Lemma数学ロードマップ

18 偏微分方程式論 · 第 6 章

非線形問題への入門

目安 11〜14 時間定理など 11演習 6 問

この章の目標

  • 変分法の直接法を理解し、弱下半連続性と強圧性から最小点の存在を証明できる
  • オイラー–ラグランジュ方程式を導き、pp-ラプラシアンを含む非線形楕円型方程式の弱解を変分法で構成できる
  • バナッハ・ブラウアー・シャウダーの不動点定理を非線形楕円型方程式に応用できる
  • 単調作用素法と峠の定理の主張を理解し、適用例を説明できる
  • 臨界指数でのコンパクト性の破れと、ナビエ–ストークス方程式の未解決問題の位置づけを説明できる

前提:第3章、第4章、10-functional-analysis 第4章(マズールの定理・反射的空間の弱コンパクト性)、03-topology 第7章(縮小写像の原理)、09-algebraic-topology 第5章(ブラウアーの不動点定理)

6.1 非線形問題の難しさ

第4・5章の線形理論は、ラックス–ミルグラムの定理やフレドホルムの択一定理など、線形性に強く依存していた。非線形方程式、たとえば

−Δu=f(u),−div⁡(∣∇u∣p−2∇u)=f,∂tu+(u⋅∇)u−νΔu+∇p=0-\Delta u = f(u), \qquad -\operatorname{div}\bigl(\lvert\nabla u\rvert^{p-2}\nabla u\bigr) = f, \qquad \partial_tu + (u \cdot \nabla)u - \nu\Delta u + \nabla p = 0

では、解の重ね合わせができず、解の存在・一意性は非線形項の形と大きさに微妙に依存する。また第1章で見たように超関数どうしの積は定義できないので、非線形項 f(u)f(u) に意味を与えるには uu がある関数空間に属していなければならない。ここでソボレフの埋め込み定理(u∈H1⇒u∈L2∗u \in H^1 \Rightarrow u \in L^{2^{\ast}})が本質的な役割を果たす。本章では主な三つの方法を紹介する。

  1. 変分法:方程式を汎関数の臨界点として捉え、最小点や鞍点を探す。
  2. 不動点定理:方程式を u=T(u)u = T(u) の形に書き、コンパクト性とアプリオリ評価で不動点を示す。
  3. 単調性:線形作用素の強圧性を非線形作用素に一般化する。

いずれにおいても、弱解を作り、正則性で古典解に戻るという流れは変わらない。以下 Ω⊂Rn\Omega \subset \mathbb{R}^n は有界開集合、関数は実数値とする。

6.2 変分法の直接法

RN\mathbb{R}^N 上の連続関数は、有界閉集合上で最小値をとる。これを無限次元に拡張したいが、無限次元では有界閉集合はコンパクトでない。そこで弱位相でのコンパクト性を使い、その代わりに汎関数には弱位相での下半連続性を要求する。

定義 6.1 バナッハ空間 XX の部分集合 MM 上の汎関数 I ⁣:M→(−∞,∞]I\colon M \to (-\infty, \infty] が弱下半連続であるとは、MM の列 uku_k が u∈Mu \in M に弱収束するとき、つねに I[u]≤lim inf⁡kI[uk]I[u] \leq \liminf_kI[u_k] となることをいう。∥u∥→∞\lVert u\rVert \to \infty(u∈Mu \in M)のとき I[u]→∞I[u] \to \infty となることを強圧的 (coercive) という。

定理 6.2(直接法, direct method)XX を反射的バナッハ空間、M⊂XM \subset X を空でない弱点列閉集合とし、I ⁣:M→(−∞,∞]I\colon M \to (-\infty, \infty] は弱下半連続かつ強圧的で、恒等的に ∞\infty ではないとする。このとき II は MM 上で最小値をとる。

証明. m=inf⁡MI<∞m = \inf_MI < \infty とし、I[uk]→mI[u_k] \to m となる最小化列 uk∈Mu_k \in M をとる。強圧性から (uk)(u_k) は有界であり、反射的空間の有界列は弱収束する部分列 ukj⇀uu_{k_j} \rightharpoonup u をもつ(10-functional-analysis 第4章 定理 4.20)。MM は弱点列閉なので u∈Mu \in M、弱下半連続性から I[u]≤lim inf⁡jI[ukj]=mI[u] \leq \liminf_jI[u_{k_j}] = m。よって m>−∞m > -\infty で I[u]=mI[u] = m。□\square

命題 6.3 バナッハ空間 XX 上の凸汎関数 I ⁣:X→(−∞,∞]I\colon X \to (-\infty, \infty] が(ノルム位相で)下半連続ならば、弱下半連続である。

証明. uk⇀uu_k \rightharpoonup u とし、ℓ=lim inf⁡I[uk]<∞\ell = \liminf I[u_k] < \infty としてよい。I[ukj]→ℓI[u_{k_j}] \to \ell となる部分列をとる。t>ℓt > \ell に対し、劣位集合 {I≤t}\lbrace I \leq t\rbrace は凸かつ閉なので、マズールの定理(同第4章 命題 4.17)により弱閉である。十分大きな jj で ukju_{k_j} はこの集合に属するので uu も属し、I[u]≤tI[u] \leq t。t↓ℓt \downarrow \ell とすればよい。□\square

定理 6.4(凸な積分汎関数の最小点)1<p<∞1 < p < \infty とし、F ⁣:Rn→RF\colon\mathbb{R}^n \to \mathbb{R} は凸で、定数 α>0\alpha > 0、β≥0\beta \geq 0、C1C_1 について α∣ξ∣p−β≤F(ξ)≤C1(1+∣ξ∣p)\alpha\lvert\xi\rvert^p - \beta \leq F(\xi) \leq C_1(1 + \lvert\xi\rvert^p) をみたすとする。f∈Lp′(Ω)f \in L^{p'}(\Omega)(1p+1p′=1\frac{1}{p} + \frac{1}{p'} = 1)に対し

I[u]=∫Ω(F(∇u)−fu)dx(u∈W01,p(Ω))I[u] = \int_\Omega\bigl(F(\nabla u) - fu\bigr)dx \qquad (u \in W_0^{1,p}(\Omega))

