{\mathfrak{m}^{3n}}(j≥1j \geq 1)、特に 0=z(pP)≡pz(P)(modm3n)0 = z(pP) \equiv pz(P) \pmod{\mathfrak{m}^{3n}}。しかし v(pz(P))=1+n<3nv(pz(P)) = 1 + n < 3n なので矛盾する。

(3) 2∈R×2 \in R^\times なので、変換 (1,0,−a1/2,−a3/2)(1, 0, -a_1/2, -a_3/2)(y=y′−(a1x+a3)/2y = y' - (a_1x + a_3)/2)で a1=a3=0a_1 = a_3 = 0 の整な方程式に移れる(第1章 命題 1.8(1))。この変換は xx を変えないので E1(K)E_1(K) は同じ集合のままであり、(2) を適用すればよい。□\square

(2) は p=2p = 2 でも a1=0a_1 = 0 なら使え、第7章のナゲル–ルッツの定理(定理 7.5)で y2=x3+ax2+bx+cy^2 = x^3 + ax^2 + bx + c の形の方程式に適用される。

系 6.20

  1. E/KE/K が良い還元をもち p∤mp \nmid m ならば、還元写像は単射 E(K)[m]→E~(k)E(K)[m] \to \tilde{E}(k) を与える。
  2. K=QpK = \mathbb{Q}_p, p≥3p \geq 3 ならば、還元写像は単射 E0(Qp)tors→E~ns(Fp)E_0(\mathbb{Q}_p)_{\mathrm{tors}} \to \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(\mathbb{F}_p) を与える。特に良い還元なら E(Qp)tors→E~(Fp)E(\mathbb{Q}_p)_{\mathrm{tors}} \to \tilde{E}(\mathbb{F}_p) は単射である。

証明. 定理 6.13 より還元 E0(K)→E~ns(k)E_0(K) \to \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) は核 E1(K)E_1(K) の準同型で、良い還元なら E0(K)=E(K)E_0(K) = E(K)。核に入るねじれ点は定理 6.19 により OO だけである。□\square

例 6.21(p=2p = 2 では位数 2 の点が E1E_1 に入りうる)65a2  ⁣:y2+xy=x3+4x+1\colon y^2 + xy = x^3 + 4x + 1 は Δ=−4225=−52⋅132\Delta = -4225 = -5^2 \cdot 13^2 で、2 で良い還元をもつ。点 P=(−1/4,1/8)P = (-1/4, 1/8) は方程式をみたし(両辺とも −1/64-1/64)、2y+a1x+a3=02y + a_1x + a_3 = 0 だから P=−PP = -P、すなわち位数 2 である。v2(x)=−2v_2(x) = -2 なので P∈E1(Q2)P \in E_1(\mathbb{Q}_2) で、還元  mod 2\bmod 2 は E(Q)[2]E(\mathbb{Q})[2] 上で単射でない。a1=1a_1 = 1 で、Z2\mathbb{Z}_2 上では平方完成できないから、定理 6.19(2), (3) の仮定は外せない。もっと劇的な例として、15a4  ⁣:y2+xy+y=x3+x2+35x−28\colon y^2 + xy + y = x^3 + x^2 + 35x - 28 は 2 で良い還元をもち、E(Q)tors≅Z/8ZE(\mathbb{Q})_{\mathrm{tors}} \cong \mathbb{Z}/8\mathbb{Z}(生成元 (2,6)(2, 6))なのに ∣E~(F2)∣=4\lvert \tilde{E}(\mathbb{F}_2) \rvert = 4 で、4⋅(2,6)=(3/4,−7/8)∈E1(Q2)4 \cdot (2, 6) = (3/4, -7/8) \in E_1(\mathbb{Q}_2) である。一般に E1(Q2)E_1(\mathbb{Q}_2) のねじれ点は高々位数 2 の点 1 つである(問題 6.5)。

6.5 形式群(概略)

命題 6.17 の合同式は、ある冪級数の恒等式の最初の項にあたる。この節ではその冪級数(形式群)を概略だけ述べる(証明は AEC 第 IV 章)。

(6.1) の右辺に ww を繰り返し代入すると、ww は zz の冪級数として一意に定まる:

w(z)=z3+a1z4+(a12+a2)z5+(a13+2a1a2+a3)z6+⋯∈Z[a1,…,a6][[z]]w(z) = z^3 + a_1z^4 + (a_1^2 + a_2)z^5 + (a_1^3 + 2a_1a_2 + a_3)z^6 + \cdots \in \mathbb{Z}[a_1, \dots, a_6][[z]]

これから x=z/wx = z/w, y=−1/wy = -1/w のローラン展開

x(z)=1z2−a1z−a2−a3z−(a4+a1a3)z2−⋯ ,y(z)=−1z3+a1z2+a2z+a3+(a4+a1a3)z+⋯x(z) = \frac{1}{z^2} - \frac{a_1}{z} - a_2 - a_3z - (a_4 + a_1a_3)z^2 - \cdots, \qquad y(z) = -\frac{1}{z^3} + \frac{a_1}{z^2} + \frac{a_2}{z} + a_3 + (a_4 + a_1a_3)z + \cdots

を得る。命題 6.17 の「第 3 の交点」の計算を冪級数で行うと、z(P1+P2)=F(z1,z2)z(P_1 + P_2) = F(z_1, z_2) となる冪級数

F(z1,z2)=z1+z2−a1z1z2−a2(z12z2+z1z22)−2a3(z13z2+z1z23)+(a1a2−3a3)z12z22+⋯F(z_1, z_2) = z_1 + z_2 - a_1z_1z_2 - a_2(z_1^2z_2 + z_1z_2^2) - 2a_3(z_1^3z_2 + z_1z_2^3) + (a_1a_2 - 3a_3)z_1^2z_2^2 + \cdots