は最小点をもつ。FF が狭義凸ならば最小点はただ一つである。

証明. W01,p(Ω)W_0^{1,p}(\Omega) は反射的で(定理 3.4 の閉部分空間)、ポアンカレの不等式(定理 3.27)により ∥∇u∥p\lVert\nabla u\rVert_p は同値なノルムである。凸関数 FF は連続なので F(∇u)F(\nabla u) は可測で、上からの評価により II は有限値。(i) 強圧性:ヘルダーとポアンカレの不等式から I[u]≥α∥∇u∥pp−β∣Ω∣−CP∥f∥p′∥∇u∥pI[u] \geq \alpha\lVert\nabla u\rVert_p^p - \beta\lvert\Omega\rvert - C_P\lVert f\rVert_{p'}\lVert\nabla u\rVert_p で、p>1p > 1 なので ∥∇u∥p→∞\lVert\nabla u\rVert_p \to \infty のとき I[u]→∞I[u] \to \infty。(ii) II は凸。(iii) II はノルム位相で連続:uk→uu_k \to u なら、任意の部分列からさらに ∇ukj→∇u\nabla u_{k_j} \to \nabla u a.e. で ∣∇ukj∣≤h∈Lp\lvert\nabla u_{k_j}\rvert \leq h \in L^p となる部分列がとれ(06-measure-integration 第4章)、∣F(∇ukj)∣≤C(1+hp)\lvert F(\nabla u_{k_j})\rvert \leq C(1 + h^p) から優収束定理が使える。命題 6.3 により II は弱下半連続で、定理 6.2 から最小点が存在する。一意性:u1≠u2u_1 \neq u_2 が最小点なら、ポアンカレの不等式から ∇u1≠∇u2\nabla u_1 \neq \nabla u_2 となる正測度集合があり、そこで FF の狭義凸性を使うと I[u1+u22]<12(I[u1]+I[u2])=min⁡II[\frac{u_1 + u_2}{2}] < \frac{1}{2}(I[u_1] + I[u_2]) = \min I となって矛盾する。□\square

注意

凸性は単なる技術的仮定ではない。例 6.5(ボルザの例)I[u]=∫01((u′2−1)2+u2)dxI[u] = \int_0^1\bigl((u'^2 - 1)^2 + u^2\bigr)dx を W01,4(0,1)W_0^{1,4}(0, 1) 上で考える。傾き ±1\pm 1、高さ 12k\frac{1}{2k} ののこぎり波 uku_k では第 1 項が 00 で I[uk]≤14k2→0I[u_k] \leq \frac{1}{4k^2} \to 0 なので inf⁡I=0\inf I = 0。しかし I[u]=0I[u] = 0 なら u=0u = 0 かつ a.e. で u′=±1u' = \pm 1 となり矛盾するので、最小点は存在しない。最小化列は細かく振動して 00 に弱収束するが、I[0]=1I[0] = 1 である(問題 6.3)。被積分関数 (ξ2−1)2(\xi^2 - 1)^2 が ξ\xi について凸でないため、弱下半連続性が破れている。

6.3 オイラー–ラグランジュ方程式と pp-ラプラシアン

定理 6.6(オイラー–ラグランジュ方程式)定理 6.4 の仮定に加えて F∈C1F \in C^1、∣∇F(ξ)∣≤C2(1+∣ξ∣p−1)\lvert\nabla F(\xi)\rvert \leq C_2(1 + \lvert\xi\rvert^{p-1}) とする。u∈W01,p(Ω)u \in W_0^{1,p}(\Omega) が II の最小点であるための必要十分条件は、すべての v∈W01,p(Ω)v \in W_0^{1,p}(\Omega) について

∫Ω(∇F(∇u)⋅∇v−fv)dx=0(6.1)\int_\Omega\bigl(\nabla F(\nabla u) \cdot \nabla v - fv\bigr)dx = 0 \tag{6.1}

が成り立つこと、すなわち uu が −div⁡(∇F(∇u))=f-\operatorname{div}\bigl(\nabla F(\nabla u)\bigr) = f、u=0u = 0(∂Ω\partial\Omega 上)の弱解であることである。

証明. vv を固定し ∣t∣≤1\lvert t\rvert \leq 1 とすると、1t(F(∇u+t∇v)−F(∇u))=∫01∇F(∇u+st∇v)⋅∇v ds\frac{1}{t}\bigl(F(\nabla u + t\nabla v) - F(\nabla u)\bigr) = \int_0^1\nabla F(\nabla u + st\nabla v) \cdot \nabla v\ ds は C2(1+(∣∇u∣+∣∇v∣)p−1)∣∇v∣C_2(1 + (\lvert\nabla u\rvert + \lvert\nabla v\rvert)^{p-1})\lvert\nabla v\rvert で抑えられ、これはヘルダーの不等式((p−1)p′=p(p - 1)p' = p)により可積分である。優収束定理から ddtI[u+tv]∣t=0\frac{d}{dt}I[u + tv]|_{t=0} は (6.1) の左辺に等しく、最小点ではこれが 00 である。逆に (6.1) が成り立てば、凸性 F(η)≥F(ξ)+∇F(ξ)⋅(η−ξ)F(\eta) \geq F(\xi) + \nabla F(\xi) \cdot (\eta - \xi) から I[u+v]≥I[u]+∫(∇F(∇u)⋅∇v−fv)=I[u]I[u + v] \geq I[u] + \int(\nabla F(\nabla u) \cdot \nabla v - fv) = I[u]。□\square

凸な汎関数では、臨界点と最小点が一致する。

例 6.7 (1) F(ξ)=12∣ξ∣2F(\xi) = \frac{1}{2}\lvert\xi\rvert^2 ならば (6.1) はポアソン方程式 −Δu=f-\Delta u = f の弱形式で、定理 6.4 はディリクレ原理(定理 4.20)である。(2) F(ξ)=1p∣ξ∣pF(\xi) = \frac{1}{p}\lvert\xi\rvert^p(1<p<∞1 < p < \infty)は狭義凸で仮定をみたし、(6.1) は pp-ラプラシアンの方程式

−Δpu:=−div⁡(∣∇u∣p−2∇u)=f(Ω),u=0(∂Ω)-\Delta_pu := -\operatorname{div}\bigl(\lvert\nabla u\rvert^{p-2}\nabla u\bigr) = f \quad (\Omega), \qquad u = 0 \quad (\partial\Omega)

の弱形式である。したがって任意の f∈Lp′(Ω)f \in L^{p'}(\Omega) に対し、ただ一つの弱解 u∈W01,p(Ω)u \in W_0^{1,p}(\Omega) が存在する。pp-ラプラシアンは ∇u=0\nabla u = 0 の点で楕円性が退化(p>2p > 2)または特異(p<2p < 2)になるので、正則性は線形の場合より弱い。pp-調和関数は Cloc1,αC^{1,\alpha}_{\mathrm{loc}} に属するが(ウラルツェワ、ウーレンベック、ディベネデット、トルクスドルフら)、一般に C2C^2 級ではない。実際、Ω=(−1,1)\Omega = (-1, 1)、f=1f = 1 の解は ∣u′∣p−2u′=−x\lvert u'\rvert^{p-2}u' = -x から u(x)=p−1p(1−∣x∣p/(p−1))u(x) = \frac{p-1}{p}\bigl(1 - \lvert x\rvert^{p/(p-1)}\bigr) で、p>2p > 2 なら u′′u'' は x=0x = 0 で有界でない。(3) 極小曲面の方程式を与える F(ξ)=1+∣ξ∣2F(\xi) = \sqrt{1 + \lvert\xi\rvert^2} は p=1p = 1 の増大度しかもたず、W1,1W^{1,1} は反射的でないため、定理 6.4 はそのままでは使えない(有界変動関数の空間が必要になる)。

−Δp-\Delta_p は線形でないが、単調性をもつ:⟨−Δpu+Δpv,u−v⟩=∫(∣∇u∣p−2∇u−∣∇v∣p−2∇v)⋅(∇u−∇v) dx≥0\langle -\Delta_pu + \Delta_pv, u - v\rangle = \int(\lvert\nabla u\rvert^{p-2}\nabla u - \lvert\nabla v\rvert^{p-2}\nabla v) \cdot (\nabla u - \nabla v)\ dx \geq 0(問題 6.1)。これは線形作用素の強圧性の非線形版であり、次の定理につながる。

定理 6.8(ミンティ–ブラウダーの定理)XX を実反射的バナッハ空間、A ⁣:X→X∗A\colon X \to X^{\ast} を(非線形)写像とし、次を仮定する:単調(⟨Au−Av,u−v⟩≥0\langle Au - Av, u - v\rangle \geq 0)、半連続(各 u,v,wu, v, w について t↦⟨A(u+tv),w⟩t \mapsto \langle A(u + tv), w\rangle が連続)、強圧的(∥u∥→∞\lVert u\rVert \to \infty で ⟨Au,u⟩/∥u∥→∞\langle Au, u\rangle/\lVert u\rVert \to \infty)。このとき AA は全射である。AA が狭義単調なら全単射である。

証明(ガラーキン近似とブラウアーの不動点定理、および「ミンティのトリック」)は Evans の第9章を参照。この定理は、変分構造(AA がある汎関数の微分であること)をもたない −div⁡a(x,∇u)=f-\operatorname{div}\mathbf{a}(x, \nabla u) = f(a\mathbf{a} は ξ\xi について単調)のような方程式にも適用できる。

6.4 不動点定理とその応用

縮小写像の原理(03-topology 第7章 定理 7.14)は、非線形性が「小さい」ときに使える。以下 λ1\lambda_1 は −Δ-\Delta のディリクレ第 1 固有値、(−Δ)−1 ⁣:L2(Ω)→H01(Ω)(-\Delta)^{-1}\colon L^2(\Omega) \to H_0^1(\Omega) はポアソン方程式の解作用素とする。定理 4.10 の展開から ∥(−Δ)−1g∥L2≤λ1−1∥g∥L2\lVert(-\Delta)^{-1}g\rVert_{L^2} \leq \lambda_1^{-1}\lVert g\rVert_{L^2} で、等号は g=w1g = w_1 で成り立つ。

命題 6.9 Φ ⁣:R→R\Phi\colon\mathbb{R} \to \mathbb{R} がリプシッツ定数 L<λ1L < \lambda_1 のリプシッツ連続関数で、h∈L2(Ω)h \in L^2(\Omega) ならば、−Δu=Φ(u)+h-\Delta u = \Phi(u) + h、u∈H01(Ω)u \in H_0^1(\Omega) はただ一つの弱解をもつ。

証明. ∣Φ(w)∣≤∣Φ(0)∣+L∣w∣\lvert\Phi(w)\rvert \leq \lvert\Phi(0)\rvert + L\lvert w\rvert なので w∈L2⇒Φ(w)∈L2w \in L^2 \Rightarrow \Phi(w) \in L^2(Ω\Omega は有界)。Tw=(−Δ)−1(Φ(w)+h)Tw = (-\Delta)^{-1}(\Phi(w) + h) とおくと ∥Tw1−Tw2∥≤λ1−1∥Φ(w1)−Φ(w2)∥≤Lλ1∥w1−w2∥\lVert Tw_1 - Tw_2\rVert \leq \lambda_1^{-1}\lVert\Phi(w_1) - \Phi(w_2)\rVert \leq \frac{L}{\lambda_1}\lVert w_1 - w_2\rVert で、TT は L2L^2 上の縮小写像である。不動点 u=Tuu = Tu は H01H_0^1 に属する弱解であり、弱解は必ず TT の不動点なので一意である。□\square

L<λ1L < \lambda_1 は最良である:Φ(u)=λ1u\Phi(u) = \lambda_1u、h=0h = 0 では u=cw1u = cw_1 がすべて解になる。非線形性が大きいときは一意性を諦め、コンパクト性で存在を示す。

定理 6.10(ブラウアーの不動点定理)RN\mathbb{R}^N の閉球から自分自身への連続写像は不動点をもつ。より一般に、有限次元ノルム空間の空でないコンパクト凸集合から自分自身への連続写像は不動点をもつ。

証明はホモロジーを用いる(09-algebraic-topology 第5章)。後半は、コンパクト凸集合がその次元の閉球と同相であることによる。

定理 6.11(シャウダーの不動点定理, Schauder fixed point theorem)XX をバナッハ空間とする。(1) K⊂XK \subset X が空でないコンパクト凸集合で、T ⁣:K→KT\colon K \to K が連続ならば、TT は不動点をもつ。(2) K⊂XK \subset X が空でない閉凸集合で、T ⁣:K→KT\colon K \to K が連続かつ T(K)T(K) が相対コンパクトならば、TT は不動点をもつ。

証明の概略. (1) ε>0\varepsilon > 0 に対し KK の有限な ε\varepsilon-網 {x1,…,xN}\lbrace x_1, \dots, x_N\rbrace をとり、μi(x)=max⁡(0,ε−∥x−xi∥)\mu_i(x) = \max(0, \varepsilon - \lVert x - x_i\rVert)、Pε(x)=∑iμi(x)xi/∑iμi(x)P_\varepsilon(x) = \sum_i\mu_i(x)x_i/\sum_i\mu_i(x) とおく(シャウダー射影)。PεP_\varepsilon は KK 上連続で、∥Pεx−x∥<ε\lVert P_\varepsilon x - x\rVert < \varepsilon、値は Kε=conv⁡{x1,…,xN}⊂KK_\varepsilon = \operatorname{conv}\lbrace x_1, \dots, x_N\rbrace \subset K に入る。Pε∘TP_\varepsilon \circ T は有限次元のコンパクト凸集合 KεK_\varepsilon を自分自身に写すので、ブラウアーの定理により不動点 xεx_\varepsilon をもち、∥Txε−xε∥<ε\lVert Tx_\varepsilon - x_\varepsilon\rVert < \varepsilon。KK のコンパクト性から xεx_\varepsilon の収束部分列をとれば、極限は TT の不動点である。(2) バナッハ空間では相対コンパクト集合の閉凸包はコンパクトである(マズールのコンパクト性定理)から、T(K)T(K) の閉凸包 K~\tilde K はコンパクトで、KK に含まれ、T(K~)⊂T(K)⊂K~T(\tilde K) \subset T(K) \subset \tilde K だから (1) を適用できる。□\square