が得られ、逆元は i(z)=−z−a1z2−a12z3−(a13+a3)z4−⋯i(z) = -z - a_1z^2 - a_1^2z^3 - (a_1^3 + a_3)z^4 - \cdots、FF についての 2 倍は [2]F(z)=2z−a1z2−2a2z3+(a1a2−7a3)z4+⋯[2]_F(z) = 2z - a_1z^2 - 2a_2z^3 + (a_1a_2 - 7a_3)z^4 + \cdots となる(これらの係数は計算機で確かめた)。命題 6.17(2) は、F−(z1+z2)F - (z_1 + z_2) が 2 次以上の項だけからなり、a1=0a_1 = 0 なら 3 次以上の項だけからなることに対応している(z1,z2∈mnz_1, z_2 \in \mathfrak{m}^n を代入すると、dd 次の項の付値は dndn 以上になる)。

定理 6.22(形式群, formal group)(主張)

  1. F(z1,z2)∈Z[a1,…,a6][[z1,z2]]F(z_1, z_2) \in \mathbb{Z}[a_1, \dots, a_6][[z_1, z_2]] は形式群の公理 F(z,0)=zF(z, 0) = z, F(z1,z2)=F(z2,z1)F(z_1, z_2) = F(z_2, z_1), F(F(z1,z2),z3)=F(z1,F(z2,z3))F(F(z_1, z_2), z_3) = F(z_1, F(z_2, z_3)), F(z,i(z))=0F(z, i(z)) = 0 をみたす。
  2. ai∈Ra_i \in R のとき、m\mathfrak{m} は演算 (z1,z2)↦F(z1,z2)(z_1, z_2) \mapsto F(z_1, z_2) で群 E^(m)\hat{E}(\mathfrak{m}) になり、P↦z(P)P \mapsto z(P) は群の同型 En(K)≅E^(mn)E_n(K) \cong \hat{E}(\mathfrak{m}^n)(n≥1n \geq 1)を与える。
  3. FF についての mm 倍は [m]F(z)=mz+⋯[m]_F(z) = mz + \cdots で、p∤mp \nmid m なら E^(m)\hat{E}(\mathfrak{m}) の自己同型である。
  4. (AEC IV.6.4)形式対数 log⁡F(z)=z+⋯∈K[[z]]\log_F(z) = z + \cdots \in K[[z]] は、r>v(p)/(p−1)r > v(p)/(p - 1) のとき群の同型 E^(mr)≅(mr,+)\hat{E}(\mathfrak{m}^r) \cong (\mathfrak{m}^r, +) を与える。特に v(p)<p−1v(p) < p - 1 なら E1(K)E_1(K) はねじれをもたず、p≥3p \geq 3 なら E1(Qp)≅pZp≅ZpE_1(\mathbb{Q}_p) \cong p\mathbb{Z}_p \cong \mathbb{Z}_p である。

(3) は定理 6.19(1) の、(4) は定理 6.19(3) の一般化である(p≥5p \geq 5 では v(p)≤p−2v(p) \leq p - 2 までの分岐を許す)。一方、定理 6.19(2) の p=2p = 2 の場合は v(2)=1=p−1v(2) = 1 = p - 1 なので (4) からは出ず、a1=0a_1 = 0 という方程式の形を使って初めてわかる。p=2p = 2, a1≠0a_1 \neq 0 で位数 2 の点が E1(Q2)E_1(\mathbb{Q}_2) に入りうる理由も [2]F(z)=2z−a1z2+⋯[2]_F(z) = 2z - a_1z^2 + \cdots から読みとれる:v(z)=1v(z) = 1 だと最初の 2 項の付値がともに 2 で、打ち消し合いうる。例 6.21 の点では z(P)=−x/y=2z(P) = -x/y = 2 で、2z−z2=02z - z^2 = 0 となっている。

6.6 玉河数と小平記号

定理 6.13 で、悪い還元のときは E0(K)E_0(K) の外の点を捨てた。捨てた部分は有限で、その大きさは完全に分類されている。

定理 6.23(小平・ネロン, Kodaira–Néron)(主張)E/KE/K について E(K)/E0(K)E(K)/E_0(K) は有限アーベル群である。分裂乗法的還元なら位数 v(Δ)=−v(j)v(\Delta) = -v(j) の巡回群で、それ以外の場合は位数が 4 以下である。

定義 6.24(玉河数, Tamagawa number)c=c(E/K)=[E(K):E0(K)]c = c(E/K) = [E(K) : E_0(K)] を玉河数という。E/QE/\mathbb{Q} と素数 pp について cp=c(E/Qp)c_p = c(E/\mathbb{Q}_p) と書く。

有限性だけなら、E(K)E(K) がコンパクトで E1(K)E_1(K) がその開部分群であることからわかる(概略。AEC 第 VII 章)。精密な値は、RR 上の極小正則モデル(その滑らかな部分がネロンモデル)の特殊ファイバーの形で決まり、その形は小平記号で表される。小平記号は小平邦彦が複素解析的な楕円曲面の特異ファイバーを分類したときの記号で、局所体上ではネロンが同じ分類を得た。本書では特殊ファイバーの幾何には立ち入らず、小平記号を次の表の「型の名前」として扱う(mm は特殊ファイバーの既約成分の数。Silverman の続編 Advanced Topics in the Arithmetic of Elliptic Curves 第 IV 章、Cremona Algorithms for Modular Elliptic Curves 3.2 節)。