定理 6.12(劣線形の場合の存在)f ⁣:R→Rf\colon\mathbb{R} \to \mathbb{R} は連続で、定数 a,b≥0a, b \geq 0、0≤σ<10 \leq \sigma < 1 について ∣f(t)∣≤a+b∣t∣σ\lvert f(t)\rvert \leq a + b\lvert t\rvert^\sigma をみたすとする。このとき −Δu=f(u)-\Delta u = f(u)(Ω\Omega で)、u=0u = 0(∂Ω\partial\Omega で)は弱解 u∈H01(Ω)u \in H_0^1(\Omega) をもつ。

証明. T ⁣:L2(Ω)→L2(Ω)T\colon L^2(\Omega) \to L^2(\Omega) を Tw=(−Δ)−1f(w)Tw = (-\Delta)^{-1}f(w) で定める。

(i) w↦f(w)w \mapsto f(w) は L2→L2L^2 \to L^2 で連続である:wk→ww_k \to w(L2L^2)なら、任意の部分列からさらに wkj→ww_{k_j} \to w a.e.、∣wkj∣≤h∈L2\lvert w_{k_j}\rvert \leq h \in L^2 となる部分列がとれ、ff の連続性と ∣f(wkj)−f(w)∣2≤2(a+bhσ)2+2(a+b∣w∣σ)2∈L1\lvert f(w_{k_j}) - f(w)\rvert^2 \leq 2(a + bh^\sigma)^2 + 2(a + b\lvert w\rvert^\sigma)^2 \in L^1 から優収束定理により f(wkj)→f(w)f(w_{k_j}) \to f(w)。極限が部分列によらないので列全体が収束する。

(ii) (−Δ)−1 ⁣:L2→H01(-\Delta)^{-1}\colon L^2 \to H_0^1 は有界で、H01↪L2H_0^1 \hookrightarrow L^2 はコンパクト(定理 3.25)なので、TT は連続で、有界集合を相対コンパクトな集合に写す。

(iii) ヘルダーの不等式 ∫∣w∣2σ≤∣Ω∣1−σ∥w∥2σ\int\lvert w\rvert^{2\sigma} \leq \lvert\Omega\rvert^{1-\sigma}\lVert w\rVert^{2\sigma} から

∥Tw∥≤1λ1∥f(w)∥≤1λ1(a∣Ω∣1/2+b∣Ω∣(1−σ)/2∥w∥σ)=:A+B∥w∥σ\lVert Tw\rVert \leq \frac{1}{\lambda_1}\lVert f(w)\rVert \leq \frac{1}{\lambda_1}\Bigl(a\lvert\Omega\rvert^{1/2} + b\lvert\Omega\rvert^{(1-\sigma)/2}\lVert w\rVert^\sigma\Bigr) =: A + B\lVert w\rVert^\sigma

σ<1\sigma < 1 なので A+BRσ≤RA + BR^\sigma \leq R となる RR がとれ、TT は閉球 K={∥w∥≤R}K = \lbrace\lVert w\rVert \leq R\rbrace を自分自身に写す。KK は閉凸で T(K)T(K) は相対コンパクトだから、定理 6.11 (2) により不動点 u=Tu∈H01u = Tu \in H_0^1 があり、これが弱解である。□\square

b<λ1b < \lambda_1 ならば σ=1\sigma = 1 でも同じ証明が通る。f(0)=0f(0) = 0 のときは u=0u = 0 が自明な解なので、この定理は非自明な解の存在を保証しない(それには変分法が有効である。問題 6.5)。ff と ∂Ω\partial\Omega が滑らか(C∞C^\infty 級)なら、f(u)∈L2⇒u∈H2⇒f(u) \in L^2 \Rightarrow u \in H^2 \Rightarrow(埋め込み)⇒f(u)∈H1⇒u∈H3⇒⋯\Rightarrow f(u) \in H^1 \Rightarrow u \in H^3 \Rightarrow \cdots というブートストラップにより正則性を上げられる(nn が小さいときは直ちに、一般には LpL^p 理論を併用する)。より一般に、「u=λTuu = \lambda Tu(0≤λ≤10 \leq \lambda \leq 1)の解全体が有界ならば TT は不動点をもつ」(シェーファーの定理、ルレイ–シャウダー理論)により、アプリオリ評価が存在を導く。

6.5 峠の定理

1<p1 < p とし、超線形の問題 −Δu=∣u∣p−1u-\Delta u = \lvert u\rvert^{p-1}u、u∈H01(Ω)u \in H_0^1(\Omega) を考える。これは汎関数

I[u]=12∫Ω∣∇u∣2dx−1p+1∫Ω∣u∣p+1dxI[u] = \frac{1}{2}\int_\Omega\lvert\nabla u\rvert^2dx - \frac{1}{p+1}\int_\Omega\lvert u\rvert^{p+1}dx

の臨界点を求める問題である。I[tu]→−∞I[tu] \to -\infty(t→∞t \to \infty)なので II は下に有界でなく、最小点は存在しない。一方 u=0u = 0 は狭義の極小点である。原点という「谷」から遠くの低い点 ee へ行く道はどれも「山」を越えねばならず、その峠の高さで臨界点が見つかるはずである。

定義 6.13(パレ–スメイル条件)バナッハ空間 XX 上の I∈C1(X,R)I \in C^1(X, \mathbb{R}) がパレ–スメイル条件 (PS) をみたすとは、(I[uk])(I[u_k]) が有界で I′[uk]→0I'[u_k] \to 0(X∗X^{\ast} で)となる任意の列 (uk)(u_k) が収束部分列をもつことをいう。

定理 6.14(峠の定理, mountain pass theorem;アンブロゼッティ–ラビノヴィッツ)XX を実バナッハ空間、I∈C1(X,R)I \in C^1(X, \mathbb{R}) は (PS) をみたし、I[0]=0I[0] = 0 とする。定数 r,a>0r, a > 0 があって ∥u∥=r\lVert u\rVert = r ならば I[u]≥aI[u] \geq a、かつ ∥e∥>r\lVert e\rVert > r、I[e]≤0I[e] \leq 0 となる e∈Xe \in X があるとする。Γ={g∈C([0,1];X)∣g(0)=0, g(1)=e}\Gamma = \lbrace g \in C([0, 1]; X) \mid g(0) = 0,\ g(1) = e\rbrace に対し

c=inf⁡g∈Γmax⁡0≤t≤1I[g(t)]c = \inf_{g \in \Gamma}\max_{0 \leq t \leq 1}I[g(t)]