小平記号 還元の型 v(Δ)v(\Delta)(p≥5p \geq 5) 成分の数 mm 導手指数 ff(p≥5p \geq 5) 玉河数 cc
I0\mathrm{I}_0 良い還元 00 11 00 11
In\mathrm{I}_n(n≥1n \geq 1) 乗法的 nn nn 11 分裂なら nn、非分裂なら nn が奇数で 11、偶数で 22
II\mathrm{II} 加法的 22 11 22 11
III\mathrm{III} 加法的 33 22 22 22
IV\mathrm{IV} 加法的 44 33 22 11 または 33
I0∗\mathrm{I}_0^\ast 加法的 66 55 22 1,2,41, 2, 4 のいずれか
In∗\mathrm{I}_n^\ast(n≥1n \geq 1) 加法的 6+n6 + n 5+n5 + n 22 22 または 44
IV∗\mathrm{IV}^\ast 加法的 88 77 22 11 または 33
III∗\mathrm{III}^\ast 加法的 99 88 22 22
II∗\mathrm{II}^\ast 加法的 1010 99 22 11

(c=4c = 4 のとき E(K)/E0(K)E(K)/E_0(K) は、I0∗\mathrm{I}_0^\ast と nn が偶数の In∗\mathrm{I}_n^\ast では (Z/2Z)2(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2、nn が奇数の In∗\mathrm{I}_n^\ast では Z/4Z\mathbb{Z}/4\mathbb{Z} である。)

小平記号・成分の数・玉河数の列はどの剰余標数でも正しいが、v(Δ)v(\Delta) と ff の列は p≥5p \geq 5 の場合のもので、剰余標数 2, 3 ではどちらも大きくなりうる(6.7 節)。p≥5p \geq 5 では型は v(Δ)v(\Delta) と v(j)v(j) だけで読みとれる。

定理 6.25(p≥5p \geq 5 での型の判定)(主張)剰余体の標数が 5 以上とし、極小モデルをとる。v(j)≥0v(j) \geq 0 なら v(Δ)v(\Delta) は 0,2,3,4,6,8,9,100, 2, 3, 4, 6, 8, 9, 10 のいずれかで、型はそれぞれ I0,II,III,IV,I0∗,IV∗,III∗,II∗\mathrm{I}_0, \mathrm{II}, \mathrm{III}, \mathrm{IV}, \mathrm{I}_0^\ast, \mathrm{IV}^\ast, \mathrm{III}^\ast, \mathrm{II}^\ast である。v(j)<0v(j) < 0 なら、n=−v(j)n = -v(j) として v(Δ)=nv(\Delta) = n のとき In\mathrm{I}_n、v(Δ)=n+6v(\Delta) = n + 6 のとき In∗\mathrm{I}_n^\ast であり、これ以外は起こらない。

小平記号と玉河数を計算するのがテイトのアルゴリズム (Tate's algorithm, 1975 年) である。整な方程式から出発して、座標変換と係数の整除性の判定を繰り返す。最初の段階は次のとおり。

  1. π∤Δ\pi \nmid \Delta なら I0\mathrm{I}_0。
  2. 特異点を (0,0)(0, 0) に移して π∣a3,a4,a6\pi \mid a_3, a_4, a_6 とする。π∤b2\pi \nmid b_2 なら In\mathrm{I}_n(n=v(Δ)n = v(\Delta))。分裂かどうかは命題 6.8 の 2 次式で決まる。
  3. π2∤a6\pi^2 \nmid a_6 なら II\mathrm{II}。 4. π3∤b8\pi^3 \nmid b_8 なら III\mathrm{III}。 5. π3∤b6\pi^3 \nmid b_6 なら IV\mathrm{IV}。

以下、さらに座標変換して π∣a1,a2\pi \mid a_1, a_2, π2∣a3,a4\pi^2 \mid a_3, a_4, π3∣a6\pi^3 \mid a_6 とし、3 次式 T3+(a2/π)T2+(a4/π2)T+a6/π3T^3 + (a_2/\pi)T^2 + (a_4/\pi^2)T + a_6/\pi^3 の  mod π\bmod \pi での根の重なり方によって I0∗\mathrm{I}_0^\ast, In∗\mathrm{I}_n^\ast と IV∗\mathrm{IV}^\ast, III∗\mathrm{III}^\ast, II∗\mathrm{II}^\ast を判定する。最後まで当てはまらなければ方程式は極小でなく、aia_i を πi\pi^i で割って最初に戻る。各段階で導手指数と玉河数も決まる(詳細は Silverman の続編 IV.9 節)。

ヒント

PARI/GP の elllocalred(E, p) は [f,kod,[u,r,s,t],c][f, \mathit{kod}, [u, r, s, t], c] を返す(ff は導手指数、[u,r,s,t][u, r, s, t] は pp で極小なモデルへの変換、cc は玉河数)。小平記号は kod=1\mathit{kod} = 1 が I0\mathrm{I}_0、2,3,42, 3, 4 が II,III,IV\mathrm{II}, \mathrm{III}, \mathrm{IV}、4+n4 + n が In\mathrm{I}_n、−1-1 が I0∗\mathrm{I}_0^\ast、−4−n-4 - n が In∗\mathrm{I}_n^\ast、−2,−3,−4-2, -3, -4 が II∗,III∗,IV∗\mathrm{II}^\ast, \mathrm{III}^\ast, \mathrm{IV}^\ast である。分裂・非分裂は ellap(E, p) が 11 か −1-1 かでわかる(問題 6.3)。本章の表、定理 6.25、後出のオッグの公式は導手 8000 以下の Cremona の表の全 51355 曲線のすべての悪い素数で、上の手順 1〜5 はそのうち p≤13p \leq 13 の悪い素数で、この出力と矛盾しないことを確かめた。