とおくと、c≥ac \geq a であり、cc は II の臨界値である(I[u]=cI[u] = c、I′[u]=0I'[u] = 0 となる uu がある)。

証明(変形補題による)は Evans の第8章を参照。(PS) は、無限次元で失われたコンパクト性を補う条件である。

例 6.15(超線形・劣臨界の場合)n≥3n \geq 3 のとき 1<p<n+2n−21 < p < \frac{n+2}{n-2}(n=1,2n = 1, 2 では 1<p<∞1 < p < \infty)ならば、−Δu=∣u∣p−1u-\Delta u = \lvert u\rvert^{p-1}u は 00 でない弱解 u∈H01(Ω)u \in H_0^1(\Omega) をもつ。p+1<2∗=2nn−2p + 1 < 2^{\ast} = \frac{2n}{n-2} であることに注意して、X=H01(Ω)X = H_0^1(\Omega)(ノルム ∥∇u∥\lVert\nabla u\rVert)で定理 6.14 の仮定を確かめる(I∈C1I \in C^1 で I′[u]v=∫∇u⋅∇v−∫∣u∣p−1uvI'[u]v = \int\nabla u \cdot \nabla v - \int\lvert u\rvert^{p-1}uv となることは認める)。

  • 山の形:ソボレフ・ヘルダー・ポアンカレの不等式から ∫∣u∣p+1≤Sp+1∥∇u∥p+1\int\lvert u\rvert^{p+1} \leq S^{p+1}\lVert\nabla u\rVert^{p+1} だから、∥∇u∥=r\lVert\nabla u\rVert = r のとき I[u]≥12r2−Sp+1p+1rp+1≥r24I[u] \geq \frac{1}{2}r^2 - \frac{S^{p+1}}{p+1}r^{p+1} \geq \frac{r^2}{4}(rr が小さいとき)。u0≠0u_0 \neq 0 について I[tu0]→−∞I[tu_0] \to -\infty なので e=tu0e = tu_0(tt 大)とすればよい。
  • (PS):∣I[uk]∣≤M\lvert I[u_k]\rvert \leq M、I′[uk]→0I'[u_k] \to 0 とすると、I[uk]−1p+1I′[uk]uk=(12−1p+1)∥∇uk∥2I[u_k] - \frac{1}{p+1}I'[u_k]u_k = (\frac{1}{2} - \frac{1}{p+1})\lVert\nabla u_k\rVert^2 から ∥∇uk∥2≤C(M+o(1)∥∇uk∥)\lVert\nabla u_k\rVert^2 \leq C(M + o(1)\lVert\nabla u_k\rVert) となり (uk)(u_k) は有界。弱収束部分列 uk⇀uu_k \rightharpoonup u をとると、レリッヒの定理(p+1<2∗p + 1 < 2^{\ast})により Lp+1L^{p+1} で uk→uu_k \to u、したがって ∣uk∣p−1uk→∣u∣p−1u\lvert u_k\rvert^{p-1}u_k \to \lvert u\rvert^{p-1}u が L(p+1)/p⊂H−1L^{(p+1)/p} \subset H^{-1} で成り立つ。uk=(−Δ)−1(I′[uk]+∣uk∣p−1uk)u_k = (-\Delta)^{-1}(I'[u_k] + \lvert u_k\rvert^{p-1}u_k) で (−Δ)−1 ⁣:H−1→H01(-\Delta)^{-1}\colon H^{-1} \to H_0^1 は有界だから、uku_k は H01H_0^1 で収束する。

よって臨界値 c≥r2/4>0=I[0]c \geq r^2/4 > 0 = I[0] に対応する臨界点 u≠0u \neq 0 が存在する。∣u∣p+1\lvert u\rvert^{p+1} の代わりに (u+)p+1(u^+)^{p+1} を使えば非負の解が得られ、強最大値原理と正則性により Ω\Omega で正の古典解になる(Ω\Omega が滑らかなとき)。

6.6 臨界指数とコンパクト性の破れ

例 6.15 の証明で決定的だったのは、p+1<2∗p + 1 < 2^{\ast} に対する H01↪Lp+1H_0^1 \hookrightarrow L^{p+1} のコンパクト性だった。臨界指数 p=n+2n−2p = \frac{n+2}{n-2}(p+1=2∗p + 1 = 2^{\ast})ではこれが破れる。例 3.26 のように、uλ(x)=λ(n−2)/2u(λx)u_\lambda(x) = \lambda^{(n-2)/2}u(\lambda x) は ∥∇uλ∥2\lVert\nabla u_\lambda\rVert_2 と ∥uλ∥2∗\lVert u_\lambda\rVert_{2^{\ast}} を保ったまま一点に集中できるので、(PS) をみたさない列が生じる。実際、存在そのものが領域の形に依存する。

定理 6.16(ポホザエフ)n≥3n \geq 3 とし、Ω\Omega は有界で境界が滑らか、原点に関して星形(∂Ω\partial\Omega 上で x⋅ν≥0x \cdot \nu \geq 0)とし、u∈C2(Ω‾)u \in C^2(\overline\Omega) は −Δu=∣u∣p−1u-\Delta u = \lvert u\rvert^{p-1}u(Ω\Omega で)、u=0u = 0(∂Ω\partial\Omega で)をみたすとする。(1) p>n+2n−2p > \frac{n+2}{n-2} ならば u≡0u \equiv 0。(2) p=n+2n−2p = \frac{n+2}{n-2} ならば uu は Ω\Omega で正にはなれない(正値解は存在しない)。

証明はポホザエフの恒等式 n−22∫∣∇u∣2−np+1∫∣u∣p+1=−12∫∂Ω∣∂νu∣2(x⋅ν) dS\frac{n-2}{2}\int\lvert\nabla u\rvert^2 - \frac{n}{p+1}\int\lvert u\rvert^{p+1} = -\frac{1}{2}\int_{\partial\Omega}\lvert\partial_\nu u\rvert^2(x \cdot \nu)\ dS による(問題 6.6)。一方、形の異なる領域や低階の項を加えた問題では解が存在しうる。たとえばブレジス–ニーレンバーグ(1983)は、n≥4n \geq 4、0<λ<λ10 < \lambda < \lambda_1 のとき −Δu=un+2n−2+λu-\Delta u = u^{\frac{n+2}{n-2}} + \lambda u が正値解をもつことを示した。Rn\mathbb{R}^n 全体では

Uε(x)=[n(n−2)]n−24(εε2+∣x∣2)n−22(ε>0)U_\varepsilon(x) = \bigl[n(n-2)\bigr]^{\frac{n-2}{4}}\Bigl(\frac{\varepsilon}{\varepsilon^2 + \lvert x\rvert^2}\Bigr)^{\frac{n-2}{2}} \qquad (\varepsilon > 0)