例 6.26

  1. 11a1, p=11p = 11. elllocalred の出力は [1,9,[1,0,0,0],5][1, 9, [1, 0, 0, 0], 5] で、I5\mathrm{I}_5, f=1f = 1, c11=5c_{11} = 5。分裂なので E(Q11)/E0(Q11)≅Z/5ZE(\mathbb{Q}_{11})/E_0(\mathbb{Q}_{11}) \cong \mathbb{Z}/5\mathbb{Z} で、例 6.15(1) の点 (5,5)(5, 5) の像が生成元である。
  2. 37a1, p=37p = 37. I1\mathrm{I}_1(非分裂)、c37=1c_{37} = 1。
  3. y2=x3+17y^2 = x^3 + 17. p=17p = 17 では v(Δ)=2v(\Delta) = 2, j=0j = 0 なので定理 6.25 より II\mathrm{II}(c=1c = 1)。p=2,3p = 2, 3 ではテイトのアルゴリズムによりそれぞれ IV\mathrm{IV}(c2=3c_2 = 3)、III\mathrm{III}(c3=2c_3 = 2)。
  4. y2=x3−xy^2 = x^3 - x, p=2p = 2. III\mathrm{III}, c2=2c_2 = 2 だが v2(Δ)=6v_2(\Delta) = 6 で、p≥5p \geq 5 の値 3 とは異なる。例 6.15(3) の点 (±1,0)(\pm 1, 0) の像が E(Q2)/E0(Q2)≅Z/2ZE(\mathbb{Q}_2)/E_0(\mathbb{Q}_2) \cong \mathbb{Z}/2\mathbb{Z} の生成元である。

6.7 導手・オッグの公式・潜在的良い還元

定義 6.27(導手, conductor)E/KE/K の導手指数 f=f(E/K)f = f(E/K) を、良い還元なら 00、乗法的還元なら 11、加法的還元なら 2+δ2 + \delta と定める。ここで δ≥0\delta \geq 0 は、素数 ℓ≠p\ell \neq p について E[ℓ]E[\ell] へのガロア群の作用の野生的な分岐を測る整数(スワン導手)で、p≥5p \geq 5 なら δ=0\delta = 0 である。E/QE/\mathbb{Q} に対し、fp=f(E/Qp)f_p = f(E/\mathbb{Q}_p) として NE=∏ppfpN_E = \prod_p p^{f_p} を EE の導手という。

δ\delta の定義と p≥5p \geq 5 で δ=0\delta = 0 となることは主張とする(Silverman の続編 第 IV 章)。Q\mathbb{Q} 上では f2≤8f_2 \leq 8, f3≤5f_3 \leq 5 であることが知られており、どちらも等号が起こる:y2=x3−2xy^2 = x^3 - 2x(256b1)は f2=8f_2 = 8(型 III\mathrm{III}, v2(Δ)=9v_2(\Delta) = 9)、y2+y=x3−1y^2 + y = x^3 - 1(243a1)は f3=5f_3 = 5(型 II\mathrm{II}, v3(Δ)=5v_3(\Delta) = 5)。定義から、EE が半安定   ⟺  \iff NEN_E が平方因子をもたない。

定理 6.28(オッグの公式, Ogg's formula)(主張)極小モデルについて v(Δ)=f+m−1v(\Delta) = f + m - 1 が成り立つ。ここで mm は小平記号の表の成分の数である。

オッグ(1967 年)による。剰余標数 2 を含む一般の場合の証明は斎藤毅(1988 年)による。p≥5p \geq 5 では表の各行でこの等式が成り立っている。この公式により、Δ\Delta と小平記号から導手が計算できる。

例 6.29(導手の計算)

曲線 極小判別式 ΔE\Delta_E 悪い素数での型 導手 NEN_E
11a1 −115-11^5 1111: I5\mathrm{I}_5(分裂) 1111
37a1 3737 3737: I1\mathrm{I}_1(非分裂) 3737
65a2  ⁣:y2+xy=x3+4x+1\colon y^2 + xy = x^3 + 4x + 1 −52⋅132-5^2 \cdot 13^2 5,135, 13: I2\mathrm{I}_2(非分裂) 6565
y2=x3−xy^2 = x^3 - x(32a2) 262^6 22: III\mathrm{III} 25=322^5 = 32
y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x(800a1) 26562^6 5^6 22: III\mathrm{III}, 55: I0∗\mathrm{I}_0^\ast 25⋅52=8002^5 \cdot 5^2 = 800
y2=x3+17y^2 = x^3 + 17(10404c1) −2433172-2^4 3^3 17^2 22: IV\mathrm{IV}, 33: III\mathrm{III}, 1717: II\mathrm{II} 2232172=104042^2 3^2 17^2 = 10404

オッグの公式で検算すると、y2=x3−xy^2 = x^3 - x の p=2p = 2 では 6=5+2−16 = 5 + 2 - 1、y2=x3+17y^2 = x^3 + 17 の p=2p = 2 では 4=2+3−14 = 2 + 3 - 1、p=3p = 3 では 3=2+2−13 = 2 + 2 - 1 である。

定理 6.30(潜在的良い還元)(主張)E/KE/K がある有限次拡大 L/KL/K の上で良い還元をもつ(潜在的良い還元, potential good reduction)ための必要十分条件は v(j)≥0v(j) \geq 0 である。v(j)<0v(j) < 0 なら、ある有限次拡大の上で乗法的還元をもつ。

必要性は易しい:LL 上の極小モデルで vL(Δ)=0v_L(\Delta) = 0 なら vL(j)=vL(c43)≥0v_L(j) = v_L(c_4^3) \geq 0 で、jj は変数変換で変わらない。十分性は AEC VII.5 節を参照。特に、どの E/KE/K も適当な有限次拡大の上では半安定になる(半安定還元定理, AEC VII.5.4)。