が −ΔU=Un+2n−2-\Delta U = U^{\frac{n+2}{n-2}} の正値解で(直接計算で確かめられる)、ソボレフの不等式 ∥u∥2∗≤Sn∥∇u∥2\lVert u\rVert_{2^{\ast}} \leq S_n\lVert\nabla u\rVert_2 の最良定数を達成する(オーバン、タレンティ、1976)。ε→0\varepsilon \to 0 で UεU_\varepsilon は原点に集中する「泡」(bubble) になり、これがコンパクト性の破れの正体である。臨界指数の問題は、リーマン多様体の計量を共形変換してスカラー曲率を一定にする山辺問題にも現れる(17-riemannian-geometry 第4章 の曲率を参照)。

6.7 ナビエ–ストークス方程式とミレニアム問題

非圧縮粘性流体の速度 u(x,t)∈R3u(x, t) \in \mathbb{R}^3 と圧力 p(x,t)p(x, t) はナビエ–ストークス方程式

∂tu+(u⋅∇)u−νΔu+∇p=0,div⁡u=0,u(⋅,0)=u0(x∈R3, t>0)\partial_tu + (u \cdot \nabla)u - \nu\Delta u + \nabla p = 0, \qquad \operatorname{div}u = 0, \qquad u(\cdot, 0) = u_0 \qquad (x \in \mathbb{R}^3,\ t > 0)

に従う(ν>0\nu > 0 は粘性係数)。滑らかで減衰する解では、div⁡u=0\operatorname{div}u = 0 により ∫(u⋅∇)u⋅u dx=−12∫(div⁡u)∣u∣2dx=0\int(u \cdot \nabla)u \cdot u\ dx = -\frac{1}{2}\int(\operatorname{div}u)\lvert u\rvert^2dx = 0、∫∇p⋅u dx=0\int\nabla p \cdot u\ dx = 0 なので、エネルギー等式 12∥u(t)∥22+ν∫0t∥∇u∥22ds=12∥u0∥22\frac{1}{2}\lVert u(t)\rVert_2^2 + \nu\int_0^t\lVert\nabla u\rVert_2^2ds = \frac{1}{2}\lVert u_0\rVert_2^2 が成り立つ。

本科目の流れに沿って見ると、状況は次のとおりである。

  • 弱解の存在(第 2 段階):ルレイ(1934)は、div⁡u0=0\operatorname{div}u_0 = 0 をみたす任意の u0∈L2(R3)u_0 \in L^2(\mathbb{R}^3) に対し、エネルギー不等式(等式の == を ≤\leq にしたもの)をみたす時間大域的な弱解を構成した(有界領域ではホップ、1951)。方法は第5章のガラーキン法(または非線形項の平滑化)とエネルギー評価に、非線形項の極限をとるためのコンパクト性を加えたものである。
  • 正則性(第 3 段階):2 次元では弱解は一意で、すべての時刻で滑らかである。3 次元ではこれが未解決である。スケーリング uλ(x,t)=λu(λx,λ2t)u_\lambda(x, t) = \lambda u(\lambda x, \lambda^2t) は方程式を保つが、エネルギー ∥uλ(t)∥22=λ−1∥u(λ2t)∥22\lVert u_\lambda(t)\rVert_2^2 = \lambda^{-1}\lVert u(\lambda^2t)\rVert_2^2 は小さなスケールで情報を失う(優臨界)。スケール不変な空間 H˙1/2\dot H^{1/2} や L3L^3 の初期値に対しては、時間局所的な滑らかな解(小さなデータなら大域解)が存在する(藤田–加藤、1964;加藤、1984)。また部分正則性(カファレリ–コーン–ニーレンバーグ、1982:特異点集合は 1 次元放物型ハウスドルフ測度が 00)や、Lt∞Lx3L^\infty_tL^3_x に属する解の正則性(エスカウリアサ–セレギン–シュヴェラーク、2003)が知られている。一方、凸積分法により、エネルギー不等式を課さない弱解は一意でないことが示されている(バックマスター–ヴィコル、2019)。
  • ミレニアム問題:クレイ数学研究所が 2000 年に挙げた 7 つの問題の一つは、「R3\mathbb{R}^3 上(または周期的な場合)の滑らかで十分減衰する発散 00 の初期値に対し、すべての時刻で滑らかでエネルギー有限な解が存在することを証明するか、有限時間で滑らかさが失われる例を示せ」というものである。

弱解は作れるが、それが古典解に戻ることを示せない。ナビエ–ストークス方程式は、本科目で学んだ「弱解を作り、正則性で古典解に戻る」という方法の力と限界を、最も鮮やかに示す例である。

まとめ

  • 非線形問題の主な方法は、変分法・不動点定理・単調性である。非線形項に意味を与え制御するために、ソボレフの埋め込みとコンパクト性が不可欠である。
  • 直接法:反射的空間で、強圧的かつ弱下半連続な汎関数は最小点をもつ。凸で下半連続な汎関数は弱下半連続である(マズール)。凸性が欠けると最小点が存在しないことがある(ボルザの例)。
  • 凸な汎関数の最小点はオイラー–ラグランジュ方程式の弱解と一致し、これにより pp-ラプラシアン方程式が一意可解になる。pp-調和関数は一般に C2C^2 ではない。単調作用素にはミンティ–ブラウダーの定理が使える。
  • 縮小写像の原理は小さな非線形性に、シャウダーの不動点定理はコンパクト性とアプリオリ評価のある問題(劣線形の −Δu=f(u)-\Delta u = f(u))に使える。
  • 下に有界でない汎関数の臨界点は峠の定理で得られ、(PS) 条件の検証にはレリッヒのコンパクト性(劣臨界 p+1<2∗p + 1 < 2^{\ast})を使う。
  • 臨界指数ではスケーリングによる集中でコンパクト性が破れ、星形領域では正値解が存在しない(ポホザエフ)。
  • ナビエ–ストークス方程式では弱解の存在(ルレイ)は知られているが、3 次元での正則性は未解決である(ミレニアム問題)。

演習問題

問題 6.1 ★ 1<p<∞1 < p < \infty とする。a,b∈Rna, b \in \mathbb{R}^n について (∣a∣p−2a−∣b∣p−2b)⋅(a−b)≥0(\lvert a\rvert^{p-2}a - \lvert b\rvert^{p-2}b) \cdot (a - b) \geq 0 であり、等号は a=ba = b のときに限ることを示せ(∣0∣p−20=0\lvert 0\rvert^{p-2}0 = 0 と約束する)。

解答

G(ξ)=1p∣ξ∣pG(\xi) = \frac{1}{p}\lvert\xi\rvert^p は C1C^1 級で ∇G(ξ)=∣ξ∣p−2ξ\nabla G(\xi) = \lvert\xi\rvert^{p-2}\xi。GG は凸(t↦tp/pt \mapsto t^p/p は [0,∞)[0, \infty) で凸かつ単調増加、∣⋅∣\lvert\cdot\rvert は凸)なので G(b)≥G(a)+∇G(a)⋅(b−a)G(b) \geq G(a) + \nabla G(a) \cdot (b - a)、G(a)≥G(b)+∇G(b)⋅(a−b)G(a) \geq G(b) + \nabla G(b) \cdot (a - b)。足し合わせると主張の不等式を得る。GG は狭義凸である(G(a+b2)=12(G(a)+G(b))G(\frac{a+b}{2}) = \frac{1}{2}(G(a) + G(b)) なら、tpt^p の狭義凸性から ∣a∣=∣b∣=∣a+b2∣\lvert a\rvert = \lvert b\rvert = \lvert\frac{a+b}{2}\rvert となり、ユークリッドノルムの狭義凸性から a=ba = b)。a≠ba \neq b なら G(b)>G(a)+∇G(a)⋅(b−a)G(b) > G(a) + \nabla G(a) \cdot (b - a) となるので(狭義凸関数の接平面は他の点で真に下にある)、等号は成り立たない。

問題 6.2 ★ h∈L2(Ω)h \in L^2(\Omega)、∣λ∣<λ1\lvert\lambda\rvert < \lambda_1 ならば、−Δu=λsin⁡u+h-\Delta u = \lambda\sin u + h、u∈H01(Ω)u \in H_0^1(\Omega) はただ一つの弱解をもつことを示せ。

解答

Φ(t)=λsin⁡t\Phi(t) = \lambda\sin t はリプシッツ定数 ∣λ∣<λ1\lvert\lambda\rvert < \lambda_1 のリプシッツ関数なので、命題 6.9 がそのまま適用できる。

問題 6.3 ★★ 例 6.5 ののこぎり波 uku_k が W1,4(0,1)W^{1,4}(0, 1) で 00 に弱収束することを示し、ボルザの汎関数 II が弱下半連続でないことを確かめよ。

解答

∣uk′∣=1\lvert u_k'\rvert = 1 a.e.、sup⁡∣uk∣=12k\sup\lvert u_k\rvert = \frac{1}{2k} なので (uk)(u_k) は W1,4W^{1,4} で有界である。W1,4(0,1)W^{1,4}(0, 1) は反射的なので、任意の部分列はさらに弱収束する部分列をもつ(10-functional-analysis 第4章 定理 4.20)。その弱極限 vv は L4L^4 でも弱極限であり、uk→0u_k \to 0 は一様収束するので v=0v = 0。極限が部分列によらないので uk⇀0u_k \rightharpoonup 0。一方 I[uk]=∫uk2≤14k2→0I[u_k] = \int u_k^2 \leq \frac{1}{4k^2} \to 0、I[0]=∫011 dx=1I[0] = \int_0^1 1\ dx = 1 なので I[0]>lim inf⁡I[uk]I[0] > \liminf I[u_k] となり、弱下半連続でない。

問題 6.4 ★★ n≤3n \leq 3、f∈L2(Ω)f \in L^2(\Omega) とする。I[u]=∫Ω(12∣∇u∣2+14u4−fu)dxI[u] = \int_\Omega\bigl(\frac{1}{2}\lvert\nabla u\rvert^2 + \frac{1}{4}u^4 - fu\bigr)dx は H01(Ω)H_0^1(\Omega) 上でただ一つの最小点 uu をもち、uu は −Δu+u3=f-\Delta u + u^3 = f の弱解(すべての v∈H01v \in H_0^1 で ∫(∇u⋅∇v+u3v−fv)=0\int(\nabla u \cdot \nabla v + u^3v - fv) = 0)であることを示せ。

解答

n≤3n \leq 3 なら 2∗≥6>42^{\ast} \geq 6 > 4(n=3n = 3)、または任意の q<∞q < \infty について H01⊂LqH_0^1 \subset L^q(n=1,2n = 1, 2)なので、系 3.20 と定理 3.23 より H01↪L4H_0^1 \hookrightarrow L^4 は連続であり、II は H01H_0^1 上で有限かつ連続である。12∣ξ∣2\frac{1}{2}\lvert\xi\rvert^2 と 14t4\frac{1}{4}t^4 は狭義凸なので II は狭義凸。I[u]≥12∥∇u∥2−CP∥f∥∥∇u∥I[u] \geq \frac{1}{2}\lVert\nabla u\rVert^2 - C_P\lVert f\rVert\lVert\nabla u\rVert より強圧的。命題 6.3 と定理 6.2 により最小点が存在し、狭義凸性から一意。v∈H01v \in H_0^1 について t↦I[u+tv]t \mapsto I[u + tv] は ∫14(u+tv)4\int\frac{1}{4}(u + tv)^4 が tt の多項式(係数は u,v∈L4u, v \in L^4 による積分)なので微分可能で、t=0t = 0 での微分が 00 であることから弱形式を得る(u3v∈L1u^3v \in L^1 はヘルダーの不等式による)。

問題 6.5 ★★★(劣線形問題の非自明解)0<σ<10 < \sigma < 1 とする。I[u]=12∫Ω∣∇u∣2−1σ+1∫Ω∣u∣σ+1I[u] = \frac{1}{2}\int_\Omega\lvert\nabla u\rvert^2 - \frac{1}{\sigma+1}\int_\Omega\lvert u\rvert^{\sigma+1} の H01(Ω)H_0^1(\Omega) 上の最小点が存在し、それが −Δu=∣u∣σ−1u-\Delta u = \lvert u\rvert^{\sigma-1}u の 00 でない弱解であることを示せ。

解答

強圧性:ヘルダーとポアンカレの不等式から ∫∣u∣σ+1≤∣Ω∣1−σ2∥u∥2σ+1≤C∥∇u∥σ+1\int\lvert u\rvert^{\sigma+1} \leq \lvert\Omega\rvert^{\frac{1-\sigma}{2}}\lVert u\rVert_2^{\sigma+1} \leq C\lVert\nabla u\rVert^{\sigma+1} で、σ+1<2\sigma + 1 < 2 だから I[u]≥12∥∇u∥2−C′∥∇u∥σ+1→∞I[u] \geq \frac{1}{2}\lVert\nabla u\rVert^2 - C'\lVert\nabla u\rVert^{\sigma+1} \to \infty。

弱下半連続性:第 1 項は凸で連続なので弱下半連続(命題 6.3)。第 2 項 J[u]=∫∣u∣σ+1J[u] = \int\lvert u\rvert^{\sigma+1} は L2L^2 上で連続(定理 6.12 の証明 (i) と同様)であり、uk⇀uu_k \rightharpoonup u(H01H_0^1)なら uk→uu_k \to u(L2L^2)(レリッヒの定理)なので J[uk]→J[u]J[u_k] \to J[u]。よって II は弱下半連続で、定理 6.2 により最小点 uu が存在する。