例 6.31 (1) y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x(j=1728j = 1728)は 5 で加法的還元をもつが、L=Q5(5)L = \mathbb{Q}_5(\sqrt{5}) 上で x=5x′x = 5x', y=55 y′y = 5\sqrt{5}\ y'(u=5u = \sqrt{5})と変換すると y′2=x′3−x′y'^2 = x'^3 - x' となり、判別式 6464 は LL の単数なので良い還元になる。(2) y2=x3+17y^2 = x^3 + 17(j=0j = 0)は、α6=17\alpha^6 = 17 として L=Q17(α)L = \mathbb{Q}_{17}(\alpha) 上で x=α2x′x = \alpha^2x', y=α3y′y = \alpha^3y' とすると y′2=x′3+1y'^2 = x'^3 + 1(判別式 −432-432)になる。(3) 11a1 は v11(j)=−5<0v_{11}(j) = -5 < 0 なので、どんな拡大の上でも良い還元にはならない。

定理 6.32(ネロン–オッグ–シャファレビッチの判定法, Néron–Ogg–Shafarevich criterion)(主張)ℓ≠p\ell \neq p を素数とし、K(E[m])K(E[m]) を E[m]E[m] の点の座標を KK に添加した体とする。次は同値である。

  1. E/KE/K は良い還元をもつ。
  2. pp と素なすべての mm について、K(E[m])/KK(E[m])/K は不分岐拡大である。
  3. すべての n≥1n \geq 1 について、K(E[ℓn])/KK(E[\ell^n])/K は不分岐拡大である。

1 ⇒ 2 は本章の結果から次のように示せる。E~[m]\tilde{E}[m] の点の座標をすべて含む kk の有限次拡大 k′k' をとり、剰余体が k′k' である KK の有限次不分岐拡大を K′K' とする(不分岐なので K′K' の正規化された付値は KK 上で vv に一致し、v(Δ)=0v(\Delta) = 0 から K′K' 上でも EE は良い還元をもつ)。E~[m]\tilde{E}[m] の点 Qˉ\bar{Q} を定理 6.13 で Q∈E(K′)Q \in E(K') に持ち上げると、mQ∈E1(K′)mQ \in E_1(K') である。E1(K′)E_1(K') の上で mm 倍は全単射なので(定理 6.22(2), (3))、mR=mQmR = mQ となる R∈E1(K′)R \in E_1(K') があり、Q−RQ - R は Qˉ\bar{Q} に還元される mm 等分点である。ヘンゼルの補題による持ち上げ QQ そのものは mm 等分点とは限らないので、この修正が必要になる。系 6.20(1) と合わせると E(K′)[m]→E~[m]E(K')[m] \to \tilde{E}[m] は全単射で、∣E~[m]∣=m2=∣E[m]∣\lvert \tilde{E}[m] \rvert = m^2 = \lvert E[m] \rvert(第3章 定理 3.23)より E[m]⊂E(K′)E[m] \subset E(K')、すなわち K(E[m])⊂K′K(E[m]) \subset K' は不分岐である。逆向きを含む完全な証明は AEC VII.7 節を参照。この判定法から、同種な楕円曲線(第3章 定義 3.8)は同じ素数で悪い還元をもつ。さらに導手も同種で不変である(主張)。たとえば互いに同種な 11a1, 11a2, 11a3 の極小判別式は −115-11^5, −11-11, −11-11 と異なるが、導手はすべて 11 である。

まとめ

  • 局所体上の楕円曲線には極小モデルがあり、u∈R×u \in R^\times, r,s,t∈Rr, s, t \in R の変換を除いて一意である。v(Δ)<12v(\Delta) < 12, v(c4)<4v(c_4) < 4, v(c6)<6v(c_6) < 6 のどれかが成り立てば極小で、p≥5p \geq 5 なら逆も成り立つが、p=2,3p = 2, 3 では成り立たない。
  • 極小モデルで、良い還元(v(Δ)=0v(\Delta) = 0)、乗法的還元(v(Δ)>0v(\Delta) > 0, v(c4)=0v(c_4) = 0)、加法的還元(v(Δ)>0v(\Delta) > 0, v(c4)>0v(c_4) > 0)に分かれる。乗法的還元の分裂は、p≠2p \neq 2 なら −c~6-\tilde{c}_6 が平方元であること。
  • 還元は全射準同型 E0(K)→E~ns(k)E_0(K) \to \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(k) で核は E1(K)E_1(K)。[E0:E1][E_0 : E_1] は ∣E~(k)∣\lvert \tilde{E}(k) \rvert, q−1q - 1, q+1q + 1, qq(良い・分裂・非分裂・加法的)。
  • z=−x/yz = -x/y は En/En+1↪kE_n/E_{n+1} \hookrightarrow k を与え、E1(K)E_1(K) には剰余標数と素な位数のねじれ点がない。v(p)=1v(p) = 1 かつ a1=0a_1 = 0(p≥3p \geq 3 なら平方完成で可能)ならねじれ点は一切ない。p=2p = 2, a1≠0a_1 \neq 0 では位数 2 の点がありうる。
  • これらは形式群 F(z1,z2)=z1+z2−a1z1z2−⋯F(z_1, z_2) = z_1 + z_2 - a_1z_1z_2 - \cdots の初項の情報で、一般に v(p)<p−1v(p) < p - 1 なら E1(K)E_1(K) はねじれをもたない(主張)。
  • 玉河数 c=[E(K):E0(K)]c = [E(K) : E_0(K)] は分裂 In\mathrm{I}_n なら nn、それ以外は 4 以下で、小平記号の表で決まる(主張)。
  • 導手指数は良い還元で 0、乗法的で 1、加法的で 2+δ2 + \delta(p≥5p \geq 5 なら 2)で、オッグの公式 v(Δ)=f+m−1v(\Delta) = f + m - 1 が成り立つ(主張)。
  • 潜在的良い還元   ⟺  \iff v(j)≥0v(j) \geq 0。良い還元は等分点の体が不分岐であることと同値(主張)。

演習問題

問題 6.1 ★ 次の方程式は p=5p = 5 で極小か。極小モデルでの 5 における還元の型を答えよ。(1) y2=x3−25xy^2 = x^3 - 25x (2) y2=x3−625xy^2 = x^3 - 625x

解答

(1) Δ=−16⋅4⋅(−25)3=2656\Delta = -16 \cdot 4 \cdot (-25)^3 = 2^6 5^6, v5(Δ)=6<12v_5(\Delta) = 6 < 12 なので命題 6.3(1) より極小。c4=1200=24⋅3⋅52c_4 = 1200 = 2^4 \cdot 3 \cdot 5^2 で v5(c4)=2>0v_5(c_4) = 2 > 0 だから、命題 6.8 より加法的還元( mod 5\bmod 5 で y2=x3y^2 = x^3)。

(2) Δ=26512\Delta = 2^6 5^{12}, c4=30000=24⋅3⋅54c_4 = 30000 = 2^4 \cdot 3 \cdot 5^4 で v5(Δ)=12v_5(\Delta) = 12, v5(c4)=4v_5(c_4) = 4 だから、命題 6.3(2) より極小でない。x=25x′x = 25x', y=125y′y = 125y' とすると y′2=x′3−x′y'^2 = x'^3 - x'(Δ=64\Delta = 64)で、5 で良い還元をもつ。

問題 6.2 ★ 11a3  ⁣:y2+y=x3−x2\colon y^2 + y = x^3 - x^2(Δ=−11\Delta = -11, c4=16c_4 = 16, c6=−152c_6 = -152)について、(1) p=11p = 11 での還元の型、(2)  mod 11\bmod 11 での特異点とそこでの 2 本の接線、(3) 分裂かどうかを −c6-c_6 で確かめよ。

解答

(1) v11(Δ)=1v_{11}(\Delta) = 1 で極小、v11(c4)=0v_{11}(c_4) = 0 なので乗法的還元。

(2) F=y2+y−x3+x2F = y^2 + y - x^3 + x^2 とすると、Fy=2y+1≡0F_y = 2y + 1 \equiv 0 から y≡5y \equiv 5、Fx=−x(3x−2)≡0F_x = -x(3x - 2) \equiv 0 から x≡0x \equiv 0 または x≡8x \equiv 8。F(0,5)=30≢0F(0, 5) = 30 \not\equiv 0, F(8,5)=−418=−38⋅11≡0F(8, 5) = -418 = -38 \cdot 11 \equiv 0 なので特異点は (8,5)(8, 5)。X=x−8X = x - 8, Y=y−5Y = y - 5 とおくと FF の 2 次の部分は Y2+(−3⋅8+1)X2=Y2−23X2≡Y2−X2=(Y−X)(Y+X)Y^2 + (-3 \cdot 8 + 1)X^2 = Y^2 - 23X^2 \equiv Y^2 - X^2 = (Y - X)(Y + X)。接線は y−5=±(x−8)y - 5 = \pm(x - 8) で、F11\mathbb{F}_{11} 上定義されているから分裂。

(3) −c6=152≡9=32(mod11)-c_6 = 152 \equiv 9 = 3^2 \pmod{11} は平方元なので、命題 6.8 からも分裂である。

問題 6.3 ★ E/QE/\mathbb{Q} が素数 pp で悪い還元をもつとき、極小モデルの還元について ap:=p+1−∣E~(Fp)∣a_p := p + 1 - \lvert \tilde{E}(\mathbb{F}_p) \rvert とおく(E~(Fp)\tilde{E}(\mathbb{F}_p) は特異点も含む)。分裂乗法的・非分裂乗法的・加法的還元に応じて ap=1,−1,0a_p = 1, -1, 0 であることを示し、11a1(p=11p = 11)と 37a1(p=37p = 37)で確かめよ。

解答

特異点はただ一つで Fp\mathbb{F}_p 有理点だから ∣E~(Fp)∣=∣E~ns(Fp)∣+1\lvert \tilde{E}(\mathbb{F}_p) \rvert = \lvert \tilde{E}_{\mathrm{ns}}(\mathbb{F}_p) \rvert + 1 で、系 6.14 よりこれは pp, p+2p + 2, p+1p + 1、すなわち ap=1,−1,0a_p = 1, -1, 0 である。11a1(分裂)では非特異点 10 個と特異点の計 11 個で a11=1a_{11} = 1、37a1(非分裂)では非特異点 38 個と特異点の計 39 個で a37=−1a_{37} = -1。いずれも PARI/GP の ellap の値と一致する。これらは第10章(定義 10.2)の L 関数の悪い素数での局所因子 (1−app−s)−1(1 - a_pp^{-s})^{-1} に現れる。

問題 6.4 ★★ n≥1n \geq 1 とする。系 6.18 の単射 En(K)/En+1(K)→mn/mn+1E_n(K)/E_{n+1}(K) \to \mathfrak{m}^n/\mathfrak{m}^{n+1} が全射であることを示し、[E1(K):En(K)]=qn−1[E_1(K) : E_n(K)] = q^{n-1} を導け。(ヒント:z0∈mnz_0 \in \mathfrak{m}^n を固定し、T(w)=f(z0,w)T(w) = f(z_0, w) が m3n\mathfrak{m}^{3n} 上の縮小写像であることを使う。)

解答

z0∈mnz_0 \in \mathfrak{m}^n, z0≠0z_0 \neq 0 をとる。w,w′∈m3nw, w' \in \mathfrak{m}^{3n} について

T(w)−T(w′)=(w−w′)(a1z0+a2z02+a3(w+w′)+a4z0(w+w′)+a6(w2+ww′+w′2))T(w) - T(w') = (w - w')\bigl(a_1z_0 + a_2z_0^2 + a_3(w + w') + a_4z_0(w + w') + a_6(w^2 + ww' + w'^2)\bigr)