非自明性:t>0t > 0 について I[tw1]=t22λ1−tσ+1σ+1∫∣w1∣σ+1I[tw_1] = \frac{t^2}{2}\lambda_1 - \frac{t^{\sigma+1}}{\sigma+1}\int\lvert w_1\rvert^{\sigma+1} は tt が小さいとき負(σ+1<2\sigma + 1 < 2)なので min⁡I<0=I[0]\min I < 0 = I[0]、よって u≠0u \neq 0。

オイラー–ラグランジュ方程式:G(t)=∣t∣σ+1σ+1G(t) = \frac{\lvert t\rvert^{\sigma+1}}{\sigma+1} は C1C^1 級で G′(t)=∣t∣σ−1tG'(t) = \lvert t\rvert^{\sigma-1}t、∣G′(t)∣=∣t∣σ\lvert G'(t)\rvert = \lvert t\rvert^\sigma。定理 6.6 と同様に優収束定理で ddtI[u+tv]∣t=0=∫∇u⋅∇v−∫∣u∣σ−1uv=0\frac{d}{dt}I[u + tv]|_{t=0} = \int\nabla u \cdot \nabla v - \int\lvert u\rvert^{\sigma-1}uv = 0。I[∣u∣]=I[u]I[\lvert u\rvert] = I[u] なので、∣u∣\lvert u\rvert も最小点であり、非負の非自明解がとれる。定理 6.12 の不動点法では f(0)=0f(0) = 0 のとき自明解しか保証されなかったのと対照的である。

問題 6.6 ★★★(ポホザエフの恒等式)定理 6.16 の仮定のもとで、g(t)=∣t∣p−1tg(t) = \lvert t\rvert^{p-1}t、G(t)=∣t∣p+1p+1G(t) = \frac{\lvert t\rvert^{p+1}}{p+1} とする。方程式に x⋅∇ux \cdot \nabla u を掛けて積分することにより

n−22∫Ω∣∇u∣2dx−n∫ΩG(u) dx=−12∫∂Ω∣∂νu∣2(x⋅ν) dS\frac{n-2}{2}\int_\Omega\lvert\nabla u\rvert^2dx - n\int_\Omega G(u)\,dx = -\frac{1}{2}\int_{\partial\Omega}\lvert\partial_\nu u\rvert^2(x \cdot \nu)\,dS

を示し、定理 6.16 を証明せよ。

解答

∂Ω\partial\Omega 上で u=0u = 0 なので ∇u=(∂νu)ν\nabla u = (\partial_\nu u)\nu、したがって x⋅∇u=∂νu (x⋅ν)x \cdot \nabla u = \partial_\nu u\ (x \cdot \nu)、∣∇u∣2=∣∂νu∣2\lvert\nabla u\rvert^2 = \lvert\partial_\nu u\rvert^2。部分積分により

∫(−Δu)(x⋅∇u)=∫∇u⋅∇(x⋅∇u)−∫∂Ω∂νu (x⋅∇u) dS\int(-\Delta u)(x \cdot \nabla u) = \int\nabla u \cdot \nabla(x \cdot \nabla u) - \int_{\partial\Omega}\partial_\nu u\,(x \cdot \nabla u)\,dS

∇u⋅∇(x⋅∇u)=∣∇u∣2+x⋅∇(12∣∇u∣2)\nabla u \cdot \nabla(x \cdot \nabla u) = \lvert\nabla u\rvert^2 + x \cdot \nabla\bigl(\frac{1}{2}\lvert\nabla u\rvert^2\bigr) で、∫x⋅∇(12∣∇u∣2)=−n2∫∣∇u∣2+12∫∂Ω∣∇u∣2(x⋅ν)\int x \cdot \nabla\bigl(\frac{1}{2}\lvert\nabla u\rvert^2\bigr) = -\frac{n}{2}\int\lvert\nabla u\rvert^2 + \frac{1}{2}\int_{\partial\Omega}\lvert\nabla u\rvert^2(x \cdot \nu)。まとめると左辺は 2−n2∫∣∇u∣2−12∫∂Ω∣∂νu∣2(x⋅ν)\frac{2-n}{2}\int\lvert\nabla u\rvert^2 - \frac{1}{2}\int_{\partial\Omega}\lvert\partial_\nu u\rvert^2(x \cdot \nu)。一方 ∫g(u)(x⋅∇u)=∫x⋅∇G(u)=−n∫G(u)\int g(u)(x \cdot \nabla u) = \int x \cdot \nabla G(u) = -n\int G(u)(∂Ω\partial\Omega で G(u)=0G(u) = 0)。両者を等しいとおけば恒等式を得る。

方程式に uu を掛けて積分すると ∫∣∇u∣2=∫∣u∣p+1\int\lvert\nabla u\rvert^2 = \int\lvert u\rvert^{p+1} なので、恒等式は (n−22−np+1)∫∣∇u∣2=−12∫∂Ω∣∂νu∣2(x⋅ν)≤0\bigl(\frac{n-2}{2} - \frac{n}{p+1}\bigr)\int\lvert\nabla u\rvert^2 = -\frac{1}{2}\int_{\partial\Omega}\lvert\partial_\nu u\rvert^2(x \cdot \nu) \leq 0 となる。(1) p>n+2n−2p > \frac{n+2}{n-2} なら np+1<n−22\frac{n}{p+1} < \frac{n-2}{2} で左辺の係数は正なので ∇u=0\nabla u = 0、よって u=0u = 0。(2) p=n+2n−2p = \frac{n+2}{n-2} なら係数は 00 で ∫∂Ω∣∂νu∣2(x⋅ν)=0\int_{\partial\Omega}\lvert\partial_\nu u\rvert^2(x \cdot \nu) = 0。u>0u > 0 ならホップの補題(定理 4.19 (2) を −u-u に適用)により ∂Ω\partial\Omega 上 ∂νu<0\partial_\nu u < 0 で、∣∂νu∣2≥c>0\lvert\partial_\nu u\rvert^2 \geq c > 0。発散定理より ∫∂Ωx⋅ν dS=n∣Ω∣>0\int_{\partial\Omega}x \cdot \nu\ dS = n\lvert\Omega\rvert > 0 で x⋅ν≥0x \cdot \nu \geq 0 だから、∫∂Ω∣∂νu∣2(x⋅ν)≥cn∣Ω∣>0\int_{\partial\Omega}\lvert\partial_\nu u\rvert^2(x \cdot \nu) \geq cn\lvert\Omega\rvert > 0 となり矛盾する。

この章を読み終えたら

「読了」にすると学習記録とロードマップに反映されます。演習の自己採点もお忘れなく。

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