で括弧の付値は 11 以上だから v(T(w)−T(w′))≥v(w−w′)+1v(T(w) - T(w')) \geq v(w - w') + 1。また T(w)=z03+w(a1z0+a2z02+a3w+a4z0w+a6w2)T(w) = z_0^3 + w(a_1z_0 + a_2z_0^2 + a_3w + a_4z_0w + a_6w^2) より T(m3n)⊂m3nT(\mathfrak{m}^{3n}) \subset \mathfrak{m}^{3n}。w(0)=0w^{(0)} = 0, w(i+1)=T(w(i))w^{(i+1)} = T(w^{(i)}) とおくと v(w(i+1)−w(i))≥iv(w^{(i+1)} - w^{(i)}) \geq i なのでコーシー列で、RR の完備性から極限 w0∈m3nw_0 \in \mathfrak{m}^{3n} があり、TT の連続性から w0=f(z0,w0)w_0 = f(z_0, w_0)。w0=0w_0 = 0 なら 0=f(z0,0)=z030 = f(z_0, 0) = z_0^3 で矛盾するから w0≠0w_0 \neq 0。(6.1) を逆にたどれば P=(z0/w0,−1/w0)∈E(K)P = (z_0/w_0, -1/w_0) \in E(K) で、z(P)=z0z(P) = z_0 より P∈En(K)P \in E_n(K)。mn/mn+1\mathfrak{m}^n/\mathfrak{m}^{n+1} の各類は z0∈mnz_0 \in \mathfrak{m}^n で代表される(00 の類は OO)ので全射である。よって Ej(K)/Ej+1(K)≅kE_j(K)/E_{j+1}(K) \cong k で、[E1(K):En(K)]=∏j=1n−1[Ej(K):Ej+1(K)]=qn−1[E_1(K) : E_n(K)] = \prod_{j=1}^{n-1}[E_j(K) : E_{j+1}(K)] = q^{n-1}。

問題 6.5 ★★ K=Q2K = \mathbb{Q}_2 とし、EE を任意の整なワイエルシュトラス方程式で与える。E1(Q2)E_1(\mathbb{Q}_2) のねじれ点は、OO 以外には位数 2 の点が高々 1 個しかないことを示せ。

解答

定理 6.19(1) より E1(Q2)E_1(\mathbb{Q}_2) のねじれ点の位数は 2 のべきである。位数 2 の点 P∈En∖En+1P \in E_n \setminus E_{n+1} があれば、命題 6.17(2) より 0=z(2P)≡2z(P)(mod22n)0 = z(2P) \equiv 2z(P) \pmod{2^{2n}} で v(2z(P))=n+1v(2z(P)) = n + 1 だから n+1≥2nn + 1 \geq 2n、すなわち n=1n = 1。E2(Q2)E_2(\mathbb{Q}_2) に OO 以外のねじれ点 QQ(位数 2e2^e)があれば、2e−1Q2^{e-1}Q は部分群 E2E_2 に入る位数 2 の点になり矛盾する。よって E1(Q2)E_1(\mathbb{Q}_2) のねじれ部分群 TT は T∩E2={O}T \cap E_2 = \lbrace O \rbrace をみたし、系 6.18 により T↪E1/E2↪m/m2≅F2T \hookrightarrow E_1/E_2 \hookrightarrow \mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2 \cong \mathbb{F}_2。したがって ∣T∣≤2\lvert T \rvert \leq 2。例 6.21 の 65a2 の点 (−1/4,1/8)(-1/4, 1/8) がこの上界を実現する。

問題 6.6 ★★ E ⁣:y2=x3−25xE\colon y^2 = x^3 - 25x(800a1)について、(1) p=5p = 5 で I0∗\mathrm{I}_0^\ast 型であることを定理 6.25 で確かめよ。(2) 2 等分点を使って [E(Q5):E0(Q5)]≥4[E(\mathbb{Q}_5) : E_0(\mathbb{Q}_5)] \geq 4 を示し、表と合わせて c5=4c_5 = 4 を結論せよ。

解答

(1) 問題 6.1(1) より極小で v5(Δ)=6v_5(\Delta) = 6。j=1728j = 1728 で v5(j)=0v_5(j) = 0 なので、定理 6.25 より I0∗\mathrm{I}_0^\ast。

(2) 2 等分点 T1=(0,0)T_1 = (0, 0), T2=(5,0)T_2 = (5, 0), T3=(−5,0)T_3 = (-5, 0) はすべて  mod 5\bmod 5 で E~ ⁣:y2=x3\tilde{E}\colon y^2 = x^3 の尖点 (0,0)(0, 0) に還元されるので、E0(Q5)E_0(\mathbb{Q}_5) に入らない。i≠ji \neq j で Ti,TjT_i, T_j が同じ剰余類に入るなら、Ti−Tj=Ti+TjT_i - T_j = T_i + T_j は残りの 2 等分点で E0E_0 に入ることになり矛盾する。よって O,T1,T2,T3O, T_1, T_2, T_3 は相異なる剰余類を代表し、c5≥4c_5 \geq 4。表より I0∗\mathrm{I}_0^\ast の玉河数は 4 以下なので c5=4c_5 = 4、E(Q5)/E0(Q5)≅(Z/2Z)2E(\mathbb{Q}_5)/E_0(\mathbb{Q}_5) \cong (\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2 である( elllocalred(E, 5) も c=4c = 4 を返す)。

問題 6.7 ★★ p≥5p \geq 5 とし、E ⁣:y2=x3+Ax+BE\colon y^2 = x^3 + Ax + B(A,B∈ZpA, B \in \mathbb{Z}_p)を極小モデル、d∈Zpd \in \mathbb{Z}_p を vp(d)=1v_p(d) = 1 とする。二次ツイスト E(d) ⁣:y2=x3+d2Ax+d3BE^{(d)}\colon y^2 = x^3 + d^2Ax + d^3B(第1章 定義 1.19)について、(1) EE が良い還元をもつなら E(d)E^{(d)} は I0∗\mathrm{I}_0^\ast 型、(2) EE が In\mathrm{I}_n 型なら E(d)E^{(d)} は In∗\mathrm{I}_n^\ast 型であることを示せ(定理 6.25 は使ってよい)。

解答

c4=−48Ac_4 = -48A, c6=−864Bc_6 = -864B, Δ=−16(4A3+27B2)\Delta = -16(4A^3 + 27B^2) より、E(d)E^{(d)} では c4′=d2c4c_4' = d^2c_4, c6′=d3c6c_6' = d^3c_6, Δ′=d6Δ\Delta' = d^6\Delta, j′=jj' = j。

(1) v(Δ)=0v(\Delta) = 0 なので v(Δ′)=6<12v(\Delta') = 6 < 12 で極小、v(c4′)≥2v(c_4') \geq 2 なので加法的。v(j′)=3v(c4)≥0v(j') = 3v(c_4) \geq 0, v(Δ′)=6v(\Delta') = 6 だから定理 6.25 より I0∗\mathrm{I}_0^\ast。

(2) v(c4)=0v(c_4) = 0, v(Δ)=nv(\Delta) = n, v(j)=−nv(j) = -n。v(c4′)=2<4v(c_4') = 2 < 4 なので極小(命題 6.3(1))、v(c4′)>0v(c_4') > 0 なので加法的。v(j′)=−n<0v(j') = -n < 0, v(Δ′)=n+6v(\Delta') = n + 6 だから定理 6.25 より In∗\mathrm{I}_n^\ast。

例:y2=x3−xy^2 = x^3 - x の 5 によるツイストが問題 6.6 の曲線で、11a1 の標準形を 11 でツイストすると p=11p = 11 で I5∗\mathrm{I}_5^\ast(v11(Δ′)=11v_{11}(\Delta') = 11)になる(PARI/GP で確認できる)。

問題 6.8 ★★ E/KE/K が良い還元をもち、p∤mp \nmid m で E[m]⊂E(K)E[m] \subset E(K)(mm 等分点がすべて KK 有理点)とする。m∣q−1m \mid q - 1 を示せ。

解答

char⁡K=0\operatorname{char} K = 0 なので E[m]≅(Z/mZ)2E[m] \cong (\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^2(第3章 定理 3.23)で、系 6.20(1) よりこれは E~(k)\tilde{E}(k) に単射に埋め込まれる。第4章の定理 4.14(群構造)より E~(k)≅Z/n1Z⊕Z/n2Z\tilde{E}(k) \cong \mathbb{Z}/n_1\mathbb{Z} \oplus \mathbb{Z}/n_2\mathbb{Z}(n1∣n2n_1 \mid n_2, n1∣q−1n_1 \mid q - 1)。その mm 倍で消える部分群 Z/gcd⁡(m,n1)⊕Z/gcd⁡(m,n2)\mathbb{Z}/\gcd(m, n_1) \oplus \mathbb{Z}/\gcd(m, n_2) が位数 m2m^2 の群を含むので gcd⁡(m,n1)=m\gcd(m, n_1) = m、すなわち m∣n1∣q−1m \mid n_1 \mid q - 1。(ヴェイユ対を使えば E~[m]⊂E~(k)\tilde{E}[m] \subset \tilde{E}(k) から μm⊂k\mu_m \subset k が従う(第3章 系 3.32(2))ことからもわかる。)

問題 6.9 ★★ E ⁣:y2=x3−81x−243E\colon y^2 = x^3 - 81x - 243 は v3(Δ)=12v_3(\Delta) = 12, v3(c4)=5v_3(c_4) = 5, v3(c6)=8v_3(c_6) = 8 をみたすが、p=3p = 3 で極小であることを変換公式で直接示せ。

解答

b2=0b_2 = 0, b4=2a4=−162b_4 = 2a_4 = -162, b6=4a6=−972b_6 = 4a_6 = -972 で、Δ=−16(4⋅(−81)3+27⋅2432)=16⋅312\Delta = -16(4 \cdot (-81)^3 + 27 \cdot 243^2) = 16 \cdot 3^{12}, c4=3888=2435c_4 = 3888 = 2^4 3^5, c6=209952=2538c_6 = 209952 = 2^5 3^8 である。Z3\mathbb{Z}_3 係数で判別式の付値が 12 より小さい方程式への変換 (u,r,s,t)(u, r, s, t) があるとすると、v(Δ′)=12−12v(u)v(\Delta') = 12 - 12v(u) が 00 以上 12 未満なので v(u)=1v(u) = 1 で、単元倍を合成して u=3u = 3 としてよい。新しい係数は Z3\mathbb{Z}_3 に入るので bi′∈Z3b_i' \in \mathbb{Z}_3。第1章の変換公式(命題 1.6)より

9b2′=12r,81b4′=−162+6r2,729b6′=−972−324r+4r39b_2' = 12r, \qquad 81b_4' = -162 + 6r^2, \qquad 729b_6' = -972 - 324r + 4r^3

第 1 式から r=3b2′/4r = 3b_2'/4 で v(r)≥1v(r) \geq 1。第 2 式から v(6r2)=v(81b4′+162)≥4v(6r^2) = v(81b_4' + 162) \geq 4 なので 1+2v(r)≥41 + 2v(r) \geq 4、すなわち v(r)≥2v(r) \geq 2。すると第 3 式の右辺は v(972)=5v(972) = 5, v(324r)≥6v(324r) \geq 6, v(4r3)≥6v(4r^3) \geq 6 より付値がちょうど 5 だが、左辺の付値は 6 以上で矛盾する。よって 3 で極小である( elllocalred(E, 3) は型 II∗\mathrm{II}^\ast, f3=4f_3 = 4 を返し、オッグの公式 12=4+9−112 = 4 + 9 - 1 とも合う)。

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